(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】ドライドレッシング
(51)【国際特許分類】
A61K 47/32 20060101AFI20240401BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240401BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240401BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240401BHJP
A61K 38/01 20060101ALI20240401BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240401BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240401BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240401BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61K47/32
A61K9/70
A61K47/36
A61K47/38
A61K38/01
A61P17/00
A61K45/00
A61Q19/00
A61K8/81
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023028536
(22)【出願日】2023-02-27
【審査請求日】2023-05-17
(32)【優先日】2022-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】518402543
【氏名又は名称】正美企業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ユジュ
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】台湾特許出願公開第201924573(TW,A)
【文献】中国特許出願公開第105287354(CN,A)
【文献】特表2005-519126(JP,A)
【文献】特表2006-519263(JP,A)
【文献】米国特許第6159493(US,A)
【文献】特開昭63-220876(JP,A)
【文献】特開平11-171726(JP,A)
【文献】特開平11-35420(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104306164(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A61Q
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、および
基材層上に配置された接触層であって、該接触層は、該基材層上に乾燥形成されたハイドロコロイドと、前記ハイドロコロイドに配合された栄養素とを含む、接触層と、
を含み、
前記ハイドロコロイドは、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとを含み、
前記ハイドロコロイドに対する前記ポリビニルアルコールと前記ポリビニルピロリドンの重量割合は96%以上であり、
前記ポリビニルアルコールと前記ポリビニルピロリドンの重量比は0.725~0.785の範囲である、ドライドレッシング。
【請求項2】
前記接触層が、スクリーン印刷、コーティング、ディスペンサー、ジェット印刷または含浸によって前記基材層上に塗布される、請求項1に記載のドライドレッシング。
【請求項3】
前記ハイドロコロイドが、ポリアクリル酸ナトリウムをさらに含む、請求項1に記載のドライドレッシング。
【請求項4】
前記ハイドロコロイドに対する前記ポリアクリル酸ナトリウムの重量割合が0.2%~0.4%の範囲である、請求項3に記載のドライドレッシング。
【請求項5】
前記ハイドロコロイドが、キサンタンガムおよびグアランをさらに含む、請求項1に記載のドライドレッシング。
【請求項6】
前記ハイドロコロイドに対する前記キサンタンガムの重量割合が0.4%~0.5%であり、
前記ハイドロコロイドに対する前記グアランの重量割合が0.05%~0.2%である、請求項5に記載のドライドレッシング。
【請求項7】
前記栄養素が金属イオンを含む、請求項5に記載のドライドレッシング。
【請求項8】
前記ハイドロコロイドが、カルボキシメチルセルロースをさらに含む、請求項1に記載のドライドレッシング。
【請求項9】
前記ハイドロコロイドに対する前記カルボキシメチルセルロースの重量割合が0.3%以上である、請求項8に記載のドライドレッシング。
【請求項10】
前記栄養素が、タンパク質またはアミノ酸を含む、請求項1に記載のドライドレッシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドレッシングに関し、より詳細には、乾燥したハイドロコロイドを有するドライドレッシングに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用や化粧品用のドレッシングは、皮膚に貼り付けて使用し、皮膚の治療やケアを行うものである。このため、ドレッシング材を液体に浸し、袋や容器に密封するウェットドレッシングが使用されている。
【0003】
一般的に、ウェットドレッシングは雑菌を防ぐために防腐剤を含んでいるが、防腐剤は一部の人の皮膚にアレルギー反応を引き起こす可能性がある。また、ウェットドレッシングはある程度の重量がある。さらに、使用者は、圧力によってドレッシングパッケージが壊れないように注意深く保管する必要がある。容器の封が切れて空気に触れると、無菌状態でなくなり、液体が流出しやすくなり、使用できなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、携帯及び保管が容易であり、ヒトの皮膚に対する刺激又はアレルギー反応を有しないドライドレッシングを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、ヒトの皮膚に適用されるように構成されたドライドレッシングが提供される。ドライドレッシングは、基材層と、基材層上に配置される接触層と、を含む。接触層は、基材層上に乾燥形成されたハイドロコロイドと、ハイドロコロイドに混合された栄養素とを含む。ハイドロコロイドは、ポリビニルアルコール(PVA)とポリビニルピロリドン(PVP)とを含む。ハイドロコロイドに対するポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの重量比は96%以上であり、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの重量比は0.725~0.785の範囲である。
【0006】
上述したドライドレッシングによれば、基材層上にハイドロコロイドとその中に混合された栄養素が乾燥形成されているため、ドライドレッシングは十分に軽く、持ち運びや保管が容易であることが特徴である。また、防腐剤の添加が抑制されているため、皮膚に対する刺激やアレルギー反応もない。
【0007】
さらに、PVAとPVPの重量比を0.725~0.785に設計することにより、ハイドロコロイドは3秒以内に水を完全に吸収することができ、ドライドレッシングは適切な重量と、栄養素を放出するために人間の皮膚に適切な定着性を持っている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示は、以下に与えられる詳細な説明、および例示のためにのみ与えられ、したがって本開示を限定することを意図していない添付図面から、より完全に理解されるであろう。
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係るドライドレッシングの側面図である。
【
図2】
図1のドライドレッシングの製造工程を示す模式図である。
【
図3】
図1のドライドレッシングの製造工程を示す模式図である。
【
図4】
図1のドライドレッシングの使用方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の側面および利点は、添付の図面による以下の詳細な説明から明らかになるであろう。説明のために、本発明の徹底的な理解を提供するために、1つまたは複数の特定の実施形態が与えられ、これらは、当業者が説明された実施形態を実践できるように十分に詳細に説明される。以下の説明は、実施形態を1つの特定の実施形態に限定することを意図していないことを理解されたい。それどころか、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、記載された実施形態の精神および範囲内に含まれ得るような代替案、修正案、および同等物をカバーすることが意図されている。
【0011】
以下、本開示の一実施形態を
図1~
図3を参照して説明するが、
図1は本開示の一実施形態によるドライドレッシング10の側面図であり、
図2~
図3はドライドレッシング10の製造工程を示す模式図である。
【0012】
図示するように、ドライドレッシング10は、基材層100と、接触層200とを含む。接触層200は、基材層100上に配置され、接触層200は、ハイドロコロイド210および栄養素220を含む。図示のように、ハイドロコロイド210と栄養素220とは互いに混合され、同一層に分散されている。
【0013】
具体的には、栄養素220は、ハイドロコロイド210と混合するために湿潤状態にあり、したがって、栄養素220は、ハイドロコロイド210中に均一に分散させることができる。いくつかの実施形態では、栄養素は、乾燥状態にあるときにハイドロコロイドと混合され得る。
図2に示すように、ハイドロコロイド210およびそこに混合された栄養素220を含む接触層200は、例えば、スクリーン印刷、コーティング、ディスペンサー、ジェット印刷または含浸を用いて基材層100に適用することができる。基材層100および接触層200は、ハイドロコロイド210を乾燥させるために、乾燥環境に置かれてもよい。
図3に示すように、多くの水分WWが出てくるので、ハイドロコロイド210は基材層100上で乾燥した状態になる。
【0014】
乾燥したドレッシング10は、濡れた後の人間の皮膚に接触するのに適している。さらに
図4を参照し、ドライドレッシング10の使用方法について説明する。図示のように、水または精油WEは、ドライドレッシング10に供給される。ハイドロコロイド210は、水または精油WEを吸収することができるので、濡れて膨張する。しばらくすると、ハイドロコロイド210は高い浸透圧に達することがあり、ハイドロコロイド210の内部の親水性架橋ポリマーがその中の液圧を高めて栄養素220を外部に押し出すような状態になる。したがって、ドライドレッシング10が濡れて人間の皮膚に付着すると、栄養素220は人間の皮膚に入り込む傾向がある。約4~5グラムのハイドロコロイド210を用いたドライドレッシング10で行われた実験では、ハイドロコロイド210は30秒後に約7.5グラムの水を完全に吸収することができ、15グラムの水がドライドレッシング10に加えられるとハイドロコロイド210はその一部を吸収して表面に約3~4グラムの水を残し、22.5グラムの水をドライドレッシング10に加えるとハイドロコロイド210は一部を吸収して表面には約6~7グラムの水を残す。この実験から、ハイドロコロイド210の単位ごとに一定量の水を吸収することができ、過剰に水を吸収しないことがわかる。
【0015】
ハイドロコロイド210は、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルピロリドン(PVP)を含んでもよく、PVAはハイドロコロイド210の強度を高めるために設けられ、PVPはハイドロコロイド210の親水度を高めるために設けられる。詳細には、ハイドロコロイド210において、ハイドロコロイド210に対するPVAとPVPの重量割合は96%以上であり、ハイドロコロイド210におけるPVAとPVPの重量比は0.725~0.785の範囲であり得る。このように、ハイドロコロイド210の保形性と親水性とが適切にバランスされたものが得られている。その結果、ドライドレッシング10が濡れたとき、ハイドロコロイド210は、そこに栄養素220を保持しながら、一定の流動性を維持することができる。
【0016】
以下の表は、ドライドレッシングに適した7つの処方を示している。その中で、ハイドロコロイドは約5グラムであり、ハイドロコロイドに対するPVAとPVPの重量割合は約96%であり、栄養素はヨウ素溶液を還元するためにフィコエリスリンを含む。フィコエリトリンは、ドライドレッシングが濡れた後に栄養素を放出する速度を決定するために提供されていることに留意されたい。具体的には、ドライドレッシングが濡れた後にヨウ素溶液に浸すと、栄養素220がフィコエリスリンを放出してヨウ素溶液を還元し、それによってヨウ素溶液を脱色することができる。このようにすることで、ヨウ素溶液の透明度を観察することで、栄養素の放出度合いを判断することができる。
【0017】
【0018】
式3~5から分かるように、PVAとPVPの重量比が0.725~0.785の範囲にあるとき、ハイドロコロイド210は3秒以内に完全に水を吸収でき、したがって式3~5のドライドレッシング10は水または精油とともに使用するのに適している。処方1~2から分かるようにPVAとPVPの重量比が0.725未満の場合(すなわち、PVPの割合が高すぎる場合)、必要な膨張に達するために多くの水を吸収する必要があり、そのハイドロコロイドは流動的になり、その結果、これらのドライドレッシングの重量が使用者によってかなり目立ち、ハイドロコロイドが基材層上にしっかりと固定できず、それによって使用者が不快に感じる。また、処方6~7では、PVAとPVPの重量比が0.785より大きい(PVAの割合が高すぎる)と、必要な膨張に達するまでに時間がかかり、ハイドロコロイドが固くなりすぎる傾向があり、その結果、ドライドレッシングがのびにくく、使用者に不快な温湿感を与えることになる。さらに、処方6~7に関して、PVAとPVPの重量比が0.785より大きいと、ヨウ素溶液の明らかな変色がないため、栄養素220の放出に有益ではない。
【0019】
ハイドロコロイド210は、PVAとPVPを含むだけではない可能性があることに留意されたい。いくつかの実施形態では、ハイドロコロイド210は、他の効果を達成するための1つまたは複数の他の物質を含んでもよい。例えば、ハイドロコロイド210は、ポリアクリル酸ナトリウム(PAA-Na)をさらに含んでもよい。少量のPAA-Naは、ハイドロコロイド210の粘度を増加させることができ、したがって、ハイドロコロイド210へのPAA-Naの添加は、濡れたドライドレッシング10の使用中に触感を高めることができる。いくつかの実施形態では、ハイドロコロイド210に対するPAA-Naの重量パーセントは、0.2%~0.4%の範囲であり得る。
【0020】
任意選択として、ハイドロコロイド210は、膨張したハイドロコロイド210の強度をさらに高めるために、キサンタンガム及びグアラン(場合によってはジャガーと呼ばれる)をさらに含んでもよい。したがって、キサンタンガムおよびグアランは、ハイドロコロイド210中のPVAとPVPが特定のイオンまたはpH値が過度に低いもしくは過度に高い物質と遭遇した場合に、ハイドロコロイド210が過度にしなやかになることを防止できる。また、キサンタンガムやグアランは、ハイドロコロイド210の吸水性を促進し、膨張したハイドロコロイド210の滑り感を向上させることができる。詳細には、ハイドロコロイド210に対するキサンタンガムの重量割合は、0.4%~0.5%の範囲であってもよく、ハイドロコロイド210に対するグアランの重量割合は、0.05%~0.2%の範囲であってもよい。
【0021】
以下の表は、ドライドレッシングへの添加剤として、PAA-Na、キサンタンガム、およびグアランの3つの処方を示し、ドライドレッシングを6名の評価者によって評価したものである。評価結果は、触感、ヌルヌル感、ふっくら感で順次評価している。評価結果は、高い方から、処方Y、処方X、処方Zであり、処方Zの評価結果が低すぎて不適格と判断される。
【0022】
【0023】
任意選択として、ハイドロコロイド210は、カルボキシメチルセルロース(CMC)をさらに含んでもよい。詳細には、ハイドロコロイド210に対するCCMCの重量%は、0.3%以上であってもよい。カルボキシメチルセルロースが存在することにより、ハイドロコロイド210は、比較的低温(例えば、50℃以下)で6分以内に乾燥させることが可能となる。これにより、高温(例えば、50℃以上)による栄養素220の劣化を防止することができる。いくつかの実施形態では、ハイドロコロイド210に対するCMCの重量割合は、0.3%~2.0%の範囲であってもよく、したがって、ハイドロコロイド210の適切な乾燥時間を有する一方でPVAとPVPの高い重量割合を維持することが有益である。さらに、CMCの重量%を0.3%から2.0%の範囲に設計することで、製造コストを節約することもできる。ハイドロコロイド210に対するCMCの重量割合と、ハイドロコロイド210の必要な乾燥時間との関係を、以下の表に示す。
【0024】
【0025】
任意選択として、栄養素220は、ヒアルロン酸、発酵βグルカン、プロテオグリカンの抽出物などの化学的に中性の物質、タンパク質やアミノ酸などの有効成分、フィコエリスリンなどの抗酸化物質、またはカルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどの金属イオンを含み得る。このうち、フィコエリスリンは、上述したように、褐色のヨウ素分子を無色のヨウ素イオンに還元する還元反応を行うことが可能である。このことは、フィコエリスリンが、皮膚を保護し、フリーラジカルを除去することができることを意味する。
【0026】
上述したドライドレッシングによれば、基材層上にハイドロコロイドとその中に混合された栄養素が乾燥形成されているので、ドライドレッシングが十分に軽く、持ち運びや保管が容易になる。また、防腐剤の添加が抑制されているため、皮膚に対する刺激やアレルギー反応もない。
【0027】
さらに、PVAとPVPの重量比を0.725~0.785に設計することにより、ハイドロコロイドは3秒以内に完全に水を吸収することができ、ドライドレッシングは適切な重量と栄養素を放出するために人間の皮膚に適切な定着性を有する。
【0028】
本開示のドライドレッシングによればPVAとPVPを含むハイドロコロイドは、そこに栄養素として、ヒアルロン酸、発酵β-グルカン、プロテオグリカンのエキスなどの化学的に中性の成分を混合するのに適している。
【0029】
本開示のドライドレッシングによれば、キサンタンガムとグアランを含むハイドロコロイドは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどの金属イオンをその栄養素として混合したり、タンパク質やアミノ酸などのアルコールとの相性が悪い活性成分を混合するのに適している。
【0030】
実施形態は、本開示の原理およびその実用的な応用を最もよく説明するために選択および説明され、それによって、当業者が、企図される特定の使用に適するように種々の修正を加えた本開示および種々の実施形態を最もよく利用できるようにするためである。本開示の範囲は、以下の請求項およびその等価物によって定義されることが意図される。