(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、モータ、および電動オイルポンプ
(51)【国際特許分類】
H02P 6/17 20160101AFI20240402BHJP
【FI】
H02P6/17
(21)【出願番号】P 2018542554
(86)(22)【出願日】2017-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2017034522
(87)【国際公開番号】W WO2018062096
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2016194686
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭
(72)【発明者】
【氏名】日比 裕一
(72)【発明者】
【氏名】白井 康弘
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】八木 敬太
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-207891(JP,A)
【文献】特開2007-229256(JP,A)
【文献】特開2013-172550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P6/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルを有するステータおよび永久磁石を有するロータを備えるモータを制御する制御装置であって、
前記ロータの回転位置を所定の回転角度ごとに検出して、検出された回転位置を示す位置信号を出力する検出部と、
前記検出部が出力した前記位置信号を受信し、前記位置信号を受信した時間間隔に基づいて前記ロータの実回転数を算出する第1の算出部と、
前記第1の算出部が前記位置信号を受信した第1の時点から前記第1の算出部が次の位置信号を実際に受信する第2の時点までの間において、所定の時間間隔に基づいて前記次の位置信号を受信したと仮定する仮の第3の時点を設定し、前記位置信号を受信した第1の時点と、前記仮の第3の時点と、の間の時間間隔に基づいて前記ロータの推定回転数を算出する第2の算出部と、
前記第1の算出部が前記位置信号を受信してから前記次の位置信号を実際に受信するまでの間に、前記第1の算出部が前記位置信号を受信した時と当該位置信号の前の位置信号を受信した時との間の時間間隔に基づいて算出した前記ロータの実回転数、前記第2の算出部が算出した前記推定回転数および、前記ロータの所定の回転数を比較する比較部と、
前記実回転数または前記推定回転数から前記コイルへ印加する電圧を調整する制御信号を算出し、算出した制御信号に基づいて前記コイルへ印加する電圧を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記比較部による比較の結果、前記推定回転数が前記所定の回転数以下となる時点で、前記推定回転数から算出された前記コイルへ印加する電圧を増加させる制御信号に基づいて前記コイルへ印加する電圧を増加させ、前記推定回転数が前記所定の回転数よりも高い時点において、前記実回転数が前記所定の回転数以下の場合には、前記実回転数から算出された前記コイルへ印加する電圧を増加させる制御信号に基づいて前記コイルへ印加する電圧を増加させ、前記推定回転数が前記所定の回転数よりも高い時点において、前記実回転数が前記所定の回転数よりも高い場合には、前記実回転数から算出された前記コイルへ印加する電圧を減少させる制御信号に基づいて前記コイルへ印加する電圧を減少させることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記実回転数が前記所定の回転数よりも高い場合において、前記比較部による比較の結果、前記推定回転数が前記実回転数以下となる時点で、前記推定回転数に基づいて前記コイルへ印加する電圧を増加させる制御信号を算出することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
コイルを有するステータおよび永久磁石を有するロータを備えるモータを制御する制御装置であって、
前記ロータの回転位置を所定の回転角度ごとに検出して、検出された回転位置を示す位置信号を出力する検出部と、
前記検出部が出力した前記位置信号を受信し、前記位置信号を受信した時間間隔に基づいて前記ロータの実回転数を算出する第1の算出部と、
前記第1の算出部が前記位置信号を受信した第1の時点から前記第1の算出部が次の位置信号を実際に受信する第2の時点までの間において、所定の時間間隔に基づいて前記次の位置信号を受信したと仮定する仮の第3の時点を設定し、前記位置信号を受信した第1の時点と、前記仮の第3の時点と、の間の時間間隔に基づいて前記ロータの推定回転数を算出する第2の算出部と、
前記第1の算出部が前記位置信号を受信してから前記次の位置信号を実際に受信するまでの間に、前記第1の算出部が前記位置信号を受信した時と当該位置信号の前の位置信号を受信した時との間の時間間隔に基づいて算出した前記ロータの実回転数、前記第2の算出部が算出した前記推定回転数、および前記ロータの所定の回転数を比較する比較部と、
前記実回転数または前記推定回転数から前記コイルへ印加する電圧を調整する制御信号を算出し、算出した制御信号に基づいて前記コイルへ印加する電圧を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記比較部による比較の結果、前記推定回転数が前記実回転数以下となる時点において、前記推定回転数が前記所定の回転数以下の場合に、前記推定回転数に基づいて前記コイルへ印加する電圧を増加させる制御信号を算出し、算出した前記制御信号に基づいて前記コイルへ印加する電圧を増加させ、前記比較部による比較の結果、前記推定回転数が前記実回転数以下となる時点において、前記推定回転数が前記所定の回転数よりも高い場合に、前記推定回転数に基づいて前記コイルへ印加する電圧を減少させる制御信号を算出し、算出した前記制御信号に基づいて前記コイルへ印加する電圧を減少させ、
前記推定回転数が前記実回転数よりも高い時点において、前記実回転数が前記所定の回転数以下の場合には、前記実回転数から算出された前記コイルへ印加する電圧を増加させる制御信号に基づいて前記コイルへ印加する電圧を増加させ、前記推定回転数が前記実回転数よりも高い時点において、前記実回転数が前記所定の回転数よりも高い場合には、前記実回転数から算出された前記コイルへ印加する電圧を減少させる制御信号に基づいて前記コイルへ印加する電圧を減少させることを特徴とする制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記実回転数または前記推定回転数および前記所定の回転数に基づいてPID制御方式で前記制御信号を算出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記制御信号に基づいて、パルス幅変調方式により前記ロータの駆動信号のデューティ比の調整を行って前記コイルへ印加する電圧を変化させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記検出部は、磁気式センサを有することを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記磁気式センサは、ホール素子であることを特徴とする請求項
6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記ホール素子を有する前記検出部が出力する前記位置信号は、複数の信号からなる一組の位置信号であることを特徴とする請求項
7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記磁気式センサは、磁気抵抗素子であることを特徴とする請求項
6に記載の制御装置。
【請求項10】
前記ロータが1回転する間に前記検出部が前記位置信号を出力する回数nは、前記磁気式センサの数に対して当該磁気式センサが検出する磁極数を乗じた値であることを特徴とする請求項
6から
9のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項11】
当該磁気式センサが検出する磁極数は、前記永久磁石の磁極数よりも大きいことを特徴とする請求項
10に記載の制御装置。
【請求項12】
前記回数nは、前記永久磁石の磁極数と前記ステータのティース数との最小公倍数以上であることを特徴とする請求項
10に記載の制御装置。
【請求項13】
前記検出部は、光学式エンコーダを有することを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項14】
前記検出部は、レゾルバを有することを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項15】
前記ロータが1回転する間に前記検出部が前記位置信号を出力する回数は、前記永久磁石の磁極数と前記ステータのティース数との最小公倍数以上であることを特徴とする請求項13または14に記載の制御装置。
【請求項16】
コイルを有するステータおよび永久磁石を有するロータを備えるモータを制御する制御装置による前記モータの制御方法であって、
前記制御装置が、
前記ロータの所定の回転角度ごとに検出された前記ロータの回転位置を示す位置信号を受信し、
前記位置信号を受信した時点と、前記位置信号の前の位置信号を受信した時点との時間間隔に基づいて前記ロータの実回転数を算出し、
前記位置信号を受信した第1の時点から次の位置信号を実際に受信する第2の時点までの間において、所定の時間間隔に基づいて前記次の位置信号を受信したと仮定する仮の第3の時点を設定し、前記位置信号を受信した第1の時点と、前記仮の第3の時点と、の間の時間間隔に基づいて前記ロータの推定回転数を算出し、
前記位置信号を受信してから前記次の位置信号を受信するまでの間に、前記実回転数、前記推定回転数、および前記ロータの所定の回転数を比較し、
前記比較の結果、前記推定回転数が前記所定の回転数以下となる時点で、前記推定回転数から算出された前記コイルへ印加する電圧を増加させる制御信号に基づいて前記コイルへ印加する電圧を増加させ、前記推定回転数が前記所定の回転数よりも高い時点において、前記実回転数が前記所定の回転数以下の場合には、前記実回転数から算出された前記コイルへ印加する電圧を増加させる制御信号に基づいて前記コイルへ印加する電圧を増加させ、前記推定回転数が前記所定の回転数よりも高い時点において、前記実回転数が前記所定の回転数よりも高い場合には、前記実回転数から算出された前記コイルへ印加する電圧を減少させる制御信号に基づいて前記コイルへ印加する電圧を減少させることを特徴とする制御方法。
【請求項17】
コイルを有するステータおよび永久磁石を有するロータを備えるモータを制御する制御装置による前記モータの制御方法であって、
前記制御装置が、前記ロータの所定の回転角度ごとに検出された前記ロータの回転位置を示す位置信号を受信し、
前記位置信号を受信した時点と、前記位置信号の前の位置信号を受信した時点との時間間隔に基づいて前記ロータの実回転数を算出し、
前記位置信号を受信した第1の時点から次の位置信号を実際に受信する第2の時点までの間において、所定の時間間隔に基づいて前記次の位置信号を受信したと仮定する仮の第3の時点を設定し、前記位置信号を受信した第1の時点と、前記仮の第3の時点と、の間の時間間隔に基づいて前記ロータの推定回転数を算出し、
前記位置信号を受信してから前記次の位置信号を受信するまでの間に、前記実回転数、前記推定回転数、および前記ロータの所定の回転数を比較し、
前記比較の結果、前記推定回転数が前記実回転数以下となる時点において、前記推定回転数が前記所定の回転数以下の場合に、前記推定回転数に基づいて前記コイルへ印加する電圧を増加させる制御信号を算出し、算出した前記制御信号に基づいて前記コイルへ印加する電圧を増加させ、前記推定回転数が前記実回転数以下となる時点において、前記推定回転数が前記所定の回転数よりも高い場合に、前記推定回転数に基づいて前記コイルへ印加する電圧を減少させる制御信号を算出し、算出した前記制御信号に基づいて前記コイルへ印加する電圧を減少させ、
前記推定回転数が前記実回転数よりも高い時点において、前記実回転数が前記所定の回転数以下の場合には、前記実回転数から算出された前記コイルへ印加する電圧を増加させる制御信号に基づいて前記コイルへ印加する電圧を増加させ、前記推定回転数が前記実回転数よりも高い時点において、前記実回転数が前記所定の回転数よりも高い場合には、前記実回転数から算出された前記コイルへ印加する電圧を減少させる制御信号に基づいて前記コイルへ印加する電圧を減少させることを特徴とする制御方法。
【請求項18】
請求項1から
15のいずれか1項に記載の制御装置または請求項
16もしくは請求項
17に記載の制御方法により制御されることを特徴とするモータ。
【請求項19】
請求項
18に記載のモータにより駆動されるポンプ部を有することを特徴とする電動オイルポンプ。
【請求項20】
前記ポンプ部は、内部の容積を変化させることでオイルの吸入と吐出を行う容積型ポンプであることを特徴とする請求項
19に記載の電動オイルポンプ。
【請求項21】
前記ポンプ部は、ダイヤフラムの往復運動により内部の容積を変化させるダイヤフラムポンプまたは歯車の回転運動により内部の容積を変化させる歯車ポンプであることを特徴とする請求項
20に記載の電動オイルポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御方法、モータ、および電動オイルポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
モータにより駆動される電動オイルポンプ等の装置において、装置の未使用時にモータを停止させず、使用時よりも低速でモータを回転させて装置の高応答性を実現する技術が知られている。特許文献1は、電動機の回転速度が急に低下する場合に回転速度を元に戻すことで電動機の低速回転を維持する制御装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の制御装置は、制御のために回転速度の急な変化が必要である。低速回転で制御される上記モータの回転数によっては、回転速度の急な変化によりモータの回転が停止しうるため、上記特許文献1の制御装置でモータの低速回転を維持することは困難となりうる。
【0005】
本発明は、例えば、モータの低速回転を維持する制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の例示的な第1発明は、コイルを有するステータおよび永久磁石を有するロータを備えるモータを制御する制御装置であって、ロータの回転位置を所定の回転角度ごとに検出して、検出された回転位置を示す位置信号を出力する検出部と、検出部が出力した位置信号を受信し、位置信号を受信した時間間隔に基づいてロータの実回転数を算出する第1の算出部と、第1の算出部が位置信号の次の位置信号を受信したと仮定し、第1の算出部が位置信号を受信した時点と、次の位置信号を実際に受信する時点と、の間において、次の位置信号を受信したと仮定する仮の時点を有し、位置信号を受信した時点と、仮の時点と、の間の時間間隔に基づいてロータの推定回転数を算出する第2の算出部と、第1の算出部が位置信号を受信してから次の位置信号を実際に受信するまでの間に、第1の算出部が位置信号を受信した時と当該位置信号の前の位置信号を受信した時との間の時間間隔に基づいて算出したロータの実回転数、第2の算出部が算出した推定回転数、およびロータの所定の回転数を比較する比較部と、実回転数または推定回転数からコイルへ印加する電圧を調整する制御信号を算出し、算出した制御信号に基づいてコイルへ印加する電圧を制御する制御部と、を有し、制御部は、比較部による比較の結果、推定回転数が所定の回転数以下となる時点で、推定回転数から算出されたコイルへ印加する電圧を増加させる制御信号に基づいてコイルへ印加する電圧を増加させ、推定回転数が所定の回転数よりも高い時点において、実回転数が所定の回転数よりも低い場合には、実回転数から算出されたコイルへ印加する電圧を増加させる制御信号に基づいてコイルへ印加する電圧を増加させ、推定回転数が所定の回転数よりも高い時点において、実回転数が所定の回転数よりも高い場合には、実回転数から算出されたコイルへ印加する電圧を減少させる制御信号に基づいてコイルへ印加する電圧を減少させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本願の例示的な第1発明によれば、モータの低速回転を維持する制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】ティース部の断面をZ軸方向から見た図である。
【
図3】制御装置に含まれる各要素間の関係および制御装置とモータ部との関係を示すブロック図である。
【
図4】第1実施形態に係るロータの駆動信号の調整プロセスを示すフローチャートである。
【
図5】実回転数が所定の回転数よりも低い場合における、実回転数、推定回転数および所定の回転数の関係を示すグラフである。
【
図6】実回転数が所定の回転数よりも高い場合における、実回転数、推定回転数および所定の回転数の関係を示すグラフである。
【
図7】第2実施形態に係るロータの駆動信号の調整プロセスを示すフローチャートである。
【
図8】実回転数が所定の回転数よりも低い場合における、実回転数、推定回転数および所定の回転数の関係を示すグラフである。
【
図9】実回転数が所定の回転数よりも高い場合における、実回転数、推定回転数および所定の回転数の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面などを参照して説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
(第1実施形態)
【0010】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、
図1に示す中心軸Jの軸方向(一方向)と平行な方向とする。X軸方向は、
図1に示すバスバーアッシー60の長さ方向と平行な方向、すなわち、
図1の左右方向とする。Y軸方向は、バスバーアッシー60の幅方向と平行な方向、すなわち、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向とする。
【0011】
また、以下の説明においては、Z軸方向の正の側(+Z側)を「フロント側」と呼び、Z軸方向の負の側(-Z側)を「リア側」と呼ぶ。なお、リア側及びフロント側とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係や方向を限定しない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周り(θ方向)を単に「周方向」と呼ぶ。
【0012】
なお、本明細書において、軸方向に延びる、とは、厳密に軸方向(Z軸方向)に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、径方向に延びる、とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向(Z軸方向)に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
(第1実施形態)
【0013】
<電動オイルポンプ>
図1は、本実施形態に係る電動オイルポンプ10の構成を示す図である。電動オイルポンプ10は、シャフト41と、モータ部20と、ポンプ部30と、ハウジング12と、制御装置70と、を有する。シャフト41は、軸方向に延びる中心軸Jを中心として回転する。モータ部20とポンプ部30とは、軸方向に沿って並んで設けられる。
【0014】
<モータ>
モータ部20は、カバー13と、ロータ40と、ステータ50と、ベアリング42と、バスバーアッシー60と、フロント側Oリング81と、リア側Oリング82と、を有する。
【0015】
ロータ40は、シャフト41の外周面に固定される。ステータ50は、ロータ40の径方向外側に位置する。すなわち、モータ部20は、インナーロータ型のモータである。ベアリング42は、シャフト41を回転可能に支持する。ベアリング42は、バスバーアッシー60に保持される。バスバーアッシー60は、外部電源に接続され、ステータ50に電源を供給する。
【0016】
<カバー>
カバー13の材質は、例えば、金属である。カバー13は、ハウジング12のリア側(-Z側)に固定され、バスバーアッシー60のリア側(-Z側)の少なくとも一部を覆う。カバー13は、筒状部22aと、蓋部22bと、フランジ部24と、を有する。筒状部22aは、フロント側(+Z側)に開口する。蓋部22bは、筒状部22aのリア側の端部に接続されている。本実施形態において蓋部22bは、平板状の形状をしている。フランジ部24は、筒状部22aのフロント側の端部から径方向外側に拡がる。ハウジング12とカバー13とは、ハウジング12のフランジ部15とカバー13のフランジ部24とが重ね合わされて接合されている。
【0017】
<ロータ>
ロータ40は、ロータコア43と、ロータマグネット44と、を有する。ロータコア43は、シャフト41を軸周り(θ方向)に囲んで、シャフト41に固定されている。ロータマグネット44は、ロータコア43の軸周りに沿った外側面に固定されている。ロータコア43及びロータマグネット44は、シャフト41と一体となって回転する。ロータマグネット44としては、永久磁石を用いる。本実施形態では、特に、吸引力と反発力が強いレアアースマグネット(ネオジムマグネット等)を用いる。
【0018】
<ステータ>
ステータ50は、ロータ40を軸周り(θ方向)に囲み、ロータ40を中心軸J周りに回転させる。ステータ50は、コアバック部51と、ティース部52と、コイル53と、ボビン(インシュレータ)54と、を有する。
【0019】
コアバック部51の形状は、シャフト41と同心の円筒状である。
図2は、ティース部52の断面をZ軸方向から見た図である。ティース部52は、コアバック部51の内側面からシャフト41に向かって延びている。ティース部52は、複数設けられ、コアバック部51の内側面の周方向に均等な間隔で配置されている。コイル53は、導電線53aが巻き回されて構成される。コイル53は、ボビン54に設けられている。ボビン54は、各ティース部52に装着されている。
【0020】
<ベアリング>
ベアリング42は、ステータ50のリア側(-Z側)に配置される。ベアリング42は、後述するバスバーホルダ61が有するベアリング保持部65に保持される。ベアリング42は、シャフト41を支持する。ベアリング42の構成は、特に限定されず、いかなる公知のベアリングを用いてよい。
【0021】
<バスバーアッシー>
バスバーアッシー60は、ステータ50と電気的に接続されるバスバー91と、バスバーを保持するバスバーホルダ61と、を有する。バスバーホルダ61はリア側に開口部を有する。カバー13の蓋部22bは、バスバーホルダ61のリア側の開口部を塞ぐ。また、カバー13の蓋部22bのフロント側の面は、リア側Oリング82の全周と接触している。これにより、カバー13は、バスバーホルダ61の開口部の周囲の一周に亘って、バスバーホルダ61のリア側の本体部リア面と、リア側Oリング82を介して接触する。
【0022】
バスバーホルダ61は、コネクタ部63を有する。コネクタ部63を介して、モータ部20と外部電源とが接続される。接続された外部電源は、コネクタ部63が有する電源用開口部63aの底面から突出するバスバー91及び配線部材92と電気的に接続される。これにより、バスバー91及び配線部材92を介して、ステータ50のコイル53に駆動電流が供給される。
【0023】
<ポンプ部>
本実施形態のポンプ部30は、歯車の回転運動により内部の容積を変化させることでオイルの吸入と吐出を行う歯車ポンプである。歯車ポンプは容積型ポンプのひとつであり、その他、ダイヤフラムの往復運動により内部の容積を変化させるダイヤフラムポンプを用いることもできる。容積型ポンプを用いることでモータを低速回転させている時でもオイルの吸入と吐出を行うことができ、電動オイルポンプの高応答性を達成できる。
【0024】
ポンプ部30は、モータ部20の軸方向一方側、詳細にはフロント側(+Z軸側)に位置する。ポンプ部30は、モータ部20によってシャフト41を介して駆動される。ポンプ部30は、ポンプボディ31と、ポンプカバー32と、ポンプロータ35と、を有する。
【0025】
ポンプボディ31は、モータ部20のフロント側においてハウジング12内に固定される。ポンプボディ31の外周面は、ポンプ部Oリング83を介してハウジング12の内周面と径方向において接触する。ポンプボディ31は、ポンプロータ35を収容する、フロント側(+Z側)の面からリア側(-Z側)に窪んだポンプ室33を有する。ポンプ室33の軸方向に視た形状は、円形状である。
【0026】
ポンプボディ31は、軸方向両端に開口しシャフト41が通され、フロント側の開口がポンプ室33に開口する貫通孔31aを有する。貫通孔31aのリア側の開口は、モータ部20側に開口する。貫通孔31aは、シャフト41を回転可能に支持する軸受部材として機能する。
【0027】
ポンプボディ31は、ハウジング12よりもフロント側に位置しハウジング12の外部に露出する露出部36を有する。露出部36は、ポンプボディ31のフロント側の端部の部分である。露出部36は、軸方向に延びる円柱状である。露出部36は、ポンプ室33と径方向に重なる。
【0028】
ポンプカバー32は、ポンプボディ31のフロント側に取り付けられる。ポンプカバー32は、ポンプカバー本体32aと、吐出口32dを含むポンプコネクタ部32bと、吸入口32cと、を有する。ポンプカバー本体32aは、径方向に拡がる円板状である。ポンプカバー本体32aは、ポンプ室33のフロント側の開口を閉塞する。ポンプコネクタ部32bは、軸方向に延びる円筒状である。ポンプコネクタ部32bは、軸方向両端に開口する吐出口32dを有する。ポンプコネクタ部32bは、ポンプカバー本体32aからフロント側に延びる。吸入口32cは、ポンプカバー32のフロント側の面に開口する。吐出口32d及び吸入口32cは、ポンプ室33と繋がり、ポンプ室33へのオイルの吸入およびポンプ室33からのオイルの吐出が可能である。シャフト41が周方向一方向き(-θ向き)に回転する場合、吸入口32cからオイルがポンプ室33に吸入される。ポンプ室33に吸入されたオイルは、ポンプロータ35によって送られ、吐出口32dへ吐出される。
【0029】
ポンプロータ35は、インナーロータ37と、アウターロータ38と、を有する。インナーロータ37は、シャフト41のフロント側の端部に取り付けられる。アウターロータ38は、インナーロータ37の径方向外側を囲むように配置される。インナーロータ37は、円環状であり、径方向外側面に歯を有する歯車である。
【0030】
インナーロータ37とアウターロータ38とは互いに噛み合い、インナーロータ37が回転することでアウターロータ38が回転する。インナーロータ37とアウターロータ38とが回転することで、吸入口32cからポンプ室33内に吸入されるオイルを、吐出口32dに送ることができる。すなわち、シャフト41の回転によりポンプロータ35は回転する。言い換えると、モータ部20とポンプ部30とは同一の回転軸を有する。
【0031】
<ハウジング>
ハウジング12は、中心軸Jに対し両端が開口した多段の円筒形状をしている。ハウジング12の材質は、例えば、金属である。ハウジング12は、モータ部20とポンプ部30とを保持する。ハウジング12は、筒部14と、フランジ部15と、を有する。筒部14は、中心軸Jを中心とする円筒状をしている。筒部14は、軸方向(Z軸方向)に沿って、バスバーアッシー挿入部21aと、ステータ保持部21bと、ポンプボディ保持部21cと、をリア側(-Z側)からフロント側(+Z側)へ向かって順に有する。フランジ部15は、筒部14のリア側の端部から径方向外側に延びる。
【0032】
バスバーアッシー挿入部21aのリア側の端部は、カバー13のフランジ部24およびハウジング12のフランジ部15を介して、カバー13の筒状部22aと連結する。バスバーアッシー挿入部21aは、バスバーアッシー60のフロント側(+Z側)の端部を中心軸Jの径方向外側から囲む。バスバーアッシー挿入部21aと、ステータ保持部21bと、ポンプボディ保持部21cとは、それぞれ同心の円筒形状であり、直径はこの順に小さくなる。
【0033】
バスバーアッシー60のフロント側の端部は、ハウジング12の内側に位置する。ステータ保持部21bの内側面には、ステータ50の外側面、すなわち、コアバック部51の外側面が接触している。これにより、ハウジング12には、ステータ50が保持される。ポンプボディ保持部21cの内周面には、ポンプボディ31の外周面が固定される。
【0034】
<制御装置>
制御装置70は、ベアリング42とカバー13との間に配置され、モータ部20の駆動を制御する。制御装置70は、検出部71と、インバータ回路72と、第1の算出部73、第2の算出部74、比較部75および制御部76を有する。
図3は、制御装置70に含まれる各要素間の関係および制御装置70とモータ部20との関係を示すブロック図である。
【0035】
インバータ回路72は、モータ駆動電圧を出力する。検出部71としては、ホール素子および磁気抵抗素子などの磁気式センサ、光学式エンコーダまたはレゾルバを用いることができる。本実施形態では、磁気式センサであるホール素子を用いる。検出部71は、センサマグネット711およびマグネット保持部712を有する。
【0036】
センサマグネット711は、円環状であり周方向にN極とS極とが交互に配置されている。センサマグネット保持部712は、中央の孔がシャフト41のリア側(+Z側)の端部の小径部分に嵌まることで位置決めされている。センサマグネット保持部712は、シャフト41とともに回転可能である。センサマグネット711は、センサマグネット保持部712の外周面に配置されている。
【0037】
検出部71は、センサマグネット711の磁束の変化を検出することで、ロータ40の回転位置を所定の角度ごとに検出して、検出された回転位置を示す位置信号を第1の算出部73に出力する。本実施形態では、出力される位置信号は複数の信号からなる一組の位置信号である。例えば、磁気抵抗素子を検出部71として用いた場合は、一つの位置信号が所定の角度ごとに出力される。
【0038】
第1の算出部73は、検出部71が出力した位置信号を受信し、位置信号を受信した時間間隔に基づいてロータ40の実回転数を算出する。第2の算出部74は、第1の算出部73が第1の位置信号を受信したあとに次の位置信号(第2の位置信号)を受信したと仮定し、第1の算出部73が第1の位置信号を受信した時点(第1の時点)と、第1の算出部73が実際に第2の位置信号を受信する時点(第2の時点)と、の間において、仮の時点(第3の時点)を設定する。そして、第2の算出部74は、第1の算出部73が第1の位置信号を受信した時点と、仮の時点との間の時間間隔に基づいてロータ40の推定回転数を算出する。第2の算出部74は、第1の算出部73が第1の位置信号を受信してから第1の算出部73が実際に第2の位置信号を受信するまでの間において、所定の時間間隔で推定回転数を算出してもよく、時間間隔なしに連続して推定回転数を算出してもよい。
【0039】
比較部75は、第1の算出部73から、第1の算出部73が第1の位置信号を受信した時と第1の位置信号の前の位置信号を受信した時との間の時間間隔に基づいて算出したロータ40の実回転数を得る。さらに、比較部75は、第2の算出部74が算出した推定回転数、およびロータ40の所定の回転数を得て、第1の算出部73が第1の位置信号を受信してから第2の位置信号を実際に受信するまでの間に、実回転数、推定回転数および所定の回転数を比較する。
【0040】
制御部76は、例えば、演算部(コンピュータ等)および記憶部を有する。制御部76は、実回転数または推定回転数からコイル53へ印加する電圧を調整する制御信号を算出し、算出した制御信号に基づいてコイル53へ印加する電圧を制御する。ここで、制御信号の算出は、PID制御方式で演算部により算出されうる。また、制御部76は、算出した制御信号に基づいて、パルス幅変調方式(PWM方式)によりロータ40の駆動信号のデューティ比の調整を行う。
【0041】
制御部76は、調整後のロータ40の駆動信号をインバータ回路72に出力する。インバータ回路72は、制御部76からのロータ40の駆動信号に基づいてモータ駆動電圧を出力する。コイル53にはインバータ回路72からの駆動電圧に基づいた駆動電流が供給される。コイル53には、駆動電流の供給により磁場が発生し、この磁場によってロータ40が回転する。このようにして、モータ部20は、回転駆動力を得る。駆動電流は、バスバー91及び配線部材92を介して、ステータ50のコイル53に供給される。
【0042】
ここで、ロータ40の所定の回転数は比較部75が保持していてもよく、制御部76が有する記憶部が記憶していてもよい。所定の回転数が記憶部に記憶されている場合は、比較部75が記憶部に記憶された所定の回転数を参照する。所定の回転数は、電動オイルポンプ未使用時にコギングトルクの影響でロータの回転が停止しない回転数であって、電動オイルポンプの使用時よりも低い回転数に設定される。本実施形態では、所定の回転数を100rpmと設定する。
【0043】
検出部71として磁気式センサを用いる場合、ロータ40が1回転する間に検出部71が位置信号を出力する回数nは、磁気式センサの数に対して当該磁気式センサが検出する磁極数を乗じた値である。ここで、磁気式センサが検出する磁極数は、ロータ40の永久磁石の磁極数よりも大きくてもよい。また、回数nは、ロータ40の永久磁石の磁極数とステータ50のティース部52の数(ティース数)との最小公倍数以上であることが望ましい。回数nを上記最小公倍数以上とすることで、ロータ40の永久磁石の磁極数およびステータ50のティース数から決定されるコギングトルクの周期よりも短い周期で回転信号を出力することがきる。これにより、制御部73は、コギングトルクの影響でロータ40が停止する前にコギングトルクに打ち勝つ回転力をロータ40に与えることができる。検出部71として、光学式エンコーダまたはレゾルバを用いる場合も、上記回数nは、ロータ40の永久磁石の磁極数とステータ50のティース数との最小公倍数以上であることが望ましい。
【0044】
<調整プロセス>
図4は、電動オイルポンプ10を駆動するモータ部20の制御装置70に含まれる制御部76が行うロータ40の駆動信号の調整プロセスを示すフローチャートである。
図5は、実回転数が所定の回転数よりも低い場合における、実回転数、推定回転数および所定の回転数の関係を示すグラフである。
図6は、実回転数が所定の回転数よりも高い場合における、実回転数、推定回転数および所定の回転数の関係を示すグラフである。
図5及び
図6において、横軸は時間、縦軸は回転数を示す。
図4で示す制御信号を算出して電圧を調整する工程(S140、S160またはS170)を行うタイミングを含む時間幅を
図5及び
図6中に示す。
【0045】
図4に示すフローチャートにおいて、工程S100で第1の算出部73は、ロータ40の所定の回転角度ごとに検出されたロータ40の回転位置を示す第1の位置信号を受信する。工程S110で第1の算出部73は、第1の位置信号を受信した時点と、第1の位置信号の前の位置信号を受信した時点との時間間隔に基づいてロータ40の実回転数を算出する。工程S120で第2の算出部74は、第1の算出部73が第1の位置信号を受信した
時点と、第1の算出部73が実際に次の位置信号(第2の位置信号)を受信
する時点と、の間において、仮の時点を設定する。そして、第2の算出部74は、第1の算出部73が第1の位置信号を受信した時点と、仮の時点との間の時間間隔に基づいてロータ40の推定回転数を算出する。工程S130で比較部75は、第1の算出部73が実際に第2の位置信号を受信する前に、工程S110で第1の算出部73が算出した実回転数、工程S120で第2の算出部74が算出した推定回転数および所定の回転数を比較する。
【0046】
工程S130の比較部75による比較では、推定回転数が所定の回転数以下であるか否かが判断される。比較部75が、推定回転数が所定の回転数以下と判断した場合、工程S140で制御部76が推定回転数からコイル53へ印加する電圧を増加させる制御信号を算出し、算出した制御信号に基づいてコイル53へ印加する電圧を増加させる。具体的には、制御部76は、例えば、所定の回転数と実回転数との差からPID制御方式で算出した結果に、所定の回転数と推定回転数との差に基づいた制御信号を加算することで制御信号を算出する。工程S130にて比較部75が、推定回転数が所定の回転数よりも高いと判断した場合、工程S150に進む。
【0047】
工程S150で比較部75は、実回転数が所定の回転数以下であるか否かを判断する。比較部75が、実回転数が所定の回転数以下であると判断した場合、工程S160で制御部76が実回転数からコイル53へ印加する電圧を増加させる制御信号を算出し、算出した制御信号に基づいてコイル53へ印加する電圧を増加させる。工程S150で比較部75が、実回転数が所定の回転数よりも高いと判断した場合、工程S170で制御部76が実回転数からコイル53へ印加する電圧を減少させる制御信号を算出し、算出した制御信号に基づいてコイル53へ印加する電圧を減少させる。工程S140、工程S160または工程S170の後、工程S100に戻り(第2の位置信号の受信)、フローが繰り返される。
【0048】
上記調整プロセスによれば、第1の算出部73が第2の位置信号を実際に受信するのを待たずに、推定回転数が所定の回転数以下となった時点において、制御部76が推定回転数に基づいて制御信号を算出し、コイル53へ印加する電圧を増加させることができる。コギングトルクまたは外部負荷の影響を受ける100rpmより小さい低速回転時において、第1の算出部73が第2の位置信号を実際に受信するのを待ってから制御を始める場合、ロータ40の回転が停止しうる。しかしながら、上記調整プロセスにより、制御装置70は、ロータ40の回転が停止する前にコギングトルクに打ち勝つ回転力をロータ40に与えることができる。また、推定回転数が所定の回転数よりも高い時点においても、実回転数が所定の回転数に近づくような制御が行われ、本実施形態の所定の回転数である100rpmが維持される。
【0049】
また、
図6のように実回転数が所定の回転数よりも高い場合において、比較部75による比較の結果、推定回転数が実回転数以下となる時点で、制御部76が推定回転数に基づいてコイル53へ印加する電圧を増加させる制御信号を算出してもよい。制御部76は算出した制御信号に基づいて、推定回転数が所定の回転数以下となる時点でコイル53へ印加する電圧を増加させる。この場合、推定回転数が所定の回転数以下となる前に制御信号の算出を済ませることができるため、低下したロータ40の回転数をより早く復帰させることができる。
【0050】
本実施形態によれば、モータの低速回転を維持する制御装置を提供できる。さらに、本実施形態の制御装置により、予め低回転でポンプ部を駆動して高応答性を実現した電動オイルポンプを提供できる。
(第2実施形態)
【0051】
第1実施形態では、推定回転数が所定の回転数以下となる時点で、制御部76がコイル53へ印加する電圧を増加させていた。本実施形態では、推定回転数が直前の位置信号に基づいて算出された実回転数以下となる時点で、制御部76がコイル53へ印加する電圧を増加させる。本実施形態によれば、例えば、実回転数が所定の回転数よりも高い場合において、推定回転数が所定の回転数以下となる前にコイル53へ印加する電圧を増加させることができ、第1実施形態よりも早くロータ40の回転数を復帰させることが可能となりうる。
【0052】
図7は、本実施形態に係る調整プロセスを示すフローチャートである。
図8は、実回転数が所定の回転数よりも低い場合における、実回転数、推定回転数および所定の回転数の関係を示すグラフである。
図9は、実回転数が所定の回転数よりも高い場合における、実回転数、推定回転数および所定の回転数の関係を示すグラフである。
図8及び
図9において、横軸は時間、縦軸は回転数を示す。
図7で示す制御信号を算出して電圧を調整する工程(S250、S260、S160およびS170)を行うタイミングを
図8及び
図9中に示す。
【0053】
図7に示すフローチャートにおいて、第1実施形態と同様の工程は同じ符号を付け説明は省略する。工程S100~工程S120は第1実施形態と同様である。工程S230で比較部は、第1の算出部73が実際に第2の位置信号を受信する前に、工程S110で第1の算出部73が算出した実回転数、工程S120で第2の算出部74が算出した推定回転数および所定の回転数を比較する。
【0054】
工程S230の比較部75による比較では、推定回転数が実回転数以下であるか否かが判断される。比較部75が、推定回転数が実回転数以下と判断した場合、工程S240にて、推定回転数が所定の回転数以下であるか否かが比較部75により判断される。
【0055】
工程S240にて、比較部75が、推定回転数が所定の回転数以下であると判断した場合、工程S250に進む。工程S250にて、制御部76は、推定回転数からコイル53へ印加する電圧を増加させる制御信号を算出し、算出した制御信号に基づいてコイル53へ印加する電圧を増加させる。
【0056】
工程S240にて、比較部75が、推定回転数が所定の回転数よりも高いと判断した場合、工程S260に進む。工程S260にて、制御部76は、推定回転数からコイル53へ印加する電圧を減少させる制御信号を算出し、算出した制御信号に基づいてコイル53へ印加する電圧を減少させる。
【0057】
工程S230にて比較部75が、推定回転数が所定の回転数よりも高いと判断した場合、第1実施形態と同様の工程S150に進む。以下の工程S160および工程S170は第1実施形態と同様である。工程S140、工程S160または工程S170の後、工程S100に戻り(第2の位置信号の受信)、フローが繰り返される。なお、工程S160において、制御部76は、例えば、所定の回転数と実回転数との差からPID制御方式で算出した結果に、所定の回転数と推定回転数との差に基づいた制御信号を加算することで制御信号を算出する。
【0058】
上記調整プロセスによれば、第1の算出部73が第2の位置信号を実際に受信するのを待たずに、推定回転数が実回転数以下となった時点において、制御部76が推定回転数に基づいて制御信号を算出し、コイル53へ印加する電圧を増加させることができる。コギングトルクまたは外部負荷の影響を受ける100rpmより小さい低速回転時において、第1の算出部73が第2の位置信号を実際に受信するのを待ってから制御を始める場合、ロータ40の回転が停止しうる。しかしながら、上記調整プロセスにより、制御装置70は、ロータ40の回転が停止する前にコギングトルクに打ち勝つ回転力をロータ40に与えることができる。また、推定回転数が実回転数よりも高い時点においても、実回転数が所定の回転数に近づくような制御が行われる。これにより、ロータ40の回転数を上げすぎることなく本実施形態の所定の回転数である100rpmを維持することができる。
【0059】
本実施形態によっても、第1実施形態と同様にモータの低速回転を維持する制御装置を提供できる。さらに、予め低回転でポンプ部を駆動して高応答性を実現した電動オイルポンプを提供できる。
【0060】
なお、モータの種類は上記実施形態のインナーロータ型に限らず、例えば、ステータ50がロータ40の径方向内側に位置するアウターロータ型モータとしてもよく、ステータ50とロータ40とがモータ軸方向に配置されたアキシャルギャップ型モータとしてもよい。
【0061】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0062】
本出願は、2016年9月30日に出願された日本出願特願2016-194686号に基づく優先権を主張し、当該日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【符号の説明】
【0063】
10 電動オイルポンプ
20 モータ部
30 ポンプ部
33 ポンプ室
40 ロータ
44 ロータマグネット
50 ステータ
53 コイル
70 制御装置
71 検出部
73 第1の算出部
74 第2の算出部
75 比較部
76 制御部