(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】多段階重合プロセスにおいてアルファ-オレフィンポリマーを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/34 20060101AFI20240401BHJP
C08F 2/01 20060101ALI20240401BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
C08F2/34
C08F2/01
C08F10/00
(21)【出願番号】P 2022550767
(86)(22)【出願日】2021-02-23
(86)【国際出願番号】 EP2021054379
(87)【国際公開番号】W WO2021170552
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-10-21
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513276905
【氏名又は名称】ボレアリス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BOREALIS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】レスキネン,パウリ
(72)【発明者】
【氏名】エロヴァイニオ,エルノ
(72)【発明者】
【氏名】キヴェラ,ヨウニ
(72)【発明者】
【氏名】ニュフォルス,クラウス
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-509475(JP,A)
【文献】特表2013-508484(JP,A)
【文献】特開2001-288203(JP,A)
【文献】特表2009-545659(JP,A)
【文献】特開2008-121028(JP,A)
【文献】特開平06-041234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/34
C08F 2/01
C08F 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの気相反応器を含む多段階重合プロセスにおいてアルファ-オレフィンポリマー組成物を製造するための方法であって、該方法は以下の工程:
a)第1気相重合反応器中、アルファ-オレフィン重合触媒および第1反応ガス混合物の存在下で、第1アルファ-オレフィンポリマーを重合し、第1アルファ-オレフィンポリマーおよび前記第1反応ガス混合物を形成する工程;
b)その中に分散した前記アルファ-オレフィン重合触媒を含む第1アルファ-オレフィンポリマーと共に、前記第1反応ガス混合物を第1気相重合反応器から連続的または間欠的に取り出し、第1生成物ストリームを形成する工程;
c)前記第1生成物ストリームを第1出口容器に導き、前記第1出口容器においてアルファ-オレフィンポリマーの層を形成する工程;
d)前記第1反応ガス混合物のストリームを前記第1出口容器から取り出し、これを前記第1気相重合反応器内に戻す工程;
e)前記出口容器から前記第1アルファ-オレフィンポリマーを連続的または間欠的に取り出し、第2生成物ストリームを形成する工程;
f)前記第2生成物ストリームを第2気相重合反応器内に導き、アルファ-オレフィン重合触媒および第2反応ガス混合物の存在下で前記第1アルファ-オレフィンポリマーを重合し、第2アルファ-オレフィンポリマーおよび前記第2反応ガス混合物を形成する工程;
g)その中に分散したアルファ-オレフィン重合触媒を含む前記第2アルファ-オレフィンポリマーと共に、前記第2反応ガス混合物を第2気相重合反応器から連続的または間欠的に取り出し、第3生成物ストリームを形成する工程;および
h)前記第3生成物ストリームを第2出口容器に導き、前記第2出口容器においてアルファ-オレフィンポリマーの層を形成する工程;
を含み、
前記第2気相重合反応器から取り出された未反応ガスは圧縮機で圧縮され、圧縮されたガスは、前記第1出口容器と前記第2気相重合反応器との間の出口に供給されることを特徴と
し、
ここで、前記第2気相重合反応器から取り出された未反応ガスは第1気相重合反応器に導かれない、方法。
【請求項2】
第1気相重合反応器の上流に、少なくとも1つのスラリー反応器、好ましくはループ反応器を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2気相重合反応器の下流に少なくとも1つのさらなる気相重合反応器を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのさらなる気相重合反応器から取り出された未反応ガスを圧縮機で圧縮し、該圧縮ガスを、前記少なくとも1つのさらなる気相重合反応器のすぐ上流の気相重合反応器の出口容器に、前記出口容器と前記少なくとも1つのさらなる気相重合反応器との間の出口内へ供給する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
気相重合反応器の出口容器の圧力が、それぞれの生成物ストリームが取り出される重合段階の圧力の10%以内である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第1反応ガス混合物の前記流れが、前記出口容器内の前記のアルファ-オレフィンポリマー層のレベルより上から取り出される、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
アルファ-オレフィンポリマーが、前記出口容器内で、沈下した下向きのアルファ-オレフィンポリマーの移動層を形成する、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第2気相重合反応器は、前記第1反応ガス混合物の組成とは少なくとも1つの成分に関して異なる第2反応ガス混合物を含有し、前記第1反応ガス混合物とは異なる第2ガスが前記出口容器のいずれかに導入される、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記第2ガスは、前記第2
反応ガス混合物と同じ組成を有する、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのアルファ-オレフィンモノマーは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、または1-オクテン、1-デセンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~
9のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの気相重合反応器を含む、多段階重合プロセスにおいてアルファ-オレフィンポリマーを製造するための方法に関する。
【0002】
気相反応器は、ポリマー設計と種々の触媒系の使用において比較的高い柔軟性を可能にするため、エチレンやプロピレンなどのアルファ-オレフィンの重合に一般的に使用される。一般的な気相反応器の変形は、流動層(fluidized bed)反応器である。
【0003】
特に、幅広い用途向けの異なる特性のプロピレンポリマーを生成するために2つ以上の後続の反応器段階が採用されるプロピレン重合などにおいて、流動層反応器などのアルファ-オレフィン重合気相反応器は、下流の処理ユニットまたは後続の反応器のいずれかに送られる粒子状のポリマー材料を除去するために、典型的には出口容器と共に使用される。
【0004】
生成物出口容器を操作する際の課題は、生成されたポリマー粉末を、容器出口を介して、流動層反応器から来る最小量の同伴ガス混合物と共に除去することである。ポリマー粉末中のガスの量が増加すると、廃棄物フレアが発生し、得られるポリマー粉末の品質の問題が発生する可能性もある。
【0005】
さらなる問題は、気相反応器の1つを出るガス組成物またはスラリー反応器からの反応ガスの持ち越しが、後続の下流反応器において生成されるポリマー特性に大きな影響を与えることである。したがって、ポリマー粒子に含まれるガス混合物は注意深く制御する必要がある。
【0006】
特に、プラント全体の停止を伴う移送ラインの誤動作、障害、または詰まりが発生する可能性があり、これは多大な生産性損失と安全上のリスクの可能性につながる。
【0007】
EP 2 330 135 A1は、オレフィン重合触媒の存在下、気相中、2つの連続する反応器においてポリオレフィンを製造する方法を開示し、ここで、第1反応ガス混合物は、生成されたオレフィンポリマーと、その中に分散されたオレフィン重合触媒と共に、第1重合反応器から取り出され、第1生成物ストリームを形成する;前記第1生成物ストリームは出口容器へと向けられ、該出口容器中でポリマーの層を形成する;前記出口容器から前記第1反応ガス混合物の一部を取り出し、第1重合反応器内に戻す;オレフィンポリマーは前記出口容器から取り出され、第2生成物ストリームを形成する;前記第2生成物ストリームは第2重合反応器へ向けられる、ここで前記出口容器は、実質的に、前記第1生成物ストリームが取り出される位置での第1反応段階における圧力と同じ圧力で作動し、第1反応ガス混合物の一部は、出口容器よりも圧力が低い位置まで、第1重合段階に戻される。
【0008】
このような方法は、上記の問題を軽減し得るが、依然として移送ラインの誤動作、障害、または詰まりが発生する可能性があり、さらなる改善が望まれている。
【背景技術】
【0009】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許出願公開第2 330 135号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、削減されたプロセスコスト、および高収率で、マルチモーダルオレフィンポリマーを製造することができるプロセスを提供することである。したがって、異なる分子量および/またはコモノマー含有量を有する少なくとも2つの成分を含むアルファ-オレフィンポリマー組成物を製造できることが本発明の発見である。さらに、本発明は、ポリマーを1つの重合反応器から別の重合反応器に移すための簡単で経済的な方法を提供する。特に、本発明は、従来技術のプロセスよりも著しく低い投資コストおよび操作コストを伴うプロセスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、少なくとも2つの連続した気相反応器中、オレフィン重合触媒の存在下で製造された、少なくとも1つのアルファ-オレフィンポリマーを含むアルファ-オレフィンポリマー組成物の製造方法であって、以下の工程を含む製造方法を提供する:
a)第1気相重合反応器中、アルファ-オレフィン重合触媒および第1反応ガス混合物の存在下で、第1アルファ-オレフィンポリマーを重合し、第1アルファ-オレフィンポリマーおよび前記第1反応ガス混合物を形成する工程;
b)その中に分散した前記アルファ-オレフィン重合触媒を含む第1アルファ-オレフィンポリマーと共に、前記第1反応ガス混合物を第1気相重合反応器から連続的または間欠的に取り出し、第1生成物ストリームを形成する工程;
c)前記第1生成物ストリームを第1出口容器に導き、前記第1出口容器においてアルファ-オレフィンポリマーの層(bed)を形成する工程;
d)前記第1反応ガス混合物のストリームを前記第1出口容器から取り出し、これを前記第1気相重合反応器内に戻す工程;
e)前記出口容器から前記第1アルファ-オレフィンポリマーを連続的または間欠的に取り出し、第2生成物ストリームを形成する工程;
f)前記第2生成物ストリームを第2気相重合反応器内に導き、アルファ-オレフィン重合触媒および第2反応ガス混合物の存在下で前記第1アルファ-オレフィンポリマーを重合し、第2アルファ-オレフィンポリマーおよび前記第2反応ガス混合物を形成する工程;
g)その中に分散したアルファ-オレフィン重合触媒を含む前記第2アルファ-オレフィンポリマーと共に、前記第2反応ガス混合物を第2気相重合反応器から連続的または間欠的に取り出し、第3生成物ストリームを形成する工程;および
h)前記第3生成物ストリームを第2出口容器に導き、前記第2出口容器においてアルファ-オレフィンポリマーの層(bed)を形成する工程;
ここで、前記第2気相重合反応器から取り出された未反応ガスは圧縮機で圧縮され、該圧縮されたガスは、前記第1出口容器と前記第2気相重合反応器との間の出口に供給される。
【0013】
重合系は、第1気相重合反応器の上流の少なくとも1つのスラリー反応器(好ましくはループ反応器)および/または第2気相重合反応器の下流の少なくとも1つのさらなる気相重合反応器を含み得る。
【0014】
前記の少なくとも1つのさらなる気相重合反応器のいずれかにおいて、好ましくは未反応ガスを取り出し、それぞれの反応器の下流の圧縮機で圧縮し、該圧縮されたガスを、前記の少なくとも1つのさらなる気相重合反応器のすぐ上流の気相重合反応器の出口容器に供給し、前記出口容器と前記少なくとも1つのさらなる気相重合反応器との間の出口中に供給してよい。少なくとも1つのさらなる気相重合反応器の、1つまたはそれより多く、あるいは全てにおいて、この処理を確立してよい。
【0015】
本発明のさらなる好ましい特徴は、従属請求項で定義される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明によるプロセスの基本的な設定を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の好ましい実施形態によるプロセスの基本設定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<重合>
本発明の方法で重合されるモノマーは、典型的には、2~12個の炭素原子、好ましくは2~10個の炭素原子を有するアルファ-オレフィンである。好ましくは、オレフィンはエチレンまたはプロピレンであり、場合により2~8個の炭素原子を有する1つ以上の他のアルファ-オレフィンを伴う。とりわけ好ましくは、本発明の方法は、場合により4~8個の炭素原子を有するアルファ-オレフィンから選択される1つまたは複数のコモノマーと共に、エチレンを重合するために;または、場合によりエチレンおよび4~8個の炭素原子を有するアルファ-オレフィンから選択される1つまたは複数のコモノマーと共に、プロピレンを重合するために使用される。
【0018】
したがって、ポリマー材料は、2~12個の炭素原子、好ましくは2~10個の炭素原子のアルファ-オレフィンモノマー単位を有するアルファ-オレフィンホモポリマーまたはコポリマーから好ましくは選択される。エチレンまたはプロピレンのホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。エチレンコポリマーのコモノマー単位は、好ましくは、4~8個の炭素原子を有するアルファ-オレフィンから選択される1つ以上のコモノマーから選択される。プロピレンコポリマーのコモノマー単位は、好ましくは、エチレンおよび4~8個の炭素原子を有するアルファ-オレフィンから選択される1つ以上のコモノマーから選択される。
【0019】
本発明によるポリプロピレンは、0.860-0.970g/cm3の範囲の密度を有していてよく、好ましくは、少なくとも50%のタクティシティを有するアイソタクチックポリプロピレン;ランダムおよび異相プロピレンコポリマー;および、これらポリマーの他のオレフィンまたは非オレフィンポリマーを含むブレンド(ここで、かかる他のポリマーは全プロピレンポリマー組成物の40重量%を超えてはならない)からなる群から選択され得る。ポリプロピレンは、例えば、市販のポリマーであるか、または化学文献に記載された既知の重合プロセスに従って、またはそれに類似して調製することができる。
【0020】
ポリプロピレンは、分子量分布、コモノマー分布または密度分布の1つまたは複数に関してユニモーダルまたはマルチモーダルであり得る。マルチモーダルポリオレフィンは、異なる重量平均分子量、好ましくはより低い重量平均分子量(LMW)およびより高い重量平均分子量(HMW)を有する、少なくとも2つのポリマー成分を有し得る。ユニモーダルポリオレフィンは、典型的には、単段階重合(例えば溶液重合、スラリー重合、または気相重合)を用いて当技術分野で周知の方法で調製される。マルチモーダル(例えばビモーダル)ポリプロピレンは、別々に調製された2つ以上のポリマー成分を機械的にブレンドすることによって、または、ポリマー成分の製造プロセス中の多段階重合プロセスにおいてインサイチュでブレンドすることによって、製造することができる。機械的およびインサイチュでのブレンドの両方が、この分野ではよく知られている。多段階重合プロセスは、一連の反応器(例えば、スラリー反応器および/または1つまたは複数の気相反応器であり得る、ループ反応器など)で好ましくは実施され得る。好ましくは、ループ反応器および少なくとも1つの気相反応器が使用される。重合は予備重合工程によって先行されていてもよい。
【0021】
プロピレンポリマーの他の例は以下である:ホモポリプロピレン、例えばアイソタクチックポリプロピレン;またはEPDM(プロピレン、および、ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンまたはエチリデンノルボルネンなどのジエンと共重合されたエチレン)などのプロピレンコポリマー。コモノマーは、ランダムに、またはブロック構造および/またはグラフト構造で組み込むことができる。
【0022】
本発明によれば、オレフィンポリマーは、ヘテロ相オレフィンコポリマー(例えばヘテロ相プロピレンコポリマー)を含むか、またはヘテロ相オレフィンコポリマー(例えばヘテロ相プロピレンコポリマー)であり得る。ヘテロ相プロピレンコポリマーは、好ましくは、マトリックス相としてプロピレンランダムコポリマーを含む異相コポリマー(RAHECO)またはマトリックス相としてプロピレンホモポリマーを有するヘテロ相コポリマー(HECO)であり得る。ランダムコポリマーは、コモノマー部分がポリマー鎖にランダムに分布している共重合体であり、ランダムな長さの2つの単量体単位(単一分子を含む)の交互配列から構成されている。ランダムプロピレンコポリマーは、エチレンおよびC4-C8アルファ-オレフィンからなる群から選択される少なくとも1つのコモノマーを含むことが好ましい。好ましいC4-C8アルファ-オレフィンは、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテンまたは1-オクテンであり、より好ましくは1-ブテンである。特に好ましいランダムプロピレンコポリマーは、プロピレンおよびエチレンを含むか、またはそれらからなってよい。さらに、ポリプロピレンマトリックスのコモノマー含有量は、好ましくは0.5~10重量%、より好ましくは1~8重量%、さらにより好ましくは2~7重量%である。最適な加工性と必要とされる機械的特性を組み合わせるために、ポリプロピレンの1つの成分が他の成分よりも多くのコモノマーを含むようにして、コモノマーの導入を調整することができる。適当なポリプロピレンは、例えばWO 03/002652に記載されている。
【0023】
<重合触媒>
気相-固相オレフィン重合反応器における重合は、オレフィン重合触媒の存在下で行われる。触媒は、所望のオレフィンポリマーを生成することができる任意の触媒であり得る。適当な触媒は、とりわけ、チタン、ジルコニウムおよび/またはバナジウム触媒などの遷移金属に基づくチーグラー・ナッタ触媒である。特にチーグラー・ナッタ触媒は、幅広い範囲の分子量で、高い生産性でオレフィンポリマーを製造できるため、有用である。
【0024】
適当なチーグラー・ナッタ触媒は、好ましくは、粒子状支持体上に担持されたマグネシウム化合物、アルミニウム化合物およびチタン化合物を含有する。
【0025】
粒子状支持体は、シリカ、アルミナ、チタニア、シリカ-アルミナおよびシリカ-チタニアなどの無機酸化物支持体であり得る。好ましくは、支持体はシリカである。
【0026】
シリカ支持体の平均粒子サイズは、通常、6~100μmである。しかしながら、支持体が6~90μm、好ましくは10~70μmのメジアン粒子径を有する場合、特別な利点が得られることがわかった。
【0027】
マグネシウム化合物は、マグネシウムジアルキルとアルコールとの反応生成物である。アルコールは、直鎖または分枝脂肪族モノアルコールである。好ましくは、アルコールは6~16個の炭素原子を有する。分岐アルコールが特に好ましく、2-エチル-1-ヘキサノールは好ましいアルコールの一例である。マグネシウムジアルキルは、同一または異なっていてよい2つのアルキル基に結合したマグネシウムの任意の化合物であり得る。ブチル-オクチルマグネシウムは、好ましいマグネシウムジアルキルの一例である。
【0028】
アルミニウム化合物は塩素含有アルミニウムアルキルである。特に好ましい化合物は、アルミニウムアルキルジクロリドおよびアルミニウムアルキルセスキクロリドである。
【0029】
チタン化合物は、ハロゲン含有チタン化合物、好ましくは塩素含有チタン化合物である。特に好ましいチタン化合物は四塩化チタンである。
【0030】
触媒は、EP-A-688794またはWO-A-99/51646に記載されているように、担体を上記の化合物と連続的に接触させることによって調製することができる。あるいは、WO-A-01/55230に記載されているように、最初に該成分から溶液を調製し、次に該溶液を担体と接触させることによって調製することができる。
【0031】
適当なチーグラー・ナッタ触媒の別のグループには、支持体として作用するハロゲン化マグネシウム化合物と共にチタン化合物が含まれている。したがって、触媒は、二塩化マグネシウムのような二ハロゲン化マグネシウム上のチタン化合物を含む。このような触媒は、例えば、WO-A-2005/118655およびEP-A-810235に開示されている。
【0032】
さらに、さらなるタイプのチーグラー・ナッタ触媒は、エマルションが形成され、活性成分が、少なくとも2つの液相のエマルション中に分散相、すなわち不連続相を形成する方法によって調製される触媒である。液滴の形態の分散相が、エマルションから固化され、固体粒子の形態の触媒が形成される。これらのタイプの触媒の製造原理は、Borealis のWO-A-2003/106510に記載されている。
【0033】
チーグラー・ナッタ触媒は、活性化剤と共に使用される。適当な活性化剤は、金属アルキル化合物、および、特にアルミニウムアルキル化合物である。これらの化合物には、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジメチルアルミニウムクロリドなどのアルキルアルミニウムハライドが含まれる。それらにはまた、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウムおよびトリ-n-オクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム化合物も含まれる。さらに、それらには、メチルアルミニウムオキサン(MAO)、ヘキサイソブチルアルミニウムオキサン(HIBAO)およびテトライソブチルアルミニウムオキサン(TIBAO)などのアルキルアルミニウムオキシ化合物が含まれる。イソプレニルアルミニウムなどの他のアルミニウムアルキル化合物を使用してもよい。特に好ましい活性化剤はトリアルキルアルミニウムであり、その中でもトリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムが特に使用される。必要な場合、活性化剤は外部電子供与体も含み得る。適当な電子供与体化合物は、以下に開示されている:WO-A-95/32994、US-A-4107414、US-A-4186107、US-A-4226963、US-A-4347160、US-A-4382019、US-A-4435550、US-A-4465782、US 4472524、US-A-4473660、US-A-4522930、US-A-4530912、US-A-4532313、US-A-4560671、およびUS-A-4657882。Si-OCOR、Si-OR、および/またはSi-NR2結合を含み、中心原子としてケイ素を有し、Rが1~20個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、またはシクロアルキルである、オルガノシラン化合物からなる電子供与体も当技術分野において知られている。このような化合物は以下に記載されている:US-A-4472524、US-A-4522930、US-A-4560671、US-A-4581342、US-A-4657882、EP-A-45976、EP-A-45977、およびEP-A-1538167。
【0034】
活性化剤の使用量は、特定の触媒と活性化剤に依存する。典型的には、トリエチルアルミニウムは、Al/Tiのような遷移金属に対するアルミニウムのモル比が1~1000、好ましくは3~100、特に約5~約30モル/モルとなるような量で使用される。
【0035】
メタロセン触媒も使用してよい。メタロセン触媒は、シクロペンタジエニル、インデニルまたはフルオレニル配位子を含む遷移金属化合物を含む。好ましくは、触媒は2つのシクロペンタジエニル、インデニルまたはフルオレニル配位子を含み、これらはケイ素および/または炭素原子を好ましくは含む基によって架橋されていてよい。さらに、配位子は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、シリル基、シロキシ基、アルコキシ基または他のヘテロ原子基などの置換基を有してもよい。適当なメタロセン触媒は当技術分野で知られており、とりわけ、以下に開示されている:WO-A-95/12622、WO-A-96/32423、WO-A-97/28170、WO-A-98/32776、WO-A-99/61489、WO-A-03/010208、WO-A-03/051934、WO-A-03/051514、WO-A-2004/085499、EP-A-1752462およびEP-A-1739103。
【0036】
<前重合段階>
第1気相重合反応器での重合は、予備重合またはスラリー相または気相で行われる別の重合段階などの、前重合段階によって先行されてもよい。このようなスラリー相反応器としては、ループ反応器が好ましい。このような重合段階は、存在する場合、当技術分野で周知の手順に従って行うことができる。本発明の重合プロセスに先行する重合および他のプロセス段階を含む適当なプロセスは、以下に開示されている:WO-A-92/12182、WO-A-96/18662、EP-A-1415999、WO-A-98/58976、EP-A-887380、WO-A-98/58977、EP-A-1860125、GB-A-1580635、US-A-4582816、US-A-3405109、US-A-3324093、EP-A-479186およびUS-A-5391654。当業者によく理解されるように、触媒は前重合段階の後も活性を維持する必要がある。
【0037】
<気相アルファ-オレフィン重合>
気相アルファ-オレフィン重合において、ガス状のアルファ-オレフィンモノマーがそれぞれの気相重合反応器に導入され、重合中にポリマー粒子が成長する。
【0038】
本発明のプロセスは、少なくとも2つの気相反応器の使用を含む限り、アルファ-オレフィンホモポリマーまたはコポリマーの重合に適したあらゆる種類の気体-固体オレフィン重合反応器に適している。適当な反応器は、例えば、連続撹拌タンク反応器または流動層反応器である。両方のタイプの気体-固体オレフィン重合反応器は、当技術分野でよく知られている。
【0039】
好ましくは、気体-固体オレフィン重合反応器は流動層反応器である。
【0040】
流動層反応器では、上向きに移動するガスストリーム内で成長するポリマー粒子によって形成される流動層で重合が起こる。流動層では、活性触媒を含むポリマー粒子が、モノマー、コモノマー、および水素などの反応ガスと接触し、粒子上でのポリマーの生成が引き起こされる。
【0041】
本発明による典型的なプロセスは
図1に示されており、ここで、アルファ-オレフィンポリマーは、2つの気相反応器(好ましくは流動層気相反応器)10および30で重合される。前の重合段階からの、ポリマー粒子中に分散されていてもよい触媒は、導管11を介して、流動層のレベルより下であるが流動層のベースよりも上で、第1気相反応器内に導入される。未反応ガスは、導管12を介して該反応器の頂部から収集され、圧縮機15で圧縮され、熱交換器16で冷却される。冷却され圧縮されたガスは、導管13を介して、流動層のベースよりも下で、該反応器に再導入される。ポリマーは、いくらかの随伴ガスと共に導管14を介して反応器から取り出され、出口容器20内へと導かれる。出口容器20内にガスが導管21を介して供給される。該ガスは出口容器20において上方へと流れ、ポリマーと共に反応器10から導管14を介して出口容器20に入るガスを除去するのを助ける。該ガスは導管22を介して出口容器20から取り出され、反応器10内または圧縮機15の前の循環ガスライン12内に戻され得る。導管21から入るガスとの混合物の状態であるポリマーは、導管31を介して出口容器20から出る。出口容器20から反応器30へのポリマーの空気圧移送を容易にするために、導管23を介して追加のガスを導入してよい。次いで、反応器10について上述したのと同様の方法で、反応器30において重合が継続される。未反応ガスは導管32を介して反応器30の頂部から集められ、圧縮機35で圧縮され、熱交換器36で冷却される。冷却され圧縮されたガスは、導管33を介して、流動層のベースよりも下で、反応器30に再導入される。プロセスが2つ以上の重合段階を含む場合、本発明は、ポリマーが1つの気相重合段階から別の気相重合段階に移される全ての段階で使用され得る。
【0042】
気相反応器は、流動化グリッドまたはガス分配プレートを含んでいてよいが、好ましくは、そのような流動化グリッドまたはガス分配プレートのない気相反応器が使用される。分配プレートのない流動層反応器は、EP-A-2 495 037およびEP-A-2 495 038に記載されている。
【0043】
流動化ガスは、気固重合反応器から取り出すことができる。流動化ガスとは、モノマー、最終的なコモノマー、連鎖移動剤および不活性成分を含むガスを意味し、例えば流動層反応器の流動層において、その中をポリマー粒子が浮遊する、気体-固体オレフィン重合反応器中で上向きに流れるガスを形成するガスである。未反応ガスは反応器の頂部で収集され、圧縮され、冷却され、反応器の底部に戻される。好ましくは、ガスは圧縮機に送られる前に濾過される。当業者には理解されるように、流動化ガスの組成はサイクル中一定ではない。反応成分は、反応器で消費され、損失を補うために循環ライン内に追加される。
【0044】
追加のモノマー、最終的なコモノマー、水素および不活性ガスは、循環ガスラインに適切に導入される。例えばオンラインガスクロマトグラフィーを用いて循環ガスの組成を分析し、所望されるレベルにその含有量が維持されるように、ガス成分の添加を調整することが好ましい。
【0045】
<ポリマー材料の除去>
ポリマー材料は、気体-固体オレフィン重合反応器から抜き出される。ポリマー材料はまた、適当な領域から、特に好ましくは流動層反応器の中間ゾーンから、気体-固体オレフィン重合反応器から排出され得る。以下では、流動層反応器について議論する。しかし、本発明の方法は、同様に、任意の他の既知のタイプの気相重合反応器で行うことができる。
【0046】
流動層反応器を使用するそのような好ましい重合システムは、本発明の好ましい実施形態である
図2に示されている。したがって、本重合系は、第1重合反応器(10)、第2重合反応器(20)、第3重合反応器(30)を含む。「重合反応器」という用語は、主な重合が起こることを示す。
【0047】
第1重合反応器(10)は、好ましくはスラリー反応器であり、より好ましくはバルクまたはスラリーで連続的に作動するループ反応器である。バルクとは、少なくとも60%(w/w)のモノマーを含む反応媒体中での重合を意味する。本発明によれば、スラリー反応器は好ましくは(バルク)ループ反応器である。ループ反応器(10)は、モノマーフィード、触媒、共触媒およびドナーフィードが供給される予備重合反応器によって上流に先行されてもよい。さらなるモノマーフィード、場合によりコモノマーフィードおよび連鎖移動剤(例えば、水素)が、ループ反応器(10)、および、気相反応器(20)および(30)のいずれか1つ以上に供給され得る。
【0048】
重合反応器(20)および(30)は気相反応器(GPR)である。本発明による気相反応器(GPR)は、好ましくは、流動層反応器、高速流動層反応器または沈降層反応器またはそれらの任意の組み合わせである。第2気相反応器(30)の下流に1つ以上の追加の気相反応器が存在してもよいが、これらは必須ではない。
【0049】
重合反応器(20)および(30)のそれぞれは、気相反応器(20)および(30)に隣接する、それぞれの出口容器(23)および(33)に接続される。流動層反応器(20)および(30)の場合、触媒粒子の流動層が生成され、重合反応により粒子のさらなるポリマー材料が形成される反応ゾーンに維持される。気相反応器(20)および(30)の頂部では、未反応ガスが、流動層反応器の上端にあるそれぞれのガス出口を通って反応器から出る。ガスは、固体フィルターで任意のポリマー粒子から分離され、圧縮機(21)および(31)でそれぞれ再加圧され、熱交換器(22)および(32)でそれぞれ冷却され、それぞれの気相反応器(20)および(30)にそれぞれ再循環される。ポリマー粒子の一部は、それぞれの反応器のポリマー出口を通って流動層反応器を出て、それぞれ隣接する出口容器(23)および(33)の頂部に移される。
【0050】
本発明によれば、前記第2気相重合反応器(30)から抜き出された未反応ガスは圧縮機(31)で圧縮され、該圧縮ガスは搬送ガスライン(25)を介して前記第1出口容器(23)と前記第2気相重合反応器(30)の間の出口に供給される。好ましい実施形態によれば、そのような搬送ガスラインはまた、反応器(30)の下流の任意の更なる気相反応器(
図2には図示せず)を出る未反応の圧縮ガスを、前記第2の出口容器(33)と前記任意の更なる気相反応器の間の出口に移送されてもよい。
【0051】
ポリマー材料は、適当な領域、好ましくは気相の中間ゾーンから、好ましくは流動化反応器から、供給パイプを介してそれぞれの出口容器に、好ましくは出口容器の頂部を通って、取り出される。これにより、ポリマー材料は、通常、ポリマー粉末の形態で排出される。ポリマー粉末は、凝集体をさらに含むことができる。
【0052】
ポリマー粉末と一緒に、同伴ガス混合物が気相反応器(例えば流動化反応器)から取り出される。「同伴ガス混合物(Entrained gas mixture)」は、気体-固体オレフィン重合反応器から供給パイプを介して出口容器内にポリマー材料と共に排出される流動化ガスを意味する。重合プロセスに応じて、同伴ガス混合物は、モノマー、コモノマー、水素、およびプロパン、窒素などの不活性ガスを含み得る。
【0053】
一般に、ポリマー材料は、気体固体オレフィン重合反応器から、断続的または連続的に取り出すことができる。ポリマー材料を連続的に取り出すことが好ましい。
【0054】
ポリマー材料の連続的な排出、すなわち連続的な流れを確立する好ましい方法の1つは、連続的に作動する制御バルブを使用することである。連続的に作動する制御バルブは、供給パイプまたは出口容器と気相反応器を接続するリターンガスラインに配置することができる。
【0055】
気体-固体オレフィン重合反応器から出口容器へのポリマー材料の移送を促進するために、フラッシュガスを使用してよい。
【0056】
出口容器は、好ましくは、メイン部分、ボトム部分およびトップ部分を有する。定義上、メイン部分は最も大きい有効直径を有する部分であり、一方、ボトム部分はメイン部分よりも小さい有効直径を有する部分である。トップ部分は単に出口容器の閉鎖部分である。
【0057】
「バリアガス」は、出口容器のボトム部分で出口容器に導入され得る。該ガスは、放出されたポリマー材料を通って出口容器内を上向きに流れ、放出されたポリマー材料から同伴ガスを除去するのを助ける。バリアガスは、気体-固体オレフィン重合反応器の操作を妨害しない任意のガスであってよい。したがって、それはプロパンまたは窒素などの不活性ガスであってもよく、または好ましくは流動化ガスであってもよい。バリアガスとして流動化ガスが使用される場合、バリアガス流は、好ましくは冷却器(熱交換器)の下流で反応器入口の上流の循環ガス流から取られる。
【0058】
気体-固体オレフィン重合におけるさらなる問題は、各反応器が、調整された特性を有する生成物または成分の製造のための特定のポリマー組成を規定するために存在する。したがって、各反応器内のガス混合物を慎重に制御する必要がある。1つの反応器(例えばGPR1)から別の反応器(例えばGPR2)へのガス混合物の漏れは、後続の反応器(例えばGPR2)においてポリマー組成が損なわれるため、慎重に防止するまたは最小限に抑える必要がある。下流の反応器に入る際(例えば、GPR1からGPR2へ通過する際)、形成するポリマー粉末を新しい重合条件にできるだけ早くさらすことが重要である。例えば、GPR1で高剛性マトリックスが製造され、GPR1の下流のGPR2で弾性アルファ-オレフィンコポリマー性の相が製造される場合、両方の反応器のガス組成は完全に異なる。目標は、制御されたプロセス条件下で、ガス組成を1つの反応器から後続の下流の反応器に交換することである。本発明は、この問題を解決する。
【0059】
本発明の方法は、未反応ガス(例えば上記のような流動化ガス)を第2気相反応器、および該第2気相反応器の下流にある任意のさらなる気相反応器から取り出すことの改良を含む。前記の未反応ガスは、それぞれの気相段階の循環ラインに配置された圧縮機で圧縮され、圧縮されたガスは、搬送ラインを介して、前記未反応ガスが取り出される気相反応器のすぐ上流にある、気相反応器に接続された出口容器の出口に供給される。好ましくは、この処理は、前記第2気相重合反応器の下流にある少なくとも1つのさらなる気相重合反応器で繰り返してよい。これは、これらの少なくとも1つの更なる気相重合反応器の1つ又は2つ以上又は全てにおいて行ってよい。この処理は、出口容器のいずれかに位置するポリマー材料をフラッシュまたは連行し、それを後続の重合段階または後処理へと渡すために必要なエネルギーと設備コストを大幅に節約する効果がある。さらに、本発明の変更は、圧縮ガスが搬送補助として使用されるので、上流の出口容器で必要とされる圧力を増加させるための追加の圧力上昇が必要ないという利点を有する。最後に、本発明の変更により、異なる気相反応器間での迅速かつ制御されたガス交換が可能になり、各反応器で、実質的に異なる、調整された特性を有する生成物を生成することができる。
【0060】
本発明の方法は、好ましくは、出口容器の頂部から未反応ガスを回収し、該ガスを、リターンガス管を通して気体-固体オレフィン重合反応器に戻す工程をさらに含む。リターンガスは、好ましくは、ポリマー粉末中の同伴ガス混合物とバリアガスとを含む。場合により、リターンガスはさらに、気体-固体オレフィン重合反応器から出口容器へのポリマー材料の移送を促進するために使用されたフラッシュガスを含み得る。
【0061】
後反応器処理
容器出口を通してポリマー材料を出口容器から回収する際に、ポリマー材料から残留炭化水素を除去するためのプロセス工程を施すことができる。このようなプロセスは当技術分野で周知であり、減圧ステップ、パージステップ、ストリッピングステップ、抽出ステップなどを含むことができる。また、異なるステップの組み合わせも可能である。
【0062】
一般に、ポリマー材料は、容器出口を通して断続的または連続的に出口容器から回収することができる。ポリマー材料を連続的に回収することが好ましい。
【0063】
1つの可能な方法によれば、圧力を下げることによって炭化水素の一部がポリマー粉末から除去される。次いで、該粉末を、90~110℃の温度で10分~3時間にわたり、水蒸気と接触させる。その後、該粉末を、20~80℃の温度で1~60分間にわたり、窒素などの不活性ガスでパージする。
【0064】
別の可能なプロセスによれば、ポリマー粉末を上記のような減圧にさらす。その後、50~90℃の温度で20分~5時間にわたり、窒素などの不活性ガスでパージする。不活性ガスは、水蒸気などの、ポリマー材料に含まれる触媒を失活させる成分を、0.0001~5重量%、好ましくは0.001~1重量%含んでいてよい。
【0065】
パージ工程は、安定した移動層で連続的に行うことが好ましい。ポリマー材料は、プラグフローとして下向きに移動し、層の下部に導入されたパージガスは上向きに流れる。
【0066】
ポリマー材料から炭化水素を除去する適当な方法は、WO-A-02/088194、EP-A-683176、EP-A-372239、EP-A-47077およびGB-A-1272778に開示されている。
【0067】
残留炭化水素を任意に除去した後、ポリマー材料を、当技術分野で周知の添加剤と混合することが好ましい。このような添加剤には、酸化防止剤、プロセス安定剤、中和剤、潤滑剤、成核剤、顔料などが含まれる。
【0068】
ポリマー粒子は添加剤と混合され、当技術分野で知られているようにペレットに押し出される。好ましくは、逆回転二軸スクリュー押出機が押出工程に使用される。このような押出機は、例えば、Kobe and Japan Steel Worksによって製造されている。このような押出機の適当な例は、EP-A-1600276に開示されている。
本明細書の当初の開示は、少なくとも下記の態様を包含する。
〔1〕少なくとも2つの気相反応器を含む多段階重合プロセスにおいてアルファ-オレフィンポリマー組成物を製造するための方法であって、該方法は以下の工程:
a)第1気相重合反応器中、アルファ-オレフィン重合触媒および第1反応ガス混合物の存在下で、第1アルファ-オレフィンポリマーを重合し、第1アルファ-オレフィンポリマーおよび前記第1反応ガス混合物を形成する工程;
b)その中に分散した前記アルファ-オレフィン重合触媒を含む第1アルファ-オレフィンポリマーと共に、前記第1反応ガス混合物を第1気相重合反応器から連続的または間欠的に取り出し、第1生成物ストリームを形成する工程;
c)前記第1生成物ストリームを第1出口容器に導き、前記第1出口容器においてアルファ-オレフィンポリマーの層を形成する工程;
d)前記第1反応ガス混合物のストリームを前記第1出口容器から取り出し、これを前記第1気相重合反応器内に戻す工程;
e)前記出口容器から前記第1アルファ-オレフィンポリマーを連続的または間欠的に取り出し、第2生成物ストリームを形成する工程;
f)前記第2生成物ストリームを第2気相重合反応器内に導き、アルファ-オレフィン重合触媒および第2反応ガス混合物の存在下で前記第1アルファ-オレフィンポリマーを重合し、第2アルファ-オレフィンポリマーおよび前記第2反応ガス混合物を形成する工程;
g)その中に分散したアルファ-オレフィン重合触媒を含む前記第2アルファ-オレフィンポリマーと共に、前記第2反応ガス混合物を第2気相重合反応器から連続的または間欠的に取り出し、第3生成物ストリームを形成する工程;および
h)前記第3生成物ストリームを第2出口容器に導き、前記第2出口容器においてアルファ-オレフィンポリマーの層を形成する工程;
を含み、
前記第2気相重合反応器から取り出された未反応ガスは圧縮機で圧縮され、圧縮されたガスは、前記第1出口容器と前記第2気相重合反応器との間の出口に供給されることを特徴とする、方法。
〔2〕第1気相重合反応器の上流に、少なくとも1つのスラリー反応器、好ましくはループ反応器を含む、〔1〕に記載の方法。
〔3〕第2気相重合反応器の下流に少なくとも1つのさらなる気相重合反応器を含む、〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔4〕前記少なくとも1つのさらなる気相重合反応器から取り出された未反応ガスを圧縮機で圧縮し、該圧縮ガスを、前記少なくとも1つのさらなる気相重合反応器のすぐ上流の気相重合反応器の出口容器に、前記出口容器と前記少なくとも1つのさらなる気相重合反応器との間の出口内へ供給する、〔3〕に記載の方法。
〔5〕気相重合反応器の出口容器の圧力が、それぞれの生成物ストリームが取り出される重合段階の圧力の10%以内である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕前記第1反応ガス混合物の前記流れが、前記出口容器内の前記のアルファ-オレフィンポリマー層のレベルより上から取り出される、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕アルファ-オレフィンポリマーが、前記出口容器内で、沈下した下向きのアルファ-オレフィンポリマーの移動層を形成する、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の方法。
〔8〕前記第2気相重合反応器は、前記第1反応ガス混合物の組成とは少なくとも1つの成分に関して異なる第2反応ガス混合物を含有し、前記第1反応ガス混合物とは異なる第2ガスが前記出口容器のいずれかに導入される、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕前記第2ガスの少なくとも一部が液体の形態で導入される、〔8〕に記載の方法。
〔10〕前記第2ガスは、前記第2ガス混合物と同じ組成を有する、〔8〕または〔9〕に記載の方法。
〔11〕前記少なくとも1つのアルファ-オレフィンモノマーは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、または1-オクテン、1-デセンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の方法。
【実施例】
【0069】
すべての実施例において、予備重合反応器、ループ反応器、および第1気相反応器(GPR1)におけるプロセス条件は、非常に類似するように選択された。一方、第1気相反応器および第2気相反応器(GPR1からGPR2)の間のプロセス条件は実質的に異なっていた。このプロセスの目的はGPR2で異相ポリプロピレンを製造することであった。マトリックスポリマーは、予備重合反応器、ループ反応器、および第1気相反応器(GPR1)で得られた。最後の反応器(GPR2)でのエチレン-プロピレンエラストマーポリマーの製造により、最終的なヘテロ相生成物が得られた。個々の重合反応器における正確なプロセス条件と生成物特性を以下の表1に示す。
【0070】
【0071】
【0072】
第2気相反応器(GPR2)の循環ガスを、第1気相反応器(GPR1)の出口容器への搬送ガスとして使用した場合、操作性は良好であった。詰まりも、何らのプロセス障害も見られなかった。
【0073】
比較例では、新鮮な窒素を搬送ガスとして使用したが、これはGPR2に由来するのではなく、外部供給源から供給された。GPR2中の窒素濃度が高かったため、プロピレン濃度が低かった。このガス組成は、低い触媒生産性、すなわちGPR2中の約8~9kg PP/g 触媒をもたらした。
【0074】
本発明の実施例において、プロピレンは、GPR2からGPR1の出口容器への搬送ガスとして使用され、GPR2でのはるかに高いプロピレン分圧がもたらされた。したがって、触媒生産性ははるかに高く、すなわち、GPR2中、約16~18kg PP/g 触媒であった。
【0075】
H2応答などの他の応答は同じままであった。生産性が高くなると、エチレン含有量とキシレン可溶分(XS)が高くなり、最終製品におけるゴム含有量が高くなると、異相ポリプロピレン組成物の衝撃特性が高くなるため、望ましい。