(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20240401BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
G03G15/08 366
G03G21/00 370
(21)【出願番号】P 2023004190
(22)【出願日】2023-01-16
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 昌志
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-87882(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117068(WO,A1)
【文献】特開2018-205536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/08
G03G 13/095
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/08
G03G 15/095
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体に形成された静電潜像を現像するためにトナーとキャリアを含む現像剤を担持搬送する現像回転体と、前記現像回転体が配置され且つ前記現像回転体に現像剤を供給する第一室と、前記第一室と隔壁によって区画され且つ前記第一室との間で現像剤が循環する第二室と、現像剤が前記第一室から前記第二室に連通することを許容する第一連通部と、現像剤が前記第二室から前記第一室に連通することを許容する第二連通部と、前記第一室に配置され且つ現像剤を搬送する第一搬送スクリューと、前記第二室に配置され且つ現像剤を搬送する第二搬送スクリューと、前記第二室に初期現像剤を収容するために前記第一連通部及び前記第二連通部のそれぞれを封止する一対の封止部材と、前記一対の封止部材による前記第一連通部及び前記第二連通部のそれぞれの封止を解除する封止解除機構と、を有する現像装置と、
前記現像回転体を回転駆動するための駆動力を供給するモータと、
前記モータを制御する制御手段と、
を備え、
前記モータから供給される駆動力によって、前記第一搬送スクリューは、現像剤を前記第二連通部から前記第一連通部に向かう第一搬送方向に搬送し、且つ、前記第二搬送スクリューは、現像剤を前記第一連通部から前記第二連通部に向かう第二搬送方向に搬送し、且つ、前記封止解除機構は、前記一対の封止部材による前記第一連通部及び前記第二連通部のそれぞれの封止を解除し、
前記制御手段は、前記現像装置の初期化動作を開始してからの前記現像回転体の回転数が第1の閾値に到達するまでの間、前記現像回転体を第1の周速で回転させるよう前記モータを制御し、前記初期化動作を開始してからの前記現像回転体の回転数が前記第1の閾値に到達した後であって前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値に到達するまでの間、前記現像回転体を前記第1の周速よりも速い第2の周速で回転させるよう前記モータを制御する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記封止解除機構は、前記一対の封止部材を巻き取るための回転可能な巻取り軸を有し、
前記初期化動作の開始時において、前記モータから供給される駆動力によって、前記巻取り軸は巻取り方向に回転駆動され、且つ、前記巻取り方向に回転駆動された前記巻取り軸に前記一対の封止部材が巻き取られることによって、前記一対の封止部材による前記第一連通部及び前記第二連通部のそれぞれの封止を解除する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体に形成された静電潜像を現像するためにトナーとキャリアを含む現像剤を担持搬送する現像回転体と、前記現像回転体が配置され且つ前記現像回転体に現像剤を供給する第一室と、前記第一室と隔壁によって区画され且つ前記第一室との間で現像剤が循環する第二室と、現像剤が前記第一室から前記第二室に連通することを許容する第一連通部と、現像剤が前記第二室から前記第一室に連通することを許容する第二連通部と、前記第一室に配置され且つ現像剤を搬送する第一搬送スクリューと、前記第二室に配置され且つ現像剤を搬送する第二搬送スクリューと、前記第二室に初期現像剤を収容するために前記第一連通部及び前記第二連通部のそれぞれを封止する一対の封止部材と、前記一対の封止部材による前記第一連通部及び前記第二連通部のそれぞれの封止を解除する封止解除機構と、を有する現像装置と、
前記現像回転体を回転駆動するための駆動力を供給するモータと、
前記モータを制御する制御手段と、
前記モータの駆動負荷を検知する検知手段と、
を備え、
前記モータから供給される駆動力によって、前記第一搬送スクリューは、現像剤を前記第二連通部から前記第一連通部に向かう第一搬送方向に搬送し、且つ、前記第二搬送スクリューは、現像剤を前記第一連通部から前記第二連通部に向かう第二搬送方向に搬送し、且つ、前記封止解除機構は、前記一対の封止部材による前記第一連通部及び前記第二連通部のそれぞれの封止を解除し、
前記制御手段は、
前記現像装置の初期化動作を開始した後に前記検知手段によって検知された前記駆動負荷が所定値よりも大きい場合、前記初期化動作を開始してからの前記現像回転体の回転数が第1の閾値に到達するまでの間、前記現像回転体を第1の周速で回転させるよう前記モータを制御し、前記初期化動作を開始してからの前記現像回転体の回転数が前記第1の閾値に到達した後であって前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値に到達するまでの間、前記現像回転体を前記第1の周速よりも速い第2の周速で回転させるよう前記モータを制御し、
前記初期化動作を開始した後に前記検知手段によって検知された前記駆動負荷が前記所定値よりも小さい場合、前記初期化動作を開始してからの前記現像回転体の回転数が前記第2の閾値に到達するまでの間、前記現像回転体を前記第1の周速よりも速く前記第2の周速よりも遅い第3の周速で回転させるよう前記モータを制御する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記封止解除機構は、前記一対の封止部材を巻き取るための回転可能な巻取り軸を有し、
前記初期化動作の開始時において、前記モータから供給される駆動力によって、前記巻取り軸は巻取り方向に回転駆動され、且つ、前記巻取り方向に回転駆動された前記巻取り軸に前記一対の封止部材が巻き取られることによって、前記一対の封止部材による前記第一連通部及び前記第二連通部のそれぞれの封止を解除する
ことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に形成された静電潜像を現像する現像装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現像剤を撹拌するための撹拌室と、現像スリーブに現像剤を供給するための現像室を備えた現像装置がある。この現像装置は、現像室に設けられ、現像室の現像剤を第一搬送方向に搬送する現像スクリューと、撹拌室に設けられ、撹拌室の現像剤を第一搬送方向とは逆方向の第二搬送方向に搬送する撹拌スクリューとを現像容器内に備える。また、この現像装置は、現像室の現像剤を現像室から撹拌室に連通可能な第一開口部と、撹拌室の現像剤を撹拌室から現像室に連通可能な第二開口部とが設けられ、現像室と撹拌室とを隔てる隔壁を現像容器内に備える。
【0003】
特許文献1に記載の画像形成装置では、現像装置に設けられた同一系列のギア列を介して、シール部(一対の封止部材)を巻き取るための回転可能な巻き取り部(巻取り軸、封止解除機構)と、撹拌スクリューが連結されている。この画像形成装置に設けられたモータを用いて、巻き取り部と撹拌スクリューに駆動力を伝達可能な構成にしている。そして、現像装置の初期立ち上げ時において、画像形成装置に設けられたモータを駆動させることにより、巻き取り部と撹拌スクリューを同時に回転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
出荷時の現像装置において、現像装置の保管状態によっては、撹拌室内に密封状態で充填された初期現像剤が、撹拌スクリューの現像剤搬送方向の下流側に圧縮された状態(タッピング状態)になることがある。また、現像装置の初期立ち上げ時(初期使用の開始時、初期化動作時)において、第一開口部や第二開口部がシール部でシールされている状態で、撹拌スクリューの回転を開始したとする。この場合、撹拌スクリューの現像剤搬送方向の上流側から下流側に向かって初期現像剤が撹拌スクリューによって搬送され、第一開口部や第二開口部がシールされているために撹拌スクリューの現像剤搬送方向の下流側で初期現像剤が滞留する。このとき、撹拌スクリューの現像剤搬送方向の下流側における現像剤の圧力が上昇し、この状態で撹拌スクリューを回転させると、撹拌スクリューを回転させるためのモータの負荷トルクが上昇する。
【0006】
モータの負荷トルクが上昇するこの現象は、初期現像剤がタッピング状態になっている場合に特に顕著になる。また、撹拌スクリューを回転させるためのモータが高出力のモータでない場合に、モータの負荷トルクが上昇する現象によって、当該モータの負荷トルクが所定値以上になると、撹拌スクリューを回転させることができなくなるスクリューロックが生じる虞がある。また、サービス性の観点においては、現像装置の初期化動作に必要な時間はできる限り短い方が好ましい。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、モータを用いて封止解除機構と撹拌スクリューに駆動力を伝達する構成において、現像装置の初期使用の開始時にスクリューロックが生じることを抑制しつつ、初期化動作に必要な時間を短縮することが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る画像形成装置は以下のような構成を備える。即ち、静電潜像が形成される像担持体と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像するためにトナーとキャリアを含む現像剤を担持搬送する現像回転体と、前記現像回転体が配置され且つ前記現像回転体に現像剤を供給する第一室と、前記第一室と隔壁によって区画され且つ前記第一室との間で現像剤が循環する第二室と、現像剤が前記第一室から前記第二室に連通することを許容する第一連通部と、現像剤が前記第二室から前記第一室に連通することを許容する第二連通部と、前記第一室に配置され且つ現像剤を搬送する第一搬送スクリューと、前記第二室に配置され且つ現像剤を搬送する第二搬送スクリューと、前記第二室に初期現像剤を収容するために前記第一連通部及び前記第二連通部のそれぞれを封止する一対の封止部材と、前記一対の封止部材による前記第一連通部及び前記第二連通部のそれぞれの封止を解除する封止解除機構と、を有する現像装置と、前記現像回転体を回転駆動するための駆動力を供給するモータと、前記モータを制御する制御手段と、を備え、前記モータから供給される駆動力によって、前記第一搬送スクリューは、現像剤を前記第二連通部から前記第一連通部に向かう第一搬送方向に搬送し、且つ、前記第二搬送スクリューは、現像剤を前記第一連通部から前記第二連通部に向かう第二搬送方向に搬送し、且つ、前記封止解除機構は、前記一対の封止部材による前記第一連通部及び前記第二連通部のそれぞれの封止を解除し、前記制御手段は、前記現像装置の初期化動作を開始してからの前記現像回転体の回転数が第1の閾値に到達するまでの間、前記現像回転体を第1の周速で回転させるよう前記モータを制御し、前記初期化動作を開始してからの前記現像回転体の回転数が前記第1の閾値に到達した後であって前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値に到達するまでの間、前記現像回転体を前記第1の周速よりも速い第2の周速で回転させるよう前記モータを制御することを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するために本発明の他態様に係る画像形成装置は以下のような構成を備える。即ち、静電潜像が形成される像担持体と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像するためにトナーとキャリアを含む現像剤を担持搬送する現像回転体と、前記現像回転体が配置され且つ前記現像回転体に現像剤を供給する第一室と、前記第一室と隔壁によって区画され且つ前記第一室との間で現像剤が循環する第二室と、現像剤が前記第一室から前記第二室に連通することを許容する第一連通部と、現像剤が前記第二室から前記第一室に連通することを許容する第二連通部と、前記第一室に配置され且つ現像剤を搬送する第一搬送スクリューと、前記第二室に配置され且つ現像剤を搬送する第二搬送スクリューと、前記第二室に初期現像剤を収容するために前記第一連通部及び前記第二連通部のそれぞれを封止する一対の封止部材と、前記一対の封止部材による前記第一連通部及び前記第二連通部のそれぞれの封止を解除する封止解除機構と、を有する現像装置と、前記現像回転体を回転駆動するための駆動力を供給するモータと、前記モータを制御する制御手段と、前記モータの駆動負荷を検知する検知手段と、を備え、前記モータから供給される駆動力によって、前記第一搬送スクリューは、現像剤を前記第二連通部から前記第一連通部に向かう第一搬送方向に搬送し、且つ、前記第二搬送スクリューは、現像剤を前記第一連通部から前記第二連通部に向かう第二搬送方向に搬送し、且つ、前記封止解除機構は、前記一対の封止部材による前記第一連通部及び前記第二連通部のそれぞれの封止を解除し、前記制御手段は、前記現像装置の初期化動作を開始した後に前記検知手段によって検知された前記駆動負荷が所定値よりも大きい場合、前記初期化動作を開始してからの前記現像回転体の回転数が第1の閾値に到達するまでの間、前記現像回転体を第1の周速で回転させるよう前記モータを制御し、前記初期化動作を開始してからの前記現像回転体の回転数が前記第1の閾値に到達した後であって前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値に到達するまでの間、前記現像回転体を前記第1の周速よりも速い第2の周速で回転させるよう前記モータを制御し、前記初期化動作を開始した後に前記検知手段によって検知された前記駆動負荷が前記所定値よりも小さい場合、前記初期化動作を開始してからの前記現像回転体の回転数が前記第2の閾値に到達するまでの間、前記現像回転体を前記第1の周速よりも速く前記第2の周速よりも遅い第3の周速で回転させるよう前記モータを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、モータを用いて封止解除機構と撹拌スクリューに駆動力を伝達する構成において、現像装置の初期使用の開始時にスクリューロックが生じることを抑制しつつ、初期化動作に必要な時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る画像形成装置の全体構成を説明するための図である。
【
図2】第1の実施形態に係る現像装置の断面構成を説明するための図である。
【
図3】第1の実施形態に係る現像装置の平面構成を説明するための図である。
【
図4】第1の実施形態に係る現像装置の構成及び動作を説明するための図である。
【
図5】第1の実施形態に係る現像装置の初期現像剤の封止構造を説明するための図である。
【
図6】第1の実施形態に係る現像装置の駆動ギア列の構成を説明するための図である。
【
図7】第1の実施形態に係る現像装置の駆動機構の動作を説明するための図である。
【
図8】第1の実施形態に係る現像装置の駆動機構の動作を説明するための図である。
【
図9】現像装置の初期化動作時の現像スリーブ駆動時間と、現像装置のトルクの関係を示す図である。
【
図10】現像スリーブの周速と出力可能な現像装置のトルクを示す図である。
【
図11】(а)現像装置の初期化動作時の現像スリーブの積算回転数と、現像装置のトルクの関係を示す図、(b)現像装置の初期化動作時の現像スリーブの積算回転数と、現像スリーブの周速設定の関係を示す図、(c)現像装置の初期化動作時の現像スリーブの駆動時間と、現像スリーブの積算回転数の関係を示す図である。
【
図12】第1の実施形態に係る現像装置の初期化動作の制御例を説明するためのフローチャートである。
【
図13】第2の実施形態に係る現像装置の平面構成及び動作を説明するための図である。
【
図14】第2の実施形態に係る現像装置の初期化動作の制御例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものではなく、また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。本発明は、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
【0013】
[第1の実施形態]
(画像形成装置の構成)
図1は画像形成装置の全体構成を説明するための図である。
図1に示すように、画像形成装置200は、中間転写ベルト7に沿ってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdを交換可能に搭載して配列したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタである。
【0014】
画像形成部Saでは、感光ドラム1aにイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト7に転写される。画像形成部Sbでは、感光ドラム1bにマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト7に転写される。画像形成部Sc、Sdでは、それぞれ感光ドラム1c、1dにシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて中間転写ベルト7に転写される。
【0015】
中間転写ベルト7は、一次転写ローラー5a、5b、5c、5d、対向ローラー8、テンションローラ17、及び張架ローラー18に掛け渡され、駆動ローラーを兼ねる対向ローラー8に駆動されて矢印R7方向に回転する。中間転写ベルト7に転写された四色のトナー像は、二次転写部T2へ搬送され、記録材カセット10から取り出して二次転写部T2へ搬送された記録材Pへ二次転写される。記録材Pは、給紙ローラー、搬送ローラー、レジストローラ等を有する給搬送装置によって、二次転写部T2に供給される。
【0016】
二次転写部T2でトナー像を転写された記録材Pは、定着ローラー14に加圧ローラー15を圧接させた定着装置13で加熱加圧を受けて、表面にトナー像を定着された後に機体外部へ排出される。
【0017】
画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdは、現像装置100a、100b、100c、100dで用いるトナーの色が異なる以外は、ほぼ同一に構成される。以下では、画像形成部Saについて説明し、画像形成部Sb、Sc、Sdについては、画像形成部Saの構成部材に付した符号末尾のaをb、c、dに読み替えて説明されるものとする。
【0018】
画像形成部Saは、感光ドラム1a(像担持体)の周囲に、帯電ローラー2a、露光装置3a、現像装置100a、一次転写ローラー5a、補助帯電ローラー6aを配置している。
【0019】
感光ドラム1aは、アルミニウムシリンダの外周面に負極性の帯電極性を持たせた感光層が形成され、所定のプロセススピードで矢印R1方向に回転する。第1の実施形態における感光ドラム1aの外径は30mmであり、画像形成中の感光ドラム1aの回転速度は120mm/secとする。
【0020】
帯電ローラー2aは、感光ドラム1aの表面を一様な負極性の電位に帯電させる。
【0021】
露光装置3aは、レーザービームを回転ミラーで走査して、帯電した感光ドラム1aの表面に画像の静電像を書き込む。現像装置100aは、トナー及びキャリアにより構成される二成分現像剤を用いて、感光ドラム1aに形成された静電像を現像して、感光ドラム1aにトナー像を形成する。
【0022】
一次転写ローラー5aは、中間転写ベルト7の内側面を押圧して、感光ドラム1aと中間転写ベルト7との間に一次転写部T1を形成する。一次転写ローラー5aに正極性の直流電圧を印加することによって、感光ドラム1aに担持された負極性のトナー像が中間転写ベルト7へ一次転写される。補助帯電ローラー6aは、記録材Pへの転写を逃れて感光ドラム1aに残った転写残トナーを負極性に帯電させて、現像装置100aによる次回の現像に関与させる。
【0023】
中間転写ベルト7のテンションローラ17に対応する位置には、中間転写ベルト7に付着した転写残トナーを除去するために、ベルトクリーナ11が当接されている。
【0024】
(現像装置の構成)
図2は現像装置100a(以降、単に現像装置100と呼ぶ)の断面構成を説明するための図である。
図3は現像装置100の平面構成を説明するための図である。以下では、画像形成部に交換可能に搭載された現像装置100を、画像形成部の区別を表す記号末尾のa、b、c、dを省略して説明する。
【0025】
図2に示すように、現像装置100は、回転可能な現像剤担持体(現像回転体)の一例である現像スリーブ102にトナーとキャリアを含む現像剤を担持搬送させて感光ドラム1の静電像(静電潜像)を現像する。現像スリーブ102は、現像容器101の感光ドラム1に対向する開口部に回転可能に配置されている。第1の実施形態における現像スリーブ102の外径は18mmであり、画像形成中の現像スリーブ102の回転速度は、216mm/secとする。現像スリーブ102と感光ドラム1とが対向する現像領域の回転方向上流に層厚規制ブレード121が配置されて、現像スリーブ102に担持される現像剤の厚さを規制している。
【0026】
現像容器101内は、垂直に設けた隔壁103によって現像室101aと撹拌室101bとに区画されている。現像室101a及び撹拌室101b内(循環路)には非磁性のトナーと磁性キャリアと少量の外添剤が混合された二成分現像剤が収容される。
【0027】
現像スリーブ102の内側には、表面に複数の磁極を配置して非回転に支持されたマグネット102mが配置される。現像剤は、磁性体のキャリアがマグネット102mの磁極間に形成された磁束に拘束されて現像スリーブ102の表面に担持され、正極性に帯電したキャリアの表面に負極性に帯電したトナーが静電気的に拘束されて磁気ブラシを形成している。電源52は、負極性の直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を印加して、負極性に帯電して磁気ブラシに担持されたトナーを感光ドラム1の静電像へ移転させる。
【0028】
図3に示すように、現像容器101は、隔壁103によって平行な2つの空間に仕切られる。撹拌室101b及び現像室101aは、二成分現像剤を収容可能及び搬送可能に構成されている。現像装置100は、撹拌スクリュー104b(第二搬送部材)を内部に有する撹拌室101b、現像スクリュー104a(第一搬送部材)を内部に有する現像室101a、及び、現像室101aの上方部近傍に配置される現像スリーブ102を備える。
【0029】
隔壁103の両端部に形成された開口部107a、開口部107bによって、撹拌室101bと現像室101aが連通して、現像剤の循環経路を形成する。撹拌室101bから現像室101aへの現像剤の受け渡しは、開口部107aを通じて行われ、現像室101aから撹拌室101bへの現像剤の受け渡しは、開口部107bを通じて行われる。即ち、開口部107a(第二連通部)は、現像剤が撹拌室101b(第二室)から現像室101a(第一室)に連通することを許容する。また、開口部107b(第一連通部)は、現像剤が現像室101a(第一室)から撹拌室101b(第二室)に連通することを許容する。
【0030】
このように構成された循環経路を、現像剤が撹拌を受けつつ循環する過程で、トナー粒子とキャリア粒子が摩擦して、トナーが負極性、キャリアが正極性に帯電する。現像剤は、撹拌室101bの内部で撹拌スクリュー104bにより撹拌しつつ下流側へ搬送された後に、仕切り壁103の無い開口部107aを通過して現像室101aに流入する。そして、現像剤は、現像室101aの内部で、現像スクリュー104aによって下流側へ搬送される過程で現像スリーブ102に担持される。
【0031】
第一室の一例である現像室101aの内部には、第一搬送スクリューの一例である現像スクリュー104aが回転自在に取り付けられる。現像スクリュー104aが回転すると、二成分現像剤は、矢印Bに示すように、現像室101aの上流側から下流側に向かって搬送される。
【0032】
第二室の一例である撹拌室101bの内部には、第二搬送スクリューの一例である撹拌スクリュー104bが回転自在に取り付けられる。撹拌スクリュー104bが回転すると、二成分現像剤は、矢印Aに示すように、撹拌室101bの上流側から下流側に向かって搬送される。
【0033】
撹拌室101bの上流側上方には、トナー補給機構105が配置されている。トナーボトルに収容されたトナーは、トナー搬送経路を通じて、トナー補給機構105まで搬送され、トナー補給口106を通過して撹拌室101b内に落下補給される。現像装置100では、初期現像剤と同一種のトナーを補給用トナーとして用いている。
【0034】
ここで、二成分現像剤のトナー帯電量Q/Mは、現像された画像濃度を決定する重要なパラメータである。そして、二成分現像剤中に含まれるトナーの重量比(トナー濃度T/D)とトナー帯電量Q/Mには相関関係がある。
【0035】
トナーは、キャリアとの接触摩擦により帯電することから、トナーは、キャリアとの接触機会が多くなるほど、トナー帯電量Q/Mが大きくなる。このため、二成分現像剤は、トナー濃度T/Dが小さいほど、トナー帯電量Q/Mが大きくなって、等しい静電像を現像した際の画像濃度が低下する。このため、現像室101aと撹拌室101bを循環する現像剤のトナー濃度T/Dは、透磁率センサーTを用いて常時検知される。そして、トナー濃度T/Dがほぼ一定になるように、トナー補給機構105からのトナー補給量を調整される。
【0036】
(初期現像剤の封止構造)
図4は現像装置100を上からみた平面構成を説明するための図である。また、
図4は現像装置100の構成及び動作を説明するための図である。
図5は現像装置100の初期現像剤の封止構造を説明するための図である。
図5は
図4のE-E方向からみた垂直断面である。
【0037】
図4に示すように、現像装置100、駆動モータ53(駆動手段)、電源52、制御部50としてのCPU50a(制御手段)、メモリ50b、操作パネル56、現像駆動制御部58の関係がブロック図を用いて示される。また、現像装置100は、現像容器101を仕切る隔壁103の開口部107aに封止部材の一例である封止シート51aが貼付され、開口部107bに封止部材の一例である封止シート51bが貼付されている。封止シート51aと封止シート51bによって構成される一対の封止部材は、撹拌室101bに初期現像剤を収容するために開口部107a、107bのそれぞれを封止する。こうした構成により、出荷時の現像装置100は、初期現像剤が撹拌室101b内のみに密封状態で充填され、このとき、現像室101aの内部には、現像剤はキャリア、トナーともに存在しない。
【0038】
図5に示すように、封止部材の一例である封止シート51aは、開口部107aに引き剥がし可能(開封可能)に貼付されたシート部材である。封止シート51aは、第二搬送スクリュー搬送方向下流側の開口部107aに貼付されている。
【0039】
封止シート51aは、開口部107aを封止しつつ下端側から上方へ折り返して先端を巻取り軸600に固定してある。反対側の開口部107bも同様に開口部107bを封止しつつ下端側から上方へ折り返して先端を共通の巻取り軸600に固定してある。
【0040】
封止シート開封機構(封止解除機構)である巻取り軸600は、ギア列により回転伝達可能に現像スリーブ102と連結されている。このため、巻取り軸600は、現像スリーブ102の回転に伴って、封止シート51a、51bを巻取り軸600に巻き取っていき、開口部107a、107bを開放させる。これにより、封止シート開封機構は、封止シート51a、51b(一対の封止部材)による開口部107b(第一連通部)及び開口部107a(第二連通部)のそれぞれの封止を解除する。
【0041】
巻取り軸600は、ユーザーの作業に頼ることなく、現像装置100の封止シート51a、51bを開口部107a、107bから自動的に引き剥がして、現像剤を現像室101a及び撹拌室101b内を循環させて行き渡らせる。これにより、現像装置100の初期立ち上げ時(初期使用の開始時)に、現像装置100を使用可能な状態に立ち上げる。以降、現像装置100の初期立ち上げ(初期使用の開始)に係る一連の動作を、現像装置100の初期化動作とも呼ぶ。
【0042】
(巻取り軸の駆動機構)
図6は現像装置100の駆動ギア列の構成を説明するための図である。
図6(a)と
図6(b)は異なる方向から同一部分を示した斜視図である。
【0043】
図6に示すように、現像装置100は、現像スクリュー104aが回転軸線方向へ着脱自在なカップリング54(
図4参照)を介して画像形成装置200の本体側に設置された駆動モータ53に接続される。駆動モータ53は、CPU50aの指示により制御されて現像スクリュー104aを回転駆動する。
【0044】
第1の実施形態においては、駆動モータ53は、ステッピングモータである。駆動モータ53は、CPU50aから送られるステッピングモータの負荷角に関する情報に基づいて、ステッピングモータの駆動電流値を決定し、現像駆動制御部58に駆動電流情報を送る。現像駆動制御部58は、駆動電流情報に応じて、ステッピングモータの駆動電流が一定となるように制御を行い、現像スクリュー104aを回転駆動する。
【0045】
現像スクリュー104aの軸上に設けられたギア170(
図4参照)と現像スリーブ102の回転軸上に設けられたスリーブギア171(
図4参照)および中間ギアとによって現像スリーブ102に回転が伝達されている。
【0046】
現像スクリュー104aの回転は、カップリング54が接続された反対側のギア列160によって回転伝達され、撹拌スクリュー104b、現像スクリュー104a、巻取り軸600、を一体に回転させる。現像スリーブ102、現像スクリュー104a、撹拌スクリュー104b、巻取り軸600は、ギア列160によって1系統のギア列を形成している。現像スクリュー104aが回転すると、現像スクリュー104aの回転軸の端部に取り付けられた出力ギア151が回転する。
【0047】
出力ギア151に噛み合うアイドラギア150は、ギア153、巻取り軸600と連結しているギア154の噛合いを経て巻取り軸600が回転する。巻取り軸600が封止シート51aを引き剥がす際に必要なトルクを確保できるように、ギア153、154は、ウォームギアとウォームホイールを用いて大きく減速する構成となっている。一方、撹拌スクリュー104bを回転させる撹拌スクリューギア155は、出力ギア151と噛合っている。
【0048】
これらの駆動ギア列は全て同一系列の連結でありカップリング54が回転するときは全てのギアも回転駆動するように構成されている。また、ここでいう同一系列のギア列とは、カップリング54と撹拌スクリュー104b、及びカップリング54と巻取り軸600、およびスリーブギア171とがそれぞれギアの噛合いを直結している駆動伝達経路である。また、この直列上のギアから分岐したギア列は系列上、分岐ギアと同一と考えているものであり、分岐後のギア列の長さや分岐数は問わず、直結しているギア列を同一系列としている。
【0049】
(現像装置の初期化動作)
図7および
図8は現像装置100の駆動機構の動作を説明するための図である。
図8は、
図7に示す矢視方向から現像装置100の駆動機構を見たときの図である。また、
図8は、
図4に示すF‐F断面図であり、
図8は現像装置100の初期使用の開始時(初期化動作時)の封止シートの巻取り部の動作を示している。尚、
図6~
図8の現像容器101は、現像容器101の内部の構造が分かるように省略している。
【0050】
現像装置100を画像形成装置200に装着するか、あらかじめ出荷時に画像形成装置200内に装着された状態である画像形成装置200の電源によって、画像形成装置200に設けられた駆動源M1の駆動モータ53に電力を供給する。
【0051】
そして、駆動モータ53に電力を供給し、現像装置100の現像スクリュー104aの回転軸の端部に設けられたカップリング54を介して回転駆動力が現像スクリュー104aに伝達される。現像スクリュー104aの正転時の回転方向は
図6に示す矢印104Rの方向に回転される。カップリング54とは反対側の現像スクリュー104aの回転軸の端部に取り付けられた出力ギア151が回転し噛み合っているアイドラギア150に回転が伝達される。また、出力ギア151は、撹拌スクリューギア155とも噛み合っており、回転力が撹拌スクリュー104bへと伝達される。
【0052】
また、もう一つの出力ギア151と噛み合っているアイドラギア150には、一端側にかさ歯歯車150aが一体的に設けられている。また、ウォームギア153の一端側にもかさ歯ギア152が一体的に設けられており、それぞれのかさ歯ギアはお互いに回転軸が90°を成して配置され噛み合っている。
【0053】
これによりアイドラギア150に伝わった回転力は、かさ歯ギア152、150aの噛み合いを介してウォームギア153に回転力が伝達される。ウォームギア153と、ウォームホイール154とによって、大きく減速させられたウォームホイール154は、
図7に示す矢印の方向に回転する。この時、ウォームギア153は、ウォームホイール154からの反力を受けてウォームギア153自体は、
図8に示す矢印Pの方向へと付勢される。このため、かさ歯ギア152とアイドラギア150に設けられたかさ歯ギア150aとの歯車噛み合いは維持される構成となっている。
【0054】
また、ウォームホイール154は、封止シート51аの巻取り軸600と一体に回転するように連結されており、ウォームホイール154と一体になって
図7に示す矢印Tの方向へ回転する。一方、アイドラギア150から伝達された回転駆動力により撹拌スクリューギア155も矢印の方向に回転を始める。このように、巻取り軸600と、撹拌スクリュー104bとが同時に動作する機構となっている。
【0055】
封止シート開封機構である巻取り軸600は、ギヤ列により回転伝達可能に現像スリーブ102と連結されている。このため、現像スリーブ102の回転に伴って、封止シート51a、51bを巻取り軸600に巻き取っていき、開口部107a、107bを引き剥がして開放させる。このとき、封止シート51a、51bのそれぞれの長さは予め分かっている。
【0056】
また、駆動モータ53は、現像スクリュー104a、撹拌スクリュー104b、現像スリーブ102、及び巻取り軸600のそれぞれを回転駆動するためのモータとしての役割を果たす。故に、現像装置100の初期使用の開始からの現像スリーブ102の積算回転数がどれくらいになれば、封止シート51a、51bが引き剥がされるかを算出可能である。つまり、巻取り軸600にギヤ列で連結されている現像スリーブ102の積算回転数が所定数になった時に封止シート51a、51bが引き剥がされることを把握可能である。
【0057】
第1の実施形態においては、封止シート51aと、51bの巻取り長さを変えている。現像装置100の初期使用の開始からの現像スリーブ102の積算回転数が略8回になると、封止シート51aが引き剥がされる。一方、現像スリーブ102の積算回転数が略17回になると、封止シート51bが引き剥がされる。つまり、現像スリーブ102の周速が前述の216mm/secの場合、現像装置100の初期使用の開始から略2.4secが経過すると封止シート51aが引き剥がされ、略4.6secが経過すると封止シート51bが引き剥がされることを算出可能である。
【0058】
現像装置100の初期使用の開始からの現像スリーブ102の駆動時間と、現像装置100のトルクの関係を
図9に示す。
図9には、現像装置100の撹拌室101b内の現像剤の偏りがない状態の現像装置100のトルクの推移と、物流が加わり、現像装置100の撹拌室101b内の現像剤の偏りが生じた状態の現像装置100のトルクの推移を示している。
【0059】
前述したように、現像装置100の駆動開始から封止シート51a、51bの巻取りが開始されるので、現像装置100のトルクは上昇していく。同時に、撹拌室101b内の現像剤は次第に撹拌スクリュー104bの搬送方向の下流側に搬送されていく。このため、封止シート51aの巻取りが完了するまでは、現像剤の流路が確保できず、攪拌スクリュー104bの負荷が大きくなり、現像装置100のトルクが上昇していく。
【0060】
そして、封止シート51aの巻取りが完了する、略2.4secになると現像剤の流路が確保できるようになるため、現像装置100のトルクが減少していく。続いて、封止シート51bの巻取り完了する略4.6secまでは同様に現像装置100のトルクが上昇し、封止シート51bの巻取りが完了すると現像装置100のトルクが減少していく。
【0061】
ここで、第1の実施形態における現像装置100の駆動に使用している駆動モータ53は、現像スリーブ102の周速が216mm/secの場合、出力可能な最大トルクは、2.05kgf・cmである。よって、
図9に示すような物流状態の現像装置100のトルクの推移においては、駆動モータ53の最大トルクを上回り、2.6kgf・cmになっており、駆動モータ53が脱調してしまう。
【0062】
そこで、第1の実施形態においては、駆動モータ53の回転速度が遅い場合は、出力可能トルクが高くなる特性を応用して、封止シート51a、51bの巻取り時には、駆動モータ53の回転速度を遅くする。
【0063】
図10に、現像スリーブ102の周速と駆動モータ53の出力可能トルクの関係を示す。通常時の現像スリーブ102の周速が216mm/secで、出力可能なトルクが2.05なのに対して、現像スリーブ102の周速を遅くした場合に、出力可能トルクが上昇していることが見て取れる。
【0064】
第1の実施形態においては、封止シート51a、51bの巻取り時には、現像スリーブ102の周速を60mm/secまで落とす低速駆動モードを有する。現像スリーブ102の周速を60mm/secまで低下させると、出力可能なトルクは
図10より、3.04kgf・cmとなる。
図9に示した物流状態における現像装置100のトルクよりも大きくなるため、駆動モータ53が脱調することなく、封止シート51a、51bの巻取りを完了できる。
【0065】
現像装置100の初期化動作時に現像スリーブ102の周速を遅くした場合は、現像装置100の初期化動作が完了するまでの時間がかかってしまう。現像装置100の初期化動作に必要な現像スリーブ102の積算回転数は決まっており、現像装置100内の現像剤中のトナーに十分な帯電量を付与できるだけの回転数が必要である。
【0066】
第1の実施形態においては、現像装置100の初期化動作の完了に必要な現像スリーブ102の積算回転数は570回であり、この数値は現像スリーブ102の速度によらず、同一である。したがって、必要な現像スリーブ102の積算回転数が速度によって変わらないので、初期化動作時の現像スリーブ102の速度を遅くすると、その分だけ初期化動作が完了するまでの時間がかかってしまう。
【0067】
そこで第1の実施形態では、現像装置100の初期化動作のうち、現像スリーブ102の周速を遅くする時間帯を封止シート51a、51bの巻取りタイミングに限定し、且つ、封止シート51a、51bの巻取り完了後は現像スリーブ102の周速を速くする。これにより、封止シート51a、51bの巻取りに必要なトルクの確保と、現像装置100の初期化動作に必要な時間の短縮の両立を図るものである。また、駆動モータ53を用いて巻取り軸600(封止解除機構)と撹拌スクリュー104bに駆動力を伝達する構成において、駆動モータ53が高出力のモータでなくても、現像装置100の初期使用の開始時にスクリューロックが生じることを抑制するものである。以下にその詳細を説明する。
【0068】
図11(a)に、現像スリーブ102の積算回転数と、現像装置100のトルクの関係を示す。また、
図11(b)に、現像スリーブ102の積算回転数と、現像スリーブ102の周速設定の関係を示す。また、
図11(c)に、現像スリーブ102の駆動時間と、現像スリーブ102の積算回転数の関係を示す。
【0069】
まず、
図11(a)より、封止シート51a、51bの巻取りに必要な現像スリーブ102の積算回転数を見出す。封止シート51a、51bの巻取りが完了して、現像装置100のトルクが安定する現像スリーブ102の積算回転数は略23回である。よって、
図11(b)に示すように、現像スリーブ102の積算回転数が23回までは前述のように、現像スリーブ102の周速を60mm/secまで落とす。さらに、現像スリーブ102の積算回転数が23回以降は、現像スリーブ102の周速を遅くして、時間がかかってしまった分を補うために、現像スリーブ102の周速を242mm/secまで上げる。その結果、
図11(c)に示すように、現像装置100の初期化動作が完了するまでにかかる時間(即ち、現像スリーブ102の積算回転数が570回になるまでにかかる時間)は、従来例と、実施例(第1の実施形態)とで同じになっていることが確認できる。
【0070】
(現像装置の初期化動作)
第1の実施形態における現像装置100の初期使用の開始時の動作(初期化動作)の制御例について、
図12のフローチャートを用いて説明する。
図12の制御は、CPU50aが、メモリ50bに記憶された制御プログラムを読み出して、各種機器を制御することにより実行される。また、
図12の制御は、画像形成装置200が、現像装置100の交換指示又は現像装置100の初期使用の開始指示を受け付けた後にフローが開始される。
【0071】
現像装置100の交換後、または、画像形成装置200の出荷時にあらかじめ装着されている現像装置100を初めて動作させる場合に、初期化動作が必要な現像装置100であるか否かの判定(現像装置100の交換判定)を行う(S101)。S101の判定は、現像装置100の本体のメモリを用いても、オペレータによる画像形成装置200への入力によるものなど、どちらでも実現可能である。現像装置100の交換判定(S101)による結果がNOの場合には、特に初期化動作を行う必要ないので、
図12に係る一連の制御は終了となる。
【0072】
一方、現像装置100の交換判定(S101)がYESの場合、次ステップの現像装置100の初期化動作の開始となる(S102)。現像装置100の初期化動作の開始後、現像スリーブ102の積算回転数nの計数を開始する(S103)。尚、現像スリーブ102の積算回転数nをカウントする方法としては、例えば、フォトインタラプタ等のセンサー(回転検知部)を用いて現像スリーブ102の回転数を検知する方法がある。
【0073】
また、前述したように、駆動モータ53は、現像スクリュー104a、撹拌スクリュー104b、現像スリーブ102、及び巻取り軸600のそれぞれを回転駆動する。そのため、現像スクリュー104a又は撹拌スクリュー104bの回転数を検知する手段を有する場合は、現像スリーブ102の積算回転数nに代えて、現像スクリュー104a又は撹拌スクリュー104bの積算回転数をカウントする。そして、現像スリーブ102の積算回転数nに代えて、現像スクリュー104a又は撹拌スクリュー104bの積算回転数に基づいて、以降説明する制御を行う変形例であっても同様に説明できる。
【0074】
続いて、現像装置100を低速駆動モードで駆動させる(S104)。第1の実施形態では、現像装置100を低速駆動モードで駆動させる時の、現像スリーブ102の周速(第1の周速)は60mm/secである。
【0075】
次に、現像スリーブ102の積算回転数nが速度切り替え閾値であるN1(第1の実施形態ではN1=23)に到達したか否か(即ち、n≧N1を満たすか否か)を判定する(S105)。第1の実施形態においてN1=23としている理由は、
図11(a)で前述したように、封止シート51a、51bの巻取りが完了して、現像装置100のトルクが安定する現像スリーブ102の積算回転数は略23回であるからである。
【0076】
S105の判定の結果、YESの場合(即ち、現像スリーブ102の積算回転数nが23回に到達した場合)に、現像装置100を高速駆動モードで駆動させる(S106)。第1の実施形態では、現像装置100を高速駆動モードで駆動させる時の、現像スリーブ102の周速(前述の第1の周速よりも速い第2の周速)は、242mm/secである。一方、S105の判定の結果、NOの場合(即ち、現像スリーブ102の積算回転数nが23回に到達していない場合)、S104に処理を戻す。そして、現像スリーブ102の積算回転数nが23回に到達するまで、低速駆動モードでの現像装置100の駆動を継続する(S104)。
【0077】
S106において、現像装置100を高速駆動モードで駆動し、続いて、現像スリーブ102の積算回転数nがN2(第1の実施形態ではN2=570)に到達したか否か(即ち、n≧N2を満たすか否か)を判定する(S107)。第1の実施形態においてN2=570としている理由は、
図11(c)で前述したように、現像スリーブ102の積算回転数が570回となった時に、現像装置100の初期化動作が完了するからである。
【0078】
S107の判定の結果、YESの場合(即ち、現像スリーブ102の積算回転数nが570回に到達した場合)に、現像装置100の初期化動作を完了し(S108)、
図12に係る一連の制御は終了となる。一方、S107の判定の結果、NOの場合(即ち、現像スリーブ102の積算回転数nが570回に到達していない場合)、現像スリーブ102の積算回転数nが570回に到達するまで、高速駆動モードでの現像装置100の駆動を継続する(S106)。
【0079】
以上説明した第1の実施形態では、現像装置100の初期化動作を開始後、現像スリーブ102の積算回転数nが第1の閾値(N1)に到達するまでの間、現像装置100を低速駆動モードで駆動させた。また、第1の実施形態では、現像装置100の初期化動作を開始後、現像スリーブ102の積算回転数nが第1の閾値(N1)に到達した後であって第2の閾値(N2)に到達するまでの間は、現像装置100を高速駆動モードで駆動させた。
【0080】
即ち、第1の実施形態では、現像装置100の初期化動作のうち、現像スリーブ102の周速を遅くする時間帯を封止シート51a、51bの巻取りタイミングに限定し、且つ、封止シート51a、51bの巻取り完了後は現像スリーブ102の周速を速くした。これにより、封止シート51a、51bの巻取りに必要なトルクの確保と、現像装置100の初期化動作に必要な時間の短縮の両立を図ることができる。また、駆動モータ53を用いて巻取り軸600と撹拌スクリュー104bに駆動力を伝達する構成において、駆動モータ53が高出力のモータでなくても、現像装置100の初期使用の開始時にスクリューロックが生じることを抑制することができる。
【0081】
[第2の実施形態]
続いて、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の基本的な構成については第1の実施形態と同じである。そのため、第1の実施形態と実質的に同一若しくは相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳細な説明は省略し、第2の実施形態に特有の構成部分のみ詳細に説明する。
【0082】
前述した第1の実施形態では、現像スリーブ102の積算回転数nに基づいて現像スリーブ102の駆動速度を変更する例について説明した。一方、第2の実施形態においては、現像装置100のトルクを検知する機構を有している点が、第1の実施形態とは異なる。第2の実施形態では、現像装置100のトルクが過大になったときに、現像スリーブ102の駆動速度を変更することで、駆動モータ53が脱調することなく、封止シート51a、51bの巻取りを完了させるものである。
【0083】
図13は、第2の実施形態に係る現像装置100の平面構成を説明するための図であり、現像装置100と、現像装置100を制御する周辺構成のブロック図を示している。
図13に示すように、第2の実施形態では、第1の実施形態の構成に加えて、更に、現像装置100のトルクを検知する機構として、駆動モータ53の負荷検知部58aを有している。
【0084】
第2の実施形態に係る現像装置100の駆動機構の動作に関して、封止シート51aと巻取り軸600の構成については、前述した第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0085】
第2の実施形態における現像装置100の初期使用の開始時の動作(初期化動作)の制御例について、第1の実施形態とは異なる点を中心に、
図14のフローチャートを用いて説明する。
図14の制御は、CPU50aが、メモリ50bに記憶された制御プログラムを読み出して、各種機器を制御することにより実行される。また、
図14の制御は、画像形成装置200が、現像装置100の交換指示又は現像装置100の初期使用の開始指示を受け付けた後にフローが開始される。
【0086】
S201において、
図12で前述したS101と同様にして、現像装置100の交換判定を行う。現像装置100の交換判定(S201)による結果がNOの場合には、特に初期化動作を行う必要ないので、
図14に係る一連の制御は終了となる。
【0087】
一方、現像装置100の交換判定(S201)がYESの場合、次ステップの現像装置100の初期化動作の開始となる(S202)。現像装置100の初期化動作の開始後、現像スリーブ102の積算回転数nの計数を開始する(S203)。
【0088】
続いて、現像装置100を通常駆動モードで駆動させる(S204)。第2の実施形態では、現像装置100を通常駆動モードで駆動させる時の、現像スリーブ102の周速(第1の周速よりも速く第2の周速よりも遅い第3の周速)は、214mm/secである。
【0089】
第2の実施形態では、現像スリーブ102の積算回転数nが閾値であるN1(第1の実施形態と同様にN1=23)に到達するまでの間に、現像装置100の駆動負荷トルクFが過大であるか否かの判定(S205)が行われる点が、第1の実施形態とは異なる。
【0090】
第2の実施形態において、現像装置100の駆動負荷トルクFが過大か否かを判定するための閾値k(所定値)は、2.05kgf・cmである。第2の実施形態では、駆動モータ53の駆動負荷トルクFの検知方法としては、駆動モータ53の負荷検知部58aによって、ステッピングモータである駆動モータ53の電流量を検出し、駆動モータ53のトルクを推定しているが、別の方法でも良い。例えば、回転検知するセンサーを用いる方法や、脱調による停止状態の検知であってもよい。
【0091】
現像装置100の駆動負荷トルクFが過大でない場合(即ち、F<kを満たす場合)、S205においてYESと判定されて、S206に処理を進める。
【0092】
そして、現像スリーブ102の積算回転数nがN2(第1の実施形態と同様にN2=570)に到達するまで、S206においてNOと判定されて、S204に処理を戻し、通常駆動モードでの現像装置100の駆動を継続する。一方、現像スリーブ102の積算回転数nが570回に到達したら、S206においてYESと判定されて、現像装置100の初期化動作を完了し(S207)、
図14に係る一連の制御は終了となる。
【0093】
一方、現像装置100の駆動負荷トルクFが過大である場合(即ち、F≧kを満たす場合)は、S205においてNOと判定されて、現像装置100を低速駆動モードで駆動させる(S208)。第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、現像装置100を低速駆動モードで駆動させる時の、現像スリーブ102の周速(第1の周速)は60mm/secである。
【0094】
続いて、現像スリーブ102の積算回転数nが速度切り替え閾値であるN1(第1の実施形態と同様にN1=23)に到達したか否か(即ち、n≧N1を満たすか否か)を判定する(S209)。
【0095】
S209の判定の結果、YESの場合(即ち、現像スリーブ102の積算回転数nが23回に到達した場合)に、現像装置100を高速駆動モードで駆動させる(S210)。第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、現像装置100を高速駆動モードで駆動させる時の、現像スリーブ102の周速(第2の周速)は、242mm/secである。一方、S209の判定の結果、NOの場合(即ち、現像スリーブ102の積算回転数nが23回に到達していない場合)、現像スリーブ102の積算回転数nが23回に到達するまで、低速駆動モードでの現像装置100の駆動を継続する(S208)。
【0096】
S210において、現像装置100を高速駆動モードで駆動し、続いて、現像スリーブ102の積算回転数nがN2(第1の実施形態と同様にN2=570)に到達したか否か(即ち、n≧N2を満たすか否か)を判定する(S211)。
【0097】
S211の判定の結果、YESの場合(即ち、現像スリーブ102の積算回転数nが570回に到達した場合)に、現像装置100の初期化動作を完了し(S207)、
図14に係る一連の制御は終了となる。一方、S212の判定の結果、NOの場合(即ち、現像スリーブ102の積算回転数nが570回に到達していない場合)、現像スリーブ102の積算回転数nが570回に到達するまで、高速駆動モードでの現像装置100の駆動を継続する(S210)。
【0098】
以上説明した第2の実施形態によれば、現像装置100の初期化動作を開始後、現像装置100の駆動負荷トルクFが過大でない場合は、現像装置100を通常駆動モードで駆動させる。一方、現像装置100の初期化動作を開始後、現像装置100の駆動負荷トルクFが過大である場合は、現像スリーブ102の積算回転数nが第1の閾値(N1)に到達するまでの間、現像装置100を低速駆動モードで駆動させた。そして、現像装置100の初期化動作を開始後、現像スリーブ102の積算回転数nが第1の閾値(N1)に到達した後であって第2の閾値(N2)に到達するまでの間は、現像装置100を高速駆動モードで駆動させた。
【0099】
第2の実施形態では、現像装置100の駆動負荷トルクFが過大でない場合に、現像装置100を低速駆動モードではなく、現像装置100の初期化動作の開始時から通常駆動モードで駆動させるので、初期化動作に必要な時間の更なる短縮を図ることができる。この点において、第2の実施形態は、第1の実施形態よりも有利であると言える。
【0100】
一方、第2の実施形態では、現像装置100の駆動負荷トルクFが過大であるか否かを判定するために、現像装置100のトルクを検知する機構を有する必要があるのに対し、第1の実施形態では、現像装置100のトルクを検知する機構を有する必要がない。この点において、第1の実施形態は、第2の実施形態よりも有利であると言える。
【0101】
(その他の実施形態)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形(各実施形態の有機的な組合せを含む)が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0102】
上記実施形態では、巻き取り軸600による封止シート51a、51bの巻き上げが、略同時に開始されて、且つ略同時に完了する例について説明したが、これに限られない。巻き取り軸600によって封止シート51aの巻き上げが開始されるタイミングと、巻き取り軸600によって封止シート51bの巻き上げが開始されるタイミングとの間に時間差を設けてもよい。例えば、巻き取り軸600によって封止シート51aの巻き上げが開始されるタイミングの方が、巻き取り軸600によって封止シート51bの巻き上げが開始されるタイミングよりも早くなるように、駆動伝達機構を構成してもよい。これにより、封止シート51a、51bの開封動作中における駆動モータ53の負荷トルクの上昇を更に抑制することができる。
【0103】
また、上記実施形態では、
図1に示したように、中間転写ベルト7を用いる構成の画像形成装置100を例に説明したが、これに限られない。感光ドラム1に順に記録材Pを直接接触させて転写を行う構成の画像形成装置に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 感光ドラム
50 CPU
51а 封止シート
51b 封止シート
53 駆動モータ
58 現像駆動制御部
100 現像装置
101a 現像室
101b 撹拌室
102 現像スリーブ
104a 現像スクリュー
104b 撹拌スクリュー
107a 開口部
107b 開口部
200 画像形成装置
【要約】
【課題】 モータを用いて封止解除機構と撹拌スクリューに駆動力を伝達する構成において、現像装置の初期使用の開始時にスクリューロックが生じることを抑制しつつ、初期化動作に必要な時間を短縮する。
【解決手段】 モータから供給される駆動力によって、第一搬送スクリューは、第一搬送方向に搬送し、且つ、第二搬送スクリューは、第二搬送方向に搬送し、且つ、封止解除機構は、一対の封止部材による第一連通部及び第二連通部のそれぞれの封止を解除し、制御手段は、現像装置の初期化動作を開始してからの現像回転体の回転数が第1の閾値に到達するまでの間、現像回転体を第1の周速で回転させるようモータを制御し、初期化動作を開始してからの現像回転体の回転数が第1の閾値に到達した後であって第1の閾値よりも大きい第2の閾値に到達するまでの間、現像回転体を第1の周速よりも速い第2の周速で回転させるようモータを制御する。
【選択図】
図12