(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】測量方法
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
G01C15/00 105R
(21)【出願番号】P 2019229121
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】國廣 啓介
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-225673(JP,A)
【文献】特開2008-175535(JP,A)
【文献】米国特許第06688566(US,B1)
【文献】実開昭56-070295(JP,U)
【文献】実開平05-069620(JP,U)
【文献】特開平11-304485(JP,A)
【文献】国際公開第2015/178128(WO,A1)
【文献】実開平5-14823(JP,U)
【文献】特表2022-532799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16M 11/00
G01C 15/00
G03B 5/00
17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3本の脚がそれぞれ伸縮自在な三脚および測量機器を用いて測量を行う測量方法であって、
測量前に、測量位置の3点に3つのピンを設置し、
前記測量位置の3つの前記ピンの位置に前記三脚の3本の前記脚をそれぞれ設置し、
前記ピン上に3本の前記脚を設置した状態で
、脚頭が水平になる状態に前記脚の長さを調整し、
3本の前記脚にそれぞ
れマークを設け、
測量時に、前記測量位置の3つの前記ピンの位置
に3本の
前記脚をそれぞれ設置し、前記ピン上に3本の前記脚を設置した際、3本の前記脚にそれぞれ設けられた
前記マークに基づき、
前記脚頭が水平になる状態に前記脚の長さを調整し、
前記三脚の前記脚頭上に
前記測量機器を設置し、測量を行う、
ことを特徴とする測量方法。
【請求項2】
前記マークは、前記脚頭が水平となり、3本の前記脚の開く角度が等しく、
前記脚頭が
前記三脚の重心に位置するよう、3本の前記脚の長さを調整した際の位置に設ける、
ことを特徴とする請求項1に記載の測量方法。
【請求項3】
前記三脚の3本の前記脚は、
前記脚頭に固定された第1アームと、
前記第1アームに対し可動する第2アームと、を有し、
前記マークは、それぞれの前記脚の長さを調整した状態で、前記第1アームと前記第2アームの長さの調整位置を示す位置決め線、を有することを特徴とする請求項1または2に記載の測量方法。
【請求項4】
前記マークは、
前記第1アームおよび前記第2アームにそれぞれ貼り付けられ、3本の前記脚を識別する標示と、前記位置決め線とが記載されたシールからなる、ことを特徴とする請求項3に記載の測量方法。
【請求項5】
3つの前記ピンは、
測量対象に向けてそれぞれの位置が位置決めされたことを特徴とする請求項4に記載の測量方法。
【請求項6】
3つの前記ピンには、測量対象に向けてそれぞれの位置を識別する標示を有することを特徴とする請求項5に記載の測量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、測量機器を据付ける測量システムおよび測量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種測量、例えば、ダムのたわみ測定は、ダム近傍に測量機器を設置して行っており、三脚の脚頭に測量機器を固定して測定を行っている。測量機器は、姿勢の調整範囲が狭い。このため、三脚の脚の長さ等を調整し、脚頭を水平に調整した三脚上に測量機器を設置している。
【0003】
従来、測量用三脚の求心方法として、直方向に透光性を有する丸型気泡式の水準器と、前記水準器の気泡観察領域の中心から120度間隔で水平方向に延びる三本の仮想線上の中心からの長さが等しくなる位置で、測量用の三脚の開いた三本の脚部に水準器を連結固定させる3個の連結部と、を備えた技術がある(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、設置した三脚に求心装置を取り付けた後に、水平出し作業や位置出し作業を行って三脚の設置位置を調節しなくてはならないため、煩雑となった。
【0006】
ここで、三脚の設置時には、各脚の開く角度が等しく、脚頭が水平となり、さらに、脚頭が三脚の中心(重心)に位置するよう調整する必要がある。しかし、傾斜地等では、これらの調整に手間がかかり、作業者の経験に左右されるため、容易に調整できなかった。例えば、傾斜地では、三脚の開く角度が脚毎に異なったりして脚頭が水平から傾いた状態となりやすい。また、脚頭を三脚の中心に位置させにくい。このような状態で設置した三脚では測量機器を安定して保持できず、安定した測量作業が行えない。
【0007】
また、測量作業の終了後、同一箇所での再度の測量を行う場合には、再度、上記三脚の調整作業を行う必要が生じた。加えて、この際、前回の測量時で行った三脚の設置状態を容易に再現できなかった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、三脚を測量位置で再現性よく簡単に設置できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の測量システムは、測量位置の3点に設置される3つのピンと、3本の脚がそれぞれ伸縮自在な三脚と、前記三脚の脚頭上に設置される測量機器と、を有し、前記三脚には、3本それぞれの前記脚に、前記ピン上に3本の前記脚を設置した際、前記脚頭が水平になる状態での前記脚の長さの調整位置を示すマーク、が設けられたことを特徴とする。
【0010】
また、前記三脚の3本の前記脚は、前記脚頭に固定された第1アームと、前記第1アームに対し可動する第2アームと、を有し、前記マークは、それぞれの前記脚の長さを調整した状態で、前記第1アームと前記第2アームの長さの調整位置を示す位置決め線、を有することを特徴とする。
【0011】
また、前記マークは、前記第1アームおよび前記第2アームにそれぞれ貼り付けられ、3本の前記脚を識別する標示と、前記位置決め線とが記載されたシールからなることを特徴とする。
【0012】
また、3つの前記ピンは、測量対象に向けてそれぞれの位置が位置決めされたことを特徴とする。
【0013】
また、3つの前記ピンには、測量対象に向けてそれぞれの位置を識別する標示を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の測量方法は、測量前に、測量位置の3点に3つのピンを設置し、測量時に、前記測量位置の3つの前記ピンの位置に三脚の3本の脚をそれぞれ設置し、前記ピン上に3本の前記脚を設置した際、3本の前記脚にそれぞれ設けられたマークに基づき、脚頭が水平になる状態に前記脚の長さを調整し、前記三脚の前記脚頭上に測量機器を設置し、測量を行う、ことを特徴とする。
【0015】
また、測量前に、前記測量位置の3つの前記ピンの位置に前記三脚の3本の前記脚をそれぞれ設置し、前記ピン上に3本の前記脚を設置した状態で、前記脚頭が水平になる状態に前記脚の長さを調整し、3本の前記脚にそれぞれ前記マークを設けることを特徴とする。
【0016】
また、前記マークは、前記脚頭が水平となり、3本の前記脚の開く角度が等しく、脚頭が三脚の重心に位置するよう、3本の前記脚の長さを調整した際の位置に設ける、ことを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、測量位置の3点に設置される3つのピン上に、三脚の3本の脚をそれぞれ設置し、マークに基づき脚の長さをそれぞれ調整することで、脚頭が水平になる状態で設置することができ、測量機器を用いた測量時毎の三脚の設置を簡単、かつ再現性よく行えるようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、三脚を測量位置で再現性よく簡単に設置できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかる測量システムの設置状態を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態にかかる測量システムに用いる三脚を示す正面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態にかかる測量システムにおける三脚の設置例を説明する図である。
【
図4】
図4は、実施の形態にかかる測量システムにおけるマークを用いた三脚の長さ調整例を説明する図である。
【
図5】
図5は、実施の形態にかかる測量システムにおけるマークの付与例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態にかかる測量システムの測量前の事前設定例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施の形態にかかる測量システムの測量時の三脚設置例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態)
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる測量システムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
図1は、実施の形態にかかる測量システムの設置状態を示す図である。実施の形態の測量システム100は、三脚101と、三脚101上に設けられる測量機器110と、三脚101の測量位置の地面等に、予め三脚を設置する目印(アンカー)として設けられるピン120と、からなる。
【0022】
三脚101は、汎用の三脚であり、3本の脚102と、脚102の上端に設けられる脚頭103と、を有する。
【0023】
測量機器110は、三脚101の脚頭103に着脱自在に固定される。脚頭103は、平面軸上(幅および長さ方向)に複数の高さ調整部(スタビライザ等)110aを有し、脚頭103に固定後の傾きを微調整可能である。
【0024】
三脚101は、測量位置を示す3箇所のピン120を目印として、測量時に3本の脚102が3つのピン120上に設置される。
図1の例では、測量機器110は、ダム150のたわみを測定する。ダム150は、提体151により所定量の貯留水152を貯留する。符号153は放水口である。測量機器110は、ダム150の提体151の一方の岸(
図1の例ではダム150の正面から見て右岸側)に設置され、ダム150の対岸に設置された基準点を測量する。
【0025】
図1の例では、ピン120は、ダム150から離れ、ダム150を見下ろす小高い丘160の部分に設けられている。測量位置の地面には、コンクリート杭121(あるいは打設コンクリート)が埋設され、このコンクリート杭121内部にピン120が設けられている。
【0026】
3つのピン120は、測量対象であるダム150に向かってそれぞれ予め定めた位置に配置しておく。ピン120Cは、ダム150に向かう中心(Center)位置に配置され、ピン120Rは、ダム150に向かってピン120Cの右側(Right)に配置され、ピン120Lは、ダム150に向かってピン120Cの左側(Left)に配置されている。例えば、これら3つのピン120は、右側のピン120Rと左側のピン120Lの中間点と、中心のピン120Cの中心とを結ぶ仮想線がダム150(基準点)に向いて設置される。
【0027】
これら3つのピン120を設ける測量位置(丘160)部分は、整地する必要がない。すなわち、各ピン120C,120R,120Lの高さ位置は異なっていてもよい。各ピン120C,120R,120Lの高さ位置が異なる場合、後述するように、三脚101の3本の脚102の高さを調整すればよい。
【0028】
3つのピン120部分には、それぞれ三脚101の脚102の底部102bが位置決めされて設置される。
図1に示す例では、ピン120C部分に中央の脚102Cが設置され、ピン120R部分には右側の脚102Rが設置され、ピン120L部分には左側の脚102Lが設置される。
【0029】
三脚101は、脚頭103部分に設けられた軸102aにより、3本の脚102がそれぞれ軸102aを中心に回動(開閉)自在に設けられており、ピン120部分に三脚101を設置する際には、3本の脚102(102C,102R,102L)を広げ、また、脚102の長さを伸ばして脚102の底部102bを各ピン120(120C,120R,120L)部分に位置させる。
【0030】
3本の脚102(102C,102R,102L)には、それぞれ調整つまみ102dが設けられ、各脚102の長さをそれぞれ調整した状態で調整つまみ102dを操作することで、各脚102の長さを固定保持できる。
【0031】
図2は、実施の形態にかかる測量システムに用いる三脚を示す正面図である。
図2(a)には、三脚101の収縮状態を示す。3本の脚102(102C,102R,102L)は、それぞれの長さを縮め、互いに近接させることで、小型化でき容易に持ち運びできるようになる。図中一点鎖線は、脚102(102R,102L)が所定角度開いた状態を示し、軸102aを中心に互いに近接させることで、実線位置に示すように3本の脚102をまとめることができる。
【0032】
図2(b)は、三脚101の伸長状態を示す。3本の脚102(102C,102R,102L)は、軸102aを中心に互いに離れる方向に開き、また、長さを伸ばすことで、脚頭103部分を所定の高さ位置に位置させることができる。
【0033】
脚102は、2本のアームをスライドさせることで長さを伸ばすことができる。例えば、中央の脚102Cは、脚頭103側に設けられた第1アーム102C1に対し、第2アーム102C2が伸縮(スライド)自在である。右側の脚102R(および左側の脚102L)についても、中央の脚102C同様に、脚頭103側に設けられた第1アーム102R1(102L1)に対し、第2アーム102R2(102L2)がスライド自在である。
【0034】
中央の脚102Cの伸縮を説明すると、2本の第1アーム102C1の中央に第2アーム102C2が設けられる。これにより、第1アーム102C1に対し、第2アーム102C2が伸長(および収縮)可能である。
【0035】
第1アーム102C1の下端には、調整つまみ102dが設けられる。調整つまみ102dは、脚102部分にネジを有し、このネジが第1アーム102C1のネジ穴に螺合され、ネジの先端が第2アーム102C2に接触する。そして、調整つまみ102dを回転操作することで、第2アーム102C2を任意の長さに調整した状態を固定保持することができる。
【0036】
右側の脚102Rおよび左側の脚102Lについても、第1アーム102R1(102L1)に対し、第2アーム102R2(102L2)が伸長および収縮自在である。これら3本の脚102C,102R,102Lは、それぞれ任意の長さに調整でき、調整つまみ102dにより、それぞれの長さを固定保持できる。
【0037】
図3は、実施の形態にかかる測量システムにおける三脚の設置例を説明する図である。三脚101は、測量時、測量位置に予め設けられたピン120部分に設置される(
図1参照)。測量位置の丘160には、予め三脚101を設置する箇所にピン120が設置されている。図示の例では、斜面の丘160の表面には、三脚101の各脚102を設置する箇所に予めコンクリート杭121を埋設しておく。ピン120は、埋設したコンクリート杭121の表面(上面)に表出する。
【0038】
コンクリート杭121は、3本のピン120(120C,120R,120L)に対応して3個用意し、この所定長さを有するコンクリート杭121を丘160の深さ方向(水平面に対し直角な方向)に沿って埋設しておく。
【0039】
測量時には、三脚101および測量機器110を収容箇所(事務所等)からこの測量位置に持ち出す。そして、3つのピン120部分には、それぞれ三脚101の脚の底部102bを位置決めして設置する。
図3に示す例では、右側のピン120R部分が最も高く位置し、続いて中央のピン120C、左側のピン120Lが次第に低い高さに位置しているとする。
【0040】
そして、ピン120C部分に三脚101の中央の脚102Cを設置し、ピン120R部分に三脚101の右側の脚102Rを設置し、ピン120L部分に三脚101の左側の脚102Lを設置する。
【0041】
3つのピン120(120C,120R,120L)あるいは、各コンクリート杭121には、測量対象に向いた際の向きについて、それぞれ中央、右側、左側を示す識別用の標示(マーク)を付与しておいてもよい。
【0042】
そして、三脚101の各脚102には、それぞれ中央C、右側R、左側Lを示す識別用の標示(マーク)300が設けられている。
図3に示すように、中央の脚102Cには、中央であることを識別する「C」のマーク300が設けられている。同様に、右側の脚102Rには、右側であることを識別する「R」のマーク300が設けられ、左側の脚102Lには、左側であることを識別する「L」のマーク300が設けられている(不図示)。これら中央、右、左のマーク300は、
図1で説明したように、測量対象であるダム150に向かうそれぞれの位置に対応している。
【0043】
また、このマーク300は、3本の脚102(102C,102R,102L)の長さ(高さ)位置を調整する指標として設けられている。三脚101は、3本の脚102(102C,102R,102L)の開く角度が等しく、脚頭103が水平となり、さらに、脚頭103が三脚101の重心(
図3で見て中央の脚102Cの鉛直線上)に位置するよう調整する必要がある。
【0044】
ここで、
図3に示すように、三脚101を設置する丘160が傾斜している場合、3つのピン120の高さがそれぞれ異なり、このピン120上に3本の脚102を、それぞれ長さを調整して設置する。
【0045】
そして、3つのピン120(120C,120R,120L)上にそれぞれ対応する3本の脚102(102C,102R,102L)の長さを調整して設置した状態(
図3の状態)において、各脚102(102C,102R,102L)にマーク300を設ける。
【0046】
図3には、中央の脚102Cについて、第1アーム102C1と第2アーム102C2の長さを調整した状態でのマーク300を付与した状態が示されている。マーク300は、長さを調整した状態の第1アーム102C1と第2アーム102C2に連続する線分を用いて示すことができる。
【0047】
同様に、長さ調整後の右側の脚102Rについても第1アーム102R1と第2アーム102R2の長さを調整した状態のマーク300を付与し、左側の脚102Lについても第1アーム102L1と第2アーム102L2の長さを調整した状態のマーク300を付与する。
【0048】
図4は、実施の形態にかかる測量システムにおけるマークを用いた三脚の長さ調整例を説明する図である。
図4(a)には、三脚101を伸長させた長さ調整時におけるマーク300の付与状態を示す。
図3に示したように、測量位置のピン120上に三脚101を設置し、三脚101の中央の脚102Cの長さを調整した状態において、第1アーム102C1と第2アーム102C2に連続する線分を付与する。
【0049】
例えば、油性のマジックペンにより、第1アーム102C1と第2アーム102C2との間に水平方向に連続する位置決め線を記載する。例えば、中央の第2アーム102C2部分に位置決め線300aを記載し、第2アーム102C2の両側に位置する第1アーム102C1部分には、位置決め線300aに連続する位置決め線300bを記載すればよい。
【0050】
図4(a)に示すように、この位置決め線300a,300bが水平方向で一致し、連続した線分を示すマーク300が形成される位置が、測量位置における中央の脚102Cの長さ調整状態を示す。なお、マーク300は、第2アーム102C2部分に記載される「C」の文字により、中央の脚102Cの長さを調整するためのものであることを容易に識別できる。
【0051】
なお、他の右側の脚102R、左側の脚102Lについても、測量位置のピン120上に三脚101を設置し、三脚101の中央の脚102Cの長さを調整した状態において、第1アーム102R1(102L1)と、第2アーム102R2(102L2)に連続する位置決め線300a,300bを記載しておく。
【0052】
図4(b)には、三脚101の収縮状態を示す。三脚101を収縮させた場合、第2アーム102C2の位置決め線300aが上方向に移動し、第1アーム102C1の位置決め線300bの位置と上下方向でずれた位置になる。
【0053】
測量位置での測量前および測量後の時期においては、三脚101を
図4(b)に示すように、脚102を収縮させた状態で保持しておき、測量時には、
図4(a)に示すように、測量位置で三脚101を伸長させる。この際、3本の脚102(102C,102R,102L)のそれぞれについて、マーク300(位置決め線300a,300b)が水平方向で一致し、連続した線分となる位置となるよう、第2アーム102C2,102R2,102L2の長さを調整すればよい。
【0054】
これにより、三脚101を測量位置のピン120部分に設置し、測量する毎に、必要な3本の脚102(102C,102R,102L)の長さを簡単に調整できるようになる。すなわち、既設のピン120部分に三脚101を設置し、マーク300を用いて脚102の長さを調整するだけで、測量位置において三脚101の(高さ)位置を適切に設置できる。
【0055】
この際、三脚101は、ピン120上で3本の脚102(102C,102R,102L)の開く角度が等しく、脚頭103が水平となり、さらに、脚頭103を三脚101の中心(
図3に示す中央の脚102C)の鉛直線上に位置させることができる。
【0056】
このようにしてマーク300を用いて脚102の長さを調整した三脚101は、設置の都度、測量位置で安定した設置を再現することができ、脚頭103上に測量機器110を安定して載置できるようになる。
【0057】
ここで、
図3に示したように、三脚101を設置する丘160が傾斜しており、3つのピン120の高さがそれぞれ異なる状態であっても、この傾斜に対応して脚102の長さを適切に調整できるようになる。
【0058】
図5は、実施の形態にかかる測量システムにおけるマークの付与例を示す図である。上述したマーク300は、直接マジックペンで脚102に記入するほか、脚102にテープやシールを貼り付けることとしてもよい。
図5には、マーク300(位置決め線300a,300b)をシール501,502上に予め形成したものを示す。
【0059】
このシール501,502は、長さを調整した状態(
図3、および
図4(a)相当)の3本の脚102にそれぞれ貼り付ける。
図5(a)に示すシール501は、中央の脚102Cの第2アーム102C2に貼り付けるものであり、シール501の上端には、上記の位置決め線300aに相当する水平な線分501aが形成されている。また、このシール501には、中央の脚102Cの位置決め用であることを示す「C」の文字が形成されている。
【0060】
図5(b)に示すシール502は、第1アーム102C1に貼り付けるものであり、シール502の上端には、上記の位置決め線300bに相当する水平な線分502bが形成されている。長さ調整時には、シール501の線分501aとシール502の線分502bが水平方向で連続するよう中央の脚102Cのアーム(102C1,102C2)に貼り付ける。
【0061】
また、右側の脚102Rについても、長さ調整時に、線分501aと「R」の文字が形成されたシール501を第2のアーム102R2に貼り付け、線分502bが形成されたシール502を第1のアーム102R1に貼り付ける。左側の脚102Lについても同様のシール501,502を貼り付ける。
【0062】
なお、脚102の長さ方向においてシール501,502を貼り付ける位置は、
図4(a)に示した中央の脚102Cの例で説明すると、第1アーム102C1と、第2アーム102C2とが水平方向で重なった位置であれば上下方向の任意の位置とすることができる。
【0063】
図6は、実施の形態にかかる測量システムの測量前の事前設定例を示すフローチャートである。ダム150の測量前に測量位置で行う処理について説明する。はじめに、測量位置においてピン120を埋設する(ステップS601)。
【0064】
例えば、
図1に示したように、測量対象であるダム150に向いて測量位置である丘160部分に3つのピン120をそれぞれの位置を定めて配置する。ピン120Cは、ダム150に向かう中心(Center)位置に配置し、ピン120Rは、ダム150に向かってピン120Cの右側(Right)に配置し、ピン120Lは、ダム150に向かってピン120Cの左側(Left)に配置する。例えば、これら3つのピン120は、右側のピン120Rと左側のピン120Lの中間点と、中心のピン120Cの中心とを結ぶ仮想線がダム150(基準点)に向くように設置する。
【0065】
ピン120は、コンクリート杭121に設けられており、
図3に示したように、所定長さを有するコンクリート杭121を丘160の深さ方向(水平面に対し直角な方向)に沿って埋設する。この際、丘160を整地する必要はなく、各ピン120(120C,120R,120L)の高さ位置は異なっていてもよい。
【0066】
つぎに、ピン120上に三脚101を設置する(ステップS602)。この際、3つのピン120(120C,120R,120L)上に、それぞれ対応する脚102(102C,102R,102L)の底部102bを設置する。この際、3本の脚102(102C,102R,102L)を広げ、また、脚102の長さを伸ばして脚102の底部102bを各ピン120(120C,120R,120L)部分に位置させる。
【0067】
そして、各ピン120(120C,120R,120L)が設けられたコンクリート杭121に中央「C」、右側「R」、左側「L」を示す識別用の標示(マーク)を付与しておくことで、三脚101の脚102に付与されているマーク300の「C」、「R」、「L」を各ピン120上に容易に位置させることができる。
【0068】
なお、コンクリート杭121上のマークが標示されていない場合や、消失した場合であっても、測量対象に向かって中央のピン120Cを突出して配置するため、この中央のピン120Cを基準として右側のピン120Rおよび左側のピン120Lをそれぞれ識別できる。
【0069】
つぎに、三脚101の脚102の長さを調整する(ステップS603)。3つのピン120(120C,120R,120L)上にそれぞれ対応する3本の脚102(102C,102R,102L)を位置させ、各脚102の長さを調整する。この際、3本の脚102(102C,102R,102L)の開く角度が等しく、脚頭103が水平となり、さらに、脚頭103が三脚101の重心(
図3で見て中央の脚102Cの鉛直線上)に位置するよう調整する。
【0070】
この後、長さを調整した3本の脚102(102C,102R,102L)にマーク300を貼り付ける(ステップS604)。マーク300は、例えば、
図5に示したシール501,502を用いることができる。
【0071】
中央の脚102Cの第2アーム102C2には、中央の脚102C用の「C」の文字と線分501aが形成されたシール501を貼り付ける。また、第1アーム102C1には、線分502bが形成されたシール502を貼り付ける。この際、シール501とシール502は、それぞれの線分501a,502bが水平方向(中央の脚102Cの長さ方向と直交する方向)に連続するように貼り付ける(
図4(a)参照)。
【0072】
これにより、測量位置で三脚101の3本の脚102の長さの調整状態をマーク300により保持しておくことができる。この
図6に示した測量前の事前設定時、続けて測量を開始してもよい。
【0073】
図7は、実施の形態にかかる測量システムの測量時の三脚設置例を示すフローチャートである。
図6に示した測量前の事前設定の後、実際の測量時の三脚設置例について説明する。測量時には、事務所等に収納しておいた三脚101および測量機器110を測量位置に搬送する。例えば、
図1に示すダム150のたわみ測定は、月に1回実施される。
【0074】
そして、測量位置のピン120上に三脚101を設置する(ステップS701)。この際、三脚101の3本の脚102(102C,102R,102L)に設けられたマーク300が水平方向で一致するよう、各脚102の長さを調整する(ステップS702)。
【0075】
例えば、中央の脚102Cについては、第2アーム102C2のシール501の線分501aと、第1アーム102C1のシール502の線分502bが連続した線分となる位置(直線上で一致する位置)に第2アーム102C2の長さを調整する。他の右側の脚102Rと左側の脚102Lについても同様にシール501の線分501aと、シール502の線分502bとを用いて長さを調整する。
【0076】
これにより、測量時、三脚101を測量位置のピン120部分に設置した際、この測量位置で必要な3本の脚102(102C,102R,102L)の長さが適切となるように簡単に調整できるようになる。
【0077】
この際、三脚101の3本の脚102は、上述した事前設定時に調整した長さとなり、ピン120上で3本の脚102(102C,102R,102L)の開く角度が等しく、脚頭103が水平となり、さらに、脚頭103が三脚101の重心(
図3に示す中央の脚102C)の鉛直線上に位置させることができる。
【0078】
この後、三脚101上の脚頭103部分に測量機器110を設置して測量を開始できる(ステップS703)。この測量時、三脚101の高さ調整部(スタビライザ等)110aで測量機器110の傾きを微調整可能である。
【0079】
このように、測量時には、予め設置されたピン120上に三脚101を配置し、この際、マーク300を用いて3本の脚102の長さを調整するだけで、三脚101を設置できるようになる。また、測量毎に三脚101の安定した設置を再現することができるようになる。
【0080】
また、
図3に示したように、三脚101を設置する丘160が傾斜しており、3つのピン120の高さがそれぞれ異なる状態であっても、マーク300は、事前設定時に傾斜に対応して脚102の長さを調整済であるから、各脚102の長さを適切に調整できるようになる。
【0081】
上述した実施の形態では、三脚101には、ある一つの測量位置に対応する一つのマーク300を設ける構成を説明したが、これに限らない。例えば、三脚101を複数の測量位置でそれぞれ用いる場合、この三脚101に測量位置毎のマーク300を設ければよい。マーク300は、三脚101の脚102の長さ方向の任意の位置に設けることができる。これにより、1本の三脚101を複数の測量位置でそれぞれ脚102の長さが適切となるよう簡単に調整、および設置できるようになる。
【0082】
以上説明した実施の形態の測量システム100は、測量位置の3点に設置される3つのピン120と、3本の脚102がそれぞれ伸縮自在な三脚101と、三脚101の脚頭103上に設置される測量機器110と、を有する。三脚101には、3本それぞれの脚102に、ピン120上に3本の脚102を設置した際、脚頭103が水平になる状態での脚102の長さの調整位置を示すマーク300が設けられる。これにより、測量位置の3つのピン120上に三脚101の3本の脚102を設置し、マーク300に基づき、脚102の長さを調整することで、脚頭103が水平になる状態にできる。そして、脚頭103に安定して測量機器110を設置し、測量を行えるようになる。
【0083】
また、三脚101の3本の脚102(102C,102R,102L)は、例えば、中央の脚102Cでは、脚頭103に固定された第1アーム102C1と、第1アーム102C1に対し可動する第2アーム102C2と、を有する。マーク300は、3本の脚102の長さを調整した状態で、第1アーム102C1と第2アーム102C2の長さの調整位置を示す位置決め線300a,300bを有する。これにより、位置決め線300a,300bが一致するように、第1アーム102C1と第2アーム102C2の長さを調整することで、中央の脚102Cの長さを適切に調整できる。このように、三脚101の脚102の長さの調整は、位置決め線300a,300bを用いて簡単に行うことができる。
【0084】
また、マーク300は、例えば、中央の脚102Cでは、第1アーム102C1および第2アーム102C2にそれぞれ貼り付けられ、中央の脚102を識別する標示「C」と、位置決め線300a,300bが記載されたシール501,502からなることとしてもよい。このようなシール501,502は、長さを調整した状態の第1アーム102C1,第2アーム102C2にそれぞれ貼り付けるだけで中央の脚102Cの長さ調整を行うことができる。
【0085】
また、3つのピン120は、測量対象に向けてそれぞれの位置を位置決めしておくことができる。例えば、測量対象に向けて中央のピン120Cを中央に配置し、中央の左右にそれぞれ右側のピン120Rと左側のピン120Lを配置することができる。これにより、測量時に、3つのピン120に対して三脚101の各脚102を簡単に設置できるようになる。
【0086】
また、3つのピン120には、測量対象に向けてそれぞれの位置を識別する標示を有してもよい。このように、ピン120(120C,120R,120L)にそれぞれ中央左右の標示「C」,「R」,「L」を設けておくことで、三脚101で対応する各脚102(102C,102R,102L)を容易に設置できるようになる。
【0087】
また、本発明の測量方法は、測量前に、測量位置の3点に3つのピン120を設置しておく。そして、測量時には、測量位置の3つのピン120の位置に三脚101の3本の脚102をそれぞれ設置し、ピン120上に3本の脚102を設置した際、3本の脚102にそれぞれ設けられたマーク300に基づき、脚頭103が水平になる状態に脚102の長さを調整し、三脚101の脚頭103上に測量機器110を設置し、測量を行うことができる。これにより、測量時の三脚101の設置を容易に行うことができ、ピン120上に3本の脚102を設置した際、3本の脚102にそれぞれ設けられたマーク300に基づき、脚頭103が水平になる状態に脚102の長さを容易に調整でき、測量機器110を安定して設置および測量開始できるようになる。
【0088】
また、測量前に、測量位置の3つのピン120の位置に三脚101の3本の脚102をそれぞれ設置し、ピン120上に3本の脚102を設置した状態で、脚頭103が水平になる状態に脚102の長さを調整し、3本の脚102にそれぞれマーク300を設けることとしてもよい。このように、測量前に三脚101の脚102の長さを調整した状態をマーク300として設けておくことにより、測量時に、ピン120部分に三脚101を設置する際、マーク300に基づき、脚102の長さを簡単に調整でき、測量位置で三脚101を簡単かつ安定して設置できるようになる。
【0089】
また、マーク300は、脚頭103が水平となり、3本の脚102の開く角度が等しく、脚頭103が三脚101の重心に位置するよう、3本の脚102の長さを調整した際の位置に設けることとしてもよい。これにより、測量時には、三脚101の3本の脚102の長さをそれぞれマーク300に基づき調整するだけで、脚頭103が水平となり、3本の脚102の開く角度が等しく、脚頭103を三脚101の重心に位置させることができるようになる。
【0090】
これらにより、実施の形態で説明した測量システム100は、測量を行う都度、三脚101を測量位置で再現性よく簡単に設置できるようになる。測量位置が丘160等、平地でない場合、3点のピン120の高さ位置が異なることとなる。このような場合でも、ピン120上に設置する三脚101の3本の脚102の長さをマーク300に基づき、適切に調整できるようになる。これにより、測量機器110を用いた測量時毎の三脚101の設置を簡単、かつ再現性よく行えるようになる。また、三脚101の設置に不慣れな作業者であっても、簡単に行えるようになる。特に、測量位置に傾斜や段差等があっても、作業者の経験に左右されることなく容易に三脚101を安定して設置でき、直ちに測量作業を実施できるようになる。
【0091】
なお、実施の形態で説明した測量システムは、ダムのたわみ測定を例に説明したが、これに限らず、各種測量に適用することができ、測量位置での三脚の設置を容易に行えるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上のように、本発明は、測量位置で三脚を設置し、測量機器で測量する測量システムに用いることができ、特に、繰り返し同じ測量位置での測量に用いて有用である。
【符号の説明】
【0093】
100 測量システム
101 三脚
102(102C,102R,102L) 脚
102C1,102R1,102L1 第1アーム
102C2,102R2,102L2 第2アーム
103 脚頭
110 測量機器
120(120C,120R,120L) ピン
121 コンクリート杭
150 ダム
151 提体
160 丘
300 マーク
300a,300b 位置決め線
501,502 シール
501a,502b 線分