IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用アームレスト 図1
  • 特許-車両用アームレスト 図2
  • 特許-車両用アームレスト 図3
  • 特許-車両用アームレスト 図4
  • 特許-車両用アームレスト 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】車両用アームレスト
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/00 20060101AFI20240402BHJP
   B60R 5/04 20060101ALI20240402BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20240402BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B60N3/00 C
B60R5/04 Z
B60J5/00 501A
B60R13/02 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020031151
(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2021133797
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】二井 孝彰
(72)【発明者】
【氏名】牧野 智広
(72)【発明者】
【氏名】岡田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】野上 貴司
(72)【発明者】
【氏名】安田 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】大島 航輝
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-263165(JP,A)
【文献】特開2007-083899(JP,A)
【文献】特開2005-053291(JP,A)
【文献】特開2011-011578(JP,A)
【文献】特開2010-137681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
B60R 13/02
B60N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに設けられ、前記車両の車室内に向けて突設される車両用アームレストであって、
前記車両の乗員の腕を支持可能な第1面と、前記第1面と反対側に形成される第2面と、を有し、前記車両用アームレストの基材となるベース部と、
前記ベース部に複数設けられ、前記車両の前後方向に延び、前記第1面から前記第2面まで貫通する第1貫通孔と、
前記第1貫通孔と前記車両の前後方向で隣り合った位置に設けられ、前記第1面または前記第2面の少なくともいずれか一方の面から他方の面に向けて切り欠いてなる凹部と
を備え
前記凹部は、
前記第1面に設けられる第1凹部と、
前記第2面に設けられる第2凹部と、
を含み、
前記第1凹部は、前記第1凹部の最も深い位置である第1最深部から一方の前記第1面の切り欠きが形成される起点に向かって傾斜する第1傾斜部と、前記第1最深部から前記第1傾斜部と異なる方向に延びる第1壁部と、を有しており、
前記第2凹部は、前記第2凹部の最も深い位置である第2最深部から他方の前記第2面の切り欠きが形成される起点に向かって傾斜する第2傾斜部と、前記第2最深部から前記第2傾斜部と異なる方向に延びる第2壁部と、を有しており、
前記第1壁部と、前記第2壁部は、車幅方向の断面視で一直線上に設けられ、
前記第1最深部は、前記第2最深部よりも前記第1面側に設けられ、
前記第2最深部は、前記第1最深部よりも前記第2面側に設けられる、
車両用アームレスト。
【請求項2】
前記凹部は、前記凹部の最深部から凹部が設けられた面の切り欠きが形成される起点に向けて傾斜する傾斜部を有する、
請求項1に記載の車両用アームレスト。
【請求項3】
前記ドアの車室内側にはドアトリムが設けられ、
前記車両用アームレストは、前記ベース部に設けられ、前記ベース部を前記ドアトリムに取り付けるボス部をさらに備え、
前記ボス部は、前記第1面の上面視で前記第1貫通孔と車幅方向に重なる位置に設けられる、
請求項1または2に記載の車両用アームレスト。
【請求項4】
前記第1貫通孔および前記凹部のいずれか一つは、前記第1面の前記車幅方向の中央線を通る、
請求項1からのいずれか1項に記載の車両用アームレスト。
【請求項5】
前記ベース部に設けられ、前記車両の車幅方向に延び、前記第1面から第2面までを貫通する第2貫通孔をさらに備え、
前記第2貫通孔は、前記第1貫通孔と、前記凹部との間に設けられる、
請求項1からのいずれか1項に記載の車両用アームレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアに設けられ、車両の車室内に向けて突設する車両用アームレストに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のドアに設けられる車両用アームレストが知られている(例えば特許文献1参照)。このような車両用アームレストは、車両の側面に対する衝突(以下、側突と記す)が発生したときに展開するサイドエアバッグによって押圧される。
【0003】
特許文献1の車両用アームレストは、車両のドアの車室内側に固定されるドアトリムから車室内側に向けて突出して形成される。また、特許文献1の車両用アームレストは、上面を有し、上面の裏側に強度を低減させる3条の溝部が形成される。特許文献1の車両用アームレストは、サイドエアバッグから押圧されることによって、この溝部が潰れる。このように溝部が潰れることで、車両用アームレストが変形し、着座している乗員とアームレストの間にスペースが生まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-83899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の車両用アームレストでは、3条の溝部は、サイドエアバッグが展開した場合、サイドエアバッグが押圧する部位からの距離が略均一になるように、車室外側に向けて、中央部が膨らんだ曲線状に形成される。しかし、車両が側突した場合、ドアは変形するため、サイドエアバッグが押圧する部位は必ずしも一定ではない。このため、特許文献1の車両用アームレストでは、溝部が潰れず、車両用アームレストが変形しないおそれがある。
【0006】
また、車両用アームレストは、乗員の腕を支える機能がある。このため、車両用アームレストは、乗員の腕が置かれた場合であっても車両用アームレストの上面が撓まないように、剛性が必要となる。
【0007】
本発明の課題は、剛性の低下を抑制しながら、車両が側突した場合に変形を促進可能な車両用アームレストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両用アームレストは、車両のドアに設けられ、車両の車室内に向けて突設される車両用アームレストである。車両用アームレストは、ベース部と、第1貫通孔と、凹部と、を備える。ベース部は、車両の乗員の腕を支持可能な第1面と、第1面と反対側に形成される第2面と、を有し、車両用アームレストの基材となる。第1貫通孔は、ベース部に複数設けられ、車両の前後方向に延び、第1面から第2面まで貫通する。凹部は、第1貫通孔と車両の前後方向で隣り合った位置に設けられ、第1面または第2面の少なくともいずれか一方の面から他方の面に向けて切り欠いてなる。
【0009】
この車両用アームレストによれば、例えば、車両が側突したときに展開するサイドエアバッグによって車両用アームレストが車幅方向に押圧された場合、第1貫通孔によって車両用アームレストが車幅方向に狭まる変形が促進される。第1貫通孔によって車両用アームレストの変形が促進されると、第1貫通孔と隣り合った凹部に圧力が作用し、作用した圧力によって凹部付近が剪断される。この結果、車両用アームレストの変形が促進される。一方、凹部は第1貫通孔よりも剛性が高く、第1貫通孔に隣り合って凹部を設けることで、車両用アームレストの剛性の低下が抑制できる。これによって、第1面で乗員の腕を支持する場合、第1面が撓むことを防止できる。すなわち、この構成によれば、剛性の低下を抑制しながら、車両が側突した場合に変形を促進可能な車両用アームレストを提供できる。
【0010】
凹部は、傾斜部を有してもよい。傾斜部は、凹部の最深部から凹部が設けられた面の切り欠きが形成された起点に向けて傾斜してもよい。
【0011】
この構成によれば、車両用アームレストの変形が促進されると、作用した圧力によって凹部付近が剪断される。凹部付近が剪断されると、剪断された部分の一端が、傾斜部に乗り上げる。一端が傾斜部に乗り上げると、凹部が設けられた面に向かって誘導される。この結果、車両用アームレストが車幅方向に狭まる変形がさらに円滑に行われる。
【0012】
凹部は、第1凹部と、第2凹部と、を含んでもよい。第1凹部は、第1傾斜部を有してもよい。第2凹部は、第2傾斜部を有してもよい。第1傾斜部は、第1凹部の最も深い位置である第1最深部から一方の第1面の切り欠きが形成される起点に向かって傾斜してもよい。第2傾斜部は、第2凹部の最も深い位置である第2最深部から他方の第2面の切り欠きが形成される起点に向かって傾斜してもよい。
【0013】
この構成によれば、凹部付近の剪断された部分の一端が第1傾斜部または第2傾斜部に乗り上げる。また、凹部付近の剪断された部分の他端は、第1傾斜部または第2傾斜部のうち一端が乗り上げた傾斜部と異なる傾斜部に接する。これによって、凹部付近の剪断された部分の一端および他端の双方が第1傾斜部および第2傾斜部によって誘導される。また、第1傾斜部と第2傾斜部は、一方向に向けて形成される。これにより、第1傾斜部および第2傾斜部の双方が引っ掛かることなく、円滑に凹部付近の剪断された部分の一端および他端を誘導できる。この結果、車両用アームレストが車幅方向に狭まる変形がさらに円滑に行われる。
【0014】
第1凹部は、第1壁部を有してもよい。第2凹部は、第2壁部を有してもよい。第1壁部は、第1最深部から第1傾斜部と異なる方向に延びてもよい。第2壁部は、第2最深部から第2傾斜部と異なる方向に延びてもよい。第1壁部と第2壁部は、車幅方向の断面視で一直線上に設けられてもよい。第1最深部は、第2最深部よりも第1面側に設けられてもよい。第2最深部は、第1最深部よりも第2面側に設けられてもよい。
【0015】
この構成によれば、例えば、車両が側突したときに展開するサイドエアバッグによって車両用アームレストが車幅方向に押圧された場合、圧力が第1壁部および第1傾斜部を伝わって第1最深部に集中する。同様に、圧力は第2壁部および第2傾斜部を伝わって第2最深部に集中する。また、第1最深部は、第2最深部よりも第1面側にあり、第2最深部は、第1最深部よりも第2面側にあるため、第1最深部と第2最深部との間が他の部分に比べて薄肉となる。第1最深部および第2最深部に集中した圧力は、この薄肉の凹部付近を剪断する方向に作用する。このとき、第1壁部と、第2壁部は、車幅方向の断面視で一直線上に設けられるため、剪断する距離が短い。これによって、凹部付近は剪断されやすい。一方、車両用アームレストが車幅方向に押圧されていない場合、第1最深部と第2最深部との間の他の部分に比べて薄肉となる部分によって、車両用アームレストの剛性の低下がさらに抑制できる。
【0016】
ドアの車室内側には、ドアトリムが設けられてもよい。車両用アームレストは、ベース部に設けられ、ベース部をドアトリムに取り付けるボス部をさらに備えてもよい。ボス部は、第1面の上面視で第1貫通孔と車幅方向に見て重なる位置に設けられてもよい。
【0017】
この構成によれば、ボス部からの入力が第1貫通孔に伝わりやすい。これによって、車幅方向の変形がさらに促進されやすい。
【0018】
第1貫通孔および凹部のいずれか一つは、上面の車幅方向の中央線を通ってもよい。
【0019】
この構成によれば、第1貫通孔および凹部のいずれか一つは、上面の車幅方向の中央線を通る。中央線は、サイドエアバッグから受ける圧力がかかる位置と、ドアトリムから受ける圧力がかかる位置の略中央である。このため、第1貫通孔および凹部のいずれか一つは車室内側からの圧力と、車室外側からの圧力を同時に受ける。これによって、アームレストの変形がさらに促進されやすい。
【0020】
車両用アームレストは、第2貫通孔をさら備えてもよい。第2貫通孔は、ベース部に設けられ、車両の車幅方向に延び、第1面から第2面までを貫通してもよい。第2貫通孔は、第1貫通孔と、凹部との間に設けられてもよい。
【0021】
この構成によれば、第2貫通孔が車幅方向に潰れることで、第1貫通孔および凹部に圧力が伝達しやすい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、剛性の低下を抑制しながら、車両が側突した場合に変形を促進可能な車両用アームレストを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態による車両用アームレストの配置を示す図。
図2】本発明の一実施形態による車両用アームレストがドアトリムに取り付けられた状態を示す図および車両用アームレストの表皮を取り外した状態の車両用アームレストの単体の図。
図3】表皮を取り外した状態におけるサイドエアバッグと、車両用アームレストの位置関係を示した上面図および上面図の拡大図。
図4】本発明の第1実施形態における図3のV-V断面図(上段)および側突した場合の変形状態を示す断面図(下段)。
図5】本発明の第2実施形態における図3のV-V断面図(上段)および側突した場合の変形状態を示す断面図(下段)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下明細書において、車両Cの前後方向をQと図面に記し、前方側をFと記す。また、車両Cの左右方向(車幅方向の一例)をPと図面に記し、車両Cの後方からみて右側をRと記す。さらに、車両Cの上下方向をGと図面に記し、上側をUと記す。
【0025】
図1に示すように、車両用アームレスト1は、サイドエアバッグ8を具備する車両Cのドア4に設けられ、シート6に着座した乗員のドア4側の腕を支持する。本実施形態では、車両Cの前方左側のドア4に設けられる車両用アームレスト1を例に説明するが、車両用アームレスト1は、車両Cの各ドアに設けられてもよい。
【0026】
サイドエアバッグ8は、図示しないセンサが車両Cの側突を検知すると、シート6に着座した乗員とドア4との間に展開し、車両Cの乗員が側方から受ける衝撃を低減する。本実施形態では、サイドエアバッグ8は、シート6のドア4側に設けられる。図3に示すように、サイドエアバッグ8が展開した場合、車両用アームレスト1とサイドエアバッグ8とが接触する。
【0027】
図1および図2に示すように、ドア4の車室内側には、ドア4のインナーパネル(図示せず)に固定されるドアトリム2が設けられる。ドアトリム2は、車両Cの車室内側に突設する凸部2aを有する。凸部2aには、図2に示すように、操作パネル開口2bと、車両用アームレスト1が取り付けられる取付開口2cと、が設けられる。操作パネル開口2bには、車両Cのパワーウィンドなどを操作するスイッチが設けられる操作パネル(図示せず)が取り付けられる
【0028】
車両用アームレスト1は、図2に示すように、ドアトリム2の取付開口2cに取り付け可能に設けられ、取付開口2cを覆うことで車室内に向けて突設して設けられる。車両用アームレスト1の少なくとも乗員の腕を支持する面には、ウレタン材料に装飾用の布または皮など材料が貼られた表皮22が設けられる。表皮22は、シート6などの車室内の装飾に合わせた装飾が施され、車両用アームレスト1を取付開口2cに取り付けることで、ドアトリム2を変更することなく、表皮22と車室内の装飾を合わせることができる。本実施形態では、車両用アームレスト1は、少なくとも表皮22が凸部2aよりも車両Cの車室内側に突設し、凸部2aに乗員の腕が接触することを抑制している。
【0029】
図3は、車両用アームレスト1が取り付けられる付近(図2のIV-IV参照)において、ドアトリム2を車幅方向Pに切断した断面図である。さらに、図4の上段(a)は、図3の車両用アームレスト1をV-V部分において車幅方向Pに切断した断面図である。図2図3、および図4に示すように、車両用アームレスト1は、ベース部10と、第1貫通孔12と、第2貫通孔14と、凹部16と、ボス部18と、薄肉部20と、を備える。
【0030】
図2に示すように、ベース部10は、車両用アームレスト1の基材となる部材である。本実施形態では、ベース部10は、ポリプロピレンなどの合成樹脂材料を射出成形することで形成される。ベース部10は、断面視でシート6に向けて延び、乗員の腕を支持する支持部10a(図4参照)と、支持部10aの先端から下方に折れ曲がる側壁部10bと、を有する。ベース部10の支持部10aは、図4に示すように、車両Cの乗員の腕を支持可能な上面(第1面の一例)24と、上面24と上下方向Gの反対側に形成される下面(第2面の一例)26と、を有する。ベース部10の少なくとも上面24には、表皮22が接着される。
【0031】
第1貫通孔12は、図2に示すように、ベース部10の支持部10aに設けられ、車両Cの前後方向Qに延び、上面24から下面26まで貫通する。本実施形態では、第1貫通孔12は、ベース部10の前後方向Qに3個並んで設けられる。しかし、第1貫通孔12は、ベース部10に1個または複数個設けられればよい。第1貫通孔12は、図3に示すように、長手方向がベース部10の上面24の中央付近を通る中央線X1に沿って、前後方向Qに延びる。第1貫通孔12の車幅方向Pの長さは、凹部16の車幅方向Pの長さよりも短い。
【0032】
第2貫通孔14は、図2に示すように、ベース部10の支持部10aに設けられ、車両Cの車幅方向Pに延び、上面24から下面26まで支持部10aを貫通する。第2貫通孔14は、第1貫通孔12と凹部16との間に設けられる。本実施形態では、第2貫通孔14は、図3に示すように、中央線X1を挟んで車幅方向Pに二つ並ぶとともに、これら2つの第2貫通孔14が前後方向Qに2個並んで、合計4個設けられる。しかし、第2貫通孔14は、ベース部10に1個または複数個設けられればよい。第2貫通孔14は、長手方向が車幅方向Pに沿って延びる。第2貫通孔14の車幅方向Pの長さは、凹部16の車幅方向Pの長さよりも長い。また、図3に拡大して示すように、第2貫通孔14のドアトリム2側の端部14aは、第1貫通孔12のドアトリム2側の端部12aおよび凹部16のドアトリム2側の端部16c(図3の破線参照)よりも、車幅方向Pのドアトリム2側に設けられる。同様に、第2貫通孔14の車室内側の端部14aは、第1貫通孔12の車室内側の端部12aおよび凹部16の車室内側の端部16cよりも、車幅方向Pの車室内側に設けられる。
【0033】
凹部16は、図2に示すように、支持部10aの第1貫通孔12と車両Cの前後方向Qで隣り合った位置に設けられる。本実施形態では、図3に拡大して示すように、凹部16は、中央線X1に沿って車両Cの前後方向Qに延びるとともに、上面24および下面26の両方に設けられる。すなわち、図4の上段(a)に示すように、凹部16は、上面24に設けられる第1凹部16aと、下面26に設けられる第2凹部16bとを含む。しかし、凹部16は、上面24または下面26の少なくともいずれか一方または両方に設けられればよい。凹部16は、上面24または下面26から他方の面に向けて深くなる。本実施形態では、第1凹部16aは、車幅方向Pのドアトリム2側も向かうにつれて下面26に向けて深くなる。第2凹部16bは、車幅方向Pの車室内側も向かうにつれて上面24に向けて深くなる。
【0034】
図4(a)に拡大して示すように、凹部16は、傾斜部28を有する。本実施形態では、第1凹部16aは、第1傾斜部28aを有し、第2凹部16bは、第2傾斜部28bを有する。傾斜部28は、凹部16の最も深い位置である最深部30から上面24および下面26のうち凹部16が設けられた面の切り欠きが形成される端部16c(起点の一例)に向けて傾斜する。本実施形態では、第1傾斜部28aは、第1凹部16aの最も深い位置である第1最深部30aから、第1凹部16aが設けられた上面24に向かって車幅方向Pの車室内側にある端部16cまで傾斜する。すなわち、第1凹部16aは、上面24から下面26に向けて切り欠いてなる。凹部16の車幅方向Pの車室内側にある端部16cは、上面24の切り欠きである第1凹部16aが形成される起点である。また、第2傾斜部28bは、第2凹部16bの最も深い位置である第2最深部30bから、第2凹部16bが設けれた下面26に向かってドアトリム2側にある端部16cまで傾斜する。すなわち、第2凹部16bは、下面26から上面24に向けて切り欠いてなる。凹部16の車幅方向Pのドアトリム2側にある端部16cは、下面26の切り欠きである第2凹部16bが形成される起点である。
【0035】
すなわち、第1凹部16aには、車幅方向Pのドアトリム2側へ向かうほど深くなる斜面が形成され、第2凹部16bには、車幅方向Pの車室内側へ向かうほど深くなる斜面が形成される。さらに、本実施形態では、第1最深部30aと凹部16の車室内側の端部16cとを結ぶ第1傾斜部28aと上面24とがなす角度α1は、第2最深部30bと凹部16のドアトリム2側の端部16cとを結ぶ第2傾斜部28bと下面26とがなす角度α2と等しい。すなわち、第1傾斜部28aと、第2傾斜部28bとが同一方向に形成され、互いに平行な面を形成する。
【0036】
第1凹部16aは、第1壁部32aを有する。第2凹部16bは、第2壁部32bを有する。第1壁部32aは、第1最深部30aから第1傾斜部28aと異なる方向に延びる。本実施形態では、第1壁部32aは、上面24と垂直となるように第1最深部30aから延びる。すなわち第1凹部16aは、第1壁部32aと上面24となす角度が直角である直角三角形の形状である。
【0037】
一方、第2壁部32bは、第2最深部30bから第2傾斜部28bと異なる方向に延びる。本実施形態では、第2壁部32bは、下面26と垂直となるように第2最深部30bから延びる。すなわち第2凹部16bは、第2壁部32bと下面26となす角度が直角である直角三角形の形状である。
【0038】
また、本実施形態では、第1最深部30aは、第2最深部30bよりも上面24側に設けられる。第2最深部30bは、第1最深部30aよりも下面26側に設けられる。また、上面24から第1最深部30aまでの深さS1と、下面26から第2最深部30bまでの深さS2は同一であり、第1壁部32aと、第2壁部32bは、上面24および下面26の鉛直線X2(一直線の一例)上に設けられる。すなわち、第2凹部16bの形状は、鉛直線X2上の上面24と下面26との中間点を基準とした第1凹部16aの点対称の形状と一致する。
【0039】
ボス部18は、図3に示すように、ベース部10をドアトリム2に取り付けるために設けられる。より具体的には、ドアトリム2には、ボス部18を挿通可能な挿通穴(図示せず)が設けられ、この挿通穴にボス部18を挿通させて固定することで、ドアトリム2にベース部10が固定され取り付けられる。ボス部18は、図3の拡大図に示すように、上面24の上面視で第1貫通孔12と車幅方向Pに重なる位置に設けられる。
【0040】
薄肉部20は、図4に示すように、上面24または下面26のうち凹部16の設けられた面と反対側の面との間に形成される。本実施形態では、薄肉部20は、第1凹部16aと下面26の間、および、第2凹部16bと上面24の間に形成される。薄肉部20は、上面24と下面26との間に挟まれた支持部10aを形成する肉部34の厚さよりも、厚さが薄い領域であり、凹部16の、ドアトリム2側の端部16cから車室内側の端部16cまでの間の領域である。また、本実施形態では、第1壁部32aと、第2壁部32bは、上面24および下面26の鉛直線X2(一直線の一例)上に設けられるため、第1最深部30aと、第2最深部30bと、の間の薄肉部20の厚みが最も薄い。
【0041】
このように構成された車両用アームレスト1は、図3に示すように、車両Cに側突が発生した場合、ドア4が車室内側へ変形することで発生する車室内側への押圧を受ける。また、車両用アームレスト1は、サイドエアバッグ8が展開することで発生するドアトリム2側への押圧を受ける。すなわち、車両用アームレスト1は、車幅方向Pにドアトリム2側および車室内側の双方から押圧される。このとき、ボス部18はドアトリム2から押圧を受け、上面24の上面視で車幅方向Pに重なる位置に設けられた第1貫通孔12を押圧する。また、第1貫通孔12は、サイドエアバッグ8からも押圧を受ける。第1貫通孔12は中央線X1を通り、中央線X1は、サイドエアバッグ8から受ける圧力がかかる位置と、ドアトリム2から受ける圧力が作用する位置の略中央である。このため、第1貫通孔12は、車室内側からの圧力とドアトリム2側(車室外側)からの圧力を同時に受け、車幅方向Pに狭まる変形が発生する。第2貫通孔14も同様に、車幅方向Pに狭まる変形が発生する。
【0042】
第1貫通孔12および第2貫通孔14が車幅方向Pに狭まる変形が発生すると、凹部16に圧力が作用する。すなわち、図4の上段(a)に示すように、圧力が第1壁部32aおよび第1傾斜部28aを伝わって第1最深部30aに集中する。同様に、圧力は第2壁部32bおよび第2傾斜部28bを伝わって第2最深部30bに集中する。第1最深部30aおよび第2最深部30bに集中した圧力は、薄肉部20のうち最も薄くなる、第1最深部30aおよび第2最深部30bの間を剪断する方向に作用する。第1壁部32aと、第2壁部32bは、車幅方向Pの断面視で鉛直線X2上に設けられるため、剪断する距離が短く、薄肉部20は剪断されやすい。
【0043】
薄肉部20が剪断されると、図4の下段(b)に示すように、剪断された部分の一端40が、第1傾斜部28aに乗り上げる。一方、剪断された部分の他端42は、第2傾斜部28bに接した状態となる。このような状態で、一端40および他端42の双方が第1傾斜部28aおよび第2傾斜部28bによって端部16cに向けて誘導される。また、本実施形態では、第1傾斜部28aと、第2傾斜部28bは、同一方向に形成されるため、第1傾斜部28aおよび第2傾斜部28bの双方が引っ掛かることなく、円滑に一端40および他端42を端部16cに向けて誘導できる。この結果、車両用アームレスト1は、車両Cが側突した場合に車両用アームレスト1が車幅方向Pに狭まる変形を促進できる。
【0044】
一方、車両用アームレスト1が車幅方向Pに押圧されていない場合、第1最深部30aと第2最深部30bとの間の薄肉部20によって、車両用アームレスト1の剛性の低下が抑制できる。これによって、車両用アームレスト1は、上面24の撓みを抑制できる。
【0045】
以上説明した通り、本発明の第1実施形態によれば、剛性の低下を抑制しながら、車両Cが側突した場合に変形を促進可能な車両用アームレスト1を提供できる
【0046】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について、図5を用いて説明する。なお、以下の説明においては、第1実施形態の車両用アームレスト1と異なる点のみ説明する。
【0047】
第2実施形態の車両用アームレスト201では、図5の上段(a)に示すように、第1傾斜部228aは、第1凹部216aの最も深い位置である第1最深部230aから、第1凹部216aが設けられた上面224に向かって車幅方向Pのドアトリム2側にある端部216c(第2実施形態における起点の一例)まで傾斜する。すなわち、第1凹部216aは、上面224から下面226に向けて切り欠いてなる。凹部216の車幅方向Pのドアトリム2側にある端部216cは、上面224の切り欠きである第1凹部216aが形成される起点である。また、図5の上段(a)に拡大して示すように、第2傾斜部228bは、第2凹部216bの最も深い位置である第2最深部230bから第2凹部216bが設けられた下面226に向かって車室内側にある端部216c(第2実施形態における起点の一例)まで傾斜する。すなわち、第2凹部216bは、下面226から上面224に向けて切り欠いてなる。凹部216の車幅方向Pの車室内側にある端部216cは、下面226の切り欠きである第2凹部216bが形成される起点である。
【0048】
すなわち、第1凹部216aには、車幅方向Pの車室内側へ向かうほど深くなる斜面が形成され、第2凹部216bには、車幅方向Pのドアトリム2側へ向かうほど深くなる斜面が形成される。
【0049】
このように構成された車両用アームレスト201では、車両Cに側突が発生した場合、薄肉部220が剪断されると、図5の下段(b)に示すように、剪断された部分の一端240が、第2傾斜部228bに接する。一方、剪断された部分の他端242は、第1傾斜部228aに乗り上げる。これによって、車両用アームレスト201が変形した場合、他端242がドアトリム2側に向けて移動する。このため、車室内にいる乗員に向けて他端242が突出することがない。この結果、車両Cが側突した場合に変形を促進可能でありながらも、車両用アームレスト201の変形によって突出物が発生することも抑制できる。
【0050】
以上説明した通り、本発明の第2実施形態によれば、剛性の低下を抑制しながら、車両Cが側突した場合に変形を促進可能でありながらも、変形による突出物の発生も抑制できる車両用アームレスト201を提供できる。
【0051】
<他の実施形態>
以上、本発明の2つの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0052】
(a)上記第1実施形態および第2実施形態では、凹部16、216が上面24,224および下面26,226の両方に設けられる例を用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。凹部16、216は、上面24、224および下面26,226のいずれか一方に切り欠いて設けられてもよい。
【0053】
(b)上記第1実施形態では、第1傾斜部28aと上面24がなす角度α1および第2傾斜部28bが下面26となす角度α2が同一である例を用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。第1傾斜部28aと第2傾斜部28bが一方向に向いて形成されれば、角度α1と角度α2は、異なる角度であってもよい。
【0054】
(c)上記第1実施形態では、車両用アームレスト1は、ドアトリム2とベース部10を、ボス部18を介して固定する例を用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。車両用アームレスト1は、ドアトリム2と一体成形されてもよい。
【0055】
(d)上記第1実施形態では、第1貫通孔12および凹部16が中央線X1に沿って設けられる例を用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。車両用アームレスト1は、第1貫通孔12および凹部16のうち、少なくともいずれか一つの一部が、上面24の車幅方向Pの中央線X1を通るものであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1,201:車両用アームレスト 2:ドアトリム 4:ドア,
10:ベース部 12:第1貫通孔 14:第2貫通孔
16,216:凹部
16a,216a:第1凹部 16b,216b:第2凹部
16c、216c:端部(起点)
18:ボス部 20,220:薄肉部
24,224:上面(第1面) 26,226:下面(第2面)
28:傾斜部 28a,228a:第1傾斜部 28b,228b:第2傾斜部 30,230:最深部, 30a,230a:第1最深部
30a,230a:第2最深部
32a:第1壁部 32b:第2壁部
40,240:一端 42,242:他端
図1
図2
図3
図4
図5