(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】超音波パルスを用いた対象物の速度を特定するための方法
(51)【国際特許分類】
G01S 15/60 20060101AFI20240401BHJP
G01S 7/526 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
G01S15/60
G01S7/526 J
(21)【出願番号】P 2022572589
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 EP2021060563
(87)【国際公開番号】W WO2021239342
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-01-25
(31)【優先権主張番号】102020206622.1
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カタリーナ マリア ネルツ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム クリストファー フォン ローゼンベルク
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア キルシュ
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ リュエグ
(72)【発明者】
【氏名】ティモ ヴィンターリング
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン オルブリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】カトリン クレー
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/128878(WO,A1)
【文献】特開2007-292668(JP,A)
【文献】国際公開第2005/106530(WO,A1)
【文献】米国特許第05224482(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第3513735(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
13/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波パルスを用いて対象物の速度を特定するための方法であって、
第1の超音波変換器を用いて、規定された信号波形を有する超音波パルスを送信するステップと、
第2の超音波変換器を用いて超音波信号を受信するステップと、
前記超音波信号と、前記規定された信号波形と少なくとも部分的に相関するフィルタ信号との周波数による相互相関を計算するステップと、
計算された前記相互相関の結果を用いて、前記フィルタ信号と、受信された前記超音波信号との間の周波数シフトを特定するステップと、
前記特定された周波数シフトを用いて、送信された超音波パルスを反射した対象物の速度を特定するステップと、
を含
み、
前記超音波信号と前記フィルタ信号との時間及び周波数による相互相関が計算され、
前記規定された信号波形は、前記超音波信号と前記フィルタ信号との前記時間及び周波数による相互相関の計算の際に、一義的な極大値(211m,212m,213m,214m)が前記時間及び周波数による相互相関に関連して生じるような時間的変化及び/又は周波数の時間的変化を有する、
方法。
【請求項2】
前記規定された信号波形の周波数は、時間的に変化する、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の超音波変換器は、前記第2の超音波変換器と同一である、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記超音波パルスの伝搬時間は、前記送信された超音波パルスを反射した対象物の位置特定のために、計算された前記時間及び周波数による相互相関の時間成分の振幅を用いて特定される、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記超音波信号の前記周波数シフトは、前記超音波信号に対象物を割り当てるために利用される、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
複数の超音波変換器によって受信される超音波パルスの各超音波信号の各周波数シフトを用いて、対象物の速度が特定される、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
複数の反射点が、測量を用いて複数の超音波パルスと複数の超音波信号とから特定され、各超音波信号の周波数シフトを用いて、前記複数の超音波信号が、前記反射点の特定のためにグループ化される、請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記特定された周波数シフトに基づいて、少なくとも部分的に自動化された車両を駆動制御するための制御信号が提供され、及び/又は、前記特定された周波数シフトに基づいて、車両乗員に警告するための警告信号が提供される、請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されている装置。
【請求項10】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されるときに、前記コンピュータに請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の方法を実施させるための命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項11】
請求項
10に記載のコンピュータプログラムが記憶されている機械可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
少なくとも部分的に自動化された運転の実現のためには、周辺環境の知覚又は表現(パーセプション)の実現化が非常に重要である。この場合、周辺環境は、センサを用いて捕捉される。
【背景技術】
【0002】
運転支援システムのためにも、あるいは特に少なくとも部分的に自動化された運転の分野でも、衝突を避けるために、車両の近距離において関連のある対象物、例えば、他の道路利用者、詳細には、歩行者、自転車利用者、乗用車、商用車など、又は、柵、支柱、壁などのような存在し得る障害物を識別することが重要である。その上さらに、常に法規に従って対応できるようにシステムを構成する必要がある。
【0003】
この近距離の場合、現在の超音波システムにおいては、送信機や反射場所と受信機との間の超音波パルスの伝搬時間又は超音波パルスの超音波エコーが測定される。この場合、超音波センサは、同一の測定サイクルにおいて送信機と受信機とを同時に兼ねるものであり得る。そのような複数の超音波エコーの適当な組合せ又は三辺測量若しくは多辺測量を用いることにより、反射性対象物の反射点からの空間座標を特定することができる。送信側又は受信側の超音波センサが、水平方向のセンサアレイだけでなく、付加的に相互に垂直に配置されている場合には、x位置及びy位置の他にz座標、即ち、高さ情報を特定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の開示
典型的には、今日の運転支援システム及びパーキングシステムには、超音波センサ又は超音波変換器が主に相互に水平方向に組み込まれ、結果的に生じるx及びy位置データは、これまでは、可能性のある障害物を検出することのみに、又は、車両の周辺に基づいて駐車操作を計算することのみに使用されてきた。しかしながら、この位置データの他に、システムには、例えば、検出された対象物の速度に対するさらなる情報が提供されることはない。
【0005】
そのため、典型的には、静的な周辺環境が想定され、又は、反射性対象物の潜在的な固有運動が無視され、即ち、検出されたすべての対象物は、代替手段がないために動かないものと想定される。相対速度を推論できるようにするために、超音波信号を用いた速度特定に対して、超音波信号を、時間分析を用いて、結束する2つの時間的に順次連続する超音波信号に基づき超音波信号対に組み合わせることが可能になるであろう。しかしながら、この分析方法において頻繁に発生する曖昧さ又は計算ミスに起因して、このアプローチは、実用的なものではなく、道路交通において使用するためには、十分な信頼性があるとは言い難い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、独立請求項の特徴による、超音波パルスを用いて対象物の速度を特定するための方法、制御信号を提供するための方法、装置、コンピュータプログラム及び機械可読記憶媒体が提案される。好適な実施形態は、従属請求項及び以下の説明の対象である。
【0007】
本発明は、超音波変換器に向かって接近移動したり又はそこから離脱移動したりする、超音波パルスを反射する対象物によって、超音波パルスの周波数にドップラーシフトが生じるという見識に基づいている。特に、ドップラー効果に基づいて、相対速度が正の場合には受信された超音波信号の周波数上昇が生じ、相対速度が負の場合には受信された超音波信号の周波数減少が生じる。この効果は、受信側のセンサに相対する当該対象物の速度を特定するために使用することができる。
【0008】
本発明の本明細書全体において、方法ステップの順序は、本方法が容易に理解することができるように示されている。しかしながら、当業者であれば、方法ステップの多くが別の順序によっても実施することができ、同様の結果につながることは、認識されるであろう。この意味においては、方法ステップの順序は、適宜変更可能であり、この点についても開示されている。
【0009】
一態様によれば、以下のステップを含む、超音波パルスを用いて対象物の速度を特定するための方法が提案される。最初のステップでは、第1の超音波変換器を用いて、規定された信号波形を有する超音波パルスが送信される。さらなるステップでは、第2の超音波変換器を用いて、超音波信号が受信される。さらなるステップでは、超音波信号と、規定された信号波形と少なくとも部分的に相関があるフィルタ信号との周波数による相互相関が計算される。さらなるステップでは、計算された相互相関の結果を用いて、フィルタ信号と、受信された超音波信号との間の周波数シフトが特定される。さらなるステップでは、特定された周波数シフトを用いて、送信された超音波パルスを反射した対象物の速度が特定される。
【0010】
この場合、規定された信号波形を有する超音波パルスは、超音波変換器から超音波を反射し得る対象物の方向に送信された超音波領域の周波数を有する音波信号であり、ここでの信号波形は、時間及び周波数による経過に関連して規定されている。超音波パルスの信号波形は、周波数による相互相関を用いて一義的な結果を、受信された超音波信号に対する送信された超音波パルスの周波数シフトに関連して特定することができるようにするために、フィルタ信号の経過に合わせられている。規定された信号波形は、ここでは特に、超音波信号とフィルタ信号との時間及び周波数による相互相関の計算の際に、一義的な極大値が時間及び周波数による相互相関に関連して生じるような時間的変化及び/又は周波数の時間的変化を有し得る。
【0011】
特に、第1の超音波変換器は、第2の超音波変換器と同一であるものとしてよい。なぜならば、典型的には、超音波変換器は、超音波の送信機としても受信機としても適しており、受信された超音波信号は、電気信号に変換することができ、次いで、さらに評価することができるからである。ただし、超音波パルスは、1つ又は複数の超音波変換器から同時に送信され、複数の同一の超音波変換器又は付加的な超音波変換器によって検出又は受信されることも可能である。
【0012】
周波数fUSEの超音波信号を受信する受信側の超音波変換器に対する、周波数fUSPの送信された超音波パルスを反射した対象物の相対速度vrelは、ドップラーシフトに基づいて、数学的物理関係に応じて以下のように計算することができる。
fUSE=fUSP×(cs+vrel)/(cs-vrel)
ここで、csは、音速である。
【0013】
好適には、この方法を用いることにより、反射された対象物の相対速度は、直接の測定変数として各個別エコーについての周波数シフトΔfを用いて付加的に捕捉することができ、複雑な追跡方法又はエコー対グループ化分析及びそれに伴う遅延時間、曖昧さ及び/又は誤った割り当てを介して導出する必要はない。
【0014】
一般に、超音波システムは、送信側の超音波変換器から反射性対象物まで、及び、受信側の超音波変換器に戻ってくる送信された超音波パルスの伝搬時間を測定する。即ち、本方法を用いることにより、例えばエコー距離、後方散乱値、トレース確率などの超音波システムによって測定されたデータに対して付加的に、検出された対象物の相対速度を特定することができる。
【0015】
特に、少なくとも部分的に自動化された運転における可能な適用分野にとってこの情報の取得には利点があり、特にこれにより、車両環境を明確に差別化して認識することも可能になる。なぜならば、静的な対象物と、一定の速度若しくは一定の加速度及び/又は「constant heading」などを有する動的な対象物との間の区別が可能になるからである。したがって、本方法を伴う超音波システムを用いることにより、直接の車両環境を包括的に把握することができ、可能性のある障害物又はさらなる道路利用者を確実に検出して位置特定することができる。
【0016】
したがって、反射性対象物の速度は、既に最初の又は同一の測定ステップにおいて、即ち、リアルタイムで存在する。好適には、そのような測定された超音波対象物を、静的又は動的な挙動に関連して区別することが可能である。その上さらに、これまでは時間的に分解できなかった2つの超音波信号又は超音波エコーも、付加的に、周波数領域での相互相関の局所的極大値を介して分離することが可能である。即ち、送信された超音波パルスに対する超音波信号の周波数シフトによれば、例えば、同等の距離にある2つの障害物などから同時に受信された2つの超音波信号を、場合によっては異なる周波数シフトにより、超音波システムに対する場合によっては異なる相対速度に基づいて分離することができる。
【0017】
この情報取得により、車両環境を明確に差別化して認識することができる。なぜならば、超音波パルスを反射する識別された対象物が、静的な挙動、又は、一定の速度、一定の加速度、「constant heading」、軌道の特定などの動的な挙動に関連して区別することができるからである。
【0018】
特に、超音波変換器の同一の送信機/受信機対によって時間的に順次連続して生成された2つの超音波信号を用いることにより、既知の速度と、時間に伴う反射点距離の既知の変化とのもとで「constant heading」を推論することができる。
【0019】
速度情報を用いて可能である受信された超音波信号の、より良好な割り当てによって、反射点の改善された特定ももたらされる。
【0020】
特に、周波数シフトに依存しない、受信された超音波信号の時点、ひいては、距離の算出は、反射点の改善された特定につながる。
【0021】
エコーの選択も、反射性対象物の速度に関する付加的な情報によって改善することが可能である。なぜならば、(複数の)対象物の位置の特定のためには、受信した個々の超音波信号を相互に組み合わせる又は測量する必要があるからである。計算資源を節約し、複雑さを軽減するために、物理的に非現実的な超音波信号の組合せは最初に除外される。距離値に基づくこれまでの幾何学的考慮に対して付加的に、ここではさらに速度値を用いることができるようになる。これにより、時間的に接近して相前後する異なる速度の2つの超音波信号も有意に分離することができる。さらに、反射点に、超音波信号に関する情報に基づいて相対速度を割り当てることが可能になる。
【0022】
一態様によれば、超音波信号とフィルタ信号との時間及び周波数による相互相関が計算されることが提案される。
【0023】
そのような二次元相関、即ち、時間や周波数領域においても実施される、超音波パルスgの規定された信号波形とフィルタ信号aとの相互相関は、以下のようにして数学的に計算することができる。
【数1】
これに対応して、離散的な時間ステップにおける計算については、以下の式によって得られる。
【数2】
【0024】
規定された信号波形は、ここでは特に、超音波信号とフィルタ信号との時間及び周波数による相互相関の計算の際に、一義的な極大値が時間及び周波数による相互相関に関連して特定することができるような時間的変化及び/又は周波数の時間的変化を有し得る。換言すれば、フィルタ信号は、相互相関の一対一対応の結果を得るために、又は、フィルタ信号と超音波信号とが時間的にかつ周波数的に正確に重なり合うことができることを達成するために、「matched filter」に応じて選択される。ただし、この目的のために、フィルタ信号は、送信された超音波パルスと同一の形態を有する必要はない。そのような超音波パルスの規定された信号波形の例としては、時間に関する単純な周波数勾配、周波数が時間の中で線形に増加し(Up-Chirp)、再び減少する(Down-Chirp)信号波形、又は、時間に関する周波数が最初の時間間隔において例えば線形に減少し、次いで再び線形に増加する逆の形態が挙げられる。また、特定の期間にわたって一定の周波数を有する時間的に規定された超音波パルスを使用することも可能である。なぜならば、相関は、時間においても周波数においても特定されるからである。そのような時間及び周波数における二次元相関からは、時間及び周波数に関する相関値の二次元プロットを作成することができ、このプロットは、複数の極大値を有し得る。したがって、このプロットからは、超音波パルスの伝搬時間も、送信された超音波パルスに対する受信された超音波信号の周波数シフトも読み取ることができる。時間における相関からは、超音波変換器から反射性対象物までの距離dsを計算することができる。
ds=cs×(tD-t0)/2
ここで、csは、音速、tDは、超音波信号の受信の時点、t0は、超音波パルスの送信の時点である。
【0025】
一態様によれば、規定された信号波形の周波数は、時間的に変化することが提案される。この信号波形の時間的変化により、受信された超音波信号を、送信された超音波パルスに規定的に割り当てることができる。
【0026】
一態様によれば、規定された信号波形は、超音波信号とフィルタ信号との時間及び周波数による相互相関の計算の際に、一義的な極大値が時間及び周波数による相互相関に関連して生じるような時間的変化及び/又は周波数の時間的変化を有することが提案される。これにより、時間に関する周波数の変化を有する信号波形を有する超音波信号を、送信された超音波パルスに一義的に割り当てることができる。
【0027】
一態様によれば、第1の超音波変換器は、第2の超音波変換器と同一であることが提案される。
【0028】
一態様によれば、超音波パルスの伝搬時間は、送信された超音波パルスを反射した対象物の位置特定のために、計算された時間及び周波数による相互相関の時間成分の振幅を用いて特定されることが提案される。時間でも周波数でも行われる説明した二次元相互相関により、送信された超音波パルスの伝搬時間は、受信された超音波信号に基づいて特定することができ、付加的な周波数による相互相関によって、速度の異なる対象物から反射された超音波信号を識別することができる。
【0029】
一態様によれば、超音波信号の周波数シフトは、超音波信号に対象物を割り当てるために利用されることが提案される。既に上述したように、ドップラー効果を介すことにより、周波数シフトは速度差にさかのぼることができるため、速度の異なる対象物を識別することが可能である。このことは、速度に関する付加的な情報に基づいて反射点を特定するための超音波信号の物理的に非現実的な組合せを除外することも可能にさせる。
【0030】
一態様によれば、複数の超音波変換器によって受信される超音波パルスの各超音波信号の各周波数シフトを用いて、対象物の速度が特定されることが提案される。それにより、反射される対象物からの超音波信号の速度に関する情報を用いることにより、対象物に割り当て可能な横方向の反射点から、相対速度及び移動方向を対象物に割り当てることが可能になる。
【0031】
一態様によれば、複数の反射点が、測量を用いて複数の超音波パルスと複数の超音波信号とから特定され、各超音波信号の周波数シフトを用いて、複数の超音波信号が、反射点の特定のためにグループ化されることが提案される。
【0032】
超音波信号は、車両の前部及び/又は後部及び/又は側部に取り付けられ得るセンサアレイ又は超音波変換器からなるアレイを介して記録される。一般に、超音波システムのセンサは、送信側の超音波変換器から反射性対象物まで送信され、そして受信側の超音波変換器に戻ってくる超音波パルスの伝搬時間を測定する。その際、受信側の超音波変換器は、送信側の超音波変換器と同一であるものとしてもよく又は異なるものとしてもよい。反射された超音波パルスが複数の超音波変換器によって受信されると、伝搬時間から特定された伝搬経路(「エコー」)の測量により、反射性対象物の位置を特定することができる。その上さらに、センサアレイは、上下に1列又は2列に配置される列により位置決めすることができ、その結果として、x及びy位置の特定の他に、z位置の特定も、即ち、反射点の高さ情報も可能になるという利点が生じる。
【0033】
複数の超音波パルスが送信され、個々の規定された信号波形が相互に区別できるように選択される場合、超音波信号の受信を介して、特に複数の超音波変換器によって受信することができ、さらに超音波変換器は相互に空間的に分離されており、反射性対象物の超音波反射点は、空間的に特定することが可能である。その際、超音波信号を受信する超音波変換器が水平方向にも垂直方向にも配置されている場合、複数の反射点の三次元的特定を実施することも可能である。
【0034】
対象物の速度を特定するための方法に応じて周波数シフトが特定され、特定された周波数シフトに基づいて、少なくとも部分的に自動化された車両を駆動制御するための制御信号が提供される方法が提案される。代替的又は付加的に、対象物の速度を特定するための方法に応じて周波数シフトが特定され、特定された周波数シフトに基づいて、車両乗員に警告するための警告信号が提供されることが提案される。
【0035】
用語「に基づく」とは、制御信号が、特定された周波数シフトに基づいて提供される特徴に関連して広義に理解することができる。したがって、特定の周波数シフトは、制御信号の各々の特定又は計算のために用いられ、その場合は、制御信号を特定するためのさらに別の入力変数の使用も排除されないことを理解すべきである。これは、警告信号についても準用的に当てはまる。
【0036】
ここでは、上述したような方法を実施するように構成された装置が示されている。そのような装置を用いれば、本方法は、異なるシステムに容易に統合することができる。
【0037】
ここでは、コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されるときに、コンピュータに上述の方法のうちの1つを実施させるための命令を含むコンピュータプログラムが示されている。そのようなコンピュータプログラムにより、記載された方法を異なるシステムにおいて使用することが可能になる。
【0038】
ここでは、上述のコンピュータプログラムが記憶された機械可読記憶媒体も示されている。
【0039】
実施例
本発明の実施例が
図1及び
図2に関連して示されており、これらは、以下において、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】超音波パルスと、周波数シフトされた超音波信号との規定された信号波形を示した図である。
【
図2】二次元相互相関及び射影のプロットを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、送信された超音波パルス120の時間経過を示し、即ち、超音波パルス120の周波数fが、時点t
-1で開始されて線形に値fMINから時間tとともに時点t
0での値fMAXまで増加し、次いで、この周波数が線形に時点t
1での値fMINまで再び減少する規定された信号波形を示す。ドップラー効果の結果として、この超音波パルス120からは、
図1の線
図100にも付加的に示されている周波数シフトされた超音波信号110が生じ得る。この例においては、超音波パルス120の周波数の経過が、より高い周波数方向にシフトされているので、対象物は、受信側の超音波変換器に向かって移動している。超音波パルスに対応する時間に関する周波数経過を有する可能なフィルタ信号135が線
図130に示されており、このことは、線
図130において、超音波パルスの信号の経過に対応する時間に関する周波数経過135の形態によって表されている。
【0042】
それにより、
図1においては、超音波信号110とフィルタ信号135との時間的な相互相関により、超音波信号110を時間において超音波信号のこの規定された信号波形に一義的に割り当てることが可能になることが認識され得る。この画像からは、超音波信号110とフィルタ信号135との時間的な相互相関が時点t
0で極大値を示すであろうことが読み取れる。
【0043】
図2は、時間及び周波数における二次元相互相関の可能な結果を略記する。線
図210には、この結果が、即ち、時間t及び周波数fに関するそのような相互相関の値が、プロットされている。ここでは、5つの超音波信号211,212,213,214,215を認識することができ、これらの超音波信号はそれぞれ1つの極大値211m,212m,213m,214m,215mを有している。超音波信号212,213,214,215についての極大値は、周波数f
0において極大値211mを有する移動しない静止対象物からの超音波信号211に比較してシフトされている。即ち、静止対象物からの超音波信号211の極大値は、ここでは、送信された超音波パルスの周波数f
0に対応する周波数f
sにある。次の中央寄りの2つのエコー信号212,213は、対象物から負の相対速度を伴って反射され、この結果として周波数減少が生じている。当該プロットにおいて右寄りの2つの右方エコー信号214,215は、対象物から正の相対速度を伴って反射されたため、周波数増加が示されている。
【0044】
この周波数シフトΔ
fは、超音波信号212について、明確にするために
図2の線
図230において、周波数による相互相関の値K
Fに関して周波数軸上への射影としてプロットされている。
図2の線
図220は、超音波信号とフィルタ信号との相関の値K
Tの経過に対応して略記されており、この場合、異なる超音波信号211,212,213,214,215の伝搬時間t
2,t
3,t
4,t
5,t
6は、対象物と、各受信側の超音波変換器との距離に換算することができる。即ち、線
図220は、二次元相互相関の結果の時間領域への射影を示し、線
図230は、周波数領域への射影を示す。
【0045】
このことは、超音波パルスを用いて対象物の速度を特定するための本方法を用いた場合、規定された信号波形を有する超音波パルスが、第1の超音波変換器を用いて送信されることを意味する。対象物から反射された超音波信号は、第1の超音波変換器と同一であり得る第2の超音波変換器を用いて受信される。超音波信号と、規定された信号波形と少なくとも部分的に相関するフィルタ信号との周波数による相互相関によって、フィルタ信号と受信された超音波信号との間の周波数シフトを説明したように特定することができる。したがって、超音波パルスを反射させた対象物の速度は、ドップラー効果に対応させて計算することができる。