(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】マルチパルス増幅
(51)【国際特許分類】
H01S 3/10 20060101AFI20240401BHJP
H01S 3/067 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
H01S3/10 D
H01S3/067
(21)【出願番号】P 2023069348
(22)【出願日】2023-04-20
(62)【分割の表示】P 2020502693の分割
【原出願日】2018-07-18
【審査請求日】2023-04-20
(32)【優先日】2017-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593185670
【氏名又は名称】イムラ アメリカ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(72)【発明者】
【氏名】シュ,ジンチョウ
(72)【発明者】
【氏名】堀 喬
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 茂
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ギュ,チョン
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-526896(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0063380(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0146748(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0273828(US,A1)
【文献】特表2014-522097(JP,A)
【文献】特開2016-065948(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0262772(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 -3/02
3/04 -3/0959
3/10 -3/102
3/105-3/131
3/136-3/213
3/23 -4/00
G02F 1/00 -1/125
1/21 -7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シード光パルスを増幅するように構成されたチャープパルス増幅システムであって、
前記シード光パルスが複数のパルスに分割され、各隣接パルス間に遅延が適用され、
圧縮後の隣接パルス間の前記遅延が、前記チャープパルス増幅システムの利得媒体の内部の伸張パルス持続時間よりも小さく、
前記シード光パルスを分割するために波長選択的構成要素が用いられ、
前記波長選択的構成要素が回折格子を備える、
チャープパルス増幅システム。
【請求項2】
前記利得媒体が光ファイバを備える、請求項1に記載のチャープパルス増幅システム。
【請求項3】
フェムト秒からピコ秒の範囲のパルス持続時間を有する超短パルスである圧縮パルスを出力するように構成されたパルス圧縮器をさらに備える、請求項1に記載のチャープパルス増幅システム。
【請求項4】
数十ピコ秒から数ナノ秒の範囲の伸張パルス持続時間を有する伸張パルスを出力するように構成されたパルス伸張器をさらに備える、請求項1に記載のチャープパルス増幅システム。
【請求項5】
前記遅延が数百フェムト秒から数ナノ秒の範囲にある、請求項1に記載のチャープパルス増幅システム。
【請求項6】
前記チャープパルス増幅システムの出力が、入力シード光パルスの数よりも多くのパルスを有するパルスパックを備える、請求項1に記載のチャープパルス増幅システム。
【請求項7】
前記パルスパックの形態が、隣接シード光パルス間の遅延によって制御される、請求項6に記載のチャープパルス増幅システム。
【請求項8】
前記パルスパックの形態が、増幅パルス間の相互作用によって制御される、請求項6に記載のチャープパルス増幅システム。
【請求項9】
前記波長選択的構成要素がフィルタを備える、請求項1に記載のチャープパルス増幅システム。
【請求項10】
前記波長選択的構成要素が光ファイバの入力及び出力を備える、請求項9に記載のチャープパルス増幅システム。
【請求項11】
チャープパルス増幅システムにおいて複数のパルスを生成するための方法であって、
レーザ源からシードパルスを受信するステップであって、前記シードパルスは光群遅延分散D(λ)を有し、ここでλが波長である、受信するステップと、
伸張パルス幅を有する伸張パルスを生成するように前記シードパルスを伸張するステップと、
前記伸張パルスを、異なる波長を有する複数のパルスを備えるパルスパックに分割するステップと、
前記パルスパックにおける前記複数のパルスの各々に時間遅延を適用するステップであって、前記時間遅延は前記光群遅延分散と同じ符号を有する、適用するステップと、
前記パルスパックにおける前記複数のパルスの各々を増幅するステップと、
前記パルスパックにおける前記複数のパルスの各々を圧縮するステップと
を備える、方法。
【請求項12】
前記時間遅延がΔλ*D(λ)より大きく、ここでΔλが隣接伸張パルス間の波長重複部である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記伸張パルスを前記パルスパックに分割するステップが、
前記伸張パルス又は前記パルスパックにおけるパルスを一対のパルスに分割するステップと、
前記一対のパルスにおける第1のパルスを前記一対のパルスにおける第2のパルスに対して遅延させるステップと
を備える、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記一対のパルスにおける前記第1のパルス及び前記第2のパルスが異なる波長を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
シードパルスを出力するように構成されたシードレーザ源と、
前記シードパルスを伸張して伸張パルスを出力するように構成された伸張器と、
前記伸張パルスの各々を複数のスプリットパルスに分割するように構成された分割器と、
前記複数のスプリットパルスの各々に遅延を適用するように構成された遅延部と、
前記遅延が適用されたスプリットパルスの各々を増幅するように構成された増幅器と、
増幅された、前記遅延が適用されたスプリットパルスの各々を圧縮して複数の光パルスを出力するように構成された圧縮器と
を備え、
前記遅延部がカプラ、第1のアーム及び第2のアームを備え、前記第1のアームの長さは前記第2のアームよりも長く、前記カプラが前記第1のアームおよび前記第2のアームの間でパルスを分割するように構成される、チャープパルス増幅(CPA)システム。
【請求項16】
前記シードレーザ源がファイバレーザを備える、請求項15に記載のCPAシステム。
【請求項17】
前記伸張器がファイバベースの伸張器を備える、請求項15に記載のCPAシステム。
【請求項18】
前記分割器が、前記伸張パルスを異なる波長を有する前記複数のスプリットパルスに分割するように構成された波長選択的構成要素を備える、請求項15に記載のCPAシステム。
【請求項19】
前記カプラが波長分割マルチプレクサを備える、請求項15に記載のCPAシステム。
【請求項20】
前記遅延部が偏光保持(PM)光ファイバの複数の連結区画を備える、請求項15に記載のCPAシステム。
【請求項21】
前記遅延部が、等比数列状の時間遅延を有するパルスを生成するように構成された複数のファイバベースのカプラを備える、請求項15に記載のCPAシステム。
【請求項22】
複数の変調器をさらに備える、請求項21に記載のCPAシステム。
【請求項23】
前記遅延が適用されたスプリットパルスが時間的に分離される、請求項15に記載のCPAシステム。
【請求項24】
前記遅延が適用されたスプリットパルスが少なくとも部分的に重複し、前記CPAシステムによって出力された前記複数の光パルスが高密度光パルスパックを備える、請求項15に記載のCPAシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連技術の相互参照
本願は、2017年7月25日出願の米国特許出願第62/536634号の発明の名称「MULTI-PULSE AMPLIFICATION」の優先権の利益を主張し、その内容がその全体においてここに参照として取り込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、各パルス間に所望の遅延を有する複数のレーザパルスを生成するチャープパルス増幅システムに関する。
【0003】
関連技術の説明
超短パルスレーザは、そのパルス幅τ0を10-15~10-11秒のオーダとすることができ、レーザ加工などの多くの用途において、さらに長いτ0(例えば、ナノ秒)のレーザと比較して優れた効果を実証してきた。
【0004】
チャープパルス増幅(CPA)は、高いパルスエネルギーEpを有する超短パルスを生成するための効果的な技術である。チャープパルス増幅器において、モード同期発振器によって生成されるシードパルス列は、増幅する前に、まず波長λについての群遅延の導関数である光群遅延分散D(λ)を適用することによってより長いパルス幅τSに伸張される。ここで、群遅延とは、異なる波長の光が特定の媒体を通過するのに異なる時間が掛かることを意味する。そして、増幅パルスは、反対の群遅延分散-D(λ)を用いて超短パルス幅に圧縮して戻される。通常、発振器からの出力はMHz~GHzのオーダの範囲の繰返し率FRを有し、隣接パルス間の時間的遅延τDO=I/FRはナノ秒からマイクロ秒のオーダの範囲にある。出力平均パワーを比較的低く維持しつつ高いパルスエネルギーEpを有するパルスを生成するために、モード同期発振器からの出力が、タイムゲーティングデバイスによって増幅前の非常に低い繰返し率FD<<FRに低下してしまう。ある配置では、低下したパルスの繰返し率で単一パルス列が選択される。
【0005】
そのようなCPAシステムに関連した課題があり得る。
【発明の概要】
【0006】
ある用途では、所望の遅延を有する複数のパルス(マルチパルス)が好ましい。したがって、マルチパルス増幅のためのシステム及び方法の実施形態を説明する。
【0007】
実施形態では、チャープパルス増幅システムはシード光パルスを増幅するように構成可能であり、シード光パルスは複数のパルスに分割され、各隣接パルス間に遅延が適用され、圧縮後の隣接パルス間の遅延は、チャープパルス増幅システムの利得媒体内の伸張パルス持続時間よりも小さい。
【0008】
実施形態では、チャープパルス増幅システムにおいて、複数のパルスを生成するための方法が提供される。方法は、レーザ源からシードパルスを受信するステップであって、シードパルスは光群遅延分散D(λ)を有し、ここでλは波長である、受信するステップと、伸張パルス幅を有する伸張パルスを生成するようにシードパルスを伸張するステップと、伸張パルスを、異なる波長を有する複数のパルスを備えるパルスパックに分割するステップと、パルスパックにおける複数のパルスの各々に時間遅延を適用するステップであって、時間遅延は光群遅延分散と同じ符号を有する、適用するステップと、パルスパックにおける複数のパルスの各々を増幅するステップと、パルスパックにおける複数のパルスの各々を圧縮するステップとを備える。
【0009】
実施形態では、チャープパルス増幅(CPA)システムは、シードパルスを出力するように構成されたシードレーザ源と、シードパルスを伸張して伸張パルスを出力するように構成された伸張器と、伸張パルスの各々を複数のスプリットパルスに分割するように構成された分割器と、複数のスプリットパルスの各々に遅延を適用するように構成された遅延部と、遅延スプリットパルスの各々を増幅するように構成された増幅器と、増幅された遅延スプリットパルスの各々を圧縮して複数の光パルスを出力するように構成された圧縮器とを備える。
【0010】
上記の概要、以下の図面及び詳細な説明は、本開示に限定することなく非限定的な例を説明することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、複数のパルス出力を有するチャープパルス増幅(CPA)システムの例のブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、複数のパルスを生成する従来のビーム分割及び結合配置の結果を概略的に示す。
【
図2B】
図2Bは、複数のパルスを生成する従来のビーム分割及び結合配置の結果を概略的に示す。
【
図2C】
図2Cは、複数のパルスを生成する従来のビーム分割及び結合配置の結果を概略的に示す。
【
図3A】
図3Aは、本開示によるビーム分割方法を概略的に示す。時間的に伸張及びチャープされたパルス(
図3A)は、チャープパルスが重複し得る複数のパルスを生成するように分割及び再結合される(
図3B)。
【
図3B】
図3Bは、本開示によるビーム分割方法を概略的に示す。時間的に伸張及びチャープされたパルス(
図3A)は、チャープパルスが重複し得る複数のパルスを生成するように分割及び再結合される(
図3B)。
図3Bでは、τ
Dは(例えば、ピーク間から測定される)隣接パルス間の遅延であり、τ
Sは(例えば、半値全幅(FWHM)として測定される)伸張パルス幅である。
【
図4A】
図4Aは、時間内に重複するチャープパルスの非線形相互作用の結果生じる高密度パルスパックの形成の例を示す実験による自己相関プロットである。自己相関強度(任意単位a.u.)は、psにおける遅延に対してプロットされる。
【
図4B】
図4Bは、本開示のシステムにおける高密度パルスパックの制御を検証する非線形パルス伝搬のシミュレーションで得られた自己相関プロットを示す。時間的強度(a.u.)は、psにおける遅延時間に対してプロットされる。
【
図5A】
図5Aは、複数のパルス間の非線形相互作用が時間遅延及び/又は分散の制御を介して低減又は回避され得る波長分割/時間遅延技術の例を概略的に示す。
【
図5B】
図5Bは、複数のパルス間の非線形相互作用が時間遅延及び/又は分散の制御を介して低減又は回避され得る波長分割/時間遅延技術の例を概略的に示す。
【
図6】
図6は、τ
D~τ
S/100を有する2つのシードパルスを有する伸張シードパルスを時間遅延する際にスペクトル遅延が適用される場合の、再圧縮されたパルスの例を示す自己相関プロットである。パルス間の時間遅延τ
Dは、伸張パルス幅τ
Sよりもかなり小さい。自己相関強度(a.u.)は、psにおける遅延に対してプロットされる。
【
図7】
図7は、波長分割を用いることなくパルスを分割するのに使用可能なファイバベースのパルス遅延の例を概略的に示す。
【
図8】
図8は、パルスを分割するのに使用可能であり波長分割を利用するファイバベースのパルス遅延の例を示す。
【
図9】
図9は、遅延を有する複数のパルスを生成する技術の例を概略的に示す。
【
図10】
図10は、遅延を有する複数のパルスを制御可能に生成することができるパルス遅延生成システムの例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面は、説明の目的のために本開示の種々の実施形態を示し、限定を意図するものではない。可能な場合には同等又は同様の参照番号又は参照記号が図面に用いられ、同等又は同様の機能性を示すことができる。
【0013】
概要
マルチパルスを生成する方法の1つは、発振器のうちのパルス列における単一のパルスではなく複数のパルスを選択することである。しかしながら、隣接パルス間の遅延は、通常、ナノ秒以上の範囲にあり、発振器におけるパルスの往復によって決定される。一般的に、遅延値の調節は発振器キャビティの変更を必要とし、それはこの技術が用いられる場合に、実際のところ容易な実施とはならない。
【0014】
パルス間にさらに短い遅延を得るには、単一のパルスが空間的に分割されて、相互に対して時間遅延を有する複数のパルスを形成することになる。この技術を用いて、隣接パルス間の遅延は、パルス幅τ0に相当させて設定可能である。レーザの多くの用途に対して、パルスのコリニア出力が高く望まれる。したがって、この技術に関連した自由空間光セットアップは、コスト及びシステムの複雑性の増加だけでなく、不安定性ももたらし、出力パワーを犠牲にする。このアプローチの技術的課題は、自由空間のアプローチについて、具体的には、シード段及び増幅後段においてパルスを分割することについて残ることになる。
【0015】
レーザ設計は全体的に、ファイバ技術でパルス分割を実施する場合に、特に、シードパルスが増幅器の前で分割される場合に、相当コンパクトかつ環境的に安定となり得る。ファイバ光学を用いて、シードパルスの分割及び遅延は、より容易にかつより柔軟性をもってなされ得る。増幅器の前でパルスを分割すると、ピークパワーが低下し、増幅器からの完全に利用可能な出力の使用が促進され得る。
【0016】
図1は、複数のパルス出力を有するCPAシステムの例を示す。CPAシステムは、シードレーザ源100と、伸張器200と、伸張器200からのパルスを複数のパルス301、302、...、30nに分割する分割器250とを備える。マルチパルスは遅延部400へ進み、それは増幅器500によって増幅されて増幅パルス501、502、...、50nを生成する遅延パルス401、402、...、40nを出力する。増幅マルチパルスは、パルス圧縮器600によって選択的に圧縮されて、圧縮パルス601、602、...、60nを生成することができる。CPAシステムのある実施形態では、マルチパルスパックにおけるパルスの数nは、2~1000の範囲であり得る。CPAシステムのある実施形態では、マルチパルスパックにおけるパルスの数nは、シード入力パルスの数(1、2、3、4、5、10又はそれ以上であり得る)よりも多くなり得る。種々の実施形態では、シードレーザ源はファイバレーザであってもよく、増幅器500はファイバ利得媒体を有する(例えば、希土類の利得媒体を備える)ファイバ増幅器を備えてもよく、パルス伸張器200は数十ピコ秒から数ナノ秒の範囲の伸張パルス持続時間を有する伸張パルスを出力可能であり、パルス圧縮器600はフェムト秒からピコ秒の範囲のパルス持続時間を有する超短パルスである圧縮パルスを出力可能である。分割器250は、例えば、フィルタ、回折格子又は光ファイバなどの波長選択的構成要素を備えることができる。パルス伸張器200は、プリズム伸張器、格子伸張器、ファイバ伸張器、ファイバブラッググレーティング、チャープミラーなどを備え得る。パルス圧縮器600は、プリズム圧縮器、格子圧縮器、ファイバ圧縮器、ファイバブラッググレーティング、チャープミラーなどを備え得る。
【0017】
図2A、2B及び2Cは、
図1に示すものと同様のCPAシステムの実施形態を用いる従来のビーム分割方法の結果を示す。シードパルス201(
図2A)は複数のパルス401、402、...、40nに分割され、スプリットパルスの各々は元のパルスのコピーである。パルス間の時間遅延は、パルス群が増幅される前にパルスを分離するように適用される(
図2B)。好適には、増幅パルスは増幅後に圧縮可能であり、超高速パルス601、602、...、60nはパルス間に遅延を有して生成される(
図2C)。この方法は、CPA又は非CPAシステムに適用可能である。
【0018】
しかしながら、
図2A~2Cのシードパルスを分割するアプローチがCPAシステムに適用される場合には、
図3A及び3Bで概略的に示すような以下のシナリオが生じてしまう。隣接パルス401と402の間の遅延τ
D(
図3B参照)が伸張パルス幅τ
Sよりも短い場合には、つまりτ
D<τ
Sの場合には、隣接パルスは、それらがパルス圧縮器600によって再圧縮される前に、増幅器500に含むビーム経路に重複410を有し得る。パルス間の不要な非線形相互作用、例えば、相互位相変調(XPM)が固体状態又はファイバ利得媒体のいずれかにおいて増幅器材料に発生し得ることがあり得る。さらに、そのような非線形相互作用はまた、増幅器の外部の媒体にも生じ得る。非線形相互作用の可能性はまた、パルスが、例えば、ファイバにおける光学的非線形相互作用に起因して光ファイバにおいて誘導される場合にも高くなる。パルス間の非線形相互作用は、出力のスペクトル及び/又は時間的特性の大きな変化を結果としてもたらし得る。
【0019】
マルチパルス生成技術の例
ある技術はパルス形態の変化を回避するように設計され得るが、そのようなパルス形態の変化はまた、数百フェムト秒から数ナノ秒の範囲の時間遅延を有する複数のパルスの形成をもたらし得る。パルス形成の詳細は、ファイバにおける光学的非線形相互作用、例えばとりわけ、パルスエネルギー、ピークパワー、ファイバのモードフィールド径に依存する。このアプローチにおける複数のパルスの生成はまた、レーザアプリケーションに依存して有用となり得る。個々のパルスは非線形光学パラメータの詳細に対してより影響を受けることが観察され、それはモデリングを複雑にするが、全体として高密度パルスパックは非常に安定的であり、分割する前の元のパルスの安定性とは異なっていないことが観察される。
【0020】
1つの態様において、本開示は、レーザシステムにおいて光パルスを分割することによる複数のパルスの生成に関する。例として、チャープパルス増幅(CPA)配置では、伸張パルス持続時間よりも短いパルス間の時間遅延を有する高密度パルスパックが提供される。高密度パルスパックは、数個から数十個、数百個又は数千個のパルスの範囲の多数のパルスを含み得る。
【0021】
第1の例では、(
図3Bを参照して説明する)時間内で重複410するパルス間の非線形相互作用を利用して、高密度パルスパックは、
図4Aに示すように生成され得る。高密度パルスパックのパルスは、自己相関とともに測定されたファイバベースのチャープパルス増幅の再圧縮出力である。
図2及び3Aを参照して説明するように、時間内で伸張されたシードパルス201は、増幅及び再圧縮前の時間内に分割される。2つの隣接パルス401、402の間の時間遅延は、伸張シードパルスの時間重複410によって決定される。
図4Bは、表1のパラメータと、非線形シュレーディンガーパルス伝搬によって相互作用する2つのパルスについてのシミュレーション結果を示す。詳細なシミュレーションパラメータは
図4Aに示す観測値との正確な定量的一致を再現するには十分でないが、特定の理論に縛られることなく、シミュレーションは上記の説明、具体的には高密度パルスパックの形成を促進させ確認する。高密度パルスパック内のパルスの時間間隔及び数は、初期の遅延を調整することによって制御可能である。例えば
図4Bでは、初期の遅延が10psから20psに変化すると、パルスパックにおける隣接パルス間の遅延は10psから20psに変化することになる。パルスパックの特性はまた、パルス間の非線形相互作用を調節することによって、例えば、パルス強度を変更することによって、媒体の長さ、開口などを変化させることによっても制御可能である。ある実施形態では、ファイバの長さが5mから10m又は20mに変化すると、パルスの数は12から20、36個のパルスにそれぞれ変化する。したがって、ファイバの長さを上方調節するとパルスパックにおけるパルス数が増加し、ファイバの長さを下方調節するとパルスパックにおけるパルス数が減少する。
【表1】
【0022】
少なくとも1つの追加的又は代替的配置では、伸張シードパルスの非線形相互作用は、初期パルス201が、例えば、光学フィルタ、回折格子又は光ファイバを用いて異なる波長を有する複数のパルスに分割される
図5Aに示すように回避される。
図5Aでは、横軸が時間であり、縦軸がパルス強度を示す。振動数は、パルスが正常な分散を有することを示し、低波長部分がパルスの先頭側に現れる。
図5Aにおけるパルス形態の振動は、例としてパルスにおける周波数変動のコンセプトを示すことを目的とする。パルスが線形分散を有する場合には、D(λ)がレーザの帯域幅内で一定であることを意味し、時間ドメインにおけるパルス形態がスペクトルドメインにおけるパルスを示す。一方、パルスコンテンツが非線形分散を含む場合には、パルス形態は時間及びスペクトルドメインの双方において異なり得る。しかしながら、ほとんどのCPAシステムに対して、線形分散が支配的であるため、分割の前及び分割の後には、時間ドメインにおけるパルス形状はスペクトル形状と実質的に同じとなるべきである。
図5Aの例では、パルス201は波長において部分401、402...40nに分割される。例えば、図式的なチャープパルス201では、部分401は部分401よりも低い周波数(とそれによってより長い波長)成分を有する部分402よりも高い周波数(とそれによってより短い波長)成分を有し、部分402は対応して部分403よりも高い周波数(より短い波長)を有し、同じように部分40nに続き、それは分割部分の最低周波数(最長の波長)を有する。
【0023】
時間遅延τ
Dには、分散D(λ)の同じ符号が適用可能である。例えば、正常な分散(群速度が波長とともに増加する)に対して、より長い波長はパルスの先頭側にあり、時間遅延はより短い波長を有するスプリットパルスに適用される。異常分散(群速度が波長とともに低下する)に対して、より短い波長はパルスの先頭側にあり、遅延はより長い波長を有するスプリットパルスに適用される。したがって、τ
D<τ
Sであっても、パルスは、
図5Bに図式で示すように、分散D(λ)に起因して相互に時間的に分離可能である。そのため、パルス間の非線形相互作用は、そのようなある実施では無視可能なレベルまで効果的に回避又は低減され得る。
【0024】
一般的に、フィルタは、通常は有限帯域幅Δλを有し、それは通常その送信プロファイルの10%~90%に規定されるので、パルスは、
図5A及び5Bで概略的に示すように、実際には鋭角に分離されることはない。最小遅延は、隣接パルス間のスペクトル分離又は重複、及び伸張パルスの分散によって決定され得る。ある実施形態では、時間遅延がτ
D>Δλ*D(λ)であることが好ましい。ある場合には、パルス間の限定された時間的重複、例えば、10%未満、25%未満又は50%未満の重複が可能とされる。そのようなある場合には、時間的重複は、非線形相互作用効果(例えば、XPM)がパルス形態を実質的に変更しない程度に十分小さくなるように制限され得る。
【0025】
時間的に分割される(パルスパックにおける)パルスは、(例えば、増幅器500によって)増幅可能であり、その後、光パルスの高密度パックを出力するように(例えば、圧縮器600によって)再圧縮可能である。
【0026】
図6は、τ
D~τ
S/100の2つのシードパルスを有する伸張シードパルスを時間遅延する際にスペクトル遅延が適用される場合の再圧縮されたパルスの例を示す実験による自己相関プロットである。2本の垂直な黒色線は、中央自己相関関数の半値全幅(FWHM)を示す。パルス間の非線形相互作用を低減又は削除することによって、それは時間遅延シードパルスの数と同一、この例では2個に維持され得る。
【0027】
マルチパルス生成システムの例
上記の説明は、パルス間に特定の時間遅延を有するスプリットシードパルスを作成するための技術の例を与える。ファイバベースの分割器及び結合器、例えば3dBカプラを異なる長さのファイバと組み合わせて利用するパルス遅延部700の例を
図7に示す。このパルス遅延では、パルスの波長は分割されない。シードパルス701は、第1のファイバカプラ705aを用いて2つのパルス702、703にまず分割され、スプリットパルス702、703はパルス遅延部の異なるアームで伝搬する。スプリットパルス702、703を、
図7の三角形として概略的に示す。2つのスプリットパルス702、703の間の遅延は、各アームにおいて異なる長さのファイバを用いることによって導入される。例えば、
図7に示す遅延部700の上側アームは、遅延線を提供するようにファイバの追加長ΔLを含む。そして、2つのアームからのスプリットパルスは、第2のカプラ705bを用いて単一ファイバに結合され得る。上側アームの遅延ΔLに起因して、上側アームに伝搬するパルス702は下側アームに伝搬するパルス703に対してnΔL/cだけ遅延され、ここでnはパルス702が伝搬するファイバの屈折率であり、cは真空における光の速度である。したがって、上側アームのパルス702は、
図7に示すように、結合後に下側アームのパルス703に続く。遅延ΔLの量(及びそれによる時間遅延nΔL/cの量)は、ある実施形態では、例えば可変光ファイバ遅延線を用いることによって調節可能となり得る。
【0028】
概して
図7に示す遅延部と類似するが、波長の分割を利用する、パルス遅延部700の他の実施形態を
図8に示す。
図8に示す遅延部700では、カプラ705a、705bの双方は波長分割マルチプレクサ(WDM)を備え、それはそれらの波長に基づいてパルスを分割及び結合する。WDMは、光学フィルタリング又はファイバカップリングのいずれかを通じて波長を選択することができる。ある実施形態では、
図8のWDMの一方又は双方が、所望の位置において、例えば信号スペクトルの中間において、所望の帯域幅で、例えば、<1nm、<2nm又は<10nmなどで波長を分割するフィルタ708を含む。
図8では、ComはWDMの共通ポートのことであり、双方の波長が、WDMに(例えば、入力パルス701として)入力、又はWDMから出力される。
図9に示すように、偏光保持ファイバにおける偏光モード分散の差分などの遅延線デバイスに連結された他のファイバ、又は分散シフトファイバなどの異なる群分散遅延を有するファイバも用いられ得る。ロングパスフィルタは、より長い波長のパルス702が上側アームに伝搬し、より短い波長のパルス703が下側アームに伝搬するように使用可能であり、それは遅延線(
図7を参照して説明するのと同様に、可変又は調節可能であり得る)を含む。より短い波長のパルス703は、第2のWDM705bから出力された後に、遅延線(例えば、時間遅延nΔL/c)によって導入される時間遅延に起因して、より長い波長のパルス702の後に続く。より長い波長のパルス702に対する遅延が(より短い波長のパルス703に対して)望ましい場合には、遅延線は、より長い波長のパルス702が伝搬するアーム(短いパルス703が伝搬するアームではなく)に導入され得る。したがって、
図8の波長遅延部700の実施形態は、(異なる波長を有する)パルス間に制御可能な時間遅延を生成するのに用いられ、より短い波長のパルスが(
図8に示すようにより長い波長のパルスに対して)遅延され、又はより長い波長のパルスが(より短い波長のパルスに対して)遅延されるいずれかのように配置可能となる。
【0029】
図9は、遅延を有する複数のパルスを生成する技術の例を概略的に示す。入力シードパルスは、線形偏光を有する偏光保持(PM)ファイバに伝搬する。PMファイバは、ファイバの1つの軸に沿って偏向される光がこの軸に対して直交して偏向される光と比較して異なる割合で進行するように複屈折性を有する。PMファイバ内の2つの主伝送軸は、高速軸及び遅軸と呼ばれる。PMファイバは、長さL及びゼロでない角度オフセットθを有するPMファイバの他の区画においてスプライシングされ得る。入力シードパルスは、通常、高速軸及び遅軸の双方に偏光成分を有することになる。PMファイバにおける複屈折性に起因して、これら2つの偏光成分の間に遅延が生じる。遅延はΔt=Δn*L/cであり、ここでΔnは高速軸と遅軸の間の有効屈折率の差を示す。オフセット角は、これら2つの偏光の間の振幅比を制御するのに用いられ得る。偏光依存の利得又は損失がファイバ区画において関連付けられない場合には、θ=45度の角度オフセットは、各偏光状態において等しいパルスエネルギーを取得するのに適用可能である。パルスの分割は、複数のパルスを構成するようにPMファイバの追加区画を用いることによってカスケードされ得る。選択的に、偏光子、例えばファイバベースのインライン偏光子は、特定の線形偏光状態においてパルス列を取得するように用いられてもよい。
【0030】
図9は、入力シードパルスが8個の出力パルスに分割されるPMファイバの遅延の例を概略的に示す。この例では、PMファイバの3つの区画がカスケードされ、第1の区画は長さ4L(下部に4L
Δtで示す)を有し、第2の区画は長さ2L(下部に2L
Δtで示す)を有し、第3の区画は長さL(下部にL
Δtで示す)を有する。これら3つの区画によって導入される時間遅延は、それぞれ4Δt、2Δt及びΔtであり、ここで上記のようにΔt=Δn*L/cである。入力パルスは、45度の角度オフセットを有する第1のPMファイバ区画によって受信される。
図9に示すように、第1のPMファイバ区画は(偏光成分は、PMファイバの複屈折性に起因して遅軸及び高速軸に沿って異なる速度で進行するので)、時間遅延4Δtによって分離された2つのパルスに入力パルスを分割する。時間遅延4Δtによって分離されたこれらの2つのパルスは、ファイバ遅延線の下にプロットで示される。そして、これらの2つのパルスは、90度(例えば、第1のPMファイバ区画に対して45度のオフセット)に向けられ、高速及び低速で伝搬する一対のパルスに各進入パルスを分割するPMファイバの第2の区画(長さ2Lを有する)によって受信される。4つのパルスは、PMファイバの第2の区画を通じて伝搬した後に、2Δtの成分の間に時間遅延を有して存在する(ファイバ遅延線の下にプロットで示される)。そして、4つのパルスは(PMファイバの第2の区画に対して長さL及び45度の角度オフセットを有する)PMファイバの第3の区画に進入し、それはΔtの時間遅延を有する他の一対のパルスに4つのパルスの各々を分割する(これらのパルスは、ファイバ遅延線の下にプロットで示される)。したがって、長さ4L、2L及びLを有するPMファイバの3つの区画の配置のこの例は、初期の入力シードパルスを8個の出力パルスに分割する。インライン偏光子は、特定の線形偏光状態を有する出力パルス列を取得するのに用いられ得る。
【0031】
図9の例は長さ4L、2L及びLを有する3つのPMファイバ区画を含むが、他の実施では、異なる数(例えば、1、2、4、5、10又はそれ以上)のPMファイバ区画が用いられてもよく、ファイバ区画に対して(4L、2L、L以外の)異なる長さ又は長さの組合せが用いられ得る。例えば、
図10を参照してさらに説明するように、ある実施形態では、遅延部は、幾何学的に変動するそれぞれの長さ(例えば、長さL、2L、4L、...、2
N-1L)を有する数NのPMファイバ区画を備え、それは連続する出力パルス間に時間遅延Δn*L/cを有する2
N個の出力パルスの列を生成することができる。数Nは、種々の実施形態において1~10以上の範囲にあり得る。多数の変更が考えられる。
【0032】
図10は、複数のパルスのためのパルス遅延生成システムの例を示す。このシステムでは、N+1個の2×2ファイバベースのカプラ、例えば、3dBカプラのC
1、C
2、...、C
N及びC
N+1が相互に直列に接続され、第1のカプラC
1がシード源からパルスを受信する。一対のファイバアームは、それぞれのカプラの各対の間に配設され、対のアームの一方は他方のアームのファイバ長よりも長いファイバ長を有する。各アームの間のファイバ長の差は、
図10で概略的に示すように、等比数列状のdL、2dL、2
2dL、...、2
(N-1)dLで設定可能である。シードパルスが最短長の差(dL)を有する第1のカプラ対を通過する場合には、シードパルスはそれらの間にndL/cの遅延を有する2つのパルスに分割される(ここでnはファイバの屈折率であり、cは真空における光の速度であり、
図7に示す遅延線の説明参照)。この第1の対のパルスの各々は、長さの差が2dLに等しい次のカプラ対を通過した後に、遅延0、ndL/c、2ndL/c及び3ndL/cを有する全部で4つのパルスが存在するように他の対に分割されることになる。この分割は、時間間隔の空いた(時間遅延した)パルスの列が生成されるように、カプラの連続する各対に対して継続される。
図10に示すシステムを用いて、隣接する各パルス間にndL/cの遅延を有する合計で2
N個のパルスが生成され得る。
【0033】
図10に示す実施形態では、変調器M
1、M
2、...、M
Nは、システムがほぼいずれの組合せのパルスでも出力パルスを生成可能なように、カプラC
1、C
2、...、C
N及びC
N+1のうちの1つ、一部又はすべての後にアームのうちの1つに(選択的に)配設され得る。
図10は、N個の変調器を有する実施形態を示す。変調器の例は、オン-オフスイッチであり得る。出力パルスの数は、いずれか1つの変調器がオフに設定されると半数になる。例えば、第1の変調器M
1がオフになるように設定された場合には、出力パルス列は隣接パルス間に2ndL/cの遅延(第2のカプラ対によって導入される時間遅延)を有する2
N-1個のパルスを含む。他の例として、最後の変調器M
Nがオフになるように設定された場合には、出力パルス列は隣接パルス間にndL/cの遅延を有する2
N-1個のパルスを含むので、パルス列の幅は半分に低下する。他の変調器をオフになるように設定すると、異なる数のパルス又は異なる組合せのパルス遅延を有するパルス列を作成することができる。
図10に示すパルス遅延の例は等比数列として設定される遅延を用いるが、他の実施形態では、一連の遅延が任意の等級で設定され得る。
【0034】
追加的態様
第1の態様では、チャープパルス増幅システムがシード光パルスを増幅するように構成され、シード光パルスが複数のパルスに分割され、各隣接パルス間に遅延が適用され、圧縮後の隣接パルス間の遅延は、チャープパルス増幅システムの利得媒体内部の伸張パルス持続時間よりも小さい。
【0035】
第2の態様では、第1の態様によるチャープパルス増幅システムにおいて、利得媒体が光ファイバを備える。
【0036】
第3の態様では、第1の態様又は第2の態様によるチャープパルス増幅システムが、フェムト秒からピコ秒の範囲のパルス持続時間を有する超短パルスである圧縮パルスを出力するように構成されたパルス圧縮器をさらに備える。
【0037】
第4の態様では、第1から第3の態様の任意の1つによるチャープパルス増幅システムが、数十ピコ秒から数ナノ秒の範囲の伸張パルス持続時間を有する伸張パルスを出力するように構成されたパルス伸張器をさらに備える。
【0038】
第5の態様では、第1から第4の態様の任意の1つによるチャープパルス増幅システムにおいて、遅延は数百フェムト秒から数ナノ秒の範囲にある。
【0039】
第6の態様では、第1から第5の態様の任意の1つによるチャープパルス増幅システムにおいて、チャープパルス増幅システムの出力は、入力シード光パルスの数よりも多くのパルスを有するパルスパックを備える。
【0040】
第7の態様では、第6の態様におけるチャープパルス増幅システムにおいて、パルスパックの形態は、隣接シード光パルス間の遅延によって制御される。
【0041】
第8の態様では、第6の態様又は第7の態様におけるチャープパルス増幅システムにおいて、パルスパックの形態は、増幅パルス間の相互作用によって制御される。
【0042】
第9の態様では、第1から第8の態様の任意の1つによるチャープパルス増幅システムにおいて、シードパルスを分割するように波長選択的構成要素が用いられる。
【0043】
第10の態様では、第9の態様によるチャープパルス増幅システムにおいて、波長選択的構成要素はフィルタを備える。
【0044】
第11の態様では、第9の態様又は第10の態様によるチャープパルス増幅システムにおいて、波長選択的構成要素は回折格子を備える。
【0045】
第12の態様では、第9から第11の態様の任意の1つによるチャープパルス増幅システムにおいて、波長選択的構成要素は光ファイバの入力及び出力を備える。
【0046】
第13の態様では、チャープパルス増幅システムにおいて複数のパルスを生成するための方法が提供される。方法は、レーザ源からシードパルスを受信するステップであって、シードパルスは光群遅延分散D(λ)を有し、ここでλは波長である、受信するステップと、伸張パルス幅を有する伸張パルスを生成するようにシードパルスを伸張するステップと、伸張パルスを、異なる波長を有する複数のパルスを備えるパルスパックに分割するステップと、パルスパックにおける複数のパルスの各々に時間遅延を適用するステップであって、時間遅延は光群遅延分散と同じ符号を有する、適用するステップと、パルスパックにおける複数のパルスの各々を増幅するステップと、パルスパックにおいて複数のパルスの各々を圧縮するステップとを備える。
【0047】
第14の態様では、第13の態様の方法において、時間遅延がΔλ*D(λ)より大きく、Δλは隣接伸張パルス間の波長重複部である。
【0048】
第15の態様では、第13の態様又は第14の態様の方法において、伸張パルスをパルスパックに分割するステップは、伸張パルス又はパルスパックにおけるパルスを一対のパルスに分割するステップと、一対のパルスにおける第1のパルスを一対のパルスにおける第2のパルスに対して遅延させるステップとを備える。
【0049】
第16の態様では、第15の態様の方法において、一対のパルスにおける第1のパルス及び第2のパルスは異なる波長を有する。
【0050】
第17の態様では、チャープパルス増幅(CPA)システムは、シードパルスを出力するように構成されたシードレーザ源と、シードパルスを伸張して伸張パルスを出力するように構成された伸張器と、伸張パルスの各々を複数のスプリットパルスに分割するように構成された分割器と、複数のスプリットパルスの各々に遅延を適用するように構成された遅延部と、遅延スプリットパルスの各々を増幅するように構成された増幅器と、増幅された遅延スプリットパルスの各々を圧縮して複数の光パルスを出力するように構成された圧縮器とを備える。
【0051】
第18の態様では、第17の態様のCPAシステムにおいて、シードレーザ源はファイバレーザを備える。
【0052】
第19の態様では、第17の態様又は第18の態様のCPAシステムにおいて、伸張器はファイバベースの伸張器を備える。
【0053】
第20の態様では、第17から第19の態様の任意の1つのCPAシステムにおいて、分割器は、伸張パルスを異なる波長を有する複数のスプリットパルスに分割するように構成された波長選択的構成要素を備える。
【0054】
第21の態様では、第17から第20の態様の任意の1つのCPAシステムにおいて、遅延部はカプラ、第1のアーム及び第2のアームを備え、第1のアームの長さは第2のアームよりも長く、カプラは第1のアームと第2のアームの間でパルスを分割するように構成される。
【0055】
第22の態様では、第21の態様のCPAシステムにおいて、カプラは波長分割マルチプレクサを備える。
【0056】
第23の態様では、第17から第22の態様の任意の1つのCPAシステムにおいて、遅延部は偏光保持(PM)光ファイバの複数の連結区画を備える。
【0057】
第24の態様では、第17から第23の態様の任意の1つのCPAシステムにおいて、遅延部は、等比数列状の時間遅延を有するパルスを生成するように構成された複数のファイバベースのカプラを備える。
【0058】
第25の態様では、第24の態様のCPAシステムは、複数の変調器をさらに備える。
【0059】
第26の態様では、第17から第25の態様の任意の1つのCPAシステムにおいて、遅延スプリットパルスは時間的に分離される。
【0060】
第27の態様では、第17から第25の態様の任意の1つのCPAシステムにおいて、遅延スプリットパルスは少なくとも部分的に重複し、CPAシステムによって出力された複数の光パルスは高密度光パルスパックを備える。
【0061】
追加的情報
このように、本発明が、いくつかの非限定的な実施形態で説明されてきた。実施形態は相互に排他的でなく、1つの実施形態に関連して説明される要素は、所望の設計目標を達成する適切な方法で他の実施形態と組み合わされ、再配置され又は他の実施形態から削除されてもよいことが理解される。いずれかの単一の特徴又は特徴のグループも、各実施形態には必要でなく又は要件とはされない。要素のすべての可能な組合せ及び部分的組合せが、この開示の範囲内に含まれる。
【0062】
本発明を要約する目的のために、本発明の特定の態様、効果及び新規の特徴がここで説明される。ただし、必ずしもそのような効果がすべて、任意の特定の実施形態により実現されなくてもよいことが理解されるはずである。したがって、本発明は、ここで教示又は提示され得るように他の効果を必ずしも実現しなくとも1以上の効果を実現するように具現化又は実行され得る。
【0063】
ここで用いられるような「1つの実施形態」、「ある実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態と関連して説明される特定の要素、特徴、構造又は特色が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。明細書中の様々な個所における「1つの実施形態では」の語句が現れても、必ずしもすべてが同じ実施形態に言及しない。ここで用いられる条件的言語、とりわけ「can」、「could」、「might」、「may」、「e.g.」などは、特に断りがない限り、又は用いられるような背景内でその他に理解されない限り、一般的には、他の実施形態は含まないが特定の実施形態は、特定の特徴、要素及び/又はステップを含むことを伝えることを意図している。さらに、本願及び添付の特許請求の範囲で用いられるように冠詞の「a」、「an」又は「the」は、特に断りがない限り、「1以上」又は「少なくとも1つ」を意味するように解釈されるはずである。
【0064】
ここで用いられるように、用語「comprises」、「comprising」、「includes」、「including」、「has」、「having」又はこれらの他の任意の変形は、オープンエンドな用語であり、非排他的な包括を満たすことを意図する。例えば、要素の一覧を備える処理、方法、物品又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されることなく、そのような処理、方法、物品又は装置に明示も内在もしていない他の要素を含み得る。さらに、逆のことが明示されていない限り、「又は」は、包括的であり排他的なものではない。例えば、条件A又はBとは、以下の、Aは真であり(すなわち存在し)かつBは偽である(すなわち存在せず)、Aは偽であり(すなわち存在せず)かつBは真である(すなわち存在する)、又はA及びBが双方とも真である(すなわち存在する)のうちの任意の1つによって満たされる。ここで用いられるように、項目の一覧「の少なくとも1つ」という語句は、単一の部材を含むそれらの項目の任意の組合せのことをいう。例として、「A、B又はCの少なくとも1つ」は、A、B、C、A及びB、A及びC、B及びC、並びにA、B及びCを包含することを意図する。語句の「X、Y及びZの少なくとも1つ」などの接続語は、明記されない限り、一般的に用いられるような背景で他に理解されて、項目、用語などがX、Y又はZの少なくとも1つであり得ることを伝える。したがって、そのような接続語は、特定の実施形態にXの少なくとも1つ、Yの少なくとも1つ及びZの少なくとも1つが各々存在する必要があることを想起させるようには一般的には意図されない。
【0065】
したがって、ここで特定の実施形態のみを具体的に説明したが、それには本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく多くの変形がなされ得ることが分かる。さらに、頭字語は、明細書及び特許請求の範囲を読み易くするために用いられるに過ぎない。これらの頭字語は用いられる用語の普遍性を低下させることを意図されておらず、特許請求の範囲をそこで説明する実施形態に限定するように解釈されるべきでないことに留意すべきである。