(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 1/10 20060101AFI20240402BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20240402BHJP
C08K 5/1515 20060101ALI20240402BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20240402BHJP
【FI】
C08L1/10 ZBP
C08K5/13
C08K5/1515
C08L101/16
(21)【出願番号】P 2019198825
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八百 健二
(72)【発明者】
【氏名】吉川 英昭
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-151796(JP,A)
【文献】特開2019-151797(JP,A)
【文献】特開2007-161943(JP,A)
【文献】特開2011-213914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースアシレート(A)と、
前記セルロースアシレート(A)と反応する官能基を有さず、
炭素数6以上30以下の長鎖脂肪族基と共に、フェノール性水酸基、および芳香族基に直接結合したモノグリシジルエーテル基の少なくとも一方を有する芳香族化合物(B)と、
を含有し、
前記セルロースアシレート(A)と前記芳香族化合物(B)との質量比((B)/(A))が0.15以上であり、
前記セルロースアシレート(A)及び前記芳香族化合物(B)の合計量は、樹脂組成物全体に対して、90質量%以上であり、
ポリエステル樹脂を含まない又は含んでも、ポリエステル樹脂の含有量が樹脂組成物の全量に対して1質量%未満である樹脂組成物。
【請求項2】
前記セルロースアシレート(A)と芳香族化合物(B)との質量比((B)/(A))が0.15以上0.80以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記セルロースアシレート(A)と芳香族化合物(B)との質量比((B)/(A))が0.20以上0.50以下である請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記セルロースアシレート(A)が、セルロースアセテートプロピオネート及びセルロースアセテートブチレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記芳香族化合物(B)が、カルダノール化合物(B1)である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記カルダノール化合物(B1)が、下記一般式(CDN1)で表される化合物、及び、前記一般式(CDN1)で表される化合物が重合された重合体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項5に記載の樹脂組成物。
【化1】
(一般式(CDN1)中、R
1は、置換基を有していてもよいアルキル基、又は二重結合を有し且つ置換基を有していてもよい不飽和脂肪族基を表す。R
2は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、又は二重結合を有し且つ置換基を有していてもよい不飽和脂肪族基を表す。P2は0以上4以下の整数を表す。P2が2以上である場合において複数存在するR
2は、同じ基であっても異なる基であってもよい。)
【請求項7】
セルロースアシレート(A)と、
前記セルロースアシレート(A)と反応する官能基を有さず、
炭素数6以上30以下の長鎖脂肪族基と共に、フェノール性水酸基、および芳香族基に直接結合したモノグリシジルエーテル基の少なくとも一方を有する芳香族化合物(B)と、
を含有し、
液温25℃のメチルエチルケトンに対する樹脂組成物の溶解度が、200mg/ml以上であり、
前記セルロースアシレート(A)及び前記芳香族化合物(B)の合計量は、樹脂組成物全体に対して、90質量%以上であり、
ポリエステル樹脂を含まない又は含んでも、ポリエステル樹脂の含有量が樹脂組成物の全量に対して1質量%未満である樹脂組成物。
【請求項8】
前記セルロースアシレート(A)及び前記芳香族化合物(B)の合計量は、樹脂組成物全体に対して、100質量%である請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有
し、ポリエステル樹脂を含まない又は含んでも、ポリエステル樹脂の含有量が樹脂成形体の全量に対して1質量%未満である樹脂成形体。
【請求項10】
粒状体である請求項9に記載の樹脂成形体。
【請求項11】
前記粒状体の体積平均粒径が、3μm以上100μm以下である請求項10に記載の樹脂成形体。
【請求項12】
前記粒状体の大径側粒度分布指標GSD
Vが1.5以下である請求項10又は請求項11に記載の樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「平均粒子径が0.2~20μmであり、かつL/D(Lはセルロース粒子又は複合体粒子の長径、Dは短径を示す。)が1.30以下の微粒子であるセルロース微粒子及び/又はセルロース複合微粒子を1.0~40重量%含む液状またはクリーム状化粧料」が開示されている。
【0003】
特許文献2には、「多孔質セルロース粒子からなるスクラブ剤であって、粒子径がメジアン径で100μm以上1,000μm以下、かさ比重が0.38g/ml以上0.55g/ml以下、生分解速度が10日以内に50重量%以上であるスクラブ剤」が開示されている。
【0004】
特許文献3には、「セルロースまたはその誘導体の水酸基と、カルダノール誘導体のフェノール性水酸基を利用して、該セルロース又はその誘導体に、カルダノール及びカードールを含有し、該カードールの含有量が3.0重量%以上であるカルダノール類縁体又はその誘導体が結合されてなるセルロース系樹脂」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-309503号公報
【文献】特開2018-118917号公報
【文献】特開2015-081326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、セルロースアシレート(A)と、セルロースアシレート(A)と反応する官能基を有さず、長鎖脂肪族基と共に、フェノール性水酸基、および芳香族基に直接結合したモノグリシジルエーテル基の少なくとも一方を有する芳香族化合物(B)と、を含有する樹脂組成物において、セルロースアシレート(A)と芳香族化合物(B)との質量比((B)/(A))が0.15未満である場合、又はメチルエチルケトンに対する樹脂組成物の溶解度が、200mg/ml未満である場合に比べ、生分解速度が速い樹脂成形体が得られる樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
【0008】
[1]
セルロースアシレート(A)と、
前記セルロースアシレート(A)と反応する官能基を有さず、長鎖脂肪族基と共に、フェノール性水酸基、および芳香族基に直接結合したモノグリシジルエーテル基の少なくとも一方を有する芳香族化合物(B)と、
を含有し、
前記セルロースアシレート(A)と前記芳香族化合物(B)との質量比((B)/(A))が0.15以上である樹脂組成物。
[2]
前記セルロースアシレート(A)と芳香族化合物(B)との質量比((B)/(A))が0.15以上0.80以下である[1]に記載の樹脂組成物。
[3]
前記セルロースアシレート(A)と芳香族化合物(B)との質量比((B)/(A))が0.20以上0.50以下である[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
前記セルロースアシレート(A)が、セルロースアセテートプロピオネート及びセルロースアセテートブチレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である[1]~[3]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[5]
前記芳香族化合物(B)が、カルダノール化合物(B1)である[1]~[4]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[6]
前記カルダノール化合物(B1)が、下記一般式(CDN1)で表される化合物、及び、前記一般式(CDN1)で表される化合物が重合された重合体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である[5]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【化1】
(一般式(CDN1)中、R
1は、置換基を有していてもよいアルキル基、又は二重結合を有し且つ置換基を有していてもよい不飽和脂肪族基を表す。R
2は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、又は二重結合を有し且つ置換基を有していてもよい不飽和脂肪族基を表す。P2は0以上4以下の整数を表す。P2が2以上である場合において複数存在するR
2は、同じ基であっても異なる基であってもよい。)
[7] セルロースアシレート(A)と、
前記セルロースアシレート(A)と反応する官能基を有さず、長鎖脂肪族基と共に、フェノール性水酸基、および芳香族基に直接結合したモノグリシジルエーテル基の少なくとも一方を有する芳香族化合物(B)と、
を含有し、
液温25℃のメチルエチルケトンに対する樹脂組成物の溶解度が、200mg/ml以上である樹脂組成物。
[8]
[1]~[7]のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有する樹脂成形体。
[9]
粒状体である[8]に記載の樹脂成形体。
[10]
前記粒状体の体積平均粒径が、3μm以上100μm以下である[9]に記載の樹脂成形体。
[11]
前記粒状体の大径側粒度分布指標GSDvが1.5以下である[9]又は[10]に記載の樹脂成形体。
【発明の効果】
【0009】
[1]、[5]、又は[6]に係る発明によれば、セルロースアシレート(A)と、セルロースアシレート(A)と反応する官能基を有さず、長鎖脂肪族基と共に、フェノール性水酸基、および芳香族基に直接結合したモノグリシジルエーテル基の少なくとも一方を有する芳香族化合物(B)と、を含有する樹脂組成物において、セルロースアシレート(A)と芳香族化合物(B)との質量比((B)/(A))が0.15未満である場合に比べ、生分解速度が速い樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
【0010】
[2]、又は[3]に係る発明によれば、セルロースアシレート(A)と芳香族化合物(B)との質量比((B)/(A))が、0.15未満であるに比べ生分解速度が速く、0.80超えである場合に比べ過度な生分解速度が抑制された樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
【0011】
[4]に係る発明によれば、セルロースアシレート(A)がジアセチルセルロース又は
トリアセチルセルロースである場合に比べ、生分解速度が速い樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
【0012】
[7]に係る発明によれば、セルロースアシレート(A)と、セルロースアシレート(A)と反応する官能基を有さず、長鎖脂肪族基と共に、フェノール性水酸基、および芳香族基に直接結合したモノグリシジルエーテル基の少なくとも一方を有する芳香族化合物(B)と、を含有する樹脂組成物において、メチルエチルケトンに対する樹脂組成物の溶解度が、200mg/ml未満である場合に比べ、生分解速度が速い樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
【0013】
[8]、又は[9]に係る発明によれば、セルロースアシレート(A)と、セルロースアシレート(A)と反応する官能基を有さず、長鎖脂肪族基と共に、フェノール性水酸基、および芳香族基に直接結合したモノグリシジルエーテル基の少なくとも一方を有する芳香族化合物(B)と、を含有する樹脂成形体において、セルロースアシレート(A)と芳香族化合物(B)との質量比((B)/(A))が0.15未満である場合、又はメチルエチルケトンに対する樹脂組成物の溶解度が、200mg/ml未満である場合に比べ、生分解速度が速い樹脂成形体が提供される。
【0014】
[10]に係る発明によれば、体積平均粒径が3μm未満又は100μm超えの粒状体である場合に比べ、樹脂成形体として、生分解速度が速い粒状体が提供される。
[11]に係る発明によれば、大径側粒度分布指標GSDvが1.5超えの粒状体である場合に比べ、樹脂成形体として、生分解速度が速い粒状体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0016】
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0017】
本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味する。
【0018】
本明細書において、セルロースアシレート(A)、芳香族化合物(B)をそれぞれ、成分(A)、成分(B)ともいう。
【0019】
<樹脂組成物>
-第一実施形態-
第一実施形態に係る樹脂組成物は、セルロースアシレート(A)と、セルロースアシレート(A)と反応する官能基を有さず、長鎖脂肪族基と共に、フェノール性水酸基、および芳香族基に直接結合したモノグリシジルエーテル基の少なくとも一方を有する芳香族化合物(B)と、を含有する。
そして、セルロースアシレート(A)と芳香族化合物(B)との質量比((B)/(A))が0.15以上である。
【0020】
ここで、近年、地球温暖化の抑制、枯渇資源の保護という持続可能な社会を構築する目的から、石油に代わるバイオ由来成分を含む樹脂組成物を普及されている。
特に、海洋プラスチックゴミに代表される環境汚染及び生体系破壊が生じており、バイオ由来且つ生分解性を有する樹脂成形体が求められている。
【0021】
一方、セルロース、ポリ乳酸などの、生分解性を有する樹脂成形体が数多く報告されている。
しかし、いずれも生分解速度が不十分であり、環境滞在時間が長く分解前に生物が捕食したり、分解により形状が小さくなることで生物が捕食し易くなる。
【0022】
それに対して、第一実施形態に係る樹脂組成物は、上記構成により、生分解性が速い樹脂成形体が得られる。その理由は、次の通り推測される。
【0023】
セルロースアシレート(A)(成分(A))は生分解性を有する化合物である。その機序は、成分(A)の加水分解により分子鎖が短くなり始め、ある程度の長さになったら微生物による生分解が始まり、最終的には水と二酸化炭素と酸になるというものである。
成分(A)の分子鎖が生分解可能な長さに加水分解されるまでには、ある程度の時間を要する。これが生分解速度を遅くする要因の一つになっている。
また、成分(A)の加水分解はランダムに起こることから、分解後には長い鎖及び短い鎖の分布が生じ、短い鎖は比較的速く生分解するが、長い鎖が残ってしまう。このことも、生分解速度を速められない要因になっている。
【0024】
一方、セルロースアシレート(A)(成分(A))と芳香族化合物(B)(成分(B))を含有する樹脂組成物は、コンポスト(堆肥)のような適度な温度及び水分、又は海水のようにアルカリ雰囲気と水分に接すると、成分(B)のモノグリシジルエーテル基又はフェノール性水酸基(以下「エポキシ基又は水酸基」とも称する。)は、成分(B)が比較的長い長鎖脂肪族基に有するため、拘束力が弱く且つ活性が高まる。そのため、成分(A)の加水分解が促進される。
そして、成分(A)と成分(B)との質量比((B)/(A))が0.15以上とすると、芳香族化合物(B)のエポキシ基又は水酸基による成分(A)の加水分解の促進作用が増加し、得られる樹脂成形体の生分解速度が速まる。
【0025】
以上から、第一実施形態に係る樹脂組成物は、上記構成により、生分解性が速い樹脂成形体が得られると推測される。
【0026】
-第二実施形態-
第二実施形態に係る樹脂組成物は、セルロースアシレート(A)と、セルロースアシレート(A)と反応する官能基を有さず、長鎖脂肪族基と共に、フェノール性水酸基、および芳香族基に直接結合したモノグリシジルエーテル基の少なくとも一方を有する芳香族化合物(B)と、を含有する。
そして、液温25℃のメチルエチルケトンに対する樹脂組成物の溶解度は、200mg/ml以上である。
【0027】
第二実施形態に係る樹脂組成物は、上記構成により、生分解性が速い樹脂成形体が得られる。その理由は、次の通り推測される。
【0028】
セルロースアシレート(A)は、単独ではメチルエチルケトンに溶解し難い。一方、セルロースアシレート(A)に、芳香族化合物(B)を混合した樹脂組成物は、メチルエチルケトンに対する溶解度が高まる。
液温25℃のメチルエチルケトンに対する樹脂組成物の溶解度が200mg/ml以上となる量ではセルロースアシレート(A)の分子間力が弱まり、芳香族化合物(B)がセルロースアシレート(A)の分子間に混入しやすくなることで、上述した、芳香族化合物(B)のエポキシ基又は水酸基による成分(A)の加水分解の促進作用が増加し、得られる樹脂成形体の生分解速度が速まる。
【0029】
以上から、第二実施形態に係る樹脂組成物は、上記構成により、生分解性が速い樹脂成形体が得られると推測される。
【0030】
以下、第一及び第二実施形態に係る樹脂組成物のいずれにも該当する樹脂組成物(以下「本実施形態に係る樹脂組成物」とも称する)について詳細に説明する。ただし、本発明のトナーの一例は、第一及び第二実施形態に係る樹脂組成物のいずれか一方に該当するトナーであればよい。
【0031】
以下、本実施形態に係る樹脂組成物について詳細に説明する。
【0032】
[セルロースアシレート(A):成分(A)]
セルロースアシレート(A)は、セルロースにおけるヒドロキシ基の少なくも一部がアシル基により置換(アシル化)されたセルロース誘導体である。アシル基とは、-CO-RAC(RACは、水素原子又は炭化水素基を表す。)の構造を有する基である。
【0033】
セルロースアシレート(A)は、例えば、下記の一般式(CA)で表されるセルロース誘導体である。
【0034】
【0035】
一般式(CA)中、A1、A2及びA3はそれぞれ独立に、水素原子又はアシル基を表し、nは2以上の整数を表す。ただし、n個のA1、n個のA2及びn個のA3のうちの少なくとも一部はアシル基を表す。分子中にn個あるA1は、全て同一でも一部同一でも互いに異なっていてもよい。同様に、分子中にn個あるA2及びn個あるA3もそれぞれ、全て同一でも一部同一でも互いに異なっていてもよい。
【0036】
A1、A2及びA3が表すアシル基は、当該アシル基中の炭化水素基が、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
【0037】
A1、A2及びA3が表すアシル基は、当該アシル基中の炭化水素基が、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよいが、飽和炭化水素基であることがより好ましい。
【0038】
A1、A2及びA3が表すアシル基は、炭素数1以上6以下のアシル基が好ましい。すなわち、セルロースアシレート(A)としては、アシル基の炭素数が1以上6以下であるセルロースアシレート(A)が好ましい。アシル基の炭素数が1以上6以下であるセルロースアシレート(A)は、炭素数7以上のアシル基を有するセルロースアシレート(A)に比べ、耐衝撃性に優れた樹脂成形体が得られやすい。
【0039】
A1、A2及びA3が表すアシル基は、当該アシル基中の水素原子がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、酸素原子、窒素原子などで置換された基でもよいが、無置換であることが好ましい。
【0040】
A1、A2及びA3が表すアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基(ブタノイル基)、プロペノイル基、ヘキサノイル基等が挙げられる。これらの中でもアシル基としては、樹脂組成物の成形性、樹脂成形体の生分解速度向上の観点から、炭素数2以上4以下のアシル基がより好ましく、炭素数2又は3のアシル基が更に好ましい。
【0041】
セルロースアシレート(A)としては、セルロースアセテート(セルロースモノアセテート、セルロースジアセテート(DAC)、セルローストリアセテート)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)等が挙げられる。
【0042】
セルロースアシレート(A)としては、樹脂成形体の生分解速度向上の観点から、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)が好ましく、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)がより好ましい。
【0043】
セルロースアシレート(A)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
セルロースアシレート(A)の重量平均重合度は、樹脂組成物の成形性、樹脂成形体の耐衝撃性又は樹脂成形体が靱性に優れる観点から、200以上1000以下が好ましく、500以上1000以下がより好ましく、600以上1000以下が更に好ましい。
【0045】
セルロースアシレート(A)の重量平均重合度は、以下の手順で重量平均分子量(Mw)から求める。
まず、セルロースアシレート(A)の重量平均分子量(Mw)を、テトラヒドロフランを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ装置(GPC装置:東ソー社製、HLC-8320GPC、カラム:TSKgelα-M)にてポリスチレン換算で測定する。
次いで、セルロースアシレート(A)の構成単位分子量で除算することで、セルロースアシレート(A)の重合度を求める。例えば、セルロースアシレートの置換基がアセチル基の場合、構成単位分子量は、置換度が2.4のとき263、置換度が2.9のとき284である。
【0046】
セルロースアシレート(A)の置換度は、樹脂組成物の成形性、樹脂成形体の生分解速度向上の観点から、2.1以上2.9以下が好ましく、置換度2.2以上2.9以下がより好ましく、2.3以上2.9以下が更に好ましく、2.6以上2.9以下が特に好ましい。
【0047】
セルロースアセテートプロピオネート(CAP)において、アセチル基とプロピオニル基との置換度の比(アセチル基/プロピオニル基)は、樹脂組成物の成形性、樹脂成形体の生分解速度向上の観点から、0.01以上1以下が好ましく、0.05以上0.1以下がより好ましい。
【0048】
セルロースアセテートブチレート(CAB)において、アセチル基とブチリル基との置換度の比(アセチル基/ブチリル基)は、樹脂組成物の成形性、樹脂成形体の生分解速度向上の観点から、0.05以上3.5以下が好ましく、0.5以上3.0以下がより好ましい。
【0049】
セルロースアシレート(A)の置換度とは、セルロースが有するヒドロキシ基がアシル基により置換されている程度を示す指標である。つまり、置換度は、セルロースアシレート(A)のアシル化の程度を示す指標となる。具体的には、置換度は、セルロースアシレートのD-グルコピラノース単位に3個あるヒドロキシ基がアシル基で置換された置換個数の分子内平均を意味する。置換度は、1H-NMR(JMN-ECA/JEOL RESONANCE社製)にて、セルロース由来水素とアシル基由来水素とのピークの積分比から求める。
【0050】
[芳香族化合物(B):成分(B)]
芳香族化合物(B)は、セルロースアシレート(A)と反応する官能基を有さず、長鎖脂肪族基と共に、フェノール性水酸基、および芳香族基に直接結合したモノグリシジルエーテル基の少なくとも一方を有する芳香族化合物である。
つまり、芳香族化合物(B)は、セルロースアシレート(A)と反応する官能基を有さず、長鎖脂肪族基を有し、かつフェノール性水酸基、およびモノグリシジルエーテル基の少なくとも一方を有する化合物である。
ここで、長鎖脂肪族基は、炭素数6以上30以下(好ましくは10以上20以下)の、飽和脂肪族基(アルキル基)、不飽和脂肪族基(アルケニル基、アルキニル基)が挙げられる。脂肪族基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状、分岐状が好ましく、直鎖状がより好ましい。
【0051】
芳香族化合物(B)としては、単環、縮合環(芳香環が2個以上有する多環)、多核環(芳香環同士が炭素-炭素結合によって結合している多環)、複素環(複素環の単環、複素環を含む縮合環、複素環を含む多核環等)に、長鎖脂肪族基と共に、フェノール性水酸基が置換されている化合物が挙げられる。
【0052】
芳香族化合物(B)として具体的には、カルダノール化合物、フェナルカミン化合物、フェノール樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールレゾール型エポキシ樹脂、フェノール変性パーム油、フェノール変性大豆油、フェノール変性亜麻仁油等が挙げられる。
これらの中でも、生分解性向上の観点から、芳香族化合物(B)としては、カルダノール化合物(B1)が好ましい。
【0053】
カルダノール化合物(B1)とは、カシューを原料とする天然由来の化合物に含まれる成分(例えば、下記の構造式(b-1)~(b-4)で表される化合物)又は前記成分からの誘導体を指す。
【0054】
【0055】
カルダノール化合物(B1)は、カシューを原料とする天然由来の化合物の混合物(以下「カシュー由来混合物」ともいう。)であってもよい。
【0056】
カルダノール化合物(B1)は、カシュー由来混合物からの誘導体であってもよい。カシュー由来混合物からの誘導体としては、例えば以下の混合物や単体等が挙げられる。
【0057】
・カシュー由来混合物中の各成分の組成比を調整した混合物
・カシュー由来混合物中から特定の成分のみを単離した単体
・カシュー由来混合物中の成分を変性した変性体を含む混合物
・カシュー由来混合物中の成分を重合した重合体を含む混合物
・カシュー由来混合物中の成分を変性し且つ重合した変性重合体を含む混合物
・前記組成比を調整した混合物中の成分をさらに変性した変性体を含む混合物
・前記組成比を調整した混合物中の成分をさらに重合した重合体を含む混合物
・前記組成比を調整した混合物中の成分をさらに変性し且つ重合した変性重合体を含む混合物
・前記単離した単体をさらに変性した変性体
・前記単離した単体をさらに重合した重合体
・前記単離した単体をさらに変性し且つ重合した変性重合体
ここで単体には、2量体及び3量体等の多量体も含まれるものとする。
【0058】
カルダノール化合物(B1)は、樹脂成形体の生分解速度向上の観点から、一般式(CDN1)で表される化合物、及び、一般式(CDN1)で表される化合物が重合された重合体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0059】
【0060】
一般式(CDN1)中、R1は、置換基を有していてもよいアルキル基、又は二重結合を有し且つ置換基を有していてもよい不飽和脂肪族基を表す。R2は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、又は二重結合を有し且つ置換基を有していてもよい不飽和脂肪族基を表す。P2は0以上4以下の整数を表す。P2が2以上である場合において複数存在するR2は、同じ基であっても異なる基であってもよい。
【0061】
一般式(CDN1)において、R1が表す置換基を有していてもよいアルキル基は、炭素数3以上30以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数5以上25以下のアルキル基であることがより好ましく、炭素数8以上20以下のアルキル基であることが更に好ましい。
置換基としては、例えば、ヒドロキシ基;エポキシ基、メトキシ基等のエーテル結合を含む置換基;アセチル基、プロピオニル基等のエステル結合を含む置換基;等が挙げられる。
置換基を有していてもよいアルキル基の例としては、ペンタデカン-1-イル基、ヘプタン-1-イル基、オクタン-1-イル基、ノナン-1-イル基、デカン-1-イル基、ウンデカン-1-イル基、ドデカン-1-イル基、テトラデカン-1-イル基等が挙げられる。
【0062】
一般式(CDN1)において、R1が表す二重結合を有し且つ置換基を有していてもよい不飽和脂肪族基は、炭素数3以上30以下の不飽和脂肪族基であることが好ましく、炭素数5以上25以下の不飽和脂肪族基であることがより好ましく、炭素数8以上20以下の不飽和脂肪族基であることが更に好ましい。
不飽和脂肪族基が有する二重結合の数は、1以上3以下であることが好ましい。
置換基としては、前記アルキル基の置換基として列挙したものが同様に挙げられる。
二重結合を有し且つ置換基を有していてもよい不飽和脂肪族基の例としては、ペンタデカ-8-エン-1-イル基、ペンタデカ-8,11-ジエン-1-イル基、ペンタデカ-8,11,14-トリエン-1-イル基、ペンタデカ-7-エン-1-イル基、ペンタデカ-7,10-ジエン-1-イル基、ペンタデカ-7,10,14-トリエン-1-イル基等が挙げられる。
【0063】
一般式(CDN1)において、R1としては、ペンタデカ-8-エン-1-イル基、ペンタデカ-8,11-ジエン-1-イル基、ペンタデカ-8,11,14-トリエン-1-イル基、ペンタデカ-7-エン-1-イル基、ペンタデカ-7,10-ジエン-1-イル基、ペンタデカ-7,10,14-トリエン-1-イル基が好ましい。
【0064】
一般式(CDN1)において、R2が表す置換基を有していてもよいアルキル基及び二重結合を有し且つ置換基を有していてもよい不飽和脂肪族基としては、前記R1が表す置換基を有していてもよいアルキル基及び二重結合を有し且つ置換基を有していてもよい不飽和脂肪族基として列挙したものが同様に好ましい例として挙げられる。
【0065】
一般式(CDN1)で表される化合物はさらに変性されていてもよい。例えば、エポキシ化されていてもよく、具体的には一般式(CDN1)で表される化合物が有するヒドロキシ基が下記の基(EP)に置き換えられた構造の化合物、つまり、下記の一般式(CDN1-e)で表される化合物であってもよい。
【0066】
【0067】
基(EP)及び一般式(CDN1-e)中、LEPは、単結合又は2価の連結基を表す。一般式(CDN1-e)中、R1、R2及びP2はそれぞれ、一般式(CDN1)におけるR1、R2及びP2と同義である。
【0068】
基(EP)及び一般式(CDN1-e)において、LEPが表す2価の連結基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキレン基(好ましくは炭素数1以上4以下のアルキレン基、より好ましくは炭素数1のアルキレン基)、-CH2CH2OCH2CH2-基等が挙げられる。
上記置換基としては、一般式(CDN1)のR1において置換基として列挙したものが同様に挙げられる。
【0069】
LEPとしては、メチレン基が好ましい。
【0070】
一般式(CDN1)で表される化合物が重合された重合体とは、少なくとも2つ以上の一般式(CDN1)で表される化合物が、連結基を介して又は介さずに重合された重合体をいう。
【0071】
一般式(CDN1)で表される化合物が重合された重合体としては、例えば、下記の一般式(CDN2)で表される化合物が挙げられる。
【0072】
【0073】
一般式(CDN2)中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、又は二重結合を有し且つ置換基を有していてもよい不飽和脂肪族基を表す。R21、R22及びR23はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基、カルボキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、又は二重結合を有し且つ置換基を有していてもよい不飽和脂肪族基を表す。P21及びP23はそれぞれ独立に、0以上3以下の整数を表し、P22は0以上2以下の整数を表す。L1及びL2はそれぞれ独立に、2価の連結基を表す。nは、0以上10以下の整数を表す。P21が2以上である場合において複数存在するR21、P22が2以上である場合において複数存在するR22、及びP23が2以上である場合において複数存在するR23はそれぞれ、同じ基であっても異なる基であってもよい。nが2以上である場合において複数存在するR12、R22及びL1はそれぞれ、同じ基であっても異なる基であってもよく、nが2以上である場合において複数存在するP22は、同じ数であっても異なる数であってもよい。
【0074】
一般式(CDN2)において、R11、R12、R13、R21、R22及びR23が表す置換基を有していてもよいアルキル基及び二重結合を有し且つ置換基を有していてもよい不飽和脂肪族基としては、一般式(CDN1)のR1として列挙したものが同様に好ましい例として挙げられる。
【0075】
一般式(CDN2)において、L1及びL2が表す2価の連結基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキレン基(好ましくは炭素数2以上30以下のアルキレン基、より好ましくは炭素数5以上20以下のアルキレン基)等が挙げられる。
上記置換基としては、一般式(CDN1)のR1において置換基として列挙したものが同様に挙げられる。
【0076】
一般式(CDN2)において、nとしては、1以上10以下が好ましく、1以上5以下がより好ましい。
【0077】
一般式(CDN2)で表される化合物はさらに変性されていてもよい。例えば、エポキシ化されていてもよく、具体的には一般式(CDN2)で表される化合物が有するヒドロキシ基が基(EP)に置き換えられた構造の化合物、つまり、下記の一般式(CDN2-e)で表される化合物であってもよい。
【0078】
【0079】
一般式(CDN2-e)中、R11、R12、R13、R21、R22、R23、P21、P22、P23、L1、L2及びnはそれぞれ、一般式(CDN2)におけるR11、R12、R13、R21、R22、R23、P21、P22、P23、L1、L2及びnと同義である。
一般式(CDN2-e)中、LEP1、LEP2及びLEP3はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。nが2以上である場合において複数存在するLEP2は、同じ基であっても異なる基であってもよい。
【0080】
一般式(CDN2-e)において、LEP1、LEP2及びLEP3が表す2価の連結基としては、一般式(CDN1-e)におけるLEPが表す2価の連結基として列挙したものが同様に好ましい例として挙げられる。
【0081】
一般式(CDN1)で表される化合物が重合された重合体としては、例えば、少なくとも3つ以上の一般式(CDN1)で表される化合物が、連結基を介して又は介さずに三次元的に架橋重合された重合体であってもよい。一般式(CDN1)で表される化合物が三次元的に架橋重合された重合体としては、例えば以下の構造式で表される化合物が挙げられる。
【0082】
【0083】
上記構造式において、R10、R20及びP20はそれぞれ、一般式(CDN1)におけるR1、R2及びP2と同義である。L10は、単結合又は2価の連結基を表す。複数存在するR10、R20及びL10はそれぞれ、同じ基であっても異なる基であってもよい。複数存在するP20は、同じ数であっても異なる数であってもよい。
【0084】
上記構造式において、L10が表す2価の連結基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキレン基(好ましくは炭素数2以上30以下のアルキレン基、より好ましくは炭素数5以上20以下のアルキレン基)等が挙げられる。
上記置換基としては、一般式(CDN1)のR1において置換基として列挙したものが同様に挙げられる。
【0085】
上記構造式で表される化合物はさらに変性されていてもよく、例えば、エポキシ化されていてもよい。具体的には、上記構造式で表される化合物が有するヒドロキシ基が基(EP)に置き換えられた構造の化合物であってもよく、例えば以下の構造式で表される化合物、つまり、一般式(CDN1-e)で表される化合物が三次元的に架橋重合された重合体が挙げられる。
【0086】
【0087】
上記構造式において、R10、R20及びP20はそれぞれ、一般式(CDN1-e)におけるR1、R2及びP2と同義である。L10は、単結合又は2価の連結基を表す。複数存在するR10、R20及びL10はそれぞれ、同じ基であっても異なる基であってもよい。複数存在するP20は、同じ数であっても異なる数であってもよい。
【0088】
上記構造式において、L10が表す2価の連結基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキレン基(好ましくは炭素数2以上30以下のアルキレン基、より好ましくは炭素数5以上20以下のアルキレン基)等が挙げられる。
上記置換基としては、一般式(CDN1)のR1において置換基として列挙したものが同様に挙げられる。
【0089】
カルダノール化合物(B1)は、樹脂成形体の透明性を向上する観点から、エポキシ基を有するカルダノール化合物(B1)を含むことが好ましく、エポキシ基を有するカルダノール化合物(B1)であることがより好ましい。
【0090】
カルダノール化合物(B1)としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、Cardolite社製のNX-2024、Ultra LITE 2023、NX-2026、GX-2503、NC-510、LITE 2020、NX-9001、NX-9004、NX-9007、NX-9008、NX-9201、NX-9203、東北化工社製のLB-7000、LB-7250、CD-5L等が挙げられる。エポキシ基を有するカルダノール化合物の市販品としては、例えば、Cardolite社製のNC-513、NC-514S、NC-547、LITE513E、Ultra LTE 513等が挙げられる。
【0091】
カルダノール化合物(B1)の水酸基価は、樹脂成形体の生分解速度向上の観点から、100mgKOH/g以上が好ましく、120mgKOH/g以上がより好ましく、150mgKOH/g以上が更に好ましい。カルダノール化合物(B1)の水酸基価の測定は、ISO14900のA法に従って行われる。
【0092】
カルダノール化合物(B1)として、エポキシ基を有するカルダノール化合物(B1)を用いる場合、そのエポキシ当量は、樹脂成形体の透明性を向上する観点から、300以上500以下が好ましく、350以上480以下がより好ましく、400以上470以下が更に好ましい。エポキシ基を有するカルダノール化合物(B1)のエポキシ当量の測定は、ISO3001に従って行われる。
【0093】
カルダノール化合物(B1)の分子量は、樹脂成形体の生分解速度向上の観点から、250以上1000以下が好ましく、280以上800以下がより好ましく、300以上500以下が更に好ましい。
【0094】
カルダノール化合物(B1)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0095】
[成分(A)~成分(B)の含有量又は質量比]
各成分の略称は次の通りである。
成分(A)=セルロースアシレート(A)
成分(B)=芳香族化合物(B)
【0096】
成分(A)と成分(B)との質量比((B)/(A))は、0.15以上とする。
質量比((B)/(A))が、0.15未満であると、成分(B)による成分(A)の加水分解作用が不十分になり、速い生分解速度が得られない。
そのため、質量比((B)/(A))は、0.15以上とする。
ただし、質量比((B)/(A))が過度に高いと、コンポスト(堆肥)容器に入れる前、海水等に入る前等の通常環境でも、成分(A)の加水分解が起こってしまい、樹脂成形体の使用時の耐久性が低下することがある。そのため、過度な生分解速度を抑制する観点から、質量比((B)/(A))は、0.80以下が好ましい。
【0097】
樹脂成形体の使用時の耐久性を持たせつつ、生分解速度の向上を図る観点から、0.15以上0.80以下が好ましく、0.20以上0.50以下がより好ましい。
【0098】
ここで、生分解速度の向上を図る観点から、成分(A)と成分(B)とは、主成分として含むことがよい。
ここで、成分(A)及び成分(B)が主成分とは、樹脂組成物全体に対して占める成分(A)及び成分(B)の質量比が最も多いことを意味する、
具体的には、成分(A)と成分(B)との合計量は、樹脂組成物全体に対して、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%、又は100質量%が挙げられる。
【0099】
[その他の成分]
本実施形態に係る樹脂組成物は、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、例えば、可塑剤、難燃剤、相溶化剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、ドリップ防止剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等)、酢酸放出を防ぐための受酸剤(酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物;炭酸カルシウム;タルク;など)、反応性トラップ剤(例えば、エポキシ化合物、酸無水物化合物、カルボジイミド等)などが挙げられる。
その他の成分の含有量は、樹脂組成物全量に対してそれぞれ、0質量%以上5質量%以下であることが好ましい。ここで、「0質量%」とはその他の成分を含まないことを意味する。
【0100】
可塑剤としては、例えば、エステル化合物、樟脳、金属石鹸、ポリオール、ポリアルキレンオキサイド等が挙げられる。可塑剤としては、樹脂成形体の耐衝撃性の観点からは、エステル化合物が好ましい。可塑剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0101】
本実施形態に係る樹脂組成物に可塑剤として含まれるエステル化合物としては、例えば、アジピン酸エステル、クエン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、フタル酸エステル、酢酸エステル、二塩基酸エステル、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、グリコールエステル(例えば、安息香酸グリコールエステル)、脂肪酸エステルの変性体(例えば、エポキシ化脂肪酸エステル)等が挙げられる。上記エステルとしては、モノエステル、ジエステル、トリエステル、ポリエステル等が挙げられる。中でも、ジカルボン酸ジエステル(アジピン酸ジエステル、セバシン酸ジエステル、アゼライン酸ジエステル、フタル酸ジエステル等)が好ましい。
【0102】
可塑剤としては、アジピン酸エステルが好ましい。アジピン酸エステルは、セルロースアシレート(A)との親和性が高く、セルロースアシレート(A)に対して均一に近い状態で分散することで、他の可塑剤に比べて熱流動性をより向上させる。
【0103】
アジピン酸エステルとしては、アジピン酸エステルとそれ以外の成分との混合物を用いてもよい。当該混合物の市販品として、大八化学工業製のDaifatty101等が挙げられる。
【0104】
クエン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、フタル酸エステル、酢酸エステル等の脂肪酸エステルとしては、脂肪酸とアルコールとのエステルが挙げられる。前記アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2-エチルヘキサノール等の一価アルコール;グリセリン、ポリグリセリン(ジグリセリン等)、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、糖アルコール等の多価アルコール;などが挙げられる。
【0105】
安息香酸グリコールエステルにおけるグリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0106】
エポキシ化脂肪酸エステルは、不飽和脂肪酸エステルの炭素-炭素不飽和結合がエポキシ化された構造(つまり、オキサシクロプロパン)を有するエステル化合物である。エポキシ化脂肪酸エステルとしては、例えば、不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸、パルミトレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、ネルボン酸等)における炭素-炭素不飽和結合の一部又は全部がエポキシ化された脂肪酸とアルコールとのエステルが挙げられる。前記アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2-エチルヘキサノール等の一価アルコール;グリセリン、ポリグリセリン(ジグリセリン等)、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、糖アルコール等の多価アルコール;などが挙げられる。
【0107】
本実施形態に係る樹脂組成物に可塑剤として含まれるエステル化合物は、分子量(又は重量平均分子量)が、200以上2000以下であることが好ましく、250以上1500以下であることがより好ましく、280以上1000以下であることが更に好ましい。エステル化合物の重量平均分子量は、特に断りのない限り、セルロースアシレート(A)の重量平均分子量の測定方法に準拠して測定される値である。
【0108】
本実施形態に係る樹脂組成物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)以外の他の樹脂を含有していてもよい。ただし、他の樹脂を含む場合、樹脂組成物の全量に対する他の樹脂の含有量は、5質量%以下がよく、1質量%未満であることが好ましい。他の樹脂は、含有しないこと(つまり0質量%)がより好ましい。
他の樹脂としては、例えば、従来公知の熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的には、ポリカーボネート樹脂;ポリプロピレン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリオレフィン樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリアリーレン樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリビニルアセタール樹脂;ポリケトン樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリアリールケトン樹脂;ポリエーテルニトリル樹脂;液晶樹脂;ポリベンズイミダゾール樹脂;ポリパラバン酸樹脂;芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、及びシアン化ビニル化合物からなる群より選ばれる1種以上のビニル単量体を、重合若しくは共重合させて得られるビニル系重合体若しくは共重合体;ジエン-芳香族アルケニル化合物共重合体;シアン化ビニル-ジエン-芳香族アルケニル化合物共重合体;芳香族アルケニル化合物-ジエン-シアン化ビニル-N-フェニルマレイミド共重合体;シアン化ビニル-(エチレン-ジエン-プロピレン(EPDM))-芳香族アルケニル化合物共重合体;塩化ビニル樹脂;塩素化塩化ビニル樹脂;などが挙げられる。これら樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0109】
[樹脂組成物の特性]
本実施形態に係る樹脂組成物において、液温25℃のメチルエチルケトンに対する樹脂組成物の溶解度は、200mg/ml以上である。
樹脂組成物の溶解度が200mg/ml以上であると、芳香族化合物(B)のエポキシ基又は水酸基による成分(A)の加水分解の促進作用が増加し、得られる樹脂成形体の生分解速度が速まる。
樹脂組成物の溶解度は、250mg/ml以上が好ましく、300mg/ml以上がより好ましい。
【0110】
樹脂組成物の溶解度は、次の通り測定される。
液温25℃のメチルエチルケトン:100mlと、測定対象の樹脂組成物50000mgと、を容器に混ぜた後、発振周波数38kHzの超音波を480分付与した後、3時間静置する。
次に、容器中の溶液を、目開き25μmのフィルターでろ過し、フィルター上の残渣の乾燥質量を測定する。
そして、式:溶解度=(100mlのメチルエチルケトンに溶けた樹脂組成物の質量)/(メチルエチルケトン量100ml)から、溶解度を算出する。
【0111】
[樹脂組成物の製造方法]
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法として、例えば、成分(A)と、成分(B)と、成分(C)及び成分(D)の少なくとも一方と、必要に応じたその他の成分とを混合し溶融混練する方法;成分(A)と、成分(B)と、成分(C)及び成分(D)の少なくとも一方と、必要に応じたその他の成分とを溶剤に溶解する方法;などが挙げられる。溶融混練の手段としては、特に制限されず、例えば、二軸押出機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
【0112】
<樹脂成形体>
本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を含む。つまり、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物と同じ組成で構成されている。
【0113】
ここで、プラスチックゴミの中でもマイクロビーズと呼ばれる粒状体(例えば、粒径1000μm以下の粒状体)は、各種のフィルターをすり抜けて海洋などの環境に流出し易く、レジ袋又はストローのような樹脂成形体よりも、早い生分解性が求められている。
そのため、迅速な生分解性を有する、本実施形態に係る樹脂成形体は、目的とする形状であればよいが、粒状体(以下、「樹脂粒子」とも称する)であることが好ましい。
【0114】
粒状体の体積平均粒径は、3μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上70μm以下がより好ましく、8μm以上60μm以下がさらに好ましい。
粒状体の粒径を3μm以上にすると、単位重量あたりの粒子の個数が多くなりすぎないため、生分解速度の低下が抑制される。一方、粒状体の粒径が100μm以下にすると、比表面積が高くなり、より生分解速度の向上が図られる。
そのため、粒状体の体積平均粒径は、上記範囲が好ましい。
【0115】
粒状体の大径側粒度分布指標GSDvは、1.5以下が好ましく、1.3以下がより好ましく、1.2以下がさらに好ましい。
粒状体の粒度分布が均一に近づけると、水との一定の接触機会を与えることで規則的な加水分解が進行し、より生分解速度の向上が図られる。
【0116】
粒状物の体積平均粒径および大径側粒度分布指標GSDpは、次の通り測定される。
LS粒度分布測定装置「Beckman Coulter LS13 320(ベックマンコールター社製)」により粒径を測定し、粒径の累積分布を、体積基準で小径側から描き、累積50%となる粒子径を、体積平均粒径として求める。
一方、粒径の累積分布を、体積基準で小径側から描き、累積50%となる粒子径を個数平均粒子径D50v、累積84%となる粒子径を個数粒子径D84vと定義する。そして、大径側個数粒度分布指標GSDvは、式GSDv=(D84v/D50v)1/2で算出する。
【0117】
粒状体の製造方法は、例えば、次の方法が挙げられる。
1)各成分を混練し、得られた混練物を粉砕、分級して、粒状物を得る混練粉砕法、
2)混練粉砕法にて得られた粒状物を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させ、粒状物を得る乾式製法
3)各成分の粒子分散液を混合し、分散液中の粒子を凝集、加熱融着させ、粒状物を得る凝集合一法
4)各成分を溶解した有機溶媒を水系溶媒に懸濁させて、各成分を含む粒状物を造粒する溶解懸濁法
【0118】
これらの中でも、上記範囲の体積平均粒径および大径側粒度分布指標GSDvを有する粒状物を得る観点から、凝集合一法、溶解懸濁法等の湿式法がよい。
【0119】
本実施形態に係る樹脂成形体の成形方法は、形状の自由度が高い観点から、射出成形によって得られた射出成形体であってもよい。
【0120】
本実施形態に係る樹脂成形体を射出成形する際のシリンダ温度は、例えば160℃以上280℃以下であり、好ましくは180℃以上240℃以下である。本実施形態に係る樹脂成形体を射出成形する際の金型温度は、例えば40℃以上90℃以下であり、40℃以上60℃以下がより好ましい。
本実施形態に係る樹脂成形体の射出成形は、例えば、日精樹脂工業社製NEX500、日精樹脂工業社製NEX150、日精樹脂工業社製NEX7000、日精樹脂工業社製PNX40、住友機械社製SE50D等の市販の装置を用いて行ってもよい。
【0121】
本実施形態に係る樹脂成形体は、他の成形方法によって得られた樹脂成形体であってもよい。他の成形方法としては、例えば、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーティング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などを適用してよい。
【0122】
本実施形態に係る樹脂成形体の用途としては、化粧品基材、ローリング剤、研磨剤、スクラブ剤、ディスプレイスペーサー、ビーズ成形用材料、光拡散粒子、樹脂強化剤、屈折率制御剤、生分解促進剤、肥料、吸水性粒子、トナー粒子の粒状体が挙げられる。
本実施形態に係る樹脂成形体は、その他、電子・電気機器、事務機器、家電製品、自動車内装材、玩具、容器などの用途に好適に用いられる。本実施形態に係る樹脂成形体の具体的な用途として、電子・電気機器又は家電製品の筐体;電子・電気機器又は家電製品の各種部品;自動車の内装部品;ブロック組み立て玩具;プラスチックモデルキット;CD-ROM又はDVDの収納ケース;食器;飲料ボトル;食品トレイ;ラップ材;フィルム;シート;などが挙げられる。
【実施例】
【0123】
以下に実施例を挙げて、本実施形態に係る樹脂組成物及び樹脂成形体をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本実施形態に係る樹脂組成物及び樹脂成形体は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきではない。
【0124】
<各材料の準備>
次の材料を準備した。
【0125】
[セルロースアシレート(A)]
・CA1:イーストマンケミカル「CAP482-20」、セルロースアセテートプロピオネート、重量平均重合度716、アセチル基置換度0.18、プロピオニル基置換度2.49。
・CA2:イーストマンケミカル「CAP504-0.2」、セルロースアセテートプロピオネート、重量平均重合度133、アセチル基置換度0.04、プロピオニル基置換度2.09。
・CA3:イーストマンケミカル「CAB171-15」、セルロースアセテートブチレート、重量平均重合度754、アセチル基置換度2.07、ブチリル基置換度0.73。
・CA4:ダイセル「L50」、ジアセチルセルロース、重量平均重合度570。
・CA5:ダイセル「LT-35」、トリアセチルセルロース、重量平均重合度385。
【0126】
[芳香族化合物(B)]
・PAC1:Cardolite「NX-2503」、ヒドロキシエチル化カルダノール、分子量296~320
・PAC2:Cardolite「Ultra LITE 513」、カルダノールのグリシジルエーテル、分子量354~361。
・PAC3:DIC社「EPICLON865‐アルキル変性品」フェノールノボラック型エポキシ樹脂
【0127】
[実施例1~18、比較例1~3]
(樹脂ペレットRE1~13の作製)
表1に示す仕込み組成比で、シリンダ温度を調製し、2軸混練装置(東芝機械社製、TEX41SS)にて混練を実施し、ペレット形状の樹脂組成物RE1~RE13(以下、樹脂ペレットRE1~RE13と称する。)
【0128】
(樹脂粒子の作製)
-樹脂粒子PC1の作製-
樹脂ペレット(RE1)300gをメチルエチルケトン700g中に完全に溶解する。これを、炭酸カルシウム100g、カルボキシメチルセルロース4g、メチルエチルケトン200gを純水1100gに分散させた水系液体中に加え、3時間攪拌した。これに10gの水酸化ナトリウムを加え、80℃に加熱して3時間攪拌してメチルエチルケトンを除去する。残渣をろ過した後、固形分を凍結乾燥し、樹脂粒子PC1を得た。
【0129】
-樹脂粒子PC2~18の作製-
表2に準じて、樹脂ペレット、水系液体中への各成分量(炭酸カルシウム量、カルボキシメチルセルロース量、メチルエチルケトン量)、水系液体攪拌時間、水酸化ナトリウム添加量に変えた以外は、樹脂粒子PC1と同様にして樹脂粒子PC2~18を得た。
【0130】
-樹脂粒子PC19、20の準備-
市販のセルロース系粒子、CELLULOBEADS D10(大東化成製)を樹脂粒子PC19、BELLOCEA(ダイセル製)を樹脂粒子PC20として準備した。
【0131】
<粒径、粒度分布、溶解度の測定>
既述の方法に従って、LS粒度分布測定装置 Beckman Coulter LS13 320(ベックマンコールター社製)を用いて、樹脂粒子の体積平均粒径と粒度分布GSDpを測定した。
また、既述の方法に従って、樹脂粒子の原料である樹脂ペレットの溶解度を測定した。
結果を表2に示す。
【0132】
<生分解性の測定>
得られた樹脂粒子を用いて、ISO-14855-2(2018年)に準じた方法で好気条件生分解率を、ISO-14853(2016年)に準じた方法嫌気性生分解率を測定し、生分解率50%および90%に達した時間を生分解速度として評価した。結果を表2に示す。
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
上記結果から、本実施例1~18の樹脂粒子は、比較例1~3の樹脂粒子に比べ、生分解速度が速いことがわかる。
る。
【0137】
(実施例19、比較例4)
表1に示す樹脂ペレットRE1(実施例相当)、RE11(比較例相当)を用い、射出成形機(日精樹脂工業社製、NEX500I)にて、射出ピーク圧力が180MPaを超えず、かつ成形温度190℃及び金型温度40℃で、10mm×12.5mm、厚さ4mmの試験片)を射出成形した。
各々の試験片の生分解性の測定を実施した。その結果を表4に示す。
【0138】
【0139】
上記結果から、本実施例19の射出成形体は、比較例4の射出成形体に比べ、生分解速度が速いことがわかる。