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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】自動車用内装トリム取付けブラケット
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
B60R13/02 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023508359
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2021012785
(87)【国際公開番号】W WO2022201479
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000124454
【氏名又は名称】河西工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】藤井 将志
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-036878(JP,A)
【文献】特開2010-241306(JP,A)
【文献】特開2005-170114(JP,A)
【文献】特開2000-177517(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102004057400(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要形状に成形された自動車用内装トリムを自動車の車体パネルに取り付ける手段として用いられる自動車用内装トリム取付けブラケットであって、
前記取付けブラケットは、そのブラケット機能部として、少なくとも、前記自動車用内装トリムに接合される接合部と、前記車体パネルの取付け穴に嵌合するクリップが配置されるクリップ配置部と、前記車体パネルに当接させる当接部と、を備えること、および、これらのブラケット機能部を繋ぐ橋渡し部を備えること、並びに、前記ブラケット機能部および前記橋渡し部を残し、これら以外の他の部分が所定形状の穴として開口した構造になっていること
を特徴とする自動車用内装トリム取付けブラケット。
【請求項2】
前記自動車用内装トリムが前記取付けブラケットより曲げ剛性の低いソフトトリムとして構成されていること
を特徴とする請求項1に記載の自動車用内装トリム取付けブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所要形状に成形された自動車用内装トリムを自動車の車体パネルに取り付ける手段として用いられる自動車用内装トリム取付けブラケットに関し、特に、自動車用内装トリムに対してトリム取付けブラケットを接合・固定した際に、そのトリム取付けブラケットの固定不良の低減や固定位置精度の向上を図るのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車体パネルには、その車内面側に、所要形状に成形された自動車用内装トリムが取付けられている(特許文献1の図1を参照)。この種の自動車用内装トリムのうち、例えば自動車のトランクルームでは、いわゆるソフトトリムと言われ、薄くて曲げ剛性が低い素材で構成された自動車用内装トリムが採用されている。
【0003】
前記のようなソフトトリムからなる自動車用内装トリム(以下「自動車用内装ソフトトリムT」という)を自動車の車体パネルに取付ける場合には、図3に示されたトリム取付けブラケット(以下「従来のトリム取付けブラケット100」という)が使用される。
【0004】
図3は従来のトリム取付けブラケットの裏面図、図4は従来のトリム取付けブラケットを自動車用内装トリムに接合固定した状態の説明図である。
【0005】
図3を参照すると、従来のトリム取付けブラケット100は、ソフトトリムに比べて曲げ剛性が高く、ソフトトリムにない機能構成、具体的には、車体パネルの取付け穴に嵌合するクリップCを配置するためのクリップ配置部4等を有している。
【0006】
そして、自動車用内装ソフトトリムTを車体パネルに取付ける際は、図4に示したように、ホットメルト接着剤または溶着などにより、自動車用内装ソフトトリムTに対して従来のトリム取付けブラケット100を予め固定しておく。そして、従来のトリム取付けブラケット100のクリップ配置部4に装着されているクリップCを図示しない車体パネルの取付け穴に嵌合させることにより、車体パネルに対する自動車用内装ソフトトリムTの取付け作業は完了する。
【0007】
しかし、自動車用内装ソフトトリムTはその広い範囲で湾曲した形状になっており、その湾曲に対応して従来のトリム取付けブラケット100も広く湾曲した形状になっていること、および、そのように広く湾曲した従来のトリム取付けブラケット100や自動車用内装ソフトトリムTは変形しやすいため、従来のトリム取付けブラケット100と自動車用内装ソフトトリムTの湾曲面どうしを精度よく接合・固定することは困難である。
【0008】
特に、従来のトリム取付けブラケット100は、樹脂で成形され、その成形過程において面収縮による反り変形も生じることから、接合された従来のトリム取付けブラケット100と自動車用内装ソフトトリムTとの間に図5のような不要な隙間Gが生じる等、自動車用内装トリムに対するトリム取付けブラケットの固定不良が発生しやすい等の問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】2007-223420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、自動車用内装トリムに対してトリム取付けブラケットを接合・固定した際に、そのトリム取付けブラケットの固定不良の低減や固定位置精度の向上を図るのに好適な、自動車用内装トリム取付けブラケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、所要形状に成形された自動車用内装トリムを自動車の車体パネルに取り付ける手段として用いられる自動車用内装トリム取付けブラケットであって、前記取付けブラケットは、そのブラケット機能部として、少なくとも、前記自動車用内装トリムに接合される接合部と、前記車体パネルの取付け穴に嵌合するクリップが配置されるクリップ配置部と、前記車体パネルに当接させる当接部と、を備えること、および、これらのブラケット機能部を繋ぐ橋渡し部を備えること、並びに、前記ブラケット機能部および前記橋渡し部を残し、これら以外の他の部分が所定形状の穴として開口した構造になっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、自動車用内装トリム取付けブラケットの具体的な構成として、前述の通り取付けブラケットは、そのブラケット機能部および橋渡し部を残し、これら以外の他の部分が所定形状の穴として開口した構造を採用した。このため、(1)トリム取付けブラケットとして必要な寸法(大きさ)と機能部を保持しつつ、トリム取付けブラケット全体の表面積(開口の表面開口面積も含む)の中で樹脂の占有する表面積割合が減ること、(2)機能部を除くトリム取付けブラケット全体の剛性が比較的低くなることでトリム取付けブラケット自身がフレキシブルになって自動車用内装トリムの形状に追従しやすくなること、および(3)トリム取付けブラケットを溶融樹脂で成形した時の冷却固化によるトリム取付けブラケットの面収縮と、これによるトリム取付けブラケットの全体的あるいは部分的な反りが効果的に少なくなることから、自動車用内装トリムに対する取付けブラケット固定不良の防止、および、取付けブラケット固定位置精度の向上を図るのに好適な、自動車用内装トリム取付けブラケットを提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を適用した自動車用内装トリム取付けブラケットの裏面図。
図2図1の自動車用内装トリム取付けブラケットを自動車用内装トリムに接合固定した状態の説明図。
図3】従来のトリム取付けブラケットの裏面図。
図4】従来のトリム取付けブラケットを自動車用内装トリムに接合固定した状態の説明図。
図5図4中のA矢視断面図。
図6】従来のトリム取付けブラケットにおける面収縮方向の説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明を適用した自動車用内装トリム取付けブラケットの裏面図、図2図1の自動車用内装トリム取付けブラケットを自動車用内装トリムに接合固定した状態の説明図である。
【0016】
《用途説明》
図1および図2を参照すると、図1の自動車用内装トリム取付けブラケット1(以下「トリム取付けブラケット1」という)は、図2のように所要形状に成形された自動車用内装トリムTを自動車の車体パネル(図示省略)に取り付ける手段として用いられるものである。なお、後述のいわゆるソフトトリムとして構成された自動車用内装トリムTは、例えば自動車トランクルームの車体パネルに取付け使用されるが、この取付け使用例に限定されることはない。
【0017】
《素材説明》
自動車用内装トリムTは、曲げ剛性が低い、いわゆるソフトトリムと言われるもので、樹脂と繊維を混ぜ合わせた素材で構成される。このため、車体パネルへの取付けに必要なクリップ2(図2参照)を直接装着できる機能は自動車用内装トリムTにはない。かかる機能は後述の通りトリム取付けブラケット1に設けられる。一方、トリム取付けブラケット1は、PP樹脂あるいはABS樹脂等で構成され、ソフトトリムに比べてその曲げ剛性は非常に高い。
【0018】
ソフトトリムの一例として、7:3の割合でPP樹脂とPET樹脂を配合したもの、あるいは、その配合割合を6:4や8:2としたものが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0019】
《主要機能の概要》
図1のトリム取付けブラケット1は、その主要な機能を備える部分(以下「ブラケット機能部」という)として、自動車用内装トリムTに接合される接合部3と、図示しない車体パネルの取付け穴に嵌合するクリップCが配置されるクリップ配置部4と、車体パネルに当接させる当接部5と、を備えるほか、さらに、これらのブラケット機能部(3、4、5)を繋ぐ橋渡し部6を備えている。
【0020】
また、図1に示したように、図1のトリム取付けブラケット1では、前記のようなブラケット機能部(3、4、5)および橋渡し部6を残し、これら以外の他の部分が所定形状の穴7として開口した構造になっている。
【0021】
《主要機能の詳細》
接合部3:
接合部3の具体的な構成例として、図1のトリム取付けブラケット1では、これを超音波で自動車用内装トリムTに溶着させる接合方式を採用したため、その接合部3は、トリム取付けブラケット1と自動車用内装トリムTとの溶着による接合部3として構成されるが、これ以外の他の接合方式、例えばホットメルト接着剤などの接着剤で、自動車用内装トリムTとトリム取付けブラケット1とを接着する接合方式を採用してもよい。なお、図1では、接合部3を破線で示しているが、この破線は溶着用の超音波コーンが当たる範囲を示したものであり、その範囲の内側全体が超音波で溶着されていることを意味するものではない。
【0022】
クリップ配置部4:
クリップ配置部4の具体的な構造例として、図1のトリム取付けブラケット1では、クリップCを装着固定するためのクリップベース41を橋渡し部6に一体成形し、クリップベース41に対して周知のクリップCを嵌め込み装着して配置する構成を採用したが、これに限定されることはない。なお、クリップCやクリップベース41については例えば特許文献1でも開示されている通り公知の技術事項であるため、その詳細説明は省略する。
【0023】
当接部5:
当接部5は、トリム取付けブラケット1を介して車体パネルに自動車用内装トリムTを取付けた状態において、その自動車用内装トリムTのいわゆるベコツキ現象を防止する対策手段として機能するものである。
【0024】
この種の当接部5の具体的な構造例として、図1のトリム取付けブラケット1では、突起形状の当てボス51を橋渡し部6に一体成形し、当てボス51が図示しない車体パネルの当て面に当接する構造を採用した。
【0025】
前記のような当てボス51を配置する位置については、必要に応じて適宜変更することができる。図1のトリム取付けブラケット1では、これを車体パネルに取り付けたり車体パネルから取り外したりする時のクリップCの着脱作業において、2つのクリップC、C間やクリップC周辺部に比較的大きな負荷ないしは荷重が作用するため、少なくとも2つのクリップ配置部4、4間に当てボス51を配置することによって、クリップC、C間の剛性を高めている。
【0026】
この種の当接部5の他の実施形態として、前述の当てボス51に代えて、図示は省略するが、リブ形状の当てリブを採用してもよいし、また、当てボスや当てリブ以外の突起を当接部5として採用してもよい。
【0027】
前記のような当てボス51、当てリブ、突起等からなる当接部5の数やその形状は、必要に応じて適宜変更することができ、図1に示された例に限定されることはない。
【0028】
橋渡し部6:
図1のトリム取付けブラケット1は、金型内のキャビティに溶融樹脂を流し込んで製造する方式(以下「金型成形」という)で作製される。したがって、図1のトリム取付けブラケット1が備えるブラケット機能部(3、4、5)も橋渡し部6も全部樹脂で成形される。
【0029】
前記金型成形において、橋渡し部6の寸法は、金型内での樹脂の流動性、および、金型内に溶融樹脂を供給するゲートの位置や数などの成形条件を考慮して算出される。図1の取付けブラケット1の場合、その橋渡し部6の幅Wの最小値は15mm以上となるように設定している。15mm以下の場合は、金型キャビティ内で樹脂の流動性に支障が生じることで、キャビティ全体に満遍なく溶融樹脂が充填されないことによる不良品が発生し得るためである。なお、15mmはあくまでも一例ないしは目安であり、前述の成形条件に応じて適宜変更される。
【0030】
この一方、図1のトリム取付けブラケット1において、その橋渡し部6の幅を必要以上に大きく設定すると、橋渡し部6の表面積が増える分、開口(具体的には、所定形状の穴7)の面積が減少し、その穴7(開口)による後述の作用効果(面収縮と反りの低減)が打ち消されてしまう。このため、橋渡し部6の幅の最大値は、かかる作用効果を十分に発揮し得る範囲で適宜決定することが好ましい。
【0031】
所定形状の穴7(開口):
図1のトリム取付けブラケット1では、前記のような開口(具体的には、所定形状の穴7)構造、すなわち、ブラケット機能部(3、4、5)および橋渡し部6以外の他の部分が所定形状の穴7として開口した構造を備えたことにより、(1)トリム取付けブラケット1として必要な寸法(大きさ)とブラケット機能部(3、4、5)を保持しつつ、トリム取付けブラケット1全体の表面積(開口7の表面開口面積も含む)の中で樹脂の占有する表面積割合が減る。また、ブラケット機能部(3、4、5)を除くトリム取付けブラケット1全体の剛性が比較的低くなることでトリム取付けブラケット1自身がフレキシブルになって自動車用内装トリムTの形状に追従しやすくなる。さらに、トリム取付けブラケット1を溶融樹脂で成形した時の冷却固化によるトリム取付けブラケット1の面収縮と、これによるトリム取付けブラケット1の全体的あるいは部分的な反りが効果的に減少する。
【0032】
図6は、従来のトリム取付けブラケットにおける面収縮方向の説明図である。
【0033】
同図を参照すると、従来のトリム取付けブラケット100は、その片側範囲が長手方向に沿って湾曲しかつ断面がL字状(以下「長手方向湾曲・断面L字形状」という)になっている。この点は、図1のトリム取付けブラケット1でも同様である。
【0034】
また、図6中の矢印は、従来のトリム取付けブラケット100における面収縮の方向を示している。この面収縮の方向性は、図1のトリム取付けブラケット1でも同様である。
【0035】
ところで、前記のような長手方向湾曲・断面L字形状を備えた図1のトリム取付けブラケット1の場合、特に、その長手方向湾曲・断面L字形状の範囲、すなわちトリム取付けブラケット1の片側範囲において前述の面収縮と反りが発生しやすいこと、この点を本発明者等は解析と実験で確認している。
【0036】
そこで、所定形状の穴7(開口)の具体的な配置構成例として、図1のトリム取付けブラケット1では、特にその片側範囲(長手方向湾曲・断面L字形状の範囲)において、その湾曲ラインCLに沿って複数の穴7(開口)が並ぶように配置している。そのように並んだ穴7(開口)によって図1のトリム取付けブラケット1における面収縮が分断されるので、従来のトリム取付けブラケット100に比べて、図1のトリム取付けブラケット1の方が、面収縮の割合は減少する。また、複数の穴7によってトリム取付けブラケット1の軽量化や材料コストの低減も図れる。
【0037】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 自動車用内装トリム取付けブラケット(トリム取付けブラケット)
3 接合部(ブラケット機能部)
4 クリップ配置部(ブラケット機能部)
41 クリップベース
5 当接部(ブラケット機能部)
51 当てボス
6 橋渡し部
7 穴(開口)
C クリップ
T 自動車用内装トリム
図1
図2
図3
図4
図5
図6