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特許7463680射出成形システムおよび成形品の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】射出成形システムおよび成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20240402BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20240402BHJP
   B25J 19/06 20060101ALI20240402BHJP
   B29C 33/44 20060101ALI20240402BHJP
   B29C 45/42 20060101ALI20240402BHJP
   B29C 45/84 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B29C45/76
B22D17/32 Z
B25J19/06
B29C33/44
B29C45/42
B29C45/84
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019169953
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021045899
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 浩輝
(72)【発明者】
【氏名】笹川 翔
(72)【発明者】
【氏名】横田 啓
(72)【発明者】
【氏名】姉川 賢太
(72)【発明者】
【氏名】山下 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 里緒菜
(72)【発明者】
【氏名】新原 裕司
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-024558(JP,A)
【文献】特開2018-153910(JP,A)
【文献】特開平07-314481(JP,A)
【文献】特開2003-025337(JP,A)
【文献】特開2016-083823(JP,A)
【文献】特開平09-262875(JP,A)
【文献】特開2008-221633(JP,A)
【文献】特開2001-154717(JP,A)
【文献】特開2014-000767(JP,A)
【文献】特開2009-286090(JP,A)
【文献】特開平06-315758(JP,A)
【文献】特開2018-165034(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1300151(KR,B1)
【文献】特開2012-131115(JP,A)
【文献】特開2011-073313(JP,A)
【文献】特開2012-071317(JP,A)
【文献】特開2018-047661(JP,A)
【文献】中国実用新案第209273899(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
B22D 17/00-17/32
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形システムであって、
第1言語を用いて生成された指令に従って動作し、ノズルから成形型に溶融材料を射出して成形品を成形する射出成形機と、
第2言語を用いて生成された指令に従って動作し、前記射出成形機によって成形された前記成形品を前記成形型から取り出すロボットと、
前記第1言語を用いて生成された指令を前記射出成形機に送信することによって前記射出成形機を制御し、前記第2言語によって解釈可能な指令を前記ロボットに送信することによって前記ロボットを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記射出成形機による前記成形品の成形中に前記射出成形機と前記ロボットとの少なくともいずれか一方にエラーが発生したと判断した場合に、前記第1言語を用いて生成された、前記射出成形機に予め定められた第1復帰動作を実行させる指令を前記射出成形機に送信し、かつ、前記第2言語によって解釈可能な、前記ロボットに予め定められた第2復帰動作を実行させる指令を前記ロボットに送信することによって、前記射出成形機による前記成形品の成形を中止して前記射出成形機に前記第1復帰動作を実行させ、かつ、前記ロボットに前記第2復帰動作を実行させ、
前記ロボットによる前記成形型からの前記成形品の取り出し中に前記射出成形機と前記ロボットとの少なくともいずれか一方にエラーが発生したと判断した場合には、前記第1言語を用いて生成された、前記射出成形機に前記第1復帰動作を実行させる指令を前記射出成形機に送信し、かつ、前記第2言語によって解釈可能な、前記ロボットに前記第2復帰動作を実行させる指令を前記ロボットに送信することによって、前記ロボットによる前記成形型からの前記成形品の取り出しを中止して前記射出成形機に前記第1復帰動作を実行させ、かつ、前記ロボットに前記第2復帰動作を実行させ
前記成形型は、固定成形型と、前記射出成形機により移動させられる可動成形型とを備え、
前記ロボットは、前記成形品を取り出すためのアーム部を備え、
前記第1復帰動作は、予め定められた第1位置に前記可動成形型を移動させる動作を含み、
前記第2復帰動作は、前記第1位置とは異なる予め定められた第2位置に前記アーム部を移動させる動作を含む、
射出成形システム。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形システムであって、
前記制御装置は、前記射出成形機の前記第1復帰動作が終了した後、前記ロボットに前記第2復帰動作を開始させる、射出成形システム。
【請求項3】
請求項1に記載の射出成形システムであって、
前記制御装置は、前記射出成形機の復帰動作が行われる期間と、前記ロボットの復帰動作が行われる期間とが重複するように、前記射出成形機と前記ロボットとに復帰動作を実行させる、射出成形システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の射出成形システムであって、
前記制御装置は、前記ノズルから前記溶融材料が正常に射出されない射出不良が検出された場合と、前記成形型が正常に型締めされない型締不良が検出された場合との少なくとも一方の場合に、前記射出成形機にエラーが発生したと判断する、射出成形システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の射出成形システムであって、
前記ロボットは、前記成形品を吸着する吸着部を有し、
前記制御装置は、前記吸着部に前記成形品が正常に吸着されない吸着不良が検出された場合に、前記ロボットにエラーが発生したと判断する、射出成形システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の射出成形システムであって、
さらに、前記成形品を検査する検査装置を備え、
前記制御装置は、前記検査装置を制御し、
前記制御装置は、前記射出成形機と前記ロボットとの少なくともいずれか一方にエラーが発生したと判断した場合に、前記検査装置による前記成形品の検査が終了した後、前記検査装置に予め定められた第3復帰動作を実行させる、射出成形システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の射出成形システムであって、
さらに、前記ロボットによって前記成形品がトレイに載置される載置位置から、前記成形品が外部に排出される排出位置まで前記トレイを移動させるトレイ移動部を備え、
前記制御装置は、前記トレイ移動部を制御し、
前記制御装置は、前記射出成形機と前記ロボットとの少なくともいずれか一方にエラーが発生したと判断した場合に、前記トレイ移動部によって前記トレイを前記排出位置へ移動させる、射出成形システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の射出成形システムであって、
記成形型は、前記固定成形型から離れる方向への前記可動成形型の移動によって、前記固定成形型に向かって移動することなく前記可動成形型から前記固定成形型に向かって相対的に突き出すエジェクターピンを有し、
前記ロボットは、前記エジェクターピンによって前記可動成形型から押し出された前記成形品を取り出す、射出成形システム。
【請求項9】
成形品の製造方法であって、
第1言語を用いて生成された指令を送信することによって、ノズルから成形型に溶融材料を射出する射出成形機を制御して前記成形品を成形し、
第2言語によって解釈可能な指令を送信することによって、ロボットを制御して前記射出成形機によって成形された前記成形品を前記成形型から取り出し、
前記射出成形機による前記成形品の成形中に前記射出成形機と前記ロボットとの少なくともいずれか一方にエラーが発生したと判断した場合に、前記第1言語を用いて生成された、前記射出成形機に予め定められた第1復帰動作を実行させる指令を前記射出成形機に送信し、かつ、前記第2言語によって解釈可能な、前記ロボットに予め定められた第2復帰動作を実行させる指令を前記ロボットに送信することによって、前記射出成形機による前記成形品の成形を中止して前記射出成形機に前記第1復帰動作を実行させ、かつ、前記ロボットに前記第2復帰動作を実行させ、
前記ロボットによる前記成形型からの前記成形品の取り出し中に前記射出成形機と前記ロボットとの少なくともいずれか一方にエラーが発生したと判断した場合に、前記第1言語を用いて生成された、前記射出成形機に前記第1復帰動作を実行させる指令を前記射出成形機に送信し、かつ、前記第2言語によって解釈可能な、前記ロボットに前記第2復帰動作を実行させる指令を前記ロボットに送信することによって、前記ロボットによる前記成形型からの前記成形品の取り出しを中止して前記射出成形機に前記第1復帰動作を実行させ、かつ、前記ロボットに前記第2復帰動作を実行させ、
前記成形型は、固定成形型と、前記射出成形機により移動させられる可動成形型とを備え、
前記ロボットは、前記成形品を取り出すためのアーム部を備え、
前記第1復帰動作は、予め定められた第1位置に前記可動成形型を移動させる動作を含み、
前記第2復帰動作は、前記第1位置とは異なる予め定められた第2位置に前記アーム部を移動させる動作を含む、
成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、射出成形システムおよび成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、射出成形機と、射出成形機で成形された成形品を金型から取り出してステージに載置するロボットとを備える装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-014224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した装置のような射出成形機とロボットとを備える装置では、例えば、ロボットによって金型から成形品が正常に取り出されない場合にエラーが発生する。このエラーが射出成形機の動作に起因するエラーであるのか、ロボットの動作に起因するエラーであるのかを判別することは一般に難しいため、エラーから復帰できなくなる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、射出成形システムが提供される。この射出成形システムは、第1言語を用いて生成された指令に従って動作し、ノズルから成形型に溶融材料を射出して成形品を成形する射出成形機と、第2言語を用いて生成された指令に従って動作し、前記射出成形機によって成形された前記成形品を搬送するロボットと、前記第1言語を用いて生成された指令を前記射出成形機に送信することによって前記射出成形機を制御し、前記第2言語によって解釈可能な指令を前記ロボットに送信することによって前記ロボットを制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記射出成形機と前記ロボットとの少なくともいずれか一方にエラーが発生したと判断した場合に、前記第1言語を用いて生成された、前記射出成形機に復帰動作を実行させる指令を前記射出成形機に送信し、かつ、前記第2言語によって解釈可能な、前記ロボットに復帰動作を実行させる指令を前記ロボットに送信することによって、前記射出成形機および前記ロボットに復帰動作を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態の射出成形システムの概略構成を示す第1の斜視図。
図2】第1実施形態の射出成形システムの概略構成を示す第2の斜視図。
図3】第1実施形態の射出成形システム10の概略構成を示す正面図。
図4】第1実施形態の射出成形システム10の概略構成を示す上面図。
図5】射出成形機の構成を示す説明図。
図6】フラットスクリューの溝形成面側の構成を示す斜視図。
図7】バレルのスクリュー対向面側の構成を示す説明図。
図8】検査装置の構成を示す斜視図。
図9】トレイ移動部の構成を示す第1の上面図。
図10】トレイ移動部の構成を示す第2の上面図。
図11】射出成形システムによる成形品の製造工程を示す工程図。
図12】射出成形システムによる成形品の製造工程を示すタイムチャート。
図13】成形処理の内容を示すフローチャート。
図14】エジェクターピンによって成形品が突き出される様子を示す第1の説明図。
図15】エジェクターピンによって成形品が突き出される様子を示す第2の説明図。
図16】エジェクターピンによって成形品が突き出される様子を示す第3の説明図。
図17】エジェクターピンによって成形品が突き出される様子を示す参考図。
図18】トレイ移動部の動作を示す第1の説明図。
図19】トレイ移動部の動作を示す第2の説明図。
図20】トレイ移動部の動作を示す第3の説明図。
図21】トレイ移動部の動作を示す第4の説明図。
図22】トレイ移動部の動作を示す第5の説明図。
図23】比較例における成形品の製造工程を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における射出成形システム10の概略構成を示す第1の斜視図である。図2は、第1実施形態における射出成形システム10の概略構成を示す第2の斜視図である。図3は、本実施形態における射出成形システム10の概略構成を示す正面図である。図4は、本実施形態における射出成形システム10の概略構成を示す上面図である。図1から図4までには、互いに直交するX,Y,Z方向に沿った矢印が表されている。X方向およびY方向は、水平方向に沿った方向であり、Z方向は、鉛直方向に沿った方向である。他の図においても、X,Y,Z方向に沿った矢印が、適宜、表されている。図1から図4までにおけるX,Y,Z方向と、他の図におけるX,Y,Z方向とは、同じ方向を表している。
【0008】
本実施形態における射出成形システム10は、射出成形機100と、ロボット200と、検査装置300と、トレイ移動部400と、制御装置500とを備えており、これらが1つの筐体50に配置されている。筐体50は、第1基台51と、第2基台52とを備えている。第1基台51の上面には、射出成形機100と、ロボット200と、検査装置300とが配置されている。ロボット200は、射出成形機100に対して+Y方向側に配置されている。検査装置300は、射出成形機100に対して-X方向側に配置されている。第1基台51には、開口部が設けられている。第2基台52は、第1基台51よりも下方に設けられている。第2基台52の上面には、トレイ移動部400が配置されている。射出成形機100は、トレイ移動部400に対して鉛直方向の上方に配置されている。射出成形機100は、その少なくとも一部がトレイ移動部400に対して上下に重なるように配置されている。検査装置300は、トレイ移動部400に対して鉛直方向の上方に配置されている。検査装置300は、その少なくとも一部がトレイ移動部400に対して上下に重なるように配置されている。第1基台51に設けられた開口部を介して、第1基台51と第2基台52との間の空間は、第1基台51よりも上方の空間に通じている。第2基台52よりも下方には、制御装置500が配置されている。筐体50の下面には、筐体50を移動させるためのキャスター58と、筐体50を固定するためのストッパー59とが設けられている。筐体50の正面部には、操作パネル55が設けられている。本実施形態では、操作パネル55は、タッチパネルによって構成されている。尚、図1から図3まででは、検査装置300の図示が省略されている。
【0009】
トレイ移動部400は、成形品を搬送するためのトレイTRを移動させる。トレイ移動部400には、トレイ排出機構405が設けられている。トレイ排出機構405は、図2に表されたように、筐体50の外部に向かって突き出されて、トレイTRを筐体50の外部に排出する。尚、トレイ排出機構405の詳細な構成については後述する。トレイTRのことを第3載置位置と呼ぶことがある。
【0010】
筐体50の第2基台52よりも下方には、図3に表されたように、材料供給部105が配置されている。材料供給部105には、ペレットや粉末等の状態の材料が収容されている。本実施形態では、ペレット状に形成されたABS樹脂が材料として用いられる。材料供給部105は、材料供給管106を介して、射出成形機100の材料貯留部110に接続されている。材料供給部105には、コンプレッサー107が接続されている。コンプレッサー107は、材料供給部105に圧縮空気を供給して、材料供給管106を介して材料供給部105から材料貯留部110に材料を圧送する。コンプレッサー107は、制御装置500の制御下で駆動される。
【0011】
ロボット200は、図4に表された取出位置P11において、射出成形機100の金型部160から成形品を取り出して、成形品を搬送する。本実施形態では、ロボット200は、アーム部210と、吸着部250と、ロボット制御部290とを備えている。アーム部210は、吸着部250の位置を移動させる。アーム部210は、吸着部250の向きを回転させる。吸着部250は、真空吸着によって成形品を吸着する。ロボット制御部290は、1以上のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピューターによって構成されている。本実施形態では、ロボット制御部290は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、アーム部210と吸着部250とを制御する。ロボット制御部290は、ロボット言語で動作する。ロボット言語には、例えば、SPEL言語が用いられる。尚、ロボット200は、成形品を吸着する吸着部250に代えて、成形品を挟持する挟持部を備えてもよい。
【0012】
制御装置500は、1以上のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピューターによって構成されている。本実施形態では、制御装置500は、ラダー言語で動作するPLC(Programmable Logic Controller)によって構成されている。本実施形態では、制御装置500は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、材料供給部105から射出成形機100に材料を供給し、射出成形機100によって成形品を成形し、成形された成形品をロボット200によって検査装置300に搬送し、検査装置300によって成形品を検査し、検査された成形品をロボット200によってトレイTRに搬送し、成形品が載置されたトレイTRをトレイ移動部400によって筐体50の外部に排出させる。制御装置500は、射出成形機100とロボット200と検査装置300とトレイ移動部400とを、それぞれの動作の開始タイミングが所定のタイミングになるように制御する。
【0013】
材料供給部105のコンプレッサー107と、射出成形機100と、検査装置300と、トレイ移動部400とは、ラダー言語を用いて生成された指令に従って動作する。ロボット200のアーム部210や吸着部250は、ロボット言語を用いて生成された指令に従って動作する。制御装置500は、ラダー言語を用いて生成された指令をコンプレッサー107と射出成形機100と検査装置300とトレイ移動部400とに送信することによって、コンプレッサー107の動作と射出成形機100の動作と検査装置300の動作とトレイ移動部400の動作とを制御する。制御装置500は、ラダー言語を用いて生成され、かつ、ロボット言語で解釈可能な指令をロボット制御部290に送信することによって、ロボット制御部290を介してアーム部210や吸着部250の動作を制御する。尚、ラダー言語のことを第1言語と呼ぶことがあり、ロボット言語のことを第2言語と呼ぶことがある。
【0014】
図5は、射出成形機100の概略構成を示す説明図である。本実施形態の射出成形機100は、上述した材料貯留部110と、可塑化部120と、射出制御機構150と、ノズル155と、金型部160と、型締装置170とを備えている。射出成形機100は、ノズル155から金型部160に溶融材料を射出して成形品を成形する。
【0015】
材料貯留部110は、材料供給管106を介して材料供給部105から供給された材料を貯留する。本実施形態における材料貯留部110は、ホッパーによって構成されている。材料貯留部110は、可塑化部120に連通しており、可塑化部120に材料を供給する。
【0016】
可塑化部120は、スクリューケース121と、駆動モーター122と、フラットスクリュー130と、バレル140と、加熱部148とを備えている。可塑化部120は、材料貯留部110から供給されたペレット状の材料の少なくとも一部を可塑化し、流動性を有するペースト状の溶融材料を生成して射出制御機構150へと導く。尚、「可塑化」とは、熱可塑性を有する材料に熱が加わり溶融することを意味する。また、「溶融」とは、熱可塑性を有する材料が融点以上の温度に加熱されて液状になることのみならず、熱可塑性を有する材料がガラス転移点以上の温度に加熱されることにより軟化し、流動性が発現することをも意味する。
【0017】
フラットスクリュー130は、その中心軸RXに沿った方向の高さが直径よりも小さい略円柱形状を有している。フラットスクリュー130は、スクリューケース121とバレル140とによって囲まれた空間に収容されている。フラットスクリュー130は、バレル140に対向する面に、溝部135が設けられた溝形成面132を有している。フラットスクリュー130は、溝形成面132とは反対側の面には、駆動モーター122が接続されている。駆動モーター122が発生させるトルクによって、フラットスクリュー130は、中心軸RXを中心に回転する。駆動モーター122は、制御装置500の制御下で駆動される。
【0018】
図6は、フラットスクリュー130の溝形成面132側の構成を示す斜視図である。図6には、フラットスクリュー130の中心軸RXの位置が一点鎖線で示されている。図5を参照して説明したように、溝形成面132には、溝部135が設けられている。フラットスクリュー130の溝形成面132の中央部137は、溝部135の一端が接続されている窪みとして構成されている。中央部137は、図5に示したバレル140の連通孔146に対向する。中央部137は、中心軸RXと交差する。
【0019】
フラットスクリュー130の溝部135は、いわゆるスクロール溝を構成する。溝部135は、中央部137から、フラットスクリュー130の外周に向かって弧を描くように渦状に延びている。溝部135は、螺旋状に延びるように構成されてもよい。溝形成面132には、溝部135の側壁部を構成し、各溝部135に沿って延びている凸条部136が設けられている。溝部135は、フラットスクリュー130の側面133に設けられた材料導入口134まで連続している。この材料導入口134は、溝部135に材料を受け入れる部分である。
【0020】
図6には、3つの溝部135と、3つの凸条部136と、を有するフラットスクリュー130の例が示されている。フラットスクリュー130に設けられる溝部135や凸条部136の数は、3つには限定されない。フラットスクリュー130には、1つの溝部135のみが設けられていてもよいし、2以上の複数の溝部135が設けられていてもよい。また、溝部135の数に合わせて任意の数の凸条部136が設けられてもよい。
【0021】
図6には、材料導入口134が3箇所に形成されているフラットスクリュー130の例が図示されている。フラットスクリュー130に設けられる材料導入口134の数は、3箇所に限定されない。フラットスクリュー130には、材料導入口134が1箇所にのみ設けられていてもよいし、2箇所以上の複数の箇所に設けられていてもよい。
【0022】
図7は、バレル140のスクリュー対向面142側の構成を示す説明図である。図5および図7を参照して、バレル140は、フラットスクリュー130の溝形成面132に対向するスクリュー対向面142を有している。スクリュー対向面142の中央には、ノズル155に連通する連通孔146が設けられている。スクリュー対向面142における連通孔146の周りには、複数の案内溝144が設けられている。それぞれの案内溝144は、一端が連通孔146に接続され、連通孔146からスクリュー対向面142の外周に向かって渦状に延びている。それぞれの案内溝144は、造形材料を連通孔146に導く機能を有している。尚、スクリュー対向面142のことを単に対向面と呼ぶことがある。
【0023】
加熱部148は、バレル140に埋設されている。本実施形態では、加熱部148は、4本のヒーターによって構成されている。加熱部148の温度は、制御装置500によって制御される。フラットスクリュー130の回転と加熱部148による加熱とによって、溝部135に供給された材料を溶融させて溶融材料を生成して、連通孔146を介して射出制御機構150に溶融材料を供給する。
【0024】
図5を参照して、射出制御機構150は、射出シリンダー151と、プランジャー152と、プランジャー駆動部153とを備えている。射出制御機構150は、射出シリンダー151内の可塑化された材料を後述するキャビティーCvに射出する機能を有している。射出制御機構150は、制御装置500の制御下で、ノズル155からの材料の射出量を制御する。射出シリンダー151は、バレル140の連通孔146に接続された略円筒状の部材であり、内部にプランジャー152を備えている。プランジャー152は、射出シリンダー151の内部を摺動し、射出シリンダー151内の材料を、可塑化部120に接続されたノズル155側に圧送する。プランジャー152は、モーターやギア等によって構成されたプランジャー駆動部153により駆動される。
【0025】
金型部160は、可動金型161と、固定金型162とを備えている。可動金型161と固定金型162とは、互いに対面して設けられ、その間に成形品の形状に相当する空間であるキャビティーCvを有している。キャビティーCvには、可塑化された材料が射出制御機構150によって圧送されてノズル155を介して射出される。本実施形態では、可動金型161および固定金型162は、金属材料によって形成されている。尚、可動金型161および固定金型162は、セラミックス材料や樹脂材料によって形成されてもよい。金型部160のことを成形型部と呼ぶことがあり、可動金型161のことを可動成形型と呼ぶことがあり、固定金型162のことを固定成形型と呼ぶことがある。
【0026】
型締装置170は、金型駆動部171と、ボールねじ部172とを備えており、可動金型161と固定金型162との開閉を行う機能を有している。金型駆動部171は、モーターやギア等によって構成されている。金型駆動部171は、ボールねじ部172を介して可動金型161に接続されている。ボールねじ部172は、金型駆動部171による動力を可動金型161に伝達する。型締装置170は、制御装置500の制御下で、金型駆動部171を駆動して可動金型161を移動させて金型部160を開閉させる。
【0027】
本実施形態では、金型部160に、突出し機構180が設けられている。突出し機構180は、エジェクターピン181と、第1エジェクタープレート182と、第2エジェクタープレート183と、リターンピン184と、ばね部材185とを備えている。エジェクターピン181は、可動金型161に設けられた貫通孔に挿入されている。エジェクターピン181は、型開きの際の可動金型161の移動によって、可動金型161から固定金型162に向かって突き出して、可動金型161から成形品を押し出す。エジェクターピン181は、第1エジェクタープレート182と第2エジェクタープレート183とに固定されている。第2エジェクタープレート183の+Y方向側の面には、スラストベアリング186が固定されている。リターンピン184は、エジェクターピン181と平行に配置されている。リターンピン184は、可動金型161に設けられた貫通孔に挿入されている。リターンピン184は、第1エジェクタープレート182と第2エジェクタープレート183とに固定されている。可動金型161と第1エジェクタープレート182との間におけるリターンピン184の外周には、第1エジェクタープレート182を-Y方向から+Y方向に向かって付勢するばね部材185が配置されている。
【0028】
図8は、本実施形態における検査装置300の概略構成を示す斜視図である。検査装置300は、射出成形機100によって成形された成形品を検査する。本実施形態では、検査装置300は、検査部310と、第1載置部320と、第2載置部330と、移動部340とを備えている。
【0029】
検査部310は、カメラ315を備えている。検査部310は、カメラ315によって撮像された画像を用いて、成形品が所定の外形寸法を有するか否かを検査する。検査部310による成形品の検査結果に関する情報は、制御装置500に送信される。カメラ315の下方には、第1載置部320と第2載置部330とが配置されている。第1載置部320と第2載置部330とには、射出成形機100によって成形された成形品が載置される。
【0030】
移動部340は、第1載置部320と検査部310との間の相対的な位置、および、第2載置部330と検査部310との間の相対的な位置を変化させる。本実施形態では、移動部340は、第1リニアアクチュエーター341と、第2リニアアクチュエーター342と、第3リニアアクチュエーター343とを備えている。第1リニアアクチュエーター341と第2リニアアクチュエーター342とは、Y方向に沿って配置されている。第3リニアアクチュエーター343は、第1リニアアクチュエーター341と第2リニアアクチュエーター342の上方に、X方向に沿って配置されている。第1リニアアクチュエーター341は、第1載置部320をY方向に沿って移動させる。第2リニアアクチュエーター342は、第2載置部330をY方向に沿って移動させる。第3リニアアクチュエーター343は、検査部310をX方向に沿って移動させる。各リニアアクチュエーター341~343は、制御装置500の制御下で駆動される。
【0031】
検査装置300には、ロボット200と第1載置部320との間で成形品を受け渡すための第1受渡位置P31と、第1載置部320に載置された成形品を検査するための第1検査位置P32と、ロボット200と第2載置部330との間で成形品を受け渡すための第2受渡位置P33と、第2載置部330に載置された成形品を検査するための第2検査位置P34とが設けられている。本実施形態では、第1受渡位置P31は、第1リニアアクチュエーター341の+Y方向側の端部に配置されており、第1検査位置P32は、第1リニアアクチュエーター341の-Y方向側の端部に配置されている。第2受渡位置P33は、第2リニアアクチュエーター342の+Y方向側の端部に配置されており、第2検査位置P34は、第2リニアアクチュエーター342の-Y方向側の端部に配置されている。+X方向から-X方向に向かって、取出位置P11と、第1受渡位置P31と、第2受渡位置P33とが、この順に配置されている。
【0032】
図9は、トレイ移動部400の概略構成を示す第1の上面図である。図10は、トレイ移動部400の概略構成を示す第2の上面図である。トレイ移動部400は、トレイ排出機構405と、レール部406と、第1固定板410と、第1ボール411と、第2固定板415と、第2ボール416と、第1可動板420と、第2可動板430と、第1駆動部441と、第2駆動部442と、第3駆動部443と、第4駆動部444と、固定部445とを備えている。図9には、トレイ排出機構405が筐体50に収容された状態のトレイ移動部400が表されている。図10には、トレイ排出機構405が筐体50から突き出した状態のトレイ移動部400が表されている。尚、図10では、第1可動板420と第2可動板430とが二点鎖線で表されている。
【0033】
トレイ排出機構405は、板状部材と、この板状部材をスライド移動させるモーターやギア等によって構成されている。トレイ排出機構405の下方には、X方向に沿ってレール部406が配置されている。レール部406は、筐体50の第2基台52に固定されている。トレイ排出機構405は、レール部406上を-X方向から+X方向に向かってスライド移動することよって、図9に表されたように筐体50に収容され、レール部406上を+X方向から-X方向に向かってスライド移動することよって、図10に表されたように筐体50から突き出す。
【0034】
トレイ排出機構405の板状部位材の上面には、第1固定板410が固定されている。第1固定板410には、複数の第1ボール411が第1固定板410に対して回転可能に設けられている。本実施形態では、第1固定板410に設けられた複数の穴に、各第1ボール411が回転可能に設けられている。筐体50の第2基台52には、第2固定板415が固定されている。第2固定板415は、トレイ排出機構405に対して+Y方向側に配置されている。第2固定板415には、複数の第2ボール416が第2固定板415に対して回転可能に設けられている。本実施形態では、第2固定板415に設けられた複数の穴に、各第2ボール416が回転可能に設けられている。
【0035】
第1固定板410と第2固定板415との上方には、第1可動板420と第2可動板430とが配置されている。各可動板420,430は、矩形の板状部材である。各可動板420,430の上面には、トレイTRが載置される。第1可動板420の外周縁には、トレイTRの位置ずれを抑制する第1枠部422が設けられている。第1可動板420の+X方向側の端部には、第1穴部426が設けられている。第1可動板420の-Y方向側の端部と+Y方向側の端部とのそれぞれには、第1可動板420にトレイTRを載置したり、第1可動板420からトレイTRを取り出したりしやすいように、第1切欠部427が設けられている。第2可動板430の外周縁には、トレイTRの位置ずれを抑制する第2枠部432が設けられている。第2可動板430の+X方向側の端部には、第2穴部436が設けられている。第2可動板430の-Y方向側の端部と+Y方向側の端部とのそれぞれには、第2可動板430にトレイTRを載置したり、第2可動板430からトレイTRを取り出したりしやすいように、第2切欠部437が設けられている。各可動板420,430は、相互に独立して第1ボール411上と第2ボール416上とをスライド移動して、トレイTRを搬送する。
【0036】
第1駆動部441は、第1固定板410の-X方向側の端部に固定されている。第1駆動部441は、各可動板420,430を-X方向から+X方向に向かって移動させる。第2駆動部442は、第1固定板410の+X方向側の端部に固定されている。第2駆動部442は、各可動板420,430を+X方向から-X方向に向かって移動させる。第3駆動部443は、第1固定板410に対して-Y方向側に配置されている。第3駆動部443は、筐体50の第2基台52に固定されている。第3駆動部443は、各可動板420,430を-Y方向から+Y方向に向かって移動させる。第4駆動部444は、第2固定板415に対して+Y方向側に配置されている。第4駆動部444は、第2基台52に固定されている。第4駆動部444は、各可動板420,430を+Y方向から-Y方向に向かって移動させる。本実施形態では、各駆動部441~444は、各可動板420,430を押し出すエアシリンダーによって構成されている。各駆動部441~444は、エアシリンダーではなく、モーターやソレノイド等によって構成されてもよい。
【0037】
固定部445は、各可動板420,430を第2固定板415上に固定する。本実施形態では、固定部445は、下方に向かって突き出すピンを備え、このピンを各可動板420,430の穴部426,436に嵌合させることによって、各可動板420,430を固定する。尚、固定部445は、ピンではなくパッドを備え、このパッドによって各可動板420,430を押さえ付けることによって各可動板420,430を固定してもよい。
【0038】
トレイ移動部400上には、トレイTRを移動させるための作業領域が設けられている。本実施形態では、作業領域には、載置位置P41と、第1待機位置P42と、第2待機位置P43と、排出位置P44とが設けられている。載置位置P41は、第2固定板415上に設けられている。第1待機位置P42と第2待機位置P43とは、筐体50に収容されたトレイ排出機構405上、かつ、第1固定板410上に設けられている。排出位置P44は、筐体50から突き出されたトレイ排出機構405のうちの筐体50から突き出した部分上、かつ、第1固定板410上に設けられている。-X方向から+X方向に向かって、排出位置P44と、第1待機位置P42と、第2待機位置P43とが、この順に設けられている。第1待機位置P42は、載置位置P41に対して-Y方向側に設けられている。載置位置P41は、ロボット200によってトレイTRに成形品が載置される位置である。第1待機位置P42と第2待機位置P43とは、トレイTRを待機させる位置である。排出位置P44は、トレイTRが各可動板420,430に載置される位置であり、かつ、トレイTRが各可動板420,430から取り出される位置である。載置位置P41の中心は、X方向において、図4に表された第1受渡位置P31と第2受渡位置P33との間に位置している。尚、トレイ移動部400の動作の詳細については後述する。
【0039】
図11は、本実施形態における射出成形システム10による成形品の製造工程を示す工程図である。まず、ステップS110の成形工程において、射出成形機100によって、成形品が成形される。次に、ステップS120の第1搬送工程において、ロボット200によって、射出成形機100の金型部160から成形品が取り出されて、金型部160から検査装置300の第1載置部320または第2載置部330に搬送される。第1搬送工程では、取出位置P11において、ロボット200によって金型部160から成形品が取り出される。金型部160から取り出された成形品は、ロボット200によって搬送されて、第1受渡位置P31に配置された第1載置部320、または、第2受渡位置P33に配置された第2載置部330に載置される。
【0040】
その後、ステップS130の検査工程において、検査装置300によって、成形品が検査される。第1搬送工程にて第1載置部320に成形品が載置された場合には、検査工程では、第1載置部320を第1受渡位置P31から第1検査位置P32に移動させ、検査部310によって成形品を検査し、第1載置部320を第1検査位置P32から第1受渡位置P31に移動させる。第1搬送工程にて第2載置部330に成形品が載置された場合には、検査工程では、第2載置部330を第2受渡位置P33から第2検査位置P34に移動させ、検査部310によって成形品を検査し、第2載置部330を第2検査位置P34から第2受渡位置P33に移動させる。
【0041】
ステップS140の第2搬送工程において、ロボット200によって、検査後の成形品が検査装置300からトレイTRに搬送される。検査工程にて第1載置部320に載置された成形品が検査された場合には、第2搬送工程では、ロボット200は、第1受渡位置P31に移動した第1載置部320から検査後の成形品を取り出す。第1載置部320から取り出された成形品は、ロボット200によって搬送されて、載置位置P41に配置されたトレイTRに載置される。検査工程にて第2載置部330に載置された成形品が検査された場合には、第2搬送工程では、ロボット200は、第2受渡位置P33に移動した第2載置部330から検査後の成形品を取り出す。第2載置部330から取り出された成形品は、ロボット200によって搬送されて、載置位置P41に配置されたトレイTRに載置される。ステップS150の第3搬送工程において、検査後の成形品が載置されたトレイTRは、トレイ移動部400によって、載置位置P41から排出位置P44に搬送されて、筐体50の外部に排出される。
【0042】
図12は、本実施形態における射出成形システム10による成形品の製造工程を示すタイムチャートである。本実施形態では、成形工程が繰り返されることによって、射出成形機100は、成形品を繰り返し成形する。本実施形態では、制御装置500は、先に成形された成形品についての検査工程が行われる期間と、後に成形された成形品についての成形工程が行われる期間とが重複し、かつ、先に成形された成形品についての第2搬送工程が行われる期間と、後に成形された成形品についての検査工程が行われる期間とが重複するように、射出成形機100とロボット200と検査装置300とを制御する。期間と期間とが重複するとは、2つの期間が一致することと、2つの期間のうちの一方の期間が他方の期間に含まれることと、2つの期間のうちの一方の期間の一部が他方の期間の一部に重なることとを含んだ意味である。尚、以下の説明では、1回目の成形工程において成形された成形品のことを第1成形品と呼び、2回目の成形工程において成形された成形品のことを第2成形品と呼び、3回目の成形工程において成形された成形品のことを第3成形品と呼ぶ。
【0043】
タイミングt10からタイミングt11までの期間に、第1成形品についての成形工程が行われる。タイミングt11からタイミングt12までの期間に、第1成形品についての第1搬送工程が行われる。タイミングt12からタイミングt13までの期間に、第1成形品についての検査工程が行われる。タイミングt15からタイミングt16までの期間に、第1成形品についての第2搬送工程が行われる。タイミングt16からタイミングt19までの期間に、第1成形品についての第3搬送工程が行われる。
【0044】
タイミングt12からタイミングt13までの期間に、第2成形品についての成形工程が行われる。したがって、第2成形品についての検査工程が行われる期間は、第1成形品についての成形工程が行われる期間に一致する期間である。タイミングt13からタイミングt14までの期間に、第2成形品についての第1搬送工程が行われる。タイミングt14からタイミングt17までの期間に、第2成形品についての検査工程が行われる。したがって、第2成形品についての検査工程が行われる期間は、第1成形品についての第2搬送工程が行われる期間を含んだ期間である。タイミングt19からタイミングt20までの期間に、第2成形品についての第2搬送工程が行われる。タイミングt20からタイミングt22までの期間に、第2成形品についての第3搬送工程が行われる。
【0045】
タイミングt14からタイミングt17までの期間に、第3成形品についての成形工程が行われる。したがって、第3成形品についての検査工程が行われる期間は、第2成形品についての成形工程が行われる期間に一致する期間であり、かつ、第1成形品についての第2搬送工程が行われる期間を含んだ期間である。タイミングt17からタイミングt18までの期間に、第3成形品についての第1搬送工程が行われる。タイミングt18からタイミングt21までの期間に、第3成形品についての検査工程が行われる。したがって、第3成形品についての検査工程が行われる期間は、第2成形品についての第2搬送工程が行われる期間を含んだ期間である。タイミングt22からタイミングt23までの期間に、第3成形品についての第2搬送工程が行われる。タイミングt23からタイミングt24までの期間に、第3成形品についての第3搬送工程が行われる。
【0046】
図13は、成形品の成形を実現するための成形処理の内容を示すフローチャートである。図13には、第1成形品を成形するための成形工程と、第1成形品を搬送するための第1搬送工程とを実現するための処理の内容が表されている。この処理は、筐体50に設けられた操作パネル55に対して、所定の開始操作がユーザーによって行われた場合に、制御装置500によって実行される。まず、ステップS210において、制御装置500は、射出成形機100を制御することによって、金型部160を閉じて、金型部160に溶融材料を射出する成形動作を実行させて、ロボット200を制御することによって、ロボット200による金型部160からの成形品の取り出しを準備させる取出準備動作を実行させる。取出準備動作では、制御装置500は、ロボット200の吸着部250を金型部160の近傍に待機させる。
【0047】
次に、ステップS220において、制御装置500は、射出成形機100の成形動作において、射出成形機100のエラーが発生したか否かを判定する。本実施形態では、制御装置500は、ノズル155から溶融材料が正常に射出されない射出不良が検出された場合と、金型部160が正常に型締めされない型締不良が検出された場合との少なくともいずれか一方の場合に、射出成形機100にエラーが発生したと判断する。可塑化部120の駆動モーター122の負荷の大きさと、プランジャー駆動部153のモーターの負荷の大きさとのうちの少なくともいずれか一方が所定の大きさ以上になった場合に、制御装置500によって射出不良が検出される。金型駆動部171のモーターの負荷の大きさが所定の大きさ以上になった場合に、制御装置500によって型締不良が検出される。可塑化部120の駆動モーター122の負荷の大きさは、可塑化部120の駆動モーター122に供給される電流の大きさを用いて測定できる。プランジャー駆動部153のモーターの負荷の大きさは、プランジャー駆動部153のモーターに供給される電流の大きさを用いて測定できる。金型駆動部171のモーターの負荷の大きさは、金型駆動部171のモーターに供給される電流の大きさを用いて測定できる。
【0048】
ステップS220で射出成形機100のエラーが発生したと判断された場合、ステップS270において、制御装置500は、射出成形機100とロボット200とを制御することによって、射出成形機100とロボット200とに復帰動作を実行させる。本実施形態では、制御装置500は、射出成形機100の復帰動作が終了した後、ロボット200に復帰動作を開始させる。射出成形機100の復帰動作では、制御装置500は、可動金型161をその原点位置に移動させる。可動金型161の原点位置は、金型部160が型開き状態にされた可動金型161の位置である。ロボット200の復帰動作では、制御装置500は、ロボット200の吸着部250とアーム部210とを、予め設定されたそれぞれの原点位置に移動させる。
【0049】
ステップS220で射出成形機100のエラーが発生したと判断されなかった場合、ステップS230において、制御装置500は、射出成形機100を制御して、エジェクターピン181によって、可動金型161から成形品を押し出し、ステップS240において制御装置500は、吸着部250に成形品を吸着させて、エジェクターピン181に押し出された成形品を取り出す取出動作をロボット200に実行させる。
【0050】
ステップS250において、制御装置500は、ロボット200の取出動作において、ロボット200のエラーが発生したか否かを判定する。本実施形態では、制御装置500は、ロボット200の吸着部250に成形品が正常に吸着されない吸着不良が検出された場合に、ロボット200にエラーが発生したと判断する。吸着部250の内部に圧力計が設けられており、制御装置500は、この圧力計によって測定された空気の圧力値を用いて吸着不良を検出できる。
【0051】
ステップS250でロボット200のエラーが発生したと判断された場合、ステップS270において、制御装置500は、射出成形機100とロボット200とを制御することによって、上述したように、射出成形機100とロボット200とに復帰動作を実行させる。一方、ステップS250でロボット200のエラーが発生したと判断されなかった場合、ステップS260において、制御装置500は、ロボット200を制御することによって、吸着部250に吸着された成形品を検査装置300に搬送して、この処理を終了する。
【0052】
図14から図16までは、エジェクターピン181によって成形品MDが可動金型161から突き出される様子を示す説明図である。図14では、可動金型161と固定金型162との間が閉じられている。制御装置500は、図15に示すように、可動金型161を固定金型162から遠ざかる方向に移動させる。この際、エジェクターピン181は、図5に表されたスラストベアリング186がボールねじ部172の先端部に接触するまで、可動金型161とともに移動する。スラストベアリング186がボールねじ部172の先端部に接触することによって、固定金型162から遠ざかる方向へのエジェクターピン181の移動は規制される。スラストベアリング186がボールねじ部172の先端部に接触すると、制御装置500は、可動金型161の移動を一旦停止させ、可動金型161と固定金型162との間に吸着部250を移動させる。制御装置500は、成形品MDと固定金型162との間の距離が所定の距離dに保たれた状態で、吸着部250に成形品MDを吸着させる。吸着部250に成形品MDを吸着させた後、制御装置500は、図16に示すように、可動金型161の移動を再開させる。固定金型162から遠ざかる方向へのエジェクターピン181の移動は規制されているので、可動金型161の移動によって、可動金型161から固定金型162に向かってエジェクターピン181が突き出されて、成形品MDが可動金型161から押し出される。成形品MDが可動金型161から押し出される際、成形品MDと固定金型162との間の距離は、所定の距離dのまま保たれる。尚、その後、可動金型161が固定金型162に近付く方向に移動すると、第1エジェクタープレート182がばね部材185に付勢されて、エジェクターピン181は、可動金型161の貫通孔に収容される。
【0053】
図17は、他の形態におけるエジェクターピン181bによって成形品MDが突き出される様子を示す参考図である。図17に表された他の形態では、可動金型161および固定金型162に対してエジェクターピン181bが移動して、エジェクターピン181bが可動金型161から固定金型162に向かって突き出されることによって、成形品MDが可動金型161から押し出される。この形態では、成形品MDが可動金型161から押し出される前後で、成形品MDと固定金型162との間の距離が変化する。そのため、吸着部250によって成形品MDを吸着する際のロボット200の動作が複雑化する。また、エジェクターピン181bを移動させるためのモーター等が必要になるため、射出成形機100の構成が複雑化する。
【0054】
図8を参照して、検査工程について説明する。第1載置部320に成形品が載置された後、制御装置500は、移動部340を制御することによって、第1載置部320を第1受渡位置P31から第1検査位置P32に移動させて、検査部310を第2検査位置P34から第1検査位置P32に移動させる。第1検査位置P32において第1載置部320に載置された成形品が検査部310によって検査された後、制御装置500は、移動部340を制御することによって、第1載置部320を第1検査位置P32から第1受渡位置P31に移動させる。第2載置部330に成形品が載置された後、制御装置500は、移動部340を制御することによって、第2載置部330を第2受渡位置P33から第2検査位置P34に移動させて、検査部310を第1検査位置P32から第2検査位置P34に移動させる。第2検査位置において第2載置部330に載置された成形品が検査部310によって検査された後、制御装置500は、移動部340を制御することによって、第2載置部330を第2検査位置P34から第2受渡位置P33に移動させる。検査された成形品が所定の外形寸法を有する場合、制御装置500は、ロボット200を制御することによって、検査後の成形品を検査装置300からトレイTRに搬送する。一方、成形品が所定の外形寸法を有しない場合、制御装置500は、ロボット200を制御することによって、検査後の成形品を検査装置300から図示しない廃棄ボックスに搬送する。
【0055】
図18から図22までは、トレイ移動部400の動作を示す説明図である。図18を参照して、ステップS405の初期状態では、第1可動板420は、第1待機位置P42に配置されており、第2可動板430は、載置位置P41に配置されている。ステップS410にて、制御装置500は、トレイ排出機構405を駆動させることによって、トレイ排出機構405を筐体50の外部に突き出させる。トレイ排出機構405が筐体50の外部に突き出されるよって、第1可動板420は、第1待機位置P42から排出位置P44に移動する。例えば、筐体50に設けられた操作パネル55がユーザーによって操作されることによって、制御装置500は、トレイ排出機構405を駆動させる。ステップS415にて、制御装置500は、第4駆動部444を駆動させることによって、第2可動板430を載置位置P41から第1待機位置P42に移動させる。
【0056】
図19を参照して、ステップS420にて、排出位置P44に配置された第1可動板420に、空の第1トレイTR1が載置される。本実施形態では、ユーザーによって第1可動板420に第1トレイTR1が載置される。ステップS425にて、制御装置500は、トレイ排出機構405を駆動させることによって、筐体50の外部に突き出されたトレイ排出機構405を筐体50に収容する。トレイ排出機構405が筐体50に収容されることによって、第1トレイTR1が載置された第1可動板420は、排出位置P44から第1待機位置P42に移動し、第2可動板430は、第1待機位置P42から第2待機位置P43に移動する。ステップS430にて、制御装置500は、第3駆動部443を駆動させることによって、第1トレイTR1が載置された第1可動板420を第1待機位置P42から載置位置P41に移動させ、固定部445を駆動させることによって、第1トレイTR1が載置された第1可動板420を載置位置P41に固定する。第1トレイTR1が載置された第1可動板420が載置位置P41に固定された後、ロボット200によって第1トレイTR1への成形品MDの載置が開始される。
【0057】
図20を参照して、ステップS435にて、制御装置500は、第2駆動部442を駆動させることによって、第2可動板430を第2待機位置P43から第1待機位置P42に移動させる。ステップS440にて、制御装置500は、トレイ排出機構405を駆動させることによって、トレイ排出機構405を筐体50の外部に突き出させる。トレイ排出機構405が筐体50の外部に突き出されることによって、第2可動板430は、第1待機位置P42から排出位置P44に移動する。ステップS445にて、制御装置500は、固定部445を駆動させることによって、第1トレイTR1が載置された第1可動板420の固定を解除して、第4駆動部444を駆動させることによって、第1トレイTR1が載置された第1可動板420を載置位置P41から第1待機位置P42に移動させる。
【0058】
図21を参照して、ステップS450にて、排出位置P44に配置された第2可動板430に、第2トレイTR2が載置される。本実施形態では、ユーザーによって第2可動板430に第2トレイTR2が載置される。ステップS455にて、制御装置500は、トレイ排出機構405を駆動させることによって、トレイ排出機構405を筐体50に収容する。トレイ排出機構405が筐体50に収容されることによって、第1トレイTR1が載置された第1可動板420は、第1待機位置P42から第2待機位置P43に移動し、第2トレイTR2が載置された第2可動板430は、排出位置P44から第1待機位置P42に移動する。ステップS460にて、制御装置500は、第3駆動部443を駆動させることによって、第2トレイTR2が載置された第2可動板430を第1待機位置P42から載置位置P41に移動させ、固定部445を駆動させることによって、第2可動板430を載置位置P41に固定する。第2トレイTR2が載置された第2可動板430が載置位置P41に固定された後、ロボット200によって第2トレイTR2への成形品MDの載置が開始される。
【0059】
図22を参照して、ステップS465にて、制御装置500は、第2駆動部442を駆動させることによって、第1トレイTR1が載置された第1可動板420を第2待機位置P43から第1待機位置P42に移動させる。ステップS470にて、制御装置500は、トレイ排出機構405を駆動させることによって、トレイ排出機構405を筐体50の外部に突き出させる。トレイ排出機構405が筐体50の外部に突き出されることによって、第1トレイTR1が載置された第1可動板420は、第1待機位置P42から排出位置P44に移動する。ステップS475にて、排出位置P44に配置された第1可動板420から、成形品MDが載置された第1トレイTR1が取り出される。本実施形態では、ユーザーによって第1可動板420から第1トレイTR1が取り出される。
【0060】
その後、ステップS415からステップS475までの処理が繰り返されて。空の第3トレイが排出位置P44に配置された第1可動板420に載置されて、載置位置P41まで移動され、第2トレイTR2が載置された第2可動板430が排出位置P44まで移動される。尚、第3トレイは、用いられなくてもよい。例えば、第1トレイTR1が第1可動板420から取り出されて、第1トレイTR1から成形品が取り出された後、第1トレイTR1が再び第1可動板420に載置されてもよい。第1トレイTR1が第1可動板420に載置されたまま、第1トレイTR1から成形品MDが取り出されてもよい。
【0061】
図23は、比較例における成形品の製造工程を示すタイムチャートである。比較例では、第2受渡位置P33と第2検査位置P34とが設けられていない。そのため、第1成形品の第2搬送工程が終了するまで第2成形品についての第1搬送工程を行うことができない。また、第1成形品についての第2搬送工程が終了してから、第2成形品についての第1搬送工程を開始するまでの間に、ロボット200を載置位置P41から取出位置P11まで移動させるための待ち時間が生じる。したがって、比較例における第2成形品についての第1搬送工程が開始されるタイミングは、本実施形態における第2成形品についての第1搬送工程が開始されるタイミングよりも遅れる。その結果、比較例における第3成形品についての成形工程が開始されるタイミングは、本実施形態における第3成形品についての成形工程が開始されるタイミングよりも遅れる。
【0062】
以上で説明した本実施形態の射出成形システム10によれば、制御装置500は、第1成形品を検査するための検査工程が行われる期間と、第2成形品を成形するための成形工程が行われる期間とが重複し、かつ、第2成形品を検査するための検査工程が行われる期間と、第1成形品をトレイに搬送するための第2搬送工程が行われる期間とが重複するように、射出成形機100とロボット200と検査装置300とを制御する。そのため、第3成形品を成形するための成形工程を早期に開始できるので、サイクルタイムを短縮できる。特に、本実施形態では、制御装置500は、第3成形品を成形するための成形工程が行われる期間と、第1成形品を検査装置300からトレイTRに搬送するための第2搬送工程が行われる期間とが重複するように、射出成形機100とロボット200と検査装置300とを制御する。そのため、サイクルタイムを確実に短縮できる。
【0063】
また、本実施形態では、検査装置300は、第1載置部320と第2載置部330とのいずれか一方に載置された成形品を検査部310によって検査する間に、他方とロボット200との間で成形品を受け渡すことができるように構成されている。そのため、検査部310を複数個設けずに第2成形品を検査するための検査工程と第1成形品をトレイに搬送するための第2搬送工程とを重複させることができる。特に、本実施形態では、検査装置300は、第1検査位置P32にて検査部310による成形品の検査が行われている間に、第1検査位置P32から離れた第2受渡位置P33にてロボット200と第2載置部330との間での成形品の受け渡しを行うことができ、かつ、第2検査位置P34にて検査部310による成形品の検査が行われている間に、第2検査位置P34から離れた第1受渡位置P31にてロボット200と第1載置部320との間での成形品の受け渡しを行うことができるように構成されている。そのため、検査部310とロボット200とが衝突する可能性を低減できる。
【0064】
また、本実施形態では、+X方向から-X方向に向かって取出位置P11の中心と、第1受渡位置P31の中心と、載置位置P41の中心と、第2受渡位置P33の中心とがこの順に配置されている。そのため、+X方向から-X方向に向かって取出位置P11の中心と、第1受渡位置P31の中心と、第2受渡位置P33の中心と、載置位置P41の中心とがこの順に配置された形態に比べて、吸着部250のX方向における移動距離を短縮できる。
【0065】
また、本実施形態では、トレイ移動部400によって、成形品が載置された第1トレイTR1を載置位置P41から排出位置P44まで移動させる間に、空の第2トレイTR2を排出位置P44から載置位置P41に移動させることができる。そのため、成形品が載置された第1トレイTR1を載置位置P41から排出位置P44まで移動させた後に、空の第2トレイTR2を排出位置P44から載置位置P41に移動させる形態に比べて、載置位置P41に配置された第1トレイTR1が第2トレイTR2に交換されるまでの待ち時間を短縮できるので、サイクルタイムを短縮できる。特に、本実施形態では、排出位置P44において第1成形品が載置された第1トレイTR1が外部に取り出される間に、載置位置P41に向かって空の第2トレイTR2を移動させることができる。そのため、排出位置P44における第1トレイTR1の取り出しと、載置位置P41における第2トレイTR2への第2成形品の載置とを並行して行うことができる。
【0066】
また、本実施形態では、この形態の射出成形システムによれば、-X方向から+X方向に向かって排出位置P44と第1待機位置P42と第2待機位置P43とがこの順に配置され、第1待機位置P42の+Y方向側に載置位置P41が配置されるようにトレイ移動部400が構成されているので、省スペースな作業領域で効率良くトレイを移動させることができる。
【0067】
また、本実施形態では、トレイ排出機構405によって、筐体50から突き出した排出位置P44に第1成形品が載置された第1トレイTR1や第2成形品が載置された第2トレイTR2を移動させることができる。そのため、第1成形品が載置された第1トレイTR1や第2成形品が載置された第2トレイTR2を筐体50の外部に取り出しやすくできる。
【0068】
また、本実施形態では、制御装置500は、射出成形機100の動作とロボット200の動作との少なくともいずれか一方に起因するエラーが発生した場合に、射出成形機100とロボット200との両方に復帰動作を実行させる。そのため、射出成形機100の動作に起因するエラーであるのかロボット200の動作に起因するエラーであるのかによらずに、射出成形機100とロボット200とを確実にエラーから復帰させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、制御装置500は、射出成形機100の動作とロボット200の動作との少なくともいずれか一方に起因するエラーが発生した場合に、射出成形機100の復帰動作が終了した後、ロボット200に復帰動作を開始させる。そのため、射出成形機100の復帰動作とロボット200の復帰動作とが並行して行われて、射出成形機100とロボット200とが衝突する可能性を低減できる。
【0070】
また、本実施形態では、制御装置500は、ノズル155から溶融材料が正常に射出されない射出不良が検出された場合と、金型部160が正常に型締めされない型締不良が検出された場合との少なくとも一方の場合に、射出成形機100にエラーが発生したと判断する。そのため、射出不良や型締不良に起因する射出成形機100のエラーを解消できる。
【0071】
また、本実施形態では、制御装置500は、吸着部250に成形品が正常に吸着されない吸着不良が検出された場合に、ロボット200にエラーが発生したと判断する。そのため、吸着不良に起因するロボット200のエラーを解消できる。
【0072】
また、本実施形態では、射出成形機100とトレイ移動部400とが鉛直方向の上下に重なって配置されている。そのため、射出成形システム10を水平方向において小型化できる。
【0073】
また、本実施形態では、検査装置300とトレイ移動部400とが鉛直方向の上下に重なって配置されている。そのため、射出成形システム10を水平方向において小型化できる。
【0074】
また、本実施形態では、固定金型162と成形品MDとの間隔を変化させずに、エジェクターピン181によって、成形品を可動金型161から押し出すことができる。そのため、ロボット200の吸着部250によって成形品MDを吸着する際に、成形品MDの位置が固定されるので、ロボット200の吸着部250によって成形品MDを吸着しやすくできる。
【0075】
また、本実施形態では、射出成形機100は、中心軸RXに沿った方向の高さが小さなフラットスクリュー130を用いて材料を溶融させる。そのため、射出成形機100を小型化できるため、射出成形システム10を小型化できる。
【0076】
B.他の実施形態:
(B1)上述した実施形態における射出成形システム10では、検査装置300には、第1検査位置P32と第2検査位置P34とが設けられており、移動部340は、検査部310を第1検査位置P32と第2検査位置P34との間を往復移動させる。これに対して、検査装置300には、第1検査位置P32と第2検査位置P34とが同じ位置に設けられてもよい。例えば、検査装置300に1つの検査位置が設けられて、検査部310は、この検査位置の上方に固定されてもよい。この場合、移動部340は、第1載置部320を第1受渡位置P31と検査位置との間で往復移動させ、第2載置部330を第2受渡位置P33と検査位置との間で往復移動させるように構成される。尚、検査装置300には、第1検査位置P32と第1受渡位置P31とが同じ位置に設けられ、かつ、第2検査位置P34と第2受渡位置P33とが同じ位置に設けられてもよい。この場合、移動部340は、第1載置部320と第2載置部330とを移動させずに、検査部310を第1載置部320と第2載置部330との間で移動させるように構成される。
【0077】
(B2)上述した実施形態における射出成形システム10では、制御装置500は、第1成形品が検査装置300の第1載置部320または第2載置部330に載置されると同時に、射出成形機100による第2成形品を成形するための成形工程を開始させる。これに対して、制御装置500は、ロボット200によって第1成形品が金型部160から取り出された後、かつ、第1成形品が検査装置300の第1載置部320または第2載置部330に載置される前に、射出成形機100による第2成形品を成形するための成形工程を開始させてもよい。この場合、サイクルタイムをより短縮できる。
【0078】
(B3)上述した実施形態における射出成形システム10では、+X方向から-X方向に向かって取出位置P11の中心と、第1受渡位置P31の中心と、載置位置P41の中心と、第2受渡位置P33の中心とがこの順に配置されている。これに対して、取出位置P11の中心と、第1受渡位置P31の中心と、載置位置P41の中心と、第2受渡位置P33の中心とが、上述した順序とは異なる順序で配置されてもよい。例えば、+X方向から-X方向に向かって取出位置P11の中心と、第1受渡位置P31の中心と、第2受渡位置P33の中心と、載置位置P41の中心とがこの順に配置されてもよい。
【0079】
(B4)上述した実施形態における射出成形システム10では、トレイ移動部400は、筐体50の外部に突き出されるトレイ排出機構405を備え、排出位置P44は、筐体50から突き出されたトレイ排出機構405上に設けられている。これに対して、トレイ移動部400は、トレイ排出機構405を備えずに、排出位置P44は、筐体50内に設けられてもよい。
【0080】
(B5)上述した実施形態における射出成形システム10において、トレイ移動部400は、排出位置P44と第1待機位置P42と載置位置P41と第2待機位置P43とが時計回りに配置されて、第1トレイTR1と第2トレイTR2とを排出位置P44、第1待機位置P42、載置位置P41、第2待機位置P43の順に時計回りに移動させるように構成されてもよい。トレイ移動部400は、排出位置P44と第1待機位置P42と載置位置P41と第2待機位置P43とが反時計回りに配置されて、第1トレイTR1と第2トレイTR2とを排出位置P44、第1待機位置P42、載置位置P41、第2待機位置P43の順に反時計回りに移動させるように構成されてもよい。
【0081】
(B6)上述した実施形態における射出成形システム10では、制御装置500は、図13のステップS270において、射出成形機100とロボット200との少なくともいずれか一方にエラーが発生したと判断した場合に、制御装置500は、射出成形機100の復帰動作が終了した後、ロボット200に復帰動作を開始させる。これに対して、制御装置500は、ステップS270において、射出成形機100とロボット200との少なくともいずれか一方にエラーが発生したと判断した場合に、射出成形機100の復帰動作が行われる期間と、ロボット200の復帰動作が行われる期間とが重複するように、射出成形機100とロボット200とに復帰動作を実行させてもよい。
【0082】
(B7)上述した実施形態における射出成形システム10において、制御装置500は、図13のステップS270にて、射出成形機100とロボット200との少なくともいずれか一方にエラーが発生したと判断した場合に、検査装置300による成形品の検査が終了した後、検査装置300に復帰動作を実行させてもよい。この場合、検査装置300による成形品の検査が中断されて成形品の検査に漏れが生じることを抑制できる。
【0083】
(B8)上述した実施形態における射出成形システム10において、制御装置500は、図13のステップS270にて、射出成形機100とロボット200との少なくともいずれか一方にエラーが発生したと判断した場合に、トレイ移動部400を制御することによって、成形品が載置されたトレイを排出位置P44へ移動させてもよい。そのため、射出成形機100およびロボット200に復帰動作を実行させている間に、成形品が載置されたトレイを排出位置P44に向かって搬送できるので、エラーの発生前にトレイに載置された成形品の排出が遅れることを抑制できる。
【0084】
(B9)上述した実施形態における射出成形システム10では、射出成形機100の少なくとも一部と、トレイ移動部400とが鉛直方向の上下に重なるように配置されている。これに対して、射出成形機100とトレイ移動部400とが鉛直方向の上下に重ならずに、ロボット200と筐体50との固定部分の少なくとも一部と、トレイ移動部400とが鉛直方向の上下に重なるように配置されてもよい。射出成形機100の少なくとも一部と、トレイ移動部400とが鉛直方向の上下に重なるように配置され、かつ、ロボット200と筐体50との固定部分の少なくとも一部と、トレイ移動部400とが鉛直方向の上下に重なるように配置されてもよい。
【0085】
(B10)上述した実施形態における射出成形システム10では、検査装置300の少なくとも一部とトレイ移動部400とが鉛直方向の上下に重なるように配置されている。これに対して、検査装置300とトレイ移動部400とが鉛直方向の上下に重ならずに配置されてもよい。
【0086】
(B11)上述した実施形態における射出成形システム10では、可動金型161から成形品MDを押し出す際に、エジェクターピン181を固定金型162に対して移動させずに、固定金型162およびエジェクターピン181に対して可動金型161を移動させるように射出成形機100が構成されている。これに対して、射出成形機100は、可動金型161から成形品MDを押し出す際に、可動金型161および固定金型162に対してエジェクターピン181を移動させるように構成されてもよい。
【0087】
(B12)上述した実施形態における射出成形システム10では、射出成形機100は、偏平な円柱状のフラットスクリュー130と、平坦なスクリュー142対向面を有するバレル140とを備えている。これに対して、射出成形機100は、長尺な軸状の外形を有し、軸の側面に螺旋状の溝が形成されたスクリューと、円筒状のスクリュー対向面を有するバレルとを備えてもよい。
【0088】
C.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0089】
(1)本開示の一形態によれば、射出成形システムが提供される。この射出成形システムは、第1言語を用いて生成された指令に従って動作し、ノズルから成形型に溶融材料を射出して成形品を成形する射出成形機と、第2言語を用いて生成された指令に従って動作し、前記射出成形機によって成形された前記成形品を搬送するロボットと、前記第1言語を用いて生成された指令を前記射出成形機に送信することによって前記射出成形機を制御し、前記第2言語によって解釈可能な指令を前記ロボットに送信することによって前記ロボットを制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記射出成形機と前記ロボットとの少なくともいずれか一方にエラーが発生したと判断した場合に、前記第1言語を用いて生成された、前記射出成形機に復帰動作を実行させる指令を前記射出成形機に送信し、かつ、前記第2言語によって解釈可能な、前記ロボットに復帰動作を実行させる指令を前記ロボットに送信することによって、前記射出成形機および前記ロボットに復帰動作を実行させる。
この形態の射出成形システムによれば、射出成形機の動作とロボットの動作との少なくともいずれか一方に起因するエラーが発生した場合に、確実にエラーから復帰させることができる。
【0090】
(2)上記形態の射出成形システムにおいて、前記制御装置は、前記射出成形機および前記ロボットに復帰動作を実行させる際に、前記射出成形機の復帰動作が終了した後、前記ロボットに復帰動作を開始させてもよい。
この形態の射出成形システムによれば、射出成形機の復帰動作とロボットの復帰動作とが並行して行われることを抑制できるので、射出成形機とロボットとが衝突する可能性を低減できる。
【0091】
(3)上記形態の射出成形システムにおいて、前記制御装置は、前記ノズルから前記溶融材料が正常に射出されない射出不良が検出された場合と、前記成形型が正常に型締めされない型締不良が検出された場合との少なくとも一方の場合に、前記射出成形機にエラーが発生したと判断してもよい。
この形態の射出成形システムによれば、射出成形機の射出不良および型締不良を解消できる。
【0092】
(4)上記形態の射出成形システムにおいて、前記ロボットは、前記成形品を吸着する吸着部を有し、前記制御装置は、前記吸着部に前記成形品が正常に吸着されない吸着不良が検出された場合に、前記ロボットにエラーが発生したと判断してもよい。
この形態の射出成形システムによれば、ロボットの吸着不良を解消できる。
【0093】
(5)上記形態の射出成形システムは、さらに、前記成形品を検査する検査装置を備え、前記制御装置は、前記検査装置を制御し、前記制御装置は、前記射出成形機と前記ロボットとの少なくともいずれか一方にエラーが発生したと判断した場合に、前記検査装置による前記成形品の検査が終了した後、前記検査装置に復帰動作を実行させてもよい。
この形態の射出成形システムによれば、検査装置による成形品の検査漏れが生じることを抑制できる。
【0094】
(6)上記形態の射出成形システムは、さらに、前記ロボットによって前記成形品がトレイに載置される載置位置から、前記成形品が外部に排出される排出位置まで前記トレイを移動させるトレイ移動部を備え、前記制御装置は、前記トレイ移動部を制御し、前記制御装置は、前記射出成形機と前記ロボットとの少なくともいずれか一方にエラーが発生したと判断した場合に、前記トレイ移動部によって前記トレイを前記排出位置へ移動させてもよい。
この形態の射出成形システムによれば、射出成形機およびロボットに復帰動作を実行させている間に、トレイを排出位置に向かって搬送できるので、エラーの発生前にトレイに載置された成形品の排出が遅れることを抑制できる。
【0095】
(7)上記形態の射出成形システムにおいて、前記射出成形機の前記成形型は、固定成形型と、前記固定成形型に対して移動する可動成形型と、前記固定成形型に対する前記可動成形型の移動によって前記可動成形型から前記固定成形型に向かって突き出すエジェクターピンと、を有し、前記ロボットは、前記エジェクターピンによって前記可動成形型から押し出された前記成形品を取り出してもよい。
この形態の射出成形システムによれば、固定成形型と成形品との間隔を変化させずに、成形品を可動成形型から離型させることができるので、可動成形型から成形品を取り出す際に、ロボットによって成形品を把持しやすくできる。
【0096】
(8)上記形態の射出成形システムにおいて、前記射出成形機は、溝部が設けられた溝形成面を有するフラットスクリューと、前記溝形成面に対向し、前記ノズルに連通する連通孔を有するバレルと、加熱部と、を備え、前記フラットスクリューの回転と前記加熱部による加熱とによって、前記溝部に供給された材料を溶融させて前記溶融材料を生成して、前記連通孔から前記溶融材料を流出させてもよい。
この形態の射出成形システムによれば、射出成形機を小型化できるため、射出成形システムを小型化できる。
【0097】
本開示は、射出成形システム以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、成形品の製造方法等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0098】
10…射出成形システム、50…筐体、51…第1基台、52…第2基台、55…操作パネル、58…キャスター、59…ストッパー、100…射出成形機、105…材料供給部、106…材料供給管、107…コンプレッサー、110…材料貯留部、120…可塑化部、121…スクリューケース、122…駆動モーター、130…フラットスクリュー、132…溝形成面、133…側面、134…材料導入口、135…溝部、136…凸条部、137…中央部、140…バレル、142…スクリュー対向面、144…案内溝、146…連通孔、148…加熱部、150…射出制御機構、151…射出シリンダー、152…プランジャー、153…プランジャー駆動部、155…ノズル、160…金型部、161…可動金型、162…固定金型、170…型締装置、171…金型駆動部、172…ボールねじ部、180…突出し機構、181…エジェクターピン、182…第1エジェクタープレート、183…第2エジェクタープレート、184…リターンピン、185…ばね部材、186…スラストベアリング、200…ロボット、210…アーム部、250…吸着部、290…ロボット制御部、300…検査装置、310…検査部、315…カメラ、320…第1載置部、330…第2載置部、340…移動部、341…第1リニアアクチュエーター、342…第2リニアアクチュエーター、343…第3リニアアクチュエーター、400…トレイ移動部、405…トレイ排出機構、406…レール部、410…第1固定板、411…第1ボール、415…第2固定板、416…第2ボール、420…第1可動板、422…第1枠部、426…第1穴部、427…第1切欠部、430…第2可動板、432…第2枠部、436…第2穴部、437…第2切欠部、441…第1駆動部、442…第2駆動部、443…第3駆動部、444…第4駆動部、445…固定部、500…制御装置
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