(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240402BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20240402BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B41J2/165 207
B41J2/17 201
B41J2/01 303
(21)【出願番号】P 2020021151
(22)【出願日】2020-02-12
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克典
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-69559(JP,A)
【文献】特開2016-10855(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0025736(US,A1)
【文献】米国特許第5623876(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクをノズルから吐出して画像を記録する記録動作を行うインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを搭載し移動可能なキャリッジと、
複数種のメンテナンス機能を、全キャリッジを対象に実現する構成を有する第1メンテナンス部と、
前記複数種のメンテナンス機能のうち一部のメンテナンス機能のみを所定のキャリッジを対象に実現する構成を有する第2メンテナンス部と、を備え、
前記キャリッジは、記録面対向領域と、当該記録面対向領域から外れた退避領域との間を移動可能にされ、前記インクジェットヘッドは当該記録面対向領域に配置されて記録媒体に対してインクを吐出して記録動作を行い、
前記退避領域に配置された前記インクジェットヘッドのメンテナンスを前記第1メンテナンス部により実行可能にされ、
前記記録面対向領域に配置された前記インクジェットヘッドのメンテナンスを、前記第2メンテナンス部により実行可能にされ
、
前記一部のメンテナンス機能は、前記インクジェットヘッドのノズルからインクを廃インクとして吐出して捨てるパージ機能であり、
前記キャリッジは、当該キャリッジの移動方向に並んだノズル列であって、同方向の前記記録面の幅に亘る長さを有するノズル列を構成する前記インクジェットヘッドを搭載しており、
前記第1メンテナンス部は、パージ機能を実現するための第1廃液桶を有し、
前記第2メンテナンス部は、パージ機能を実現するための第2廃液桶を有し、
前記第1廃液桶は、前記ノズル列を構成する全ノズルから同時に廃インクを受ける長さを有し、
前記第2廃液桶は、前記ノズル列を構成する全ノズルから同時に廃インクを受ける長さに満たず、前記ノズル列のうち一部のノズルからの廃インクを受ける長さを有し、
前記第2廃液桶は、前記ノズル列の方向に沿って前記記録面対向領域の一端から他端及び前記第1廃液桶の上方領域まで移動可能にされ、
前記第2廃液桶を前記記録面対向領域において前記ノズル列の下方で前記ノズル列の方向に沿って移動させつつ、順次に当該第2廃液桶の上方に位置するノズルからインクを廃インクとして吐出して当該第2廃液桶に、前記ノズル列を構成する全ノズルからの廃インクを回収させ、当該第2廃液桶を前記第1廃液桶の上方領域まで移動させて、当該第2廃液桶に回収した廃インクを前記第1廃液桶に受け渡すメンテナンス動作の制御を実行する制御装置を備えるインクジェット記録装置。
【請求項2】
インクをノズルから吐出して画像を記録する記録動作を行うインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを搭載し移動可能な複数のキャリッジと、
複数種のメンテナンス機能を、全キャリッジを対象に実現する構成を有する第1メンテナンス部と、
前記複数種のメンテナンス機能のうち一部のメンテナンス機能のみを一のキャリッジを対象に実現する構成を有する第2メンテナンス部と、を備え、
前記キャリッジは、記録面対向領域と、当該記録面対向領域から外れた退避領域との間を移動可能にされ、前記インクジェットヘッドは当該記録面対向領域に配置されて記録媒体に対してインクを吐出して記録動作を行い、
前記退避領域に配置された前記インクジェットヘッドのメンテナンスを前記第1メンテナンス部により実行可能にされ、
前記記録面対向領域に配置された前記インクジェットヘッドのメンテナンスを、前記第2メンテナンス部により実行可能にされているインクジェット記録装置。
【請求項3】
インクをノズルから吐出して画像を記録する記録動作を行うインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを搭載し移動可能なキャリッジと、
複数種のメンテナンス機能を、全キャリッジを対象に実現する構成を有する第1メンテナンス部と、
前記複数種のメンテナンス機能のうち一部のメンテナンス機能のみを所定のキャリッジを対象に実現する構成を有する第2メンテナンス部と、を備え、
前記キャリッジは、記録面対向領域と、当該記録面対向領域から外れた退避領域との間を移動可能にされ、前記インクジェットヘッドは当該記録面対向領域に配置されて記録媒体に対してインクを吐出して記録動作を行い、
前記退避領域に配置された前記インクジェットヘッドのメンテナンスを前記第1メンテナンス部により実行可能にされ、
前記記録面対向領域に配置された前記インクジェットヘッドのメンテナンスを、前記第2メンテナンス部により実行可能にされ、
前記第1メンテナンス部によるメンテナンス動作の実行時に、前記キャリッジを、前記記録面対向領域において所定の第1メンテナンス高さにして前記記録面対向領域から前記退避領域に移動させ、
前記第2メンテナンス部によるメンテナンス動作の実行時には、前記キャリッジを、前記記録面対向領域において前記第1メンテナンス高さより高い第2メンテナンス高さにして、前記第2メンテナンス部に係る構成をノズル下に配置にするメンテナンス動作の制御を実行する制御装置を備えるインクジェット記録装置。
【請求項4】
インクをノズルから吐出して画像を記録する記録動作を行うインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを搭載し移動可能なキャリッジと、
複数種のメンテナンス機能を、全キャリッジを対象に実現する構成を有する第1メンテナンス部と、
前記複数種のメンテナンス機能のうち一部のメンテナンス機能のみを所定のキャリッジを対象に実現する構成を有する第2メンテナンス部と、を備え、
前記キャリッジは、記録面対向領域と、当該記録面対向領域から外れた退避領域との間を移動可能にされ、前記インクジェットヘッドは当該記録面対向領域に配置されて記録媒体に対してインクを吐出して記録動作を行い、
前記退避領域に配置された前記インクジェットヘッドのメンテナンスを前記第1メンテナンス部により実行可能にされ、
前記記録面対向領域に配置された前記インクジェットヘッドのメンテナンスを、前記第2メンテナンス部により実行可能にされ、
前記所定のキャリッジに搭載されるインクジェットヘッドに関し、所定の条件に基づきノズルからの不吐出時間を計測し、
記録動作に対する待機中において、前記不吐出時間が第1の閾値を超え、かつ、第1の閾値より長い第2の閾値を超えない場合に、前記第2メンテナンス部によるメンテナンス動作を実行させて当該計測をリセットし、
記録動作に対する待機中において、前記不吐出時間が第1の閾値より長い第2の閾値を超える場合に、前記第1メンテナンス部によるメンテナンス動作を実行させて当該計測をリセットする制御装置を備えるインクジェット記録装置。
【請求項5】
インクをノズルから吐出して画像を記録する記録動作を行うインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを搭載し移動可能なキャリッジと、
複数種のメンテナンス機能を、全キャリッジを対象に実現する構成を有する第1メンテナンス部と、
前記複数種のメンテナンス機能のうち一部のメンテナンス機能のみを所定のキャリッジを対象に実現する構成を有する第2メンテナンス部と、を備え、
前記キャリッジは、記録面対向領域と、当該記録面対向領域から外れた退避領域との間を移動可能にされ、前記インクジェットヘッドは当該記録面対向領域に配置されて記録媒体に対してインクを吐出して記録動作を行い、
前記退避領域に配置された前記インクジェットヘッドのメンテナンスを前記第1メンテナンス部により実行可能にされ、
前記記録面対向領域に配置された前記インクジェットヘッドのメンテナンスを、前記第2メンテナンス部により実行可能にされ、
記録動作に対する待機時間を計測し、当該計測時間が所定時間を超える場合に、前記第2メンテナンス部によるメンテナンス動作を実行させて当該計測をリセットする制御を実行する制御装置を備えるインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記第2メンテナンス部は、前記第1メンテナンス部に含まれず、前記第1メンテナンス部から独立した構成である請求項1から請求項
5のうちいずれか一に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドのノズルからインクを吐出して記録媒体の所望の位置に着弾させることで画像を記録するインクジェット記録装置がある。インクジェットヘッドのノズル面(ノズルの開口部が形成されたノズル開口面)にインクが付着すると、付着したインクがノズルの開口部の一部を塞いだ状態で固化してインクの吐出不良が生じる。そのため、インクジェットヘッドのノズルからインクを吐出させて浄化するパージ、ノズル面の払拭などのメンテナンスを行うようにされている。パージのためのメンテナンスユニットとしては、廃液桶が必要となる。ノズル面の払拭のためのメンテナンスユニットとしては、ノズル面に非接触でノズル面に付着しているインク等を除去する非接触ブレード、ロール状に巻かれた専用布をノズル面に接触させて払拭する布ワイプユニットなどが適用される。
従来、記録領域に隣接して設けられたメンテナンス領域にメンテナンスユニットを設置しておき、インクジェットヘッドを載せたキャリッジを、メンテナンス領域に移動させてインクジェットヘッドのメンテナンスを行う技術がある。
また、記録領域にメンテナンスユニットを移動させてインクジェットヘッドのメンテナンスを行う技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許03334913号公報
【文献】特開2016-10855号公報
【文献】特許5493828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
UV硬化型インクなどでは、上記のような複数種のメンテナンスユニットが必要になるなどメンテナンスユニットの構成が複雑化、大型化する。
インク種類によっては、沈降が起きやすく、頻繁なパージが必要となる。
頻繁にメンテナンスが必要となる一部のインク種のインクジェットヘッドのメンテナンスのために、インクジェットヘッドをメンテナンス領域に移動させて複数種のメンテナンスを行っていては、記録作業を行えない時間の割合が増加して、記録作業の効率が低下する。
複雑化、大型化しているメンテナンスユニットを記録領域に移動させることは難しい。
【0005】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、インクジェット記録装置において複数種のメンテナンス機能を実現しつつ、メンテナンスの時間割合を抑えて記録作業の効率を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のインクジェット記録装置は、インクをノズルから吐出して画像を記録する記録動作を行うインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドを搭載し移動可能なキャリッジと、複数種のメンテナンス機能を、全キャリッジを対象に実現する構成を有する第1メンテナンス部と、前記複数種のメンテナンス機能のうち一部のメンテナンス機能のみを所定のキャリッジを対象に実現する構成を有する第2メンテナンス部と、を備え、前記キャリッジは、記録面対向領域と、当該記録面対向領域から外れた退避領域との間を移動可能にされ、前記インクジェットヘッドは当該記録面対向領域に配置されて記録媒体に対してインクを吐出して記録動作を行い、
前記退避領域に配置された前記インクジェットヘッドのメンテナンスを前記第1メンテナンス部により実行可能にされ、
前記記録面対向領域に配置された前記インクジェットヘッドのメンテナンスを、前記第2メンテナンス部により実行可能にされ、
前記一部のメンテナンス機能は、前記インクジェットヘッドのノズルからインクを廃インクとして吐出して捨てるパージ機能であり、
前記キャリッジは、当該キャリッジの移動方向に並んだノズル列であって、同方向の前記記録面の幅に亘る長さを有するノズル列を構成する前記インクジェットヘッドを搭載しており、
前記第1メンテナンス部は、パージ機能を実現するための第1廃液桶を有し、
前記第2メンテナンス部は、パージ機能を実現するための第2廃液桶を有し、
前記第1廃液桶は、前記ノズル列を構成する全ノズルから同時に廃インクを受ける長さを有し、
前記第2廃液桶は、前記ノズル列を構成する全ノズルから同時に廃インクを受ける長さに満たず、前記ノズル列のうち一部のノズルからの廃インクを受ける長さを有し、
前記第2廃液桶は、前記ノズル列の方向に沿って前記記録面対向領域の一端から他端及び前記第1廃液桶の上方領域まで移動可能にされ、
前記第2廃液桶を前記記録面対向領域において前記ノズル列の下方で前記ノズル列の方向に沿って移動させつつ、順次に当該第2廃液桶の上方に位置するノズルからインクを廃インクとして吐出して当該第2廃液桶に、前記ノズル列を構成する全ノズルからの廃インクを回収させ、当該第2廃液桶を前記第1廃液桶の上方領域まで移動させて、当該第2廃液桶に回収した廃インクを前記第1廃液桶に受け渡すメンテナンス動作の制御を実行する制御装置を備える。
また、本発明の一態様のインクジェット記録装置は、
インクをノズルから吐出して画像を記録する記録動作を行うインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドを搭載し移動可能な複数のキャリッジと、複数種のメンテナンス機能を、全キャリッジを対象に実現する構成を有する第1メンテナンス部と、前記複数種のメンテナンス機能のうち一部のメンテナンス機能のみを一のキャリッジを対象に実現する構成を有する第2メンテナンス部と、を備え、前記キャリッジは、記録面対向領域と、当該記録面対向領域から外れた退避領域との間を移動可能にされ、前記インクジェットヘッドは当該記録面対向領域に配置されて記録媒体に対してインクを吐出して記録動作を行い、
前記退避領域に配置された前記インクジェットヘッドのメンテナンスを前記第1メンテナンス部により実行可能にされ、
前記記録面対向領域に配置された前記インクジェットヘッドのメンテナンスを、前記第2メンテナンス部により実行可能にされている。
また、本発明の一態様のインクジェット記録装置は、インクをノズルから吐出して画像を記録する記録動作を行うインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドを搭載し移動可能なキャリッジと、複数種のメンテナンス機能を、全キャリッジを対象に実現する構成を有する第1メンテナンス部と、前記複数種のメンテナンス機能のうち一部のメンテナンス機能のみを所定のキャリッジを対象に実現する構成を有する第2メンテナンス部と、を備え、前記キャリッジは、記録面対向領域と、当該記録面対向領域から外れた退避領域との間を移動可能にされ、前記インクジェットヘッドは当該記録面対向領域に配置されて記録媒体に対してインクを吐出して記録動作を行い、
前記退避領域に配置された前記インクジェットヘッドのメンテナンスを前記第1メンテナンス部により実行可能にされ、
前記記録面対向領域に配置された前記インクジェットヘッドのメンテナンスを、前記第2メンテナンス部により実行可能にされ、
前記第1メンテナンス部によるメンテナンス動作の実行時に、前記キャリッジを、前記記録面対向領域において所定の第1メンテナンス高さにして前記記録面対向領域から前記退避領域に移動させ、
前記第2メンテナンス部によるメンテナンス動作の実行時には、前記キャリッジを、前記記録面対向領域において前記第1メンテナンス高さより高い第2メンテナンス高さにして、前記第2メンテナンス部に係る構成をノズル下に配置にするメンテナンス動作の制御を実行する制御装置を備える。
また、本発明の一態様のインクジェット記録装置は、インクをノズルから吐出して画像を記録する記録動作を行うインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドを搭載し移動可能なキャリッジと、複数種のメンテナンス機能を、全キャリッジを対象に実現する構成を有する第1メンテナンス部と、前記複数種のメンテナンス機能のうち一部のメンテナンス機能のみを所定のキャリッジを対象に実現する構成を有する第2メンテナンス部と、を備え、前記キャリッジは、記録面対向領域と、当該記録面対向領域から外れた退避領域との間を移動可能にされ、前記インクジェットヘッドは当該記録面対向領域に配置されて記録媒体に対してインクを吐出して記録動作を行い、
前記退避領域に配置された前記インクジェットヘッドのメンテナンスを前記第1メンテナンス部により実行可能にされ、
前記記録面対向領域に配置された前記インクジェットヘッドのメンテナンスを、前記第2メンテナンス部により実行可能にされ、
前記所定のキャリッジに搭載されるインクジェットヘッドに関し、所定の条件に基づきノズルからの不吐出時間を計測し、
記録動作に対する待機中において、前記不吐出時間が第1の閾値を超え、かつ、第1の閾値より長い第2の閾値を超えない場合に、前記第2メンテナンス部によるメンテナンス動作を実行させて当該計測をリセットし、
記録動作に対する待機中において、前記不吐出時間が第1の閾値より長い第2の閾値を超える場合に、前記第1メンテナンス部によるメンテナンス動作を実行させて当該計測をリセットする制御装置を備える。
また、本発明の一態様のインクジェット記録装置は、インクをノズルから吐出して画像を記録する記録動作を行うインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドを搭載し移動可能なキャリッジと、複数種のメンテナンス機能を、全キャリッジを対象に実現する構成を有する第1メンテナンス部と、前記複数種のメンテナンス機能のうち一部のメンテナンス機能のみを所定のキャリッジを対象に実現する構成を有する第2メンテナンス部と、を備え、前記キャリッジは、記録面対向領域と、当該記録面対向領域から外れた退避領域との間を移動可能にされ、前記インクジェットヘッドは当該記録面対向領域に配置されて記録媒体に対してインクを吐出して記録動作を行い、
前記退避領域に配置された前記インクジェットヘッドのメンテナンスを前記第1メンテナンス部により実行可能にされ、
前記記録面対向領域に配置された前記インクジェットヘッドのメンテナンスを、前記第2メンテナンス部により実行可能にされ、
記録動作に対する待機時間を計測し、当該計測時間が所定時間を超える場合に、前記第2メンテナンス部によるメンテナンス動作を実行させて当該計測をリセットする制御を実行する制御装置を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、インクジェット記録装置において複数種のメンテナンス機能を実現しつつ、メンテナンスの時間割合を抑えて記録作業の効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の主要構成を示す正面視模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の主要構成を示す側面視模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の主要構成を示す正面視模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の主要構成を示す側面視模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置におけるメンテナンス動作の実行タイミングの制御の一例を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置におけるメンテナンス動作の実行タイミングの制御の他の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0010】
(インクジェット記録装置の概要)
図1に示すようにインクジェット記録装置1は、搬送部10と、記録動作部20と、キャリッジ駆動部30と、第1メンテナンス部31と、第2メンテナンス部32と、制御部40と、記憶部50と、通信部70と、操作受付部81と、表示部82、電力供給部90などを備える。
【0011】
搬送部10は、画像を記録する対象となる記録媒体を記録動作部20による記録範囲に対向するように移動させる。搬送部10は、例えば、記録媒体を支持する搬送ドラム、搬送ローラー等を回転駆動する搬送モーター14などを備える。記録媒体は、例えば、布帛であるが、紙など他の材質であってもよい。
図2~
図5に示す構成例にあっては、上流側搬送ローラー15、搬送ドラム16、下流側搬送ローラー17等の構成を備え、搬送ドラム16に支持された記録媒体Sの表面により記録面SSが構成される。
【0012】
記録動作部20は、記録媒体上にインクを吐出して画像を記録する記録動作を行う。記録動作部20は、多数が所定のパターンで配列されてインクを吐出するノズル27と、ノズル27にインクを供給するインク流路(圧力室)を変形させてインクに圧力変動を付与する圧電素子26とを有するインクジェットヘッド21と、各圧電素子26を変形させる駆動パルス電圧を出力するヘッド駆動部25などを備える。
【0013】
キャリッジ駆動部30は、キャリッジ2を移動させる動力モーターの駆動回路に相当する。キャリッジ2は、インクジェットヘッド21を搭載し、制御部40の制御に従ったキャリッジ駆動部30の駆動電力の出力により移動可能にされている。
【0014】
制御部40は、インクジェット記録装置1の全体動作を統括制御するプロセッサー(制御装置)である。制御部40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)41及びRAM(Random Access Memory)42などを備える。CPU41は、演算動作を行い、各種制御処理を行う。RAM42は、CPU41に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。
【0015】
記憶部50は、記録対象の画像データやその処理データを記憶したり、その他の設定データやプログラムなどを記憶したりする。画像データは、例えば、一時的に大容量の記憶を行って高速出力が可能なDRAMなどに記憶されてよい。また、設定データやプログラムなどは、インクジェット記録装置1への電力供給が停止された状況でも記憶可能なフラッシュメモリといった不揮発性メモリー、及び/又はHDD(Hard Disk Drive)などに記憶される。
【0016】
通信部70は、所定の通信規格例えば、TCP/IP(Transmission Control Protocol / Internet Protocol)に従って外部機器とのデータ送受信を制御する。通信部70は、LAN(Local Area Network)などに接続され、ルーターなどを介して外部インターネットと接続可能であってもよいし、USB端子に接続されたUSBケーブルを介して直接周辺機器と接続可能であってもよい。
電力供給部90は、電源からインクジェット記録装置1に電力を供給する。
【0017】
〔メンテナンスの詳細〕
次に、インクジェットヘッド21のメンテナンスの詳細につき説明する。
図2~
図5に示す構成を例として説明する。
記録面SSに対向するように記録媒体搬送の上流側から複数のキャリッジ2A,2B,2C,2D,2Eが配置されている。記録面SSの対向領域101に配置されるとき、各キャリッジ2A,2B,2C,2D,2Eに搭載されたインクジェットヘッド21のノズル27の吐出口が記録面SSに対向する。キャリッジ2A,2B,2C,2D,2Eごとに適用されるインク種類が異なる。
図2、
図4に示すように記録媒体Sの搬送方向をX方向とする。
図3、
図5に示すように記録面SSにおいて搬送方向Xに垂直な方向が記録幅方向Yである。
図3、
図5に示すようにキャリッジ2A,2B,2C,2D,2Eは、記録面SSの対向領域101と、当該記録面SSの対向領域101から外れた退避領域102との間をY方向の往復動により移動可能にされている。インクジェットヘッド21は記録面対向領域101に配置されて記録媒体Sに対してインクを吐出して記録動作を行う。
【0018】
第1メンテナンス部31は、複数種のメンテナンス機能を、全キャリッジ2A,2B,2C,2D,2Eを対象に実現する構成を有する。第1メンテナンス部31は退避領域102の下方領域に配置されており、退避領域102に配置されたインクジェットヘッド21のメンテナンスが第1メンテナンス部により実行可能にされている。
第1メンテナンス部31は、布ワイプ部31a、非接触ワイプ部31b、第1廃液桶31cを有する。
布ワイプ部31aは、ロール状に巻かれた専用布をノズル面に接触させて払拭する構成である。
非接触ワイプ部31bは、ノズル面に非接触でノズル面に付着しているインク等を除去する非接触ブレードである。
第1廃液桶31cは、インクジェットヘッド21のノズルからインクを廃インクとして吐出して捨てるパージ機能を実現するための構成であり、パージによる廃インクを受け容れる。
各キャリッジ2A,2B,2C,2D,2Eは、当該キャリッジの移動方向Yに並んだノズル列であって、同方向Yの記録面SSの幅に亘る長さを有するノズル列27Rを構成するインクジェットヘッド21を搭載している。Y方向についてはインクジェットヘッド21の移動走査は行わないための構成である。ノズル列27Rは、複数のインクジェットヘッド21によるものでよい。そのために、1つのキャリッジに複数のインクジェットヘッド21が搭載されている。また、ノズル列27Rは一直線上である必要はなく、インクジェットヘッド21ごとのX方向の位置がずれていてもよい。
【0019】
以上のように本実施形態において第1メンテナンス部31による複数種のメンテナンス機能とは、布によるノズル面の払拭機能、非接触ブレードによる払拭機能、廃液桶へのパージ機能である。
第1メンテナンス部31は、全キャリッジ2A,2B,2C,2D,2E分の布ワイプ部31a、非接触ワイプ部31b、第1廃液桶31cを有する。
【0020】
一方、第2メンテナンス部32は、上記の複数種のメンテナンス機能のうち一部のメンテナンス機能のみを所定のキャリッジを対象に実現する構成を有する。本実施形態では、「一部のメンテナンス機能」は、インクジェットヘッド21のノズル27からインクを廃インクとして吐出して捨てるパージ機能である。「所定のキャリッジ」は、特定種類のインク用に適用されたインクジェットヘッド21のキャリッジ2Eである。
【0021】
図3に示すように第1廃液桶31cは、ノズル列27Rを構成する全ノズルから同時に廃インクを受ける長さを有する。
これに対し第2廃液桶32aは、
図5に示すようにノズル列27Rを構成する全ノズルから同時に廃インクを受ける長さに満たず、ノズル列27Rのうち一部のノズルからの廃インクを受ける長さを有する。すなわち、第2廃液桶32aの廃インクを受ける受け口のY方向長さは、ノズル列27RのY方向長さより短い。
図4、
図5に示すように第2廃液桶32aは、ノズル列27Rの方向Yに沿って記録面SS対向領域101の一端から他端及び第1廃液桶31cの上方領域まで移動可能にされている。
制御部40は次のように第2メンテナンス部32によるメンテナンス動作の制御を実行する。すなわち、制御部40は、第2メンテナンス部32を制御して第2廃液桶32aを記録面対向領域101においてノズル列27Rの下方でノズル列27Rの方向Yに沿って移動させつつ、キャリッジ2Eに対応したヘッド駆動部25を制御して順次に第2廃液桶32aの上方に位置するノズル27からインクを廃インクとして第2廃液桶32aに吐出させる(以下「順次パージ」という。)。これにより、ノズル列27Rを構成する全ノズルからの廃インクを第2廃液桶32aに回収させる。その後、第2廃液桶32aを第1廃液桶31cの上方領域まで移動させて、第2廃液桶32aに回収した廃インクを第1廃液桶31cに受け渡す。
廃インクを受け渡す動作としては、例えば、第2廃液桶32aの底部に設けられた排液口の開閉弁を開ける動作により実現し、第2廃液桶32aが第1廃液桶31cの上方に無い時は、当該開閉弁を閉めておく。
【0022】
以上のようにして記録面対向領域101に配置されたインクジェットヘッド21のメンテナンスを、第2メンテナンス部32により実行可能にされている。
また、第2メンテナンス部32は、第1メンテナンス部31に含まれず、第1メンテナンス部31から独立した構成である。すなわち、第2廃液桶32aが他の廃液桶に合体して第1廃液桶31cに成るものではない。第1廃液桶31cは、第2廃液桶32aを必要とすることなく、全体が構成されている。したがって、第1廃液桶31cを複雑化することなく、第2廃液桶32aを増設することが容易である。
【0023】
制御部40は、第1メンテナンス部31によるメンテナンス動作の実行時に、キャリッジ2A,2B,2C,2D,2Eを、
図3に示すように記録面対向領域101において記録動作時の位置(実線)から第1メンテナンス高さh1に上昇させる。その上で、記録面対向領域101から退避領域102に移動させる。さらに制御部40は、第1廃液桶31cへのパージを実行させ、その後、キャリッジ2A,2B,2C,2D,2Eを記録面対向領域101側に移動させつつ、非接触ワイプ部31bによる払拭、布ワイプ部31aによる払拭を実行させ、キャリッジ2A,2B,2C,2D,2Eを記録面対向領域101に戻して、第1メンテナンス部31によるメンテナンス動作を完了する。
【0024】
制御部40は、第2メンテナンス部32によるメンテナンス動作の実行時には、キャリッジ2Eを、記録面対向領域101において第1メンテナンス高さh1より高い第2メンテナンス高さh2にして、第2廃液桶32aをノズル27下に配置にする。そして、上述の順次パージの制御を実行する。
キャリッジ2Eを第1メンテナンス高さh1より高い第2メンテナンス高さh2にすることにより、記録面対向領域101において第2メンテナンス部32に係る構成(第2廃液桶32a)をノズル27下に配置にするスペースを確保することが容易である。
【0025】
(タイミング制御)
次に、第1メンテナンス部31によるメンテナンス動作と、第2メンテナンス部32によるメンテナンス動作の実行タイミングの制御につき説明する。
【0026】
(タイミング制御方法1)
図6のフローチャートを参照する。
一つの方法として、制御部40は、キャリッジ2Eに搭載されるインクジェットヘッド21に関し、所定の条件に基づきノズル27からの不吐出時間を計測する(ステップS1)。不吐出時間は、記録動作に対する待機中のほか、記録動作が実行されてもそのノズル27に関してはインクを吐出しなかったときに経過する。制御部40は、例えば所定の条件として、ヘッド単位で不吐出のままである限り不吐出時間を計測し、そのうち最長の時間をキャリッジ2Eにおける不吐出時間とする。ヘッド単位で不吐出の条件としては、そのヘッドの全ノズルが不吐出である、そのヘッドの50%以上のノズルが不吐出である、そのヘッドに1つでも不吐出のノズルがある等の条件を設定する。
制御部40は、記録動作に対する待機中に入れば(ステップS2でYES)、キャリッジ2Eにおける不吐出時間が第1の閾値T1を超えたか否か(ステップS3)、及び第2の閾値T2を超えたか否か(ステップS4)を判断する。但し、T1<T2
制御部40は、ステップS3でYES、ステップS4でNOの場合、第2メンテナンス部32によるメンテナンス動作を実行させて(ステップS5)、当該計測をリセットする(ステップS7)。
制御部40は、ステップS3でYES、ステップS4でYESの場合、第1メンテナンス部31によるメンテナンス動作を実行させて(ステップS6)、当該計測をリセットする(ステップS7)。
以上により、時間のかかる第1メンテナンス部31の頻度を低く抑えることができ、記録作業の効率を向上する。
【0027】
(タイミング制御方法2)
図7のフローチャートを参照する。
他の方法として、制御部40は、記録動作に対する待機時間を計測し(ステップS11,S12)、当該計測時間が所定時間Tを超える場合に(ステップS13でYES)、第2メンテナンス部32によるメンテナンス動作を実行させて(ステップS14)、当該計測をリセットする(ステップS15)。
待機時間が所定時間より長い場合に、第2メンテナンス部32によるメンテナンス動作を入れることで、時間のかかる第1メンテナンス部31の頻度を低く抑えることができ、記録作業の効率を向上する。
【0028】
以上説明したように本実施形態のインクジェット記録装置よれば、第1メンテナンス部31を備えることで複数種のメンテナンス機能を実現できる。さらに第2メンテナンス部31を備えることで、メンテナンスの時間割合を抑えて記録作業の効率を向上することができる。
以上の実施形態においては、第2廃液桶32aの待機位置を、記録面対向領域101からY方向に退避した位置(搬送ドラム16の周面対向領域からも退避した位置)とし、順次パージを併用することで、第2廃液桶32aのY方向長さを短く抑えて機体の大型化を抑えた。これに拘わらず、第2廃液桶32aの待機位置を、
図2、
図4においてキャリッジ2Eの右方等とし、搬送ドラム16の周面対向領域内に配置してもよい。この場合、第2廃液桶32aについても、ノズル列27Rを構成する全ノズルから同時に廃インクを受ける長さとして、順次パージでなく、同時パージを採用してもよい。
また以上の実施形態に拘わらず、第1メンテナンス部32の対象である所定のキャリッジを、一のキャリッジでなく、全キャリッジとする実施形態、全キャリッジに満たない複数のキャリッジとする実施形態を実施してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 インクジェット記録装置
2(2A,2B,2C,2D,2E) キャリッジ
15 上流側搬送ローラー
16 搬送ドラム
17 下流側搬送ローラー
21 インクジェットヘッド
27 ノズル
27R ノズル列
30 キャリッジ駆動部
31 第1メンテナンス部
31a 布ワイプ部
31b 非接触ワイプ部
31c 第1廃液桶
32 第2メンテナンス部
32a 第2廃液桶
40 制御部
41 CPU
101 記録面対向領域
102 退避領域
S 記録媒体
SS 記録面