IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サン ケミカル コーポレイションの特許一覧

特許7463623二酸化チタン不含のタバコチッピングインク
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】二酸化チタン不含のタバコチッピングインク
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/06 20060101AFI20240401BHJP
   C09D 11/02 20140101ALI20240401BHJP
   C09D 125/04 20060101ALI20240401BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B41M3/06 Z
C09D11/02
C09D125/04
C09D133/04
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023528312
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 US2021058538
(87)【国際公開番号】W WO2022103716
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/112,736
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507385165
【氏名又は名称】サン ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダナ・モー
(72)【発明者】
【氏名】ヤロル・オソリオ
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109651872(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111454611(CN,A)
【文献】特開2020-007396(JP,A)
【文献】特開2015-083684(JP,A)
【文献】特開2005-320381(JP,A)
【文献】特開昭63-254176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 3/06
C09D 11/00
C09D 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タバコチッピング紙上に印刷する方法であって、
前記方法が、前記タバコチッピング紙上に、インク又はコーティング組成物を印刷することを含み、
前記インク又はコーティング組成物が、
a)前記インク又はコーティング組成物の総重量に基づいて3~35重量%の中空ポリマー微小球であって、
前記中空ポリマー微小球が、0.2~1.5ミクロンの外径を有し、
前記中空ポリマー微小球が、その空隙を取り囲む1種以上のポリマーを含み、
前記ポリマーのうちの1種以上が、アクリレートモノマー単位、スチレンモノマー単位、又は、アクリレートモノマー単位及びスチレンモノマー単位の両方を含む、中空ポリマー微小球、
b)前記インク又はコーティング組成物の総重量に基づいて2~30重量%の1種以上の樹脂、並びに
c)1種以上の溶媒、
を含み、かつ、
前記インク又はコーティング組成物が、二酸化チタンを含有せず、前記インク又はコーティング組成物の総重量に基づいて2重量%未満の水を含有する、方法。
【請求項2】
前記中空ポリマー微小球の空隙が、スチレン-アクリレートコポリマーを含む1種以上のポリマーによって取り囲まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中空ポリマー微小球が、0.1~1.2ミクロンの内径を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記インク又はコーティング組成物が、1種以上の着色剤を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1種の着色剤が、染料である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記染料が、蛍光染料、アゾ染料、アントラキノン染料、キサンテン染料、アジン染料、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種の着色剤が、有機顔料、無機顔料、又はそれらの組み合わせを含み、この顔料が、前記インク又はコーティング組成物の総重量に基づいて10~40重量%で前記インク又はコーティング組成物中に存在する、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記無機顔料が、酸化鉄、酸化クロム、フェロシアン化第二鉄アンモニウム、黒色酸化第二鉄、カーボンブラック顔料、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1種以上の樹脂が、ニトロセルロース、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、アクリル樹脂、ロジンエステル樹脂、炭化水素樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記インク又はコーティング組成物が、ニトロセルロースを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記1種以上の溶媒が、脂肪族炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、アルデヒド、アルコール、エーテル、エステル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記1種以上の溶媒が、エタノール、酢酸エチル、イソプロパノール、酢酸イソプロピル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記インク又はコーティング組成物が、1種以上の添加剤及び/又は増量剤顔料を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記インク又はコーティング組成物を、輪転グラビア又はフレキソグラフ印刷によって印刷する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を使用して製造される、印刷されたタバコチッピング紙。
【請求項16】
インク又はコーティング組成物を含む、タバコチッピング紙であって、
前記インク又はコーティング組成物が、
a)0.2~1.5ミクロンの外径を有する中空ポリマー微小球であって、
前記中空ポリマー微小球が、空隙を取り囲む1種以上のポリマーを含み、
前記ポリマーのうちの1種以上が、アクリレートモノマー単位、スチレンモノマー単位、又は、アクリレートモノマー単位及びスチレンモノマー単位の両方を含む、中空ポリマー微小球、
b)1種以上の樹脂、並びに
c)1種以上の着色剤
を含み、かつ、
前記インク又はコーティング組成物が、二酸化チタンを含有しない、タバコチッピング紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月12日に出願された米国仮特許出願第63/112,736号の優先権を主張するものであり、それによって、これは、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、不透明な二酸化チタン不含の画像又はコーティングを基材上に印刷するための方法を提供する。好ましい基材は、タバコチッピング紙である。
【背景技術】
【0003】
現在製造されているタバコのほとんどは、タバコの包装紙に包装されたタバコのカラムを含み、片端においてフィルタに取り付けられている。タバコのカラムは、チッピング紙と呼ばれる特製の紙によってフィルタに結合されている。いくつかの例外があるが、従来的なフィルタは、一般に、圧縮された紙片又はバイオベースセルロース繊維である酢酸セルローストウのいずれかから形成される。いくつかのフィルタは、活性炭も含む。
【0004】
フィルタは、タバコの煙に含有されている可能性のある微粒子状物質及び他の成分を濾過で除去するためにタバコに取り付けられている。フィルタは、タバコが吸われる際に空気とタバコの煙とをブレンドするためにも使用される。フィルタは、タバコの煙に対する空気の比率を慎重に制御された限界内に維持して、タバコが最初から最後まで喫煙されるときに一定の味を有することを確実にするように作製されている。この目標を達成するために、フィルタを取り囲むチッピング紙は、典型的には、タバコカラムに隣接する端部において穿孔されている。
【0005】
タバコフィルタは、包装フィルタ又は非包装フィルタのいずれかである。包装フィルタは、プラグ包装として公知の紙でフィルタ材料を包装することによって作製される。プラグ包装は、一定量の加熱されたホットメルト接着剤を用いて機械圧延される。接着剤がまだ熱い間に、フィルタ材料はプラグ包装に固定される。機械で穿孔されたもの又は非常に多孔質であり得るプラグ包装は、フィルタ材料をカラムに保持するのに十分な剛性を有しなければならない。上記のように、包装及び非包装フィルタは、チッピング紙によってタバコロッドに取り付けられている。チッピング紙は、水性接着剤によってタバコ紙及びフィルタの両方に接着されている。フィルタを作製する及びフィルタをタバコに取り付ける種々の方法は、米国特許第4,411,279号に開示されており、これは、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0006】
フィルタをタバコカラムに接続するのに使用されるチッピング紙は、多くの要件及び仕様を満たさなくてはならない正確に設計された高不透明度紙製品である。例えば、チッピング紙は、タバコが喫煙されたときに変色してはならず、口の中に入れられたときに溶解又は分解してはならず、タバコが喫煙されたときにフィルタの変色を覆わなければならず、タバコカラムとフィルタとの間の接合を隠さなければならない。チッピング紙は、印刷可能でなければならず、タバコの全体的な外観を改善する必要がある。
【0007】
チッピング紙は、重量によって分類される。典型的な範囲は、32~40g/mである。本出願に使用される紙は、36g/mである。チッピング紙は軽量であるが、これは、紙が高速製紙、印刷、及びタバコ作製機の最中に壊れないような十分な強度も有しなくてはならない。
チッピング紙はまた、その審美的な外観を失うことなく、かつ上記の特性のうちのいずれかを損なうことなく、接着剤でコーティングすることも可能であるべきである。チッピング紙は、一度紙にコーティングされた接着剤が紙を通って滲まないように設計されており、それによって、希釈空気の侵入が妨げられ、タバコの組み立ての最中に接触した機械部品上に接着剤材料の蓄積がもたらされ得る。更に、チッピング紙は、紙がフィルタ及びタバコカラムの両方に十分に結合するように、接着剤に受容性がなくてはならない。
【0008】
現在、ほとんどの高不透明度チッピング紙は、二酸化チタンを成分顔料として使用して作製されている。二酸化チタンは白色顔料であるが、これは、多くの場合、非白色着色剤も含有するインク中で不透明剤として使用される。例えば、コルクの見た目に似せるためにタバコのフィルタで使用されるチッピング紙に印刷されるよく知られた茶色のインクは、典型的には、黄色顔料、赤色顔料、黒色顔料、及び場合によって他の着色剤の組み合わせによって着色されたインクによって提供され、二酸化チタンと一緒になって不透明性を提供する。二酸化チタンは、典型的には、約30重量%~約50重量%の量で紙に添加される。二酸化チタンをチッピング紙に添加することは、高い不透明度及び十分な強度を有する紙を生み出すための効果的な方法であることが証明されている。二酸化チタンを含有するチッピング紙は、紙をフィルタに結合する接着剤との使用にも適している。
【0009】
しかしながら、The International Agency for Research on Cancer(IARC)は、二酸化チタンを、二酸化チタンの吸入に関連したラットの肺腫瘍の増加を示した研究に基づいて、「ヒトに発がん性がある可能性がある」と分類した。TiOの再分類に基づいて、タバコ製造業者は、消費者の口と接触する全てのインクからTiOを除去したいと考えている。好ましくは、交換用インクは、チッピング紙についての既存の色標準とマッチするであろう。
【0010】
Wheeler,et al.のEP2386609には、高い顔料体積を有する水性着色コーティング組成物が開示されており、この組成物は、不透明化顔料TiO及び任意選択的に中空ポリマー粒子(hollow polymeric particles)を含む。
【0011】
LoriaのUS4,880,465には、樹脂成分、中空微小球、好適な水ベース担体ビヒクル、及び任意選択的に染料を含む、インクジェット印刷での使用に好適な水性の非顔料着色不透明性インク組成物が開示されている。溶媒は、1~20%で担体中に存在し得る。中空微小球は、中央空隙領域を含み、約0.1~約0.5ミクロンの内径及び約0.4~約1ミクロンの外径を有する。中央空隙領域は、該微小球の壁を通って拡散することができる液体で充填されている。中空微小球は、これに入射する光を効果的に散乱し、不透明な画像を生成するように作用する。
【0012】
MeadのWO97/03137には、水性担体、ポリアミン、着色剤、及び酸性樹脂を含む、ガラス、金属、プラスチック、及びゴム表面上での印刷に有用な水ベースジェットインク組成物が開示されている。着色剤は、染料、顔料、又は中空ポリマー微小球を含む。中空ポリマー微小球は、インクに不透明性を提供する。中空微小球は、セルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレンと他のビニルモノマーとのコポリマー、ビニルポリマー、例えば、ホモポリマー又はコポリマー、例えば、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、及びスチレンとアクリロニトリル、アクリル酸などの他のビニルモノマーとのコポリマーを含む様々なポリマーから形成され得る。
【0013】
US4,880,465及びWO97/03137では、各々、水性エマルションとして市販されていたアクリル/スチレンコポリマー、例えば、Rohm and Haas Companyから入手可能なアクリル/スチレンコポリマーの中空微小球を37.5重量%含有する水性エマルションであるRopaque(登録商標)OP-62から作製された中空微小球が用いられた。
【0014】
先の参考文献は全て、水性微小球エマルションから調製された水性インクを提供する。いくつかの用途では、水性微小球エマルションから調製されたものを含む水性インクは望ましくない。例えば、タバコチッピング紙では、水性インクは、使用される水性接着剤と不利に相互作用し得る。
【0015】
Osorio MurilloのUS2021/0079237には、1種以上の結合剤、TiO顔料、ポリマー空隙中空球粒子、及び1種以上の有機溶媒を含む、白色の溶媒ベース高不透明度インク及びコーティングが開示されている。ポリマー中空球粒子は、好ましくは、スチレン-アクリレートコポリマーを含むポリマー樹脂からなり、約0.2ミクロン~約0.5ミクロンの範囲の外径を有する。中空粒子は、中実粒子よりも多くの光を散乱し、これらを含むインクは、TiOなどの低レベルの白色顔料が使用されている場合でも、高レベルの不透明度を達成する。インク組成物中での着色剤の使用も開示されていた。日焼け止めローションなどのパーソナルケア製品での使用のために開発された乾燥粉末微小球、例えば、DowのSunSpheres(登録商標)粉末をこれらの溶媒ベースインクの調製に使用して、不要な水からの複雑化を回避した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許第4,411,279号
【文献】EP2386609
【文献】US4,880,465
【文献】WO97/03137
【文献】US4,880,465
【文献】WO97/03137
【文献】US2021/0079237
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
チッピング紙中の二酸化チタンの代替物の必要性が存在する。好ましくは、これらの新しいインクの色標準は、現在のデルタEターゲットから逸脱しないであろう。現時点では、二酸化チタン含有インクで印刷されておらず、軽量で強力であり、かつチッピング紙の他の全ての要件、特に不透明度を満たすチッピング紙を提供する解決策はない。チッピング紙の調製に使用される二酸化チタン含有インクを、既存の色標準を満たすように容易に配合することができる非水性の不透明性チタン不含インクで置き換えることは、既存の技術によって現在満たされていない必要性である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
ある特定の中空ポリマー微小球は、不透明度を低下させること又は色に悪影響を及ぼすことなく、非水ベースインク系においてTiOの代わりになり得ることが見出された。また、インク中の中空ポリマー微小球の量は、元々使用されていたTiOの量とわずかに異なり得るが、これは、溶媒の量のわずかな差によって容易に補償されることが見出された。しかし、配合物にその他の変化を加えることなく、元々のインクに対して不透明度及びカラーマッチングにおける良好な結果を得ることができ、例えば、TiOインクからの同じ顔料の組み合わせは、中空ポリマー微小球とともに使用した場合に、許容可能な色を提供することができる。
【0019】
特定の態様では、本発明は、タバコチッピング紙上に印刷する方法であって、方法が、タバコチッピング紙上に、以下のものを含むインク又はコーティング組成物:
a)組成物の総重量に基づいて3~35重量%の中空ポリマー微小球であって、微小球が、0.2~1.5ミクロンの外径を有し、該微小球が、空隙を取り囲む1種以上のポリマーを含み、ポリマーのうちの1種以上が、アクリレートモノマー単位、スチレンモノマー単位、又はアクリレートモノマー単位及びスチレンモノマー単位の両方を含む、中空ポリマー微小球、
b)組成物の総重量に基づいて2~30重量%の1種以上の樹脂、並びに
c)1種以上の溶媒
を印刷することを含み、
d)インク又はコーティング組成物が、二酸化チタンを含有せず、組成物の総重量に基づいて2重量%未満の水を含有する、方法を提供する。
【0020】
本発明で使用されるインク又はコーティングは、基材に塗布されるときに高不透明度を提供する。多くの実施形態では、インクは、1種以上の染料及び/又は顔料も含む。
【0021】
本発明の二酸化チタン不含インクは、溶媒型であり、本質的に水不含であり、すなわち、存在する任意の水は、外来性の水による軽微な汚染の結果である。したがって、インクは、水を全く含有しないか、又は極めて少量で含有し、このことは、ある特定の実施形態において有利である。例えば、チッピング紙上に印刷するとき、水又は他の水性溶媒は、タバコカラム及びフィルタを取り囲む紙にチッピング紙を接着するために使用される水性接着剤と干渉し得る。更に、エタノール、イソプロパノール、又は酢酸エチルなどの低沸点溶媒は、水よりも速い乾燥時間を提供するであろう。
【0022】
本発明で有用な溶媒は、脂肪族炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、アルデヒド、アルコール、エーテル、エステル、及びそれらの組み合わせを含むが、多くの実施形態では、エタノール、酢酸エチル、イソプロパノール、酢酸イソプロピルなどの低沸点溶媒が好ましいであろう。
【0023】
本発明は、二酸化チタン不含の印刷された不透明な基材、例えばタバコチッピング紙を調製するための方法を提供する。
【0024】
多くの実施形態では、本発明のインクは、1種以上の着色剤、例えば、染料及び/又は顔料を含む。一実施形態では、本方法を使用して、優れた不透明度及びTiO含有インクを使用して現在得られるのと同じ色を有するタバコチッピング紙を提供することができることが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、中空ポリマー微小球を含む二酸化チタン不含の高不透明度溶媒ベースインク、及びインクを使用して二酸化チタン不含基材を調製する方法を提供する。多くの実施形態では、着色剤、例えば、染料及び/又は顔料もインクに含まれている。インクは、口と接触し、したがってTiOを避けなければならない基材、例えばタバコチッピング紙上での使用に好適である。
【0026】
特定の態様では、本発明は、二酸化チタン不含の印刷物を調製する方法であって、方法が、基材上に、以下のものを含む溶媒ベースチタン不含インク又はコーティング組成物:
a)組成物の総重量に基づいて3~35重量%の中空ポリマー微小球であって、微小球が、0.2~1.5ミクロンの外径を有し、該微小球が、空隙を取り囲む1種以上のポリマーを含み、ポリマーのうちの1種以上が、アクリレートモノマー単位、スチレンモノマー単位、又はアクリレートモノマー単位及びスチレンモノマー単位の両方を含む、中空ポリマー微小球、
b)組成物の総重量に基づいて2~30重量%の1種以上の樹脂、並びに
c)1種以上の溶媒
を印刷することを含み、
d)インク又はコーティング組成物が、二酸化チタンを含有せず、組成物の総重量に基づいて2重量%未満の水を含有する、方法を提供する。
【0027】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、例示的及び説明的なものに過ぎず、特許請求される任意の主題を限定するものではないことを理解されたい。
【0028】
見出しは、組織的な目的のためにのみ使用され、決して発明を限定することを意図するものではない。
【0029】
特に定義されない限り、本明細書で使用されている全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者に共通に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書の開示全体を通して言及される全ての特許、特許出願、公開出願、及び刊行物、ウェブサイト、並びに他の公開資料は、別段留意されない限り、任意の目的のために参照によりその全体が組み込まれる。本明細書に記載のものと同様又は同等の任意の方法及び材料が、本発明の実施又は試験で使用され得るが、好ましい方法が記載される。
【0030】
定義
本明細書では、単数の使用は、別段具体的に記述されない限り、複数を含む。本明細書で使用される場合、別段文脈が明確に示さない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は、同様に複数形を含むことが意図される。
【0031】
本明細書では、「又は」の使用は、別段記述されない限り、「及び/又は」を意味する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「含む(comprise)」及び/又は「含むこと(comprising)」という用語は、記述される特色、整数、ステップ、操作、要素、及び/又は構成成分の存在を指定するが、1つ以上の他の特色、整数、ステップ、操作、要素、構成成分、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除しない。更に、「含む(includes)」、「有すること(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」、「構成される(composed)」、「構成される(comprised)」という用語、又はそれらの変形が、詳細な説明又は特許請求の範囲のいずれかで使用される範囲まで、そのような用語が、「含むこと(comprising)」という用語と同様の様式で包含されることが意図される。
【0033】
「からなる(consist of)」、「からなる(consists of)」、又は「からなる(consisting of)」という用語が特許請求の範囲の本体部で使用される場合、「からなる(consist of)」、「からなる(consists of)」、及び/又は「からなる(consisting of)」で区切られている特許請求の範囲の用語は、「からなる(consist of)」、「からなる(consists of)」、及び/又は「からなる(consisting of)」の直後に列挙されている要素に限定され、その特定の特許請求の範囲の用語に関連する列挙されていない要素に対して閉鎖的である。「それらの組み合わせ」という用語は、「からなる(consist of)」、「からなる(consists of)」、及び/又は「からなる(consisting of)」の後に続く列挙されている要素の一覧に含まれる場合、列挙されている要素のうちの2つのみ又はそれよりも多くの組み合わせを意味する。
【0034】
本明細書で使用される場合、範囲及び量は、特定の値又は範囲について「約」として表され得る。「約」は、正確な量も含むことを意図する。したがって、「約5パーセント」は、「約5パーセント」及び同様に「5パーセント」を意味する。「約」は、意図された用途又は目的のための典型的な実験誤差内を意味する。
【0035】
数値範囲が列挙されている場合、これは、具体的に列挙されているか否かにかかわらず、その範囲内の全ての値及びその範囲内の全てのより狭い範囲を含むと理解されたい。
【0036】
本明細書で使用される場合、顔料着色されたインク又はコーティングの「不透明度」という用語は、基材の色又は色差を覆うその能力を指す。不透明度は、インクの表面を通過するか、又はこれから反射される光の量に依存する。より不透明な着色剤は、光を反射及び屈折させる傾向がより大きい。
【0037】
本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」、又は「アクリレート」という用語は、特に指定されていない限り、アクリレート及びメタクリレート化合物の両方、並びにアクリル酸及びメタクリル酸の両方を含む。
【0038】
本明細書で使用される場合、「結合剤」という用語は、着色剤又は顔料に結合するポリマー成分又は樹脂成分を意味する。結合剤は、1種のポリマー成分若しくは樹脂成分、又は1種よりも多くのポリマー成分若しくは樹脂成分の組み合わせであってもよい。結合剤は、顔料を基材に接着するのに、又は流体インクビヒクル内に均一に分散された顔料を維持するのに役立ち得る。組成物中の結合剤の量を指す場合、これは、列挙されている重量が組成物の総重量に基づいているときに、実際の結合剤樹脂及び任意の希釈剤又はそれが使用される形態で存在する他の添加剤(例えば、エタノール中の結合剤)を含む、使用される材料の重量を指す。結合剤の量が固体重量ベースで列挙されている場合、これは、他の成分(例えば、エタノール)が除去された後の実際の樹脂(固体)の量を指す。例えば、組成物は、組成物の総重量に基づいて、エタノール中で25%の固体溶液である30重量%の結合剤材料を含み得る。固体重量ベースで存在する実際の結合剤樹脂(固体)は、30(0.25)=7.5重量%である。
【0039】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、ホモポリマー及びコポリマーの両方を含む。
【0040】
本明細書で使用される場合、「ポリマー空隙球状粒子」、「中空球粒子」、及び「中空球」、「中空微小球」、及び「中空ポリマー微小球」という用語は互換的に使用され、外壁及び内壁を有し、内壁が空隙(すなわち、空気充填空間)を取り囲むポリマー球を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「溶媒ベースインク又はコーティング組成物」、「溶媒ベースコーティング組成物」、「溶媒ベースインク組成物」、「溶媒ベースコーティング」、「溶媒ベースインク」、「コーティング」、「コーティング組成物」、「インク」、「インク組成物」、「組成物」などの用語は、互換的に使用される。本明細書で使用される場合、コーティング及び関連用語はインクを含み、その逆もまた同様である。
【0042】
本明細書で使用される場合、「基材」は、インク又はコーティングが塗布され得る任意の表面又は物体を意味する。基材は、セルロースベース基材、紙、板紙、布地、皮革、テキスタイル、フェルト、コンクリート、石造物、石、プラスチック、プラスチックフィルム又はポリマーフィルム、ガラス、セラミック、金属、木材、複合材、それらの組み合わせなどを含むが、これらに限定されることはない。基材は、金属若しくは金属酸化物又は他の無機材料の1つ以上の層を有し得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、「物品(article)」又は「物品(articles)」という用語は、基材又は製造物を意味する。物品の例としては、セルロース系基材、紙、紙板、プラスチック、プラスチック又はポリマーフィルム、ガラス、セラミック、金属、複合材などの基材、並びに出版物(例えば、小冊子)、ラベル、及び包装材料(例えば、カードボードシート又は段ボール)、容器(例えば、ボトル、缶)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、金属化箔(例えば、ラミネートアルミニウム箔)、金属化ポリエステル、金属容器などの製造物が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0044】
本開示全体を通して、特に示されない限り、部及びパーセンテージは全て、重量(総重量に基づく重量%又は質量%)であり、温度は全て、℃である。
その組成物及び使用
【0045】
本発明は、中空ポリマー微小球を含む二酸化チタン不含の高不透明度溶媒ベースインク、及びインクを使用して二酸化チタン不含基材を調製する方法を提供する。多くの実施形態では、着色剤、例えば、染料及び顔料もインクに含まれている。インクは、口と接触し、したがって酸化チタンを避ける必要がある基材、例えばタバコチッピング紙上での使用に好適である。一実施形態では、本発明は、TiO不含であり、かつ水をほとんど又は全く含有しないインクを使用して基材上に印刷するための方法を提供する。
【0046】
特定の態様では、本発明は、二酸化チタン不含の印刷物を調製する方法であって、方法が、組成物の総重量に基づいて、基材上に、以下のものを含む溶媒ベース二酸化チタン不含インク又はコーティング組成物:
a)3~35重量%の中空ポリマー微小球であって、微小球が、0.2~1.5ミクロンの外径を有し、該微小球が、空隙を取り囲む1種以上のポリマーを含み、ポリマーのうちの1種以上が、アクリレートモノマー単位、スチレンモノマー単位、又はアクリレートモノマー単位及びスチレンモノマー単位の両方を含む、中空ポリマー微小球、
b)2~30重量%の1種以上の樹脂、並びに
c)40~90重量%の1種以上の溶媒、
を印刷することを含み、
d)インク又はコーティング組成物が、二酸化チタンを含有せず、組成物の総重量に基づいて2重量%未満の水を含有する、方法を提供する。
【0047】
様々な実施形態では、インク組成物は、組成物の総重量に基づいて、
a)3~35重量%、5~25重量%、又は5~15重量%の中空ポリマー微小球、
b)2~30重量%、2~20重量%、又は4~15重量%の1種以上の樹脂、
c)35~90重量%、40~80、又は45~65重量%の1種以上の溶媒、及び
d)2重量%未満、1.0重量%未満、0.5重量%未満、又は0.1重量%未満の水、を含む。
【0048】
好ましい実施形態では、インクは、水を含有しない。
【0049】
多くの実施形態では、インク組成物は、組成物の総重量に基づいて、3~4重量%、5~40重量%、又は8~35重量%の1種以上の顔料を更に含む。
【0050】
本発明の中空微小球は、セルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレンと他のビニルモノマーとのコポリマー、ビニルポリマー、例えば、ホモ又はコポリマー、例えば、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、及びスチレンとアクリロニトリル、アクリル酸などの他のビニルモノマーとのコポリマーを含む様々なポリマーから形成され得る。例えば、1種以上の1種以上のアクリルモノマー及び/又はスチレンモノマー繰り返し単位を含むポリマーで作製された中空微小球は、本発明において有用であり、例えば、1種以上のアクリルモノマー及び1種以上のスチレンモノマー繰り返し単位を含むコポリマーで作製された中空微小球を使用して優れた結果が得られた。
【0051】
水が組成物に入ることを防止するために、水性分散体として調製又は販売されている中空微小球の使用は推奨されない。商業的な中空ポリマー微小球は、粉末、例えば、DowのSunSpheres(登録商標)粉末として市販されており、本発明のためのインクの配合において問題なく使用されている。
【0052】
本発明の中空微小球に関して特に重要なのは、該微小球が実際には中空であることである。したがって、空隙又は微小空隙を含まない微小球は、好適ではない。これは、当インクが高不透明度を提供すると考えられるメカニズムのうちの1つが、中空微小球が中実粒子よりも多くの光を散乱することであることを前提として、特に当てはまる。更に、中空微小球は、コーティング全体にわたってより容易に分散し、溶媒の蒸発後に、乾燥したコーティング中により均一に分散したままであると仮定される。
【0053】
微小球のサイズにはいくつかの制約がある。微小球は、コーティングの印刷又は塗布の最中にインク中に合理的に分散された状態にとどまることができなければならない。これはまた、使用されるプリンタの機構に干渉するほど大きくてはならないが、これはなおも、光を効果的に散乱するのに十分な大きさであるべきである。本発明の中空微小球は、0.2~1.5ミクロンの外径、及び典型的には、0.1~1.2ミクロンの内径、すなわち微小球内の中空空間の直径を有する。
【0054】
様々な実施形態では、本発明のポリマー中空微小球は、
0.2~1.5ミクロン、0.4~1ミクロン。0.3~0.7ミクロン、0.2~0.5ミクロン、又は0.5~0.7ミクロンの外径、及び
0.1~1.2ミクロン、0.1~0.5ミクロン、0.2~0.6ミクロン、0.2~約0.4ミクロンの内径を有する。
【0055】
例えば、様々な実施形態では、本発明の中空ポリマー微小球は、0.2~1.5ミクロンの外径及び0.1~1.2ミクロンの内径、0.4~1.0ミクロンの外径及び0.1~0.5ミクロンの内径、0.3~0.7ミクロンの外径及び0.2~0.6ミクロンの内径、又は0.5~0.7ミクロンの外径及び0.2~0.4ミクロンの内径を有する。
【0056】
様々な樹脂、例えば、結合剤樹脂が、インク又はコーティング組成物での使用について公知であり、ほぼ全てが本発明で使用され得る。1種以上の樹脂が、結合剤成分として作用し、なかでも、印刷表面上でのインク配合物の接着を促進する目的を有する。しかしながら、選択される樹脂は、中空微小球と化学的に反応してはならず、少なくとも液体担体ビヒクル中に分散可能でなければならない。
【0057】
本発明において有用な樹脂は、典型的には、ニトロセルロース、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、アクリル樹脂、ロジンエステル樹脂、炭化水素樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、樹脂成分は、ニトロセルロース又はニトロセルロースと1種以上の他の樹脂との混合物を含む。
【0058】
インク配合物で使用される溶媒には特に制限はなく、エタノール、酢酸エチル、イソプロパノール、又は酢酸イソプロピルなどの溶媒を使用して優れた結果を得ることができる。他の溶媒は、脂肪族炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、アルデヒド、アルコール、エーテル、エステルなど、及びそれらのブレンドを含み得る。
【0059】
好適な着色剤は、有機又は無機の顔料及び染料を含み得るが、これらに限定されることはない。染料は、蛍光染料、アゾ染料、アントラキノン染料、キサンテン染料、アジン染料、それらの組み合わせなどを含むが、これらに限定されることはない。有機顔料は、例えば、顔料黄色番号12、13、14、17、74、83、114、126、127、174、188、顔料赤色番号2、22、23、48:1、48:2、52、52:1、53、57:1、112、122、166、170、184、202、266、269、顔料橙色番号5、16、34、36、顔料青色番号15、15:3、15:4、顔料紫色番号3、23、27、及び/又は顔料緑色番号7などの1つの顔料又は顔料の組み合わせであり得る。無機顔料は、以下の非限定的な顔料のうちの1つであり得る:酸化鉄、酸化クロム、フェロシアン化第二鉄アンモニウム、黒色酸化第二鉄、顔料黒色番号7、及び/又は顔料白色番号7。所望の色を達成する組み合わせと同様に、他の有機及び無機の顔料及び染料も用いられ得る。
【0060】
不透明度及び色強度を改善するために、本発明のインクは、粘土、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの通常の増量剤を含有し得る。多くの実施形態では、印刷インクに典型的に見られる添加剤、例えば、接着促進剤、シリコーン、光安定剤、光学増白剤、脱気添加剤、アンモニア、流動促進剤、消泡剤、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、分散剤、可塑剤、レオロジー添加剤など、ワックス、シリコーンなども存在し得る。
【0061】
本発明で使用されるインクは、任意の従来的な手法で組成物の成分を混合することによって調製される。
【0062】
任意の印刷方法、例えば、グラビア、フレキソグラフ、リソグラフ、インクジェットなどが本発明で使用され得る。一実施形態では、インクは、グラビアによって印刷されるであろう。
【0063】
本発明のインクの好ましい使用は、タバコ製造に使用されるチッピング紙を装飾するためのものであるが、インクは、なかでも、紙、板紙、及びプラスチックフィルムを含む他の最終使用用途及び基材(例えば、電子タバコ)にも使用され得る。
【実施例
【0064】
本発明を、本発明を例示する以下の非限定的な例によって更に説明するが、これらは、本発明の範囲を限定することを意図するものでも、またそのように解釈すべきでもない。
【0065】
色測定
以下の例では、以下の設定、フィルタなし、正規化された光源D50、及び2°の観察者角度を使用し、GretagMacbeth SpectroEyeを使用して、分光光度計色測定値を得た。データは、dE及びdE2000を計算するためにも使用されたX-rite色品質ソフトウェアを使用して分析した。
【0066】
デルタE(dE、dEabとしても知られている)及びデルタE2000(dE2000)は、2つの色の違いを報告するための工業的に認められた標準である。以下の例では、色の差を目視検査及び分光光度測定によって決定した。dE及びdE2000は、1976年にInternationale de l’Eclairage(CIE)によってCIELAB色空間で定義されたとおりのL値の分光光度計測定を使用して計算する。
=明度の値;
=赤色/緑色の値、正の値は赤色の量を示し、
負の値は緑色の量を示す;
=黄色/青色の値、正の値は黄色の量を示し、
負の値は青色の量を示す。
【0067】
これらの値は、三次元空間で色を定義する座標である。デルタEは、それらのL、a、及びb座標によって決定されるような2つの色の色点間の計算された差又は距離である。dEに到達するために、2つの色の各々についてのL、a、及びb値の差を決定する:
デルタL=(L1-L2)であり、明度及び暗度の差である(正の値がより明るく、負の値がより暗い)
デルタa=(a1-a2)であり、赤色及び緑色の差である(正の値がより赤色であり、負の値がより緑色である)
デルタb=(b1-b2)であり、黄色及び青色の差である(正の値がより黄色であり、負の値がより青色である)
dEは、[(デルタL+[(デルタa+[(デルタb]の平方根を計算することによって決定する。
dEは絶対値であり、したがって、常に正の数である。
【0068】
dE2000は、ヒトの目が他の色よりもある特定の色に敏感であることを考慮に入れようとする最新版のdE方程式である。DE2000は、様々な色空間、例えば、RGB、CMY、CMYK、HSL、HSB、XYZ、CIE-Lab、CIE-Lchからの値を使用することができる。
【0069】
例えば、計算は、上記のL値で始めることができる。これらの値は、L(明度)、C(彩度)、及びh(色相)の値を決定するために使用する。Lは、先と同じであり、C及びhは、a及びbの値から計算される。DE2000に到達するための計算は、無彩色の補正、明度の補正、彩度の補正、及び色相の補正などのいくつかの重み付け係数を組み込んでおり、例えば、dE2000は、色が明度範囲のどこに該当するかに応じてLの重み付けを変える。これらの計算は、典型的には、本実施例にあるように、市販のソフトウェアを使用して実行する。更なる詳細は、例えば、Gaurav Sharma,Wencheng Wu,Edul N.Dalal,“The CIEDE2000 Color-Difference Formula:Implementation Notes,Supplementary Test Data,and Mathematical Observations”,(登録商標)2004 Wiley Periodicals,Inc.,Col Res Appl,30,21-30,February 2005、Wiley InterScienceでオンライン出版(www.interscience.wiley.com)に見られる。本発明の二酸化チタン不含インクで印刷された本発明の例と、二酸化チタンを含有する市販のインクでの比較例との間の色差を、下記のように測定した。
【0070】
全てのTiOを除去し、これをスチレン/アクリル中空ポリマー微小球に置き換えて、色及び不透明度を比較することによって、酸化鉄顔料をベースとするいくつかのタバコインクを試験した。インクを、白色及び黄色のチッピング紙に、20秒#2ザーンカップの印刷粘度で#5マイヤーロッドを用いて塗布し、目視及び分光光度計読み取り値によって評価した。
【0071】
例1及び2:チッピングインク。
チッピングインクを以下に示されている配合に従って調製した。比較例1は、二酸化チタンを含有する従来的なチッピングインクである。本発明の例2は、二酸化チタンの代わりに中空ポリマー微小球を含有する本発明のインクである。
【表1】
【表2】
【0072】
比較例1及び本発明の例2は、白色のチッピング紙上に印刷され、許容可能な視覚的カラーマッチであることが見出された。許容可能なカラーマッチは、主観的なものであるが、標準と並べて印刷された場合、最小の色差を伴うカラーマッチであることが当技術分野では十分に理解されている。カラーマッチングの当業者であれば、目視比較によって許容可能なマッチを知っているであろう。
【0073】
カラーマッチが許容可能であることを更に実証するために、GretagMacbeth SpectroEye分光光度計を使用して分光光度計の読み取りを行い(フィルタなし、照明:D50、観察者角度:2°)、事前に決定された色標準に対するdE(すなわち、dEab)及びdE2000を、X-rite色品質ソフトウェアを使用して計算した。本明細書では、dE2000が報告されている。許容可能な視覚的マッチであることに加えて、2つの印刷は、好ましくは、事前に決定された色標準に対して、≦2.00、より好ましくは≦1.50、最も好ましくは≦1.00のdE又はdE2000値を有するであろう。白色のチッピング紙上での比較例1対本発明の例2の読み取り値は、以下のとおりであり、マッチが好ましい指針内に十分にあることを示している:
【表3】
【0074】
次いで、比較例1及び本発明の例2は、バフ(着色)チッピング紙上に印刷され、許容可能な視覚的カラーマッチであることが示された。カラーマッチが許容可能であることを更に実証するために、先の設定でGretagMacbeth SpectroEye分光光度計を使用して分光光度計の読み取りを行った。
【0075】
バフチッピング紙上での比較例1対本発明の例2の読み取り値は、以下のとおりであり、マッチが好ましい指針内に十分にあることを示している:
【表4】
【0076】
例3~6:追加的なチッピングインク。
良好な視覚的カラーマッチを呈した比較用インク及び本発明のインクのセットの更なる例は、以下のとおりである:
【表5】
【表6】
【0077】
比較例3及び本発明の例4は、白色のチッピング紙及びバフチッピング紙上に印刷され、許容可能な視覚的カラーマッチであることが示された。
【表7】
【表8】
【0078】
比較例5及び本発明の例6は、白色のチッピング紙及びバフチッピング紙上に印刷され、許容可能な視覚的カラーマッチであることが示された。
【0079】
本発明は、その好ましい実施形態を含めて詳細に記載されている。しかしながら、当業者は、本開示を考慮すると、本発明の範囲及び趣旨に該当する本発明の変更及び/又は改善を行うことができると理解されたい。