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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】乗客コンベアの動線指示映像投影装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/00 20060101AFI20240401BHJP
   B66B 29/08 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B66B31/00 A
B66B31/00 C
B66B29/08 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023109067
(22)【出願日】2023-07-03
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幹
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-018478(JP,U)
【文献】特開2000-095467(JP,A)
【文献】特開2016-074535(JP,A)
【文献】特開2007-062892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 31/00
B66B 29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り口から降り口に、前後方向に延びる左右一対の欄干と、左右一対の前記欄干の間を前記乗り口にある乗降板から前記降り口にある乗降板に向かって移動する踏段と、を有する乗客コンベアと、
動線指示映像投影装置と、
を有し、
前記動線指示映像投影装置は、
前記降り口の前記乗降板の上面に投影を行う投影機と、
前記踏段に乗った乗客を検出する乗客センサと、
前記乗客センサが前記乗客を検出したときに、前記投影機によって前記降り口の前記乗降板の上面に、前記乗客が前記踏段を降りたときにどの方向に移動すべきかを示す動線指示映像を投影する制御部と、
を有し、
前記乗客センサは、
左側の前記欄干の下部に設けられ、前記踏段の左側の前記乗客を検出する左乗客センサと、
右側の前記欄干の下部に設けられ、前記踏段の右側の前記乗客を検出する右乗客センサと、
を有し、
前記制御部は、前記左乗客センサが左側の前記乗客を検出したときに、前記投影機によって前記降り口の前記乗降板の左側に、左側の前記乗客の移動方向を示す左側の前記動線指示映像を投影し、前記右乗客センサが右側の前記乗客を検出したときに、前記投影機によって前記降り口の前記乗降板の右側に、右側の前記乗客の移動方向を示す右側の前記動線指示映像を投影する、
ことを特徴とする乗客コンベアの動線指示映像投影装置。
【請求項2】
前記動線指示映像は、左右一対の前記欄干の間にある前記乗降板の上面に投影されている、
請求項1に記載の乗客コンベアの動線指示映像投影装置。
【請求項3】
前記動線指示映像は、前記乗降板の左右両側部の少なくとも一方の上面に投影されている、
請求項1に記載の乗客コンベアの動線指示映像投影装置。
【請求項4】
前記投影機は、前記降り口にある前記欄干、又は、前記乗客コンベアが設置された建屋の天井に設けられている、
請求項1に記載の乗客コンベアの動線指示映像投影装置。
【請求項5】
第1の階の第1の乗り口から第2の階の第1の降り口に、前後方向に延びる左右一対の第1の欄干と、
左右一対の前記第1の欄干の間を前記第1の乗り口にある乗降板から前記第1の降り口にある乗降板に向かって移動する第1の踏段と、
を有する第1の乗客コンベアと、
第2の階の第2の乗り口から第3の階の第2の降り口に、前後方向に延びる左右一対の第2の欄干と、
左右一対の前記第2の欄干の間を前記第2の乗り口にある乗降板から前記第2の降り口にある乗降板に向かって移動する第2の踏段と、
を有する第2の乗客コンベアと、
動線指示映像投影装置と、
を有し、
前記第1の降り口にある前記乗降板と前記第2の乗り口にある前記乗降板とが隣接し、
前記動線指示映像投影装置は、
前記第1の降り口にある前記乗降板の上面と前記第2の乗り口にある前記乗降板の上面に投影を行う投影機と、
前記第1の踏段に乗った第1の乗客を検出する乗客センサと、
前記乗客センサが前記第1の乗客を検出したときに、前記投影機によって前記第1の降り口の前記乗降板の上面と前記第2の乗り口にある前記乗降板の上面に、前記第1の乗客が前記第1の踏段を降りて前記第1の乗客コンベアから前記第2の乗客コンベアに乗り継ぎする方向を表す第1の動線指示映像を投影すると共に、前記投影機によって前記第2の乗り口にある前記乗降板の上面に、前記第2の乗り口から前記第2の乗客コンベアに乗り込む第2の乗客に対し、前記第1の乗客との衝突を回避するために、前記第1の動線指示映像と並べた状態で第2の乗客の乗り込む方向を表す第2の動線指示映像を投影する制御部と、
を有することを特徴とする乗客コンベアの動線指示映像投影装置。
【請求項6】
前記動線指示映像は、前記乗客の移動方向を示す矢印の映像である、
請求項1又はに記載の乗客コンベアの動線指示映像投影装置。
【請求項7】
前記動線指示映像は、前記乗客の移動方向を示す文字の映像である、
請求項1又はに記載の乗客コンベアの動線指示映像投影装置。
【請求項8】
前記動線指示映像は、前記乗客の移動範囲を色の領域で示す映像である、
請求項1又はに記載の乗客コンベアの動線指示映像投影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベア動線指示映像投影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エスカレータや動く歩道などにおいて、乗客が乗り口とは逆の降り口から踏段に乗り込まないようにするために、進入禁止マーク等を降り口に表示していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-166743号公報
【文献】特開2022-162879号公報
【文献】特開2022-108604号公報
【文献】特開2021-119095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、降り口で乗客がどの方向に移動すべきかを表示する手段はなかった。また、踏段から降りた2人の乗客同士の移動方向がクロスして、衝突するリスクがあるが、それを防止するためにこれら乗客がどの方向に移動すべきかを表示する手段がないという問題点があった。例えば、踏段の右側の乗客が乗降板に降りてまっすぐ進み、踏段の左側の乗客が乗降板に降りて右側に進むと、二人の乗客が衝突する。
【0005】
本発明の実施形態は、乗り口から降り口に、前後方向に延びる左右一対の欄干と、左右一対の前記欄干の間を前記乗り口にある乗降板から前記降り口にある乗降板に向かって移動する踏段と、を有する乗客コンベアと、動線指示映像投影装置と、を有し、前記動線指示映像投影装置は、前記降り口の前記乗降板の上面に投影を行う投影機と、前記踏段に乗った乗客を検出する乗客センサと、前記乗客センサが前記乗客を検出したときに、前記投影機によって前記降り口の前記乗降板の上面に、前記乗客が前記踏段を降りたときにどの方向に移動すべきかを示す動線指示映像を投影する制御部と、を有し、前記乗客センサは、左側の前記欄干の下部に設けられ、前記踏段の左側の前記乗客を検出する左乗客センサと、右側の前記欄干の下部に設けられ、前記踏段の右側の前記乗客を検出する右乗客センサと、を有し、前記制御部は、前記左乗客センサが左側の前記乗客を検出したときに、前記投影機によって前記降り口の前記乗降板の左側に、左側の前記乗客の移動方向を示す左側の前記動線指示映像を投影し、前記右乗客センサが右側の前記乗客を検出したときに、前記投影機によって前記降り口の前記乗降板の右側に、右側の前記乗客の移動方向を示す右側の前記動線指示映像を投影する、ことを特徴とする乗客コンベアの動線指示映像投影装置である。また、本発明の実施形態は、第1の階の第1の乗り口から第2の階の第1の降り口に、前後方向に延びる左右一対の第1の欄干と、左右一対の前記第1の欄干の間を前記第1の乗り口にある乗降板から前記第1の降り口にある乗降板に向かって移動する第1の踏段と、を有する第1の乗客コンベアと、第2の階の第2の乗り口から第3の階の第2の降り口に、前後方向に延びる左右一対の第2の欄干と、左右一対の前記第2の欄干の間を前記第2の乗り口にある乗降板から前記第2の降り口にある乗降板に向かって移動する第2の踏段と、を有する第2の乗客コンベアと、動線指示映像投影装置と、を有し、前記第1の降り口にある前記乗降板と前記第2の乗り口にある前記乗降板とが隣接し、前記動線指示映像投影装置は、前記第1の降り口にある前記乗降板の上面と前記第2の乗り口にある前記乗降板の上面に投影を行う投影機と、前記第1の踏段に乗った第1の乗客を検出する乗客センサと、前記乗客センサが前記第1の乗客を検出したときに、前記投影機によって前記第1の降り口の前記乗降板の上面と前記第2の乗り口にある前記乗降板の上面に、前記第1の乗客が前記第1の踏段を降りて前記第1の乗客コンベアから前記第2の乗客コンベアに乗り継ぎする方向を表す第1の動線指示映像を投影すると共に、前記投影機によって前記第2の乗り口にある前記乗降板の上面に、前記第2の乗り口から前記第2の乗客コンベアに乗り込む第2の乗客に対し、前記第1の乗客との衝突を回避するために、前記第1の動線指示映像と並べた状態で第2の乗客の乗り込む方向を表す第2の動線指示映像を投影する制御部と、を有することを特徴とする乗客コンベアの動線指示映像投影装置である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、乗り口から降り口に、前後方向に延びる左右一対の欄干と、左右一対の前記欄干の間を前記乗り口にある乗降板から前記降り口にある乗降板に向かって移動する踏段と、を有する乗客コンベアと、動線指示映像投影装置と、を有し、前記動線指示映像投影装置は、前記降り口の前記乗降板の上面に投影を行う投影機と、前記踏段に乗った乗客を検出する乗客センサと、前記乗客センサが前記乗客を検出したときに、前記投影機によって前記降り口の前記乗降板の上面に、前記乗客が前記踏段を降りたときにどの方向に移動すべきかを示す動線指示映像を投影する制御部と、を有することを特徴とする乗客コンベアの動線指示映像投影装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態1のエスカレータを右側から見た説明図である。
図2】エスカレータと動線指示映像投影装置のブロック図である。
図3】第1のパターンの降り口付近のエスカレータの平面図である。
図4】第2のパターンの降り口付近のエスカレータの平面図である。
図5】第2のパターンの変更例の降り口付近のエスカレータの平面図である。
図6】第3のパターンの降り口付近のエスカレータの平面図である。
図7】第3のパターンの変更例の降り口付近のエスカレータの平面図である。
図8】実施形態2の2列に並んだエスカレータの平面図である。
図9】実施形態2の変更例の2列に並んだエスカレータの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態の乗客コンベアについて、図面を参照して説明する。本実施形態では、乗客コンベアとしてエスカレータで説明する。
【実施形態1】
【0009】
実施形態1のエスカレータ10について、図1図7を参照して説明する。
【0010】
(1)エスカレータ10
まず、エスカレータ10の構造について図1を参照して説明する。図1は、エスカレータ10を右側面から見た説明図である。但し、エスカレータ10の内部構造をわかりやすくするために、エスカレータ10の右側の部材の図示を省略している。なお、エスカレータ10の前後方向を説明するときは、上階から下階を見下ろし、上階が後側、下階が前側とする。
【0011】
エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって支持アングル2,3を用いて前後方向に沿って支持されている。
【0012】
トラス12の上端部にある上階の機械室14内部には、踏段30を走行させる駆動装置18、左右一対の踏段スプロケット24,24が設けられている。この駆動装置18は、モータ20と、減速機21と、この減速機21の出力軸に取り付けられた駆動小スプロケット19と、モータ20の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスク式の電磁ブレーキ23とを有している。左右一対の踏段スプロケット24,24には、同軸に駆動大スプロケット17が取り付けられ、駆動小スプロケット19との間に無端状の駆動チェーン22が架け渡されている。また、上階の機械室14内部には、モータ20や電磁ブレーキ23などを制御する制御装置50が設けられている。
【0013】
トラス12の下端部にある下階の機械室16内部には、左右一対の従動スプロケット26,26が設けられている。上階の左右一対の踏段スプロケット24,24と下階の左右一対の従動スプロケット26,26との間には、左右一対の無端状の踏段チェーン28,28が架け渡されている。左右一対の踏段チェーン28,28の間には、複数の踏段30の左右一対の第1輪301,301が一定間隔毎に連結されている。モータ20が回転すると踏段30の第1輪301は、トラス12に固定された不図示の第1輪専用の案内レールを走行し、踏段30の第2輪302は、トラス12に固定された第2輪専用の案内レール25を走行する。
【0014】
トラス12の上部の左右両側には、左右一対の欄干36,36が立設されている。この欄干36の上部には手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って無端状の手摺りベルト38が移動する。
【0015】
左右一対の欄干36の上階の正面下部には上階の正面スカートガード40が設けられ、下階の正面下部には下階の正面スカートガード42が設けられている。正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。左右一対の欄干36の側面下部には、スカートガード(内デッキ)44がそれぞれ設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。
【0016】
手摺りベルト38は、不図示のベルトスプロケットが踏段スプロケット24と共に回転することにより踏段30と同期して移動する。
【0017】
上階の左右一対のスカートガード44,44の間の乗降口である、機械室14の天井面には、上階の乗降板32が水平に設けられている。下階の左右一対のスカートガード44,44の間の乗降口である、機械室16の天井面には、下階の乗降板34が水平に設けられている。上階の乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、踏段30がこのコム60に進入したり、このコム60から引き出されたりする。また、下階の乗降板34の先端にも櫛歯状のコム62が設けられている。
【0018】
図2のブロック図に示すように、エスカレータ10の制御部としての役割を果たす制御装置50には、モータ20の回転方向、回転速度などを制御するためのインバータ回路を含む駆動回路51が接続されている。駆動回路51には、モータ20と、モータ20の回転を停止させるための電磁ブレーキ23が接続されている。
【0019】
(2)動線指示映像投影装置5の構成
次に、エスカレータ10の降り口から降りた乗客がどの方向に移動して良いかを動線指示映像で示す動線指示映像投影装置(以下、「本装置」という)5について、図面を用いて説明する。
【0020】
図2に示すように、本装置5は、制御装置50、左乗客センサ(以下、「左センサ」という)52、右乗客センサ(以下、「右センサ」という)54、上階にある左右一対の投影機56,56、下階にある左右一対の投影機58,58より構成され、制御装置50には、左センサ52、右センサ54と、投影機56,56と、投影機58,58が接続されている。なお、制御装置50はエスカレータ10の制御部としての役割と、本装置5の制御部としての役割を兼ねている。
【0021】
図3に示すように、左センサ52と右センサ54は、上階と下階の中央部分に当たる左右一対のスカートガード44,44に設けられている。左センサ52は、移動する踏段30の左側に乗った乗客を検出するための光電センサよりなり、右センサ54は同じく踏段30の右側に乗った乗客を検出するための光電センサよりなる。
【0022】
左右一対の投影機56,56は、上階の乗降板32の真上にある欄干36に設けられている(図1参照)。この左右一対の投影機56,56は、上階の乗降板32の上面に、図形、文字、絵などの動線指示映像を投影することができる。ここで、「動線指示映像」とは、乗客が踏段30を降りたときに乗客が移動すべき方向(動線)を指示する表示である。具体的には、移動すべき方向を示す矢印や文字、移動範囲、すなわち乗客がその内側を進行すべき範囲を表す、赤色、青色、黄色などの色の領域、注意を促す絵(マーク)、又はそれらの組み合わせなどの映像である。
【0023】
図3図7に示すように、左右一対の投影機58,58は、下階の乗降板34の真上にある左右一対の欄干36,36に設けられている。この左右一対の投影機58,58は、下階側の乗降板34の上面に上記の動線指示映像を投影する。
【0024】
以下では、本装置5が、エスカレータ10の降り口から降りた乗客がどの方向に移動すべきかを動線指示映像で示す幾つかのパターンについて説明する。以下の説明では、エスカレータ10の踏段30は、下降運転をしており、下階側の乗降口が降り口となる。なお、図3図9において、踏段30に立ち止まっている乗客を「普」の字を白丸で囲んで示し、踏段30を歩き、又は駆け下りてくる乗客を「急」の字をホームベース型の五角形で囲んで示し、その乗客の進行方向を五角形の最も角度が広い角部で示している。
【0025】
(3)第1のパターン
本装置5の第1のパターンについて、図3を参照して説明する。第1のパターンは、1人の乗客が踏段30の右側に立った状態で上階から下階に移動しているもので、この乗客が降り口に到達したときに、乗客が踏段30を降りて乗降板34のどの方向に移動したら良いかを表す動線指示映像を左右一対の投影機58,58で乗降板34に投影するときである。
【0026】
右センサ54が乗客を検出すると、制御装置50は、左右一対の投影機58,58が、下階側の乗降板34の上面中央部分に、乗降板34を前方向に移動するように示す矢印101の映像を投影する。このとき矢印101は、例えば白色、青色などの任意の色で表示すればよいが、乗降板34の色などを考慮して視認し易いように表示する。降りてきた乗客は、この矢印101を見ることにより、自分が乗降板34のどの方向に移動すべきかを容易に判断できる。
【0027】
(4)第2のパターン
次に、本装置5の第2のパターンについて図4を参照して説明する。第2のパターンは、踏段30の左右両側に乗客が存在する場合で、例えば踏段30の右側の乗客が踏段30に立った状態で下降し、左側の乗客が踏段30を歩いて下りている状態であり、日常において最も一般的なパターンである。なお、図1の乗客の状態は、第2のパターンの状態を表している。
【0028】
この場合に、右側の右センサ54が右側の乗客を検出し、左センサ52が左側の乗客を検出する。なお、左センサ52と右センサ54は光電センサであるため乗客の存在のみを検出し、それぞれの乗客の状態、すなわち踏段30上で静止しているか、歩いているか、又は、駆け下りているかは検出しない。
【0029】
制御装置50は、左センサ52が左側の乗客を検出し、右センサ54が右側の乗客を検出すると、左右一対の投影機58,58で下階側の乗降板34の右側には、矢印102の映像を投影し、この矢印102の前部分は乗降板34の右側に向かって曲がるように投影する。乗降板34の左側には、矢印103の映像を投影し、この矢印103の前部分は、乗降板34の左側に向かって屈曲して投影する。矢印102と矢印103の間には、矢印102と矢印103より小さい矢印104と矢印105が互いに近づく方向に投影され、その先端には注意マーク106が表示されている。矢印103と矢印104は青色で投影示し、小さい矢印104と矢印105は赤色で投影し、注意マーク106は黄色で投影する。
【0030】
これにより、踏段30の右側に位置する乗客は、右側の矢印101に沿って移動すべきことがわかり、踏段30の左側の乗客は左側の矢印102に沿って移動すべきことがわかる。そして、中央部分には赤色の矢印104と矢印105との間に注意マーク106が投影されているため、衝突のおそれがあることをこれらの乗客に注意喚起できる。
【0031】
(5)第2のパターンの変更例
第2のパターンの変更例について図5を参照して説明する。
【0032】
第2のパターンの変更例は、矢印102と矢印103で動線指示映像を示すのでなく、色の領域の映像で動線指示映像を示すものである。すなわち、左右一対の投影機58,58で、踏段30の右側の乗客に対しては、乗降板34の上面の右側に例えば青色の光を投影して領域107を形成し、踏段30の左側の乗客に対しては、乗降板34の上面の左側に例えば赤色の光を投影して領域108を形成する。これによって、左側の乗客は青色の領域107に沿って移動すべきであり、左側の乗客は赤色の領域に沿って移動すべきであることを示すことができる。
【0033】
(6)第3のパターン
次に、本装置5の第3のパターンについて図6を参照して説明する。
【0034】
第3のパターンは、踏段30の左側と右側にそれぞれ複数の乗客が順番に踏段30から乗降板34にそれぞれ降りている場合であって、乗降板34が常に乗客で埋まり、左右一対の投影機58,58で左右一対の欄干36,36の間の乗降板34の上面に、動線指示映像を投影しても他の乗客に隠れて見えない場合について適用されるパターンである。
【0035】
この第3のパターンにおいては、左右一対の投影機58,58で、乗降板34の右側部、すなわち右側の欄干36の前方にある乗降板34の上面にのみ文字の映像を投影する。例えば、投影によって乗降板34の右側にのみ長方形の領域110を形成し、この長方形の領域110の内部に「左後方注意!」、「混雑!接触注意」などの文字を表示する。又は、右側の乗客のみに見えるように、右側に向かう矢印を表示したり、左側に向かう矢印と×印を重ねて表示したりする。
【0036】
踏段30の右側に存在する乗客は、この長方形の領域110を見ることにより左後方を注意したり、混雑のため接触が起こらないように移動したりできる。長方形の領域110は、乗降板34の左右両側部の少なくとも右側の上面に投影されることとなる。
【0037】
なお、左右の乗客の移動パターンに合わせて、乗降板34の左側の上面にのみ長方形の領域110を投影してもよい。
【0038】
(7)第3のパターンの変更例
第3のパターンの変更例について図7を参照して説明する。
【0039】
第3のパターンの変更例は、乗降板34の上面の右側にのみ長方形の領域110を表示するのでなく左右両側に表示するものであり、左右一対の投影機58,58の投影によって乗降板34の上面の右側に加えて左側にも長方形の領域111を形成する。この左側の長方形の領域111には、踏段30の左側に存在する乗客に対して注意を喚起する「右客注意」、長方形の領域110には「左客注意」などを投影する。そして左右の乗客に対し、進行方向へ向かって直進するように促す。
【0040】
(8)効果
本実施形態によれば、本装置5によって、エスカレータ10の降り口である乗降板34に降りてくる乗客に対し、移動する方向である動線指示映像を投影することに、左右に乗客が存在しても、互いにぶつかることがなく安全に移動できる。
【実施形態2】
【0041】
次に、実施形態2のエスカレータ10、100について図8を参照して説明する。
【0042】
本実施形態では、第1の乗客コンベアであるエスカレータ10と第2の乗客コンベアであるエスカレータ100が隣接して2列に並んで設けられている。エスカレータ10、エスカレータ100、本装置5の構成は、実施形態1で説明したエスカレータ10と本装置5の構成と同一であり、両者ともに下降運転をしている。エスカレータ10が3階から2階に架け渡され、エスカレータ100が2階から1階に架け渡されている。2階においてエスカレータ10の降り口の乗降板34と、エスカレータ100の乗り口の乗降板32とが隣接して設けられている。
【0043】
3階から2階に下降するエスカレータ10の踏段30の右側に乗っている乗客が、2階から1階に行くエスカレータ100に乗り継ぐ場合に、その乗り継ぎ移動をスムーズに示すために、エスカレータ10の降り口の本装置5の投影機56,56とエスカレータ100の乗り口の本装置5の投影機58,58とによって動線指示映像である矢印112の映像を投影する。この矢印112は、降り口にある乗降板34を前方に向かって伸び、乗降板34の前端部手前で隣接する乗降板32に向かってU字状に屈曲し、乗降板32の後端部付近からエスカレータ100の踏段30に向かって前方(下階側)に伸びるものである。即ち、矢印112は、乗降板34の左右両側部の少なくとも右側の上面に投影されることとなる。
【0044】
また、2階からエスカレータ100に乗ってくる乗客が乗り継ぐ乗客と衝突せずに、2列に並んで乗り込むように、乗降板32に矢印112の映像と並べて矢印113の映像を表示する。この場合、矢印112は、乗降板32の左右両側部の少なくとも左側の上面に投影されることとなる。この矢印113は乗降板32の後端部中央付近に起点を有し、踏段30の手前で矢印112とほぼ平行となるが、その起点と平行部分との間において、矢印112側にやや接近している。これらの矢印112と矢印113とが接近した部分において、それらの矢印の間に衝突を表す注意マーク114の映像を投影する。
【0045】
これにより、3階から2階に降りてきた乗客は、矢印112に沿って移動することにより安全にエスカレータ100の踏段30に乗り継ぐことができる。また、2階から乗ってくる乗客も、矢印113によって2列に並んで乗るよう促され、衝突のリスクが回避される。
【0046】
実施形態2の変更例について図9を参照して説明する。
【0047】
実施形態2では、乗客の動線指示映像が矢印112、113であったが、本変更例ではそれに代えて色の領域とする。
【0048】
すなわち、エスカレータ10の踏段30の右側に乗ってエスカレータ100に乗り継ぐ乗客のための動線指示映像として、乗降板34から乗降板32にかけてカバーする青色の領域115を投影によって形成する。エスカレータ10の踏段30の左側に乗っている乗客のための動線指示映像としては、投影によって赤色の領域116を形成する。2階からエスカレータ100の踏段30の右側に乗る乗客のための動線指示映像としては、投影によって黄色の領域117を形成する。これによって、それぞれの乗客の移動方向を明確に示すことができる。
【変更例】
【0049】
上記実施形態1では、踏段30が下降するときで示したが、踏段30が上昇するときも上階側の左右一対の投影機56,56を用いて、上階側の乗降板32に降りる乗客の動線指示映像を投影する。
【0050】
また、上記実施形態における各パターンは例示であり、これらパターン以外の乗客の動線指示映像を投影してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、エスカレータ10に適用して説明したが、これに代えて動く歩道に適用してもよい。
【0052】
建物の構造により、動線指示映像は乗降板の左右両側部の少なくとも一方の上面に投影されていてもよい。例えば、エスカレータ10が壁面に沿って設けられており、エスカレータ10の左側または右側に壁面が存在する場合などである。
【0053】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
5・・・動線指示映像投影装置、10・・・エスカレータ、30・・・踏段、32・・・乗降板、34・・・乗降板、36・・・欄干、50・・・制御装置、52・・・左センサ、54・・・右センサ、56・・・投影機、58・・・投影機、101・・・矢印、102・・・矢印
【要約】
【課題】降り口で踏段から乗降板に降りた乗客がどの方向に移動すべきかを表示する乗客コンベアの動線指示映像投影装置を提供する。
【解決手段】動線指示映像投影装置5は、降り口の乗降板34に投影を行う投影機56と、踏段30に乗った乗客を検出する右センサ54と、右センサ54が乗客を検出したときに、投影機56によって降り口の乗降板34の上面に、乗客が踏段30を降りたときにどの方向に移動すべきかを表す動線指示映像を投影する制御装置50とを有する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9