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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】缶内面塗装ユニット
(51)【国際特許分類】
   B05B 13/06 20060101AFI20240402BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20240402BHJP
   B05B 9/01 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B05B13/06
B05B12/00 Z
B05B9/01
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020008116
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2021115487
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】赤井田 佳那
(72)【発明者】
【氏名】松元 裕満
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-131280(JP,A)
【文献】特表2009-536572(JP,A)
【文献】特開2019-042688(JP,A)
【文献】特表2015-521099(JP,A)
【文献】特表2009-506953(JP,A)
【文献】特開平02-009475(JP,A)
【文献】特表2001-518010(JP,A)
【文献】特表2020-501877(JP,A)
【文献】特開2012-231768(JP,A)
【文献】特開2019-130449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 9/00-9/047
12/00-12/14
13/00-13/06
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体の作動により塗料を噴霧する弁機構及び前記弁機構に着脱自在に設けられ、前記弁体を駆動する弁駆動機構からなるスプレーガンと、前記塗料を貯留するタンクと、該タンクの塗料を前記弁機構に圧送するためのポンプと、を備える缶内面塗装装置に用いられる缶内面塗装ユニットであって、
前記缶内面塗装ユニットは、
塗料を貯留するユニットタンクと、前記ユニットタンクから供給配管を介して前記塗料を圧送するためのユニットポンプと、該ユニットポンプにより前記塗料が供給され、ユニット弁体の作動により塗料を噴霧するユニット弁機構と、前記ユニットタンク及び前記ユニットポンプが固定される架台と、を備え、前記ユニット弁機構は、前記缶内面塗装装置の前記弁駆動機構に着脱自在で、かつ該弁駆動機構によって作動可能に構成されていることを特徴とする缶内面塗装ユニット。
【請求項2】
前記弁駆動機構は、前記弁機構の前記弁体を電磁力により駆動する電磁機構により構成され、前記ユニット弁機構は、前記塗料が供給される供給口と、前記塗料を噴霧するための噴霧口と、前記供給口及び前記噴霧口を閉塞する前記ユニット弁体と、を備え、
前記ユニット弁体は、磁性体を有しており、前記磁性体が前記弁駆動機構に装着されることを特徴とする請求項1に記載の缶内面塗装ユニット。
【請求項3】
前記架台は、該架台を移動可能なキャスターを有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の缶内面塗装ユニット。
【請求項4】
前記ユニットポンプは、エアポンプにより構成されており、前記ユニットポンプには、エア配管に接続される接続部が設けられ、前記接続部にはエアレギュレータが設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の缶内面塗装ユニット。
【請求項5】
前記架台には、前記ユニット弁機構に供給される前記塗料の圧力を調整するレギュレータが設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の缶内面塗装ユニット。
【請求項6】
前記架台には、前記ユニットポンプと前記レギュレータとの間に前記塗料を加熱するヒータが設けられていることを特徴とする請求項5に記載の缶内面塗装ユニット。
【請求項7】
前記架台には、前記ユニットポンプと前記レギュレータとの間に前記塗料の不純物を除去するフィルタが設けられていることを特徴とする請求項5又は6に記載の缶内面塗装ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料等の内容物が充填される缶の内面を塗装するための缶内面塗装ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料等の内容物が充填、密封される缶では、缶の内面を内容物から保護するため、耐食性が高い合成樹脂塗膜(塗膜)を缶の内面に形成している。このような缶として、缶の開口端部にキャップが装着されたボトル缶が知られている。このボトル缶は、底部を有する筒体に縮径加工を施して形成した小径部に膨出部や雄ねじ部等を成形することにより形成される。このようなボトル缶の内面に塗膜を形成する方法として、特許文献1及び2に記載の缶内面塗装装置による塗装方法が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の缶内面塗装装置は、材料から筒状の容器本体(筒体)を形成し、少なくともその容器本体の一端に設けられる開口部の近辺の内面に、耐加工性が高い第1層の塗装を施し、ついで少なくとも一部が第1層の上に重なるように、ウエット・オン・ウエットで耐食性が高い第2層の塗装を施し、塗膜を硬化させ、第1層と第2層とで、容器の内面の全体を被覆している。
【0004】
また、特許文献2に記載の缶内面塗装装置は、有底円筒状の缶本体(筒体)の内面に、少なくとも口部が加工される部分の塗膜を缶胴中央部の内面部分の塗膜よりも厚くして形成しておき、この塗装済みの缶本体の上部を縮径し、その縮径部分の上端部に口部を加工する。この塗膜の形成は、3つのスプレーガンを用いた2つの工程により実行され、第1塗布工程では、第1スプレーガン及び第2スプレーガンにより筒体の内面の全領域に塗料が塗布され、第2塗布工程では、第3スプレーガンにより筒体の内面の口部となる領域にのみ塗料が塗布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-191935号公報
【文献】特開2008-238180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1及び2に記載された缶内面塗装装置に用いられる塗料とは異なる塗料を缶体に塗布したいという要望がある。この場合、缶内面塗装装置を構成するタンクやスプレーガンの他、配管内を全て洗浄した上で、上記異なる塗料をタンク内に充填する必要があることから、予め缶内面塗装装置内を循環する塗料を廃棄する必要がある他、その洗浄に多大な時間がかかるという問題が生じている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、缶内面塗装装置を洗浄することなく、異なる塗料を缶の内面に塗布できる缶内面塗装ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の缶内面塗装ユニットは、弁機構及び前記弁機構に着脱自在に設けられる弁駆動機構からなるスプレーガンを備える缶内面塗装装置に用いられる缶内面塗装ユニットであって、塗料を貯留するタンクと、前記タンクから供給配管を介して前記塗料を圧送するためのポンプと、前記塗料が供給されるユニット弁機構と、前記タンク及び前記ポンプが固定される架台と、を備え、前記ユニット弁機構は、前記缶内面塗装装置の前記弁駆動機構に着脱自在に構成されている。
【0009】
本発明では、タンク及びポンプが架台に固定されることにより一体化されており、缶内面塗装装置の弁機構を取り外した上、ユニット弁機構を缶内面塗装装置の弁駆動機構に装着することで、ユニット弁機構を弁駆動機構により作動させて缶内面塗装ユニットのタンクに貯留された塗料を缶内面に塗布することができる。つまり、缶内面塗装装置の弁機構に代えて、ユニット弁機構を弁駆動機構に装着するだけで、スプレーガンを構成でき、缶内面塗装装置を洗浄することなく、缶内面塗装装置の塗料とは異なる塗料を缶内面に塗布することができる。
【0010】
本発明の缶内面塗装ユニットの好ましい態様としては、前記弁駆動機構は、前記弁機構の弁を電磁力により駆動する電磁機構により構成され、前記ユニット弁機構は、前記塗料が供給される供給口と、前記塗料を噴霧するための噴霧口と、前記供給口及び前記噴霧口を閉塞する弁体と、を備え、前記弁体は、磁性体を有しており、前記磁性体が前記弁駆動装置に装着されるとよい。
【0011】
上記態様では、電磁機構により弁体の磁性体を駆動する構成であるので、弁体を弁駆動機構の一部に固定する必要がなく、例えば、弁駆動機構が弁体を油圧等で移動させる構成である場合に比べて、電磁機構とユニット弁機構との着脱を簡単にできる。
【0012】
本発明の缶内面塗装ユニットの好ましい態様としては、前記架台は、該架台を移動可能なキャスターを有しているとよい。
上記態様では、キャスターにより缶内面塗装ユニットを容易に移動させることができ、利便性を向上できる。
【0013】
本発明の缶内面塗装ユニットの好ましい態様としては、前記ポンプは、エアポンプにより構成されており、前記ポンプには、エア配管を接続可能な接続部が設けられ、前記接続部にはエアレギュレータが設けられているとよい。
【0014】
上記態様では、エアレギュレータを介して流通されたエアによりポンプが駆動するので、例えば、缶内面塗装装置が配置された工場内に高圧エア配管等が設置されている場合には、この高圧エア配管内を流通するエアの圧力をエアレギュレータにより調整し、圧力調整後のエアによりポンプを駆動できる。このため、缶内面塗装装ユニットにポンプの駆動源を設ける必要がないため、缶内面塗装ユニットを小型化できる。
【0015】
本発明の缶内面塗装ユニットの好ましい態様としては、前記架台には、前記ユニット弁機構に供給される前記塗料の圧力を調整するレギュレータが設けられているとよい。
【0016】
上記態様では、圧力が調整された塗料をユニット弁機構に供給できるので、缶内面塗装装置と略同じ圧力で塗料を噴霧できる。
【0017】
本発明の缶内面塗装ユニットの好ましい態様としては、前記架台には、前記ポンプと前記レギュレータとの間に前記塗料を加熱するヒータが設けられているとよい。
【0018】
上記態様では、ヒータにより塗料の温度が適切に管理され、適切な温度の塗料がレギュレータを介してユニット弁機構に供給されるので、缶内面に適切な温度の塗料を塗布することができる。
【0019】
本発明の缶内面塗装ユニットの好ましい態様としては、前記架台には、前記ポンプと前記レギュレータとの間に前記塗料の不純物を除去するフィルタが設けられているとよい。
【0020】
上記態様では、フィルタにより塗料から不純物を除去することで、純度の高い塗料がレギュレータを介してユニット弁機構に供給されるので、缶内面に純度の高い塗料を塗布できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、缶内面塗装装置を洗浄することなく、異なる塗料を缶の内面に塗布できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る缶内面塗装ユニット及び缶内面塗装装置の概略図である。
図2図1に示す缶内面塗装ユニット及び缶内面塗装装置の内部構成を示す図である。
図3図1に示す缶内面塗装ユニットの側面を示す概略図である。
図4図1に示す缶内面塗装ユニットの上面を示す概略図である。
図5図1に示す缶内面塗装ユニットの弁機構の断面図である。
図6図1に示す缶内面塗装ユニットの弁機構に弁駆動機構(電磁機構)が装着された状態の断面図である。
図7図1に示す缶内面塗装ユニットの弁機構を缶内面塗装装置の電磁機構に装着した状態の内部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態の缶内面塗装ユニット20は、缶内面塗装装置10に用いられるユニットであることから、まず、缶内面塗装装置10について説明する。
【0024】
[缶内面塗装装置の構成]
缶内面塗装装置10(以下、塗装装置10という)は、図1に示すように、供給部11から供給され、回転テーブル12の周方向に搬送される缶100の内面を塗装する装置である。この塗装装置10は、塗料を塗布する3つのスプレーガン71,72,73と、3つのスプレーガン71,72,73のそれぞれの近傍に位置するセンサ58と、を有している。これらセンサ58のそれぞれは、塗装装置10の装置本体(図示省略)に設けられた制御部59に接続されており、回転テーブル12により搬送される缶100を検知すると、制御部59に缶100の検知信号を送信する。
【0025】
また、スプレーガン71,72,73のそれぞれは、塗料を噴霧するための弁機構61,62,63と弁駆動機構である電磁機構57とからなる。この電磁機構57は、ソレノイドを用いた電磁機構であり、弁機構61,62,63の弁体を電磁力によって駆動する。また、電磁機構57は、センサ58と同様に、制御部59に接続されている。制御部59は、センサ58から検知信号を受信すると、電磁機構57を制御して弁機構61,62,63の弁を開放させる。これにより、各スプレーガン71,72,73から塗料が噴霧され、有底筒状の缶100の内面が塗装される。
【0026】
塗装装置10は、各スプレーガン71,72,73のそれぞれを含む3つの供給系50を備えている。なお、以下の説明では、スプレーガン71の供給系50について説明するが、スプレーガン72,73の供給系50も構成は同じであるため、説明を省略する。
供給系50は、図2に示すように、塗料を貯留するタンク51と、タンク51から供給配管52を介して塗料を弁機構61に圧送するためのポンプ53と、供給配管52内を流通する塗料を加熱するヒータ54と、ヒータ54により加熱された塗料の不純物を除去するフィルタ55と、フィルタ55を流通した塗料の圧力を調整するレギュレータ56と、弁機構61及び弁機構61に着脱自在に設けられる電磁機構57からなるスプレーガン71と、を備えている。これらのうち、レギュレータ56と弁機構61とは、ホース521により接続されている。このホース521は、供給配管52を兼ねており、自在に取り回すことが可能となっている。
このような構成により、塗装装置10では、制御部59の制御のもと、3つのスプレーガン71,72,73により、缶100の内面に塗料が3回噴霧される。
【0027】
[缶内面塗装ユニットの構成]
缶内面塗装ユニット20(以下、塗装ユニット20という)は、図1に示すように、塗装装置10とは別に設けられ、塗料を塗布するためのユニット弁機構40を有する供給系30(図2参照)を有している。なお、ユニット弁機構40は、塗装装置10の弁機構61,62,63と同じ形状である。以下、塗装ユニット20の各構成とともに、ユニット弁機構40について詳しく説明する。
【0028】
この塗装ユニット20の供給系30は、図2に示すように、塗料を貯留するタンク31と、タンク31から供給配管32を介して塗料をユニット弁機構40に圧送するためのポンプ33と、供給配管32内を流通する塗料を加熱するヒータ34と、ヒータ34により加熱された塗料の不純物を除去するフィルタ35と、フィルタ35を流通した塗料の圧力を調整するレギュレータ36と、レギュレータ36を介して塗料が供給されるユニット弁機構40と、これらタンク31、供給配管32の一部、ポンプ33、ヒータ34、フィルタ35及びレギュレータ36が固定される架台21と、を備えている。つまり、塗装ユニット20は、架台21によりタンク31、供給配管32の一部、ポンプ33、ヒータ34、フィルタ35及びレギュレータ36が一体化され、レギュレータ36とユニット弁機構40とは、ホース321により接続されている。このホース321は、供給配管32を兼ねているものの、図1に示すように、架台21に固定されることなく、自由に取り回すことが可能となっている。
【0029】
架台21は、図3及び図4に示すように、直方体状に形成された金属製の箱体により構成され、その下面には、該架台21を移動可能なキャスター22が設けられている。このため、塗装ユニット20は、工場内を容易に移動可能になる。
【0030】
タンク31は、例えば、一斗缶等により構成され、図3に示すように、一般に販売された塗料や新規に開発された塗料等がそのまま架台21内に配置される。このタンク31には、供給配管32を介してポンプ33が接続されている。ポンプ33は、図4に示すように、工場内の高圧エア配管等から供給されたエアにより駆動するエアポンプにより構成されている。このポンプ33には、図3に示すように、高圧エア配管を接続可能な接続部331が設けられ、この接続部331にエアレギュレータ38が固定されている。このエアレギュレータ38は、図3及び図4に示すように、架台21に固定され、供給されたエアの圧力を調整する。このため、ポンプ33には、圧力が調整されたエアが供給され、このエアによりポンプ33が駆動する。
【0031】
ヒータ34は、図3に示すように、架台21内に固定され、供給配管32内を流通する塗料を加熱する。この塗料の加熱温度は、例えば、40℃程度に設定される。フィルタ35は、図3及び図4では記載を省略しているが、架台21内に固定され、ヒータ34により加熱された塗料の不純物を除去する。そして、フィルタ35を流通した塗料は、供給配管32を介してレギュレータ36に供給される。このレギュレータ36は、図3及び図4に示すように、架台21の上面に固定され、塗料の圧力を調整する。そして、圧力が調整された塗料がホース321を介してユニット弁機構40に供給される。
【0032】
[スプレーガンの構成]
スプレーガン70は、図7に示すように、ホース321を塗装装置10に向けて伸ばして、ユニット弁機構40を塗装装置10の電磁機構57に装着することにより構成される。これらのうち、ユニット弁機構40は、図5及び図6に示すように、本体41とニードル45とを有している。
本体41は、長尺の円柱状に形成され、この内部には、本体41を、該本体41の軸方向に貫通する貫通孔からなる流路42が形成されている。また、本体41の周面には、本体41の流路42内に塗料を供給するための供給口43が形成され、この供給口43にはホース321が接続される。また、本体41の先端部には、供給口43から供給された塗料を吐出(噴霧)するための噴霧口44が形成されている。この噴霧口44は、流路42の先端側に位置しており、塗料の吐出圧を高めるため、先端に向かうに従って徐々に縮径する形状に形成されている。また、本体41の噴霧口44とは反対側の端部には、ユニット弁機構40を電磁機構57装着するための装着部412が形成されている。
【0033】
ニードル45は、本体41よりも長尺の略円柱状に形成された磁性体からなる。このニードル45は、図5及び図6に示すように、噴霧口44に対向して配置される先端部451と、ニードル45の半径方向に張り出す拡径部452と、拡径部452の先端部451とは反対側に延びるプランジャ部453と、を備えている。これら先端部451、拡径部452及びプランジャ部453は一体化されている。これらのうち、先端部451は噴霧口44を閉塞し、拡径部452は供給口43を閉塞することから、先端部451及び拡径部452は、弁体として機能する。
【0034】
先端部451は、噴霧口44の形状と同形状に形成され、具体的には、先端に向かうに従って徐々に縮径する形状とされている。拡径部452は、図5及び図6に示すように、流路42の径と略同じに設定されている。また、拡径部452の本体41の軸方向の長さは、供給口43の上記軸方向の長さより大きく形成されている。
【0035】
プランジャ部453は、円柱状に形成されている。このプランジャ部453には、ばね部材46が挿通されており、ばね部材46の先端は、拡径部452に当接している。一方、ばね部材461の後端は、ねじ部材411に当接している。このねじ部材411は、本体41の流路42内にニードル45を挿通させ、プランジャ部453にばね部材46を挿通させた後、本体41に装着され、ねじ部材411を固定する。このねじ部材411が本体41に装着されることにより、ニードル45がばね部材46により噴霧口44に向けて付勢される。このため、図5に示すように、先端部451が噴霧口44に嵌まり込んで噴霧口44を閉塞するとともに、拡径部452の外周面が供給口43を閉塞する。
【0036】
[電磁機構の構成]
電磁機構57は、本発明の弁駆動機構に相当し、ユニット弁機構40に着脱自在に構成されている。この電磁機構57には、電磁コイル571と、電磁コイル571の周囲に配置されるヨーク572と、ヨーク572の一端側を閉塞する固定鉄心573とが設けられている。この電磁機構57は、上述したプランジャ部453が可動鉄心として機能することにより、ソレノイドを構成する。
また、ヨーク572の端部には、ユニット弁機構40の装着部412が装着される被装着部575が形成されている。この被装着部575に本体41の装着部412が装着されることにより、電磁機構57にユニット弁機構40が固定されると、図6に示すように、プランジャ部453の一部は、電磁コイル571(ヨーク572)の空間574内にわずかな隙間を空けた状態で挿通される。
【0037】
この電磁機構57がユニット弁機構40に装着された状態において、制御部59の制御により電磁コイル571に電流が流れると、磁束が発生して固定鉄心573が磁化され、固定鉄心573にプランジャ部453が吸着する。これにより、プランジャ部453と一体化されている拡径部452及び先端部451が本体41の軸方向に沿って噴霧口44とは反対側に移動する。これにより、供給口43及び噴霧口44が開放状態となり、流路42内に塗料が供給されるとともに、噴霧口44から吐出される。
【0038】
[缶内面塗装装置による内面塗装]
塗装装置10により実行される内面塗装工程は、図1に示したように、3つのスプレーガン71,72,73を用いて、3工程に分けて実行される。この場合、例えば、3つのスプレーガン71,72,73のそれぞれに供給される塗料は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0039】
[缶内面塗装ユニットによる内面塗装]
例えば、3つのスプレーガン71,72,73のいずれかから噴霧される塗料とは異なる塗料を用いて、缶100の内面を塗装する実験を行いたい場合がある。このような場合、異なる塗料を噴霧するスプレーガン71,72,73に塗料を供給する供給系50を洗浄する必要があるとともに、洗浄により生じる廃液を処分する必要がある。このような手間を省くため、本実施形態では、塗装ユニット20を用いて缶100の内面を塗装する。以下に詳しく説明する。
【0040】
例えば、スプレーガン71から噴霧される塗料を変更したい場合、図7に示すように、塗装装置10の弁機構61を電磁機構57から取り外した後、塗装ユニット20のユニット弁機構40を電磁機構57に装着してスプレーガン70を構成する。このユニット弁機構40は、弁機構61が配置されていた位置にそのまま装着されることから、スプレーガン70は、スプレーガン71と同じ位置に設けられることとなる。
【0041】
そして、回転テーブル12により搬送される缶100がスプレーガン70の近傍に位置するセンサ58により検知されると、センサ58から送信された検知信号に基づいて、制御部59の制御のもと、電磁機構57に電力が供給されてユニット弁機構40のニードル45が駆動し、缶100の内面に塗装ユニット20のタンク31に貯留された塗料が塗布される。
【0042】
なお、本実施形態では、スプレーガン71を構成する弁機構61に代えて塗装ユニット20のユニット弁機構40を電磁機構57に装着する例を示したが、弁機構62,63のそれぞれに代えてユニット弁機構40を電磁機構57に装着することもできる。また、塗装ユニット20を複数有している場合には、それぞれの弁機構61,62,63に代えてユニット弁機構40を電磁機構57に装着してもよい。
【0043】
本実施形態では、タンク31、供給配管32の一部、ポンプ33、ヒータ34、フィルタ35及びレギュレータ36が架台21に固定されることにより一体化されており、塗装装置10の弁機構61,62,63を取り外した上、ユニット弁機構40を塗装装置10の電磁機構57に装着することで、ユニット弁機構40を電磁機構57により作動させて、塗装ユニット20のタンク31に貯留された塗料を缶100の内面に塗布することができる。つまり、塗装装置10の弁機構61,62,63に代えて、ユニット弁機構40を電磁機構57に装着するだけで、スプレーガン70を構成でき、塗装装置10を洗浄することなく、塗装装置10の塗料とは異なる塗料を缶100の内面に塗布することができる。また、電磁機構57にユニット弁機構40を装着するので、ユニット弁機構40を用いた場合でも、缶100の検知時に電磁機構57を駆動させて塗料を噴霧できる。このため、塗装装置10と略同条件で缶内面塗装ユニット20を用いて缶100の内面を塗装できる。
【0044】
本実施形態では、電磁機構57により磁性体からなるニードル45を駆動する構成であるので、ニードル45を電磁機構57の一部に固定する必要がなく、例えば、弁駆動機構がニードル45を油圧等で移動させる構成である場合に比べて、電磁機構57とユニット弁機構40との着脱を簡単にできる。
【0045】
また、ポンプ33がエアポンプにより構成されていることから、エアレギュレータを介して流通されたエアによりポンプ33が駆動する。このため、塗装装置10が配置された工場内に設置されている高圧エア配管内を流通するエアの圧力をエアレギュレータ38により調整し、圧力調整後のエアによりポンプ33を駆動できる。このため、塗装ユニット20にポンプ33の駆動源を設ける必要がないため、塗装ユニット20を小型化できる。
【0046】
また、架台21には、キャスター22が設けられているので、キャスター22により塗装ユニット20を容易に移動させることができ、利便性を向上できる。
さらに、架台21には、レギュレータ36が固定されているので、圧力が調整された塗料をユニット弁機構40に供給でき、塗装装置10と略同じ圧力で塗料を噴霧できる。また、ポンプ33とレギュレータ36との間に塗料を加熱するヒータ34が設けられているので、ヒータ34により塗料の温度を適切に管理し、適切な温度の塗料がレギュレータ36を介してユニット弁機構40に供給されるので、缶100の内面に適切な温度の塗料を塗布することができる。加えて、架台21には、ポンプ33とレギュレータ36との間に塗料の不純物を除去するフィルタ35が設けられており、塗料から不純物を除去することで、純度の高い塗料がレギュレータ36を介してユニット弁機構40に供給されるので、缶100の内面に純度の高い塗料を塗布できる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、架台21には、タンク31、供給配管32の一部及びポンプ33、ヒータ34、フィルタ35及びレギュレータ36が固定されていることとしたが、これに限らず、タンク31、供給配管32の一部及びポンプ33のみが固定されていてもよい。
【0048】
上記実施形態では、ユニット弁機構40の弁体(ニードル45の先端部451及び拡径部452)を駆動させる弁駆動機構として、電磁機構57を用いることとしたが、これに限らず、例えば、電磁石によりニードル45を移動可能な構成であってもよい。また、弁体駆動機構は、電磁機構に限らず、ニードル45を油圧等で移動させる機構を用いてもよい。
なお、ニードル45は、磁性体により形成されていることとしたが、これに限らず弁体部分と磁性体とが結合する構成であってもよい。つまり、プランジャ部453が磁性体により形成されていれば、先端部451及び拡径部452は、磁性体でなくてもよい。
【0049】
上記実施形態では、架台21は、キャスター22を有していることとしたが、これに限らず、例えば、キャスター22を有さなくてもよい。この場合、塗装ユニット20は、塗装装置10の近傍に固定される構成であってもよい。すなわち、塗装ユニット20は、移動可能でなくてもよい。
【0050】
上記実施形態では、ポンプ33はエアポンプにより構成されていることとしたが、これに限らず、その駆動源は自由に選択できる。
【0051】
上記実施形態では、3つのスプレーガン71,72,73のそれぞれを含む供給系50が3つ設けられていることとしたが、これに限らず、例えば、3つのスプレーガン71,72,73のうち、2つのスプレーガン71,72が1つの供給系50を有する構成であってもよい。この場合、1つの供給系50から2つのスプレーガン71,72を構成する2つの弁機構61,62に同じ塗料が供給される。これら2つのスプレーガン71,72から供給される塗料を異なる塗料とする場合、塗装ユニット20を2つ設けるのが一般的であるが、例えば、塗装ユニット20の架台21に2つのレギュレータ36を備えることとしてもよい。この場合、2つのレギュレータ36のそれぞれにホース321を介して接続されるユニット弁機構40を2つ設けるとよい。つまり、塗装ユニット20は、2つ以上のユニット弁機構40を有する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…缶内面塗装装置(塗装装置)
11…供給部
12…回転テーブル
20…缶内面塗装ユニット(塗装ユニット)
21…架台
22…キャスター
30,50…供給系
31,51…タンク
32,52…供給配管
321,521…ホース
33,53…ポンプ
331…接続部
34,54…ヒータ
35,55…フィルタ
36,56…レギュレータ
38…エアレギュレータ
40…ユニット弁機構
41…本体
411…ねじ部材
412…装着部
42…流路
43…供給口
44…噴霧口
45…ニードル
451…先端部(弁体)
452…拡径部(弁体)
453…プランジャ部
46…ばね部材
57…電磁機構(弁駆動機構)
571…コイル
572…ヨーク
573…固定鉄心
574…空間
575…被装着部
58…センサ
61,62,63…弁機構
70,71,72,73…スプレーガン
100…缶
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7