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  • 特許-インクジェットインク 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】インクジェットインク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20240401BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
C09D11/30
B41M5/00 120
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022538081
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 US2019068010
(87)【国際公開番号】W WO2021126264
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 雄大
(72)【発明者】
【氏名】サンカー ダニエル
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0291816(US,A1)
【文献】特開2004-098382(JP,A)
【文献】特開2003-268166(JP,A)
【文献】特開2000-007854(JP,A)
【文献】特開2020-186344(JP,A)
【文献】特開昭63-051483(JP,A)
【文献】特開昭60-120771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-54
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)テルペンフェノール樹脂と、
(B)式(I)の化合物と、
(D)エタノールと、
(E)1-プロパノール
とを含有するインクジェットインク。
【化1】

(式中、Rは8~22個の炭素原子を有するアルキル基又は8~22個の炭素原子を有するアルケニル基であり、nは0又は1であり、pは1~40の整数であり、qは1~40の整数である。)
【請求項2】
前記テルペンフェノール樹脂(A)が、モノテルペンと、少なくとも1つの水酸基と、前記少なくとも1つの水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位にある少なくとも2つの置換可能な水素原子とを含むフェノール化合物との共重合体である、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項3】
前記モノテルペンが、3-カレン、α-ピネン、β-ピネン及びカンフェンからなる群から選択される少なくとも1つの二環式モノテルペンである、請求項2に記載のインクジェットインク。
【請求項4】
前記フェノール化合物がフェノールである、請求項2又は3に記載のインクジェットインク。
【請求項5】
前記テルペンフェノール樹脂(A)の水酸基価が10~75mgKOH/gである、請求項1~4のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項6】
前記テルペンフェノール樹脂(A)が、前記インクジェットインクの総重量に基づいて0.1~10重量%の量で存在する、請求項1~5のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項7】
前記化合物(B)が、前記インクジェットインクの総重量に基づいて5重量%までの量で存在する、請求項1~6のいずれか記載のインクジェットインク。
【請求項8】
前記テルペンフェノール樹脂(A)と前記化合物(B)との重量比((A):(B))が1:1~5:1である、請求項1~7のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項9】
nが0である、請求項1~8のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項10】
nが1である、請求項1~8のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項11】
(C)アルカノールアミンを更に含有し、前記アルカノールアミン(C)が、前記インクジェットインクの総重量に基づいて0.1~10重量%の量で存在する、請求項1~10のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項12】
前記アルカノールアミン(C)が、エタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項11に記載のインクジェットインク。
【請求項13】
前記インクジェットインク中のエタノール(D)及び1-プロパノール(E)の合計重量((D)+(E))が、前記インクジェットインクの総重量に基づいて50~95重量%である、請求項1~12のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項14】
(F)シリコーンアクリレート共重合体を更に含有する、前記シリコーンアクリレート共重合体(F)が、前記インクジェットインクの総重量に基づいて、5重量%までの量で存在する、請求項1~13のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項15】
(G)着色剤を更に含有する、請求項1~14のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項16】
基材と、前記基材上に配置された請求項1~15のいずれかに記載のインクジェットインクの乾燥形態とを含む、印刷物。
【請求項17】
基材上に印刷画像を形成する方法であって、サーマルインクジェットプリントヘッドを用いて請求項1~15のいずれかに記載のインクジェットインクを前記基材上に塗布することと、前記インクジェットインクを乾燥させることとを含む、方法。
【請求項18】
前記インクジェットインクが、30秒間以下の間空気に曝されたままにすることによって乾燥される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記インクジェットインクを乾燥させるためにヒーターを使用しない、請求項17又は18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインクに関し、具体的には、(A)テルペンフェノール樹脂と、(B)特定の式の化合物とを含有するインクジェットインクに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で提供される「背景技術」の説明は、本開示の文脈を一般的に提示するためのものである。この背景技術の項に記載されている範囲での本発明者らの研究、及び出願時に従来技術とみなされない可能性がある説明の態様は、本発明に対する従来技術として明示的にも暗示的にも認められない。
【0003】
サーマルインクジェット(TIJ)印刷は、連続式インクジェット法等の当分野で競合する技術よりも低コストで高い印刷解像度を提供するので、印刷、コーディング、及びマーキングに望ましい技術である。サーマルインクジェット印刷プロセスでは、プリントカートリッジは一連の小さなチャンバを含み、各チャンバはヒーターを含み、インク溶媒の熱蒸発からインク液滴を生成する。噴射プロセスでは、抵抗器が急速に加熱されて蒸気泡を生成し(これが「バブルジェット」という言葉の由来である)、続いてオリフィスから液滴を噴射する。このプロセスは極めて効率的かつ再現可能であり、工業用グラフィックス用途のための最新のTIJプリントヘッドは、36kHz以上の周波数で4pL以下の体積の均一な液滴を生成することができる。
【0004】
しかしながら、サーマルインクジェット印刷は、経時的な信頼性の低下が問題となり得る。例えば、いくつかのインクジェットインクは、キャップされていないプリントヘッド内の空気への長期曝露による溶媒損失が、プリントヘッドノズルの目詰まり/詰まりをもたらし、したがって、経時的な信頼性のないインク噴射及び印刷品質(PQ)浸食をもたらす、不十分なデキャップ挙動(例えば、短いデキャップ時間)に悩まされる。他方で、キャップされていないプリントヘッド設定におけるこのような早期の溶媒損失を防止するために考案された高沸点成分を有する特別な溶媒系の使用は、長い乾燥時間を必要とし、したがって、全体的に非効率的な印刷プロセスとなる。そのため、デキャップ時間(溶媒損失の速度が速すぎる場合)と乾燥時間(溶媒損失の速度が遅すぎる場合)という相反する問題のバランスをとることがしばしば困難である。
【0005】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる特許文献1は、保湿剤と組み合わせてテルペンフェノール樹脂を利用することにより、乾燥時間とデキャップ時間との間の妥当なバランスを有するインクシステムを開示している。しかしながら、デキャップ及び乾燥時間性能の更なる改善が依然として必要である。
【0006】
インクが妥当な乾燥時間及びデキャップ時間を示す場合であっても、サーマルインクジェット印刷において遭遇する別の問題は、大量(例えば、200+ページ)印刷操作中であり、これは、印刷ページ数が増加するにつれて、特に冬季又は他の低湿度条件中に、静電荷が徐々に蓄積する傾向がある。印刷装置内で発生する静電荷の蓄積は、印刷品質に影響を及ぼす多くの問題を引き起こす可能性があり、そのうちの1つは、一度でも印刷が停止することによる、プリントヘッドのノズルの中及び周囲へのポリマー及び着色剤等の固体インク成分の蓄積(静電付着)である。結果として、印刷が再開されると、短い(例えば、1分間)ダウンタイムの後であっても、固体インク成分の蓄積がノズル(複数可)の目詰まり/詰まりを引き起こし、又はそうでなければインク経路を誤った方向に向ける可能性があり、印刷品質の低下を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2015/0291816号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のことを考慮して、延長されたデキャップ時間を有し、一旦適用されると迅速に乾燥し、そして静電気の誘発によるノズルの目詰まり/詰まりの影響を最小化することによって、大量印刷操作中に信頼できる印刷品質を提供するインクジェットインクが必要とされている。
【0009】
したがって、本発明の1つの目的は、これらの基準を満たす新規なインクジェットインクを提供することである。
本開示の別の目的は、インクジェットインクの乾燥形態を含む、新規な印刷物を提供することである。
本開示の別の目的は、インクジェットインクを基材上に塗布し、乾燥させることによって、基材上に印刷画像を形成する新規な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下の詳細な説明の中で明らかになるこれら及び他の目的は、テルペンフェノール樹脂と化合物(以下に論じる)との組合せが、予想外にも、デキャップ時間の延長、適用後の速乾性、及び大量印刷操作中の信頼できる印刷品質を特徴とするインクジェットインクを提供するという本発明者らの発見によって達成された。
【0011】
したがって、本発明は以下を提供する。
(1)(A)テルペンフェノール樹脂と、
(B)式(I)の化合物
とを含有するインクジェットインク。
【化1】
(式中、Rは8~22個の炭素原子を有するアルキル基又は8~22個の炭素原子を有するアルケニル基であり、nは0又は1であり、pは1~40の整数であり、qは1~40の整数である。)
(2)前記テルペンフェノール樹脂(A)が、モノテルペンと、少なくとも1つの水酸基と、前記少なくとも1つの水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位にある少なくとも2つの置換可能な水素原子とを含むフェノール化合物との反応から形成される共重合体である、(1)に記載のインクジェットインク。
(3)前記モノテルペンが、3-カレン、α-ピネン、β-ピネン及びカンフェンからなる群から選択される少なくとも1つの二環式モノテルペンである、(2)に記載のインクジェットインク。
(4)前記フェノール化合物がフェノールである、(2)又は(3)に記載のインクジェットインク。
(5)前記テルペンフェノール樹脂(A)の水酸基価が10~75mgKOH/gである、(1)~(4)のいずれかに記載のインクジェットインク。
(6)前記テルペンフェノール樹脂(A)が、前記インクジェットインクの総重量に基づいて0.1~10重量%の量で存在する、(1)~(5)のいずれかに記載のインクジェットインク。
(7)前記化合物(B)が、前記インクジェットインクの総重量に基づいて5重量%までの量で存在する、(1)~(6)のいずれかに記載のインクジェットインク。
(8)前記テルペンフェノール樹脂(A)と前記化合物(B)との重量比((A):(B))が1:1~5:1である、(1)~(7)のいずれかに記載のインクジェットインク。
(9)nが0である、(1)~(8)のいずれかに記載のインクジェットインク。
(10)nが1である、(1)~(8)のいずれかに記載のインクジェットインク。
(11)(C)アルカノールアミンを更に含有し、前記アルカノールアミン(C)が、前記インクジェットインクの総重量に基づいて0.1~10重量%の量で存在する、(1)~(10)のいずれかに記載のインクジェットインク。
(12)前記アルカノールアミン(C)が、エタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも1つである、(11)に記載のインクジェットインク。
(13)(D)エタノール及び(E)1-プロパノールを更に含有する、(1)~(12)のいずれかに記載のインクジェットインク。
(14)前記インクジェットインク中のエタノール(D)及び1-プロパノール(E)の合計重量((D)+(E))が、前記インクジェットインクの総重量に基づいて50~95重量%である、(13)に記載のインクジェットインク。
(15)(F)シリコーンアクリレート共重合体を更に含有し、前記シリコーンアクリレート共重合体(F)が、前記インクジェットインクの総重量に基づいて、5重量%までの量で存在する、(1)~(14)のいずれかに記載のインクジェットインク。
(16)(G)着色剤を更に含有する、(1)~(15)のいずれかに記載のインクジェットインク。
(17)基材と、前記基材上に配置された(1)~(16)のいずれかに記載のインクジェットインクの乾燥形態とを含む、印刷物。
(18)基材上に印刷画像を形成する方法であって、サーマルインクジェットプリントヘッドを用いて(1)~(16)のいずれかに記載のインクジェットインクを前記基材上に塗布することと、前記インクジェットインクを乾燥させることとを含む、方法。
(19)前記インクジェットインクが、30秒間以下の間空気に曝されたままにすることによって乾燥される、(18)に記載の方法。
(20)前記インクジェットインクを乾燥させるためにヒーターを使用しない、(18)又は(19)に記載の方法。
【0012】
前述の段落は、一般的な紹介のために提供されたものであり、以下の特許請求の範囲を限定することを意図したものではない。記載された実施形態は、更なる利点と共に、添付図面と併せて考慮される場合、以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、連続的な大量印刷実行(印刷#500、上)の終わりに実施例のインクジェットインク1、2、及び7によって製造された印刷画像(左から右へ:ユニバーサル製品コード(UPC)12バーコード、2Dデータマトリックス、及びパージバー)と、1分間のダウンタイム後に再印刷された同じ印刷画像(印刷#501、下)との比較である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明では、他の実施形態が利用されてもよく、本明細書に開示される本実施形態の範囲から逸脱することなく、構造的及び動作的変更が行われてもよいことを理解されたい。
【0015】
「実質的に含有しない」という語句は、特に明記しない限り、インクジェットインク中の特定の成分の量が、インクジェットインクの総重量に対して1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満、更により好ましくは0.05重量%未満、なお更により好ましくは0重量%であることを表す。
【0016】
本明細書で使用される場合、「任意選択の」又は「任意選択で」という用語は、続いて記載される事象が起こる可能性もあり、起こらない可能性もあること、又は続いて記載される成分が存在するかもしれず、存在しないかもしれない(例えば、0重量%)ことを意味する。
【0017】
「アルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、1~22個の炭素原子、好ましくは2~20個の炭素原子、好ましくは3~18個の炭素原子を有する直鎖状、分枝状、又は環状の飽和脂肪族フラグメントを指す。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、ラウリル、ミリスチル、セチル、ステアリル等が挙げられ、ゲルベ型アルキル基(例えば、2-メチルペンチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルへプチル、2-ブチルオクチル、2-ペンチルノニル、2-ヘキシルデシル、2-ヘプチルウンデシル、2-オクチルドデシル、2-ノニルトリデシル、2-デシルテトラデシル、及び2-ウンデシルペンタデシル)を含むが、これらに限定されない。シクロアルキルは環化アルキル基の一種である。例示的なシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル、及びアダマンチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、別段の指定がない限り、2~22個の炭素原子、好ましくは3~20個の炭素原子、好ましくは4~18個の炭素原子を有し、そして少なくとも1つの不飽和部位を含む、直鎖状、分枝状、又は環状の脂肪族フラグメントを指す。アルケニル基の例としては、ビニル、アリル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、オレイル、リノレイル等が挙げられ、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル等のシクロアルケニル基が含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、芳香環中に炭素のみを含む芳香族基(例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル等)を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「脂肪族」という用語は、水素及び8~22個のいずれかの炭素原子から構成され、完全に飽和していても部分的に不飽和であってもよく、場合により水酸基、アミン基、又はカルボキシ基(例えば、カルボン酸)等の極性官能基に結合していてもよい、長鎖(直鎖状)疎水性部分を有する化合物を意味する。
【0021】
「(メタ)アクリレート」という用語は、本明細書では、アクリレート基及びメタクリレート基の両方を指すために使用される。言い換えれば、この用語は、「メタ」が任意選択であると読まれるべきである。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリル酸系化合物及びアクリル酸エステル系化合物の両方を総称して用いるものとする。
【0022】
本明細書における「デキャップ挙動」という用語は、空気に長期間曝された場合に、インクジェットインクがプリントヘッドから容易に吐出する能力を意味する。インクジェットインクの「デキャップ時間」は、潜在的に印刷再開時の目詰まりや詰まりが原因で、プリンタのノズルが適切に発射しなくなる前に、インクジェットプリントヘッドのキャップを外したままにしておくことができる時間として測定される。一般的に、ノズルは、溶媒の損失、インクの痂皮化、及び/又はノズル内及び/又はノズル周辺の様々なインク成分のコゲーションの結果としてノズル内に形成される粘性プラグによって、目詰まりを起こす(すなわち、妨害される、減速される)、又は詰まる(すなわち、塞がれる、実質的に又は完全に閉鎖される)ことがある。ノズルが目詰まりした場合、ノズルのオリフィスを通して吐出されるインク液滴が誤った方向に向けられ、印刷品質に悪影響を及ぼす可能性がある。オリフィスが詰まると、実質的に又は完全に塞がれる。ノズルが詰まった結果、インク液滴は、影響を受けたノズルを通過できなくなる場合がある。したがって、ノズルによる発射の失敗を測定する基準は、ノズルのオリフィスを通るインクの方向が多少なりとも間違っていること、又は完全に詰まっていることであり、これは、印刷された画像を視覚的に検査することによって測定することができる。その最も単純な形態では、デキャップ時間を決定するための1つの方法は、プリントヘッドノズルを用いて所定のテストパターンを印刷して、それらの動作状態を検証することを含む。これに続いて、ノズルを印刷又は吐出させることなく、ノズルを一定時間空気に曝す。次に、すべてのノズルで、再度、所定のテストパターンを印刷させる。次に、テストパターンを比較して、弱い又は誤った方向のノズルの数を決定する。最悪の場合、このようなノズルの目詰まり又は詰まりによって、ノズルによる発射が完全にできなくなる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「大量」という用語は、少なくとも200ページ、好ましくは少なくとも300ページ、好ましくは少なくとも400ページ、好ましくは少なくとも500ページ、好ましくは少なくとも600ページ、好ましくは少なくとも700ページ、好ましくは少なくとも800ページ、好ましくは少なくとも900ページ、好ましくは少なくとも1,000ページの印刷を含む印刷操作を指す。
【0024】
インクジェットインク
本開示は、周囲の温度及びプリントヘッドの動作温度の両方で適切な物理的及び化学的安定性を有し、確実に噴射され、基材上に塗布された後に依然として迅速に乾燥する(例えば、30秒間以下の乾燥時間)一方で、長期デキャップ時間を有し、大量印刷操作中の静電荷の蓄積によって引き起こされるノズルの目詰まりを防止するインクジェットインクを対象とする。本明細書に開示される成分の組み合わせは、速い乾燥時間と延長されたデキャップ時間との間のバランスをとり、驚くべきことに、このような静電気の誘発によるノズルの目詰まり/詰まりを防止することが見出された。
【0025】
本開示のインクジェットインクは、一般に、以下の成分:(A)テルペンフェノール樹脂及び(B)化合物(後述)を含有し、任意選択で、(C)アルカノールアミン、(D)エタノール、(E)1-プロパノール、(F)シリコーンアクリレート共重合体、(G)着色剤、及び(H)添加剤のうちの1種以上を含有する。
【0026】
(A)テルペンフェノール樹脂
テルペンフェノール樹脂(A)は、1種以上のフェノール化合物と1種以上のテルペンとのアルキル化による共重合反応生成物であり、粘着付与効果を与えるためにインク及び接着剤に使用されている。当業者に知られているように、このような樹脂は、強酸、縮合効果を有する金属塩、漂白土、フリーデルクラフト触媒(例えば、三フッ化ホウ素)等の触媒作用下でフェノール化合物及びテルペンモノマーを共重合することによって容易に得ることができる。共重合反応生成物は、フェノール化合物由来の構成単位及びテルペン由来の構成単位以外の他の構成単位を有していてもよい。他の構成単位の量は、共重合反応生成物の全構成単位(100モル%)に基づいて、好ましくは5モル%未満、好ましくは3モル%未満、好ましくは1モル%未満、好ましくは実質的に含まない。
【0027】
本明細書で利用されるテルペンフェノール樹脂(A)は、フェノール化合物によってアルキル化され得る少なくとも1つのオレフィン性二重結合を有する任意のテルペンに基づき得る。テルペンは、基本骨格(Cを有し、式中、pは、連続的にヘッド-テイル結合しているイソプレン単位の数を表す正の整数である。例えば、ヘミテルペン(p=1)はC骨格を有し、モノテルペン(p=2)はC1016骨格を有し、セスキテルペン(p=3)はC1524骨格を有する等である。
【0028】
いくつかの実施形態において、テルペンフェノール樹脂(A)は、モノテルペンモノマー単位に基づく。モノテルペンは、直鎖モノテルペン(例えば、ミルセン、オシメン等)、単環式モノテルペン(例えば、リモネン、γ-テルピネン、α-フェランドレン、β-フェランドレン、テルピノレン等)、又は二環式モノテルペン(例えば、3-カレン、α-ピネン、β-ピネン、α-フェンチェン、カンフェン等)であり得、それらの種々の立体異性体及びそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態において、モノテルペンは単環式モノテルペンであり、リモネンが特に好ましい。好ましい実施形態では、モノテルペンは二環式モノテルペンであり、特に好ましくは3-カレン、α-ピネン、β-ピネン、及びカンフェン、より好ましくはα-ピネン及び/又はβ-ピネンである。
【0029】
フェノール化合物は、フェニル環に直接結合した少なくとも1つの水酸基を有する。フェノール化合物が少なくとも1つの水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位に少なくとも2つの置換可能な水素原子を有するならば、すべての一価又は多価フェノール化合物が本明細書に記載のテルペンフェノール樹脂の調製に有用である。すなわち、フェノール化合物は、テルペン(複数可)でポリアルキル化(例えば、ビスアルキル化)されることが可能であるべきであり、したがって、アルキル化のために少なくとも1つの水酸基に対して少なくとも2つの利用可能なオルト位/パラ位を有するべきである。
【0030】
好ましい実施形態では、フェノール化合物はフェノールであり、これは親の無置換フェノール化合物と考えられる(すなわち、フェニル環に直接結合した1つの水酸基を含有し、他の置換はない)。あるいは、フェノール化合物は、フェノール性水酸基に加えて3つまでの位置で置換され得、ここで、フェノールの芳香族水素のうちの1個、2個又は3個は、同数の置換基(各々独立して、水酸基;C~C22アルキル基、好ましくはC~C18アルキル基、より好ましくはC~C12アルキル基、更により好ましくはC~Cアルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル);C~C22アルコキシ基、好ましくはC~C12アルコキシ基、より好ましくはC~Cアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ及びイソプロポキシ);アリール基;アリールアルキル基(例えば、ベンジル基);及びハロ基(例えば、塩素、臭素、フッ素及びヨウ素)から選択される)で置換される。
【0031】
置換フェノール化合物の具体例としては、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,5-キシレノール、2,3-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、2,3,5-トリメチルフェノール、イソプロピルフェノール(例えば、4-イソプロピルフェノール)、tert-ブチルフェノール(例えば、4-tert-ブチルフェノール)、アミルフェノール(例えば、4-tert-アミルフェノール)、ヘプチルフェノール(例えば、4-ヘプチルフェノール)、オクチルフェノール(例えば、o-オクチルフェノール、p-オクチルフェノール等)、ノニルフェノール(例えば、4-(2,4-ジメチルヘプタン-3-イル)フェノール)、デシルフェノール、ドデシルフェノール、ジフェニロールプロパン(ビスフェノール-A)、フェニルフェノール(例えば、3-フェニルフェノール)、クミルフェノール、メキノール、ベンジルオキシフェノール、グアイアコール、エトキシフェノール(例えば、4-エトキシフェノール)、並びにレゾルシノール、ピロガロール、カテコール、及びp-ハイドロキノン等の多価フェノール化合物(上記のいずれかの2つ以上の混合物を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。ナフトール(例えば、1-ナフトール、2-ナフトール等)及び類似の化合物等の縮合環フェノールも含まれる。
【0032】
好ましい実施形態では、インクジェットインクに用いられるテルペンフェノール樹脂(A)は、フェノールと、α-ピネン、β-ピネン、及びリモネンのうちの1つ以上とから形成される共重合体である。
【0033】
テルペンフェノール樹脂(A)は、インクジェットインクの総重量に基づいて、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも1.5重量%、更により好ましくは少なくとも2重量%、なお更により好ましくは少なくとも2.5重量%、及び10重量%まで、好ましくは9重量%まで、好ましくは8重量%まで、好ましくは7重量%まで、好ましくは6重量%まで、より好ましくは5重量%まで、更により好ましくは4重量%まで、なお更により好ましくは3重量%までの量でインクジェットインク中に存在し得る。
【0034】
テルペンフェノール樹脂(A)の分子量は、多くの他の要因の中でも、利用されるモノマー、反応条件に応じて変化し得るが、典型的には、少なくとも400g/mol、好ましくは少なくとも500g/mol、より好ましくは少なくとも600g/mol、更により好ましくは少なくとも700g/mol、及び3,000g/molまで、好ましくは2,500g/molまで、より好ましくは2,000g/molまで、更により好ましくは1,500g/molまで、なお更により好ましくは1,000g/molまでの重量平均分子量を有するテルペンフェノール樹脂(A)が使用される。
【0035】
水酸基価(OHV)は、遊離水酸基を含む化学物質1gをアセチル化する際に取り込まれる酢酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として定義される。したがって、水酸基価、又はテルペンフェノール樹脂(A)の相対水酸基含有量の尺度は、テルペンフェノール樹脂(A)内のフェノール化合物の含有量と直接相関し、より高い水酸基価は、共重合体へのより高いフェノール化合物の組み込み(及びより低いテルペン組み込み)を示す。水酸基価は、日本工業規格JIS K0070:1992「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」に準拠して求めることができる。
【0036】
開示されるインクジェットインクに用いられるテルペンフェノール樹脂(A)の水酸基価は様々であってよいが、典型的には、少なくとも10mgKOH/g、好ましくは少なくとも15mgKOH/g、好ましくは少なくとも20mgKOH/g、好ましくは少なくとも22mgKOH/g、好ましくは少なくとも24mgKOH/g、好ましくは少なくとも26mgKOH/g、好ましくは少なくとも28mgKOH/g、好ましくは少なくとも30mgKOH/g、好ましくは少なくとも32mgKOH/g、好ましくは少なくとも34mgKOH/g、より好ましくは少なくとも36mgKOH/g、更により好ましくは少なくとも38mgKOH/g、なお更により好ましくは少なくとも40mgKOH/gの水酸基価を有し、及び150mgKOH/gまで、好ましくは130mgKOH/gまで、好ましくは100mgKOH/gまで、好ましくは90mgKOH/gまで、好ましくは80mgKOH/gまで、好ましくは75mgKOH/gまで、好ましくは70mgKOH/gまで、好ましくは65mgKOH/gまで、好ましくは60mgKOH/gまで、より好ましくは55mgKOH/gまで、更により好ましくは50mgKOH/gまで、なお更により好ましくは45mgKOH/gまでの水酸基価を有するものである。好ましい実施態様において、開示されるインクジェットインクに用いられるテルペンフェノール樹脂(A)の水酸基価(OHV)は、10~75mgKOH/gである。
【0037】
本明細書で使用されるテルペンフェノール樹脂(A)は、軟化点(SP)に基づいて、例えば環球式軟化点法に従って分類することができる。環球式軟化点は、試料をグリセロール浴中で所定の速度で加熱しながら、水平リング内に保持された試料の円板が鋼球の重量下で1インチ(25.4mm)の距離だけ下方に押し下げられる温度として定義される(例えば、JIS B7410に準拠し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、テルペンフェノール樹脂(A)は、少なくとも60℃、好ましくは少なくとも80℃、好ましくは少なくとも100℃、好ましくは少なくとも105℃、より好ましくは少なくとも110℃、更により好ましくは少なくとも115℃、なお更により好ましくは少なくとも120℃、及び160℃まで、好ましくは155℃まで、好ましくは150℃まで、好ましくは145℃まで、好ましくは140℃まで、より好ましくは135℃まで、更により好ましくは130℃まで、なお更により好ましくは125℃までの軟化点を有する。
【0038】
テルペンフェノール樹脂(A)の好適な例としては、ヤスハラケミカル株式会社から入手可能なYSポリスターU130(OHV=25mgKOH/g)、YSポリスターU115(OHV=30mgKOH/g)、YSポリスターT160(OHV=60mgKOH/g)、YSポリスターT145(OHV=65mgKOH/g)等のYSポリスター製品、及びDRT/Pinova社から入手可能なDERTOPHENE T (OHV=20~50mgKOH/g)、DERTOPHENE T115 (OHV=40~60mgKOH/g)、DERTOPHENE T160 (OHV=60mgKOH/g)等のDERTOPHENE製品が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、好ましくはDERTOPHENE T115である。
【0039】
インクジェットインクは、テルペンフェノール樹脂(A)に加えて、テルペンフェノール樹脂について上述した量の他の粘着付与剤又は接着剤物質を任意選択で含有してもよい。このような追加の粘着付与剤又は接着剤物質としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
・フェノール樹脂(すなわち、フェノール化合物とホルムアルデヒドとの共重合体)、例えば、DIC株式会社から入手可能なフェノライトTD-2131及びフェノライトTD-2090等のノボラック樹脂;
・単環モノテルペン(例えば、リモネン)及び/又は二環モノテルペン(例えば、α-ピネン、β-ピネン)の重合から作製されるテルペン樹脂等のテルペン樹脂(すなわち、テルペンモノマーのみから作製されるホモポリマー又は共重合体)、例えば、ヤスハラケミカル株式会社から入手可能なYS RESIN PX1250、YS RESIN PX1150、YS RESIN PX1000、YS RESIN PX800、YS RESIN PX1150N、及びYS RESIN PX300N、並びに、それぞれPinova社から入手可能なPICCOLYTE A115、PICCOLYTE A125、PICCOLYTE A135、PICCOLYTE A135 PLUS、及びPINOVA RESIN 2495;
・ロジン樹脂であって、例えば、グリセリン、ペンタエリトリトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、メタノール等のアルコールと反応させたアビエチン型又はピマール型の樹脂酸から主に構成されるロジンのエステル、及び任意に水素化又は部分的に水素化されたロジンエステル樹脂等のロジンエステル樹脂を含むが、これらに限定されず、具体的には、ハリマ化成株式会社から入手可能なハリエステル製品、それぞれEastman社から入手可能なSTAYBELITE ESTER 10-E、PERMALYN 6110、荒川化学工業株式会社から入手可能なSUPER ESTER A-125、SUPER ESTER A-75、PENSEL D-125、PINECRYSTAL KE-359、及びPinova社から入手可能なFORAL 85、FORAL 105、HERCOLYN製品、PEXALYN製品、PENTALYN製品;水素化酸性ロジン、例えば、それぞれPinova社から入手可能なFORAL AX及びFORAL DX;部分水素化酸性ロジン、例えば、Eastman社から入手可能なSTAYBELITE RESIN-E、及びそれぞれPINOVA社から入手可能なSTAYBELITE及びSTAYBELITE A;Eastman社から入手可能なPOLY-PALE部分二量体化ロジン等の二量体化ロジン;及び、官能化ロジン樹脂、例えば、無水マレイン酸で変性されたロジンのエステル(例えばグリセロールエステル)又はカルボン酸還元条件に供されたロジンであり、具体的には、それぞれEastman社から入手可能なLEWISOL 28-M及びAbitol-Eヒドロアビエチルアルコール;
・ポリアミド樹脂、例えば、BASFジャパン株式会社から入手可能なVERSAMID725、744、756、759、Sanho Chemical Co.Ltd.から入手可能なTOHMIDE90、92、394-N、及びEvonik社から入手可能なSUNMIDE550、554、615A、638、640;
・スルホンアミド変性エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂、例えば、Rit-Chem社から入手可能なAD-PRO MTS;
・(メタ)アクリレート及びスチレン/(メタ)アクリレート樹脂、例えば、BASF社から入手可能なJONCRYL 63、JONCRYL 67、JONCRYL 586、JONCRYL 611、JONCRYL 682、JONCRYL 693、Palmer Holland社から入手可能なPARALOID DM-55及びPARALOID B-66、Dow Chemical,USAから入手可能なPARALOID B-72、並びにLucite Inc.から入手可能なELVACITE 2013;
・ポリウレタン樹脂、(i)ポリオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフランジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、ポリエチレングリコールアジペートジオール、ポリエチレングリコールサクシネートジオール、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールアジペート)グリコール、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールテレフタレート)グリコール等のポリエステルポリオール、及びカーボネートポリオール(これらに限定されるものではない)と、(ii)ジイソシアネート、例えば2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネート(これらに限定されるものではない)と、の反応から生成するもの等、例えばLubrizol社から入手可能なPERMAX 200、PERMAX 202、及びSANCURE 20025F;
・ポリビニルブチラール樹脂、例えばKuraray America,Inc.から入手可能なPIOLOFORM BN16及びMOWITAL B20H;
・ポリヒドロキシスチレン樹脂、例えばDuPont社からのポリ(p-ヒドロキシスチレン);
・ビニル樹脂、例えば、Dow Chemical Companyから入手可能なUCAR VYHH、VMCH、VMCA、及びVAGF、並びにWacker Chemie AG(ドイツ)から入手可能なVINNOL E15/45、H14/36、E15/45M、及びE16/40A;
・p-トルエンスルホンアミドホルムアルデヒド樹脂等のスルホンアミド変性ホルムアルデヒド樹脂;
・Eastman社から入手可能なセルロースアセテートブチレート(CAB-551-0.01)等のセルロースエステル樹脂;
・並びにポリエステル、スルホン化ポリエステル、セルロースエーテル、硝酸セルロース樹脂、ポリ無水マレイン酸、アセタールポリマー、スチレン/ブタジエン共重合体、メラミンホルムアルデヒド樹脂、スルホンアミド変性メラミンホルムアルデヒド樹脂、ケトン-アルデヒド樹脂、及びポリケトン樹脂;
・等、それらの混合物を含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、インクジェットインクは、他の粘着付与剤又は接着物質を実質的に含有しない。好ましい実施形態において、テルペンフェノール樹脂(A)は、インクジェットインク中に存在する唯一の粘着付与剤又は接着剤樹脂である。
【0041】
(B)化合物
本開示のインクジェットインクはまた、(B)式(I)によって表される化合物を含有し、
【化2】
式中、Rは、8~22個の炭素原子を有するアルキル基又は8~22個の炭素原子を有するアルケニル基であり、nは0又は1であり、pは1~40の整数であり、qは1~40の整数である。
【0042】
本開示の化合物(B)において、Rは、水素と、少なくとも8個、好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも12個、更により好ましくは少なくとも14個の炭素原子、及び22個まで、好ましくは20個まで、より好ましくは18個まで、更により好ましくは16個までの炭素原子のいずれかとから構成されるアルキル又はアルケニル基であってよい。Rはアルケニル基(不飽和部位を含む)であってもよく、例えば、Rはモノ-、ジ-、トリ-、オリゴ-、又はポリ-不飽和アルケニル基であってもよい。不飽和部位(複数可)は、存在する場合、シス-二重結合、トランス-二重結合、又はそれらの組み合わせであってよい。好ましい実施形態において、Rはアルキル基(飽和)である。アルキル基であろうとアルケニル基であろうと、Rは直鎖、分岐鎖、環状であってもよい(又はナフテン酸から誘導されるR基のような環状炭化水素基を含む)。好ましくは、Rは、直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基である。
【0043】
好ましい実施形態において、化合物(B)のR基は、合成脂肪酸及び天然に存在する脂肪酸の両方を含む脂肪酸から誘導可能である。例えば、アミン系の化合物(n=0)は、脂肪酸(複数可)をニトリルプロセスに供し、次いで還元(例えば、水素化)することによって得る/得ることができ、一方、アミド系の化合物(n=1)は、脂肪酸(複数可)又はエステル変種のアミド化を通じて得る/得ることができ、これらは両方とも当業者に公知である。本明細書の化合物(B)を作製するために使用され得る例示的な脂肪酸源としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、α-イノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸等、並びに脂肪酸混合物(天然又は合成混合物)、例えば、トール油脂肪酸及びその誘導体(TOFA)、ヤシ油及びその誘導体、獣脂脂肪酸及びその誘導体(獣脂)、ナフテン酸及びその誘導体、大豆脂肪酸及びその誘導体(大豆)、パーム油及びその誘導体、パーム核油及びその誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、本開示の化合物(B)はまた、(天然に存在する)脂肪酸の混合物から誘導される場合、分布(distribution)又は混合物として存在し得る。
【0044】
式(I)の化合物(B)において、p及びqは同一であっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、p及びqは独立して、1から、好ましくは2から、好ましくは3から、好ましくは4から、好ましくは5から、好ましくは6から、好ましくは7から、より好ましくは8から、更により好ましくは9から、なお更により好ましくは10から、及び40まで、好ましくは35まで、好ましくは30まで、好ましくは25まで、好ましくは20まで、好ましくは18まで、より好ましくは16まで、更により好ましくは14まで、なお更により好ましくは12までの範囲の整数である。
【0045】
いくつかの実施態様において、化合物(B)は、インクジェットインク中に、インクジェットインクの総重量に対して、5重量%までの量、例えば、少なくとも0.01重量%、好ましくは少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも0.6重量%、より好ましくは少なくとも0.7重量%、更により好ましくは少なくとも0.8重量%、なお更により好ましくは少なくとも0.9重量%、及び5重量%まで、好ましくは4重量%まで、好ましくは3重量%まで、好ましくは2.5重量%まで、より好ましくは2重量%まで、更により好ましくは1.5重量%まで、なお更により好ましくは1重量%までの量で存在する。いくつかの実施態様において、テルペンフェノール樹脂(A)と化合物(B)との重量比((A):(B))は、少なくとも1:1、好ましくは少なくとも1.5:1、より好ましくは少なくとも2:1、更により好ましくは少なくとも2.5:1、及び5:1まで、好ましくは4.5:1まで、より好ましくは4:1まで、更により好ましくは3.5:1まで、なお更により好ましくは3:1までである。
【0046】
本開示の化合物(B)は、グリフィン法による親水性-親油性バランス(HLB)が、少なくとも5、好ましくは少なくとも5.1、好ましくは少なくとも5.5、好ましくは少なくとも6、好ましくは少なくとも6.5、より好ましくは少なくとも7、更により好ましくは少なくとも7.5、なお更により好ましくは少なくとも8、及び16まで、好ましくは15.4まで、好ましくは15まで、好ましくは14まで、好ましくは13まで、好ましくは12まで、より好ましくは11まで、更により好ましくは10まで、なお更により好ましくは9までであり得る。
【0047】
式(I)においてnが0である実施形態において、化合物(B)は、式(Ia)のアミン系化合物であり、
【化3】
式中、R、p及びqは先に定義した通りであり、好ましくはp及びqは独立して、1から、好ましくは2から、好ましくは3から、好ましくは4から、及び15まで、好ましくは12まで、好ましくは8まで、好ましくは6まで、好ましくは5までの範囲の整数である。
【0048】
式(Ia)のアミン系化合物は、脂肪族アミンのエトキシル化によって誘導可能であるか又は製造することができる。本明細書においてエトキシル化することができる例示的な脂肪族アミンとしては、ココアミン、ステアリルアミン、パルミトイルアミン、オレイルアミン、獣脂アミン(例えば、花王株式会社から市販されているFarmin TD)、トール油脂肪酸アミン、ラウリルアミン、リノレイルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、及びソイアミンが挙げられるが、これらに限定されない。これらのいずれも、場合により水素化されていてもよく、部分的に水素化されていてもよく、又は水素化されていなくてもよい。
【0049】
式(Ia)のアミン系化合物の具体例としては、それぞれ花王株式会社から入手可能なAMIET 102、AMIET 105、AMIET 302、AMIET 308、AMIET 320、AMIET 502、AMIET 505、及びAMIET 515が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
式(I)においてnが1である実施形態において、化合物(B)は、式(Ib)のアミド系化合物であり、
【化4】
式中、R、p及びqは先に定義した通りであり、好ましくはp及びqは独立して、1から3までの範囲の整数であり、好ましくは1又は2である。好ましい実施形態において、p及びqは同じであり、好ましくはp及びqの両方が1である。
【0051】
式(Ib)のアミド系化合物は、脂肪酸(複数可)(例えば、先に列挙したもの)又はそのエステル変異体と、好適なエトキシル化アミンとの縮合によって誘導可能であるか、又は製造することができる。式(Ib)のアミド系化合物の具体例としては、コカミドジエタノールアミン(DEA)、ラウラミドDEA、リノレアミドDEA、ミリスチン酸アミドDEA、パルミチン酸アミドDEA、及びオレアミドDEAが挙げられるが、これらに限定されず、具体的には、AMINON L-02(ラウラミドDEA)及びAMINON PK-02S(パーム核アミドDEA)が挙げられ、これらはそれぞれ花王株式会社から入手可能である。
【0052】
連続的な大量(例えば、200ページ以上)の印刷操作は、特に冬季又は他の低湿度条件の間に、静電荷の漸進的な蓄積を発生させる傾向がある。理論に束縛されるものではないが、この静電荷の蓄積は、印刷が停止されると、プリントヘッドのノズルの中及び周囲に固体インク成分(ポリマー及び着色剤等)の蓄積をもたらすと考えられる。その結果、印刷が再開されると印刷品質が低下する。特に、静電荷の蓄積後に機能するインクの能力は、良好なデキャップ挙動を有するインクが依然としてそのような静電気の誘発によるノズルの目詰まり/詰まりに悩まされることから、デキャップ挙動とは別の問題である。
【0053】
驚くべきことに、本開示の化合物(B)は、この静電気の誘発によるノズルの目詰まり/詰まりの影響を防止し、断続的なダウンタイムを伴う大量印刷操作等の帯電環境において高品質の画像生成を可能にすることが見出された(例えば、実施例1~3を参照されたい)。一方、両性界面活性剤(例えば、アミンオキシド界面活性剤、ベタイン界面活性剤、イミダゾール系両性界面活性剤)及び非イオン界面活性剤(例えば、ソルビタンエステル界面活性剤)の両方を含む他の種類の薬剤は、この点に関して劣り、印刷が再開されると印刷品質が低下するインクジェットインクを生じる(例えば、実施例4~6及び8参照)。
【0054】
(C)アルカノールアミン
インクジェットインクは、水酸基(-OH)及びアミノ基(第一級、第二級、又は第三級)の両方を含有するアルカン系化合物である中和試薬を、好ましくはアルカノールアミンの形態で任意に含むことができる。
【0055】
いくつかの実施形態において、アルカノールアミン(C)は、合計で、少なくとも2個の炭素原子、好ましくは少なくとも3個の炭素原子、好ましくは少なくとも4個の炭素原子、及び8個までの炭素原子、好ましくは7個までの炭素原子、より好ましくは6個までの炭素原子、より好ましくは5個までの炭素原子を有する。
【0056】
好ましい実施形態では、本明細書のインクジェットインクに使用されるアルカノールアミン(C)は、以下の一般式II:
【化5】
(式中、X、Y及びZは、独立して、水素;C~Cアルキル基、好ましくはC~Cアルキル基;及びアルカノール基、好ましくはC~Cアルカノール基、より好ましくはC~Cアルカノール基からなる群から選択され、X、Y及びZの少なくとも1つはアルカノール基(少なくとも1つの水酸基を有するアルキル置換基)である。)を有する。
【0057】
いくつかの実施形態において、X、Y、及びZのうちの1つは、アルカノール基である。いくつかの実施形態において、X、Y、及びZのうちの2つは、アルカノール基である。いくつかの実施形態において、X、Y及びZはすべてアルカノール基である。
【0058】
1つ以上のアルカノール基に関して、そのアルキル鎖は分枝を含んでもよい。あるいは、アルカノール基のアルキル鎖は直鎖(アルキル分岐を含まない)であってもよい。好ましい実施形態では、アルカノール基(複数可)は直鎖アルキル鎖に基づく。更に、アルカノール基の水酸基結合炭素は、第一級、第二級、又は第三級炭素であってもよく、好ましくは水酸基結合炭素は第一級又は第二級炭素である。
【0059】
アルカノールアミン(C)は、第一級アミノ基(すなわち、X、Y、及びZのうちの2つが水素である)、第二級アミノ基(すなわち、X、Y、及びZのうちの1つが水素である)、又は第三級アミノ基(すなわち、X、Y、及びZがすべて非水素である)を含有し得る。第二級アミノ基を含有するアルカノールアミン(C)を採用する場合、2つの非水素置換基は、同じ又は異なるアルカノール基でもよく、好ましくは、例えばジエタノールアミンの場合のように同じアルカノール基であってもよい。第三級アミノ基を含有するアルカノールアミン(C)を採用する場合、3つの非水素置換基は、同じ又は異なるアルカノール基でもよく、好ましくは、例えばトリエタノールアミンの場合のように同じアルカノール基であってよい。
【0060】
アルカノールアミン(C)の好適な例としては、エタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-プロピルエタノールアミン、N-イソプロピルエタノールアミン、N,N-ジイソプロピルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン(3-アミノ-1-プロパノール)、N-メチルプロパノールアミン、N,N-ジメチルプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、N,N-ジメチルイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、4-アミノ-1-ブタノール、2-アミノ-1-ブタノール、sec-ブタノールアミン、及びジ-sec-ブタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい実施形態において、アルカノールアミン(C)は、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン(3-アミノ-1-プロパノール)、及びイソプロパノールアミンからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0061】
いくつかの実施形態において、アルカノールアミン(C)は、インクジェットインクの総重量に対して、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.2重量%、好ましくは少なくとも0.3重量%、好ましくは少なくとも0.4重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも0.6重量%、好ましくは少なくとも0.7重量%、より好ましくは少なくとも0.8重量%、更により好ましくは少なくとも0.9重量%、なお更により好ましくは少なくとも1重量%、及び10重量%まで、好ましくは8重量%まで、好ましくは6重量%まで、好ましくは5重量%まで、好ましくは4重量%まで、より好ましくは3重量%まで、更により好ましくは2重量%まで、なお更により好ましくは1.5重量%までの量でインクジェットインク中に存在する。いくつかの実施形態では、テルペンフェノール樹脂(A)とアルカノールアミン(C)との重量比((A):(C))は、少なくとも0.5:1、好ましくは少なくとも0.7:1、好ましくは少なくとも1:1、より好ましくは少なくとも2:1、更により好ましくは少なくとも2.5:1、なお更により好ましくは少なくとも3:1、及び15:1まで、好ましくは10:1まで、好ましくは9:1まで、好ましくは8:1まで、好ましくは7:1まで、より好ましくは6:1まで、更により好ましくは5:1まで、なお更により好ましくは4:1までである。
【0062】
溶媒系
溶媒系インクを利用する多くの印刷プロセスにおいて、特にサーマルインクジェット印刷において、適切な溶媒系の選択は、印刷プロセスの信頼性、印刷されたインク製品の特性/外観、及び全体的な印刷プロセス効率に影響を及ぼし得る。例えば、サーマルインクジェット印刷では、溶媒系の選択は、1)噴射プロセス中の気泡形成を助けて、信頼性のあるインク噴射をもたらし、2)溶媒(複数可)と様々なインクジェットインク成分との間の相互作用力を変化させることによってインクジェットインクの安定性/揮発性に影響を与え、したがってデキャップ挙動、コゲーション、及び/又は液滴軌道に影響を与え、3)溶媒系と他のインクジェットインク成分との間の相互作用力によって、溶媒が乾燥後にもはや存在しなくても、又はより少ない量で存在しても、印刷画像の接着、摩擦及び引っかき抵抗性、並びに光学濃度特性に影響を与え、及び/又は4)塗布後の乾燥時間又は塗布したインクを乾燥させるのに必要な装置に影響を与えることができる。
【0063】
上記に照らして、特に好ましいのは、(D)エタノールを更に含有するインクジェットインクである。エタノール(D)の含有は、インクジェットインク成分の溶媒和を助け、乾燥時間の目的のために許容可能な揮発性をインクジェットインクに提供し得る。エタノール(D)は、本明細書のインクジェットインクに使用される溶媒系の大部分を構成することが好ましい。いくつかの実施形態において、エタノール(D)は、インクジェットインクの総重量に基づいて、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、更により好ましくは少なくとも60重量%、なお更により好ましくは少なくとも65重量%、及び85重量%まで、好ましくは80重量%まで、より好ましくは75重量%まで、更により好ましくは70重量%まで、なお更により好ましくは69重量%までの量で、インクジェットインク中に存在する。
【0064】
インクジェットインクはまた、好ましくは、(E)1-プロパノールを含有するように配合される。1-プロパノール(E)は、高分子成分(例えば、テルペンフェノール樹脂(A))との親和性が高く、なおかつ、n-プロピル鎖の疎水性により、形成される水素結合が多くなりすぎるのは依然として阻止されるため、速乾性が実現できる可能性がある。いくつかの実施形態において、1-プロパノール(E)は、インクジェットインクの総重量に基づいて、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも18重量%、更により好ましくは少なくとも20重量%、及び40重量%まで、好ましくは35重量%まで、より好ましくは30重量%まで、更により好ましくは25重量%までの量でインクジェットインク中に存在する。
【0065】
好ましい実施形態では、インクジェットインクは、(D)エタノールと(E)1-プロパノールとの組み合わせを含有する。このようなブレンドは、エタノール(D)と1-プロパノール(E)の両方からの有利な特徴を組み込むことができ、したがって、インクジェットインクの長いデキャップ時間と速い乾燥時間の特性を増強することができる。合わせて考えると、インクジェットインク中のエタノール(D)及び1-プロパノール(E)の合計重量((D)+(E))は、インクジェットインクの総重量に基づいて、典型的には少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも55重量%、好ましくは少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも65重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、更により好ましくは少なくとも75重量%、なお更により好ましくは少なくとも80重量%、及び95重量%まで、好ましくは92重量%まで、より好ましくは90重量%まで、更により好ましくは89重量%まで、なお更により好ましくは88重量%までである。好ましい実施形態では、エタノール(D)と1-プロパノール(E)との重量比((D):(E))は、少なくとも1.5:1、好ましくは少なくとも2:1、好ましくは少なくとも2.5:1、より好ましくは少なくとも3:1、更により好ましくは少なくとも3.3:1、及び8:1まで、好ましくは7:1まで、より好ましくは6:1まで、更により好ましくは5:1まで、なお更により好ましくは4:1までである。
【0066】
好ましい実施形態では、本開示のインクジェットインクは実質的に非水性であり、これは、周囲条件に由来する偶発的な量の水分以外の水がインクジェットインクに添加されないことを意味する。このような場合、インクジェットインクは、インクジェットインクの総重量に基づいて、1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、好ましくは0.05重量%未満、好ましくは0.01重量%未満、より好ましくは0重量%の水を有し得る。
【0067】
エタノール(D)及び1-プロパノール(E)に加えて、インクジェットインクは、任意選択で、1種以上の追加の有機溶媒又は保湿剤(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2015/0291816A1号明細書に記載されている保湿剤等)を含有してもよい。存在する場合、追加の有機溶媒(又は保湿剤)は、20重量%まで、好ましくは15重量%まで、好ましくは10重量%まで、好ましくは5重量%まで、より好ましくは4重量%まで、更により好ましくは2重量%まで、なお更により好ましくは1重量%までの量で含まれ得る。例示的な追加の有機溶媒又は保湿剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
・1~8個の炭素原子を含む低級アルコール(エタノール及び1-プロパノール以外)、例えばメタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-プロパノール;
・グリコールエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、及びジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等;
・エーテル(非グリコールエーテル)、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、及びテトラヒドロフラン等の4~8個の炭素原子を含むエーテル;
・ケトン類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、3-ペンタノン、シクロヘキサノン及びジアセトンアルコールを含む3~6個の炭素原子を含むケトン類;
・3~8個の炭素原子を有するものを含むエステル、例えばメチルアセテート、エチルアセテート、n-ブチルアセテート、メチルラクテート、エチルラクテート、ブチルラクテート、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、エトキシプロピルアセテート;
・等、並びにそれらの2種以上の混合物。
【0068】
好ましい実施形態において、エタノール(D)及び1-プロパノール(E)だけが、インクジェットインク中に存在する1~8個の炭素原子を有する低級アルコールであり、すなわち、インクジェットインクは、エタノール(D)及び1-プロパノール(E)以外のすべての低級アルコール(1~8個の炭素原子を有する)を実質的に含有しない。特に、インクジェットインクは、好ましくは、2-プロパノール及び1-ブタノールを実質的に含有しない。いくつかの実施形態において、インクジェットインクは、ケトン溶媒を実質的に含まず、特に、インクジェットインクは、好ましくは、メチルエチルケトン及びアセトンを実質的に含有しない。いくつかの実施形態において、インクジェットインクは、追加の有機溶媒、すなわち、エタノール(D)及び1-プロパノール(E)以外の有機溶媒を実質的に含有しない。好ましい実施態様において、インクジェットインクは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2015/0291816A1号に記載されているような保湿剤を実質的に含有しない。
【0069】
(F)シリコーンアクリレート共重合体
インクジェットインクは、任意選択で、(F)シリコーンアクリレート共重合体を界面活性剤として含んでもよい。このような界面活性剤の組み込みは、インクジェットインクに有利なノズル吐出特性、並びにレベリング及び基材濡れ特性を提供することができ、したがって全体的な印刷品質の改善に寄与する。(メタ)アクリレート部分及びシリコーン部分等の別個の材料から作られた共重合体を使用することによって、単一の成分がインクジェットインクに複数の有益な特性を提供することができる。例えば、(メタ)アクリレート部分は、有利なレベリング及び基材濡れを提供することができ、シリコーン部分は、望ましいクレーター防止特性を提供することができる。
【0070】
インクジェットインク中で任意選択で使用されるシリコーンアクリレート共重合体(F)は、当業者に公知の方法に従って、例えば、米国特許第5,219,560号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているように、例えば、少なくとも1つの重合性基(例えば、ポリオルガノシロキサン鎖の末端の一方、ポリオルガノシロキサン鎖の両方の末端、又はシリコーン主鎖に存在するもの)を含むポリオルガノシロキサンマクロマーと(メタ)アクリレートモノマーとの重合(例えば、フリーラジカル重合)又はグラフト化によって得ることができる。好ましくは、シリコーンアクリレート共重合体(F)は、ポリシロキサン(ポリオルガノシロキサン)変性ポリ(メタ)アクリレート、すなわち、ポリ(メタ)アクリレート主鎖と、アクリル主鎖にグラフトされたポリオルガノシロキサンとから構成される共重合体(すなわち、グラフト共重合体)である。好ましい実施形態では、シリコーンアクリレート共重合体(F)の大部分はポリ(メタ)アクリレートである。好ましい実施形態において、シリコーンアクリレート共重合体(F)は、シリコーンアクリレート共重合体(F)の総重量に基づいて、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも3重量%、更により好ましくは少なくとも4重量%、及び20重量%まで、好ましくは15重量%まで、より好ましくは10重量%まで、更により好ましくは8重量%までのポリオルガノシロキサン含有量を有する。
【0071】
ポリオルガノシロキサンマクロマーは、適切に官能化されたシランの重合及び/又は重縮合から形成することができ、(四価)ケイ素原子に直接結合したアルキル、アリール及び/又はアリールアルキル基を有するポリシロキサン主鎖構造(ケイ素原子は酸素原子を介して互いに結合している、-Si-O-Si-)を有する、様々な分子量の直鎖構造の任意の有機ケイ素ポリマー又はオリゴマーに基づくことができる。例えば、ポリオルガノシロキサン主鎖は、ポリジメチルシロキサン主鎖(主鎖中の各ケイ素原子が2つのメチル基に直接結合している)、ポリ(ジメチルシロキサン-コ-メチルフェニルシロキサン)主鎖、ポリ(ジメチルシロキサン-コ-ジフェニルシロキサン)主鎖、又はポリ(ジメチルシロキサン-コ-メチルアルキルシロキサン)主鎖であってよい。
【0072】
ポリオルガノシロキサンマクロマーは、少なくとも1つの重合性基(例えば、(メタ)アクリレート含有基)を含むように修飾されてもよく、好ましくは、ポリオルガノシロキサンマクロマーは、ポリシロキサン鎖の末端の少なくとも1つに重合性基を含むように修飾された末端基であってもよい。いくつかの実施態様において、ポリオルガノシロキサンマクロマーは、ポリシロキサン鎖の両末端に重合性基を有する。いくつかの実施形態では、ポリオルガノシロキサンマクロマーは、ポリシロキサン鎖の一方の末端に重合性基を有し、鎖の他方の末端に非重合性末端基(例えば、トリメチルシラン、トリフェニルシラン、フェニルジメチルシラン等)を有する。いくつかの実施形態では、重合性基は、スチレニル型基(CH=C(R)-アリーレン-)又は(メタ)アクリレート基、特にCH=CR-CO-O-R-によって表される基であってもよく、式中、Rは水素又はメチル基であり、Rは、1~10個の炭素原子、好ましくは2~8個の炭素原子、好ましくは3~6個の炭素原子を有し、任意選択でエーテル結合(例えば、1個、2個、3個、4個等のエーテル結合)を含有し、(例えば、エポキシドと(メタ)アクリル酸との反応から得られる開環生成物の場合のように)任意選択で水酸基置換基(複数可)を含有する二価の直鎖又は分岐鎖炭化水素基である。好ましい実施形態において、Rは、-(CH-(n=1~10)、-CHCH(CH)CH-、-CHCHOCHCH-、-CHCHOCHCHCH(CH)CH-、-CHCHOCHCHOCHCHCH-、及び-CHCH(OH)CHOCHCHCH-である。
【0073】
シリコーンアクリレート共重合体(F)は、(メタ)アクリル酸(アクリル酸及びメタクリル酸)及びアリール又はアルキル(メタ)アクリレートエステルであってもよいエステル変異体の両方を含む、多種多様な(メタ)アクリレートモノマーの存在下でポリオルガノシロキサンマクロマーを重合することによって作製されてもよい。ポリ(メタ)アクリレート主鎖は、1種類のモノマーから形成されてもよく、あるいは2種類以上の(メタ)アクリレートモノマーから形成されてもよい。好ましい実施形態において、(メタ)アクリレートモノマーは、(メタ)アクリレートアルキルエステルであり、これは、直鎖、分枝鎖又は環状アルキルエステル、例えば、アクリレート及びメタクリレートのC~C22アルキルエステル、好ましくはC~C20アルキルエステル、好ましくはC~C18アルキルエステルから選択され得る。いくつかの実施形態では、アルキル基は、メチル、エチル、ブチル、ステアリル、イソステアリル、及び2-エチルヘキシル、並びにそれらの混合物から選択される。好適な(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、トリデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
いくつかの実施形態では、シリコーンアクリレート共重合体(F)は、3,000g/molから、好ましくは4,000g/molから、より好ましくは5,000g/molから、更により好ましくは8,000g/molから、なお更により好ましくは10,000g/molから、及び500,000g/molまで、好ましくは400,000g/molまで、より好ましくは300,000g/molまで、更により好ましくは200,000g/molまで、なお更により好ましくは100,000g/molまでの重量平均分子量を有する。
【0075】
インクジェットインクに使用する場合、シリコーンアクリレート共重合体(F)は、そのまま使用してもよく、あるいは、2~8個の炭素原子を含有する低級アルコール(例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール等)、エステル溶媒(例えば、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、エトキシプロピルアセテート、ブチルアセテート等)又は油(例えば、シクロペンタシロキサン)等の有機溶媒に分散又は溶解させてもよい。いくつかの実施形態において、分散液又は溶液として使用される場合、溶媒はエステル溶媒であり、最も好ましくはメトキシプロピルアセテートである。いくつかの実施形態では、分散液又は溶液の固形分は、分散液/溶液の総重量に対して、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、及び60重量%まで、好ましくは55重量%まで、好ましくは52重量%までである。
【0076】
市販されており、本明細書に記載のインクジェットインクに使用することができるシリコーンアクリレート共重合体(F)の代表的な例としては、KP-541、KP-543、KP-545、KP-550、KP-575(ポリジメチルシロキサン側鎖でグラフトされたアクリルポリマー、信越化学株式会社から入手可能)、BYK-3550(ビックケミー・ジャパン株式会社から入手可能)(これらの混合物を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、シリコーンアクリレート共重合体(F)はBYK-3550である。
【0077】
シリコーンアクリレート共重合体(F)は、インクジェットインクの総重量に基づいて、少なくとも0.01重量%、好ましくは少なくとも0.05重量%、より好ましくは少なくとも0.1重量%、更により好ましくは少なくとも0.5重量%、なお更により好ましくは少なくとも1重量%、及び5重量%まで、好ましくは4重量%まで、より好ましくは3重量%まで、更により好ましくは2.5重量%まで、なお更により好ましくは2重量%まで、好ましくは1.5重量%までの量で使用することができる。
【0078】
(G)着色剤
当業者であれば、インクジェットインクに着色剤を任意選択で含有させて、様々な印刷目的に使用できる着色インクを提供することができ、インクジェットインクは特定の色に限定されるものではないことを容易に理解することができる。インクジェットインクには、所望の色を出すために、染料、顔料、それらの混合物等を含む任意の着色剤を採用することができる。ただし、着色剤はインクジェットインク内に溶解又は分散可能なものとする。適切な色は、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、及びキー(ブラック)(「CMYK」)、ホワイト、オレンジ、グリーン、ライトシアン、ライトマゼンタ、バイオレット等を含み、スポットカラー及びプロセスカラーの両方を含む。一般に、着色剤は、インクジェットインクの総重量に対して、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、より好ましくは少なくとも1重量%、更により好ましくは少なくとも2重量%、なお更により好ましくは少なくとも3重量%、及び20重量%まで、好ましくは15重量%まで、より好ましくは10重量%まで、更により好ましくは8重量%まで、なお更により好ましくは7重量%までの量で使用することができる。
【0079】
染料
インクジェットインクは、種々の染料と配合することができ、金属錯体染料が特に好ましく、その1つの具体的かつ非限定的な例は、VALIFAST BLACK 3870であり、これはオリエント化学工業株式会社から入手可能な黒色アゾ金属錯体染料である。
【0080】
顔料
インクジェットインクは、種々の無機顔料及び/又は有機顔料と配合することができる。インクジェットインクに色を与えることに加えて、そのような顔料は、印刷画像の耐光性、耐候性等を改善することができる。
【0081】
(H)添加剤
既に述べた成分に加えて、インクジェットインクはまた、様々なインク特性及び性能を改善するために様々な添加剤(H)と配合することができる。例えば、インクジェットインクは、コゲーション防止剤、追加の界面活性剤(化合物(B)及び任意選択でシリコンアクリレート共重合体(F)以外)、安定剤、及び安全保障のための爆発物マーカー(security taggant)のうちの1種以上を任意選択で含有することができる。
【0082】
特に、インクジェットインクは、(本開示の化合物(B)及び任意選択でシリコンアクリレート共重合体(F)に加えて)追加の界面活性剤を、化合物(B)について上述した量で任意選択で含有することができる。このような追加の界面活性剤としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
・カチオン性界面活性剤、例えば、C~C22アルキルモノアミン、C~C22アルキル(ポリ)アルキレンポリアミン、及びアルコキシル化脂肪族アミンのプロトン化塩等のプロトン化脂肪族アミン;ステアラミドプロピルジメチルアミン、ステアラミドプロピルジエチルアミン、及びパルミタミドエチルジメチルアミンのプロトン化形態等のプロトン化脂肪族アルキルアミドアミン;並びに第三級脂肪族アミン、アルコキシル化(第三級)アミン、又は反応性孤立電子対を有する少なくとも1個の芳香族窒素原子を有する非プロトン性含窒素ヘテロアレーン(場合により置換されている)等のアルキル化から形成される第四級アンモニウム化合物が挙げられ、具体的には、トリ脂肪族アルキルアンモニウム化合物(例えば、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド)、脂肪族トリメチルアンモニウム化合物、ジ脂肪族ジメチルアンモニウム化合物、脂肪族ベンジルジメチルアンモニウム化合物、及びN-脂肪族アルキルピリジニウム又はキノリニウム化合物が挙げられるが、これらに限定されない;
・アニオン性界面活性剤、例えば、アルキルサルフェート、アルキル-エステル-サルフェート、アルキルエーテルサルフェート、アルキル-アルコキシ-エステル-サルフェート、硫酸化アルカノールアミド、及びグリセリドサルフェート等のサルフェート;アルキルスルホネート、脂肪族アルキル-ベンゼンスルホネート、低級アルキル-ベンゼンスルホネート、アルファオレフィンスルホネート、及びリグノスルホネート等のスルホネート;アルキルアリールエーテルホスフェート、アルキルエーテルホスフェート、及び脂肪族アルコール又は脂肪族アルコールのポリオキシアルキレンエーテルのホスフェート等のホスフェートが挙げられるが、これらに限定されない;
・非イオン性界面活性剤、例えば、脂肪酸のアルコキシル化モノアルカノールアミドを含む脂肪酸のアミド又はモノアルカノールアミド、例えば、ヤシ脂肪酸モノエタノールアミド及び2~20モルのエチレンオキシドと反応したヤシ脂肪酸モノエタノールアミド;エトキシル化及び/又はプロポキシル化脂肪酸(例えば2~40モルのエチレンオキシドを有するヒマシ油)、アルコキシル化グリセリド(例えばPEG-24グリセリルモノステアレート)、グリコールエステル及び誘導体、モノグリセリド、ポリグリセリルエステル、多価アルコールのエステル、及びソルビタン/ソルビトールエステル、例えばソルビタンモノラウレート(例えばEMASOL L-10V、花王株式会社から入手可能)等の脂肪酸エステル;アルコキシル化脂肪族アルコール(例えば、エトキシル化セチルステアリルアルコール、エトキシル化ラウリルアルコール)を含むアルコキシル化C~C22アルコール、アルコキシル化ポリシロキサン、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体、アルコキシル化アルキルフェノール、及び脂肪族アルコールとグルコースとの反応から作製されるアルキルポリグリコシド(APG)等のエーテル;変性ポリシロキサン;アルキル変性ポリオキシアルキレンアミン;アルキル変性プロポキシル化ジアミン;及びアルキルエーテルアミンが挙げられるが、これらに限定されない;及び
・両性界面活性剤、例えば、ラウリルベタイン(例えば、AMPHITOL 24B、花王株式会社から入手可能)等の脂肪族アルキルベタイン;脂肪族アミドプロピルジメチルアミノベタイン等の脂肪族アルキルアミドベタイン;脂肪族ジメチルヒドロキシスルタイン等の脂肪族アルキルスルタイン;脂肪族アミドプロピルジメチルアミノヒドロキシスルタイン等の脂肪族アルキルアミドスルタイン;N-ココアミドプロピルジメチルアミンオキシド、ジメチルココアミンオキシド等のジメチル脂肪族アルキルアミンオキシド、ラウリルジメチルアミンオキシド(例えば、AMPHITOL 20N、花王株式会社から入手可能)等のアミンオキシド;及びイミダゾール系両性界面活性剤(例えば、ELEC AC、花王株式会社から入手可能)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
好ましい実施形態では、インクジェットインクは追加の界面活性剤を実質的に含まず、好ましくは化合物(B)が存在する唯一の界面活性剤である。
【0084】
製造方法
本明細書に記載されるインクジェットインクの実施形態は、当業者に公知の任意の適切な技術によって、例えば、成分(A)テルペンフェノール樹脂及び(B)本開示の化合物を、任意の選択された有機溶媒(例えば、(D)エタノール及び/又は(E)1-プロパノール)及び任意の所望の任意選択の成分(例えば、(C)アルカノールアミン、(F)シリコーンアクリレート共重合体、(G)着色剤、及び/又は(H)添加剤)と任意の順序で組み合わせ、均一な溶液が形成されるまで20~100℃の温度で撹拌、かき混ぜ、及び/又は均一化することによって調製され得る。
【0085】
一例では、インクジェットインクは、最初に容器内でテルペンフェノール樹脂(A)を1-プロパノール(E))と合わせ、例えば、少なくとも10分間、好ましくは少なくとも15分間、好ましくは少なくとも20分間、好ましくは少なくとも25分間、好ましくは少なくとも30分間、好ましくは少なくとも35分間、好ましくは少なくとも40分間、好ましくは少なくとも45分間撹拌することによって作製することができる。次いで、エタノール(D)、アルカノールアミン(C)、及びシリコーンアクリレート共重合体(F)を、任意の所望の添加剤(H)と共に、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも10分間、好ましくは少なくとも15分間、好ましくは少なくとも20分間、好ましくは少なくとも25分間、好ましくは少なくとも30分間、又は完全に溶解するまで、混合を継続しながら混合物に添加してもよい。次いで、着色剤(G)を、少なくとも10分間、好ましくは少なくとも15分間、好ましくは少なくとも20分間、好ましくは少なくとも25分間、好ましくは少なくとも30分間、好ましくは少なくとも35分間、好ましくは少なくとも40分間、好ましくは少なくとも45分間混合を継続しながら添加してもよい。最後に、次いで、化合物(B)を、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも10分間、好ましくは少なくとも15分間、好ましくは少なくとも20分間、好ましくは少なくとも25分間、好ましくは少なくとも30分間、混合しながらゆっくり添加してもよい。次いで、得られたインクジェットインクを、任意選択で濾過し(例えば、1.0μmフィルターを通して)、ヒューレットパッカード社製のHP45SI等の印刷カートリッジに入れることができる。
【0086】
特性
他の利点の中でも、本明細書に開示されるインクジェットインクは、長いデキャップ時間と塗布された後の迅速な乾燥時間との優れた組み合わせを有し、大量印刷操作中の静電荷の蓄積によって引き起こされるノズルの目詰まり/詰まりを防止する。
【0087】
乾燥時間は、インクジェットインクをソリッドブロック画像(例えば、1cm×10cm)の形態で基材上に塗布し、インクジェットインクが周囲条件下(室温、約23℃の空気中、熱を加えない)で乾燥するのを一定時間、例えば、5、10、15、20、25、又は30秒間待ち、次いで、指による摩耗試験を行って、試験した時間間隔で印刷画像から指に色が移るかどうかを試験することによって測定することができる。色移りが生じた場合、試験した乾燥時間は、完全な乾燥を達成するのに十分ではない(「不良」又は「NG」と評価)。色移りが生じない場合、試験した乾燥時間は、完全な乾燥を達成するのに十分である(「良好」又は「G」と評価)。「良好」評価を達成するために30秒間を超える乾燥時間を必要とする任意のインクジェットインクは、許容できない(遅い乾燥)とみなされ、一方、30秒間以下の乾燥時間で「良好」評価を達成するものは、許容可能(すなわち迅速な乾燥)とみなされる。好ましい実施形態において、本開示のインクジェットインクは、許容可能な(迅速な)乾燥時間を有し、塗布後30秒間以内、好ましくは25秒間以内に乾燥する。
【0088】
本明細書に開示されるインクジェットインクはまた、細線画像(1mm×1cm、細線、モノクロビットマップ)を印刷し、インクジェットインクを特定の時間空気に曝露し(インクカートリッジをデキャップする)、同じ細線画像を再印刷し、デキャップ後に再印刷した画像を元の画像と比較してノズルの損失が生じたかどうかを判定することによって測定される、長いデキャップ時間を有する。試験した時間間隔でノズル抜けがない場合、インクジェットインクには、その時間間隔で「良好」(「G」)なデキャップ評価が与えられる。そうではなく、ノズル抜けが存在する場合、インクジェットインクは、その時間間隔で「不良」(「NG」)として分類される。10分間以上デキャップされた場合に「良好」なデキャップ評価を維持するインクジェットインクは、許容可能な(長い又は長期の)デキャップ時間を有すると考えられる。好ましい実施形態において、本開示のインクジェットインクは、デキャップ時間、すなわち、デキャップされた(すなわち、空気に曝露された)場合に「良好」なデキャップ分類を維持する時間が、10分間以上、好ましくは30分間以上、より好ましくは1時間以上、更により好ましくは2時間以上、なお更により好ましくは4時間以上である。換言すれば、インクジェットインクは、10分間以上、好ましくは30分間以上、より好ましくは1時間以上、更により好ましくは2時間以上、なお更により好ましくは4時間以上空気に曝露された(すなわち、デキャップされた)場合であっても、元の印刷画像と実質的に同一である印刷画像を形成することができる。もちろん、定義上、特定の時間(例えば10分間)にわたってデキャップしたときに「良好」なデキャップ分類を維持する条件を満たすインクジェットインクは、その特定の時間間隔までのすべての時間(例えば10分までのすべての時間)においても「良好」なデキャップ分類も達成することを認識すべきである。
【0089】
大量印刷操作中のインクの信頼性(すなわち、静電気の誘発によるノズルの目詰まり/詰まりによる影響を最小限に抑えるインクジェットインクの能力)を試験するために、インクジェットインクを使用して、大量のページ数(例えば、少なくとも200ページ、好ましくは少なくとも300ページ、好ましくは少なくとも400ページ、好ましくは少なくとも500ページ)の印刷画像(例えば、図1に示され、実施例に記載されるUPC12バーコード画像、2Dデータマトリックス、及びパージバーを参照)を連続的に印刷することができる。その後、連続印刷実行は、一定期間、例えば、10秒間、30秒間、1分間、2分間、5分間、10分間等のダウンタイムの間中断され、特定のダウンタイムの後、同じ印刷画像が再印刷される。次いで、試験したダウンタイム後に生成された再印刷された印刷画像(例えば、印刷#501)を、第1の印刷画像(印刷#1)及び連続印刷実行の最終印刷画像(例えば、印刷#500)と視覚的に比較して、試験したダウンタイム中にノズルの喪失が生じたかどうかを判定する。再印刷された印刷画像(例えば、印刷#501)にノズル抜けがない場合、インクジェットインクには「良好」(「G」)の評価が与えられ、これは、インクジェットインクが静電気の誘発によるノズルの目詰まり/詰まりを防止することを示す。そうでなければ、ノズル抜けが存在する場合、インクジェットインクは「不良」(「NG」)と分類され、これは、インクジェットインクが静電気の誘発によるノズルの目詰まり/詰まりの影響を許容できない程度に被り、したがって、大量印刷ジョブ中の信頼性が低いことを意味する。好ましい実施形態では、本開示のインクジェットインクは、そのような大量印刷テスト中に「良好」評価を達成する。
【0090】
印刷物
インクジェットインクは、多種多様な印刷物の製造のために、三次元部品及びロール形態で供給される平坦なシート又はウェブを含む様々な基材上に印刷することができる。加えて、基材は、様々な表面タイプ、例えば、平坦な表面、粒状化された表面等の構造化された表面、並びに湾曲した及び/又は複雑な表面等の三次元表面を有することができ、これらは、湾曲した及び/又は複雑な表面のすべての部分に到達するためにインクが移動しなければならない長い距離のために、困難な基材であることがよく知られている。このような印刷物は、グラフィックアート、テキスタイル、パッケージング(例えば、食品包装、医薬品包装等)、宝くじ、ビジネスフォーム、出版等の業界に適しており、その例としては、タグやラベル、宝くじ券、出版物、パッケージング(軟包装)、折り畳み式カートン、硬質容器(プラスチックカップや桶、ガラス容器、金属缶、ボトル、ジャー、チューブ)、店頭でのディスプレイ(point-of-sale display)等が挙げられる。
【0091】
インクジェットインクは、多孔質又は浸透性基材上に印刷されてもよく、その例としては、非コート紙、木材、膜、及び布(例えば、織布、不織布、及びホイルラミネート布が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
インクジェットインクはまた、非多孔性又は非浸透性基材、例えば、様々なプラスチック、ガラス、金属(例えば、鋼、アルミニウム等)、及び/又は非浸透紙(例えば、コート紙)上に印刷されてもよい。これらとしては、成形プラスチック部品及びプラスチックフィルムの平坦なシート又はロールが挙げられ得るが、これらに限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリスチレン(OPS)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、延伸ポリプロピレン(OPP)等のポリオレフィン、ポリ乳酸(PLA)、ナイロン及び延伸ナイロン、ポリ塩化ビニル(PVC)、セルローストリアセテート(TAC)、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリアセタール、ポリビニルアルコール(PVA)等を含むものが挙げられる。好ましい実施形態では、基材はPETフィルムであり、その一例は帝人株式会社製のU292Wである。
【0093】
印刷画像の形成方法
インクジェット印刷では、ドットの精密なパターンが、プリントヘッドとして知られる液滴生成デバイスから印刷媒体上に吐出されると、所望の印刷画像が形成される。プリントヘッドは、ノズルプレート上に配置され、インクジェットプリントヘッド基材に取り付けられた、精密に形成されたノズルのアレイを有する。インクジェットプリントヘッド基材は、1つ以上のインクリザーバとの流体連通を通してインクジェットインクを受容する発射チャンバのアレイを組み込む。各発射チャンバは、発射抵抗器として知られる抵抗素子を有し、この抵抗素子は、インクジェットインクが発射抵抗器とノズルとの間に集まるように、ノズルの反対側に配置される。各抵抗素子は典型的には抵抗材料のパッドであり、例えば約35μm×35μmの大きさである。プリントヘッドは、プリントカートリッジ又はインクジェットペンと呼ばれる外装によって保持及び保護される。特定の抵抗素子に通電すると、インクジェットインクの液滴がノズルを通って印刷媒体に向かって吐出される。インク液滴の発射は、典型的には、マイクロプロセッサの制御下にあり、マイクロプロセッサの信号は、電気トレースによって抵抗素子に伝達され、印刷媒体上に英数字及び他の画像パターンを形成する。ノズルは小さく、典型的には直径10μm~40μmであるので、目詰まりを最小限に抑えるインクが望ましい。特に、サーマルインクジェット(TIJ)は開放雰囲気プリントヘッド設計(ノズルオリフィスは大気に開放されており、インク加圧を可能にするためにオリフィスにバルブシールが存在しない)であるため、TIJ印刷は、デキャップ時間(プリントアイドル時間)がノズル内及び周囲のインクの早期乾燥を引き起こす間欠印刷中の性能低下に歴史的に悩まされてきた。
【0094】
本開示は、1つ以上の実施形態において、サーマルインクジェットプリントヘッドによって基材の表面上にインクジェットインクを塗布し、インクジェットインクを乾燥させることによって、印刷画像を形成する方法を提供する。本明細書に記載されるインクジェットインクを使用することで、サーマルインクジェットプロセスに一般的に関連する短いデキャップ時間(溶媒損失の速度が速すぎる)及び遅い乾燥時間(溶媒損失の速度が遅すぎる)という相反する問題を克服しながら、依然として高品質の印刷を生成することができる。
【0095】
本方法の印刷ユニットとしては、インクジェット印刷の技術分野で当業者に知られている任意のドロップオンデマンドプリントヘッドを使用することができ、これには、連続プリントヘッド、サーマルプリントヘッド、静電プリントヘッド、及び音響プリントヘッドが含まれるが、好ましくはサーマルプリントヘッド(熱変換器を有する)が使用される。例えば、印刷解像度、印刷速度、プリントヘッドパルス加温温度、駆動電圧及びパルス長等の典型的なパラメータは、プリントヘッドの仕様に従って調整することができる。本明細書の方法での使用に一般に適したプリントヘッドは、2~80pLの範囲の液滴サイズ及び10~100kHzの範囲の液滴周波数を有し、高品質のプリントは、例えば、駆動電圧を8.0~9.5ボルトに、印刷速度を300フィート/分までに、パルス加温温度を25~45℃に、及びパルス長を0.7~2.5マイクロ秒に設定することによって得ることができるが、これらの値を上回った、あるいは下回った値も使用することができ、依然として満足のいくプリントを得ることができる。開示された方法での使用に適した1つの非限定的なプリントヘッドの例は、ヒューレットパッカード社製のHP45SIである。
【0096】
塗布後、インクジェットインクを乾燥させる。好ましい実施形態では、乾燥は、塗布されたインクジェットインクを周囲条件下(空気中、約23℃)で30秒間以下、好ましくは25秒間以下、より好ましくは20秒間以下、更により好ましくは15秒間以下乾燥させることによって達成される。
【0097】
塗布されたインクジェットインクを乾燥させるために外部熱を加えてもよいが、好ましい実施形態では、乾燥を促進するために、又は乾燥速度を増加させるために外部熱を加えない。例えば、塗布後にインクジェットインクを乾燥させるためにヒーターを使用しないことが好ましい。更に、本開示の方法は、エネルギー硬化(例えば、UV又は電子ビーム硬化)を必要としない。塗布されたインクが乾燥したと判断されたら、更にインクジェットインクを塗布してもよいし、又は当業者に公知の任意の処理ステップを必要に応じて実行してもよい。
【0098】
また、本明細書の方法では、インクジェットインクを塗布する前に、コロナ処理、大気圧プラズマ処理、及び火炎処理等の基材表面処理を任意選択で使用して、印刷物特性、例えばインク接着性を改善することができることも認識すべきである。このような基材表面処理のパラメータは、印刷される基材材料、利用される特定のインクジェットインク、適用される印刷方法、並びに印刷物の所望の特性及び用途に応じて大きく変動し得る。
【0099】
以下の実施例は、インクジェットインクを更に例示することを意図しており、特許請求の範囲を限定することを意図していない。
【実施例
【0100】
インクジェットインク
インクジェットインクのいくつかの例を以下の表1に示す。なお、各成分の含有量は、総重量を100%としたときの重量%で表される。RM=原材料。BYK-3550は、ビックケミー・ジャパン株式会社から入手可能なシリコーンアクリレート共重合体である。DERTOPHENE T115は、DRT/Pinova社から入手可能なテルペンフェノール樹脂である。VALIFAST Black3870は、オリエント化学工業株式会社から入手可能な黒色アゾ金属錯体染料である。界面活性剤/薬剤として、AMINON L-02は花王株式会社から入手可能なラウラミドDEAであり、AMIET 105及びAMIET 302は花王株式会社から入手可能なポリオキシエチレン脂肪族アミンであり、AMPHITOL 20Nは花王株式会社から入手可能なラウリルジメチルアミンオキシドであり、AMPHITOL 24Bは花王株式会社から入手可能なラウリルベタインであり、ELEC ACは花王株式会社から入手可能なイミダゾール系の両性界面活性剤であり、EMASOL L-10Vは花王株式会社から入手可能なソルビタンモノラウレートである。*は、以下の表において、例が比較例であることを示す。
【0101】
【表1】
【0102】
調製方法
実施例のインクジェットインクを調製するために、テルペンフェノール樹脂を最初に1-プロパノールと合わせ、マグネチックスターラーで少なくとも30分間混合した。次いで、エタノールを、中和試薬(イソプロパノールアミン)及びシリコンアクリレート共重合体と共に混合物に添加し、少なくとも15分間混合した。次に、着色剤を加え、少なくとも30分間混合した。その後、界面活性剤/薬剤を15分間混合しながら混合物にゆっくりと添加した。最後に、インクジェットインクを1.0μmフィルターで濾過した後、ヒューレットパッカード社製のHP45SIカートリッジを用いて評価した。
【0103】
インクジェットインク評価方法
印刷サンプル調製
インクを評価するために、ヒューレットパッカード社に関連する熱印刷技術を使用した(ソフトウェアとハードウェアはInc.jet社製、搬送台はKirk Rudy社製)。印刷基材には白色PETフィルム(帝人株式会社製U292W)を用いた。
【0104】
乾燥時間測定
乾燥時間を評価するために使用した印刷条件は以下の通りであった。
・印刷解像度:600dpi×300dpi(縦×横)
・印刷速度:100フィート/分
・駆動電圧:8.4V
・パルス長:1.80μs
・パルス加温温度:40℃
・印刷画像:100%デューティ(1cm×10cm、モノクロビットマップ、ソリッドブロック画像)
・条件:25℃、湿度30%
【0105】
摩耗試験は、一定時間(10、20、及び30秒間)経過後に指で行った。色のついた指は、完全な乾燥のための十分な時間が経過していないことを示し(「NG」、不良)、色のついていない指は、完全な乾燥のための十分な時間が経過していることを示す(「G」、良好)。30秒間を超える乾燥時間は許容できない(遅い乾燥)と見なされ、30秒間以下の乾燥時間は許容できる(速い乾燥)と見なされた。
【0106】
デキャップ時間測定
デキャップ時間を評価するために使用した印刷条件は以下の通りであった。
・印刷解像度:300dpi×300dpi(縦×横)
・印刷速度:100フィート/分
・駆動電圧:8.4V
・パルス長:1.80μs
・パルス加温温度:40℃
・印刷画像:100%デューティ(1mm×1cm、モノクロビットマップ、細線画像)
・条件:25℃、湿度30%
【0107】
細線画像を印刷し、印刷画像にノズル抜けがないことを確認した。確認後、プリントヘッドを特定の時間(5分間、10分間、又は1時間)デキャップのままにし、次いで同じ細線画像を使用して再印刷した。再印刷した画像(特定の時間経過後)を、ノズル抜けがないかチェックした。ノズル抜けがなかった場合、その時間間隔でインクジェットインクを良好(「G」)と評価した。そうではなく、ノズル抜けが明らかである場合、インクジェットインクは、その時間間隔で不良(「NG」)と評価した。10分間以上デキャップ(すなわち、空気に曝される)してもデキャップ分類が「良好」に保たれるインクジェットインクは許容可能であるとみなされた(長い又は長期のデキャップ時間を有する)。
【0108】
大量印刷操作における印刷品質(PQ)測定
大量印刷操作中のインクの信頼性を評価するために、使用した印刷条件は以下の通りであった。
・印刷解像度:600dpi×300dpi(縦×横)
・印刷速度:100m/分
・駆動電圧:8.4V
・パルス長:1.80μs
・パルス加温温度:40℃
・印刷画像:100%デューティ(図1参照)
- 1mm×1cm、モノクロビットマップ、「012345678912」と示されたユニバーサル製品コード(UPC)12バーコード画像
- 「コリンズインク」と示された2Dデータマトリックス
- 花王印刷ソフトウェアによって供給されるパージバー
・条件:25℃、湿度30%
【0109】
印刷画像を500回連続印刷した後、印刷操作を1分間停止した。1分間のダウンタイムの後、同じ印刷条件を用いて1つの追加の印刷画像を印刷した(印刷#501)。最初の印刷(PQ印刷#1)、500番目の印刷(PQ印刷#500)、及び501番目の印刷(PQ印刷#501、1分間のダウンタイム後)の印刷品質を、ノズル抜けをチェックする目視検査方法によって判定した。ノズル抜けがなかった場合、インクジェットインクは、その印刷について良好(「G」)と評価した。そうではなく、ノズル抜けが明らかである場合、インクジェットインクは、その印刷について不良(「NG」)と評価した。印刷#1、印刷#500、及び印刷#501(1分間のダウンタイム後)のそれぞれについて「良好」な評価を維持するインクジェットインクは、大量印刷操作に対して許容可能であると見なされた。
【0110】
インクジェットインク性能
【表2】
【0111】
表2に示すように、本開示の化合物(B)と組み合わせてテルペンフェノール樹脂を含有するインクジェットインク(実施例1~3)は、速乾性(30秒間以下の乾燥時間で「良好」な評価を達成する)と、長いデキャップ時間を有する(10分間以上デキャップされた場合に「良好」なデキャップ分類を維持する)という両方の特徴を備えていた。更に、これらのインクはまた、静電荷を帯びた環境によって引き起こされる、静電気の誘発によるノズルの目詰まり/詰まりの影響を防止することができ、1分間のダウンタイム後であっても大量印刷操作中に高い印刷品質を提供した(PQ印刷#501はPQ印刷#500と同じであった)(例えば、図1、実施例1及び2を参照)。
【0112】
一方、化合物(B)を除去した(比較例7)又は他の界面活性剤/薬剤で置き換えた(比較例4~6及び8)インクジェットインクは、大量印刷操作中に不良な印刷品質を提供した(PQ印刷#501はPQ印刷#500と比較して不良であった)(例えば、図1、実施例7を参照)。
【0113】
数値の限界又は範囲が本明細書に記載されている場合、端点も含まれる。また、数値の限界又は範囲内のすべての値及び部分範囲は、明示的に記載されているかのように具体的に含まれる。
本明細書で使用される場合、単語「a」及び「an」等は、「1つ以上」という意味を有する。
【0114】
明らかに、本発明の多数の変更及び変形が上記の教示に照らして可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
上記のすべての特許及び他の参考文献は、詳細に記載されている場合と同じように、この参考文献によって完全に本明細書に組み込まれる。

図1