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特許7463566摩耗リングならびに摩耗リングアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】摩耗リングならびに摩耗リングアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F16J 9/20 20060101AFI20240401BHJP
   F16J 1/00 20060101ALI20240401BHJP
   F16J 7/00 20060101ALI20240401BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
F16J9/20
F16J1/00
F16J7/00
F16J15/18 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022579861
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 EP2020067516
(87)【国際公開番号】W WO2021259456
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】519299094
【氏名又は名称】トレレボリ シーリング ソリューションズ ジャーマニー ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Trelleborg Sealing Solutions Germany GmbH
【住所又は居所原語表記】Schockenriedstrasse 1, 70565 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゲルト メルシュテッド イヴェルセン
(72)【発明者】
【氏名】アゲ トンドルフ
(72)【発明者】
【氏名】アナス クヴィスト ビェルヴァン
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-504277(JP,A)
【文献】特開2005-090443(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0245406(US,A1)
【文献】独国実用新案第202010004934(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 1/00-1/24
F16J 7/00-10/04
F16J 15/16-15/32
F16J 15/324-15/3296
F16J 15/46-15/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動軸線(34)に沿って/移動軸線(34)を中心として互いに相対的に可動に配置された2つの機械構成要素(30,32)をガイドするための摩耗リング(10)であって、前記摩耗リング(10)は、一体部品としてプラスチックまたは強化プラスチック材料から形成されており、前記摩耗リングにはスリットが入れられており、これにより前記摩耗リングは、2つの自由端部(14)を有しており、前記摩耗リング(10)は表側(16)と裏側(18)と2つの側面(20,22)とを有しており、前記摩耗リング(10)は、前記摩耗リング(10)の中心軸線(26)に関して、少なくとも部分的に、前記摩耗リングの前記裏側(18)に向かって半径方向で拡大する断面幅Wを有しており、前記摩耗リング(10)は、前記表側(16)および前記裏側(18)に形成された1つ以上の凹部(24)を有しており、前記表側(16)の前記凹部(24)および前記裏側(18)の前記凹部(24)は、前記摩耗リング(10)の前記中心軸線(26)の方向で互いに離隔されていて、前記摩耗リング(10)の各側(16,18)の前記凹部(24)は、前記摩耗リング(10)の周方向で互いに離隔されて配置されている、摩耗リング(10)。
【請求項2】
前記摩耗リング(10)は、前記摩耗リングの各断面において、単一の凹部(24)をまたは複数の凹部(24)を有しており、前記各断面のすべての凹部(24)の深さdの全長は、前記摩耗リング(10)の公称厚さ(56)の3分の2よりも大きいことを特徴とする、請求項記載の摩耗リング(10)。
【請求項3】
前記凹部(24)は、溝としてまたは円形の穴として形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載の摩耗リング(10)。
【請求項4】
前記凹部のそれぞれが、前記摩耗リング(10)の断面において、各凹部(24)の中心軸線(58)に対して対称に配置された側面(50)を有しており、前記中心軸線(58)は、前記摩耗リング(10)の中央平面(28)に対して平行に配置されていることを特徴とする、請求項記載の摩耗リング(10)。
【請求項5】
前記摩耗リング(10)の断面において、前記凹部(24)の少なくとも一部の中心軸線は、前記摩耗リング(10)の中央平面(28)に対して傾斜させられていることを特徴とする、請求項記載の摩耗リング(10)。
【請求項6】
前記摩耗リング(10)の断面において、前記凹部(24)の少なくとも一部は、拡張した底部区分(60)を有していることを特徴とする、請求項からまでのいずれか1項記載の摩耗リング(10)。
【請求項7】
前記摩耗リング(10)は、少なくとも部分的に鳩尾形の断面形状を有していることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の摩耗リング(10)。
【請求項8】
前記摩耗リング(10)は、その側方側面(20,22)のうちの少なくとも一方にまたは両方に、各側方側面(20,22)から離れて延在する1つ以上の横方向突出部(62)を有していることを特徴とする、請求項1記載の摩耗リング(10)。
【請求項9】
前記摩耗リング(10)の各側方側面(20,22)における複数の前記横方向突出部は、前記摩耗リング(10)の周方向で規則的な間隔で互いに離隔されて配置されていることを特徴とする、請求項記載の摩耗リング(10)。
【請求項10】
前記横方向突出部(62)は、三角形または矩形の横断面形状を有することを特徴とする、請求項または記載の摩耗リング(10)。
【請求項11】
摩耗リングアセンブリ(100)であって、
-移動軸線(34)に沿って/移動軸線(34)を中心として互いに相対的に可動に配置されている第1の機械構成要素(30)および第2の機械構成要素(32)と、
-請求項1から10までのいずれか1項記載の特徴を有する摩耗リング(10)であって、前記機械構成要素(30,32)の一方に設けられた、左右対称のアンダカット(52)を備えた取付け溝(48)内に取外し可能に挟み込まれる摩耗リング(10)と、
を有している、摩耗リングアセンブリ(100)。
【請求項12】
前記取付け溝(48)を有する前記機械構成要素(30,32)と前記摩耗リング(10)とは、蟻継ぎにより共に接合されていることを特徴とする、請求項11記載の摩耗リングアセンブリ(100)。
【請求項13】
前記摩耗リングアセンブリは、ピストン・シリンダユニットとして形成されており、前記第1の機械構成要素(30)はシリンダであって、前記第2の機械構成要素(32)はピストンまたはピストンロッドであることを特徴とする、請求項11記載の摩耗リングアセンブリ(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩耗リングならびに摩耗リングアセンブリに関する。ガイドリングとも呼ばれる摩耗リングは、移動軸線に沿って/移動軸線を中心として互いに相対的に可動である2つの機械構成要素をガイドするために使用される。例えば、摩耗リングは、液圧シリンダ内のピストンまたはピストンロッドをガイドするために使用され、横方向の力を吸収する。同時に摩耗リングは、これらの機械構成要素の機械的な接触を阻止し、これにより、2つの機械構成要素の間に形成されるシールギャップをシールするために使用される各シールシステムのパフォーマンス全体および耐用期間を最適化する。
【0002】
摩耗リングは、長年、典型的には金属から、特にステンレス鋼または真鍮から製作されてきた。しかしながら、非金属摩耗リングは、摩耗リングの金属対と比較した場合に利点を提供するため、幅広い用途において十分に定着してきている。これに関して、非金属の摩耗リングは、好ましくない局所的な過剰応力を排除することができ、高い耐摩耗性および長い耐用年数を示している。さらに、非金属摩耗リングは、低摩擦であり、かつ望ましくない振動に関して優れた減衰特性を提供する。
【0003】
プラスチックまたは強化プラスチック摩耗リングには、一般的にスリットが入れられていて、これにより摩耗リングは、互いに離隔されて互いに向き合う2つの自由端部を有している。摩耗リングは通常、機械構成要素のうちの一方に形成された取付け溝内に装着される。しかしながら、摩耗リングの可撓性の性質により、一般に、2つの機械構成要素が少なくとも組み立てられるまでは、取付け溝が設けられた機械構成要素に摩耗リングをさらに固定しなければならない。実際には、このような固定は通常は、各機械構成要素に対する摩耗リングのボンディングにより行われる。しかしながら、このような工程は、専用の取付け溝内への摩耗リングの装着を著しく複雑にし、遅延させ、摩耗リングアセンブリの製造コストを過度に増大させる。
【0004】
したがって本発明の課題は、より簡単に取り付けることができ、より費用対効果のある摩耗リングならびに摩耗リングアセンブリを提供することである。
【0005】
本発明の第1の課題は、請求項1による摩耗リングにより解決される。本発明による摩耗リングアセンブリは、請求項12記載の特徴を有する。
【0006】
本発明による摩耗リングは、一体部品として、弾性変形可能なプラスチックまたは強化プラスチック材料から形成されている。例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)またはポリエチレン材料が適切な材料と考えられる。摩耗リングにはスリットが入れられており、これにより摩耗リングは2つの自由端部を有している。これにより、機械構成要素の取付け溝内への摩耗リングの取付けまたは摩耗リングの取外しをさらに促進するために、摩耗リングを一時的に広げることができる。摩耗リングは、表側、裏側、および2つの側面を有しており、この場合、摩耗リングは、半径方向で、少なくとも部分的に、摩耗リングの裏側に向かって拡大する断面幅を有している。したがって摩耗リングを、その弾性変形可能な材料ゆえに、一方の機械構成要素、例えば、液圧または空気圧ピストン・シリンダユニットのピストン/ピストンロッドの、摩耗リングに対応するように設計された取付け溝内に直接、挟み込むことができる。摩耗リングは、その表側および/または裏側に形成された1つ以上の凹部を有しており、この凹部は、摩耗リングを、各機械要素の、特にピストンまたはピストンロッドの取付け溝内により容易に取り付けることができるように、摩耗リングの曲げ/ねじりまたはカーディングを促進するために機能する。これにより、より迅速かつより費用対効果のある摩耗リングの取付けが可能となる。凹部は、摩耗リングのより容易な変形を可能にするために、摩耗リングの材料を著しく弱化させなければならないことは明らかである。このために、各凹部の深さは好ましくは、摩耗リングの公称厚さの20%を超える。さらに、摩耗リングの使用中、凹部は、蓄積される粒子状物質を取り込むことができ、互いに相対的に可動に配置された機械構成要素が動かなくなることを防止するのに役立つ。摩耗リングの取り付け中、取付け溝を備えた機械構成要素への摩耗リングの(接着)通常のボンディングを省くことができる。さらに特筆すべきことは、前述の取付け溝内の予め規定された位置への摩耗リングの取付けが、より確実かつ再現可能に達成することができるということである。前述した凹部は、製造が容易であり、摩耗リングのまさに成形中にまたは成形後に形成することができる。
【0007】
表側の凹部および裏側の凹部は、摩耗リングの中心軸線の方向で互いに(それぞれ)離隔されている。これにより、機械構成要素の前述の取付け溝内への摩耗リングの取付けのために、摩耗リングのさらに容易なねじり/曲げが必要に応じて可能である。これは特に、比較的大きな直径を有し、概して装着が比較的困難な摩耗リングにおいて有利である。さらに、これにより、装着中または使用中の摩耗リングの望ましくない破壊を防止することができる。
【0008】
本発明のさらなる実施形態によれば、摩耗リングは、各断面において、摩耗リングの全周延在にわたって、単一の凹部または複数の凹部、特に2つ、3つ、または4つの凹部を有していて、この場合、摩耗リングの各断面において、すべての凹部の深さの全長は、摩耗リングの公称厚さの3分の2よりも大きい。これにより、摩耗リングの高度な変形可能性が可能になるが、取付け溝への配置後、取付け溝からの摩耗リングの望ましくない滑脱に抵抗するための摩耗リングの十分な強度は維持される。本発明の好ましい実施形態によれば、摩耗リングの各断面における、すべての凹部の深さの全長は、摩耗リングの公称厚さよりも大きい。
【0009】
凹部のそれぞれまたは少なくとも一部は、溝として形成されていてよい。この溝は、溝側面を有しており、この溝側面は、横断面で見て、摩耗リングの表側に対してまたは摩耗リングの中央平面に対して垂直に配置された、凹部/溝の中心軸線に関して対称に配置されている。
【0010】
本発明のさらなる実施形態によれば、摩耗リングの断面で見て、各溝の中心軸線は、摩耗リングの局所的な半径または中央平面に対して傾斜させられていてもよい。
【0011】
摩耗リングの凹部のうちの少なくとも一部またはそれぞれの各開口角度δは、好ましくは25°~60°、特に30°~50°である。摩耗リングの凹部は、同じまたは異なる開口角度δを有していてよい。
【0012】
さらに、摩耗リングの断面図において、凹部/溝の少なくとも一部は、拡張した底部区分を有することができる。したがって、凹部/溝は、気泡状のまたはカップ型のキャビティを有している。これにより、摩耗リングの表側および/または裏側における機能的支持面を過剰に犠牲にすることなく、摩耗リングの柔軟な変形性をさらに高めることができる。さらに、摩耗リングの前述の凹部のそれぞれまたは一部は、袋孔として、または貫通凹部またはスリットとしても形成されていてよい。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、摩耗リングは、少なくとも部分的にまたはその周方向延在全体にわたって、鳩尾形の断面形状を有している。これにより、一度、摩耗リングが前述の溝内に挟み込まれれば、取付け溝を特徴とする機械構成要素の左右両側での係合が可能となる。これにより、摩耗リングは、せん断応力を受けても、取付け溝内の予め規定された位置にとどまる。
【0014】
本発明の代替的な実施形態によれば、摩耗リングは、その側方側面のうちの少なくとも一方にまたはそれぞれに、各側方側面から延在する1つ以上の横方向突出部を有している。これらの突出部は、摩耗リングの弾性変形可能な材料ゆえに、容易に撓むことができ、したがって、機械構成要素の各取付け溝内へのより容易な摩耗リングの挿入/挟み込みを可能にする。各側方側面に複数の突出部が配置されている場合、これらの突出部は好ましくは、摩耗リングの周方向において規則的な間隔で互いに離隔させられている。
【0015】
横方向突出部は、好ましくは、三角形または矩形の横断面形状を有している。これにより、特に射出成形によって容易に製造することができ、取付け溝内への摩耗リングの容易な挟み込み、および取付け溝内での確実な装着が可能となる。
【0016】
本発明による摩耗リングアセンブリは、
-移動軸線に沿っておよび/または移動軸線を中心として互いに相対的に可動である第1および第2の機械構成要素であって、これらの機械構成要素の間にはシールギャップが画定されており、これらの機械構成要素のうちの一方には取付け溝が設けられており、この取付け溝は、両側のアンダカットを形成する溝側面によって画定されている、第1および第2の機械構成要素と、
-上述したような摩耗リングであって、前述の取付け溝内に取外し可能に挟み込まれていて、前述の機械構成要素の直接的な機械的接触を阻止する摩耗リングと
を有している。
【0017】
本発明によれば、取付け溝を有した機械構成要素と摩耗リングとは、好ましくは蟻継ぎにより共に接合されている。蟻継ぎにより、接着剤等のようなさらなる固定手段を必要とせずに、取付け溝内の予め規定された取付け位置に摩耗リングを容易に取り付け、固定することができる。さらに、第1および第2の機械構成要素の、例えばピストンロッド/ピストンおよびシリンダの取付けを、これにより促進し、加速することができる。これによりさらに、コスト上の利点も得られる。また、摩耗リングの交換は、摩耗リングの面倒な取外しを必要とせずに、大幅に促進されることにも注目すべきである。
【0018】
添付の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、本発明の実施形態を例示し、説明と共に本発明の原理を説明するために役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明によるスリット摩耗リングを示す斜視図である。
図2】第1および第2の機械構成要素、ここではピストンまたはピストンロッドおよびシリンダと、第1および第2の機械構成要素を互いに相対的にガイドするために、これらの機械構成要素のうちの1つに設けられた取付け溝内のその所定の取付け位置に挟み込まれたいくつかの摩耗リングとを有する本発明による摩耗リングアセンブリの断面図である。
図3図2の摩耗リングアセンブリの詳細な断面図である。
図4図3の摩耗リングの平面図である。
図5】本発明による摩耗リングのさらなる実施形態の断面図である。
図6】本発明による摩耗リングのさらなる実施形態の断面図である。
図7】本発明による摩耗リングのさらなる実施形態の断面図である。
図8】本発明による摩耗リングのさらなる実施形態の断面図である。
図9】本発明による摩耗リングのさらなる実施形態の平面図である。
図10図9にB-Bで示された断平面に沿って断面した図9による摩耗リングの断面図である。
図11】摩耗リングの表側にのみ円形の凹部を有し、かつ摩耗リングの一方の側面に横方向突出部を有する、本発明による摩耗リングのさらなる実施形態を示す平面図である。
図12図11にC-Cで示された断平面に沿って断面した図11による摩耗リングの断面図である。
図13図11にD-Dで示された断平面に沿って断面した図11による摩耗リングの断面図である。
図14】摩耗リングの側面の一方に鋸歯状縁部を有する、本発明による摩耗リングのさらなる実施形態を示す平面図である。
【0020】
図1は、移動軸線に沿って/移動軸線を中心として互いに対して可動な2つの機械構成要素をガイドするためのスリット摩耗リング10の斜視図を示している。摩耗リングは、前述の機械構成要素の望ましくない直接相互接触を防止するために横方向負荷に対処するために機能する。この摩耗リングは、一方の機械構成要素の取付け溝に摩耗リング10を取り付けるためのベースセグメント10aと、それぞれの他方の機械構成要素と接触するための摩耗または支持セグメント10bとを特徴とする。摩耗リング10のスリット12により、摩耗リング10は、摩耗リングの周方向で互いに向き合う2つの自由端部14を有する。
【0021】
摩耗リング10は、互いに反対側を向いた表側16および裏側18と、2つの側方側面20,22とを有する。摩耗リング10は一体部品として製作されており、弾性変形可能なプラスチックまたは強化プラスチック材料から成る。例えば、プラスチック材料は、繊維(図示せず)または他の適切な機械的および/または熱的に強化する化合物または必要に応じて乾燥潤滑剤を含むことができる。
【0022】
摩耗リング10は、例えばその裏側18に配置された凹部24を特徴とする。凹部は、摩耗リング10の周方向の延在L全体にわたって延在していてよい。凹部24の機能は、詳しくは後述する。摩耗リングの中心軸線は符号26で示されていて、摩耗リング10の中央平面は符号28で示されている。摩耗リングの幅は符号Wで示されている。
【0023】
図2は、摩耗リングアセンブリ100の断面図を示しており、この摩耗リングアセンブリは、互いに離隔されて配置されていて、移動軸線34に沿って互いに相対的に可動な第1の機械構成要素30と第2の機械構成要素32とを含む。摩耗リングアセンブリ100は、単なる例として、ピストン・シリンダユニットとして形成されており、この場合、第1の機械構成要素30はシリンダであり、第2の機械構成要素32はピストンまたはピストンロッドである。前述のピストン・シリンダユニットは、例えば、液圧ポンプまたは空気圧ポンプで使用することができる。2つの機械構成要素30,32は特に、金属から形成されていてよい。
【0024】
半径方向で2つの機械構成要素30,32の間に形成されたシールギャップ36が存在している。少なくとも1つのシールエレメント(シールリング)38が、摩耗リングアセンブリ100の低圧側または大気圧側Nに対して高圧側Hをシールするために機能する。シールエレメント38は、第2の機械構成要素32の保持溝40内に装着されている。代替的に、各保持溝40内に配置された2つ以上のこのようなシールエレメント38が存在していてもよく、この場合、これらの保持溝40は、移動軸線34に関して軸方向で互いに離間されて配置されていることを理解されたい。
【0025】
シールエレメント38には、予荷重エレメント44によって、動的なシール形式で、第1の機械構成要素30の対向面42に対して半径方向で予荷重がかけられている。予荷重エレメント44自体は、保持溝40内に配置されていて、例えば、弾性的なOリングとして形成されていてよい。予荷重エレメント44は、シールエレメント38と保持溝40の各溝底面46との両方に、静的なシール形式で当接している。
【0026】
軸方向で互いに離隔されてそれぞれ配置された複数のスリット摩耗リング10があり、これらの各摩耗リングは、第2の機械構成要素32の各取付け溝48内に装着されている。摩耗リング10のそれぞれは、半径方向でシールギャップ36内に突入しており、断続的にまたは常に第1の機械構成要素30のシール面42に当接していてよい。摩耗リングアセンブリ100の作動中、摩耗リング10は、第2の機械要素32をガイドし、横方向負荷を吸収し、かつ2つの機械構成要素30,32の間の不都合な恐らくは有害な直接的な(金属対金属の)接触を阻止する。摩耗リング10のプラスチックまたは強化プラスチック材料は、十分な負荷容量を有している必要があることが理解され、有利には低摩擦およびスティックスリップのない作動を可能にすることが理解される。摩耗リング10はさらに、臨界的なシールエレメント38を望ましくない過負荷から保護する。
【0027】
第2の機械構成要素32の各取付け溝48は、図3により詳細に示されているように、取付け溝の溝底面46に向かって半径方向に広がる断面を示している。したがって、各取付け溝48の溝側面50はそれぞれアンダカット52を形成しており、このアンダカットの背後に各摩耗リング10が半径方向に係合している。摩耗リング10のベースセグメント10aは、取付け溝48の断面形状に対応する、または基本的には対応する断面形状を有している。図2および図3に示された実施形態によると、摩耗リング10は、対応して傾斜した取付け溝側面50によって形成されたアンダカット52の背後に係合する傾斜したまたは面取りされた側面20,22を有していてよい。摩耗リングの側面20,22および取付け溝48の溝側面50は、摩耗リング10の局所的な半径rに対して鋭角βで配置されている。
【0028】
第2の機械要素32と、その内部に装着された各摩耗リング10とはそれぞれ、蟻継ぎを形成しており、この蟻継ぎによって、摩耗リング10はその予め規定された取付け位置で確実に固定される。蟻継ぎにより、接着剤等のようなさらなる固定手段を必要とせずに、各機械構成要素30,32上に摩耗リング10を取り付けることができる。
【0029】
既に上述したように、各摩耗リング10は、弾性変形可能なプラスチックまたは強化プラスチック材料から成る。各機械構成要素30,32の取付け溝内への摩耗リング10の取付けをさらに促進するために、摩耗リング10には、スリット摩耗リング10の容易なねじり/曲げ(またはカーディング)を可能にする1つの凹部24(図1)またはより多数の凹部24が、その表側16および/または裏側18に設けられている。
【0030】
図3および図4に示された摩耗リング10の実施形態によれば、摩耗リング10の表側16および裏側の両方に、複数の凹部が設けられている。摩耗リング10の各側16,18における凹部は、摩耗リング10の周方向で互いに離隔されて配置されている。
【0031】
摩耗リング10の表面積54あたりの凹部24の数、寸法、特に深さは、好ましくは、各摩耗リング10の弾性材料特性およびジオメトリに応じて選択される。
【0032】
摩耗リング10の表側16のすべての凹部および/または裏側18のすべての凹部は、同じ寸法を有していてよい。しかしながら、表側16の凹部24は、実際には、裏側18の凹部24と異なっていてもよく、特に、異なる、例えば、より小さな(図3に示されているように)深さdおよび/または異なる、例えば、より小さな、最大幅bを有してもよい。
【0033】
特に、単一の凹部24または複数の凹部24を示す摩耗リング10の各断面において、全周延在にわたる摩耗リング10の各断面におけるすべての凹部24の深さDの全長は、有利には、摩耗リング10の公称厚さ56の3分の2よりも大きい。
【0034】
さらに、摩耗リング10の表側16の凹部24および裏側18の凹部24は好ましくは、摩耗リング10の任意の断面において、摩耗リング10の中心軸線26(図1)の方向で互いに離隔されて配置されている。これにより、摩耗リングの取付け中および作動中の、摩耗リング10の望ましくない損傷または破壊を防止することができる。さらに、図3に示されたように、摩耗リング10の凹部24の中心軸線58は、摩耗リング10の中央平面28に対して平行に配置することができる。
【0035】
図5に示された摩耗リング10によれば、各凹部24の中心軸線58を、摩耗リング10の中央平面28に対して傾斜させて配置することもできる。これは、実際には、より幅広の摩耗リング10またはより大きな直径を有する摩耗リング10において有益であり得る。なぜならば、これにより、摩耗リング10を機械的な破損のリスクに曝すことなく、摩耗リング10内への凹部24をより大きく延在させることができるからである。
【0036】
図5および図6によると、摩耗リング10の凹部24のうちの少なくとも一部または全部の各開口角度δは、好ましくは25°~60°、特に30°~50°である。摩耗リング10の凹部24は、同じまたは異なる開口角度δを有していてよい。
【0037】
凹部24は、厳密に摩耗リングの周方向で延在することができる。しかしながら、凹部24は、また、摩耗リング10の変形可能性を向上させるために、円形の、三角形の、またはその他適切なジオメトリを有する穴として構成されていてもよい。
【0038】
特筆すべきこととして、凹部24はさらなる利点を有している。長い作動時間後に、摩耗リングアセンブリ100のシールギャップ36(図2)の間に、粒子状物質が形成される傾向があるので、凹部24は、このような粒子状物質を取り込むことができ、互いに相対的に可動に配置された機械構成要素30,32が動かなくなることを防止するのに役立つ。
【0039】
図6によると、摩耗リング10の凹部24の少なくとも一部は、摩耗リング10の中央平面28(図1)に対して半径方向で拡幅されていてよく、したがって拡張した底部区分60を示している。
【0040】
摩耗リング10は、各機械要素30,32の取付け溝48の溝側面50によって形成されたアンダカット52(図3参照)の背後に係合するために面取りされた側面20,22を必ずしも有する必要はない。摩耗リング10は、例えば、代替的に、図7に示されたようにT字形の断面を示してもよい。したがって摩耗リング10は、その横方向側面20,22のそれぞれに横方向突出部62を有している。単なる非限定的な例によるこれらの横方向突出部62は、それぞれ、矩形の断面形状を有していてよい。横方向突出部62は、取付け溝側面50の対応するように形成されたアンダカット52(図3)の背後に係合する。取付け溝48は、この場合、対応するように形成されたT字形の断面を有している。
【0041】
図8に示したさらなる実施形態によれば、摩耗リング10は、代替的に、面取りされた第1の側面20と、図7に関連して上述したように横方向突出部62を有する第2の側面22とを特徴としてよい。摩耗リング10の横方向突出部62および/または面取りされた側面20は、摩耗リング10の周方向の延在L(図1)全体にわたって延在していてよい。代替的に、これらの横方向突出部62および/または面取りされた側面20,22は、摩耗リングの周方向に沿って摩耗リング10上に単に部分的に設けられている。
【0042】
図9には、例えば、その両側面20,22から延在する複数の横方向突出部62を有している摩耗リング10の部分図が示されている。各側面20,22上の横方向突出部62は、摩耗リング10の周方向で互いに離隔されて配置されている。図9に示された横方向突出部62は、図9の断平面B-Bに沿った摩耗リング10の断面図で、図10に示されている。前述の横方向突出部62のそれぞれは、摩耗リング10の成形により右側に形成され得、または代替的に加圧成形により、摩耗リング10の横方向エッジ部分64(図9)が形成され得る。これは例えば、図10に破線で示された圧縮ダイ66とスラストベアリング68とによって行うことができる。これにより、摩耗リング10を、その実際のサイズにかかわらず、単純かつ高い費用対効果で製造することが可能となる。
【0043】
加圧成形中の摩耗リング10の材料の塑性流動をさらに改善するために、さらなるへこみ70をまたは穴72も作成することができ、この穴は、図11に示したように、摩耗リング10の中心軸線26(図1参照)に関して軸方向内側に、形成すべき横方向突出部62に関してずらされて位置している。摩耗リング10は、図11に示したように、取付け溝48(図2)内への挿入中に摩耗リングのねじり/カーディングを促進するために、その表側に形成された複数の円形の凹部24を有している。円形の凹部は、袋孔または貫通孔であってもよい。
【0044】
穴72は、図11の断面C-Cに沿った図12による摩耗リングの断面図でより詳細に示されており、一方、図13では、図11の断面D-Dに沿った断面図でへこみ70がより詳細に示されている。
【0045】
図14に示されたさらなる摩耗リング10によれば、摩耗リング10のエッジ部分64を鋸歯状にすることができる。鋸歯74は、摩耗リング10の中央平面28に対して鋭角αで延在する横方向の切込みまたは貫通凹部24によって単純に形成されてよい。これらの鋸歯74は、残りの摩耗リング10に対して柔軟であってよく、したがって各機械要素30,32(図2)の取付け溝48における摩耗リング10のより単純にされた取付けを可能にする。
図1
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図14