(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】環境配慮型不燃シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20240402BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240402BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/00 E
B32B27/20 Z
(21)【出願番号】P 2019148443
(22)【出願日】2019-08-13
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】大島 野乃花
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-080703(JP,A)
【文献】特開2019-042958(JP,A)
【文献】特開2019-042959(JP,A)
【文献】特開2010-064341(JP,A)
【文献】特開平10-258488(JP,A)
【文献】特開2017-080909(JP,A)
【文献】特開2000-326458(JP,A)
【文献】特開平10-211638(JP,A)
【文献】特開2018-043361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原反層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、及び表面保護層をこの順に備え、
前記原反層は、PLA樹脂と、無機質材料とを含み、
前記無機質材料の含有量は、前記原反層の質量に対して、15質量%以上90質量%以下の範囲内であり、
前記絵柄模様層及び前記表面保護層の少なくとも一層は、PLA樹脂
と、ウレタン樹脂とを含むことを特徴とする環境配慮型不燃シート。
【請求項2】
前記透明熱可塑性樹脂層は、PLA樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の環境配慮型不燃シート。
【請求項3】
前記PLA樹脂は、非晶質PLA樹脂を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の環境配慮型不燃シート。
【請求項4】
前記無機質材料は、粉末形状であり、平均粒子径が1μm以上3μm以下の範囲内であり、且つ最大粒子径が50μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の環境配慮型不燃シート。
【請求項5】
前記無機質材料は、三酸化アンチモン、アンチモンソーダ、珪酸ジルコン、酸化ジルコン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、硼砂、ホウ酸亜鉛、炭酸カルシウム、三酸化モリブデンあるいはジモリブデン酸アンチモンと水酸化アルミニウムとの錯体、三酸化アンチモンとシリカとの錯体、三酸化アンチモンと亜鉛華との錯体、ジルコニウムのケイ酸、及びジルコニウム化合物と三酸化アンチモンとの錯体、並びにそれらの塩の少なくとも一種であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の環境配慮型不燃シート。
【請求項6】
前記無機質材料は、三酸化アンチモン、アンチモンソーダ、珪酸ジルコン、酸化ジルコン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、硼砂、ホウ酸亜鉛、三酸化モリブデンあるいはジモリブデン酸アンチモンと水酸化アルミニウムとの錯体、三酸化アンチモンとシリカとの錯体、三酸化アンチモンと亜鉛華との錯体、ジルコニウムのケイ酸、及びジルコニウム化合物と三酸化アンチモンとの錯体、並びにそれらの塩の少なくとも一種であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の環境配慮型不燃シート。
【請求項7】
前記無機質材料は、シリカ、三酸化アンチモン及び酸化ジルコンのいずれか1種のみであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の環境配慮型不燃シート。
【請求項8】
前記PLA樹脂と、前記無機質材料との合計含有量は、前記原反層の質量に対して、90質量%以上100質量%以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の環境配慮型不燃シート。
【請求項9】
前記原反層の厚みは、50μm以上250μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の環境配慮型不燃シート。
【請求項10】
前記原反層の前記絵柄模様層側の面に形成された第1のアンカー層と、
前記原反層の前記第1のアンカー層が形成された面とは反対側の面に形成された第2のアンカー層と、をさらに備え、
前記第1のアンカー層及び前記第2のアンカー層は、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂をそれぞれ含むことを特徴とする請求項1から請求項
9のいずれか1項に記載の環境配慮型不燃シート。
【請求項11】
前記第1のアンカー層の厚みは、0.5μm以上20μm以下の範囲内であり、
前記第2のアンカー層の厚みは、0.5μm以上20μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項
10に記載の環境配慮型不燃シート。
【請求項12】
前記第1のアンカー層の厚みは、前記第2のアンカー層の厚みと同じであることを特徴とする請求項
10または請求項1
1に記載の環境配慮型不燃シート。
【請求項13】
前記第1のアンカー層の厚みは、前記第2のアンカー層の厚みよりも厚い、または薄いことを特徴とする請求項
10または請求項1
1に記載の環境配慮型不燃シート。
【請求項14】
前記透明熱可塑性樹脂層は、前記絵柄模様層側に形成され、第1の樹脂を含んで形成される第1の樹脂層と、前記第1の樹脂層上に形成され、前記第1の樹脂とは異なる第2の樹脂を含んで形成される第2の樹脂層とを備え、
前記第1の樹脂及び前記第2の樹脂のいずれか一方は、PLA樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項1
3のいずれか1項に記載の環境配慮型不燃シート。
【請求項15】
前記透明熱可塑性樹脂層は、前記絵柄模様層側に形成され、第1の樹脂を含んで形成される第1の樹脂層と、前記第1の樹脂層上に形成され、前記第1の樹脂とは異なる第2の樹脂を含んで形成される第2の樹脂層とを備え、
前記第1の樹脂は、透明ポリプロピレン樹脂であり、
前記第2の樹脂は、透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項1
3のいずれか1項に記載の環境配慮型不燃シート。
【請求項16】
ISO5660-1に準拠したコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験において(1)加熱開始後20分間の総発熱量(MJ/m
2)が8MJ/m
2以下であり(2)加熱開始後20分間の最高発熱速度として、10秒以上継続して200kW/m
2を超えず(3)基材に亀裂や穴のないという条件を満たす不燃性を有することを特徴とする請求項1から請求項1
5のいずれか1項に記載の環境配慮型不燃シート。
【請求項17】
前記無機質材料は、その表面が、有機リン系表面処理剤、無機リン酸系表面処理剤、ポリカルボン酸系表面処理剤及びカップリング剤系表面処理剤の少なくとも1種で処理されていることを特徴とする請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の環境配慮型不燃シート。
【請求項18】
前記無機質材料は、その表面が、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、縮合リン酸及びシリコーン系オイルの少なくとも1種で処理されていることを特徴とする請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の環境配慮型不燃シート。
【請求項19】
前記絵柄模様層は、前記PLA樹脂と、前記ウレタン樹脂とを含むことを特徴とする請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の環境配慮型不燃シート。
【請求項20】
前記表面保護層は、前記PLA樹脂と、前記ウレタン樹脂とを含むことを特徴とする請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の環境配慮型不燃シート。
【請求項21】
前記原反層は、樹脂成分として前記PLA樹脂のみを含むことを特徴とする請求項1から請求項20のいずれか1項に記載の環境配慮型不燃シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境配慮型不燃シートに関する。
【背景技術】
【0002】
不燃性または難燃性を備えたシートである不燃シートには、基材となる層である原反層に無機質材料を含んだものがある。そして、このシートに関する技術としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境問題に対する関心が高くなっており、不燃シートにおいても、その廃棄時における環境に対する負担の軽減が望まれている。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、生分解性を有する不燃シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る不燃シートは、原反層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、及び表面保護層をこの順に備え、前記原反層は、PLA樹脂と、無機質材料とを含み、前記無機質材料の含有量は、前記原反層の質量に対して、15質量%以上90質量%以下の範囲内である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様に係る不燃シートであれば、生分解性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る不燃シートの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して、本発明の実施形態を以下において説明する。ただし、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係や、各層の厚さの比率等は、現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚さや寸法は、以下の説明を参酌して判断すべきものである。
さらに、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質や、それらの形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(不燃シート10の構成)
本実施形態の不燃シート(環境配慮型不燃シート)10の構造の例を
図1に示す。不燃シート10は、プライマー層8、裏面アンカー層1b、原反層(基材層)1、表面アンカー層1a、絵柄模様層2、接着剤層5、透明熱可塑性樹脂層6、及び表面保護層7がこの順に積層されている。また、原反層1は、ポリ乳酸樹脂(PLA樹脂)と無機質材料とを含有しており、その無機質材料の含有量は、原反層1の質量に対して、15質量%以上90質量%以下の範囲内である。
なお、透明熱可塑性樹脂層6は、接着剤層5側に形成され、第1の樹脂を含む第1の樹脂層6aと、第1の樹脂層6a上に形成され、第1の樹脂とは異なる第2の樹脂を含む第2の樹脂層6bとを備えてもよい。さらに、第1の樹脂及び第2の樹脂のいずれか一方は、PLA樹脂であってもよい。
【0010】
以下、上記各層の詳細について説明する。
〔原反層(基材層)1〕
原反層1は、不燃シート10の基材となる層(シート)であって、PLA樹脂と、無機質材料とを含んだ層である。
<無機質材料>
本実施形態の無機質材料の含有量は、原反層1の質量に対して、15質量%以上90質量%以下の範囲内であればよく、20質量%以上80質量%以下の範囲内であればより好ましく、60質量%以上80質量%以下の範囲内であればさらに好ましい。無機質材料の含有量が原反層1の質量に対して、15質量%未満であると、相対的にPLA樹脂の割合が多くなるため、原反層1の表面をホフマンスクラッチテスターを用いて引っ掻いた際に、視認できる程度の傷が付く、即ち十分な表面硬度が得られないことがある。一方、無機質材料の含有量が原反層1の質量に対して、90質量%を超えると、相対的にPLA樹脂の割合が少なくなる。このため、原反層1表面にアンカー層塗工もしくは印刷等を行った際に原反層1表面に所謂「粉吹き」が発生することがある。ここで、「粉吹き」とは、原反層1に含まれた無機質材料が原反層1の表面に浮き出ることをいう。また、絵柄模様層2の形成時に、原反層1から浮き出た無機質材料によってインキが積層しにくくなる、即ち印刷適性が低下することがある。また、表面アンカー層1a、裏面アンカー層1b、絵柄模様層2、接着剤層5、透明熱可塑性樹脂層6、及び表面保護層7の少なくとも一つを形成したシートをロール状または枚葉で木質系基材及び石系基材にラミネートする際にラミネートしにくくなる、即ちラミネート適性が低下する傾向がある。また、表面アンカー層1a、裏面アンカー層1b、絵柄模様層2、接着剤層5、透明熱可塑性樹脂層6、及び表面保護層7の少なくとも一つを形成したシートを折り曲げて再び開いた際に、折り曲げた部分から割れが発生したり、無機質材料が落ちたりすることがある。また、絵柄模様層2を形成したシートの表面にセロハンテープを圧着した後、強く引き剥がし、絵柄模様層2内または原反層1(表面アンカー層1a)と絵柄模様層2との間で剥離が生じる、即ちインキ密着性が低下することがある。
【0011】
このように、本実施形態の無機質材料の含有量が原反層1の質量に対して、15質量%以上90質量%以下、好ましくは20質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは60質量%以上80質量%以下の範囲内であれば、粉吹きの発生を低減し、印刷適性を向上させ、ラミネート適性を向上させ、且つシートの折り曲げ部における割れの発生を低減することができ、さらに十分な表面硬度を得ることができ、インキ密着性を向上させることできる。
【0012】
また、本実施形態の無機質材料は、粉末形状(粉体形状)であることが好ましく、その平均粒子径が1μm以上3μm以下の範囲内であり、且つ最大粒子径が50μm以下であることが好ましい。無機質材料の平均粒子径及び最大粒子径が上記数値範囲内であれば、PLA樹脂に対する無機質材料の分散性を向上させつつ、原反層1表面の平坦性を維持することができる。無機質材料の平均粒子径が1μm未満であると、無機質材料同士の凝集力が高まり、PLA樹脂への分散性が低下することがある。また、無機質材料の平均粒子径が3μmを超えると、原反層1表面の平坦性が低下し、表面アンカー層1aまたは裏面アンカー層1bの厚みが不均一となったり、ムラや欠けが発生したりすることがある。また、無機質材料の最大粒子径が50μmを超えると、原反層1表面の平坦性が低下し、表面アンカー層1aまたは裏面アンカー層1bの厚みが不均一となったり、ムラや欠けが発生したりすることがある。なお、本実施形態において、「平均粒子径」とは、モード径を意味する。
【0013】
無機質材料は、例えば、炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩の少なくとも一方を含有した粉末である。炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩の少なくとも一方を含む粉体は、炭酸カルシウム等を50質量%以上100質量%以下の範囲内で含むものが好ましい。つまり、炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩の少なくとも一方を含む粉体の純度は、炭酸カルシウム等が50質量%以上100質量%以下の範囲内であることが好ましい。炭酸カルシウム等の含有量が50質量%以上である粉体であれば、原反層1に、十分な不燃性または十分な難燃性を付与することができると共に、十分な機械強度を付与することができる。
また、無機質材料が炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩の少なくとも一方を含有した粉末であれば、炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩は高い生分解性を有するため、原反層1の生分解性が向上し、より環境に配慮した不燃シートとなる。
なお、無機質材料として用いる炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩が、貝殻や卵殻由来の炭酸カルシウム及びその塩であれば、さらに環境に配慮した不燃シートとなる。
【0014】
なお、無機質材料としては、上記炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩の少なくとも一方を含む粉体以外に、例えば、シリカ(特に中空シリカ)、アルミナ、三酸化アンチモン、アンチモンソーダ、珪酸ジルコン、酸化ジルコンなどのジルコニウム化合物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、硼砂、ホウ酸亜鉛、三酸化モリブデンあるいはジモリブデン酸アンチモンと水酸化アルミニウムとの錯体など、三酸化アンチモンとシリカとの錯体、三酸化アンチモンと亜鉛華との錯体、ジルコニウムのケイ酸、ジルコニウム化合物と三酸化アンチモンとの錯体、並びにそれらの塩などの少なくとも一種が挙げられる。特に、炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩は製造手法による粒径のコントロールやPLA樹脂との相溶性の制御が容易であり、また、材料コストとしても安価であるため不燃シートの低廉化の観点からも好適である。
【0015】
また、無機質材料は、結晶性を有する粉末材料、所謂結晶粉末であってもよいし、結晶性を有さない粉末材料、所謂アモルファスタイプの粉末材料であってもよい。無機質材料が結晶性を有する粉末材料であれば、粉末自体が均質で等方性を備えるため、粉末自体の機械強度が向上し、不燃シートの耐傷性や耐久性が向上する傾向がある。また、無機質材料がアモルファスタイプの粉末材料であれば、粉末自体の電気伝導性や熱伝導性、あるいは光透過率や光吸収率を適宜調整することが可能となるため、触感や艶等のバリエーションが豊富な意匠性を付与することが可能となる。
【0016】
表面が被覆されていない炭酸カルシウム等の無機質材料は、一般に粉体の流動性が低く、また耐アルカリ性も高くないため、色相に変化が生じ易い傾向がある。
これに対し、前処理、即ち表面処理した炭酸カルシウム等の無機質材料を用いた場合には、一般に粉体の流動性が改善され、耐アルカリ性、及び色相が改善される傾向がある。また、前処理に適切な処理剤を選定することで耐候性も改良することが可能となる。
そこで、本実施形態では、炭酸カルシウム等の無機質材料について、粉体の流動性改善、耐アルカリ性、色相改善、その他、炭酸カルシウム填料の特性を向上させる目的で、必要に応じて、各種表面処理剤で表面処理(被覆)をしてもよい。以下、この点について説明する。
【0017】
本実施形態の無機質材料は、その表面が、有機リン系表面処理剤、無機リン酸系表面処理剤、ポリカルボン酸系表面処理剤及びカップリング剤系表面処理剤の少なくとも1種で処理されたものであってもよい。なお、本実施形態において「表面処理」とは、表面処理剤によってその表面が覆われている、即ち表面が被覆されていることをいう。
【0018】
無機質材料の表面処理に使用可能な有機リン系表面処理剤としては、例えば、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル、リン酸メチル酸、リン酸エチル酸等の有機リン酸系やそれらの塩類が挙げられる。
また、無機質材料の表面処理に使用可能な無機リン酸系表面処理剤としては、例えば、ピロリン酸やポリリン酸類、ヘキサメタリン酸に代表される縮合リン酸やその塩類が挙げられる。
なお、これらの表面処理剤は、単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いることができる。
【0019】
また、無機質材料の表面処理に使用可能なポリカルボン酸系表面処理剤としては、例えば、ポリアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸や、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等のジカルボン酸が挙げられる。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。また、ポリプロピレングリコール(PPG)やポリエチレングリコール(PEG)等の官能基を有する化合物との共重合物も問題なく使用できる。
【0020】
また、無機質材料の表面処理に使用可能なカップリング剤系表面処理剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートで代表されるチタネート系カップリング剤、メチルハイドロジェンで代表されるシリコーン系オイル等が挙げられる。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0021】
これら表面処理剤の中でも、樹脂への相溶性や、耐熱性、及び炭酸カルシウム等の無機質材料の不活性化や脱水・脱気性の観点から、リン酸トリメチル(TMP)やリン酸トリエチル(TEP)、縮合リン酸類、シリコーン系処理が好ましい。特に、エステル結合を有するポリエステル系樹脂の場合、耐アルカリ性が低いために表面処理剤は好適である。
【0022】
表面処理剤の使用量は、炭酸カルシウム等の無機質材料の比表面積や、コンパウンド条件等に応じて変わるので一概には規定し難いが、本実施形態の目的用途から、通常、炭酸カルシウム等の無機質材料に対して0.01質量%以上5質量%以下の範囲内が好ましい。使用量が0.01質量%未満では充分な表面処理効果が得られ難く、一方、5質量%を超えて添加した場合、樹脂混練時に表面処理剤が分解揮発等により樹脂の色相を黄変化するなどの問題が生じる可能性があるため、より好ましくは0.05質量%以上3質量%以下の範囲内、さらに好ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下の範囲内である。
【0023】
炭酸カルシウム等の無機質材料への表面処理方法としては、例えばスーパーミキサーやヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、ニーダーミキサー、バンバリーミキサー等のミキサーを用い、炭酸カルシウム等の無機質材料粉体に直接表面処理剤を混合し、必要に応じて加熱して表面処理する乾式処理法や、表面処理剤を水溶媒等で溶解し、炭酸カルシウム等の無機質材料懸濁液中に必要に応じて加熱して表面処理した後、脱水、乾燥する湿式処理法、または、その両者の複合で炭酸カルシウム等の無機質材料懸濁液を脱水したケーキを表面処理してもよい。
また、原反層1の効能を阻害しない範囲で、必要に応じて、例えば滑剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、スリップ剤、着色剤等を配合してもよい。
【0024】
<PLA樹脂>
PLA樹脂は、結晶質PLA(c-PLA)樹脂と非晶質PLA(a-PLA)樹脂に分けることができる。このとき、結晶質PLA樹脂の場合は可塑剤がシート表面に染み出るブリーディング(bleeding)現象が発生し得る。このため、本実施形態では、非晶質PLA樹脂を使用することが好ましい。非晶質PLA樹脂を使用する場合、ブリーディング現象を防ぐために必須的に添加されていた相溶化剤が添加されなくてもよいという長所がある。非晶質PLA樹脂を使用する場合、PLA樹脂は100%非晶質PLA樹脂を使用することが最も好ましく、必要に応じて結晶質と非晶質が共存するPLA樹脂を使用することができる。また、PLA樹脂を使用することで、無機質材料の分散性がさらに向上する。
【0025】
また、PLA樹脂と無機質材料との合計含有量は、原反層1の質量に対して、90質量%以上100質量%以下の範囲内であることが好ましい。PLA樹脂と無機質材料との合計含有量が上記数値範囲内であれば、十分な表面強度を得つつ、印刷適性やラミネート適性を向上させ、且つシートの折り曲げ部に発生する割れを低減することができる。PLA樹脂と無機質材料との合計含有量が原反層1の質量に対して、90質量%未満であると、十分な表面強度が得られないことがある。また、印刷適性やラミネート適性が低下したり、シートの折り曲げ部に割れが発生したりすることがある。
【0026】
なお、PLA樹脂と無機質材料との合計含有量は、原反層1の質量に対して、100質量%である場合には、PLA樹脂の含有量を10質量%以上85質量%以下の範囲内とし、無機質材料の含有量を15質量%以上90質量%以下の範囲内とすることが好ましい。また、PLA樹脂の含有量を20質量%以上80質量%以下の範囲内とし、無機質材料の含有量を20質量%以上80質量%以下の範囲内とすることがより好ましい。また、PLA樹脂の含有量を20質量%以上40質量%以下の範囲内とし、無機質材料の含有量を60質量%以上80質量%以下の範囲内とすることがさらに好ましい。PLA樹脂と無機質材料との合計含有量が上記数値範囲内であれば、十分な表面強度を確実に得つつ、印刷適性やラミネート適性を確実に向上させ、且つシートの折り曲げ部に発生する割れを確実に低減することができる。
【0027】
また、原反層1の厚みは、50μm以上250μm以下の範囲内であることが好ましく、70μm以上200μm以下の範囲内であることがより好ましい。原反層1の厚みが上記数値範囲内であれば、シート全体の機械強度が向上し、且つシートの折り曲げ部に発生する割れを低減することができる。原反層1の厚みが50μm未満であると、ラミネート適性が低下する傾向がある。また、原反層1の厚みが250μmを超えると、シートの折り曲げ部に割れが発生することがある。
【0028】
なお、原反層1の表面(絵柄模様層2側の面)及び裏面(プライマー層8側の面)の少なくとも一方に、例えば、表面アンカー層(第1のアンカー層)1a及び裏面アンカー層(第2のアンカー層)1bを形成する前に、コロナ処理やプラズマ処理等の表面処理を施すことが好ましい。原反層1の表面及び裏面の少なくとも一方に、コロナ処理やプラズマ処理等の表面処理を施すことで、表面アンカー層1a及び裏面アンカー層1bと、原反層1との接着性(密着性)が向上する。
また、表面アンカー層1a及び裏面アンカー層1bを形成する前に、例えば、原反層1の表面及び裏面の少なくとも一方をブラッシングして、粉吹きした無機質材料、例えば炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩の少なくとも一方を含む粉体を事前に落とすようにしてもよい。
【0029】
〔表面アンカー層〕
表面アンカー層1aは、原反層1の表面全体を覆うように形成された層であって、原反層1に含まれる無機質材料の粉落ちを防止するための層である。印刷時や樹脂塗工時に原反層1に含まれる無機質材料が印刷系内、具体的には印刷装置内で粉落ちすると、その印刷系内を汚染することがある。また、原反層1に含まれる無機質材料が粉落ちすると、インキ抜け等の不具合が発生する可能性がある。ここで、「インキ抜け」とは、インキが部分的に印刷されないことをいう。
【0030】
また、表面アンカー層1aは、原反層1と、絵柄模様層2を形成するインキとの密着性を向上させるための機能も備えている。表面アンカー層1aを備えない場合には、絵柄模様層2を形成するインキが原反層1に密着せずに剥離してしまうことがある。
表面アンカー層1aは、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂を含有していることが好ましい。ここで、「塩酢ビ」とは、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体を意味する。また、「塩酢ビを含むウレタン系樹脂」とは、塩酢ビとウレタン系樹脂とを含んだ組成物であり、塩酢ビの含有量とウレタン系樹脂の含有量との比(塩酢ビの含有量(質量)/ウレタン系樹脂の含有量(質量))は80/20~1/99の範囲内であればよく、50/50~5/95の範囲内であれば好ましく、20/80~10/90の範囲内であればさらに好ましい。
【0031】
また、「塩酢ビを含むウレタン系樹脂」は、前述の塩酢ビ及びウレタン系樹脂以外に硬化剤を含んでいてもよい。この硬化剤は、塩酢ビを含むウレタン系樹脂を確実に硬化させるために添加されるものであり、その含有量については特に限定されない。例えば、塩酢ビを含むウレタン系樹脂の含有量と、硬化剤の含有量との比(塩酢ビを含むウレタン系樹脂の含有量(質量)/硬化剤の含有量(質量))は99/1~1/99の範囲内であればよく、99/1~50/50の範囲内であれば好ましく、95/5~90/10の範囲内であればさらに好ましい。
【0032】
表面アンカー層1aにおける、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量は、表面アンカー層1aの質量に対し、15質量%以上100質量%以下の範囲内が好ましく、80質量%以上100質量%以下の範囲内がより好ましく、85質量%以上95質量%以下の範囲内がさらに好ましい。表面アンカー層1aにおける、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が上記数値範囲内であれば、表面アンカー層1aと絵柄模様層2との層間強度を十分なものにしつつ、均一でムラや欠けのない表面アンカー層1aを形成することができる。表面アンカー層1aにおける、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が表面アンカー層1aの質量に対し、15質量%未満であると、表面アンカー層1aと絵柄模様層2との層間強度が不十分となることがある。また、表面アンカー層1aにおける、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が表面アンカー層1aの質量に対し、80質量%未満であると、使用上何ら問題はないが、表面アンカー層1aの原反層1への食い込み比率が低下し、表面アンカー層1aと原反層1との層間強度が低下することが僅かながらある。なお、表面アンカー層1aにおける、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が表面アンカー層1aの質量に対し、100質量%以下であれば使用上何ら問題はないが、95質量%、より正確には98質量%を超えると、硬化不足で表面アンカー層1aに欠けが生じたり、表面アンカー層1aと原反層1、もしくは表面アンカー層1aと絵柄模様層2との層間強度が低下したりすることがある。
【0033】
また、表面アンカー層1aにおける塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量は、裏面アンカー層1bにおける塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量と同じであってもよい。即ち、表面アンカー層1aにおける塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量は、裏面アンカー層1bにおける塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量の1.0倍(0.95倍以上1.04倍以下の範囲内)であってもよい。表面アンカー層1aにおける塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が、裏面アンカー層1bにおける塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量と同じである場合には、表面アンカー層1aの物性と裏面アンカー層1bの物性がほぼ同じになるため、原反層1が表面アンカー層1a及び裏面アンカー層1bを備えた状態において、歪みや反り等の発生を低減することができる。そのため、不燃シート全体の歪みや反り等の発生を低減することができる。また、表面アンカー層1aを形成するための塗工液と、裏面アンカー層1bを形成するための塗工液とを共通化することができるため、製造コストを低減するとともに、作業効率を向上させることができる。
【0034】
また、表面アンカー層1aにおける塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量は、裏面アンカー層1bにおける塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量よりも多くてもよいし、少なくてもよい。表面アンカー層1aにおける塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が、裏面アンカー層1bにおける塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量よりも多い、または少ない場合には、表面アンカー層1aの物性と裏面アンカー層1bの物性が異なるため、表面アンカー層1a及び裏面アンカー層1bを備えた原反層1に、歪みや反り等を付与することができる。このように、表面アンカー層1a及び裏面アンカー層1bを備えた原反層1に歪みや反り等を付与することで、その原反層1を湾曲した表面を備える基材等に隙間なく貼り合せることができる。例えば、表面アンカー層1aにおける塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量は、裏面アンカー層1bにおける塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量の1.1倍以上10倍以下であってもよく、0.1倍以上0.9倍以下であってもよい。
【0035】
表面アンカー層1aの厚みは、例えば、0.5μm以上20μm以下の範囲内であり、好ましくは、0.5μm以上10μm以下の範囲内である。また、表面アンカー層1aの厚みは、裏面アンカー層1bの厚みと同じであってもよい。表面アンカー層1aの厚みが裏面アンカー層1bの厚みと同じである場合には、表面アンカー層1aの物性と裏面アンカー層1bの物性がほぼ同じになるため、原反層1が表面アンカー層1a及び裏面アンカー層1bを備えた状態において、歪みや反り等の発生を低減することができる。
また、表面アンカー層1aの厚みは、裏面アンカー層1bの厚みよりも厚くてもよいし、薄くてもよい。表面アンカー層1aの厚みと裏面アンカー層1bの厚みを異なるものとすることで、光沢差が生じるため、原反層1の表面側と裏面側とを容易に視認することができる。そうすることで、原反層1の表面に、例えば印刷面であることを表示する識別マーク等を形成することなく、絵柄模様層2を印刷することができる。その結果、原反層1の裏面(非印刷面)側に絵柄模様層2を形成することで生ずる製品ロスを低減することができる。
【0036】
〔絵柄模様層2〕
原反層1(表面アンカー層1a)の表面には、任意の絵柄が印刷された絵柄模様層2が設けられる。絵柄模様層2のなす絵柄の種類は特に限定されず、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、砂目柄、抽象柄、幾何学図形、文字又は記号、或いはそれらの組み合わせ等である。絵柄模様層2の形成に使用する印刷インキの種類は特に限定されず、不燃シートの形成に使用されている公知の印刷インキを使用することができる。具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂系、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂系、ブチラール系、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系、アルキド系、ポリアミド系等のバインダー樹脂に、有機又は無機の染料又は顔料や、必要に応じて体質顔料、充填剤、粘着付与剤、分散剤、消泡剤、安定剤その他の添加剤を適宜添加し、適当な希釈溶剤で所望の粘度に調整した印刷インキであってもよい。
また、絵柄模様層2は、PLA樹脂を含んだ層であってもよい。PLA樹脂の含有量が、絵柄模様層2全体の質量に対し、50質量%以上100質量%以下であれば、絵柄模様層2の生分解性が向上する。
また、絵柄模様層2を形成するインキとして、セルロース由来のインキを用いてもよい。絵柄模様層2を形成するインキとしてセルロース由来のインキを用いた場合には、絵柄模様層2の生分解性がさらに向上する。
【0037】
〔接着剤層5〕
絵柄模様層2の上には接着剤層5が形成されている。接着剤層5は、絵柄模様層2の上に、接着剤層5を形成するための組成物を塗布して形成してもよい。接着剤層5に含まれる接着剤は、透明熱可塑性樹脂層6に含まれる透明熱可塑性樹脂の組み合わせに応じて、例えば、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系等の中から任意に選択可能である。
【0038】
〔透明熱可塑性樹脂層6〕
透明熱可塑性樹脂層6は、エンボスが形成された層であって、例えば、複数層からなるシート状の層である。透明熱可塑性樹脂層6を構成する各層は、絵柄模様層2の絵柄が透けて見えるように、例えば透明な熱可塑性樹脂で形成される。透明熱可塑性樹脂層6に含まれる熱可塑性樹脂は、透明であればよく、例えば、塩化ビニル樹脂以外の種々の樹脂であってもよい。透明熱可塑性樹脂層6を構成する各層の樹脂の組み合わせは、目的とする特性により、様々な組合せが可能である。透明熱可塑性樹脂層6において、層の数は、4層以上も可能だが、押出し機の構造が複雑化し作業の煩雑さが大きくなるため、3層までが好ましい。もちろん、2層であってもよいし、1層であってもよい。
【0039】
また、透明熱可塑性樹脂層6の厚みは、50μm以上150μm以下の範囲内であれば好ましい。透明熱可塑性樹脂層6の厚みが上記数値範囲内であれば、高い透明性が維持されるため絵柄模様層2に対する視認性の低下を防止でき、且つ十分な摩耗耐性を得ることができる。また、透明熱可塑性樹脂層6の厚みが上記数値範囲内であれば、不燃シート10としての可撓性と機械強度を損なうことがなく、またインラインでのロールラミネートなど化粧板への加工性、さらに化粧板としての加工性などに支障をきたすことがなく、使い勝手がよい。
図1では、透明熱可塑性樹脂層6は、接着剤層5側から、予め定めた樹脂(以下、「第1の樹脂」とも呼ぶ)を含んで構成される第1の樹脂層6a、及び第1の樹脂とは異なる樹脂(以下、「第2の樹脂」とも呼ぶ)を含んで構成される第2の樹脂層6bの2層がこの順に積層されて形成されている。
【0040】
本実施形態において、第1の樹脂層6aの厚みは、10μm以上であればよく、透明熱可塑性樹脂層6全体の厚みの20%以下であればよい。第1の樹脂層6aの厚みが10μm未満であれば、塗膜の厚みの均一性、または平面平滑性が低下するため、第1の樹脂層6aの密着安定性が低下する傾向がある。
また、第1の樹脂層6aの厚みが透明熱可塑性樹脂層6全体の厚みの20%超であれば、相対的に、摩耗耐性に優れた第2の樹脂層6bの厚みが薄くなるため、不燃シート10全体の表面強度が低下する傾向がある。つまり、第1の樹脂層6aの厚みが10μm以上であり、且つ透明熱可塑性樹脂層6全体の厚みの20%以下であれば、第1の樹脂層6aの密着安定性を維持しつつ、不燃シート10全体の表面強度を維持することができる。また、第1の樹脂層6aの厚みは、10μm以上であり、且つ第1の樹脂層6a及び第2の樹脂層6bの2層のみで構成された透明熱可塑性樹脂層6全体の厚みの20%以下であってもよく、その場合であっても第1の樹脂層6aの密着安定性を維持しつつ、不燃シート10全体の表面強度を維持することができる。
また、第1の樹脂層6a及び第2の樹脂層6bのいずれか一方は、PLA樹脂であってもよい。第1の樹脂層6a及び第2の樹脂層6bのいずれか一方がPLA樹脂であれば、透明熱可塑性樹脂層6に高い生分解性を付与することができる
【0041】
なお、第1の樹脂層6aは、第1の樹脂であるPLA樹脂とともに、紫外線吸収剤及び光安定剤のいずれか一方を含んで構成される層であってもよい。また、第2の樹脂層6bは、第2の樹脂であるPLA樹脂とともに、紫外線吸収剤及び光安定剤のいずれか一方を含んで構成される層であってもよい。
第1の樹脂層6a及び第2の樹脂層6bにおけるPLA樹脂の含有量は、各樹脂層全体の質量に対し、50質量%以上100質量%以下の範囲内であれば、各樹脂層の生分解性が向上する。
【0042】
また、透明熱可塑性樹脂層6に添加する紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系等から適宜選定する。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール,2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール,2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体を用いることができる。
【0043】
また、トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソ-オクチルオキシフェニル)-s-トリアジン等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体を用いることができる。
【0044】
さらに、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、オクタベンゾンや変性物、重合物、誘導体等を用いることができる。イソシアネート添加による架橋による樹脂成分との結合を望めるため、紫外線吸収剤としては、特に、水酸基を有するものが適している。添加部数は、所望の耐候性に応じて設定すればよいが、樹脂固形分に対して0.1%以上50%以下の範囲内、好ましくは1%以上30%以下の範囲内とする。
また、透明熱可塑性樹脂層6に添加する光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ポペリジニル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体等を用いることができる。
【0045】
添加部数は、所望の耐候性に応じて添加すればよいが、樹脂固形分に対して0.1質量%以上50質量%以下の範囲内、好ましくは1質量%以上30質量%以下の範囲内とする。
上記以外では、例えば、熱安定剤、難燃剤、ブロッキング防止剤等を添加してもよい。熱安定剤としては、例えば、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3、5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)]-プロピオネート、2、4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイトに代表される燐系酸化防止剤等やこれらの混合物、つまり、1種、または2種以上を組み合わせたものを用いることができる。
【0046】
また、難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機系化合物や燐酸エステル系の難燃剤等を用いることができる。
さらに、ブロッキング防止剤としては、例えば、珪酸アルミニウム、酸化珪素、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム等の無機系ブロッキング防止剤、脂肪酸アミド等の有機系ブロッキング防止剤等を用いることができる。
【0047】
(エンボス模様)
エンボス模様9は、例えば、絵柄模様層2の絵柄と同調した凹部と凸部とからなる模様である。エンボス模様9の凹部と凸部により、視覚または触感による立体感を付与可能となっている。エンボス模様9と絵柄模様層2の絵柄とのずれは、例えば、絵柄模様の形状に対して長手方向には10mm以下、短手方向(幅方向)には3mm以下の範囲内とすることが好ましい。例えば、絵柄模様が木目である場合には、木目の導管が伸びている方向が「絵柄模様の形状に対する長手方向」となり、長手方向と直交する方向が「絵柄模様の形状に対する短手方向」となる。特に、木目の導管が不燃シート10の長手方向に沿って伸びている場合には、不燃シート10の長手方向が「絵柄模様の形状に対する長手方向」となり、不燃シート10の短手方向(幅方向)が「絵柄模様の形状に対する短手方向」となる。エンボス模様9は、透明熱可塑性樹脂層6及び表面保護層7が透明であるため、斜光の反射により初めて強く視認されるが、エンボス模様9と絵柄模様層2の絵柄とのずれが上記範囲内であれば、反射光と同時に絵柄模様層3の透過光を視認することが困難なため違和感がない。エンボス模様9と絵柄模様層2の絵柄とのずれを一定範囲内へ抑えることにより、パターンの形状と分布を等しくシート全面で精度よく一致させた不燃シート10を得ることができる。また、エンボス模様9の凹部と凸部との高低差は、例えば、3μm以上200μm以下の範囲内とする。高低差は、目的とする不燃シート10の意匠に適した数値を選ぶことができる。例えば、最大高低差(200μm)内で連続的な多段形状を取ることもできる。特に、巨視的な立体物としての形状を得るために、高低差は、10μm以上150μm以下の範囲がより好ましい。
【0048】
〔表面保護層7〕
表面保護層7は、紫外線硬化型樹脂等の電離放射線硬化型樹脂を含むことが好ましい。具体的には、表面保護層7の材料としては、例えば、熱硬化型樹脂と紫外線硬化型樹脂(UV硬化型樹脂)との混合物(ブレンド樹脂)が好ましい。このように、表面保護層7は、熱硬化型樹脂と紫外線硬化型樹脂、つまり、硬度が高い樹脂を含むため、表面に露出した表面保護層7によって、不燃シート10の耐傷性を向上できる。また、溶剤としては、酢酸エチル、酢酸nブチルを用いることができる。
【0049】
熱硬化型樹脂としては、例えば、不燃シート10の変形追従性、耐擦傷性等を考慮すれば、2液硬化型ウレタン樹脂等のウレタン結合を有する熱硬化型樹脂を用いるのが好ましい。
2液硬化型ウレタン樹脂としては、例えば、ポリオールを主体とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂を用いることができる。
ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するものであって、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオールを用いることができる。
【0050】
また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートを用いることができる。多価イソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネートを用いることができる。また、上記各種イソシアネートの付加体又は多量体を用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等がある。なお、上記イソシアネートにおいて脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネートは、耐候性、耐熱黄変性も良好にできる点で好ましく、例えば1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを使用できる。
紫外線硬化型樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂を使用できる。
また、表面保護層7は、PLA樹脂を含んだ層であってもよい。PLA樹脂の含有量が、表面保護層7全体の質量に対し、50質量%以上100質量%以下であれば、表面保護層7の生分解性が向上する。
【0051】
〔裏面アンカー層〕
裏面アンカー層1bは、原反層1の裏面全体を覆うように形成された層であって、原反層1に含まれる無機質材料の粉落ちを防止するための層である。印刷時や樹脂塗工時に原反層1に含まれる無機質材料が印刷系内、具体的には印刷装置内で粉落ちすると、その印刷系内を汚染することがある。
また、裏面アンカー層1bは、原反層1と、プライマー層8との密着性を向上させるための機能も備えている。裏面アンカー層1bを備えない場合には、プライマー層8を形成する塗液が原反層1に密着せずに剥離してしまうことがある。
裏面アンカー層1bは、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂を含有していることが好ましい。
【0052】
裏面アンカー層1bにおける、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量は、例えば、裏面アンカー層1bの質量に対し、15質量%以上100質量%以下の範囲内が好ましく、80質量%以上100質量%以下の範囲内がより好ましく、85質量%以上95質量%以下の範囲内がさらに好ましい。裏面アンカー層1bにおける、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が上記数値範囲内であれば、裏面アンカー層1bとプライマー層8との層間強度を十分なものにしつつ、均一でムラや欠けのない裏面アンカー層1bを形成することができる。裏面アンカー層1bにおける、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が裏面アンカー層1bの質量に対し、15質量%未満であると、裏面アンカー層1bとプライマー層8との層間強度が不十分となることがある。また、裏面アンカー層1bにおける、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が裏面アンカー層1bの質量に対し、80質量%未満であると、使用上何ら問題はないが、裏面アンカー層1bの原反層1への食い込み比率が低下し、裏面アンカー層1bと原反層1との層間強度が低下することが僅かながらある。なお、裏面アンカー層1bにおける、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が裏面アンカー層1bの質量に対し、100質量%以下であれば使用上何ら問題はないが、95質量%、より正確には98質量%を超えると、硬化不足で裏面アンカー層1bに欠けが生じたり、裏面アンカー層1bと原反層1、もしくは裏面アンカー層1bとプライマー層8との層間強度が低下したりすることがある。
また、裏面アンカー層1bの厚みは、例えば、0.5μm以上20μm以下の範囲内であり、好ましくは、0.5μm以上10μm以下の範囲内である。
【0053】
〔プライマー層8〕
プライマー層8としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、これらの混合物等を使用することができる。更に、ポリオールとイソシアネートによる2液タイプにすることで、原反層1(裏面アンカー層1b)とプライマー層8との密着性及びプライマー層8自体の凝集力が向上する。ポリオールとしては、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。また、イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4′ジフェニルメタンジイソシアネートといった芳香族系、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートといった脂肪族系が挙げられる。反応性の早さの点、耐熱性の点で芳香族系のポリオールが好ましい。
プライマー層8の厚みは、1μm以上が好ましい。プライマー層8の厚みは1μm未満となると接着剤の溶剤種によっては溶解してしまい、プライマー層8が消失することから密着性が向上しないことがある。
【0054】
(不燃シート10の製造方法)
以下、不燃シート10の製造方法の一例について簡単に説明する。
まず、PLA樹脂と炭酸カルシウムとを含む原反層1の両面にアンカー層(表面アンカー層1a及び裏面アンカー層1b)を形成する。次に、表面アンカー層1a上に、例えば、印刷によって絵柄模様層2を形成する。
その後、その絵柄模様層2上に、溶融した透明熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を多層押出機から押し出して形成した複数の層を積層することで、透明熱可塑性樹脂層6、即ち第1の樹脂層6a及び第2の樹脂層6bを形成する。次に、透明熱可塑性樹脂層6にエンボス加工を行う。最後に、エンボス加工が施された透明熱可塑性樹脂層6上に、例えば、ウレタン系樹脂に、硬化剤、紫外線吸収剤及び光安定剤を添加した樹脂組成物を塗布した後、その樹脂組成物を乾燥させて表面保護層7を形成する。こうして、本実施形態に係る不燃シート10を製造する。
なお、本実施形態に係る不燃シート10の製造方法では、絵柄模様層2と透明熱可塑性樹脂層6との間に接着剤層5を形成する工程を含んでもよい。
【0055】
(本実施形態の効果)
本実施形態の不燃シート10は、原反層1、絵柄模様層2、透明熱可塑性樹脂層6、及び表面保護層7をこの順に備えている。また、原反層1は、PLA樹脂と無機質材料とを含有しており、その無機質材料の含有量は、原反層1の質量に対して、15質量%以上90質量%以下の範囲内である。
このような構成であれば、原反層1を構成するバインダー樹脂として、生分解性を有するPLA樹脂を使用しているため、不燃シート10に高い生分解性を付与することができる。また、無機質材料の含有量を、原反層1の質量に対して15質量%以上90質量%以下の範囲内としているため、生分解性シートに不燃性を付与することができる。
【0056】
また、本実施形態の不燃シート10に備わる絵柄模様層2、透明熱可塑性樹脂層6及び表面保護層7の少なくとも一方は、PLA樹脂を含んでいてもよい。
このような構成であれば、不燃シート10全体に高い生分解性が付与される。
また、本実施形態の不燃シート10に含まれるPLA樹脂は、非晶質PLA樹脂であってもよい。
このような構成であれば、不燃シート10に生じるブリーディング現象を低減することができる。
また、本実施形態の不燃シート10に備わる原反層1を構成する無機質材料は、粉末形状であり、平均粒子径が1μm以上3μm以下の範囲内であり、且つ最大粒子径が50μm以下であってもよい。
このような構成であれば、原反層1に十分な表面強度を付与することができる。
【0057】
また、本実施形態の不燃シート10に備わる原反層1を構成する無機質材料は、三酸化アンチモン、アンチモンソーダ、珪酸ジルコン、酸化ジルコン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、硼砂、ホウ酸亜鉛、炭酸カルシウム、三酸化モリブデンあるいはジモリブデン酸アンチモンと水酸化アルミニウムとの錯体、三酸化アンチモンとシリカとの錯体、三酸化アンチモンと亜鉛華との錯体、ジルコニウムのケイ酸、及びジルコニウム化合物と三酸化アンチモンとの錯体、並びにそれらの塩の少なくとも一種であってもよい。
このような構成であれば、原反層1に十分な表面強度を確実に付与することができる。
【0058】
また、本実施形態の不燃シート10に備わる原反層1を構成するPLA樹脂と無機質材料との合計含有量は、原反層1の質量に対して、90質量%以上100質量%以下の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、原反層1に十分な表面強度と不燃性を付与することができる。
また、本実施形態の不燃シート10に備わる原反層1の厚みは、50μm以上250μm以下の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、原反層1に十分な表面強度を付与することができる。
また、本実施形態の不燃シート10に備わる表面アンカー層1aと裏面アンカー層1bは、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂をそれぞれ含むものであってもよい。
このような構成であれば、無機質材料の粉落ちを防止することができる。
【0059】
また、本実施形態の不燃シート10に備わる透明熱可塑性樹脂層6は、第1の樹脂を含んで形成される第1の樹脂層6aと、第2の樹脂を含んで形成される第2の樹脂層6bとを備え、第1の樹脂または第2の樹脂は、PLA樹脂であってもよい。
このような構成であれば、不燃シート10全体に高い生分解性が付与される。
また、本実施形態の不燃シート10は、ISO5660-1に準拠したコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験において(1)加熱開始後20分間の総発熱量(MJ/m2)が8MJ/m2以下であり(2)加熱開始後20分間の最高発熱速度として、10秒以上継続して200kW/m2を超えず(3)基材に亀裂や穴のないという条件を満たす不燃性を有している。
【0060】
(実施例)
〔実施例1〕
原反層1として、熱可塑性樹脂であるPLA樹脂(結晶質)と、無機質材料であるシリカとを含有したシートを用い、表面側に表面アンカー層1aを形成した。なお、シリカの含有量は、原反層1の質量に対して、15質量%とした。また、原反層1の厚みを45μmとした。また、表面アンカー層1aは、塩酢ビを含むウレタン系樹脂とした。
次に、表面アンカー層1a上にグラビア印刷法によって木目模様を印刷して絵柄模様層2を形成した。なお、絵柄模様層2の形成には、ウレタン樹脂系インキを用いた。
続いて、この絵柄模様層2上に、ウレタン樹脂系接着剤を塗布し温風乾燥で接着剤層5を形成した。
【0061】
続いて、この接着剤層5上に、溶融した透明熱可塑性樹脂を含んでなる複数層を多軸エクストルーダーよりTダイで押し出して積層することで、第1の樹脂層6a及び第2の樹脂層6bからなる透明熱可塑性樹脂層6を形成した。第1の樹脂には、透明ポリプロピレン樹脂にフェノール系酸化防止剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「IRGANOX1010」)を0.2質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「TINUVIN622」)を0.3質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「TINUVIN326」)を0.5質量部添加した樹脂を用い、第2の樹脂には、透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(理研ビタミン(株)製)を用いた。
【0062】
同時に、導管エンボス版とゴムロールとによって、原反層1、絵柄模様層2、接着剤層5、及び透明熱可塑性樹脂層6の積層体をニップして、エンボス加工とラミネートとを同時に行った。ここで、第1の樹脂層6aの厚さは8μmとし、第2の樹脂層6bの厚さは42μmとした。つまり、透明熱可塑性樹脂層6の厚さを50μmとした。
この不燃シート10のエンボス面に表面処理を施した後、トップコート樹脂としてウレタン系樹脂(東洋インキ(株)製「URV238ワニス」)100質量部に硬化剤(東洋インキ(株)製「UR150Bワニス」)を10質量部添加したものに、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「TINUVIN326」)0.5質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「TINUVIN622」)1質量部を添加したものを、グラビアコートで乾燥後の塗布量が5g/m2となるようにコートし表面保護層7を得た。
【0063】
更に、原反層1の裏面に表面処理を施した後、この面に裏面アンカー層1bを形成した。
続いて、裏面アンカー層1b上にポリオール(東洋インキ(株)製「ラミスターEM」)100質量部に対して、シリカ10質量部を添加して含有させ、イソシアネート(東洋インキ(株)製「LPNYB硬化剤」)3質量部を加えたものをプライマー塗工液とし、グラビアコートで乾燥後の塗布量が3g/m2となるようにコートしプライマー層8を得た。
このような手順により、実施例1の不燃シートを形成した。
【0064】
〔実施例2〕
シリカの含有量を、原反層1の質量に対して、90質量%とした以外は、実施例1と同様にして不燃シートを形成した。
〔実施例3〕
絵柄模様層2の形成に、PLA樹脂を50質量%含んだウレタン樹脂系インキを用いた以外は、実施例1と同様にして不燃シートを形成した。
〔実施例4〕
第1の樹脂層6aに含まれる第1の樹脂を、透明ポリプロピレン樹脂に代えてPLA樹脂(結晶質)にした以外は、実施例1と同様にして不燃シートを形成した。
〔実施例5〕
第2の樹脂層6bに含まれる第2の樹脂を、透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂に代えてPLA樹脂(結晶質)にした以外は、実施例1と同様にして不燃シートを形成した。
【0065】
〔実施例6〕
ウレタン系樹脂(東洋インキ(株)製「URV238ワニス」)100質量部に硬化剤(東洋インキ(株)製「UR150Bワニス」)を10質量部添加したものに、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「TINUVIN326」)0.5質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「TINUVIN622」)1質量部、PLA樹脂(結晶質)を10質量部添加したものを用いて表面保護層7を形成した以外は、実施例1と同様にして不燃シートを形成した。
【0066】
〔実施例7〕
原反層1に含まれる熱可塑性樹脂を、PLA樹脂(非晶質)にした以外は、実施例1と同様にして不燃シートを形成した。
〔実施例8〕
シリカの平均粒子径を1μmとした以外は、実施例1と同様にして不燃シートを形成した。
〔実施例9〕
シリカの平均粒子径を3μmとした以外は、実施例1と同様にして不燃シートを形成した。
【0067】
〔実施例10〕
原反層1に含まれる無機質材料を三酸化アンチモンとした以外は、実施例1と同様にして不燃シートを形成した。
〔実施例11〕
原反層1に含まれる無機質材料を酸化ジルコンとした以外は、実施例1と同様にして不燃シートを形成した。
〔実施例12〕
原反層1に含まれる無機質材料を炭酸カルシウムとした以外は、実施例1と同様にして不燃シートを形成した。
〔実施例13〕
原反層1に含まれる無機質材料を炭酸カルシウム塩とした以外は、実施例1と同様にして不燃シートを形成した。
〔実施例14〕
原反層1の厚みを50μmとした以外は、実施例1と同様にして不燃シートを形成した。
〔実施例15〕
原反層1の厚みを250μmとした以外は、実施例1と同様にして不燃シートを形成した。
【0068】
〔実施例16〕
原反層1に含まれる無機質材料を炭酸カルシウムとし、その平均粒子径を1μmとし、その含有量を90質量%とし、原反層1に含まれる熱可塑性樹脂をPLA樹脂(非晶質)とし、原反層1の厚みを50μmとし、絵柄模様層2の形成には、PLA樹脂を50質量%含んだウレタン樹脂系インキを用い、第1の樹脂及び第2の樹脂には、PLA樹脂(非晶質)をそれぞれ用い、表面保護層7の形成には、ウレタン系樹脂(東洋インキ(株)製「URV238ワニス」)100質量部に硬化剤(東洋インキ(株)製「UR150Bワニス」)を10質量部添加したものに、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「TINUVIN326」)0.5質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「TINUVIN622」)1質量部、PLA樹脂(非晶質)を10質量部添加したものを用いた以外は、実施例1と同様にして不燃シートを形成した。
【0069】
〔比較例1〕
原反層1に含まれる熱可塑性樹脂を、ポリプロピレン樹脂にした以外は、実施例1と同様にして不燃シートを形成した。
〔比較例2〕
シリカの含有量を、原反層1の質量に対して、13質量%とした以外は、実施例1と同様にして不燃シートを形成した。
〔比較例3〕
シリカの含有量を、原反層1の質量に対して、92質量%とした以外は、実施例1と同様にして不燃シートを形成した。
【0070】
【0071】
以下、表1に示された評価項目について説明する。
<評価項目>
6mmのMDF(中密度繊維板)にエチレン-酢酸ビニル共重合エマルジョン型接着剤を塗布し、不燃シートと貼り合せ化粧板を得た。そして、各実施例及び各比較例の化粧板及び不燃シート単体を用いて、以下の試験を実施した。
〔生分解性〕
上記で得られた不燃シート単体(環境配慮型不燃シート)を5cm×5cmのサイズにカットし、北海道の伊達地区のレタス農場から採取した土中の5mm~1cmの深さに埋め、3週間後に不燃シート単体を掘り出して、外観観察及び重量減少率測定を実施した。
上記評価において、重量減少率が「10%以上」を合格とした。
【0072】
〔不燃性〕
ISO5660-1に準拠したコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験において下記の要件を満たしているか否か評価した。
1.総発熱量が8MJ/m2以下
2.最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えない
3.防炎上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴が生じない
なお、不燃性基材としては、石こうボードを用いた。また、評価基準は以下の通りである。
○:上記要件を全て満たす
×:上記要件の少なくとも1つを満たさない
【0073】
〔成形性〕
原反層1を押出し成形する際の成形のしやすさを確認した。
○:成形性良好
△:成形安定性にやや難有り、寸法安定性等に欠く
×:成形不可
上記評価において、「○」及び「△」を合格とした。
表1に示すように、本実施例に係る不燃シートは、生分解性に優れた不燃シートである。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本実施形態の環境配慮型不燃シートは、建築物の床面、壁面、天井等の内装、家具、各種キャビネット等の表面装飾材料、建具の表面化粧、車両の内装等に用いる表面化粧用として利用が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1:原反層(基材層)
1a:表面アンカー層(第1のアンカー層)
1b:裏面アンカー層(第2のアンカー層)
2:絵柄模様層
5:接着剤層
6:透明熱可塑性樹脂層
6a:透明熱可塑性樹脂層(第1の樹脂層)
6b:透明熱可塑性樹脂層(第2の樹脂層)
7:表面保護層
8:プライマー層
9:エンボス模様
10:不燃シート(環境配慮型不燃シート)