(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】書斎構造
(51)【国際特許分類】
A47C 11/00 20060101AFI20240402BHJP
A47B 83/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
A47C11/00
A47B83/00
(21)【出願番号】P 2020009989
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2022-07-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年4月29日から、下記住宅展示場において公開 ハウジングステージ新宿(東京都新宿区百人町2-2-32)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年4月18日から、下記ウェブサイトにおいて、上記住宅展示場の紹介として公開 https://www.sekisuihouse.co.jp/liaison/13/3058000030/
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】中原 潤平
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】実公平02-004600(JP,Y2)
【文献】特開2005-204863(JP,A)
【文献】特開平04-090721(JP,A)
【文献】特開2014-097239(JP,A)
【文献】登録実用新案第3035959(JP,U)
【文献】特開2013-019160(JP,A)
【文献】特開2020-008782(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0134842(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 9/00 - A47C 23/34
A47B 83/00 - A47B 87/02
E04H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外空間に面する掃き出し窓型の窓開口が壁長一杯に亘って設けられている第一壁面と、前記第一壁面に直交接続する窓のない第二壁面と、前記第一壁面に直交接続して前記第二壁面に対向する窓のない第三壁面と、によって囲まれた書斎の一角に、背もたれを有するベンチと書棚とを結合してなる書棚付きベンチが設置された書斎構造であって、
前記ベンチは、平面視長矩形をなす一枚の座板と、前記座板を複数箇所にて支持する板状の脚部とを組み合わせて構成され、前記座板の一方の長辺を前記第一壁面に沿わせるとともに、前記座板の一端及び他端を前記第二壁面及び前記第三壁面にそれぞれ当接させるようにして配置され、
前記脚部は前記座板の短辺と平行になるように前記座板の下面に接合されて前記座板を水平に支持するように立設され、
前記座板の下側には、
該座板の短辺方向に見通し可能な開放空間が、前記座板の長辺寸法の過半領域にわたって設けられ、
前記書棚は、その開口面を前記座板の長辺方向に向けて前記座板の一端に結合され、その背面を前記第二壁面に当接させるとともに、その上端を天井面に当接させて配置され、
前記座板の長辺方向における他端側には、前記書棚の開口面と対面する背もたれが、前記書棚に向かって仰角傾斜し、その上端を前記第三壁面に当接させるように取り付けられ、
前記ベンチにおける前記座板の短辺寸法が40~50cm、床面から座面までの高さが35~45cm、前記書棚の前面と前記背もたれの基部との間隔が130cm以上、前記背もたれの前記座面に対する傾斜角度が50~70°、となるように構成された
ことを特徴とする書斎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、書棚とベンチとが結合された書棚付きベンチを設置した書斎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
省スペース性を備えた多機能型の収納家具として、収納棚の側方にベンチ状の着座部を一体的に設けたもの(特許文献1、2等)が公知である。この種の収納家具は、例えば足腰の弱い人が履物を履き替える際に腰を掛けることのできる玄関用の下足棚として利用されている。
【0003】
また、収納棚の収納スペース内に折り畳み式の腰掛けを組み込んだもの(特許文献3、4等)もある。この種の収納家具は、例えば物品を高所へ出し入れする際に踏み台を手早く取り出せるリビングやキッチン用の壁面収納棚として利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-108742号公報
【文献】特開平10-151028号公報
【文献】特開平11-290151号公報
【文献】登録実用新案第3122846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リビング、書斎、趣味室等については、ゆったりと寛げる姿勢で長時間、読書を楽しめるような室内環境への要望が大きい。大容量の書棚と、読書に適したチェアやソファを設置できるだけの広さを確保できれば理想的であるが、室内がそれほど広くない場合は、コンパクトな形態の多機能家具を利用するなどして、かかる室内環境を創出することが求められる。
【0006】
しかし、前記従来のような収納家具の着座部や腰掛けは、いずれも一時的・臨時的な使用を想定したものにすぎない。座面の大きさは収納棚の奥行き程度(30~40cm)しかないので、そこに長時間、座って読書を楽しむ、といった利用態様にはそぐわない。
【0007】
本願が開示する発明は、前述のような事情に着目してなされたものであり、特に書棚として利用しやすい収納棚と、身体的負担が少ない姿勢で長時間、読書を楽しむのに適した背もたれ付きのベンチと、をコンパクトに一体化した書棚付きベンチを提案するものである。
【0008】
あわせて本願が開示する発明は、かかる書棚付きベンチを利用して、室内空間が狭くても開放感や寛ぎ感を得やすい書斎構造を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的を達成するために、本願が開示する発明は、室外空間に面する掃き出し窓型の窓開口が壁長一杯に亘って設けられている第一壁面と、前記第一壁面に直交接続する窓のない第二壁面と、前記第一壁面に直交接続して前記第二壁面に対向する窓のない第三壁面と、によって囲まれた書斎の一角に、背もたれを有するベンチと書棚とを結合してなる書棚付きベンチが設置された書斎構造であって、前記ベンチは、平面視長矩形をなす一枚の座板と、前記座板を複数箇所にて支持する板状の脚部とを組み合わせて構成され、前記座板の一方の長辺を前記第一壁面に沿わせるとともに、前記座板の一端及び他端を前記第二壁面及び前記第三壁面にそれぞれ当接させるようにして配置され、前記脚部は前記座板の短辺と平行になるように前記座板の下面に接合されて前記座板を水平に支持するように立設され、前記座板の下側には、該座板の短辺方向に見通し可能な開放空間が、前記座板の長辺寸法の過半領域にわたって設けられ、前記書棚は、その開口面を前記座板の長辺方向に向けて前記座板の一端に結合され、その背面を前記第二壁面に当接させるとともに、その上端を天井面に当接させて配置され、前記座板の長辺方向における他端側には、前記書棚の開口面と対面する背もたれが、前記書棚に向かって仰角傾斜し、その上端を前記第三壁面に当接させるように取り付けられ、前記ベンチにおける前記座板の短辺寸法が40~50cm、床面から座面までの高さが35~45cm、前記書棚の前面と前記背もたれの基部との間隔が130cm以上、前記背もたれの前記座面に対する傾斜角度が50~70°、となるように構成されたものである。この構成によれば、ベンチに座って背もたれにもたれ、書棚側に足を伸ばすと、正面に書棚の蔵書を見ながら寛いだ姿勢で読書を楽しむことができる。
【0010】
さらに、この構成によれば、座板の存在感が軽くなって、書棚付きベンチを設置した床面の拡がり感が得られるので、室内が狭くても、書棚付きベンチを設置することによって室内が窮屈な印象になるのを抑えることができる。座板の短辺方向に見通し可能な開放空間が、座板の長辺寸法の過半領域にわたって設けられることで、床面の拡がり感がさらに大きくなる。
【0011】
また、この構成によれば、背もたれにもたれて書棚側に足を伸ばした姿勢で、側方に少し視線を向けると、窓開口の外側の景観が目に入ることになる。このような窓際スペースは、読書中に思考を切り替えたり思索を深めたりするのにも好適である。また、日中は窓開口からの自然採光が読書を助け、夜間であれば窓開口の外側に配した人工照明等が窓際スペースの落ち着いた雰囲気を演出する。
【0012】
また、この構成によれば、狭い書斎においても、居心地が良くて寛ぎやすい窓際スペースをコンパクトに創出することができる。さらに、前記書棚の上端が天井面に当接しており、前記窓開口が、少なくとも前記ベンチの座面よりも低い位置から前記ベンチの背もたれよりも高い位置までの範囲で開口している構成を採用することで、窓開口の開放感を損なわずに、造作家具としての一体感を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本願が開示する発明に係る書棚付きベンチによれば、ベンチに座って背もたれにもたれ、書棚側に足を伸ばした姿勢で、正面に書棚の蔵書を見ながらゆったりと読書を楽しむことができる。
【0014】
また、本願が開示する発明に係る書斎構造によれば、明るく開放的で寛ぎやすい、読書や思索のための窓際スペースを、コンパクトに創出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本願が開示する発明の一実施形態に係る書棚付きベンチの正面図である。
【
図2】前記書棚付きベンチが据え付けられた書斎の平面図である。
【
図3】前記書斎の使用態様を示す内観透視図である。
【
図10】前記書棚付きベンチのB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願が開示する発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1および
図4~
図10は、本願が開示する発明に係る書棚付きベンチの一実施形態を示し、
図2および
図3は、該書棚付きベンチが据え付けられた書斎の一実施形態を示す。
【0018】
書棚付きベンチ1は、平面視長矩形をなすベンチ2の長辺方向における一端(
図1の正面図における左端)に書棚を結合して構成されている。
【0019】
ベンチ2は、一枚の座板21と、該座板21を水平に支持する(複数箇所の)脚部22とを組み合わせて構成される。例示形態では、
図1の正面図における左右両端二箇所および中間部二箇所に、板状の脚部22が、座板21の短辺と平行になるように立設されて、それら四箇所の脚部22の上端が座板21の下面に接合される。それら四箇所の脚部22の下端は、座板21と略同寸の地板23に接合されている。これにより、座板21の下側には、脚部22によって仕切られた三箇所の空間が画成される。それらのうち正面視左側および中央部の空間は、背板、幕板、扉板等がなく、座板21の短辺方向に見通し可能な開放空間24となされている。開放空間24を画成する脚部22の前縁は、座板21の前縁よりも若干、セットバックしている。
【0020】
正面視右側の空間は、空調機器その他の設備類を設置するための収納空間25として利用されている。収納空間25の背面側には背板26が取り付けられるとともに、正面側には目隠し用のルーバパネル27が着脱可能に取り付けられている。
【0021】
書棚3は、縦長矩形の開口面を有する箱状のオープン棚で、開口面の左右を囲む一対の側板31と、それらの間に架け渡された複数枚の棚板32と、開口面の背面側に取り付けられた背板33とを具備し、開口面をベンチ2の長辺方向に向けてベンチ2の正面視左端に配置されている。例示形態では、開口面の横幅(両側板31の対向間隔)が座板21の短辺寸法よりもわずかに小さくなるように形成されて、両側板31の下端がベンチ2の座板21の上に載るかたちで座板21に結合されている。
【0022】
ベンチ2の座板21の他端近傍には、書棚3に対面する背もたれ4が取り付けられている。背もたれ4は、座板21の短辺寸法と略同寸の横幅を有する一枚の板体からなり、その板体が書棚3に向かって仰角傾斜となるように、座板21の上面に取り付けられている。例示形態では、背もたれ4の裏面と座板21との間に取り付けられた金属製の支持プレート41を介して、背もたれ4が一定の角度θに固定されている。
【0023】
この書棚付きベンチ1は、例えば
図2および
図3に示すようにして書斎5の一角に設置される。例示形態に係る書斎5は、窓開口50が設けられた第一壁面51と、第一壁面51に直交接続して互いに対向する第二壁面52および第三壁面53とによって囲まれた領域を有している。第一壁面51に設けられた窓開口50は、床面54の近傍から天井面55の近傍まで大きく開口する掃き出し窓であり、その外側には外庭、中庭(坪庭)、テラス、バルコニー、ベランダ等に属する室外空間6が設けられて、その室外空間6を室内から鑑賞し得るように、室内外が視覚的に連通している。第二壁面52および第三壁面53には窓開口がなく、出入口56が第二壁面52に設けられている。
【0024】
書棚付きベンチ1は、ベンチ2の一方の長辺を第一壁面51の窓開口50に沿わせて配置されている。書棚3は、その背面が第二壁面52に当接し、上端が天井面55に当接するように配置される。また、ベンチ2の他端(書棚3の反対側)および背もたれ4の上端は、第三壁面53に当接している。窓開口50に沿って配置されたベンチ2の座板21は、窓開口50を横切るかたちの座面を形成する。しかし、座板21の下側の過半部分は、室内外方向に見通し可能な開放空間24になっていて、座板21の存在感が軽快な印象になるので、窓開口50の開放感や採光はあまり損なわれない。
【0025】
その座板21に座って背もたれ4にもたれ、書棚3側に足を伸ばすと、正面に書棚3の蔵書を見ながら寛いだ姿勢で読書を楽しむことができる。その姿勢で側方に視線を向けると室外空間6の景観が目に入るので、読書中に思考を切り替えたり思索を深めたりすることができる。日中であれば窓開口50からの自然採光が読書を助け、夜間であれば室外空間6に配した人工照明が窓際の落ち着いた雰囲気を演出する。
【0026】
このような構成により、楽な姿勢で長時間、読書を楽しむのに適した書棚付きベンチ1と、かかる書棚付きベンチ1が設置された、コンパクトでありながらも開放感や寛ぎ感に富む書斎構造を得ることができる。
【0027】
なお、本願が開示する発明の技術的範囲は、例示した実施の形態によって限定的に解釈されるべきものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて概念的に解釈されるべきものである。本願が開示する発明の実施に際しては、特許請求の範囲において具体的に特定していない構成要素の形状、構造、材質、数量、接合形態、相対的な位置関係等を、例示形態と実質的に同等程度の作用効果が得られる範囲内で適宜、改変することが可能である。
【0028】
例えば、ベンチ2の短辺寸法は、人が無理なく座れる40~50cm程度が実用的であるが、書斎5の室内面積に余裕があれば、もう少し大きくても構わない。ベンチ2の長辺寸法は、背もたれ4にもたれて足を無理なく伸ばせる程度以上であれば特に限定されないが、書棚3の前面と背もたれ4の基部との間隔は100cm以上、できれば130cm以上あると、窮屈にならなくて好ましい。背もたれの角度θは50~70°程度がもたれやすいが、背中に沿うように湾曲していてもよい。また、ベンチ2の平面形状は、長矩形に限定されるものではなく、幅が一様でない形状や、曲線的な辺部を有する形状であってもよい。
【0029】
床面54からベンチ2の座面までの高さは、人が無理なく座れる35~45cm程度が好ましく、それくらいの高さであれば、ベンチ2の上面を文机(ローデスク)としても使用することができる。書棚3の開口面の横幅は、ベンチ2の短辺寸法より小さくても大きくてもよい。書棚3の高さはベンチ2の背もたれ4の高さよりも十分に大きくなるのが好ましい。書棚3の一部には扉や引き出し(図示せず)が取り付けられていてもよい。また、書棚3の下側部分に収納空間が設けられて、背もたれ4側の下方が開放空間になっていてもよい。その他、書棚付きベンチの使用態様や設置環境等に応じて、サブテーブル、足掛け、その他の機能と組み合わせることにより、使い勝手をさらに向上させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本願が開示する発明は、住宅だけでなく、宿泊施設、教育・研究施設、医療・介護施設その他、読書をする機会がある様々な建物の居室空間に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 書棚付きベンチ
2 ベンチ
21 座板
22 脚部
23 地板
24 開放空間
25 収納空間
26 背板
27 ルーバパネル
3 書棚
31 側板
32 棚板
33 背板
4 背もたれ
41 支持プレート
5 書斎
50 窓開口
51 第一壁面
52 第二壁面
53 第三壁面
54 床面
55 天井面
56 出入口
6 室外空間