(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】抗腫瘍組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/74 20150101AFI20240401BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240401BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240401BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240401BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61K35/74 Z
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P35/00
A61K39/395 U
(21)【出願番号】P 2022576573
(86)(22)【出願日】2021-03-01
(86)【国際出願番号】 CN2021078434
(87)【国際公開番号】W WO2021170137
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】202010123922.7
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【微生物の受託番号】CGMCC CGMCC 14764
(73)【特許権者】
【識別番号】522336960
【氏名又は名称】エスピーエイチ・サイン・ファーマシューティカル・ラボラトリーズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】シュ,シァオフェン
(72)【発明者】
【氏名】ユー,ホンジン
(72)【発明者】
【氏名】リアン,シー
(72)【発明者】
【氏名】スン,ニンユン
(72)【発明者】
【氏名】ウェン,ビン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ユェン
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/063646(WO,A1)
【文献】特表2018-521013(JP,A)
【文献】Science,2018年,Vol.359 No.6371,p.91-97
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61K 39/00-39/44
A61K 45/00-45/08
A61P 35/00-35/04
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗PD-1抗体と組み合わせて使用するための、
CGMCC No.14764の寄託番号を有するアッカーマンシアムシニフィラSSYD-3を含む抗腫瘍組成物。
【請求項2】
患者の腫瘍成長阻害における
抗PD-1抗体の効果を向上させるための、
CGMCC No.14764の寄託番号を有するアッカーマンシアムシニフィラSSYD-3を含む抗腫瘍組成物。
【請求項3】
その他の菌(例えばビフィドバクテリウム、ラクトバチルス、クロストリディオイデス、エンテロコッカスフェシウム、プレボテラコプリ、ルミノコッカス)を更に含む、請求項1又は2に記載の抗腫瘍組成物。
【請求項4】
前記アッカーマンシアムシニフィラSSYD-3が経口投与されるものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗腫瘍組成物。
【請求項5】
前記アッカーマンシアムシニフィラSSYD-3が、経口液、錠剤、カプセル、又は凍結乾燥粉末の剤型である、請求項4に記載の抗腫瘍組成物。
【請求項6】
前記アッカーマンシアムシニフィラSSYD-3が、10
4
~10
13
CFU/人/日の用量範囲で投与される、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗腫瘍組成物。
【請求項7】
前記
抗PD-1抗体が、
キイトルーダ、ニボルマブ、又はトリパリマブである、請求項1~
6のいずれか1項に記載の抗腫瘍組成物。
【請求項8】
前記腫瘍が、結腸癌、肺癌、胃癌、肝癌、頭頚部癌、子宮頸癌、乳癌、リンパ癌、黒色腫、腎癌又は尿路上皮癌から選択される、請求項1~
7のいずれか1項に記載の抗腫瘍組成物。
【請求項9】
前記
抗PD-1抗体の投与前に投与される、請求項1~
8のいずれか1項に記載の抗腫瘍組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、抗腫瘍組成物に関し、より具体的には、アッカーマンシアムシニフィラ組成物と免疫チェックポイント阻害剤との併用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の治癒は、従来から医学分野における大きな難題の一つであり、従来の化学療法、放射線療法などの治療方式は、いずれも患者に大きな副作用及び苦痛をもたらす。近年、癌の免疫療法は、血液腫瘍及び一部の固形腫瘍に対して驚くべき治療効果を示し、かつ、患者への副作用が小さく、ヒトの癌の治癒に巨大な希望を与えた。
【0003】
一般的には、腫瘍細胞の表面には、ヒト免疫T細胞により認識できる抗原が存在しており、ヒト免疫システムは、腫瘍細胞を認識して殺滅することができる。しかし、腫瘍細胞は、生存及び生長のために、各種の方式により免疫システムによる認識及び殺傷を避けることがある。腫瘍免疫療法は、腫瘍細胞のこのような意図を認識して破壊し、人体を正常な抗腫瘍免疫反応に回復させることにより、多種の腫瘍を制御し除去することができるものである。腫瘍免疫療法は、主に(1)治療的抗体、(2)癌ワクチン、(3)細胞治療、即ちCAR-T療法、(4)免疫調節剤、及び(5)免疫チェックポイント阻害剤という5種類のタイプを含む。
【0004】
ヒト免疫システムの活性は、共刺激分子により調節制御され、共刺激分子は、即ち免疫チェックポイントである。抗原認識が発生した場合、その他の分子と、免疫細胞及び標的細胞の表面の分子とが相互作用し、更に、相互作用のバランスを決定する。信号がおおよそ正であると、免疫細胞は活性化され、標的細胞が提示する抗原を攻撃する。逆に、信号が負であると、免疫細胞は不活性化され、このような不活性化は永久的であることがあり、抗原は正常な抗原/自己抗原として認識されることになる。研究によって比較的に明らかになった癌関連免疫チェックポイントは、CTLA-4、PD-1及びPD-L1を含む。免疫チェックポイント阻害剤は、対応する免疫チェックポイントに対して開発されたモノクローナル抗体薬であり、その主な作用は、免疫チェックポイントを発現する腫瘍細胞と免疫細胞との作用を遮断することで、免疫細胞への腫瘍細胞の阻害作用を遮断することである。現在広く用いられている免疫チェックポイント阻害剤は、標的プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)及びそのリガンド(PD-L1)のモノクローナル抗体を含む。PD-1抗体は、末期黒色腫、非小細胞肺癌及び腎細胞癌の遮断に対して非常に有効であり、腫瘍の治療に大躍進を遂げた。しかし、腫瘍の発症機序は複雑であり、患者の個体差は大きく、環境要因による影響もあるので、免疫チェックポイント阻害剤は現在約25%の患者のみに対して有効である。
【0005】
ますます多くの研究により、腸内微生物も癌免疫療法の効果に影響する要因であることが明らかになってきた。2015年に、Marie Vetizouらは、抗生物質で処理された或いは無菌マウスの体内に接種された腫瘍が、CTLA-4阻害剤に応答しないが、マウスにバクテロイデスフラジリスを投与した後、CTLA-4阻害剤の抗腫瘍効果が回復したことを見出した。2017年に、Routy Bらの研究により、抗PD-1阻害剤とある特定の腸内細菌叢を併用することで、腫瘍患者の抗PD-1阻害剤に対する応答が著しく向上し、患者の平均無増悪生存期間(PFS)が著しく長くなることが明らかになった。以上をまとめると、腸内微生物は、免疫チェックポイント阻害剤の治療効果の改善に幅広い応用見通しがある。したがって、本分野において、より良い抗腫瘍効果を有し、特に特定の腫瘍に対してより良い治療効果を示す新しい抗腫瘍組成物を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本願の発明者は、アッカーマンシアムシニフィラ組成物と免疫チェックポイント阻害剤とを併用することにより、各種の腫瘍を効果的に阻害できることを見出した。上記した各種の腫瘍は、結腸癌、肺癌、乳癌、黒色腫、腎癌、尿路上皮癌などを含むが、これらに限定されない。
【0007】
本願の一側面では、
(A)アッカーマンシアムシニフィラと、
(B)免疫チェックポイント阻害剤と、を含む抗腫瘍組成物を提供する。
【0008】
本願の一つの実施態様において、前記アッカーマンシアムシニフィラはアッカーマンシアムシニフィラ菌株Akkermansiamuciniphila SSYD-3であり、その寄託番号がCGMCC No.14764である。
【0009】
本願の一つの実施態様において、前記アッカーマンシアムシニフィラは、その他の菌(例えばビフィドバクテリウム、ラクトバチルス、クロストリディオイデス、エンテロコッカスフェシウム、プレボテラコプリ、ルミノコッカス)と組み合わせられる。
【0010】
本願の一つの実施態様において、前記アッカーマンシアムシニフィラと免疫チェックポイント阻害剤は、混合されて単一製剤に調製されるか、或いは物理的に分離されて別々に使用される。
【0011】
本願の一つの実施態様において、前記アッカーマンシアムシニフィラは経口である。
【0012】
本願の一つの実施態様において、前記抗腫瘍組成物は、更に抗生物質を含む。
【0013】
本願の一つの実施態様において、前記腫瘍は、結腸癌、肺癌、乳癌、黒色腫、腎癌又は尿路上皮癌から選ばれる。
【0014】
本願の他の側面では、腫瘍を治療する薬物の調製におけるアッカーマンシアムシニフィラの使用を提供する。
【0015】
本願の一つの実施態様において、前記アッカーマンシアムシニフィラは、免疫チェックポイント阻害剤と併用される。
【0016】
本願の一つの実施態様において、前記使用は、免疫チェックポイント阻害剤による腫瘍阻害効果の向上であり、好ましくは、前記腫瘍は結腸癌、肺癌、乳癌、黒色腫、腎癌又は尿路上皮癌から選ばれる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、抗生物質処理による腸内細菌叢の破壊の、MC38担腫瘍マウスに対する抗mPD-1の治療効果への影響を示す。
【
図2】
図2は、抗mPD-1の単独注射、及びアッカーマンシアムシニフィラSSYD-3との併用による、MC38腫瘍への治療効果を示す。
【
図3】
図3は、抗mPD-1を単独で注射する場合、及びアッカーマンシアムシニフィラSSYD-3と併用する場合の、MC38担腫瘍マウスの体内の腫瘍浸潤CD8 T細胞数を示す。
【
図4】
図4は、抗mPD-1を単独で注射する場合、及びアッカーマンシアムシニフィラSSYD-3と併用する場合の、MC38担腫瘍マウスの体内の平均CD3細胞数を示す。
【
図5】
図5は、抗mPD-1を単独で注射する場合、及びアッカーマンシアムシニフィラSSYD-3と併用する場合の、MC38担腫瘍マウスの体内の平均Treg細胞数を示す。
【
図6】
図6は、抗mPD-1の単独注射、及びアッカーマンシアムシニフィラSSYD-3との併用による、4T1腫瘍への治療効果を示す。
【
図7】
図7は、抗mPD-1の単独注射、及びアッカーマンシアムシニフィラSSYD-3との併用による、LLC1腫瘍への治療効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明において、特に断りがない限り、パーセント(%)或いは部は、いずれも組成物に対する重量パーセント或いは重量部を意味する。
【0019】
本発明において、特に断りがない限り、関連する各成分又はその好ましい成分は、互いに組み合わせられて新しい技術方案を構成することができる。
【0020】
本発明において、特に断りがない限り、本文で言うあらゆる実施形態及び好ましい実施形態は、互いに組み合わせられて新しい技術方案を構成することができる。
【0021】
本発明において、特に断りがない限り、本文で言うあらゆる技術的特徴及び好ましい特徴は、互いに組み合わせられて新しい技術方案を構成することができる。
【0022】
本発明において、逆の断りがない限り、組成物における各成分の含有量の合計は100%である。
【0023】
本発明において、逆の断りがない限り、組成物における各成分の部数の合計は100重量部であっても良い。
【0024】
本発明において、他に断りがない限り、数値範囲「a~b」は、aからbまでの任意の実数の組合せの簡略な表現であり、そのうち、a及びbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本文には「0~5」の実数が全て挙げられたことを示し、「0~5」はこれらの数値の組合せの簡略な表現に過ぎない。
【0025】
本発明において、他に断りがない限り、整数の数値範囲「a~b」は、aからbまでの任意の整数の組合せの簡略な表現であり、そのうち、a及びbはいずれも整数である。例えば、整数の数値範囲「1~N」は、1、2……Nを意味し、そのうち、Nは整数である。
【0026】
本発明において、他に断りがない限り、「その組合せ」は、前記各要素の多成分混合物を意味し、例えば2種類、3種類、4種類及びできる限り多い種類の多成分混合物である。
【0027】
特に断りがない限り、本明細書で用いられる用語「1種」は、「少なくとも1種」を意味する。
【0028】
特に断りがない限り、本発明に記載されるパーセント(重量パーセントを含む)は、いずれも前記組成物の総重量基準である。
【0029】
本文に開示されている「範囲」は、下限及び上限で限定するものである。それぞれ一つ又は複数の下限、及び一つ又は複数の上限があってもよい。所定の範囲は、一つの下限及び一つの上限を選択することで限定されるものである。選択された下限及び上限によって、特別な範囲の限界が限定された。このように限定できる範囲は全て含まれ、組み合わせ得り、即ち、任意の下限と任意の上限とを組み合わせて一つの範囲を成すことができる。例えば、特定のパラメータについて60~120及び80~110の範囲が挙げられる場合に、60~110及び80~120の範囲も予期できるものであると理解される。なお、挙げられる最小範囲値は1及び2であり、最大範囲値は3、4及び5であると、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、及び2~5という範囲は全て予期できるものである。
【0030】
本文において、他に断りがない限り、各成分の割合或いは重量はいずれも乾燥重量を意味する。
【0031】
本文において、他に断りがない限り、「変化しない」とは、変化が±10%以内であり、好ましくは±5%以内であり、より好ましくは±2%以内であり、最も好ましくは±1%であることを意味する。
【0032】
本文において、アッカーマンシアムシニフィラ菌株は、アッカーマンシアムシニフィラ菌株から誘導された活性成分、或いはシーケンス同定結果としてアッカーマンシアムシニフィラと配列同一性が少なくとも97%である菌株を含む。
【0033】
アッカーマンシアムシニフィラ菌株
本願に記載のアッカーマンシアムシニフィラ菌株は、市販のものであってもよいし、従来の技術により得られたものであってもよい。例えば、出願番号がCN201380070847.0で、公開番号がCN 104918626 Aである中国発明特許出願には、「代謝病の治療におけるアッカーマンシア属の使用」が開示されており、当該特許出願には、アッカーマンシアムシニフィラ菌株ATCC BAA835が開示されている。
【0034】
本願の一つの好ましい実施態様において、前記アッカーマンシアムシニフィラ(Akkermansiamuciniphila)菌株はAkkermansiamuciniphila SSYD-3と命名され、その寄託番号がCGMCC No.14764である。なお、アッカーマンシアムシニフィラSSYD-3は、ブダペスト条約に基づき認められた国際寄託機関であるCGMCC(China General Microbiological Culture Collection Center)に前述の寄託番号で国際寄託されている。
【0035】
本発明におけるAkkermansiamuciniphila SSYD-3(単にW03菌株という)は、2017年9月29日から中国微生物菌種寄託管理委員会普通微生物センター(CGMCC)に寄託されており、所在地は北京市朝陽区北辰西路1号院3号であり、郵便番号は100101であり、寄託番号はCGMCC No.14764であり、培養物の名称はAkkermansiamuciniphila SSYD-3であり、分類名はAkkermansiamuciniphilaである。
【0036】
前記アッカーマンシアムシニフィラ菌株は、各種の適当な剤形とすることができ、例えば、経口液、錠剤、カプセル、口腔内崩壊錠、凍結乾燥粉末などが挙げられる。本願の一つの好ましい実施態様において、前記剤形はカプセルである。本願の別の好ましい実施態様において、前記剤形は錠剤である。前記剤形は凍結乾燥菌剤であることが好ましく、そのうちの生菌数は1010CFU/gであることが好ましい。ただし、前記有効用量は、アッカーマンシアムシニフィラを主な薬物活性成分として調製される固体生菌製剤に含まれている総生菌数が106~1014CFU/gであることを意味する。ただし、前記有効用量は、アッカーマンシアムシニフィラを主な薬物活性成分として調製される液体生菌製剤に含まれている総生菌数が106~1014CFU/mLであることを意味する。
【0037】
本願の一つの好ましい実施態様において、前記アッカーマンシアムシニフィラ菌株は、その他の菌株(ビフィドバクテリウム、ラクトバチルス、クロストリディオイデス、エンテロコッカスフェシウム、プレボテラコプリ、ルミノコッカスなどを含むが、これらに限定されない)と併用してもよい。
【0038】
免疫チェックポイント阻害剤
本願で用いられる免疫チェックポイント阻害剤は、任意の市販の製品であってもよく、例えば、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤などが挙げられる。一つの好ましい実施態様において、前記免疫チェックポイント阻害剤は、キイトルーダ(Keytruda)、テセントリク(Tecentriq)、ニボルマブ注射液(Nivolumab Injection)、バベンチオ(アベルマブ)、Tuoyi(トリパリマブ注射液(Toripalimab Injection))を含む。
【0039】
抗腫瘍組成物
本願において、前記アッカーマンシアムシニフィラ菌株と免疫チェックポイント阻害剤は、混合されて単一製剤に調製されて共に使用されてもよいし、物理的に分離されて別々に使用されてもよい。本願の一つの実施態様において、前記アッカーマンシアムシニフィラ菌株と免疫チェックポイント阻害剤は、物理的に分離されて別々に使用される。本願の別の実施態様において、前記アッカーマンシアムシニフィラ菌株は、免疫チェックポイント阻害剤の投与前に、患者に投与されてもよい。一般的には、前記アッカーマンシアムシニフィラ菌株は、任意の適当な方式(経口、注射などを含むが、これらに限定されない)で患者に投与可能である。前記免疫チェックポイント阻害剤は、任意の適当な方式(経口、注射などを含むが、これらに限定されない)で患者に投与可能である。前記アッカーマンシアムシニフィラ菌株又は免疫チェックポイント阻害剤の使用方法は、本分野における通常の方法であり、当業者は、明細書の記載により、従来の技術を参照することで直接決定できる。
【0040】
本願において、前記抗腫瘍組成物は、更に抗生物質を含んでもよい。前記抗生物質は、任意の適当な抗生物質であってもよく、例えば、キノロン系抗生物質、β-ラクタム系抗生物質、マクロライド系、アミノグリコシド系抗生物質などが挙げられるが、これらに限定されない。本願の一つの好ましい実施態様において、前記抗生物質は、β-ラクタム系抗生物質(例えばペニシリン、アンピシリン、カルベニシリン、メチシリン、オキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、セフラジン、セフォタキシム、セファレキシン、セフトリアキソン、セフピロム、セフィキシム、セフジトレンピボキシル、セフジニル、セフチブテン、セフポドキシムプロキセチル、イミペネム、アズトレオナム、セフミノクス、ビアペネム、イミペネム、メロペネムなど)、マクロライド系抗生物質(例えばエリスロマイシン、ロイコマイシン、ロキシスロマイシン、エリスロマイシンエチルコハク酸エステル、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、アセチルスピラマイシン、メレマイシン、ミデカマイシン、ジョサマイシン、テリスロマイシンなど)、アミノグリコシド系抗生物質(ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、アルベカシン、アミカシンなど)、キノロン系抗生物質(例えばシプロフロキサシン、レボフロキサシン、ノルフロキサシンなど)、その他の抗生物質及び抗菌薬物(例えばテトラサイクリン系、クロラムフェニコール系、リンコマイシン、リファペンチンなどのリファマイシン系、バンコマイシンなどのポリペプチド系、バクトリムなどのスルホンアミド系、メトロニダゾール系など)、抗真菌薬物(例えばアムホテリシン、グリセオフルビン、ダクタリンなど)、抗腫瘍抗生物質(例えばマイトマイシン、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、ドキソルビシンなど)などを含むが、これらに限定されない。
【0041】
本願において、前記抗生物質は、その他の成分と別に包装され、単独で投与されてもよい。
【0042】
本願の一つの好ましい実施態様において、前記抗腫瘍組成物は、更に説明書を含み、前記説明書には、アッカーマンシアムシニフィラ菌株を一定時間(例えば1~10日)投与した後、PD-1阻害剤を一定時間(例えば10~100日)投与することが記載されている。好ましくは、アッカーマンシアムシニフィラ菌株の用量範囲は、104~1013CFU/人/日であり、免疫チェックポイント阻害剤の用量範囲は、0.5~10mg/kgである。
【0043】
また、前記説明書には、アッカーマンシアムシニフィラ菌株及び免疫チェックポイント阻害剤を投与する前に、先ず抗生物質を一定時間(例えば1~3日)投与することが記載されている。好ましくは、抗生物質の用量範囲は、1~500mg/kgである。
【0044】
本願に係る抗腫瘍組成物は、各種の腫瘍、特に結腸癌、肺癌、乳癌、黒色腫、腎癌、尿路上皮癌(しかし、これらに限定されない)などを効果的に治療できる。
【0045】
本願の他の側面では、腫瘍を治療する薬物の調製におけるアッカーマンシアムシニフィラ菌株の使用を提供する。
【0046】
本願において、前記アッカーマンシアムシニフィラ菌株は、免疫チェックポイント阻害剤と併用して腫瘍(例えば結腸癌、肺癌、乳癌、黒色腫、腎癌、尿路上皮癌など)の生長を阻害することができる。発明者は、患者に抗生物質が投与された場合に、免疫チェックポイント阻害剤の腫瘍生長阻害効果が制限されたが、免疫チェックポイント阻害剤の投与前又は免疫チェックポイント阻害剤の投与と同時にアッカーマンシアムシニフィラ菌株を投与すると、免疫チェックポイント阻害剤の腫瘍阻害効果を効果的に向上させることができることを見出した。
【0047】
本願の他の側面では、腫瘍治療におけるアッカーマンシアムシニフィラ菌株の使用を提供する。本願の一つの実施態様において、前記使用は、腫瘍生長に対する阻害を含む。好ましくは、前記アッカーマンシアムシニフィラ菌株は、免疫チェックポイント阻害剤と併用できる。一般的には、前記腫瘍は、結腸癌、肺癌、乳癌、黒色腫、腎癌、尿路上皮癌などを含むが、これらに限定されない。
【0048】
以下、実施例により本願を詳細に説明するが、本願の範囲はこれらの実施例に限られない。
【0049】
実施例で用いられる原料は以下の通りである。
【0050】
6~8週齢のSPF級雄性C57BL/6Jマウス(20~26g)は、江蘇集萃薬康生物科技有限会社から購入され、品質合格証明書番号が201805120である。飼育条件については、温度が(23±3)℃に制御され、湿度が40~70%であり、マウスを自由に飲食・飲水させる。
【0051】
抗PD-1阻害剤は、亦康(北京)医薬科技有限会社から購入され、濃度が7.09mg/mLであり、2~8℃で遮光して保管される。そこに適量のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加え、均一に混合して所定の濃度の溶液を得た。
【0052】
アンピシリン(Ampicillin)は、安徽安豊堂動物薬業有限会社から購入され、ストレプトマイシン(Streptomycin)は、Solarbio会社から購入され、硫酸コリスチン可溶性粉(Colistin)は山東魯西獣薬株式会社から購入された。
【0053】
MC38腫瘍細胞は、如汀生物技術(北京)有限会社から購入され、非働化10%ウシ胎仔血清、100U/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシン、並びに2mMグルタミンを含有するDMEM培地を用いて、37℃、5%CO2のインキュベーターにて腫瘍細胞を培養し、約3日おきに、細胞が満ちた後、新しいフラスコに移して継代培養し、対数増殖期にある腫瘍細胞を体内腫瘍の接種に用いる。
【0054】
マウス乳癌4T1細胞(ATCC、製品番号:CRL-2539)、LLC1肺癌細胞(上海生命科学研究院から購入された)である。
【0055】
腫瘍体積の測定:
腫瘍体積:1週間ごとにノギスを使用して腫瘍体積を3回測定し、腫瘍の長径及び短径を測定し、その体積の計算式は、体積=0.5×長径×短径2である。
【0056】
実施例1:アッカーマンシアムシニフィラCGMCC No.14764の凍結乾燥菌剤
【0057】
培地
分離培地:0.4gのKH2PO4、0.53gのNa2HPO4、0.3gのNH4Cl、0.3gのNaCl、0.1gのMgCl2・6H2O、0.11gのCaCl2、0.5mgのレサズリン、4gのNaHCO3、0.25gのNa2S・7~9H2O、0.25%のムチン。
発酵培地1:ブレインハートインフュージョン培地(Brain Heart Infusion、BHI)
発酵培地2:5gのトリプトン、5gの大豆ペプトン、5gの牛肉粉末、5gの酵母粉末、4gのグルコース、3gのNaCl、1.5gのMgSO4、Na2HPO4、KH2PO4、1Lの水、pH=7.2。
分離培地及び発酵培地を121℃、高圧で、15min殺菌しておく。
【0058】
菌株の分離、同定
(1)調製されたムチン分離培地を血清ボトル(液体充填量10/30mL)に置く
(2)健康な成人の糞便0.5gを採取し、無菌のPBSリン酸緩衝生理食塩水に均一に分散させ、糞便を順にPBS溶液にて10倍勾配で希釈し、希釈液1mLを採取してムチン分離培地の血清ボトルに接種する
(3)ムチン血清ボトルを37℃の嫌気環境に置いて48h培養する
(4)目視で濁っている最高の希釈勾配でのムチン発酵液を採取し、PBS緩衝液で10-6~10-9に希釈する
(5)希釈液をブレインハートインフュージョン寒天培地に塗布し、24~48h培養し、大きさが1mmであるコロニーを選び、純粋培養した後、細菌の16S rDNA菌種同定を行う
【0059】
結果:コロニーの形態的特徴、生理及び生化学的特徴により、細菌の16S rDNAを増幅させ、W03細菌の16S rDNA配列は、配列表1に示す通りであり、シークエンシングされた配列を、GenBankに登録された16S rDNA遺伝子配列と相同性比較し、分離された細菌はアッカーマンシアムシニフィラ(Akkermansiamuciniphila)であり、Akkermansiamuciniphila SSYD-3と命名され、寄託番号がCGMCC No.14764であると同定された。既知の配列とは99%と高い同一性を有する。
【0060】
アッカーマンシアムシニフィラの発酵
(1)アッカーマンシアムシニフィラを、画線法で三つの領域に分けてブレインハートインフュージョン寒天培地に接種し、37℃の嫌気環境で48h培養する。
(2)寒天平板培地からアッカーマンシアムシニフィラの単コロニーを選んで15mLのブレインハートインフュージョン液体培地に接種し、37℃の嫌気環境で24h培養する。
(3)15mLの嫌気性チューブから、10mLの発酵液を200mLのブレインハートインフュージョン液体培地に移し、37℃の嫌気環境で24h培養する。
(4)200mLのアッカーマンシアムシニフィラ発酵液をブレインハートインフュージョン液体培地に接種し、5Lの発酵タンクにおける充填体積が4Lであり、嫌気ガスが窒素と二酸化炭素との二成分混合ガス(N2:CO2=9:1)であり、撹拌の回転数が100r/minであり、温度が37℃であり、嫌気環境で24h培養する。
【0061】
アッカーマンシアムシニフィラCGMCC No.14764の凍結乾燥菌剤
(1)凍結乾燥保護剤:トレハロース、ショ糖、粉乳。
(2)上記で得られた発酵液を8000Rで20min遠心分離して、菌体を回収する。
(3)アッカーマンシアムシニフィラを遠心分離することで得られた菌体、凍結乾燥保護剤、及び水を混合し、凍結乾燥前の溶液におけるトレハロース、ショ糖、粉乳の含有量(質量%)をそれぞれ5%、5%、10%にし、凍結乾燥して凍結乾燥粉末を得た。粉末における、寄託番号がCGMCC No.14764であるアッカーマンシアムシニフィラ菌株の生菌数は、1010CFU/gである。
【0062】
実施例2
6~8週齢の雄性C57BL/6Jマウス(20~26g、SPF級)48匹を1週間、環境に適応させた後、体重により、1群12匹で、第1群(抗生物質処理なし、ブランク、i.p.)、第2群(抗生物質処理なし、抗mPD-1、10mg/kg、i.p.)、第3群(抗生物質処理あり、ブランク、i.p.)、第4群(抗生物質処理あり、抗mPD-1、10mg/kg、i.p.)の4群にランダムに分ける。抗生物質処理では、広域スペクトル抗生物質アンピシリン(1mg/mL)+コリスチン(1mg/mL)+ストレプトマイシン(5mg/mL)を5日飲水投与した。全ての群のマウスには、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁したMC38腫瘍細胞を濃度1×107個/mLで接種し、100μL/匹で実験動物の右肋骨部皮下に接種した。第2群及び第4群のマウスには、腫瘍細胞を接種してから4日目に抗mPD-1を注射し、4日ごとに1回注射し、合計で4回注射した。マウスを、腫瘍接種してから19日目に安楽死させ、各群のマウスの腫瘍を摘出した。
【0063】
MC38腫瘍細胞は如汀生物技術有限会社から購入され、非働化10%ウシ胎仔血清、100U/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシン、並びに2mMグルタミンを含有するDMEM培地を用いて、37℃、5%CO2のインキュベーターにて腫瘍細胞を培養し、約3日おきに、細胞が満ちた後、新しいフラスコに移して継代培養し、対数増殖期にある腫瘍細胞を体内腫瘍の接種に用いる。
【0064】
実験結果を
図1に示す。結果から分かるように、抗生物質処理によりマウスの腸内細菌叢が破壊された後、マウスの腫瘍生長が速くなり、腫瘍体積が増加し、抗mPD-1の抗腫瘍効果が弱くなり、腸内細菌叢が、マウスの腫瘍の生長速度及び抗mPD-1の抗腫瘍効果に影響することを示す。
【0065】
実施例3
6~8週齢の雄性C57BL/6Jマウス(20~26g、SPF級)48匹を1週間、環境に適応させた後、体重により、第1群(抗生物質処理なし、ブランク、i.p.)、第2群(抗生物質処理あり、ブランク、i.p.)、第3群(抗生物質処理あり、抗mPD-1、10mg/kg、i.p.)、第4群(抗生物質処理あり、アッカーマンシアムシニフィラSSYD-3、p.o.、抗mPD-1、10mg/kg、i.p.)の4群にランダムに分けた。広域スペクトル抗生物質アンピシリン(1mg/mL)+コリスチン(1mg/mL)+ストレプトマイシン(5mg/mL)を5日飲水投与した。第4群のマウスには、先ずアッカーマンシアムシニフィラSSYD-3の凍結乾燥サンプルを投与し、胃内投与濃度が1.0×108CFU/匹/日である。胃内投与を2週間続けた後、全ての群では、PBSに再懸濁したMC38腫瘍細胞を濃度1×107個/mLで接種し、100μL/匹で実験動物の右肋骨部皮下に接種した。第3群及び第4群のマウスには、腫瘍細胞を接種してから4日目に抗mPD-1を注射し、4日ごとに1回注射し、合計で4回注射した。腫瘍接種してから19日目にマウスの体重を量った後、マウスを安楽死させ、マウスの腫瘍重量を測定して記録した。
【0066】
MC38腫瘍細胞は如汀生物技術有限会社から購入され、非働化10%ウシ胎仔血清、100U/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシン、並びに2mMグルタミンを含有するDMEM培地を用いて、37℃、5%CO2のインキュベーターにて腫瘍細胞を培養し、約3日おきに、細胞が満ちた後、新しいフラスコに移して継代培養し、対数増殖期にある腫瘍細胞を体内腫瘍の接種に用いる。
【0067】
試験結果を
図2に示す。菌株と抗mPD-1との併用治療効果については、抗mPD-1単独治療群に比べて、腫瘍生長を顕著に阻害し、腫瘍体積を顕著に縮小させた。結果から分かるように、アッカーマンシアムシニフィラSSYD-3は、抗mPD-1の治療効果を効果的に向上させることができる。P<0.05は、顕著な差異があることを示す。
【0068】
実施例4
実施例3におけるマウスを、腫瘍接種してから19日目に安楽死させ、フローサイトメトリー(艾森生物有限会社、NovoCyte 3130)で、腫瘍細胞内のCD3、CD4、CD8、FOXP3、CD25、CXCR3、Gata3、Granzyme B、CD69、PD-1、CTLA-4、CD11b、MHCII、CD206、CD40、CSF1R、PD-L1、及びGr-1を検出した。免疫因子分析は、TNF-α、IL-17、IL-13、IL-12p70、IL-10、IL-6、IL-5、IL-4、IL-2、IL-1b、IFNy、GM-CSF、G-CSF、M-CSF、MIG、IP-10、MIP1b及びMAC-1を含む。抗生物質処理されたマウスに対して、抗mPD-1による単独治療、及びアッカーマンシアムシニフィラSSYD-3と抗mPD-1との併用治療を施し、結果を
図3に示す。結果から分かるように、アッカーマンシアムシニフィラSSYD-3と抗mPD-1の注射との併用治療を施した後、腫瘍浸潤CD8 T細胞数が顕著に増加し、アッカーマンシアムシニフィラSSYD-3が抗mPD-1の抗腫瘍効果を向上させたことを示す。
【0069】
実施例5
実施例3におけるマウスを、抗mPD-1による単独治療、及びアッカーマンシアムシニフィラSSYD-3と抗mPD-1との併用治療を施した後19日目に安楽死させ、フローサイトメトリー(艾森生物有限会社、NovoCyte 3130)で、腫瘍細胞内のCD3、CD4、CD8、FOXP3、CD25、CXCR3、Gata3、Granzyme B、CD69、PD-1、CTLA-4、CD11b、MHCII、CD206、CD40、CSF1R、PD-L1、及びGr-1を検出した。免疫因子分析は、TNF-α、IL-17、IL-13、IL-12p70、IL-10、IL-6、IL-5、IL-4、IL-2、IL-1b、IFNy、GM-CSF、G-CSF、M-CSF、MIG、IP-10、MIP1b及びMAC-1を含む。マウス体内の免疫細胞の変化結果を
図4に示す。結果から分かるように、抗mPD-1の単独注射に比べて、抗mPD-1とアッカーマンシアムシニフィラSSYD-3との併用治療により、腫瘍組織内のCD3細胞のレベルが顕著に向上し、生体の免疫力が向上した。図では、いずれも抗生物質処理群と比較し、P<0.05は、顕著な差異があることを示し、*P<0.05、**P<0.01である。
【0070】
実施例6
実施例3におけるマウスを、抗mPD-1による単独治療、及びアッカーマンシアムシニフィラSSYD-3と抗mPD-1との併用治療を施した後19日目に安楽死させ、フローサイトメトリー(艾森生物有限会社、NovoCyte 3130)で、腫瘍細胞内のCD3、CD4、CD8、FOXP3、CD25、CXCR3、Gata3、Granzyme B、CD69、PD-1、CTLA-4、CD11b、MHCII、CD206、CD40、CSF1R、PD-L1、及びGr-1を検出した。免疫因子分析は、TNF-α、IL-17、IL-13、IL-12p70、IL-10、IL-6、IL-5、IL-4、IL-2、IL-1b、IFNy、GM-CSF、G-CSF、M-CSF、MIG、IP-10、MIP1b及びMAC-1を含む。実験結果を
図5に示す。抗生物質で処理されたマウスの腫瘍組織内のTreg細胞数はわずかに増加したが、顕著な差異がなく、抗mPD-1により治療された抗生物質処理群では、Treg細胞数は顕著に低減し(P<0.01)、アッカーマンシアムシニフィラSSYD-3と抗mPD-1との併用治療によりも、マウス体内のTreg細胞数を顕著に低減させた(P<0.001)。上記した結果から分かるように、抗mPD-1の単独注射により、マウス体内の免疫阻害システムが一部解消され、アッカーマンシアムシニフィラSSYD-3との併用により、マウス体内の免疫阻害作用が更に解消され、生体の免疫活性及び抗腫瘍効果が回復した。抗生物質処理群と比較し、P<0.05は、顕著な差異があることを示し、**P<0.01、***P<0.001である。
【0071】
実施例7
6~8週齢の雄性C57BL/6Jマウス(20~26g、SPF級)36匹を1週間、環境に適応させた後、体重により、第1群(抗生物質処理あり、ブランク、i.p.)、第2群(抗生物質処理あり、抗mPD-1、10mg/kg、i.p.)、第3群(抗生物質処理あり、アッカーマンシアムシニフィラSSYD-3、p.o.、抗mPD-1、10mg/kg、i.p.)の3群にランダムに分けた。各群のマウスには、広域スペクトル抗生物質アンピシリン(1mg/mL)+コリスチン(1mg/mL)+ストレプトマイシン(5mg/mL)を5日飲水投与した。その後、第3群では、先ずアッカーマンシアムシニフィラSSYD-3の凍結乾燥サンプルを投与し、胃内投与濃度が1.0×108CFU/匹/日である。胃内投与を2週間続けた後、全ての群のマウスに対して、PBSに再懸濁した4T1腫瘍細胞を濃度1×107個/mLで接種し、100μL/匹で実験動物の右肋骨部皮下に接種した。第2群及び第3群のマウスには、腫瘍細胞を接種してから4日目に抗mPD-1を注射し、4日ごとに1回注射し、合計で4回注射した。腫瘍接種してから19日目にマウスの腫瘍体積を測定した後、各群のマウスを安楽死させ、腫瘍組織を摘出した。
【0072】
結果を
図6に示す。抗mPD-1による治療に感受性がない4T1乳癌モデルにおいて、アッカーマンシアムシニフィラSSYD-3と抗mPD-1との併用治療により、4T1乳癌に対する抗mPD-1の治療効果が顕著に向上し(P<0.0001)、アッカーマンシアムシニフィラSSYD-3により、抗mPD-1に対する生体の応答を向上させ、抗mPD-1による腫瘍治療の応用範囲を拡大することができることを示す。
【0073】
実施例8
6~8週齢の雄性C57BL/6Jマウス(20~26g、SPF級)36匹を1週間、環境に適応させた後、体重により、第1群(抗生物質処理あり、ブランク、i.p.)、第2群(抗生物質処理あり、抗mPD-1、10mg/kg、i.p.)、第3群(抗生物質処理あり、アッカーマンシアムシニフィラSSYD-3、p.o.、抗mPD-1、10mg/kg、i.p.)の3群にランダムに分けた。各群のマウスには、広域スペクトル抗生物質アンピシリン(1mg/mL)+コリスチン(1mg/mL)+ストレプトマイシン(5mg/mL)を5日飲水投与した。第3群のマウスには、先ずアッカーマンシアムシニフィラSSYD-3の凍結乾燥サンプルを投与し、胃内投与濃度が1.0×108CFU/匹/日である。胃内投与を2週間続けた後、全ての群では、PBSに再懸濁したLLC1肺癌細胞を濃度1×105個/mLで接種し、100μL/匹で実験動物の右肋骨部皮下に接種した。第2群及び第3群のマウスには、腫瘍細胞を接種してから4日目に抗mPD-1を注射し、4日ごとに1回注射し、合計で4回注射した。腫瘍接種してから19日目にマウスの腫瘍体積を測定した後、各群のマウスを安楽死させ、腫瘍組織を摘出した。
【0074】
図7に示すように、抗mPD-1に対する応答が大体ないLLC1肺癌モデルにおいて、抗生物質処理されたマウスに対して、抗mPD-1とアッカーマンシアムシニフィラSSYD-3との併用治療を施した場合は、抗mPD-1による単独治療に比べて、腫瘍体積が顕著に縮小し(P<0.0001)、アッカーマンシアムシニフィラSSYD-3により、抗mPD-1に対するLLC1肺癌の応答を顕著に向上させ、抗mPD-1による腫瘍治療の応用範囲を拡大したことを示す。
【配列表】