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特許7463513ヒトパピローマウィルス(HPV)の検出方法及び検出用キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】ヒトパピローマウィルス(HPV)の検出方法及び検出用キット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/70 20060101AFI20240401BHJP
   C12N 15/34 20060101ALI20240401BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240401BHJP
   C12Q 1/6888 20180101ALI20240401BHJP
【FI】
C12Q1/70 ZNA
C12N15/34
C12Q1/686 Z
C12Q1/6888 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022534410
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 CN2020135565
(87)【国際公開番号】W WO2021115406
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】201911283675.0
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509168829
【氏名又は名称】浙江我武生物科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】胡 ▲がん▼煕
(72)【発明者】
【氏名】管 禎▲い▼
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0107582(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105603121(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107119147(CN,A)
【文献】BZHALAVA D. et al.,International standardization and classification of human papillomavirus types,Virology, 2015, vol. 476, p. 341-344
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のヒトパピローマウイルスの存在を検出する方法であって、
少なくとも65種類の遺伝子型のヒトパピローマウイルスを検出するステップを含み、
前記65種類の遺伝子型は:HPV32、HPV42、HPV54、HPV3、HPV10、HPV28、HPV29、HPV77、HPV78、HPV94、HPV117、HPV125、HPV160、HPV83、HPV102、HPV89、HPV61、HPV62、HPV72、HPV81、HPV84、HPV86、HPV87、HPV114、HPV2、HPV27、HPV57、HPV71、HPV90、HPV106、HPV26、HPV51、HPV69、HPV82、HPV30、HPV53、HPV56、HPV66、HPV18、HPV45、HPV97、HPV39、HPV68、HPV70、HPV59、HPV85、HPV7、HPV40、HPV43、HPV91、HPV16、HPV31、HPV35、HPV33、HPV58、HPV52、HPV67、HPV6、HPV11、HPV13、HPV44、HPV74、HPV34、HPV73、及びHPV177であり、
前記サンプルは、バイオ製品であり、
前記方法は、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて前記遺伝子型の存在を検出し、かつ、ポリメラーゼ連鎖反応の結果に基づいてサンプル中にヒトパピローマウイルスが含まれているか否かを判定する、
ことを特徴とするサンプル中にヒトパピローマウイルスの存在を検出する方法。
【請求項2】
前記ポリメラーゼ連鎖反応は、前記少なくとも65種の遺伝子型のヒトパピローマウイルスを検出できるプライマー対セットを採用し、前記セット中の1つ又は複数のプライマー対は縮退プライマー対であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、以下のステップを含む:
1)サンプルのDNA取得;
2)ステップ1)で得られたDNAと前記少なくとも65種類の遺伝子型ヒトパピローマウイルスを検出できるプライマー対セット中の各ペアのプライマーをそれぞれポリメラーゼ連鎖反応させる;
3)ポリメラーゼ連鎖反応の結果に基づいて、サンプルがヒトパピローマウイルスを含むかどうかを判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記セットの1つ又は複数のプライマー対は縮退プライマー対であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリメラーゼ連鎖反応結果に基づいて、サンプルがヒトパピローマウイルスを含むかどうかを判定することが、各ポリメラーゼ連鎖反応の測定Ct値を設定されたCt参照値と比較することを含み、測定Ct値が参照値より小さい場合、又はポリメラーゼ連鎖反応生成物の溶解度曲線が単峰でかつ測定Ct値が参照値より小さい場合、ポリメラーゼ連鎖反応の結果が陽性となり、測定Ct値が参照値以上であるか、又は対数増幅曲線がない場合、ポリメラーゼ連鎖反応結果は陰性である;同時に、いずれかプライマー対のポリメラーゼ連鎖反応結果が陽性である場合、サンプルのHPV検出結果は陽性であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記Ct参照値は30~35、32~35、33~35、34又は35から選択されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記プライマー対セットは、以下の表1から選択される1つ又は複数のプライマー対を含み、F及びRはそれぞれプライマー対におけるフォワードプライマー及びリバースプライマーを表すことを特徴とする請求項2に記載の方法。
[表1]
ただし、RはA又はGを表し、YはC又はTを表し、MはA又はCを表し、KはG又はTを表し、SはC又はGを表し、WはA又はTを表し、HはA、C又はTを表し、BはC、G又はTを表し、VはA、C又はGを表し、DはA、G又はTを表す。
【請求項8】
要件(a)および(b)のうち、一つ又は二つを満たすことを特徴とする、請求項2に記載の方法であって、前記要件(a)および(b)は、
(a)前記ポリメラーゼ連鎖反応のアニーリング温度は、それぞれ40℃~60℃、50℃~60℃、および55℃、から選択される;
(b)前記ポリメラーゼ連鎖反応は、それぞれのサイクル数が、30~50、35~45、および40、から選択される、
であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記バイオ製品は、細胞製品又は血液製品から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記バイオ製品は細胞製品である、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記バイオ製品は幹細胞製品である、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記バイオ製品は間葉系幹細胞製品である、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも65種類の遺伝子型ヒトパピローマウイルスの存在を検出することができる試薬を含むキットであって、
前記65種類の遺伝子型は:HPV32、HPV42、HPV54、HPV3、HPV10、HPV28、HPV29、HPV77、HPV78、HPV94、HPV117、HPV125、HPV160、HPV83、HPV102、HPV89、HPV61、HPV62、HPV72、HPV81、HPV84、HPV86、HPV87、HPV114、HPV2、HPV27、HPV57、HPV71、HPV90、HPV106、HPV26、HPV51、HPV69、HPV82、HPV30、HPV53、HPV56、HPV66、HPV18、HPV45、HPV97、HPV39、HPV68、HPV70、HPV59、HPV85、HPV7、HPV40、HPV43、HPV91、HPV16、HPV31、HPV35、HPV33、HPV58、HPV52、HPV67、HPV6、HPV11、HPV13、HPV44、HPV74、HPV34, HPV73、及びHPV177であり、
前記キットは、ポリメラーゼ連鎖反応用キットであり、
前記試薬は、前記少なくとも65種類のヒトパピローマウイルス遺伝子型を検出できるプライマー対セットを含むか、又は前記少なくとも65種類のヒトパピローマウイルス遺伝子型を検出できるプライマー対セットからなる、
ことを特徴とする、バイオ製品におけるヒトパピローマウイルスの存在を検出するためのキット。
【請求項14】
前記セット中の1つ又は複数のプライマー対は縮退プライマー対である、
ことを特徴とする請求項13に記載のキット。
【請求項15】
前記プライマー対セットは、以下の表2から選択される1つ又は複数のプライマー対を含み、そのうちFとRはそれぞれプライマー対のフォワードプライマーとリバースプライマーを表す、
ことを特徴とする請求項13に記載のキット。
[表2]
ただし、RはA又はGを表し、YはC又はTを表し、MはA又はCを表し、KはG又はTを表し、SはC又はGを表し、WはA又はTを表し、HはA、C又はTを表し、BはC、G又はTを表し、VはA、C又はGを表し、DはA、G又はTを表す。
【請求項16】
前記バイオ製品は、細胞製品又は血液製品から選択される、ことを特徴とする請求項13に記載のキット。
【請求項17】
前記バイオ製品は、細胞製品である、ことを特徴とする請求項13に記載のキット。
【請求項18】
前記バイオ製品は、幹細胞製品である、ことを特徴とする請求項13に記載のキット。
【請求項19】
前記バイオ製品は、間葉系幹細胞製品である、ことを特徴とする請求項13に記載のキット。
【請求項20】
以下の表3のプライマー対を含み、ただし、F及びRは、それぞれプライマー対におけるフォワードプライマー及びリバースプライマーを表すことを特徴とする、バイオ製品におけるヒトパピローマウイルスの存在を検出するためのプライマー対。
[表3]
ただし、RはA又はGを表し、YはC又はTを表し、MはA又はCを表し、KはG又はTを表し、SはC又はGを表し、WはA又はTを表し、HはA、C又はTを表し、BはC、G又はTを表し、VはA、C又はGを表し、DはA、G又はTを表
前記検出は、少なくとも65種類の遺伝子型のヒトパピローマウイルスを検出するステップを含み、
前記65種類の遺伝子型は:HPV32、HPV42、HPV54、HPV3、HPV10、HPV28、HPV29、HPV77、HPV78、HPV94、HPV117、HPV125、HPV160、HPV83、HPV102、HPV89、HPV61、HPV62、HPV72、HPV81、HPV84、HPV86、HPV87、HPV114、HPV2、HPV27、HPV57、HPV71、HPV90、HPV106、HPV26、HPV51、HPV69、HPV82、HPV30、HPV53、HPV56、HPV66、HPV18、HPV45、HPV97、HPV39、HPV68、HPV70、HPV59、HPV85、HPV7、HPV40、HPV43、HPV91、HPV16、HPV31、HPV35、HPV33、HPV58、HPV52、HPV67、HPV6、HPV11、HPV13、HPV44、HPV74、HPV34、HPV73、及びHPV177である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの分野に属し、特に、ヒトパピローマウイルスを検出するための方法及び検出用キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
子宮頸がんは、女性の悪性腫瘍の中で世界第2位であり、全世界で年間約53万人が新たに発症し、最大27万4千人が死亡している。子宮頸がんは、長い時間をかけてゆっくりと発症・進行し、前がん病変から非浸潤がんを経て浸潤がんに至るまで10~20年かかることが多いとされている。子宮頸がんには、可逆的な前がん病変の期間が長いため、前がん病変の段階で診断され、さらに治療や発見が可能であれば、その発生率や死亡率を下げることが極めて重要である。
【0003】
ヒトパピローマウイルス(HPV)はパピローマウイルス科に属し、約8000塩基対(bp)のゲノムを持ち、初期転写領域(E領域)、後期転写領域(L領域)、非転写領域(ロングコントロール領域、LCR)という三つの機能領域に分けられる低分子非エンベロップドの円形の二本鎖DNAウイルスである。HPV感染は、子宮頸部上皮内新生物及び子宮頸がんの主な原因であり、世界的な研究により、子宮頸がん患者の99.7%では、高リスクHPV DNAの存在が検出されることが示されている。現在、ヒトパピローマウイルスの公式分類は、L1領域からの配列タイピングに基づいている(Ethel-Michele de Villiers、Claude Fauquet、Thomas R Broker. Classification of papillomaviruses[J].Virology、2004:324(1): 17-27.)。定義としては、2つのHPV分離株は、この領域で10%以上の配列差違がある場合、異なる型に分類される。国際ヒトパピローマウイルス(HPV)レファレンスセンターが発表したデータによると、HPVの遺伝子型は222種類確認されており、約40種類がヒト生殖器管皮膚粘膜病変と関連しているとされている。中国国家食品薬品監督管理総局(CFDA)が発行した「ヒトパピローマウイルス(HPV)核酸検出及びジェノタイピング、試薬技術の審査ガイドライン」には、WHO国際がん研究機関(IARC)などの研究結果を踏まえ、HPV16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68など13種類の遺伝子型を高リスク、26、53、66、73、82など5種類の遺伝子型を中リスクに分類し、上記18種類のHPV遺伝子型を子宮頸がん関連の見込み診断に用いることを視野に入れて臨床検査することが提言されている。また、細胞製品、血液製品などのバイオ製品の品質、特に安全性を確保するために、ウイルススクリーニングは重要な役割を担っている。中間リスクの遺伝子型を持つHPVウイルスを包括的に検出し、検出率を高め、検査漏れを回避することは、この分野の緊急の技術的課題である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Ethel-Michele de Villiers、Claude Fauquet、Thomas R Broker. Classification of papillomaviruses[J].Virology、2004:324(1): 17-27.
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、同定した222種類のHPV遺伝子型のL1領域のDNA配列を系統樹解析(MegAlignソフトウェア(https://www.dnastar.com/))することにより、これら18種類のHPV遺伝子型が、系統樹において互いに近接していないことを見出した。本発明者らは、上記18種類のHPV遺伝子型をカバーする大きいブランチを見出し、この大きいブランチの下に含まれる特定の遺伝子型を特定し、この拡張された遺伝子型セットを用いて、中~高リスク遺伝子型のHPVウイルスを包括的に検出し、当該分野の緊急技術課題を解決したものである。
【0006】
本発明は、サンプル中のヒトパピローマウイルスの存在を検出する方法を提供し、前記方法は、ヒトパピローマウイルスの少なくとも65種類の遺伝子型を検出するステップを含み、前記65種類の遺伝子型は、以下の通りである:HPV32、HPV42、HPV54、HPV3、HPV10、HPV28、HPV29、HPV77、HPV78、HPV94、HPV117、HPV125、HPV160、HPV83、HPV102、HPV89、HPV61、HPV62、HPV72、HPV81、HPV84、HPV86、HPV87、HPV114、HPV2、HPV27、HPV57、HPV71、HPV90、HPV106、HPV26、HPV51、HPV69、HPV82、HPV30、HPV53、HPV56、HPV66、HPV18、HPV45、HPV97、HPV39、HPV68、HPV70、HPV59、HPV85、HPV7、HPV40、HPV43、HPV91、HPV16、HPV31、HPV35、HPV33、HPV58、HPV52、HPV67、HPV6、HPV11、HPV13、HPV44、HPV74、HPV34、HPV73、とHPV177。
【0007】
いくつかの実施形態では、検出方法はポリメラーゼ連鎖反応を採用し、サンプル中の前記遺伝子型の存在状況を検出し、かつポリメラーゼ連鎖反応結果によってサンプル中にヒトパピローマウイルスが含まれるかどうかを判定する。いくつかの実施形態では、前記ポリメラーゼ連鎖反応は、前記少なくとも65種類の遺伝子型のヒトパピローマウイルスを検出できるプライマー対セットを使用し、そのうち1対又は多対のプライマー対は縮退プライマー対である。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記方法は、以下のステップを含む。
1)サンプルのDNA取得;
2)ステップ1) で得られたDNAと前記少なくとも65種類の遺伝子型ヒトパピローマウイルスを検出できるプライマー対セット中の各ペアのプライマーをそれぞれポリメラーゼ連鎖反応させる;好ましくは、前記セットの1対又は多対のプライマーは縮退プライマー対である;
3)ポリメラーゼ連鎖反応の結果に基づいて、サンプルがヒトパピローマウイルスを含むかどうかを判定する。
【0009】
いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ連鎖反応の結果に基づいてサンプルがヒトパピローマウイルスを含むかどうかを判定し、各ポリメラーゼ連鎖反応の測定Ct値(Threshold Cycle)を設定されたCt参照値と比較し、測定Ct値が参照値より小さい場合、又はポリメラーゼ連鎖反応生成物の溶解度曲線が単峰であり測定Ct値が参照値より小さい場合、ポリメラーゼ連鎖反応結果は陽性であり、 測定Ct値が参照値以上である場合、又は対数増幅曲線がない場合、ポリメラーゼ連鎖反応結果は陰性である;また、ポリメラーゼ連鎖反応結果において、いずれかのプライマーが陽性である場合、サンプルはHPV陽性であり、好ましくは、Ct参照値は30~35、32~35、33~35、34又は35から選択される。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記プライマー対セットは1対又は多対が表1から選択するプライマー対を含み、そのうちFとRはそれぞれプライマー対の上流プライマーと下流プライマーを表す。
【表1】
ここで、RはA又はGを表し、YはC又はTを表し、MはA又はCを表し、KはG又はTを表し、SはC又はGを表し、WはA又はTを表し、HはA、C又はTを表し、BはC、G又はTを表し、VはA、C又はGを表し、DはA、G又はTを表す。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記ポリメラーゼ連鎖反応は、それぞれ40℃~60℃、好ましくは50℃~60℃、より好ましくは55℃の温度でアニーリングされる。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記ポリメラーゼ連鎖反応のサイクル数は、それぞれ30~50、好ましくは35~45、より好ましくは40である。
【0013】
本発明の方法は、in vitro又はex vivoで行われる。本発明に記載されるサンプルは、ex vivoのサンプルである。いくつかの実施形態では、前記サンプルは、細胞、血液又は分泌物から選択される。いくつかの実施形態では、前記サンプルは、細胞、例えば幹細胞、特に間葉系幹細胞である。
【0014】
また、本発明は、前述したヒトパピローマウィルスの少なくとも65種類の遺伝子型を検出できる試薬を含むヒトパピローマウィルス検出用キットを提供するものである。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記試薬は前記少なくとも65種のヒトパピローマウイルス遺伝子型を検出できるプライマー対セットを含むか、又は前記プライマー対セットからなる;好ましくは、前記セットには、1対又は多対のプライマーは縮退プライマー対である;好ましくは、前記プライマー対セットは、表1から選択される1対又は多対のプライマー対を含む。
【0016】
一実施形態では、前記キットは、ポリメラーゼ連鎖反応を採用したアッセイキットである。例えば、前記キットは、前記プライマーに加えて、ポリメラーゼ連鎖反応系の他の構成要素、参照品及び/又は品質管理品等から構成される。前記キットは、上記のような少なくとも65種類のヒトパピローマウイルスの遺伝子型を検出するためのキットの使用方法に関する説明書、又は説明書の入手方法に関する指示を含むこともできる。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記キットは、細胞、血液又は分泌物から選択されるサンプルを検査するためのキットである。例えば、いくつかの実施形態において、前記サンプルは、細胞であり、例えば幹細胞、特に間葉系幹細胞である。
【0018】
本発明はさらにヒトパピローマウイルスの検出に用いる1組のプライマー対を提供し、当該プライマー対は、1対又は多対が表1から選択するプライマー対を含む。いくつかの実施形態に提供されるのは、少なくとも、前述した65種類の遺伝子型のヒトパピローマウイルスを検出できるプライマー対セットであって、当該1組のプライマー対は、表1から選択される1対又は多対のプライマーを含む;当該セットは、例えば、表1に記載された全てのプライマー対を含むか、または表1に記載された全てのプライマー対からなるセットである。
【0019】
また、本発明は、ヒトパピローマウイルスを検出するツールの製造における前述した少なくとも65種類のヒトパピローマウイルス遺伝子型及び/又はこの少なくとも65種類のヒトパピローマウイルス遺伝子型を検出できる試薬の用途を提供する。前記ツールには、ソフトウェア製品及び、キット、機器、装置、システムなどのハードウェア製品も含まれる。一実施形態では、前記試薬は前記少なくとも65種類のヒトパピローマウイルス遺伝子型を検出できるプライマー対セットを含むか、又は前記少なくとも65種類のヒトパピローマウイルス遺伝子型を検出できるプライマー対セットからなる;好ましくは、前記セットには、1対又は多対のプライマーは縮退プライマー対である;好ましくは、前記プライマー対セットは、表1から選択される1対又は多対のプライマー対を含む。
【0020】
本発明はまた、サンプル中のヒトパピローマウイルスの存在を検出するためのシステムを提供し、前記システムは、前述した少なくとも65種類の遺伝子型のヒトパピローマウイルスを検出するための装置を含むものである。前記装置は、前記用途を達成するためのハードウェア、又はプログラムなどのソフトウェア、あるいはその両方を含む。いくつかの実施形態では、前記システムは、子宮頸がんのスクリーニングなどの疾患スクリーニングのための中高リスクのヒトパピローマウイルス遺伝子型を検出するために使用される。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記システムは、ポリメラーゼ連鎖反応によってサンプル中の前記遺伝子型の存在を検出するための装置と、ポリメラーゼ連鎖反応の結果に基づいてサンプルがヒトパピローマウイルスを含むかどうかを判定するための装置とを備える。好ましくは、前記ポリメラーゼ連鎖反応は前記少なくとも65種の遺伝子型のヒトパピローマウイルスを検出できるプライマー対セットを使用し、前記セットには、1対又は多対のプライマー対は縮退プライマー対である。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記システムは、1)サンプルのDNAを得るための装置;2)得られたDNAを、前記少なくとも65の遺伝子型ヒトパピローマウイルスを検出することができるプライマー対セット中の各ペアのプライマーをそれぞれポリメラーゼ連鎖反応を行うための装置;及び3)ポリメラーゼ連鎖反応の結果に基づいて、サンプルがヒトパピローマウイルスを含むかどうかを判定するための装置を含んでいる。好ましくは、前記セットには、1対又は多対のプライマーは縮退プライマー対である。
【0023】
本発明はさらに、コンピュータ可読記憶媒体を提供し、前記記憶媒体には、命令又はコンピュータプログラムは格納され、プロセッサによって前記命令又はコンピュータプログラムが実行されると、サンプル中の少なくとも65種類の遺伝子型ヒトパピローマウィルスの存在を検出するステップは実施される。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記記憶媒体における命令又はコンピュータプログラムがプロセッサによって実行されると、以下のステップが実施される:ポリメラーゼ連鎖反応によってサンプル中の少なくとも65種類の遺伝子型ヒトパピローマウイルスの存在を検出するステップ及びポリメラーゼ連鎖反応の結果に基づいてサンプルがヒトパピローマウイルスを含むかどうかを判定するステップ。好ましくは、前記ポリメラーゼ連鎖反応は前記少なくとも65種の遺伝子型ヒトパピローマウイルスを検出できるプライマー対セットを使用し、前記セット中の1対又は多対のプライマー対は縮退プライマー対である。
【0025】
いくつかの実施形態で、前記記憶媒体における命令又はコンピュータ・プログラムがプロセッサによって実行されると、以下のステップが実施される:1) サンプルのDNAを取得する;2) ステップ1) で得られたDNAと前記少なくとも65種類の遺伝子型ヒトパピローマウイルスを検出できるプライマー対セット中の各ペアのプライマーをそれぞれポリメラーゼ連鎖反応させる;3) ポリメラーゼ連鎖反応の結果にもとづいてサンプルがヒトパピローマウイルスを含むかどうかを判定する。好ましくは、前記セットには、1対又は多対のプライマーは縮退プライマー対である。
【0026】
前記記憶媒体は、コンピュータがアクセス可能な任意の利用可能な媒体であってよい。例えば、前記コンピュータ可読媒体は、RAM、ROM、EEPROM、CD-ROM又は他の光ディスクストレージ、ディスクストレージ又は他の磁気記憶装置、又は命令又はデータ構造の形態でコンセンサスプログラムコードを担持又は格納するために使用でき、コンピュータによってアクセス可能な他の任意の媒体を含んでもよい。
【0027】
本明細書に記載された65種類の遺伝子型は、WHO国際がん研究機関(IARC)に推奨される13種類の高リスク遺伝子型と5種類の中間リスク遺伝子型をカバーしており、かつ65種類の遺伝子型は、すべて系統樹の同じブランチに位置していることから(実施例1~4)、前記65種類の遺伝子型は進化的に近接し、感染者に子宮頸がんを発症するリスクがあるはずとわかる。
【0028】
本発明は、少なくとも前述した65種類の遺伝子型の検出を包括する方法及びツールを提供し、最大限に中高リスクHPV遺伝子型の検出を可能にし、疾患スクリーニングの効率を向上させることができる。一方、本発明に提供される方法及びツールは、サンプルに対して、中高リスクのHPVウイルスの遺伝子型を包括的なモニターを提供するため、検出漏れを最小限に抑え、細胞製品及び血液製品などのバイオ製品の品質、安全性及び品質管理効率をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、実施例1における異なる遺伝子型のHPVウイルスのL1領域のDNA配列アラインメントの系統樹と、その一部の拡大図である。
図2図2は、実施例2における異なる遺伝子型のHPVウイルスのL2領域のDNA配列アラインメントの系統樹と、その一部の拡大図である。
図3図3は、実施例3における異なる遺伝子型のHPVウイルスのE1領域のDNA配列アラインメントの系統樹と、その一部の拡大図である。
図4図4は、実施例4における異なる遺伝子型のHPVウイルスのE6領域のDNA配列アラインメントの系統樹と、その一部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書では、特に明記されていない場合、関係する構成要素又はその好ましい構成要素を互いに組み合わせて、新たな技術的解決策を形成することができる。
【0031】
本明細書では、特に明記されていない場合、本明細書に記載されたすべての実施形態及び好ましい実施形態は、互いに組み合わされて、新しい技術形態を形成することができる。
【0032】
本明細書では、特に明記されていない場合、本明細書に記載されたすべての技術的特徴及び好ましい特徴は、互いに組み合わされて、新しい技術スキームを形成することができる。
【0033】
本明細書で使用する用語「1つ」は、特に断りのない限り「少なくとも1つ」を意味する。
【0034】
本明細書で開示する「範囲」は、下限値もしくは上限値、又はその両方によって定義される。下限値は1つ以上、上限値は1つ以上あってもよい。例えば、下限値と上限値を選択することで、所定の範囲を定義することができる。選択された下限と上限は、特定の範囲の境界を定義する。このように限定できる範囲はすべて包括的であり、組み合わせ可能である。すなわち、任意の下限値を任意の上限値と組み合わせて範囲を形成することができ、このようにして形成されたすべての範囲は、本明細書及び特許請求の範囲に含まれるものとする。例えば、特定のパラメータについて30~50と35~45の範囲が記載されている場合、30~45と35~50の範囲も開示されていると理解されたい。
【0035】
本明細書では、「ポリメラーゼ連鎖反応」を「PCR反応」とも表記する。
【0036】
具体的には、本発明は、ヒトパピローマウィルスの遺伝子型を検出する方法及びそのバイオテクノロジー分野における応用に関する。本発明者らは、見出されたHPV遺伝子型のDNA配列について親族関係解析(系統樹解析)を行うことにより、中国国家食品薬品監督管理局(CFDA)が発行した「ヒトパピローマウィルス(HPV)核酸検出及びジェノタイピング、試薬技術の審査ガイドライン」で推奨する18種類の中高リスクHPV遺伝子型と親族関係近い他のHPV遺伝子型を探し出し、ただし、以下の65種類の遺伝子型のヒトパピローマウイルスを含む:HPV32、 HPV42、 HPV54、 HPV3、 HPV10、 HPV28、 HPV29、 HPV77、 HPV78、 HPV94、 HPV117、 HPV125、 HPV160、 HPV83、 HPV102、 HPV89、 HPV61、 HPV62、 HPV72、 HPV81、 HPV84、 HPV86、 HPV87、 HPV114、 HPV2、 HPV27、 HPV57、 HPV71、 HPV90、 HPV106、 HPV26、 HPV51、 HPV69、 HPV82、 HPV30、 HPV53、 HPV56、 HPV66、 HPV18、 HPV45、 HPV97、 HPV39、 HPV68、 HPV70、 HPV59、 HPV85、 HPV7、 HPV40、 HPV43、 HPV91、 HPV16、 HPV31、 HPV35、 HPV33、 HPV58、 HPV52、 HPV67、 HPV6、 HPV11、 HPV13、 HPV44、 HPV74、 HPV34、 HPV73、及びHPV177。
【0037】
本発明に記載されたヒトパピローマウイルスの遺伝子型の全長配列及び各分割配列(Partition sequence)は、米国国立生物工学情報センター(NCBI)が構築したDNAデータベース(GenBank:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/)、日本DNAデータベース(DDBJ:https://www.ddbj.nie.ac.jp)、ヨーロッパDNAデータベース(EMBI:https://www.embl.org)、及びヒトパピローマウィルスマスターデータベース(Human Reference clones - hpvcenter: https://www.hpvcenter.se/)から得ることができ、又は遺伝子シーケンシングなどの当業者に知られた他の方法によって得ることができる。本発明で用いられる親族関係解析の方法、例えば系統樹解析などは、当業者にはよく知られているである。採用される多重配列アライメント解析ソフトウェアとしては、MegAlign、Cluster X、Muscle、Phylipなどがあり、本発明の具体的な一実施形態においては、MegAlign解析ソフトウェアが採用される。系統樹の構築方法としては、距離ベースの方法(Distance-based methods)、特徴ベース方法(Character-based methods)などが選択されるが、距離ベースの方法が好ましいとされる。
【0038】
本発明に記載された検出方法はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であってもよく、具体的なステップは、DNA変性、アニーリング、延伸とサイクルを含むが、他の本分野の技術者によく知られている検出方法であってもよい。
【0039】
一実施形態では、前記方法は、以下のステップを含む:
1)サンプルのDNA抽出;
具体的なステップは、例えば、サンプルから細胞を調製又は分離すること;細胞は、例えば、1×10~1×10細胞/mlの濃度でPBS中の懸濁液として調製してもよい;細胞を溶解してDNA抽出物を得ること;溶解方法は、機械溶解、化学溶解、酵素溶解及び当該分野で知られている他の細胞溶解方法又はそれらの任意の組み合わせの中から選択してもよい;
2)前記少なくとも65種類の遺伝子型ヒトパピローマウイルスを検出することができるプライマー対を用いて、前記1)で得られたDNA抽出物のポリメラーゼ連鎖反応をそれぞれ行う。
一般に、一つのPCR反応系には、上流プライマー及び下流プライマーを含む1対のプライマーのみを含む;ただし、ポリメラーゼ連鎖反応系は当業者に公知されるものであり、例えば、dNTP、DNAポリメラーゼ、緩衝液等を含む;各PCRの反応系は、一般に、例えば20~50μLであり得る;
3)ポリメラーゼ連鎖反応の結果に基づいて、サンプルがヒトパピローマウイルスを含むかどうかを判定する。
【0040】
別の実施形態では、前記方法は、以下のステップを含む:
1)サンプルのDNA抽出;
具体的なステップとしては、例えば、子宮頸管ブラシから分泌検体を完全に溶出すること;溶出液を回収し、例えば13000rpmの10分間遠心で分離すること;上清を廃棄し、管の底に沈殿物を保持すること;得られた沈殿物を溶解してDNA抽出液を得ること;溶解方法は、機械溶解、化学溶解、酵素溶解及び当該分野で知られている他の細胞溶解方法又はそれらの任意の組み合わせの中から選択してもよい;
2)前記少なくとも65種類の遺伝子型ヒトパピローマウイルスを検出することができるプライマー対を用いて、前記1)で得られたDNA抽出物のポリメラーゼ連鎖反応をそれぞれ行う;
ここで、一つのPCR反応系には、1対のプライマーのみを含む;例えば、複数対のプライマーが同時に検出する際に、それぞれに独立した複数の並列PCR反応系が使用されてもよい;具体的なステップは、例えば、プライマー、dNTP、DNAポリメラーゼ、DNA抽出液、反応緩衝系及び二重蒸留水を混合して、総容量が例えば20~50μLであるPCR反応系になることを含む;任意に、プレートをフィルムで密封し、遠心分離し、増幅・検出ゾーンに移す。
3)ポリメラーゼ連鎖反応の結果に基づいて、サンプルがヒトパピローマウイルスを含むかどうかを判定する。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記DNAポリメラーゼは、Taq DNAポリメラーゼ、Super Taq DNAポリメラーゼ、UlltraPF(商標) DNAポリメラーゼ、LA Taq DNAポリメラーゼ及びTth DNAポリメラーゼを含み、好ましくはTaq DNAポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、前記反応緩衝系は、塩化カリウム(KCl)、塩化マグネシウム(MgCl)、硫酸アンモニウム((NHSO)及びTris-HClを含む。
【0042】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のアニーリング温度は、好ましくは40℃~60℃、より好ましくは50℃~60℃、最も好ましくは55℃であり、サイクル数は30~50、好ましくは35~45、より好ましくは40であってよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ連鎖反応結果によってサンプル中にヒトパピローマウイルスを含むかどうかを判定することは、各ポリメラーゼ連鎖反応の実測Ct値と設定したCt参照値を比較することを含み、実測Ct値が参照値より小さく、又はポリメラーゼ連鎖反応産物の溶解曲線が単峰でかつ実測Ct値が参照値より小さい場合、ポリメラーゼ連鎖反応結果は陽性であり、実測Ct値が参照値より大きい又は等しい、又は対数増幅曲線がない場合、ポリメラーゼ連鎖反応結果は陰性である;また、いずれかのプライマー対のポリメラーゼ連鎖反応の結果は陽性であれば、サンプルHPVの検査結果も陽性である。前記判定は、当業者に公知の他の判定方法であってもよい。
【0044】
Ct参照値の設定は、検出しようとするウイルスDNAの最低コピー数(感度)と関連していることが理解される。例えば、サンプル中のウイルスコピー数が10の場合、そのCt測定値は通常17~18である;サンプル中のウイルスコピー数が10の場合、そのCt測定値は通常21~22である;サンプル中のウイルスコピー数が10の場合、そのCt測定値は通常24~25である;サンプル中のウイルスコピー数が10の場合、そのCt測定値は通常28~29である;サンプル中のウイルスコピー数が100の場合、そのCt値の測定値は通常31~32である;サンプル中のウイルスコピー数が50の場合、そのCt値の測定値は通常32~33である;サンプル中のウイルスコピー数が5~10の場合、そのCt値の測定値は通常約34である。したがって、当業者は、検出の需要に応じて、対応するCt参照値を設定することができる。例えば、本発明のいくつかの実施形態において、Ct参照値は、30~35、32~35、33~35、34又は35に設定されてもよい。一実施形態では、Ct参照値は35である。
【0045】
本願に記載されたプライマー対は、すなわちPCR反応における上流プライマー(「F」で示す)と下流プライマー(「R」で示す)である。PCR反応回数を減らすために、縮退プライマー対を使用してもよく、すなわち一つのプライマー対で複数のHPV遺伝子型を同時に検出することである。
【0046】
一実施形態では、前記プライマー対は、少なくとも65種類の遺伝子型のヒトパピローマウイルスを検出できるプライマーを含み、好ましくは、縮退プライマー対である。縮退プライマー対とは、単一アミノ酸をコードするすべての可能な配列を表すプライマーの混合物を指し、一般に等しい割合の混合物である。縮退プライマー対の配列中、RはA又はG、YはC又はT、MはA又はC、KはG又はT、SはC又はG、WはA又はT、HはA、C又はT、BはC、G又はT、VはA、C又はG、DはA、G又はT、及びNはA、C、G又はTを表す。本願では、好ましは、以下の配列を有するプライマー対を含む。
[配1]
【0047】
いくつかの実施形態では、サンプルは、細胞、血液又は分泌物から選択される。いくつかの実施形態では、サンプルは、細胞であり、例えば幹細胞、特に間葉系幹細胞である。
【0048】
また、本発明は、少なくとも前述した65種類の遺伝子型のヒトパピローマウィルスを検出できる試薬を含むヒトパピローマウィルス検出用キットを提供する。前記試薬はプライマー対を含む又はプライマー対からなってもよく、好ましくは縮退プライマー対である。一実施形態において、本発明のキットは、1対又は多対の表1から選択されるプライマーを含んでいる。前記キットは、ポリメラーゼ連鎖反応を用いるキットであってもよい。例えば、前記キットは、ポリメラーゼ連鎖反応系の他の構成要素も含んで、完全なポリメラーゼ連鎖反応系を形成してもよい。ポリメラーゼ連鎖反応系は当業者によく知られており、テンプレートとプライマー以外の成分は当業者によく知られ、自由に決定されるものであり、例えば、dNTP、DNAポリメラーゼ、バッファーなどである。前記キットは、さらに陰性対照及び陽性対照を含んでいてもよい。前記キットは、細胞、血液、分泌物から選択されるサンプルを検出するために使用することができる。前記細胞は、幹細胞、例えば、間葉系幹細胞であってもよい。
【0049】
また、本発明は、ヒトパピローマウイルスを検出するためのプライマー対セットを提供し、それが、1対又は多対の表1から選択されるプライマーを含む。一実施形態は、少なくとも前述した65種類の遺伝子型ヒトパピローマウイルスを検出可能なプライマー対セットであり、当該セットは、表1に示すプライマー対の全てを含むか、又は、表1に示すプライマー対の全てからなる。
【0050】
以下、本発明を実施形態に関連してさらに詳細に説明する。しかしながら、これらの実施形態は例示のためにのみ記載されており、本発明の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。
【実施例
【0051】
実施例1-異なる遺伝子型のヒトパピローマウィルスのL1領域のDNA配列における系統樹解析
【0052】
1)ヒトパピローマウィルスマスターデータベース(Human Reference clones - hpvcenter:https://www.hpvcenter.se/)、米国国立生物工学情報センター(NCBI)が構築したDNAデータベース(GenBank:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/)、日本DNAデータベース(DDBJ:https://www.ddbj.nig.ac.jp)、ヨーロッパDNAデータベース(EMBI:https://www.embl.org)https://www.embl.org)にクエリを実行し、これまでにDNA配列が確認されているすべての遺伝子型のヒトパピローマウィルスのL1領域の配列を取得し、222種類の遺伝子型のヒトパピローマウィルスのL1領域のDNA配列をダウンロードした。
【0053】
2)得られた222種類の遺伝子型のヒトパピローマウィルスのL1領域DNA配列を、系統樹解析に使用するソフトウェアMegAlign (https://www.dnastar.com/)に取り込み、L1領域DNA配列の比較を行った。
【0054】
3)系統樹解析の結果として(結果は図1を参照)、HPV16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68を含む高リスクHPVと、HPV26、53、66、73、82を含む中リスクHPVとをカバーするブランチ及びそれがカバーするすべてのHPV遺伝子型を見つかり、合計65種類のHPV遺伝子型が確認され、それぞれは、HPV32、 HPV42、 HPV54、 HPV3、 HPV10、 HPV28、 HPV29、 HPV77、 HPV78、 HPV94、 HPV117、 HPV125、 HPV160、 HPV83、 HPV102、 HPV89、 HPV61、 HPV62、 HPV72、 HPV81、 HPV84、 HPV86、 HPV87、 HPV114、 HPV2、 HPV27、 HPV57、 HPV71、 HPV90、 HPV106、 HPV26、 HPV51、 HPV69、 HPV82、 HPV30、 HPV53、 HPV56、 HPV66、 HPV18、 HPV45、 HPV97、 HPV39、 HPV68、 HPV70、 HPV59、 HPV85、 HPV7、 HPV40、 HPV43、 HPV91、 HPV16、 HPV31、 HPV35、 HPV33、 HPV58、 HPV52、 HPV67、 HPV6、 HPV11、 HPV13、 HPV44、 HPV74、 HPV34、 HPV73、及びHPV177である。
【0055】
実施例2:異なる遺伝子型のヒトパピローマウィルスのL2領域のDNA配列における系統樹解析
【0056】
1)ヒトパピローマウィルスマスターデータベース(Human Reference clones - hpvcenter:https://www.hpvcenter.se/)、米国国立生物工学情報センター(NCBI)が構築したDNAデータベース(GenBank:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/)、日本DNAデータベース(DDBJ:https://www.ddbj.nig.ac.jp)、ヨーロッパDNAデータベース(EMBI:https://www.embl.org)https://www.embl.org)にクエリを実行し、これまでにDNA配列が確認されているすべての遺伝子型のヒトパピローマウィルスのL2領域の配列を取得し、221種類の遺伝子型のヒトパピローマウィルスのL2領域のDNA配列をダウンロードした。
【0057】
2)得られた221種類の遺伝子型のヒトパピローマウィルスのL2領域DNA配列を、系統樹解析に使用するソフトウェアMegAlign (https://www.dnastar.com/)に取り込み、L2領域DNA配列の比較を行った。
【0058】
3)系統樹解析の結果として(結果は図2を参照)、HPV16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68を含む高リスクHPVと、HPV26、53、66、73、82を含む中リスクHPVとをカバーするブランチ及びそれがカバーするすべてのHPV遺伝子型を見つかり、合計65種類のHPV遺伝子型が確認され、それぞれは、HPV32、 HPV42、 HPV54、 HPV3、 HPV10、 HPV28、 HPV29、 HPV77、 HPV78、 HPV94、 HPV117、 HPV125、 HPV160、 HPV83、 HPV102、 HPV89、 HPV61、 HPV62、 HPV72、 HPV81、 HPV84、 HPV86、 HPV87、 HPV114、 HPV2、 HPV27、 HPV57、 HPV71、 HPV90、 HPV106、 HPV26、 HPV51、 HPV69、 HPV82、 HPV30、 HPV53、 HPV56、 HPV66、 HPV18、 HPV45、 HPV97、 HPV39、 HPV68、 HPV70、 HPV59、 HPV85、 HPV7、 HPV40、 HPV43、 HPV91、 HPV16、 HPV31、 HPV35、 HPV33、 HPV58、 HPV52、 HPV67、 HPV6、 HPV11、 HPV13、 HPV44、 HPV74、 HPV34、 HPV73、及びHPV177である。
【0059】
実施例3-異なる遺伝子型のヒトパピローマウィルスのE1領域のDNA配列における系統樹解析
【0060】
1)ヒトパピローマウィルスマスターデータベース(Human Reference clones - hpvcenter:https://www.hpvcenter.se/)、米国国立生物工学情報センター(NCBI)が構築したDNAデータベース(GenBank:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/)、日本DNAデータベース(DDBJ:https://www.ddbj.nig.ac.jp)、ヨーロッパDNAデータベース(EMBI:https://www.embl.org)https://www.embl.org)にクエリを実行し、これまでにDNA配列が確認されているすべての遺伝子型のヒトパピローマウィルスのE1領域の配列を取得し、220種類の遺伝子型のヒトパピローマウィルスのE1領域のDNA配列をダウンロードした。
【0061】
2)得られた220種類の遺伝子型のヒトパピローマウィルスのE1領域DNA配列を、系統樹解析に使用するソフトウェアMegAlign (https://www.dnastar.com/)に取り込み、E1領域DNA配列の比較を行った。
【0062】
3)系統樹解析の結果として(結果は図3を参照)、HPV16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68を含む高リスクHPVと、HPV26、53、66、73、82を含む中リスクHPVとをカバーするブランチ及びそれがカバーするすべてのHPV遺伝子型を見つかり、合計65種類のHPV遺伝子型が確認され、それぞれは、HPV32、 HPV42、 HPV54、 HPV3、 HPV10、 HPV28、 HPV29、 HPV77、 HPV78、 HPV94、 HPV117、 HPV125、 HPV160、 HPV83、 HPV102、 HPV89、 HPV61、 HPV62、 HPV72、 HPV81、 HPV84、 HPV86、 HPV87、 HPV114、 HPV2、 HPV27、 HPV57、 HPV71、 HPV90、 HPV106、 HPV26、 HPV51、 HPV69、 HPV82、 HPV30、 HPV53、 HPV56、 HPV66、 HPV18、 HPV45、 HPV97、 HPV39、 HPV68、 HPV70、 HPV59、 HPV85、 HPV7、 HPV40、 HPV43、 HPV91、 HPV16、 HPV31、 HPV35、 HPV33、 HPV58、 HPV52、 HPV67、 HPV6、 HPV11、 HPV13、 HPV44、 HPV74、 HPV34、 HPV73、及びHPV177である。
【0063】
実施例4-異なる遺伝子型のヒトパピローマウィルスのE6領域のDNA配列における系統樹解析
【0064】
1)ヒトパピローマウィルスマスターデータベース(Human Reference clones - hpvcenter:https://www.hpvcenter.se/)、米国国立生物工学情報センター(NCBI)が構築したDNAデータベース(GenBank:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/)、日本DNAデータベース(DDBJ:https://www.ddbj.nig.ac.jp)、ヨーロッパDNAデータベース(EMBI:https://www.embl.org)https://www.embl.org)にクエリを実行し、これまでにDNA配列が確認されているすべての遺伝子型のヒトパピローマウィルスのE6領域の配列を取得し、214種類の遺伝子型のヒトパピローマウィルスのE6領域のDNA配列をダウンロードした。
【0065】
2)得られた214種類の遺伝子型のヒトパピローマウィルスのE6領域DNA配列を、系統樹解析に使用するソフトウェアMegAlign (https://www.dnastar.com/)に取り込み、E1領域DNA配列の比較を行った。
【0066】
3)系統樹解析の結果として(結果は図4参照)、HPV16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68を含む高リスクHPVと、HPV26、53、66、73、82を含む中リスクHPVとをカバーするブランチ及びそれがカバーするすべてのHPV遺伝子型を見つかり、合計65種類のHPV遺伝子型が確認され、それぞれは、HPV32、 HPV42、 HPV54、 HPV3、 HPV10、 HPV28、 HPV29、 HPV77、 HPV78、 HPV94、 HPV117、 HPV125、 HPV160、 HPV83、 HPV102、 HPV89、 HPV61、 HPV62、 HPV72、 HPV81、 HPV84、 HPV86、 HPV87、 HPV114、 HPV2、 HPV27、 HPV57、 HPV71、 HPV90、 HPV106、 HPV26、 HPV51、 HPV69、 HPV82、 HPV30、 HPV53、 HPV56、 HPV66、 HPV18、 HPV45、 HPV97、 HPV39、 HPV68、 HPV70、 HPV59、 HPV85、 HPV7、 HPV40、 HPV43、 HPV91、 HPV16、 HPV31、 HPV35、 HPV33、 HPV58、 HPV52、 HPV67、 HPV6、 HPV11、 HPV13、 HPV44、 HPV74、 HPV34、 HPV73,及び HPV177である。
【0067】
実施例5-65種類のヒトパピローマウイルス遺伝子型の縮退プライマー対の検証
【0068】
(I) プライマーの設計と合成
65種類のヒトパピローマウイルスの全ゲノムをアラインメントすることにより、この65種類を18つのグループに分け、同じグループのヒトパピローマウイルス遺伝子型に対して、縮退プライマー対を設計した(表3を参照)。縮退プライマー対を人工的に合成し、縮退プライマー対の感度合格閾値を5-100コピー数に設定した。
【0069】
(II) 対照群と実験群の設定
陰性対照1:水対照;
陰性対照2:gDNA陰性対照;
陽性対照:gDNA陽性対照;
実験群:gDNAテンプレートに加え、人工的に合成されたHPV遺伝子型を含むフラグメントテンプレートである。HPV遺伝子型フラグメントテンプレートの具体的な配列を表2に示す。表中の遺伝子IDは、国際ヒトパピローマウイルスリファレンスセンター(International Human Papillomavirus (HPV) Reference Center)に公開されたデータである(https://www.hpvcenter.se/human_reference_clones/)。
【0070】
gDNA陽性対照とgDNA陰性対照中のテンプレートは、いずれもHPV感染していないヒト細胞から抽出したゲノムDNAであり、本明細書には、「gDNAテンプレート」とも呼ばれ、上海斯信生物科技有限会社から購入し、製品名「ヒト骨髄間葉系幹細胞のゲノムDNA (HMSC-bm gDNA)」である。
【0071】
gDNA陽性対照に加えるプライマーは、ヒトβ-Globinプライマー(配列は、F:GAAGAGCCAAGGACAGGTAC、R:CAACTTCATCCACGTTCACC)である。水対照とgDNA陰性対照に添加したプライマーは、すべて表3に示したプライマー対であり、各PCR系には、それぞれにその中の1対のプライマーを含み、これによって、18個の異なるプライマー対の水対照を並行するPCR反応系と、18個の異なるプライマー対のgDNA陰性対照を並行するPCR反応系を形成した。実験群では、65個のHPV遺伝子型テンプレートが、それぞれ表3に示すコピー数に基づき、それに位置するグループのプライマー対と反応し、そして65個の異なるHPV遺伝子型テンプレートを並行するPCR反応系を形成した。
【表2】
【0072】
(III) 核酸増幅準備
【0073】
1)96ウェルPCRプレートを氷の上に置いて待機した。
【0074】
2)以下のような組成の対照群と実験群のPCRシステムを加えた:
[例5-1]
【0075】
3)フィルムでプレートをシールし、2000rpm、1分間、増幅・検出ゾーンに移した。
【0076】
(IV) PCR増幅
【0077】
1)PCR増幅パラメーターは、94℃30秒間変性した;94℃5秒、55℃15秒、72℃35秒のサイクルを40回繰り返した。
【0078】
2)72℃で蛍光値を測定し、蛍光値変化曲線、すなわちS字対数増幅曲線にしたがってCtの結果を読み取った。
【0079】
3)品質管理は下表のとおりです。
[例5-2]
【0080】
(V) 結果分析
【0081】
本研究では、Ct値35を参照閾値とした。PCR産物の溶解曲線が単峰で、かつCt値が35以下の場合を陽性、Ct値が35以上又は対数増幅曲線がない場合を陰性と判定した。
【0082】
水対照とgDNA陰性対照の結果が陰性であり、gDNA陽性対照の結果が陽性であり、かつ実験グループの結果が陽性である場合、当該縮退プライマー対は、その対応グループのHPV遺伝子型を拡大できると考え、この検証結果を陽性と定義した。65種類のHPV遺伝子型の縮退プライマー対の検証結果を表3に示す。
【0083】
【表3】
【0084】
具体的には、水対照とgDNA陰性対照のそれぞれ18個のPCR反応系では、S型対数増幅曲線がみられなかったため、結果を陰性となった。gDNA陽性対照のPCR産物は、単峰性溶解曲線であり、Ct値が22となり、35以下であったため、陽性と判定された。実験群の65個のPCR産物は、すべてCt値が31から34の間の単峰性溶解曲線であり、いずれも35以下であった。そして、プライマー対は、すべて陽性であることが検証された。
【0085】
実施例6 - 細胞サンプル中のヒトパピローマウイルスの検出
【0086】
(I) サンプル処理とDNA抽出
【0087】
1)毛包から得たMSCを1×10/mlの濃度になるようにPBSに懸濁し、その5~10μLを250μLのライセート、すなわちQuickExtract(商標)DNA 抽出液に添加した。
【0088】
2)15秒間振盪混合、65℃6分間水浴し、取り出して15秒間振盪混合し、瞬間遠心分離し、98℃で2分間の水浴し、取り出して 15 秒間振盪混合、瞬間遠心分離して細胞溶解上清を得、すぐに使用するか、又は-20℃で保存した。
【0089】
本実施形態では、ヒトパピローマウイルスを人工的に添加することで、サンプルがHPVウイルスに感染又は汚染された状況を再現し、そして本方法でサンプル中のHPV感染状況を検出する可能性を検証する。
【0090】
(II)対照群と実験群の設定
陰性対照:10μL PBS+250μL QuickExtract(商標)DNA抽出液
陽性対照:MSCライセート上清
実験群:人工的に合成したHPV61、HPV84、HPV26フラグメントテンプレート入りMSCライセート上清(各100コピー)
陽性対照に加えたプライマーは、ヒトβ-Globinプライマー(配列は、F:GAAGAGCCAAGGACAGGTAC、R:CAACTTCATCCACGTTCACC)である。陰性対照に加えたプライマーは、表4に示した18個の縮退プライマー対であり、それぞれ18個のPCR反応系を形成し、それぞれ増幅させた。実験群に加えたプライマーは表4に示した18個の縮退プライマー対であり、それぞれ18個のPCR反応系を形成し、それぞれ増幅させた。
【0091】
(III) 核酸増幅準備
【0092】
1)96ウェルPCRプレートを氷の上に置いて待機した。
【0093】
2)以下のような組成の対照群と実験群のPCRシステムを加えた:
[例6-1]
【0094】
3) フィルムでプレートをシールし、2000rpm、1分間、増幅・検出ゾーンに移した。
【0095】
(IV) PCR増幅
【0096】
1)PCR増幅パラメーターは、94℃30秒間変性した;94℃5秒、55℃15秒、72℃35秒のサイクルを40回繰り返した。
【0097】
2)72℃で蛍光値を測定し、蛍光値変化曲線、すなわちS字対数増幅曲線にしたがってCtの結果を読み取った。
【0098】
3)品質管理は下表のとおりです。
[例6-2]
【0099】
(V) 結果分析
【0100】
研究では、35のCt値を本検出方法の参照閾値とした。PCR産物の溶解曲線が単峰で、かつCt値が35以下の場合を陽性と判定した;Ct値が35以上又は対数増幅曲線がない場合を陰性と判定した。
【0101】
陰性対照の結果が陰性であり、陽性対照の結果が陽性であり、かつ実験群のいずれかプライマー対のPCR反応が陽性である場合、当該プライマー対に対応するHPV遺伝子型を検出したことと見なされ、陽性と標記し、同時に、当該サンプルのウイルス検出結果も陽性であり、即ちHPVウイルスに感染されたと見なされる。試験結果を表4に示す。
【表4】
【0102】
具体的には、陰性対照の18個PCR反応系は、いずれもS字対数増幅曲線を示さず、陰性という結果となった。陽性対照のPCR反応産物は、単峰性溶解曲線であり、Ct値が29で、35以下であるため、陽性と判定された。実験群の中で、第4、第5と第8グループのプライマー対のPCR反応産物は、すべて単峰型溶解曲線で、Ct値は31と32の間にあり、すべて35より小さく、そして検出結果は陽性である;実験群の他のプライマー対には、いずれも対数増幅曲線がなかったため、結果は陰性である。
【0103】
上記のPCRの結果によれば、細胞サンプルのHPV検出結果は、陽性である。
【0104】
実施例7-子宮頸部分泌物サンプル中のヒトパピローマウイルスの検出
【0105】
(I) サンプル処理とDNA抽出
【0106】
1)子宮頸ブラシから検体を完全に溶出させ、チューブの壁面でブラシを絞り乾燥させた後、ブラシを廃棄する。溶出液全体を 1.5 mlのマイクロ遠心チューブに移し、13000 rpm で 10 分間遠心して、上清を捨て、チューブの底の沈殿物を保持し、サンプルの沈殿物に50 μL のライセート、すなわちQuickExtract(商標) DNA Extraction Solution を添加した。
【0107】
2) 15 秒間振盪混合、65℃6分間で水浴し、取り出して 15 秒間振盪混合、瞬間遠心し、98℃2 分間で水浴し、取り出して15 秒間振盪混合し、瞬間遠心して分泌物ライセートの上清を得、直ちに使用するか、又は-20℃で保存した。
【0108】
本実施形態では、ヒトパピローマウイルスを人工的に添加することで、サンプルがHPVウイルスに感染又は汚染された状況を再現し、本方法でサンプル中のHPV感染状況を検出する可能性を検証する。
【0109】
(II) 対照群と実験群の設定
陰性対照:QuickExtract(商標) DNA 抽出液
陽性対照:分泌物ライセート上清
実験群:分泌物ライセート上清に人工的に合成したHPV42、HPV28、HPV102フラグメントテンプレート(各100コピー)を添加したもの
陽性対照に加えたプライマーは、ヒトβ-Globinプライマープライマー(配列は、F:GAAGAGCCAAGGACAGGTAC、R:CAACTTCATCCACGTTCACC)、陰性対照に加えたプライマーは、表5に示した18個の縮退プライマー対で、それぞれ18個のPCR反応系を形成して、それぞれ増幅させた。実験群に加えたプライマーは、表5に示した18個の縮退プライマー対であり、それぞれ18個のPCR反応系を形成し、それぞれ増幅させた。
【0110】
(III) 核酸増幅準備
【0111】
1)96ウェルPCRプレートを氷の上に置いて待機した;
【0112】
2)以下のような組成の対照群と実験群のPCRシステムを加えた:
[例7-1]
【0113】
3)フィルムでプレートをシールし、2000rpm、1分間、増幅・検出ゾーンに移した。
【0114】
(IV) PCR増幅
【0115】
1)PCR増幅パラメーターは、94℃30秒間変性した;94℃5秒、55℃15秒、72℃35秒のサイクルを40回繰り返した。
【0116】
2)72℃で蛍光値を測定し、蛍光値変化曲線、すなわちS字対数増幅曲線にしたがってCtの結果を読み取った。
【0117】
3) 品質管理は下表のとおりです。
[例7-2]
【0118】
(V) 結果分析
【0119】
研究では、35のCt値を本検出方法の参照閾値とした。PCR産物の溶解曲線が単峰で、かつCt値が35以下の場合、陽性と判定した;Ct値が35以上又は対数増幅曲線がない場合、陰性と判定した。
【0120】
陰性対照の結果が陰性であり、陽性対照の結果が陽性であり、かつ実験群中のいずれかのプライマー対のPCR反応が陽性である場合、当該プライマー対に対応するHPV遺伝子型を検出したことと見なされ、陽性と標記し、同時に当該サンプルのウイルス検出結果も陽性であり、HPVウイルスに感染したと見なされる。試験結果を表5に示す。
【0121】
【表5】
【0122】
具体的には、陰性対照の18個のPCR反応系はいずれもS字対数増幅曲線を示さず、陰性と判定された。陽性対照のPCR産物は単峰型溶解度曲線で、Ct値は30であり、35以下であったため、結果は陽性であった。実験群の中で、第1、第2と第3グループのプライマー対のPCR産物は、すべて単峰型溶解曲線で、Ct値は31から32までの間であり、すべて35より小さく、そのため、検出結果は陽性であった;実験群の他のプライマー対には、いずれも対数増幅曲線がなかったため、結果は陰性であった。
【0123】
上記のPCR反応結果から、子宮頸部分泌物サンプルはHPV陽性と判定された。
【0124】
具体的な実施例を説明したが、本発明の主題及び範囲から逸脱することなく、様々な変形及び変更が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲には、本発明の範囲内で、そのようなすべての変形が含まれる。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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