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  • 特許-光沢剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】光沢剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20240402BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q19/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020036135
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021138631
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】田畑 優子
(72)【発明者】
【氏名】太田 聡子
(72)【発明者】
【氏名】逸見 暁子
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-058813(JP,A)
【文献】特開2017-214346(JP,A)
【文献】特開2002-322219(JP,A)
【文献】特開2001-048755(JP,A)
【文献】特開2005-325041(JP,A)
【文献】村本 尚裕 Naohiro Muramoto,特集 最近の頭髪製品の技術動向を探る,FRAGRANCE JOURNAL Vol.26, No.5,第26巻,津野田 勲 ▲C▼フレグランス ジャーナル社,1998年05月
【文献】頭髪用ムース剤原料添加剤紹介,FRAGRANCE JOURNAL No.70 Vol.13, No.1,第13巻,津野田 勲 ▲C▼フレグランス ジャーナル社,1985年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)と、下記一般式(2)で表されるメタクリル酸エチル由来の構造単位(B)とを有し、
全構造単位100質量%に対して、該構造単位(A)の割合が50~95質量%であり、該構造単位(B)の割合が5~50質量%であり、その他の単量体由来の構造単位の割合が5質量%未満であり、
重量平均分子量が2万~5万である共重合体を含有することを特徴とする皮膚用光沢剤。
【化1】

【化2】
【請求項2】
共重合体の含有量が、0.0001質量%以上30質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚用光沢剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光沢を付与するための光沢剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚や毛髪に良好な光沢・輝きを与え、外観を改善することは、皮膚外用剤の商品価値を高める大切な機能のひとつである。良好な光沢・輝きを与えるための光沢剤として、比較的高い屈折率を有するエモリエントオイル、被膜形成剤等を適用することがある。
【0003】
特許文献1(特表2009-518385号公報)には、ダイマージリノール酸とポリオールとのエステルを化粧料組成物に適用し、審美的性質の組合せに影響を与えることなくこれらの組成物に改良された平均光沢保持力を与え、同時に施与したときに快適な使用感を与えられる技術が記載されている。
特許文献2(特表2015-516442号公報)には、1.4以上の屈折率を有する光沢剤と、300cPs以上の粘度を有する皮膚軟化被膜促進剤と、多糖類被膜形成ポリマーと、を含む皮膚に良好な光沢を与えられる組成物が記載されている。
【0004】
しかし、本発明のメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルとメタクリル酸エチルとの共重合体に、優れた光沢付与効果があることについては記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2009-518385号公報
【文献】特表2015-516442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた光沢付与効果を有する光沢剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を解決するための主な手段は、次のとおりである。
1.下記一般式(1)で表されるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)と、下記一般式(2)で表されるメタクリル酸エチル由来の構造単位(B)とを有し、
全構造単位100質量%に対して、該構造単位(A)の割合が50~95質量%であり、該構造単位(B)の割合が5~50質量%であり、その他の単量体由来の構造単位の割合が5質量%未満であり、
重量平均分子量が2万~5万である共重合体を含有することを特徴とする光沢剤。
【化1】
【化2】
2.共重合体の含有量が、0.0001質量%以上30質量%以下であることを特徴とする1.に記載の光沢剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光沢剤は、光沢付与効果に優れ、皮膚外用剤や化粧品等として皮膚、爪や毛髪に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】光沢効果(反射率)を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、下記一般式(1)で表されるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)と、下記一般式(2)で表されるメタクリル酸エチル由来の構造単位(B)との共重合体(INCI名:(アクリレーツ/メタクリル酸ジメチルアミノエチル)コポリマー)を有効成分として含有する光沢剤に関する。
【0011】
【化1】
【化2】
【0012】
本発明の光沢剤は、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)とメタクリル酸エチル由来の構造単位(B)とを有する共重合体を含有し、
この共重合体は、全構造単位100質量%に対して、
メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)の割合が、50~95質量%、メタクリル酸エチル由来の構造単位(B)の割合が5~50質量%、その他の単量体由来の構造単位の割合が5質量%未満であり、
重量平均分子量が2万~5万である。
【0013】
<共重合体について>
共重合体の全構造単位100質量%に対する構造単位(A)の割合は、50~95質量%であり、50~85質量%が好ましく、50~75質量%がより好ましく、55~65質量%がさらに好ましい例として挙げられる。
共重合体の全構造単位100質量%に対する構造単位(B)の割合は、5~50質量%であり、15~50質量%が好ましく、25~50質量%がより好ましく、35~45質量%がさらに好ましい例として挙げられる。
なお、本明細書において、「A~B」(A、Bは数値)との記載は、A、Bも含む範囲を表す。
【0014】
本発明の共重合体は、上記メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)及びメタクリル酸エチル由来の構造単位(B)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)を有していてもよい。その他の単量体(E)としては、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル及びメタクリル酸エチルと共重合できるものである限り特に制限されない。
【0015】
以下に単量体(E)として用いることが出来る単量体を例示する。
例えば、不飽和モノカルボン酸(塩)であり、(メタ)アクリル酸(塩)などが挙げられる。
例えば、(メタ)アクリル酸とアルキルアルコールとのエステルとして、アルキル(メタ)アクリレート類が挙げられる。この場合アルキル基は直鎖構造であっても、分岐構造であってもよく、炭素数は1~12が好ましい。
例えば、上記(メタ)アクリル酸とアルコールとのエステル(メタ)アクリレート類で、置換基を有するものが挙げられる。この場合置換基としては、水酸基、アルコキシ基、オキシアルキレン基、スルホン基などが挙げられる。
例えば、エチレン性不飽和基を2個以上有する単量体が含まれていてもよい。
例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、1,4-ブタンジオール等のポリオールの2置換以上の水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステル類;上記ポリオールの2置換以上の水酸基とアリルアルコール、ビニルアルコール等の不飽和アルコールとのエーテル類等が挙げられる。
これらその他の単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明の光沢剤におけるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルとメタクリル酸エチルとの共重合体の濃度は、光沢効果が期待できる範囲内であれば特に制限されないが、濃度の下限値は、光沢剤全質量%に対して0.0001質量%以上であることが好ましく、0.001質量%以上であることがさらに好ましい。また、濃度の上限値は、光沢剤全質量%に対して30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0017】
本発明の光沢剤は、光沢を付与することを目的とする添加剤として提供され、また、本発明の光沢剤は、光沢を付与することを目的とする、皮膚外用剤、化粧料、医薬部外品、医薬品として提供されるものであって、通常使用される製剤化方法にしたがって製造することができ、化粧水、乳液、クリーム、ジェル等の、溶液状、乳化物状、高分子ゲル状製剤、また、泡状製剤、多層状製剤、スプレー製剤、不織布等に含浸させたシートあるいはゲルパック製剤とすることができる。この光沢剤には、植物油のような油脂類、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、防腐剤、糖類、金属イオン封鎖剤、水溶性高分子のような高分子、増粘剤、粉体成分、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、ヒアルロン酸のような保湿剤、香料、pH調整剤等を含有させることができる。ビタミン類、皮膚賦活剤、血行促進剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、美白剤、殺菌剤等の他の薬効成分、生理活性成分を含有させることもできる。
【実施例
【0018】
以下、実施例に基づいて本発明について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)>
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。測定条件、装置などは以下の通りである。
装置:Waters社製 e2695
検出器:示差屈折率計(RI)検出器
カラム:東ソー社製 TSKgel α-M、α-2500
カラム温度:40℃
流速:0.8mL/min
注入量:10μL(試料濃度0.4wt%の溶離液調製溶液)
検量線:ジーエルサイエンス社製 ポリエチレングリコール
GPCソフト:Waters社製 EMPOWER3
溶離液:0.5M酢酸+0.2M硝酸Na/アセトニトリル=50/50(v/v)
【0020】
<光沢付与効果の確認試験>
本発明のメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルとメタクリル酸エチルとの共重合体(INCI名:(アクリレーツ/メタクリル酸ジメチルアミノエチル)コポリマーとして、全構造単位100質量%に対してメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルが約87質量%、メタクリル酸エチルが約10質量%、アクリル酸が約3質量%であり、分子量が約40000である共重合体(以下、共重合体(1))と、全構造単位100質量%に対してメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルが約60質量%、メタクリル酸エチルが約40質量%であり、分子量が約30000である共重合体(以下、共重合体(2))を用いた。
比較例として、同じINCI名である(アクリレーツ/メタクリル酸ジメチルアミノエチル)コポリマー(ジュリマーET-410、東亞合成(株)、重量平均分子量が1万未満)、キサンタンガム(DSP五協フード&ケミカル(株)製 ケルトロールT)、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製 ゴーセノールEG-05C)を用いた。
【0021】
人工皮革8×5cmに各検体1%含有水溶液または精製水を50μLずつ塗り広げ、60分間自然乾燥させた。処理した人工皮革と未処理の人工皮革を光沢計micro-TRI-gloss((株)テツタニ)の測定用台座に固定し、リップグロスなどの光沢測定で一般的に用いる角度である60°の角度設定にて反射率を測定した。なお、精製水における反射率を1とした相対値を求めた。
【0022】
結果を表1、図1に示す。
【表1】
【0023】
(結果)
比較例1(精製水)に比べ、ポリマーを塗布した比較例2~4並びに本発明の共重合体を塗布した実施例1,2は、反射率が高くなり、光沢付与効果があることを確認できた。
本発明の共重合体と同じ化粧品表示名称であるポリマーを塗布した比較例2や化粧料に一般的に用いられるポリマーを塗布した比較例3,4に比べ、本発明の共重合体を塗布した実施例1,2は、優れた光沢付与効果があることを確認できた。
【0024】
(処方例1) 化粧水(光沢付与剤)
共重合体(1) 1%
1,3-ブチレングリコール 6%
グリセリン 4%
ジプロピレングリコール 1%
ソルビット 1%
クエン酸 0.1%
エタノール 5%
水 残余
【0025】
(処方例2) クリーム(光沢付与剤)
共重合体(1) 1%
スクワラン 9%
ワセリン 5%
ステアリン酸 2%
ベヘニルアルコール 3%
1,3-ブチレングリコール 6%
ソルビット 1%
モノステアリン酸グリセリン 2%
POE(20)ソルビタンモノオレイン酸エステル 2%
水 残余
図1