(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】船用液体アンモニア燃料供給及び燃料リサイクルシステム
(51)【国際特許分類】
B63H 21/38 20060101AFI20240401BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20240401BHJP
F23K 5/02 20060101ALN20240401BHJP
F23K 5/18 20060101ALN20240401BHJP
F23K 5/22 20060101ALN20240401BHJP
【FI】
B63H21/38 B
F02M21/02 F
F23K5/02 Z
F23K5/18 A
F23K5/18 Z
F23K5/22
(21)【出願番号】P 2023507967
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 CN2021139957
(87)【国際公開番号】W WO2022143287
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】202011579030.4
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523039363
【氏名又は名称】大▲連▼船舶重工集▲団▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】片成▲栄▼
(72)【発明者】
【氏名】▲関▼英▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲義▼明
(72)【発明者】
【氏名】ジ ジヨン
(72)【発明者】
【氏名】李▲達▼
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼楠
(72)【発明者】
【氏名】▲呂▼岩
(72)【発明者】
【氏名】曲莉莉
(72)【発明者】
【氏名】雷蕾
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼林涛
(72)【発明者】
【氏名】彭▲東▼升
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼▲陽▼
(72)【発明者】
【氏名】郭▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】潘▲帥▼
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼▲凱▼▲強▼
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111392019(CN,A)
【文献】中国実用新案第211924353(CN,U)
【文献】国際公開第2019/003316(WO,A1)
【文献】特開2019-014335(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111170273(CN,A)
【文献】国際公開第2018/202313(WO,A1)
【文献】特開2022-179983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 1/00 - 25/52
F02M 1/00 - 99/00
F23K 5/00 - 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船用液体アンモニア燃料供給及び燃料リサイクルシステムにおいて、アンモニア燃料エンジン(11)と、液体アンモニア供給システムと、液体アンモニアリサイクルシステムと、液体アンモニア窒素パージ通気システムとを含み、
前記液体アンモニア供給システムは液体アンモニア貯蔵タンク(1)を含み、前記液体アンモニア貯蔵タンク(1)内には液体アンモニア低圧ポンプ(2)が設置され、前記液体アンモニア低圧ポンプ(2)が液体アンモニアをポンピングし、第1液体アンモニア供給管路(3)を通して液体アンモニアサージタンク(4)まで搬出しており、液体アンモニアサージタンク(4)内の液体アンモニアは、さらに液体アンモニア高圧ポンプ(5)、液体アンモニア加熱器(6)、液体アンモニアフィルタ(7)、ガス主弁(8)、供給弁ユニット(9)、第2液体アンモニア供給管路(10)を通ってアンモニア燃料エンジン(11)まで搬送され、
前記液体アンモニアリサイクルシステムは、還流弁ユニット(12)と、液体アンモニア収集タンク(13)と、第1還流管路(14)と、第2還流管路(15)とを含み、前記還流弁ユニット(12)とアンモニア燃料エンジン(11)の液体アンモニア還流出口との間は第1還流管路(14)によって接続されており、第2還流管路(15)の片端は還流弁ユニット(12)と接続され、他端は第1弁(16)及び第2弁(17)によって液体アンモニア収集タンク(13)及び液体アンモニアサージタンク(4)にそれぞれ接続されており、液体アンモニア収集タンク(13)及び液体アンモニアサージタンク(4)は第3液体アンモニア還流管路(18)によって第3弁(19)と接続されており、
前記液体アンモニア窒素パージ通気システムは、気液分離装置(20)と、通気マスト(21)と、第1パージ通気管路(22)と、第2パージ通気管路(23)とを含み、還流弁ユニット(12)には外部パージ通気ポートが設置され、第1パージ通気管路(22)及び第4弁(24)によって気液分離装置(20)及び通気マスト(21)に接続されており、液体アンモニア収集タンク(13)の頂部は第2パージ通気管路(23)及び第5弁(25)によって気液分離装置(20)及び通気マスト(21)に接続されており、窒素パージポート(26)は第2液体アンモニア供給管路(10)と接続されていることを特徴とする、船用液体アンモニア燃料供給及び燃料リサイクルシステム。
【請求項2】
システムが正常に運転を停止すると、第2液体アンモニア供給管路(10)、第1還流管路(14)及び第2還流管路(15)内に残留している液体アンモニア燃料が、液体アンモニア窒素パージシステムによって液体アンモニア収集タンク(13)内に還流し、第2液体アンモニア供給管路(10)及び第1還流管路(14)内に残留しているアンモニアガスが、液体アンモニア窒素パージ通気システムによって気液分離器(20)にパージされ、通気マスト(21)を通って排出されることを特徴とする、請求項1に記載の船用液体アンモニア燃料供給及び燃料リサイクルシステム。
【請求項3】
前記液体アンモニア収集タンク(13)には液位計(27)が設置されており、液体アンモニア収集タンク(13)内の液位が設定の高さに到達すると、第3弁(19)が開き、収集された液体アンモニアが第3液体アンモニア還流管路(18)を通って液体アンモニアサージタンク内に還流することを特徴とする、請求項1に記載の船用液体アンモニア燃料供給及び燃料リサイクルシステム。
【請求項4】
前記液体アンモニアサージタンク(4)に液位計(27)が設置されていることを特徴とする、請求項1に記載の船用液体アンモニア燃料供給及び燃料リサイクルシステム。
【請求項5】
水グリコール加熱システムをさらに含み、水グリコール加熱システムは、水グリコール加熱器(29)と、水グリコール循環ポンプ(30)とを含み、メインエンジンシリンダジャケット水またはボイラ蒸気(28)が放出する熱量が、水グリコール加熱器(29)、水グリコール循環ポンプ(30)を経由して、水グリコール熱交換媒体によって前記液体アンモニア加熱器(6)に提供されることを特徴とする、請求項1に記載の船用液体アンモニア燃料供給及び燃料リサイクルシステム。
【請求項6】
システムの正常運転時には、第1弁(16)が閉まり、第2弁(17)が開き、液体アンモニア燃料が第2液体アンモニア供給管路(10)を通ってアンモニア燃料エンジン(11)まで搬送され、アンモニア燃料エンジン(11)が還流させた液体アンモニア燃料が、第1還流管路(14)及び第2還流管路(15)を経て液体アンモニアサージタンク(4)内に直接還流することを特徴とする、請求項1に記載の船用液体アンモニア燃料供給及び燃料リサイクルシステム。
【請求項7】
液体アンモニア貯蔵タンク(1)はタイプC圧力貯蔵タンク、タイプA/タイプB/メンブレン型貯蔵タンクであってよく、液体アンモニア貯蔵タンク(1)は1つまたは複数であってよいことを特徴とする、請求項1に記載の船用液体アンモニア燃料供給及び燃料リサイクルシステム。
【請求項8】
窒素パージポート(26)が提供する窒素圧力が25barより大きいことを特徴とする、請求項1に記載の船用液体アンモニア燃料供給及び燃料リサイクルシステム。
【請求項9】
液体アンモニア低圧ポンプ(2)が各液体アンモニア貯蔵タンク(1)に1台または複数台配置され、液体アンモニア高圧ポンプ(5)が1台または複数台を配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の船用液体アンモニア燃料供給及び燃料リサイクルシステム。
【請求項10】
通気マスト(21)の上流に気液分離装置(20)が設置されていることを特徴とする、請求項1に記載の船用液体アンモニア燃料供給及び燃料リサイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は船舶建造及び船舶設計分野に関し、具体的には船用液体アンモニア燃料供給及び燃料リサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、地球全体で気候温暖化現象が激化しており、世界の各地で極端な気象現象や自然災害が頻発しているが、その元凶はCO2を代表とする温室効果ガスの排出である。船舶による水上輸送分野では、IMO国際海事機関も炭素排出削減に関する最新の目標を設定している。2008年の値と比較して、国際海運の炭素排出量は2030年までに少なくとも平均40%、2050年までに70%減少する。時間の推移に伴い、該指標は、船舶の設計、船舶の付帯設備、新エネルギー技術の応用などに対して、より高い要求を提示している。
【0003】
アンモニア(-33.6°C、1気圧、液体)は、重要な化学工業原料として、化学医薬及び農薬分野、国防工業分野、冶金工業分野などで幅広く応用されている。アンモニアは通常、液体状態で貯蔵及び輸送されており、陸上での応用はすでに完成されている。それと同時に、アンモニアは燃料として燃焼することができ、その燃焼生成物は窒素と水なので、炭素排出の問題が存在せず、十分にクリーンな燃料である。
【0004】
アンモニア燃料は、燃料貯蔵空間を節約するために、船舶上では液体状態で貯蔵される。船舶のタイプ、船舶の基準、航続力などの需要に基づき、容積や型式、設計圧力の異なる液体アンモニア燃料貯蔵タンクが採用されるが、通常は半冷却半加圧式(設計温度-40°C、設計圧力4~10bargなど、タイプC貯蔵タンク)と全冷却式(設計温度-40°C、設計圧力≦0.7barg、タイプA貯蔵タンクまたはタイプB貯蔵タンクまたはメンブレン型貯蔵タンク)の2種類に分けられる。
【0005】
現在、ドイツのマングループが開発している液体アンモニア燃料を燃焼させることができるデュアル燃料低速メインエンジンは、70barまたは70bar以上の圧力の液体アンモニア燃料をシリンダに噴射して燃焼させるもので、しかも燃料温度は45±10°C範囲に制御しなければならない。該モデルを船舶に応用することで、船舶のメインエンジン推進システムの「ゼロカーボン」排出を実現することができるので、環境保護の価値は極めて高い。液体アンモニア燃料がメインエンジンに供給される過程では、メインエンジンの負荷が変化するため、一部の未使用の液体アンモニア燃料が還流管路を通って還流し、該部分の液体アンモニア燃料が直接大気に排出されると、燃料の浪費や隠れた安全問題を引き起こすことになる。
【0006】
液体アンモニアを船舶の推進燃料とする場合には、アンモニア燃料エンジンに必要な供給流量、温度及び圧力を満たさなければならないので、船用液体アンモニア燃料供給システムを開発する必要があり、それと同時に液体アンモニア燃料の還流回収問題も解決しなければならない。
【発明の概要】
【0007】
上記の問題を解決するために、本発明では、船用液体アンモニア燃料供給及び燃料リサイクルシステムを提供しており、その目的は、船舶にクリーンで環境に優しい液体アンモニア燃料を提供するとともに、船舶の運行過程において、還流した液体アンモニア燃料を最大限にリサイクルすることを保証し、アンモニアが大気に直接排出されることにより生じる燃料の浪費及び隠れた危険な毒性を防ぐことにある。
【0008】
本発明の技術手法は以下の通りである。
【0009】
船用液体アンモニア燃料供給及び燃料リサイクルシステムは、アンモニア燃料エンジンと、液体アンモニア供給システムと、液体アンモニアリサイクルシステムと、液体アンモニア窒素パージ通気システムとを含む。
【0010】
前記液体アンモニア供給システムは液体アンモニア貯蔵タンクを含み、前記液体アンモニア貯蔵タンク内には液体アンモニア低圧ポンプが設置され、前記液体アンモニア低圧ポンプが液体アンモニアをポンピングし、第1液体アンモニア供給管路によって液体アンモニアサージタンクまで搬出しており、液体アンモニアサージタンク内の液体アンモニアは、さらに液体アンモニア高圧ポンプ、液体アンモニア加熱器、液体アンモニアフィルタ、ガス主弁、供給弁ユニット、第2液体アンモニア供給管路を通ってアンモニア燃料エンジンまで搬送され、液体アンモニア貯蔵タンクと液体アンモニアサージタンクは第1液体アンモニア供給管路によって接続されており、供給弁ユニットとアンモニア燃料エンジンの液体アンモニア入口との間は第2液体アンモニア供給管路によって接続されている。
【0011】
前記液体アンモニアリサイクルシステムは、還流弁ユニットと、液体アンモニア収集タンクと、第1還流管路と、第2還流管路とを含み、前記還流弁ユニットとアンモニア燃料エンジンの液体アンモニア還流出口との間は第1還流管路によって接続されており、第2還流管路の片端は還流弁ユニットと接続され、他端は第1弁及び第2弁によって液体アンモニア収集タンク及び液体アンモニアサージタンクにそれぞれ接続されており、液体アンモニア収集タンク及び液体アンモニアサージタンクは第3液体アンモニア還流管路によって第3弁と接続されている。
【0012】
前記液体アンモニア窒素パージ通気システムは、気液分離装置と、通気マストと、第1パージ通気管路と、第2パージ通気管路とを含み、還流弁ユニットには外部パージ通気ポートが設置され、第1パージ通気管路及び第4弁によって気液分離装置及び通気マストに接続されており、液体アンモニア収集タンクの頂部は第2パージ通気管路及び第5弁によって気液分離装置及び通気マストに接続されており、窒素パージポートは第2液体アンモニア供給管路と接続されている。
【0013】
システムが正常に運転を停止すると(燃料供給システム及びアンモニア燃料エンジンが停止すると)、第2液体アンモニア供給管路、第1還流管路及び第2還流管路内に残留している液体アンモニア燃料が、液体アンモニア窒素パージシステムによって液体アンモニア収集タンク内に還流する。第2液体アンモニア供給管路及び第1還流管路内に残留しているアンモニアガスは、液体アンモニア窒素パージシステムによって気液分離器にパージされ、通気マストを通って排出される。
【0014】
前記液体アンモニア収集タンクには液位計が設置されており、液体アンモニア収集タンク内の液位が設定の高さに到達すると、第3弁が開き、収集された液体アンモニアが第3液体アンモニア還流管路を通って液体アンモニアサージタンク内に還流する。
【0015】
液体アンモニアサージタンクは液体アンモニア燃料の液体アンモニア高圧ポンプへの連続供給を実現し、高圧ポンプの吸込揚程を保証すると同時に、液体アンモニアの還流燃料の回収貯蔵を実現しており、該サージタンクには液位計が設置され、液位の変化をリアルタイムで監視、制御している。
【0016】
船用液体アンモニア燃料供給及び燃料リサイクルシステムは、水グリコール加熱システムをさらに含み、水グリコール加熱システムは、水グリコール加熱器と、水グリコール循環ポンプとを含み、メインエンジンシリンダジャケット水またはボイラ蒸気が放出する熱量は、水グリコール加熱器、水グリコール循環ポンプを経由して、水グリコール熱交換媒体によって前記液体アンモニア加熱器に提供される。即ち、液体アンモニア加熱器は、水グリコール熱交換媒体を採用して、メインエンジンシリンダジャケット水やボイラ蒸気が放出する熱量を水グリコール熱交換媒体に伝達しており、高温の水グリコール熱交換媒体が液体アンモニア加熱器で熱交換を行って、熱量を液体アンモニア加熱器に提供しているのである。液体アンモニア加熱器が放出する冷却エネルギーが水グリコール熱交換媒体に伝達され、熱交換されると、低温の水グリコール熱交換媒体が戻り、メインエンジンシリンダジャケット水やボイラ蒸気の熱量を収集して、液体アンモニア加熱器から流出する低温の水グリコール熱交換媒体を加熱する。
【0017】
前記窒素パージポートが提供する窒素圧力は>25barであり、窒素の露点はアンモニア燃料エンジンの要求を満たしている。
【0018】
液体アンモニア低圧ポンプは、液体アンモニアを18barまで加圧し、かつ液体アンモニアサージタンクまで搬送することを実現している。液体アンモニア低圧ポンプは、要求に基づいて各貯蔵タンクに1台または複数台配置されており、液体アンモニア高圧ポンプは液体アンモニアをさらに70barまたは70bar以上まで加圧し、要求に基づいて1台または複数台配置することができる。液体アンモニア加熱器は液体アンモニア燃料の温度調節を実現し、45±10°Cの温度範囲要求を満たしている。これにより、アンモニア燃料エンジンは70barまたは70bar以上の圧力、45±10°Cの温度範囲の液体アンモニア燃料を使用して、船舶の動力推進を実現することができる。
【0019】
液体アンモニアフィルタと供給弁ユニットとの間のガス主弁は、システムが運転を停止した際に、供給処理設備(液体アンモニア高圧ポンプなど)と供給弁ユニット、還流弁ユニット及び液体アンモニアエンジンとの自動隔離を実現する。
【0020】
供給弁ユニット及び還流弁ユニットは、液体アンモニア燃料の供給過程における圧力調節を実現し、また、液体アンモニア供給システム、液体アンモニアリサイクルシステムの運転が遮断された場合、液体アンモニア供給システム、液体アンモニアリサイクルシステム及びアンモニア燃料エンジンの隔離を実現して、アンモニア燃料エンジンの操作の安全を保障する。
【0021】
液体アンモニアは低温液体状態(-33.6°C)で液体アンモニア貯蔵タンクに貯蔵されており、液体アンモニア貯蔵タンクの型式は、タイプC圧力貯蔵タンク、タイプA/タイプB/メンブレン型圧力貯蔵タンクなどであってよい。
【0022】
液体アンモニアフィルタが燃料供給の前に濾過を行うことにより、メインエンジンの使用要求に到達する。
【0023】
気液分離装置は、液体アンモニア、アンモニアガス、窒素及び油分などの不純物の分離を実現し、気体だけが通気マストを通って大気に送り込まれることを保証している。
【0024】
本発明の有益的な効果は次の通りである。本発明は、液体アンモニア供給システム、液体アンモニアリサイクルシステム及び液体アンモニアパージ通気システムによって船用液体アンモニア燃料の高圧液状供給(70barまたは70bar以上、45±10°C)を実現すると同時に、管路内の未消費の液体アンモニア燃料を回収して再利用することで、大量の燃料を節約し、かつ通気マストに排出されるアンモニア燃料を減少させて、船舶及び人員の安全を向上させている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、船用液体アンモニア燃料供給及び燃料リサイクルシステムの概略図である。
【0026】
そのうち、
1 液体アンモニア貯蔵タンク
2 液体アンモニア低圧ポンプ
3 第1液体アンモニア供給管路
4 液体アンモニアサージタンク
5 液体アンモニア高圧ポンプ
6 液体アンモニア加熱器
7 液体アンモニアフィルタ
8 ガス主弁
9 供給弁ユニット
10 第2液体アンモニア供給管路
11 アンモニア燃料エンジン
12 還流弁ユニット
13 液体アンモニア収集タンク
14 第1還流管路
15 第2還流管路
16 第1弁
17 第2弁
18 第3液体アンモニア還流管路
19 第3弁
20 気液分離装置
21 通気マスト
22 第1パージ通気管路
23 第2パージ通気管路
24 第4弁
25 第5弁
26 窒素パージポート
27 液位計
28 メインエンジンシリンダジャケット水またはボイラ蒸気
29 水グリコール加熱器
30 水グリコール循環ポンプ
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施例1
【0028】
船用液体アンモニア燃料供給及び燃料リサイクルシステムは、アンモニア燃料エンジン11と、液体アンモニア供給システムと、液体アンモニアリサイクルシステムと、液体アンモニア窒素パージ通気システムと、水グリコール加熱システムとを含む。
【0029】
前記液体アンモニア供給システムは液体アンモニア貯蔵タンク1を含み、前記液体アンモニア貯蔵タンク1内には液体アンモニア低圧ポンプ2が設置され、前記液体アンモニア低圧ポンプ2が液体アンモニアをポンピングし、第1液体アンモニア供給管路3を通して液体アンモニアサージタンク4まで送り出しており、液体アンモニアサージタンク4内の液体アンモニアは、さらに液体アンモニア高圧ポンプ5、液体アンモニア加熱器6、液体アンモニアフィルタ7、ガス主弁8、供給弁ユニット9、第2液体アンモニア供給管路10を通ってアンモニア燃料エンジン11まで搬送され、液体アンモニア貯蔵タンク1と液体アンモニアサージタンク4は第1液体アンモニア供給管路3によって接続され、供給弁ユニット9とアンモニア燃料エンジン11の液体アンモニア入口との間は第2液体アンモニア供給管路によって接続されている。
【0030】
前記液体アンモニアリサイクルシステムは、還流弁ユニット12と、液体アンモニア収集タンク13と、第1還流管路14と、第2還流管路15とを含み、前記還流弁ユニット12とアンモニア燃料エンジンの液体アンモニア還流出口との間は第1還流管路14によって接続されており、第2還流管路15の片端は還流弁ユニット12と接続され、他端は第1弁16及び第2弁17によって液体アンモニア収集タンク13及び液体アンモニアサージタンク4にそれぞれ接続されており、液体アンモニア収集タンク13及び液体アンモニアサージタンク14は第3液体アンモニア還流管路18によって第3弁19と接続されている。
【0031】
前記液体アンモニア窒素パージ通気システムは、気液分離装置20と、通気マスト21と、第1パージ通気管路22と、第2パージ通気管路23とを含み、還流弁ユニット12には外部パージ通気ポートが設置され、第1パージ通気管路22及び第4弁24によって気液分離装置20及び通気マスト21に接続されており、液体アンモニア収集タンク13の頂部は第5弁25及び第2パージ通気管路23によって気液分離装置20及び通気マスト21に接続されており、窒素パージポート26は第2液体アンモニア供給管路10と接続されている。
【0032】
水グリコール加熱システムは、水グリコール加熱器29と、水グリコール循環ポンプ30とを含み、メインエンジンシリンダジャケット水またはボイラ蒸気28が放出する熱量は、水グリコール加熱器29、水グリコール循環ポンプ30を経由して、水グリコール熱交換媒体によって前記液体アンモニア加熱器6に提供される。
【0033】
液体アンモニアサージタンク4には液位計27が設置されており、液位の変化をリアルタイムで監視、制御している。
【0034】
前記液体アンモニア収集タンク13には液位計27が設置されており、液体アンモニア収集タンク17内の液位が設定の高さに到達すると、第3弁19が開き、収集された液体アンモニアが第3液体アンモニア還流管路18を通って液体アンモニアサージタンク4内に還流する。
【0035】
船用液体アンモニア燃料供給及び燃料リサイクルシステムの操作は以下の通りである。
【0036】
システムの運転前の準備
【0037】
この時、ガス主弁8、供給弁ユニット9及び還流弁ユニット12、液体アンモニア低圧ポンプ2、液体アンモニア高圧ポンプ5、水グリコール循環ポンプ30はいずれもオフ状態にあり、第4弁24はオン状態にある。システムを起動する前に、事前に窒素パージポート26から窒素を吹き込み、第2液体アンモニア供給管路10、第1液体アンモニア還流管路14をパージし、第1パージ通気管路22、気液分離装置20を経て、再び通気マスト21まで通気し、気液分離装置において、液体アンモニア、アンモニアガス、窒素及び油分などの不純物の分離を実現して、気体だけが通気マスト21から大気に送り込まれ、または、気液分離装置20が排出する気体中に含まれるアンモニアガスが捕捉、吸収された後、該管路がパージ要求に到達するまで、残りの気体が通気マスト21から大気に送り込まれることを保証している。事前に水グリコール循環ポンプ30を起動することで、液体アンモニア加熱器内の水グリコール側の循環流通を実現している。
【0038】
システムの運転開始
【0039】
窒素パージをオフにし、第4バルブ24を閉めると、システムが正式に運転を開始する。
【0040】
液体アンモニア低圧ポンプ2を起動し、液体アンモニアサージタンク4内の液位を設定目標に到達させ、液体アンモニア高圧ポンプ5及びガス主弁8を起動する。供給弁ユニット9、還流弁ユニット12を開き、第1弁16、第3弁19、第5弁25を開く。
【0041】
この時、液体アンモニア貯蔵タンク1内の液体アンモニアは低圧ポンプ2で加圧され、第1液体アンモニア供給管路3から液体アンモニアサージタンク4に搬送され、液体アンモニア高圧ポンプ5で70barまで二次加圧され、液体アンモニア加熱器6で45±10°Cの温度範囲まで加熱され、かつ液体アンモニアフィルタ7で濾過された後、ガス主弁8、供給弁ユニット9及び第2液体アンモニア供給管路10を経てアンモニア燃料エンジン11に供給される。
【0042】
液体アンモニア燃料が管路に充満するにつれて、第2液体アンモニア供給管路10及び第1還流管路14内の窒素が第2液体アンモニア還流管路15及び第1弁16を経て液体アンモニア収集タンク13に送り出され、かつ第5弁25を経て気液分離装置20に排出され、通気マスト21から大気へと排出される。還流した液体アンモニアは、第3弁19を経て液体アンモニアサージタンク4に排出され、貯蔵される。この時、第5弁25の開度を制御し、液体アンモニア収集タンク13内の圧力を液体アンモニアサージタンク4内の圧力より大きくすることで、液体アンモニアが液体アンモニアサージタンク4にスムーズに還流することを保証している。
【0043】
システムの正常な運転
【0044】
第1弁16、第3弁19、第4弁24及び第5弁25が閉まり、第2弁17が開くと、アンモニア燃料エンジンから還流する液体アンモニア燃料が、直接第2弁17を経由して液体アンモニアサージタンク4に還流し、集められる。
【0045】
システムの正常な運転停止
【0046】
システムを正常に操作して運転を停止させると、ガス主弁8及び供給弁ユニット9が閉まって燃料供給を遮断するが、還流弁ユニット12は開いたままである。システムが運転を停止すると、ガス主弁が自動的に遮断され、供給処理設備(液体アンモニア高圧ポンプ5及び液体アンモニア加熱器6)と供給弁ユニット9、還流弁ユニット12及びアンモニア燃料エンジン11の自動隔離を実現する。
【0047】
第2弁17、第3弁19、第4弁24が閉まり、第1弁16、第5弁25が開く。第2液体アンモニア供給管路10と第1還流管路14、第2還流管路15の一部の液体アンモニア燃料が液体アンモニア収集タンク13内に還流し、管路内を減圧する。この時、窒素パージポート26を通して窒素を吹き込み、第2液体アンモニア供給管路10、第1液体アンモニア還流管路14、第2還流管路15内に残留している液体アンモニアを液体アンモニア収集タンク13までパージすると、液体アンモニア収集タンク13内の窒素ガスが第5弁25及び第2パージ通気管路23を通って気液分離装置20及び通気マスト21に進入する。気液分離装置においては、液体アンモニア、アンモニアガス、窒素及び油分などの不純物の分離を実現して、気体だけが通気マスト21から大気に送り込まれ、または、気液分離装置20が排出する気体中に含まれるアンモニアガスが捕捉、吸収された後、残った気体が通気マスト21から大気に送り込まれることを保証する。
【0048】
液体アンモニア収集タンク13内の液位計が、液体アンモニア収集タンク13内の液位が設定の高さに到達したことを検出すると、第3弁19が開き、収集された液体アンモニアが第3液体アンモニア還流管路18を通って液体アンモニアサージタンク13内に還流する。
【0049】
第2液体アンモニア供給管路10、第1液体アンモニア還流管路14内に液体アンモニア燃料がほぼ含まれていないことが検出されると、第5弁25が閉まり、還流弁ユニット12が閉まり、第1液体アンモニア還流管路14と第1液体アンモニア還流管路15の接続が遮断される。この時、第1パージ通気管路22上の第4弁24が開き、第2液体アンモニア供給管路10及び第1液体アンモニア還流管路14内に少量残留しているアンモニアガスが、第1通気パージ管路22を通って気液分離装置20までパージされ、通気マスト21から排出される。気液分離装置においては、液体アンモニア、アンモニアガス、窒素及び油分などの不純物の分離を実現して、気体だけが通気マスト21から大気に送り込まれ、または、気液分離装置20が排出する気体中に含まれるアンモニアガスが捕捉、吸収された後、残った気体が通気マスト21から大気に送り込まれることを保証している。
【0050】
システムの運転の緊急停止
【0051】
アンモニア燃料の漏出、火災、設備の故障など緊急モードが発生した場合、システムは運転を緊急停止するが、その際、安全を保証するために、供給及び還流管路内の液体アンモニアには燃料還流操作は行われない。ガス主弁8、供給弁ユニット9、還流弁ユニット12が直ちに閉まり、第2弁17、第3弁19、第5弁25が閉まって、第1弁16、第1パージ通気管路22上の第4弁24が開く。第2液体アンモニア還流管路15内に蓄積している一部の液体アンモニアは、第1弁16を通って液体アンモニア収集タンク13に還流する。第2液体アンモニア供給管路10及び第1液体アンモニア還流管路14内の液体アンモニアは、第4弁24から第1パージ通気管路22を通って気液分離装置20まで還流し、通気マスト21を通ることで緊急排出を実現しており、この段階の管路内の液体圧力が解放された後、窒素パージポート26から窒素を充填し、第2液体アンモニア供給管路10及び第1液体アンモニア還流管路14のパージを行い、残存している液体アンモニア及びアンモニアガスを第1パージ通気管路22から気液分離装置20までパージし、通気マスト21から排出する。気液分離装置においては、液体アンモニア、アンモニアガス、窒素及び油分などの不純物の分離を実現して、気体だけが通気マスト21から大気に送り込まれ、または、気液分離装置20が排出する気体中に含まれるアンモニアガスが捕捉、吸収された後、残った気体が通気マスト21から大気に送り込まれることを保証している。
【0052】
液体アンモニア収集タンク13内の液位計が、液体アンモニア収集タンク内の液位が設定の高さに到達したことを検出すると、第3弁19が開き、収集された液体アンモニアが第3液体アンモニア還流管路18を通って液体アンモニアサージタンク13内に還流する。