IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゼネラル・エレクトリック・カンパニイの特許一覧

特許7463550医用撮像手順中の病原体封じ込めのためのイメージング・システム隔離筐体
<>
  • 特許-医用撮像手順中の病原体封じ込めのためのイメージング・システム隔離筐体 図1
  • 特許-医用撮像手順中の病原体封じ込めのためのイメージング・システム隔離筐体 図2
  • 特許-医用撮像手順中の病原体封じ込めのためのイメージング・システム隔離筐体 図3
  • 特許-医用撮像手順中の病原体封じ込めのためのイメージング・システム隔離筐体 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】医用撮像手順中の病原体封じ込めのためのイメージング・システム隔離筐体
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20240401BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61B6/03 521F
A61B6/03 577
A61B5/055 390
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022562627
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(86)【国際出願番号】 US2021028015
(87)【国際公開番号】W WO2021212120
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】63/011,473
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】フィッツジェラルド,ポール・フランシス
(72)【発明者】
【氏名】ウィードマン,ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ストールター,ロス・クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】アラウホ,スティーブン・ロレンコ
(72)【発明者】
【氏名】リシェル,マイケル・ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】スミス,チャド・アラン
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-148147(JP,A)
【文献】特開平10-234721(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0228450(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
A61B 5/055
G01T 1/161- 1/166
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージング・システム隔離筐体であって、
放射線イメージング・システム及び磁気共鳴イメージング・システムの1又は複数と共に用いるための病原体不浸透性筐体であって、前記イメージング・システムと患者利用者及び撮像室の少なくとも一方との間に障壁を設けるように構成された病原体不浸透性筐体と、
当該イメージング・システム隔離筐体の内部に冷却空気流を供給する入口、及び当該イメージング・システム隔離筐体の内部から排気を放出する出口を含む空気濾過システムと
を備えたイメージング・システム隔離筐体。
【請求項2】
前記病原体不浸透性筐体は、
可撓性の外被と、
該外被に封止結合された複数の円錐形構成要素と、
該複数の円錐形構成要素に封止結合された円筒形中孔管と
を含んでいる、請求項1に記載のイメージング・システム隔離筐体。
【請求項3】
前記病原体不浸透性筐体は、ガントリ筐体アセンブリを含んでいる、請求項1に記載のイメージング・システム隔離筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願へのクロス・リファレンス)
本出願は、2020年4月17に出願された米国特許仮出願第63/011,473号の利益及び優先権を請求し、この出願の開示を参照によりその全体として本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、イメージング・システム隔離筐体に関し、さらに具体的には、医用撮像手順中に用いるためのイメージング・システム隔離筐体に関する。
【背景技術】
【0003】
技術の発展に関して、現在、診断及び患者医療を支援するために、様々な非侵襲型診断走査及び撮像手法が用いられている。かかる設備を、1又は複数の感染性疾患に罹患した患者と共に用いるときには、病原体の曝露及び蔓延が懸念される。撮像専用室(スイート)の医用撮像設備及び付帯設備の汚染、並びに撮像専用室内の人員のこれらの病原体への全身的な曝露は、撮像操作者、患者医療管理者、及び撮像構成要素を整備保守しているときの現場技術者を含めて医療提供者に危険を齎す。加えて、撮像専用室内での汚染された医用撮像設備の反復的利用は、後の利用者及び操作者に危険を齎し得る。懸念される医用イメージング・システム表面の汚染に留まらず、幾つかの例では、病原体が撮像設備の吸気口に引き込まれて、設備内を循環し、最終的には冷却空気排気ファンによって部屋中を循環し得る。同様に、汚染された撮像設備及び/又は汚染された撮像専用室に対する無感染の患者の曝露が懸念される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
過酸化水素(H)蒸気のような特定病原体向けの消毒薬を用いて、イメージング・システムを滅菌し得ることが提案されている。加えて、紫外(UV)光洗浄システムを用いることによりイメージング・システムを消毒して、イメージング・システムの表面の病原体を不活化することもできる。院内感染を制限するために撮像構成要素、イメージング・システム、及び撮像専用室を洗浄する必要性は、負担が大きく、患者スループットに著しい影響を及ぼす。加えて、医用撮像専用室及び専用室内に収容されているイメージング・システムのかかる溶液蒸気による洗浄のため、溶液蒸気がシステムの冷却空気換気によってイメージング・システムの内部に引き込まれる場合があり、或いは冷却ファンが動いていない場合でも、これらの溶液蒸気は、作用の仕様としてイメージング・システムに受動的に入り込む場合がある。結果的に、設備の内部構成要素が溶液蒸気に曝露され、次いで溶液蒸気が内部構成要素において凝結して、内部構成要素の腐食又は他の劣化を招く可能性がある。
【0005】
従って、患者、医療者、及び撮像室又は専用室から医用撮像設備を隔離し、上述の問題に対処する堅牢な筐体を提供することができると望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この概要は、詳細な説明においてさらに詳述される概念を提起している。この概要を利用して、請求される主題の本質的な特徴を特定したり、請求される主題の範囲を限定したりすべきではない。
【0007】
一観点では、医用イメージング・システムと共に用いるためのイメージング・システム隔離筐体が、放射線イメージング・システム及び磁気共鳴イメージング・システムの1又は複数と共に用いるための病原体不浸透性筐体であって、イメージング・システムと患者利用者及び撮像室の少なくとも一方との間に障壁を設けるように構成された病原体不浸透性筐体と、イメージング・システム隔離筐体の内部に冷却空気流を供給する入口、及びイメージング・システム隔離筐体の内部から排気を放出する出口を含む空気濾過システムとを含んでいる。
【0008】
上述の概要は、詳細な説明においてさらに記載される様々な概念を単純化された形態で提起するために掲げられていることを理解されたい。かかる記載は、請求される主題の主要な又は本質的な特徴を特定するためのものではなく、請求される主題の範囲は、詳細な説明の後の特許請求の範囲によって一意に画定される。さらに、請求される主題は、上に記載される又は本開示の何れの部分に記載される何れの短所を解決する具現化形態にも限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示の特徴、観点、及び長所は、以下の詳細な説明を添付図面に関連させて読むとさらに十分に理解されよう。
【0010】
図1】イメージング・システム隔離筐体と共に用いるためのイメージング・システムの実施形態の模式的遠近図である。
図2】イメージング・システム隔離筐体と共に用いるためのイメージング・システムの実施形態の模式的遠近図である。
図3】イメージング・システムに対して配置されたイメージング・システム隔離筐体の実施形態の模式的遠近図である。
図4】イメージング・システムに対して配置されたイメージング・システム隔離筐体の実施形態の模式的遠近図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、イメージング・システムと共に用いられて、イメージング・システムの少なくとも部分を被覆して内部に格納するイメージング・システム隔離筐体を含んでいる。イメージング・システム隔離筐体は全体的に、病原体不浸透性として構成され、1又は複数のイメージング・システムと適合すると共に、イメージング・システム隔離筐体の内部及びイメージング・システムに濾過された冷却空気流を供給するように構成された空気濾過システムと適合するように構成される。イメージング・システム隔離筐体は、イメージング・システムを利用する患者に存在し得る病原体、及び周囲の撮像室又は撮像専用室に存在する病原体からの医用撮像設備、具体的にはイメージング・システムの隔離を提供する。
【0012】
図1は、CT撮像又は走査用に構成された例示的な計算機式断層写真法(CT)イメージング・システム100を示す。具体的には、CTイメージング・システム100は、患者110を撮像するように構成されている。実施形態の一例では、CTイメージング・システム100は、複数のガントリ構成要素を包囲する又は格納するガントリ筐体アセンブリ102を含んでおり、次にガントリ筐体アセンブリ102は、CTイメージング・システムのテーブル104に横臥した患者(不図示)を撮像するのに用いられるX線のビームを放出するように構成された少なくとも一つのX線源(不図示)をさらに含み得る。ガントリ筐体アセンブリ102は、ガントリ筐体アセンブリ102の中心を通って延在するボア(中孔)又は開口106を含んでいる。X線源は、ガントリ筐体アセンブリ102のX線源から正反対に位置するX線検出器アレイ(不図示)へ向けてX線ビームを投射するように構成されている。
【0013】
幾つかのCTイメージング・システム構成では、X線源が円錐形のX線ビームを放出し、このX線ビームは、一般に「撮像平面」と呼ばれるデカルト座標系のxyz平面内に位置するようにコリメートされる。X線ビームは撮像されている患者を通過する。X線ビームは、患者によって減弱された後に、X線検出器アレイによって受光される。X線検出器アレイにおいて受光される減弱後のX線ビームの強度は、患者によるX線ビームの減弱に依存する。
【0014】
幾つかのCTイメージング・システムでは、X線源及びX線検出器アレイは、X線ビームが患者と交差する角度が一定に変化するように、ガントリの内部で撮像されている患者を中心として回転して撮像平面を生成する。任意の一つのガントリ角度におけるX線検出器アレイからの複数のX線減弱測定値、例えば投影データを「ビュー」と呼ぶ。患者の「走査」は、X線源及びX線検出器アレイの一回転の間に異なるガントリ角度すなわち異なる視角で生成された一組のビューを含んでいる。本書で用いられる「ビュー」という用語は、一つのガントリ角度からの投影データに関して上で記載されているような用法に限定されず、CTイメージング・システムからのものか、及び/又は今後開発されるイメージング・システムを含め他の任意のイメージング・システムからのものか、並びにこれらの組み合わせからのものかを問わず、異なる角度からの多数のデータ取得が存在するときには常に、1回のデータ取得を意味するために「ビュー」という用語が用いられる。
【0015】
本開示は、医用イメージング・システムと共に用いられて、イメージング・システムの少なくとも部分を被覆して内部に格納するイメージング・システム隔離筐体を含んでいる。イメージング・システム隔離筐体は全体的に、病原体不浸透性として構成され、放射線イメージング・システム及び磁気共鳴(MR)イメージング・システムの1又は複数と適合すると共に、並びにイメージング・システム隔離筐体の内部及びイメージング・システムに濾過された冷却空気流を供給するように構成された空気濾過システムと適合するように構成される。
【0016】
公知の医療設備の病原体筐体とは対照的に、開示される新規のイメージング・システム隔離筐体は、全ての医用イメージング・システムと共に用いるために構成されている。図1では例としてCTイメージング・システムを図示説明するが、この患者隔離ユニットはまた、X線イメージング・システム、CTイメージング・システム、陽電子放出断層写真法(PET)イメージング・システム、単光子放出計算機式断層写真法(SPECT)イメージング・システム、MRイメージング・システム、及びこれらの組み合わせ(例えばPET/CT、PET/MR、又はSPECT/CTの各イメージング・システムのような多重モダリティ・イメージング・システム)のような他のイメージング・システムと共に用いることもできると理解されたい。CTイメージング・システムのここでの議論は一つの適当な撮像モダリティの一例として掲げられているに過ぎない。イメージング・システム隔離筐体は、周囲の撮像室若しくは専用室、操作者、技師、看護助手、看護師、医師、及び/又は他の医療者からのイメージング・システムの隔離を提供する。
【0017】
当業者は、CTイメージング・システムのガントリ筐体アセンブリ102の内部では、ガントリの回転によって齎される乱流のため空気流が複雑化していることを認められよう。しかしながら、任意のイメージング・システムのガントリ容積の内部では、CT、PET、SPECT、MR、又は他の何れのイメージング・システムであるかを問わず、イメージング・システムの構成要素によって発生される熱を除去するためにガントリ容積の全体に冷却空気を循環させなければならない。空気をガントリ容積の全体に流動させるためには、正味の差圧が必要とされる。空気流は一般的には、1又は複数の排気ファンを用いて発生される。吸気口では、圧力は周囲環境(例えば撮像室又は専用室)に対して負でなければならない。さらに、排気口へ向けて正味の空気流を保つためには、ガントリ容積内であるが排気口の近くでの圧力は、吸気口の近くの圧力に対して負でなければならない。従って、ガントリ内部の平均圧力は周囲環境に対して負でなければならず、ガントリが気密でなければ、空気の漏れ口からガントリ筐体アセンブリに病原体が侵入し得る。しかしながら、気密型ガントリ筐体アセンブリであれば、設けられた吸気口以外で内部のガントリ容積に病原体が侵入することはない。
【0018】
図1に示すようなイメージング・システム隔離筐体110の実施形態が、実質的に気密のガントリ筐体アセンブリで全体的に構成された病原体不浸透性のガントリ筐体アセンブリ102を含んでおり、かかるガントリ筐体アセンブリは、製造時に、又はイメージング・システムに加えられる現場での更新として、当該ガントリ筐体アセンブリの複数の区画同士の間に気密シールが設けられるようにして提供される。代替的な実施形態では、病原体不浸透性筐体は、製造時に気密の単独の構成要素として形成されてもよい。イメージング・システム隔離筐体110は、ガントリ筐体アセンブリと撮像専用室の床のようなイメージング・システムの支持面との間に気密シールを含んでいる(後述)。イメージング・システム隔離筐体110、さらに具体的にはガントリ筐体アセンブリ又は筐体は、当該イメージング・システム隔離筐体110の内部に冷却空気流を供給する少なくとも一つの入口116と、イメージング・システム隔離筐体の内部から排気を放出する少なくとも一つの出口112、114とを含む空気制御(エア・ハンドリング)システム120を含んでいる。実施形態の一例では、冷却空気がイメージング・システム隔離筐体、さらに具体的にはガントリ筐体アセンブリ112に制御された態様で入ることを許すと共に、病原体及び/又は滅菌用溶液蒸気がイメージング・システム隔離筐体の内部容積に入らないようにする1又は複数の吸気口フィルタが設けられている。イメージング・システムの利用中に、吸入冷却空気流は、吸気口において1又は複数のフィルタを介してイメージング・システム隔離筐体に入る。吸入冷却空気流は、イメージング・システム隔離筐体、さらに具体的にはガントリ筐体アセンブリの内部に入る。吸入空気流の排気を補助する1又は複数のイメージング・システム用ファンが設けられていてもよい。
【0019】
気密シールは、ゴム、プラスチック、又は独立気泡フォームのような任意の適当な材料で構成されて、製造時に設けられてもよいし、イメージング・システムへの現場での更新として設けられてもよい。実施形態の一例では、制御部及び/又は表示部用の保護カバーが設けられてもよい。かかる保護カバーは、上述の制御部及び/若しくは表示部を目視し且つ/又はかかる制御部及び/若しくは表示部と物理的に相互作用することを可能にするように、透明で且つ/又は可撓性であり得る。かかる保護カバーは、接着剤、テープ、フック・ループ型ファスナ、及びゴム・ジッパ等のような任意の適当な手段によって締結され得る。
【0020】
図2及び図3に示すようなイメージング・システム隔離筐体の実施形態は、外被、外被に結合された複数の円錐形構成要素、複数の円錐形構成要素に結合される円筒形中孔管、及びイメージング・システム隔離筐体の内部に冷却空気流を供給する入口とイメージング・システム隔離筐体の内部から排気を放出する出口とを含む空気制御システムで全体的に構成された病原体不浸透性筐体を含んでいる。イメージング・システム隔離筐体は一般的には、医用イメージング・システムのガントリを包囲する態様での配置を提供する寸法を有する。実施形態の一例では、外被は開口を含んでおり、この開口に複数の円錐形構成要素が結合される。結合は、外被と複数の円錐形構成要素の各々との間に気密シールを設ける任意の手段を含んでいてよく、限定しないが化学的溶接、熱溶接、又はテープ等を含む。加えて、複数の円錐形構成要素は、テーピング等によって円筒形中孔管に封止結合される。組み立てられたイメージング・システム隔離筐体はさらに、イメージング・システム隔離筐体の辺縁の周囲で、撮像専用室の床のような支持面に、気密シールを設ける任意の結合手段を用いて封止結合されてもよい。実施形態の一例では、イメージング・システム隔離筐体は、テープ、フック・ループ型ファスナ(Velcro(登録商標))、ゴム・ジッパを用いて、一方の半部をイメージング・システム隔離筐体に融合させ、他方の半部をテープ又は接着剤等を用いて床に取り付けた状態で封止され得る。実施形態の一例では、イメージング・システム隔離筐体は、撮像テーブル台、又は完全な撮像テーブルを包囲するように延在していてもよい。撮像テーブル台の各部分、及び/又は撮像テーブル台とガントリ筐体アセンブリとの間に存在するケーブルは、イメージング・システム隔離筐体との境界面において封止され得る。実施形態の一例では、テーブルとガントリとの境界面、又はケーブルとガントリとの境界面でのあらゆる潜在的漏洩を解消しないまでも最小限にするために、ガントリと患者テーブルとの間の接続を覆うカバーを取り外して、任意の適当な材料で充填した後に、先述のカバーを再配置してもよい。ガントリとテーブルとの境界面を封止する適当な手段は、限定しないが1又は複数の空気注入式空気袋(ブラダ)、粘土、ダクトシール、若しくは他の適当な可撓性固形材料、又はフィルタとして作用するように選択され病原体に不親和性である材料製の微粒子媒体を含み得る。
【0021】
実施形態の一例では、イメージング・システム隔離筐体は、完全に剛性のガントリ筐体アセンブリ、完全に可撓性のガントリ筐体アセンブリ、又はカバー・アセンブリの部分を剛性とし他の部分を可撓性としたものとの組み合わせとして形成され得る。例えば、実施形態の一例では、ガントリの前面が可撓性の材料で覆われ、他の全ての面が単一の剛性のカバー・アセンブリ構成要素で覆われてよく、後者のカバー・アセンブリ構成要素をガントリに背面から押圧して結合し、イメージング・システム隔離筐体を形成する。
【0022】
実施形態の一例では、イメージング・システム隔離筐体の外被部分は全体的に、五面の箱様構造として成形され、限定しないが生化学的抵抗性材料のような任意の適当な病原体不浸透性材料のように医用イメージング・システムの周囲への配置に適した材料で構成される。実施形態の一例では、外被は、MRイメージング・システムに要求され得るように、磁性材料の利用を排除する場合がある。実施形態の一例では、外被は、ポリエチレン、ポリウレタン、又はポリ塩化ビニル(ビニール)等で形成され得る。一つの具体的な実施形態では、外被は、10milから50mil厚のビニール材料のようなビニール材料で形成される。実施形態の一例では、ガントリ及び含まれるあらゆる制御構成要素若しくは表示構成要素の視覚的な配置、及び/又はこれらの構成要素との接触を可能にするために、外被の少なくとも部分は透明であってよい。
【0023】
実施形態の一例では、複数の円錐形構成要素の各々は全体的に、ガントリの前後の円錐形部分及びガントリに形成された中孔に対して配置するための形状及び寸法を有する。複数の円錐形構成要素の各々は、限定しないが生化学的抵抗性材料のような任意の適当な病原体不浸透性材料のように医用イメージング・システムの周囲への配置に適した材料で構成される。実施形態の一例では、複数の円錐形構成要素の各々は、MRイメージング・システムに要求され得るように、磁性材料の利用を排除する場合がある。実施形態の一例では、複数の円錐形構成要素の各々は、ポリエチレン、ポリウレタン、又はポリ塩化ビニル(ビニール)等で形成され得る。一つの具体的な実施形態では、複数の円錐形構成要素は、10milから50mil厚のビニール材料のようなビニール材料で形成される。上で示したように、複数の円錐形構成要素の各々、及び外被は、互いに封止結合される。
【0024】
実施形態の一例では、イメージング・システム隔離筐体の円筒形中孔管は、ガントリの中孔の内部の走査窓に対して配置するための形状及び寸法を有する。円筒形中孔管は、限定しないが生化学的抵抗性材料のような任意の適当な病原体不浸透性の透明材料のように医用イメージング・システム中孔の内部への配置に適した非金属材料で構成される。円筒形中孔管は、撮像手順中に当該中孔管を通して走査窓を通過する可視光の光学的歪みのない通過を許す透明で且つ実質的に一様な厚みの材料で形成される。実施形態の一例では、イメージング・システム隔離筐体の円筒形中孔管は、Mylar(登録商標)のような透明な材料で形成される。
【0025】
代替的な実施形態では、イメージング・システム隔離筐体の構成要素は、フック・ループ型ファスナの細帯、ゴム・ジッパ、又は実質的に気密の封止を提供するのに適当でありイメージング・システムでの利用について適合性がある任意の公知のファスナを用いて、互いに対して、イメージング・システムに対して、且つ/又は支持面に対して結合され得る。実施形態の一例では、ファスナはMRイメージング・システムに要求され得るように、磁性材料の利用を排除する場合がある。
【0026】
イメージング・システム隔離筐体はさらに、ガントリを通過する冷却空気流の吸気口及び排気口を提供する空気制御システムを含んでいる。実施形態の一例では、外被は、1又は複数の高効率微粒子空気(HEPA)フィルタ、又は静電フィルタ等のような吸気に存在する病原体を濾過することが可能な1又は複数の吸気口フィルタを含み得る。吸気口フィルタは外被と一体形成されてもよい。代替的な実施形態では、外被は、当該外被に封止結合されて、内側に交換可能なフィルタを配置し得るフィルタ枠を含み得る。空気制御システムはさらに、イメージング・システムの内部からの冷却空気流の排気口を提供する開口を含んでいる。実施形態の一例では、排気開口は、必要に応じて1又は複数のフィルタ又はファンを含み得る。
【0027】
イメージング・システムの利用中に、吸入冷却空気流は、吸気口において1又は複数のフィルタを介してイメージング・システム隔離筐体に入る。吸入冷却空気流はイメージング・システム隔離筐体とガントリ筐体アセンブリとの間に画定された空間を通り、ガントリ筐体アセンブリと床のような支持面との間等に画定された空間を介してガントリ筐体アセンブリの内部に入る。イメージング・システム隔離筐体の空気制御システムは、冷却流を損なうことなく通常の画像システム作用を提供する。1又は複数の補助ファンが、冷却空気流の排気の補助を提供し得る。
【0028】
実施形態の一例では、イメージング・システム隔離筐体の吸入空気濾過技術は、H溶液蒸気の通過又は同様の滅菌技術を阻止するように選択される。本実施形態では、イメージング・システムの利用に続いて、イメージング・システム隔離筐体は、特定の病原体の汚染による求めに従って、H噴霧又は同様の技術を用いる等により撮像設備及び撮像専用室を消毒することを可能にし、撮像設備が給電されて稼働し冷却空気排気ファンが動作している間にも、撮像設備の内部構成要素に対する損傷の懸念がない。適当な吸入空気濾過技術は、滅菌手順の直後からフィルタの連続利用を可能にする技術、滅菌手順の後にフィルタの交換を要する技術、又は凝結した滅菌溶液が蒸発した後にフィルタの連続的利用又は再利用を可能にする技術を含み得る。
【0029】
図3に示すようなイメージング・システム隔離筐体の実施形態は、上の実施形態と全体的に同様の病原体不浸透性筐体を含んでいるが、対照的に、閉ループ型空気制御システムを含んでいる。さらに具体的には、ガントリ構成要素に冷却を提供するために空調ユニットを設けて、外被の吸気口及び排出流に結合する。実施形態の一例では、動作中に、空調ユニットは、撮像設備によって排気される空気流から周囲環境の空気への空気間熱伝達を提供する。実施形態の一例では、空調ユニットは、必要に応じて強化材を含み得る病原体不浸透性の可撓性ホースのような細長い導管を介して外被に封止結合される。実施形態の一例では、導管は、当該導管と外被との間の病原体不浸透性封止を助ける化学的溶接、熱溶接、又はゴム・ジッパの利用等を介して外被に結合され得る。実施形態の一例では、空気間熱伝達は、独立した電動式空調機によって達成され得る。代替的な実施形態では、空気間熱伝達は、冷水、又は医療施設において提供若しくは入手され得る他の液冷源によって提供され得るような液冷ループに熱を転移する熱交換器によって達成され得る。実施形態の一例では、空気制御システムはさらに、除湿機のような復水の除去のための収集タンク、及び/又はイメージング・システム隔離筐体及び撮像設備を通る空気の流れを補助する追加のファンを含み得る。この具体的な実施形態では、閉ループ空気制御システムを含むイメージング・システム隔離筐体は、撮像専用室に存在する病原体へのガントリの曝露を解消しないまでも最小限にし、またH噴霧又は同様の技術のような滅菌工程へのガントリの曝露を解消しないまでも最小限にする。
【0030】
図4に示すようなイメージング・システム隔離筐体の実施形態は、図1及び図2の実施形態と全体的に同様の病原体不浸透性筐体を含んでいるが、対照的に、他の部屋又は外部空間のような汚染されていない空気流源からの清浄な空気の吸気、及び別室すなわち外部空間への冷却空気流の排気を提供する空気制御システムを含んでいる。さらに具体的には、ガントリ構成要素に冷却を提供するために、清浄な空気源と流体連通している導管が、イメージング・システム隔離筐体の外被に設けられた吸気口に結合される。また、別室又は外部空間と流体連通している別個の導管が、イメージング・システム隔離筐体の外被に設けられた排出流の出口に結合され得る。動作中には、冷却空気流が撮像設備に流入し、導管を介して撮像設備によって排気される。実施形態の一例では、これらの導管は、外被に封止結合され、必要に応じて強化材を含み得る可撓性ホースのような病原体不浸透性材料で形成される。実施形態の一例では、導管は、当該導管と外被との間の病原体不浸透性封止を助ける化学的溶接、熱溶接、又はゴム・ジッパの利用等を介して外被に結合され得る。実施形態の一例では、空気制御システムはさらに、当該空気制御システムを通した空気の流れを補助する追加のファンを含み得る。この具体的な実施形態では、イメージング・システム隔離筐体の空気制御システムは、撮像専用室に存在する病原体へのガントリの曝露を解消しないまでも最小限にし、またH噴霧又は同様の技術のような滅菌工程へのガントリの曝露を解消しないまでも最小限にする。
【0031】
以上の各実施形態の任意のものについて、イメージング・システムとのユーザ・インタフェイスは遠隔制御型であってよい。一例として、イメージング・システムのガントリに従来設けられているイメージング・システム制御作用をイメージング・システムの制御室のような他の位置まで拡張する有線制御又は無線制御によって、押しボタン制御、点灯インジケータ、及び/又は表示画面を置き換え又は補うことができる。
【0032】
従って、医用撮像手順中に周囲環境における病原体からの隔離を提供するイメージング・システム隔離筐体が開示される。このイメージング・システム隔離筐体は、障壁を設けて、感染性疾患に罹患した患者からイメージング・システムを隔離し、且つ/又は撮像専用室の病原体からイメージング・システムを隔離するように構成され得る。この新規のイメージング・システム隔離筐体は、放射線撮像に適合する材料(例えばX線ビーム内に金属又は他の稠密な物体が存在しない)及びMRIに適合する材料(例えば磁性物体が存在しない)で構成されている。イメージング・システム隔離筐体は、濾過付きの閉ループ型又は清浄空気取り込み型空気制御システムを含んでおり、この空気制御システムは、イメージング・システム隔離筐体の内部への清浄な空気の吸入を提供して、システムの所要冷却空気流容積を阻害することなく、病原体がイメージング・システム隔離筐体に侵入してイメージング・システムを汚染しないことを保証する。開示されている新規のイメージング・システム隔離筐体は、撮像設備についての懸念なく噴霧によって撮像専用室の汚染を除去することを可能にしつつ、撮像設備汚染の問題を解消する。開示されているイメージング・システム隔離筐体は、感染した患者を走査することに関連する作業量の減少において経済的利益及び健康的利益を提供し、スループットを高め、病院職員及び無感染患者に対する曝露を減少させる。イメージング・システム隔離筐体は、全てではないまでも殆どの医用イメージング・システムのガントリ中孔に適合する寸法及び形状を有し得る。開示されているイメージング・システム隔離筐体は、撮像設備の汚染を防ぎ、撮像専用室での病原体の再循環を防ぎ、病原体がガントリに侵入し得る懸念なく撮像設備を整備保守することを可能にする。
【0033】
本書で用いる場合には、単数形で記載されており単数不定冠詞を冠した要素又はステップとの用語は、排除を明記していない限りかかる要素又はステップを複数備えることを排除しないものと理解されたい。さらに、本発明の「一実施形態」に対する参照は、所載の特徴を同様に組み入れている追加の実施形態の存在を排除しないものと解釈されたい。また、反対に明記されていない限り、特定の特性を有する一つの要素若しくは複数の要素を「含んでいる(comprising、including)」又は「有している(having)」実施形態は、この特性を有しないような追加の要素も包含し得る。「包含する(including)」との用語は「含む(comprising)」の標準言語の同義語として、また「このとき(in which)」との用語は「ここで(wherein)」の標準言語の同義語として用いられている。また、「第一」、「第二」及び「第三」等の用語は単にラベルとして用いられており、これらの用語の目的語に対して数値的要件又は特定の位置的順序を課すものではない。
【0034】
1又は複数の図面及び実施形態の例を参照して本開示を記載したが、当業者には、本開示の範囲から逸脱せずに様々な変形を施し、また本開示の諸要素に代えて均等構成を置換し得ることが理解されよう。加えて、本開示の本質的な範囲から逸脱せずに、具体的な状況又は材料を開示の教示に合わせて適応構成する多くの改変を施すことができる。さらに、当業者は、異なる実施形態からの様々な特徴の互換性を認められよう。例えば、所載の様々な特徴、及び各々の特徴についての他の公知の均等物を当業界の通常の技能の一つによって混成し適合させて、本開示の原理によるさらに他のシステム及び手法を構成することができる。従って、本開示は、最良の態様として開示された特定の実施形態に限定されないものとする。この書面の記載は、最適な態様を含めて発明を開示し、また任意の装置又はシステムを製造して利用すること及び任意の組み込まれた方法を実行することを含めてあらゆる当業者が発明を実施することを可能にするように実例を用いている。
【0035】
図面に示され、また上に記載された本開示の実施形態は、例としての実施形態であるに過ぎず、特許請求の範囲内に含まれるような任意の均等物を含めて、特許請求の範囲を限定するものではない。様々な改変が可能であり、当業者には直ちに明らかとなろう。本書に記載される互いに排他的でない特徴のあらゆる組み合わせが本発明の範囲内にあるものとする。すなわち、所載の実施形態の特徴を上で記載された任意の適当な観点と組み合わせることができ、また任意の一観点の選択随意の特徴を他の任意の適当な観点と組み合わせることができる。同様に、特に従属請求項が同じ独立請求項に従属している場合には、従属請求項に記載される特徴を他の従属請求項の互いに排他的でない特徴と組み合わせることができる。単独項従属が、何らかの司法権における手続に要求されるものとして用いられたかも知れないが、従属請求項における各特徴が互いに排他的であることを意味すると解釈されるべきでない。
【符号の説明】
【0036】
100 計算機式断層写真法(CT)イメージング・システム
102 ガントリ筐体アセンブリ
104 テーブル
106 中孔
110 イメージング・システム隔離筐体
112、114 出口
116 入口
図1
図2
図3
図4