(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】IFoF伝送システム、基地局装置、信号処理装置および伝送方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/2575 20130101AFI20240402BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20240402BHJP
H04J 14/08 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H04B10/2575 120
H04W16/26
H04J14/08
(21)【出願番号】P 2020058432
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-02-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、総務省、「電波資源拡大のための研究開発IoT機器増大に対応した有無線最適制御型電波有効利用基盤技術の研究開発(技術課題力「光ファイバ無線技術によるモバイルフロントホールの大容量化・高効率化技術」)委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】田中 和樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 公佐
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/204226(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0121223(KR,A)
【文献】SUNG M. et al.,5G Trial Services Demonstration: IFoF-Based Distributed Antenna System in 28 GHz Millimeter-Wave Supporting Gigabit Mobile Services,Journal of Lightwave Technology,米国,IEEE,2019年07月,VOL. 37, NO. 14,pages 3592-3601
【文献】HISANO D. et al.,TDM-PON for Accommodating TDD-Based Fronthaul and Secondary Services,Journal of Lightwave Technology,米国,IEEE,2017年07月,VOL. 35, NO. 14,pages 2788-2796
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナから発射する無線電波をIF(Intermediate Frequency)信号として光ファイバ伝送するIFoF(IF-over Fiber)伝送システムであって、
TDD(Time Division Duplex)の上り伝送期間に、その後のTDDの下り伝送期間で前記アンテナから発射する予定の下りIF信号を割り当てて、光ファイバで下りIF信号を送信する収容局と、
光ファイバを介して受信した前記下りIF信号をバッファリングし、送信タイミングを制御して前記バッファリングした下りIF信号をアンテナから発射するアンテナサイトと、を備え、
前記収容局から前記アンテナサイトへの下りIF信号が、
前記TDDの上り伝送期間および
前記TDDの下り伝送期間で送信されることを特徴とするIFoF伝送システム。
【請求項2】
請求項1記載のIFoF伝送システムの収容局に適用される基地局装置であって、
送信予定の下りIF信号を送信するために必要な時間が、
前記TDDの上り伝送期間に適合するように、前記送信予定の下りIF信号を複数の下りIF信号に分割し、分割した各下りIF信号の送信タイミングを合わせて出力する波形分割部を備え、
分割した前記各下りIF信号を
前記TDDの上り伝送期間で送信することを特徴とする基地局装置。
【請求項3】
前記波形分割部は、
前記TDDの上り伝送期間と
前記TDDの下り伝送期間との比に応じて、
前記TDDの上り伝送期間で送信する下りIF信号の分割数を定めることを特徴とする請求項2記載の基地局装置。
【請求項4】
請求項1記載のIFoF伝送システムのアンテナサイトに適用される信号処理装置であって、
前記収容局で分割され送信タイミングが合わされて
前記TDDの上り伝送期間で受信した各下りIF信号を、分割前の下りIF信号に復元し、復元した下りIF信号をバッファリングするバッファリング部と、
基地局装置から取得した制御信号に基づいて、前記バッファリング部に対し、バッファリングしている下りIF信号を出力する旨の指示を与えるタイミングコントローラと、を備えることを特徴とする信号処理装置。
【請求項5】
アンテナから発射する無線電波をIF(Intermediate Frequency)信号として光ファイバ伝送するIFoF(IF-over Fiber)伝送システムであって、
TDD(Time Division Duplex)の上り伝送期間に、その後のTDDの下り伝送期間で前記アンテナから発射する予定の下りIF信号を割り当てて、光ファイバで下りIF信号を送信する収容局と、
光ファイバを介して受信した前記下りIF信号をバッファリングし、送信タイミングを制御して前記バッファリングした下りIF信号をアンテナサイトへ出力する中継局と、を備え、
前記収容局から前記アンテナサイトへの下りIF信号が、
前記TDDの上り伝送期間および
前記TDDの下り伝送期間で送信されることを特徴とするIFoF伝送システム。
【請求項6】
アンテナから発射する無線電波をIF(Intermediate Frequency)信号として光ファイバ伝送するIFoF(IF-over Fiber)伝送システムの伝送方法であって、
収容局において、TDD(Time Division Duplex)の上り伝送期間に、その後のTDDの下り伝送期間で前記アンテナから発射する予定の下りIF信号を割り当てて、光ファイバで下りIF信号を送信するステップと、
アンテナサイトにおいて、光ファイバを介して受信した前記下りIF信号をバッファリングし、送信タイミングを制御して前記バッファリングした下りIF信号をアンテナから発射するステップと、を含み、
前記収容局から前記アンテナサイトへの下りIF信号が、
前記TDDの上り伝送期間および
前記TDDの下り伝送期間で送信されることを特徴とする伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログ電気信号を光信号に変換し、光ファイバを用いた伝送を行なうアナログRoF(Radio over Fiber)システムに適用される技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アナログRoFシステムが知られており、例えば、特許文献1には、カスケード接続されたIFoF回線から成る「Mobile fronthaul構成」が開示されている。この「Mobile fronthaul構成」では、あるファイバ伝送区間において、複数のアンテナサイトに向けたIF無線信号を、同一のファイバを介して同一の波長で伝送する。特許文献1記載の技術では、「Central office(CO)」から中継局までは1本の光アクセスファイバを利用し、中継局から各アンテナサイトまではそれぞれ異なる光ファイバを利用している。ここで、COから中継局までは、全アンテナサイト向けのIF信号を周波数軸上に多重して大容量伝送する必要があり、信号品質劣化が発生しやすい。特に、この区間においては、高品質伝送が難しい。特許文献1では、各アンテナサイトで、IF信号の分離、周波数変換に「Digital signal processing (DSP)」を用いて、伝送特性の高品質化とRF部品構成の簡素化が図られている。
【0003】
また、非特許文献1には、「Time division multiplexing passive optical network (TDM-PON)」が開示されている。この技術では、1本の光アクセスファイバを共有して、複数のTDD方式の無線基地局を収容する。このTDD方式の無線基地局では、上りまたは下りのいずれか一方向しかデータが流れないため、光伝送において帯域の利用効率が低下してしまう。このため、TDD方式の無線基地局をプライマシステムとし、通信していない時間帯に他の第2のシステムのデータを送信することによって、光伝送の帯域利用効率の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、「Time division duplex (TDD)」方式を採用し、無線基地局から大容量の無線信号を伝送する「Intermediate frequency over fiber (IFoF)伝送システム」においては、IF帯無線信号の品質劣化が大きいという課題がある。すなわち、従来の技術では、高多値度のQAM伝送が困難であり、また、高いSNRの確保が困難である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、光アナログ伝送における無線基地局の上り送信タイミングを有効に活用することができるIFoF伝送システム、基地局装置、信号処理装置および伝送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明のIFoF伝送システムは、アンテナから発射する無線電波をIF(Intermediate Frequency)信号として光ファイバ伝送するIFoF(IF-over Fiber)伝送システムであって、TDD(Time Division Duplex)の上り伝送期間に、その後のTDDの下り伝送期間で前記アンテナから発射する予定の下りIF信号を割り当てて、光ファイバで下りIF信号を送信する収容局と、光ファイバを介して受信した前記下りIF信号をバッファリングし、送信タイミングを制御して前記バッファリングした下りIF信号をアンテナから発射するアンテナサイトと、を備え、前記収容局から前記アンテナサイトへの下りIF信号が、TDDの上り伝送期間および下り伝送期間で送信されることを特徴とする。
【0009】
この構成により、光アナログ伝送における無線基地局の上り送信タイミングを有効に活用することができる。その結果、IFoF伝送するIFチャネル数を削減することができ、高い変調度(すなわち、高いSNR)でのIF伝送が可能となり、無線信号品質劣化を抑制することが可能となる。また、TDD基地局の上下通信タイミングで伝送するIFチャネル配置を同一とした場合には、RFや光部品で必要な帯域も削減可能であり、コスト低減も期待できる。
【0010】
(2)また、本発明の基地局装置は、上記(1)記載のIFoF伝送システムの収容局に適用される基地局装置であって、送信予定の下りIF信号を送信するために必要な時間が、上り伝送期間に適合するように、前記送信予定の下りIF信号を複数の下りIF信号に分割し、分割した各下りIF信号の送信タイミングを合わせて出力する波形分割部を備え、分割した前記各下りIF信号を上り伝送期間で送信することを特徴とする。
【0011】
この構成により、下りIF信号を、上り伝送期間に適合させて送信することが可能となる。これにより、光アナログ伝送における無線基地局の上り送信タイミングを有効に活用することができる。
【0012】
(3)また、本発明の基地局装置において、前記波形分割部は、上り伝送期間と下り伝送期間との比に応じて、上り伝送期間で送信する下りIF信号の分割数を定めることを特徴とする。
【0013】
この構成により、下りIF信号を、上り伝送期間に適合させて送信することが可能となる。これにより、光アナログ伝送における無線基地局の上り送信タイミングを有効に活用することができる。
【0014】
(4)また、本発明の信号処理装置は、上記(1)記載のIFoF伝送システムのアンテナサイトに適用される信号処理装置であって、前記収容局で分割され送信タイミングが合わされて上り伝送期間で受信した各下りIF信号を、分割前の下りIF信号に復元し、復元した下りIF信号をバッファリングするバッファリング部と、基地局装置から取得した制御信号に基づいて、前記バッファリング部に対し、バッファリングしている下りIF信号を出力する旨の指示を与えるタイミングコントローラと、を備えることを特徴とする。
【0015】
この構成により、下りIF信号を適切なタイミングで無線送信することが可能となる。これにより、光アナログ伝送における無線基地局の上り送信タイミングを有効に活用することができる。
【0016】
(5)また、本発明のIFoF伝送システムは、アンテナから発射する無線電波をIF(Intermediate Frequency)信号として光ファイバ伝送するIFoF(IF-over Fiber)伝送システムであって、TDD(Time Division Duplex)の上り伝送期間に、その後のTDDの下り伝送期間で前記アンテナから発射する予定の下りIF信号を割り当てて、光ファイバで下りIF信号を送信する収容局と、光ファイバを介して受信した前記下りIF信号をバッファリングし、送信タイミングを制御して前記バッファリングした下りIF信号をアンテナサイトへ出力する中継局と、を備え、前記収容局から前記アンテナサイトへの下りIF信号が、TDDの上り伝送期間および下り伝送期間で送信されることを特徴とする。
【0017】
この構成により、光アナログ伝送における無線基地局の上り送信タイミングを有効に活用することができる。その結果、IFoF伝送するIFチャネル数を削減することができ、高い変調度(すなわち、高いSNR)でのIF伝送が可能となり、無線信号品質劣化を抑制することが可能となる。また、TDD基地局の上下通信タイミングで伝送するIFチャネル配置を同一とした場合には、RFや光部品で必要な帯域も削減可能であり、コスト低減も期待できる。
【0018】
(6)また、本発明の伝送方法は、アンテナから発射する無線電波をIF(Intermediate Frequency)信号として光ファイバ伝送するIFoF(IF-over Fiber)伝送システムの伝送方法であって、収容局において、TDD(Time Division Duplex)の上り伝送期間に、その後のTDDの下り伝送期間で前記アンテナから発射する予定の下りIF信号を割り当てて、光ファイバで下りIF信号を送信するステップと、アンテナサイトにおいて、光ファイバを介して受信した前記下りIF信号をバッファリングし、送信タイミングを制御して前記バッファリングした下りIF信号をアンテナから発射するステップと、を含み、前記収容局から前記アンテナサイトへの下りIF信号が、TDDの上り伝送期間および下り伝送期間で送信されることを特徴とする。
【0019】
この構成により、光アナログ伝送における無線基地局の上り送信タイミングを有効に活用することができる。その結果、IFoF伝送するIFチャネル数を削減することができ、高い変調度(すなわち、高いSNR)でのIF伝送が可能となり、無線信号品質劣化を抑制することが可能となる。また、TDD基地局の上下通信タイミングで伝送するIFチャネル配置を同一とした場合には、RFや光部品で必要な帯域も削減可能であり、コスト低減も期待できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光アナログ伝送における無線基地局の上り送信タイミングを有効に活用することができる。その結果、IFoF伝送するIFチャネル数を削減することができ、高い変調度(すなわち、高いSNR)でのIF伝送が可能となり、無線信号品質劣化を抑制することが可能となる。また、TDD基地局の上下通信タイミングで伝送するIFチャネル配置を同一とした場合には、RFや光部品で必要な帯域も削減可能であり、コスト低減も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】本実施形態に係るIFoF伝送システムの概略構成を示す図である。
【
図1B】本実施形態に係るIFoF伝送システムの他の例の概略構成を示す図である。
【
図2】IFoF伝送されるIF信号を時間軸、周波数軸上で示した図である。
【
図3】IFoF伝送されるIF信号を時間軸、周波数軸上で示した図である。
【
図4】本実施形態に係るTDD基地局の概略構成を示す図である。
【
図6A】Wave form div.117の概略構成を示す図である。
【
図6B】Wave form div.117の概略構成を示す図である。
【
図7】アンテナサイト20の信号処理装置23の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明者らは、IFoF伝送システムでは、TDD基地局装置の上りデータ通信中には、光ファイバを介した下りデータ通信が行われていないことに着目し、この上り送信期間中に、後のタイミングで発射する下りIF信号をIFoF伝送し、アンテナサイトにおいてバッファリングし、適切なTDD下りタイミングで出力することを見出し、本発明に至った。
【0023】
すなわち、本発明のIFoF伝送システムは、アンテナから発射する無線電波をIF(Intermediate Frequency)信号として光ファイバ伝送するIFoF(IF-over Fiber)伝送システムであって、TDD(Time Division Duplex)の上り伝送期間に、その後のTDDの下り伝送期間で前記アンテナから発射する予定の下りIF信号を割り当てて、光ファイバで下りIF信号を送信する収容局と、光ファイバを介して受信した前記下りIF信号をバッファリングし、送信タイミングを制御して前記バッファリングした下りIF信号をアンテナから発射するアンテナサイトと、を備え、前記収容局から前記アンテナサイトへの下りIF信号が、TDDの上り伝送期間および下り伝送期間で送信されることを特徴とする。
【0024】
これにより、本発明者らは、光アナログ伝送における無線基地局の上り送信タイミングを有効に活用することを可能とした。以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0025】
図1Aは、本実施形態に係るIFoF伝送システムの概略構成を示す図である。本実施形態に係るIFoF伝送システム1は、収容局10とアンテナサイト20とが、広帯域IFoF30によって接続されることによって構成されている。TDD基地局11は、TDD上りデータ伝送中において、後のタイミングでアンテナ発射する下りIF信号をファイバ伝送する。これにより、ある時刻に下りIFoF伝送するIF信号数、帯域を削減可能とし、多値度の高いIF信号に対して高変調度(高い入力パワー)でのIFoF伝送を行うことが可能となる。
【0026】
従来から、TDD方式の無線基地局では、上りデータ通信中に下りデータ通信は行わないが、本実施形態に係るIFoF伝送システム1では、アンテナサイト20で下り信号をバッファリングし、TDDの下りデータ通信タイミングで電波発射を行なう。本実施形態では、TDD上りデータ通信中に、多値度の高い少数の下りIF信号を、高変調度でIFoF伝送することが有効である。
【0027】
TDD基地局11は、TDD上りデータ通信中に、後の下りデータ通信タイミングでアンテナ発射する無線IF信号を生成し、IFoF伝送装置としての駆動回路13およびE/O装置15に送信する。アンテナサイト20で下りデータ通信できる時間は限られているため、TDD上りデータ通信中に下りIF信号を生成し、IFoF伝送装置としての駆動回路13およびE/O装置15に送信した時間分だけ、実際の下り伝送タイミングでの送信時間を短くする必要がある。TDDの上りデータ通信タイミングのみでIFoF伝送する場合は、短くなった時間を補うため、複数のIFチャネルに分割して伝送する必要がある。また、上記下りIF信号に加えて、実際にアンテナ発射するタイミングを通知するための制御信号も別のIF帯等を使って伝送する。
【0028】
アンテナサイト20では、制御信号を検知した後、「Δt経過後に」、もしくは「時刻tに」、発射するという命令の仕方や、決められた信号パターン等をトリガー(契機)として発射させることも可能である。
【0029】
なお、後述する信号処理装置23において、無線の下りデータ通信のタイミングで確実に無線発射する機能を有する場合は、本制御信号は必ずしも必要ない。例えば、上り信号の有無をモニタリングし、上り信号を受信していないことをトリガーにバッファリングしていた信号を送信する等の方法が考えられる。また、本来の下りタイミングで伝送してきたIF信号の受信をトリガーにすることも考えられる。
【0030】
図1Aにおいて、アンテナサイト20では、IFoF伝送された複数の下りIF信号をO/E装置21で取得し、信号処理装置23において、受信した複数の下りIF信号から所望信号のみをフィルタリングし、IFまたはRFに周波数変換する。この信号処理装置23において、デジタル化した無線信号をバッファリングし、TDD下りデータ通信のタイミングでバッファリングしていた信号を出力し、Amp25で信号を増幅し、ANT27で無線信号として発射する。
【0031】
信号処理装置23でバッファリングしていた信号の送信タイミングについては、上位NWから伝送されてきた制御信号、下位NWから伝送されてきた上り信号有無等で判断すればよい。GPS信号で時刻同期されたデジタル信号処理回路内の時刻を元に判断してもよい。
【0032】
図1Bは、本実施形態に係るIFoF伝送システムの他の一例の概略構成を示す図である。
図1Bでは、中継局101が、O/E21および信号処理装置23を備えており、中継局101とアンテナサイト102とをRFケーブルで接続した構成を示している。このように、アンテナサイト102から中継局101に分離することも可能である。その他の構成は、
図1Aと同様である。また、本発明は、中継局101とアンテナサイト102とを光ファイバで接続した構成を採っても良い。この場合、中継局101の信号処理装置23のアンテナサイト102側に、「E/O」を設置すると共に、対向するアンテナサイト102に「O/E」を設置する。さらに、特許文献1に示されているように、中継局101とアンテナサイト102との間を、狭帯域IFoFで伝送するように構成することも可能である。この場合、中継局101には、各アンテナサイト102向けのIF信号を抽出し、周波数をダウンコンバートする機能を設ける。すなわち、各アンテナサイト102向けに狭帯域IFoF伝送し、アンテナサイト102で、各IF信号を抽出して、所望周波数に変換する。収容局10で分割したIF信号を元に戻す機能は、中継局101またはアンテナサイト102のどちらが有していても良い。発射タイミングを調整するバッファリングも、中継局101またはアンテナサイト102のどちらか一方、または両方で行うことも可能である。
【0033】
次に、本実施形態に係るIFoF伝送システムの動作について説明する。収容局10側のTDD基地局11において、アンテナサイト20から発射する複数の無線信号の中間周波数信号(IF信号)を生成する。通常、TDD基地局11の上りデータ通信中には下りデータ通信は行わないが、上りデータ通信中にも下りIF信号を生成して、IFoF伝送を開始する。アンテナサイト20側では、TDD基地局11の上りデータ通信タイミングで伝送されたIF信号を、信号処理装置23でバッファリングし、タイミング情報に基づいて、TDD基地局11の下り放射タイミングで出力する。
【0034】
図2は、IFoF伝送されるIF信号を時間軸、周波数軸上で示した図である。ここでは、TDDの上り通信期間と下り通信期間との比率が、1:2である場合を示している。これにより、ある時間に伝送する信号数(帯域幅)が減少し、高いSNRでの伝送が可能となる。
図2に示す場合は、光伝送帯域も2/3に削減することが可能となる。また、
図2では、上り/下りのタイミングで伝送するIF信号数(チャネル数)は同一であるが、ある特定のIF信号のみを高品質で伝送したい場合は、そのチャネルのみを上りタイミングで伝送するように構成しても良い。この場合、N-1チャネル分は、従来の下りタイミングで伝送する。また、上り/下りの通信期間が非対称(例えば、1:N)である場合は、TDDの上り伝送タイミング(1/N)で、Nチャネル分のチャネルを用いて、IF信号を使って伝送する。
【0035】
図3は、IFoF伝送されるIF信号を時間軸、周波数軸上で示した図である。ここでは、TDDの上り通信期間と下り通信期間との比率が、1:1である場合を示している。これにより、ある時間に伝送する信号数(帯域幅)が減少し、高いSNRでの伝送が可能となる。
図3に示すように、光伝送帯域が半分となる。
【0036】
図4は、本実施形態に係るTDD基地局の概略構成を示す図である。ここでは、TDDの上り通信期間と下り通信期間との比率が、1:2である場合を示している。また、同一名称の機能ブロックは、同一の機能を有するものとして、重複する説明を省略する。
図4において、TDD基地局11に入力された信号「Data#1」は、S/P111でシリアルパラレル変換され、IFFT113で逆フーリエ変換により、周波数領域の信号から時間領域の信号に変換される。CP115でサイクリックプリフィクスの処理が施された後、Wave form div.117において、波形分割される。ここでは、「Data#1」が「Data#1_1」と「Data#1_2」に分割される。
【0037】
次に、Pre-emphasis119で変調信号の高域を強調する処理が施され、Up comv.121でアップコンバートされ、Mux123、125で合波される。Pre-emphasis119は、RF部品、光部品、光ファイバ伝送に伴う周波数応答を補正する処理を行うことも可能であるが、本発明では、これを必須の構成要件とはしていない。このため、本発明では、Pre-emphasis119を省略することも可能である。この意味で、
図4では、Pre-emphasis119を点線で表示した。SW127で切り替えられて、DAC129でデジタルアナログ変換され、
図5Aまたは
図5Bに示す出力信号(1)を得る。さらに、Control signal generation130で生成された制御信号がMux131で付加されて、
図5Cまたは
図5Dに示す出力信号(2)を得る。1からN/3までのデータは、このような分割処理をされ、出力信号(1)、(2)として、
図5Aまたは
図5Cに示すように出力される。また、N/3+1からNまでのデータは、分割されずに従来通りの処理がされ、出力信号(1)、(2)として、
図5Bまたは
図5Dに示すように出力される。なお、ここでは、制御信号をアナログ回路で多重・分離した例を示したが、本発明は、これに限定されるわけではなく、デジタル回路で同様の処理を行なうことも可能である。
【0038】
図6Aおよび
図6Bは、Wave form div.117の概略構成を示す図である。ここでは、T/2毎に波形を切り出して、一番遅いタイミングに合わせる処理を行なう。上りと下りが非対称である場合、複数に分割することはせず、単に、T秒分遅延を加えればよい。
図6Aに示す構成1に係るWave form div.117aは、SW(スイッチ)とDelay(遅延回路)を備えており、SWが、T/2秒毎に切替を行なう。t=t
0で入力された波形をt=t
1に切り替えて、T/2秒分遅延させると、分割された2つの波形の先頭が、t=t
2で一致する。一方、
図6Bに示す構成2に係るWave form div.117bは、並列接続された2つのfilter(窓関数)と、Delay(遅延回路)を備えており、上側のfilter(窓関数)で、T秒毎に、先のT/2秒分のみを出力し下側のfilter(窓関数)で、T秒毎に、後のT/2秒分のみを出力する。t=t
0で入力された波形をそれぞれのfilter(窓関数)に入力し、t=t
1にそれぞれから波形を出力し、先の波形(上側)をT/2秒分遅延させると、分割された2つの波形の先頭が、t=t
2で一致する。このような処理を行なうことにより、上り伝送期間において、下りIF信号を送信することが可能となる。
【0039】
図7は、アンテナサイト20の信号処理装置23の概略構成を示す図である。ここでは、TDDの上り通信期間と下り通信期間との比率が、1:2である場合を示している。また、同一名称の機能ブロックは、同一の機能を有するものとして、重複する説明を省略する。入力された信号は、Demaux231で分離され、Control signal Detection232で制御信号が検出される。次に、ADC233でアナログデジタル変換が行われる。次に、所望信号のみを抽出するfilter235を介して、Freq.comv.237で周波数変換が行われる。例えば、#1_1と#1_2の信号は、元々が一つの信号であるため、これを復元する。#1_2をDelay238によって遅延させて、Mux239で合波すると、元の信号が復元される。これをBuffering241でバッファリングし、Timing Controler240からの制御を受けて、適切なタイミングでBuffering241から出力する。Timing Controler240からの制御は、TDD基地局11からの制御信号や、上り信号、GPS信号等を利用することが可能である。最後にDAC243でデジタルアナログ変換をすると、所望の出力信号が得られる。このような処理を行なうことにより、上り伝送期間において、下りIF信号を受信し、適切なタイミングで無線信号を送信することが可能となる。なお、ここでは、制御信号をアナログ回路で多重・分離した例を示したが、本発明は、これに限定されるわけではなく、デジタル回路で同様の処理を行なうことも可能である。
【0040】
以上説明したように、本実施形態によれば、TDD無線基地局の上り通信タイミングを有効利用することで、IFoF伝送するIFチャネル数を削減し、高い変調度(高いSNR)でのIF伝送が可能となり、無線信号品質劣化を抑制可能である。また、TDD基地局の上下通信タイミングで伝送するIFチャネル配置を同じとした場合には、RFや光部品で必要な帯域も削減可能であり、コスト低減も期待できる。
【符号の説明】
【0041】
1、100 IFoF伝送システム
10 収容局
11 TDD基地局
13 駆動回路
15 E/O装置
20、102 アンテナサイト
21 O/E装置
23 信号処理装置
25 Amp
27 ANT
30 広帯域IFoF
101 中継局