(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 2/10 20060101AFI20240402BHJP
F04C 15/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
F04C2/10 341H
F04C15/00 L
(21)【出願番号】P 2020044173
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】片岡 慈裕
(72)【発明者】
【氏名】小林 喜幸
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-223365(JP,A)
【文献】特開2011-205875(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083700(WO,A1)
【文献】特開2006-274976(JP,A)
【文献】特開2001-271765(JP,A)
【文献】特開2016-223366(JP,A)
【文献】特開2014-009676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/10
F04C 15/00
H02K 1/00-55/06
H02G 5/00- 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸回りに回転可能なロータを有するモータと、
前記モータの軸方向一方側に連結されるポンプ機構と、
前記モータを収容し軸方向他方側を向く開口部を有するモータハウジングと、
前記モータハウジングの開口部を塞ぐモータカバーと、
を備え、
前記モータは、
前記ロータと径方向に対向するステータと、
前記ステータの軸方向他方側に位置するバスバー
アッシーと、
前記モータカバーと前記バスバーアッシーとの間に配置されるバスバーカバーと、
を有し、
前記バスバー
アッシーは、
前記ステータのコイルと接続される複数のバスバーと、
複数の前記バスバーを保持するバスバーホルダーと、を有し、
前記バスバーホルダーは、前記ステータまたは前記モータハウジング
の軸方向
他方側に接触する第1支持部
を有し、
前記バスバーカバーは、
前記モータカバーの軸方向一方側を向く面と弾性部材を介して対向し、前記モータカバーとの間で前記弾性部材を圧縮する第2支持
部を有する
とともに前記バスバーアッシーを軸方向一方側へ押す、
電動ポンプ。
【請求項2】
前記弾性部材はOリングであり、
前記第2支持部は、軸方向他方側に向かって開口し、前記Oリングを保持する溝部を有する、
請求項
1に記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記弾性部材はOリングであり、
前記第2支持部は、前記バスバー
カバーの軸方向他方側の端面の外周端に位置するテーパー部または段差部である、
請求項
1に記載の電動ポンプ。
【請求項4】
前記弾性部材は、軸方向において前記モータカバーと前記第2支持部との間に位置するばねである、
請求項
1に記載の電動ポンプ。
【請求項5】
前記モータカバーは、軸方向一方側を向く面に、軸方向から見て環状の平坦面からなるシール領域を有し、
前記シール領域は、前記バスバー
カバーの前記第2支持部と前記弾性部材を介して対向し、かつ前記モータハウジングの開口部の端面とシール部材を介して対向する、
請求項1から
4のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項6】
前記モータカバーは、ブリーザを有する、
請求項1から
5のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項7】
前記ロータは、中心軸に沿って延びるシャフトと、前記シャフトに固定されるロータコアとを有し、
前記モータカバーは、前記シャフトを支持するベアリングを保持するベアリング保持部を有する、
請求項1から
6のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項8】
前記モータカバーは、前記モータカバーを軸方向に貫通する貫通孔を有し、
前記モータカバーは、前記貫通孔の軸方向一方側の端部にベアリングを保持し、前記貫通孔の軸方向他方側の端部にブリーザを保持する、
請求項
1から5のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項9】
前記バスバー
カバーは軸方向に沿って延びる筒状であり、
前記ベアリング保持部は、前記バスバー
カバーの径方向内側に位置する、
請求項
7に記載の電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動ポンプとして、ポンプボディに、モータおよびポンプ機構と、モータを制御する制御基板と、を収容する構成が知られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動ポンプにおいて、ポンプボディの開口部を塞ぐ部材は、水および塵の侵入を防ぐためのシール構造を有する。そのため、ポンプボディの1つの開口部に複数の部材が配置される場合、構造が複雑化しやすい。例えば、モータを収容するモータハウジングの開口部には、バスバーユニットと、ベアリングホルダと、モータカバーとが配置される。これらの部材は、他の部材との接続またはハウジングへの固定がなされた上で、軸方向に積み重ねられる。さらに、必要箇所にはシール部材の設置が必要である。これらにより、組み立て作業が煩雑になりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様によれば、中心軸回りに回転可能なロータを有するモータと、前記モータの軸方向一方側に連結されるポンプ機構と、前記モータを収容し軸方向他方側を向く開口部を有するモータハウジングと、前記モータハウジングの開口部を塞ぐモータカバーと、を備える電動ポンプが提供される。前記モータは、前記ロータと径方向に対向するステータと、前記ステータの軸方向他方側に位置するバスバーユニットと、を有する。前記バスバーユニットは、前記ステータまたは前記モータハウジングと軸方向に接触する第1支持部と、前記モータカバーの軸方向一方側を向く面と弾性部材を介して対向し、前記モータカバーとの間で前記弾性部材を圧縮する第2支持部と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の1つの態様によれば、組み立て作業性に優れる電動ポンプが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態の電動ポンプの断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態の電動ポンプの断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態の電動ポンプの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、第1変形例の電動ポンプの断面図である。
【
図5】
図5は、第2変形例の電動ポンプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、電動ポンプの実施形態として、電動オイルポンプについて説明する。実施形態の電動オイルポンプは、車両等に搭載される機器のオイル供給に用いられる。
【0009】
以下で参照する各図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、X軸方向は、
図1に示される中心軸Jの軸方向と平行な方向とする。中心軸Jは、後述するモータ20のシャフト21の中心軸線である。Y軸方向は、X軸と直交する方向のうち、
図1の奥行き方向と平行な方向である。Z軸方向は、X軸方向とY軸方向との両方と直交する方向であり、
図1の上下方向と平行な方向である。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向のいずれにおいても、図中に示される矢印の向く側を+側、反対側を-側とする。
【0010】
以下の説明においては、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(X軸方向)を単に「軸方向」と称する。中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と称する。中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周り(θ方向)を単に「周方向」と称する。
【0011】
また、X軸方向の正の側(+X側)を「フロント側」と称する場合がある。同様に、X軸方向の負の側(-X側)を「リア側」と称する場合がある。フロント側(+X側)は、本発明における軸方向一方側に相当する。リア側(-X側)は、本発明における軸方向他方側に相当する。
【0012】
図1および
図2に示すように、本実施形態の電動オイルポンプ100は、ポンプボディ10と、モータ20と、ポンプ機構30と、制御基板40を有する基板ユニット140と、を備える。
ポンプボディ10は、モータ20を収容するモータハウジング11と、ポンプ機構30を収容するポンプハウジング12と、制御基板40が設置される基板ハウジング13と、を有する。本実施形態の場合、モータハウジング11とポンプハウジング12と基板ハウジング13は、単一の部材の一部である。
【0013】
モータハウジング11は、ポンプボディ10のリア側(-X側)に位置する。モータハウジング11は、軸方向に延びる円筒状である。モータハウジング11は、リア側に開口する凹部からなる第1収容凹部11aを有する。第1収容凹部11aは、後述するベアリングホルダ26によりリア側から塞がれる。
【0014】
ポンプハウジング12は、ポンプボディ10のフロント側(+X側)に位置する。ポンプハウジング12は、フロント側に開口する凹部からなる第2収容凹部12aを有する。電動オイルポンプ100は、第2収容凹部12aをフロント側から塞ぐポンプカバー12bを有する。ポンプカバー12bは、軸方向から見て円形の板状部材である。ポンプカバー12bは、ポンプハウジング12にねじ止めされる。
【0015】
基板ハウジング13は、モータハウジング11およびポンプハウジング12の側面に位置する。基板ハウジング13は、モータハウジング11およびポンプハウジング12の図示下側(-Z側)に位置する。基板ハウジング13は、径方向外側から見て概略矩形状である。基板ハウジング13は、ポンプボディ10の図示下側に向かって開口する第3収容凹部13aを有する。基板ハウジング13には、後述する基板ユニット140が図示下側から装着される。
【0016】
ポンプボディ10は、内部に、第1貫通孔10aと、第2貫通孔10bとを有する。第1貫通孔10aは、モータハウジング11の第1収容凹部11aと、ポンプハウジング12の第2収容凹部12aとを軸方向に繋ぐ。第2貫通孔10bは、モータハウジング11の第1収容凹部11aと、基板ハウジング13の第3収容凹部13aとを径方向に繋ぐ。
【0017】
モータ20は、シャフト21を有するロータ22と、ステータ23と、バスバーユニット120と、ベアリングホルダ26と、第1ベアリング27および第2ベアリング28と、を備える。バスバーユニット120は、バスバーアッシー24と、バスバーカバー25とを有する。ベアリングホルダ26は、モータハウジング11の開口を塞ぐ。本実施形態において、ベアリングホルダ26は、モータカバーを兼ねる。
【0018】
シャフト21は、中心軸Jに沿って延びる円柱状の部材である。ロータ22は、
図2に示すように、シャフト21と、シャフト21の外周面に固定されるロータコア22aと、ロータコア22aに固定される複数のロータマグネット22bとを有する。ロータマグネット22bは、シャフト21を囲む円環状のマグネットであってもよい。
【0019】
シャフト21は、第1ベアリング27および第2ベアリング28によって、軸回りに回転可能に支持される。第1ベアリング27は、シャフト21のロータコア22aよりもリア側の部分を支持する。第2ベアリング28は、シャフト21のロータコア22aよりもフロント側の部分を支持する。シャフト21は、第2ベアリング28の内孔を通ってフロント側へ突出する。シャフト21のフロント側の端部は、ポンプ機構30に連結される。
【0020】
ステータ23は、ロータ22を囲む円環状のステータコア23aと、ステータコア23aのティースに装着されるインシュレータ23bと、インシュレータ23bを介してティースに巻き回されるコイル23cと、を備える。ステータコア23aは、円筒状のモータハウジング11の内周面に固定される。
【0021】
バスバーユニット120は、ステータ23とベアリングホルダ26との間に位置する。バスバーユニット120は、軸方向に並んで配置されるバスバーアッシー24とバスバーカバー25とを有する。バスバーアッシー24は、ステータ23と軸方向に対向する。バスバーカバー25は、ベアリングホルダ26と軸方向に対向する。
【0022】
バスバーアッシー24は、
図2および
図3に示すように、バスバー24a、24b、24cと、バスバー24a~24cを保持する樹脂製のバスバーホルダ24dとを有する。3本のバスバー24a~24cは、バスバーホルダ24dにインサート成形される。バスバー24a~24cの固定方法は、ねじ止めや溶着、またはスナップフィットであってもよい。
【0023】
図1に示すように、バスバーアッシー24は、ステータ23のリア側に位置する。バスバーアッシー24は、モータハウジング11の第1収容凹部11aにリア側から挿入される。3本のバスバー24a~24cの一方の端部は鉤形である。バスバー24a、24b、24cの鉤形の端部は、コイル23cからリア側へ延びるコイル線23dとそれぞれ接続される。バスバー24a~24cの他方の端部は、バスバーホルダ24dの基板ハウジング13側(図示下側)の端部に位置する。バスバーホルダ24dの下部に位置するバスバー24a、24b、24cの端部は、後述するジョイントバスバー51a、51b、51cにそれぞれ接続される。
【0024】
バスバーカバー25は、バスバーアッシー24のリア側に位置する。バスバーカバー25は、第1収容凹部11aに、リア側から挿入される。バスバーカバー25は、軸方向から見て円環状である。バスバーカバー25は、バスバーアッシー24をリア側から覆う。バスバーカバー25は、リア側を向く面に、軸方向から見て円環状の溝部25aを有する。溝部25aの内部に、Oリングからなる弾性部材25bが配置される。
【0025】
ベアリングホルダ26は、バスバーユニット120のリア側に位置する。ベアリングホルダ26は、中心軸Jに沿って延びる円筒部26aと、円筒部26aの外周面から径方向外側に広がるホルダ本体26bとを有する。円筒部26aは、軸方向の両側に開口する。円筒部26aのフロント側の開口部に第1ベアリング27が挿入される。円筒部26aは、内周面の一部にフロント側を向く段差面26cを有する。第1ベアリング27は、段差面26cによりリア側への移動を制限される。
【0026】
ベアリングホルダ26は、径方向において、バスバーユニット120の外側まで広がる。ベアリングホルダ26は、バスバーユニット120をリア側から覆う。ベアリングホルダ26は、バスバーユニット120の径方向外側において、ポンプボディ10にねじ止めされる。ベアリングホルダ26のフロント側を向く面は、バスバーカバー25のリア側を向く面と軸方向に対向する。
【0027】
図2および
図3に示すように、ベアリングホルダ26は、フロント側を向く面に、軸方向から見て環状の平坦面からなるシール領域26Aを有する。モータハウジング11は、第1収容凹部11aを囲む端面に、リア側に向かって開口する溝部26dを有する。溝部26dは軸方向から見て円環状である。溝部26dの内部に、Oリングからなるシール部材29が配置される。シール部材29は、ベアリングホルダ26のシール領域26Aと、モータハウジング11の開口部の端面11Aとの間を気密に封止する。
【0028】
ベアリングホルダ26が第1収容凹部11aをリア側から塞ぐことにより、弾性部材25bは、ベアリングホルダ26とバスバーカバー25とによって軸方向に挟まれる。弾性部材25bは、バスバーカバー25とベアリングホルダ26とにより軸方向に圧縮される。弾性部材25bは、バスバーカバー25とベアリングホルダ26に対して、両者を軸方向に遠ざける弾性力を作用させる。ベアリングホルダ26はモータハウジング11に固定されているため、弾性部材25bの弾性復帰力は、バスバーカバー25をフロント側へ押し込む方向に作用する。
【0029】
バスバーカバー25は、バスバーアッシー24とベアリングホルダ26との間に挿入されるスペーサとして機能する。バスバーカバー25は、弾性部材25bによってフロント側へ押されることにより、バスバーアッシー24をフロント側へ押す。バスバーアッシー24のフロント側の端部24eは、モータハウジング11のリア側を向く段差面11bに突き当てられる。この構成により、バスバーアッシー24とバスバーカバー25とが、軸方向において固定される。バスバーアッシー24の端部24eは、ステータ23に突き当てられてもよい。スペーサとしてのバスバーカバー25を備えることで、弾性部材25bが周方向において均一に圧縮される。これにより、バスバーアッシー24を押す力が周方向において均一になる。バスバーアッシー24を安定に固定できる。
【0030】
以上に説明したように、本実施形態のバスバーユニット120において、バスバーアッシー24は、ステータ23またはモータハウジング11と軸方向に接触する第1支持部121を有する。本実施形態の場合、第1支持部121は、バスバーアッシー24の端部24eである。
また、バスバーカバー25は、ベアリングホルダ26(モータカバー)のシール領域26Aと弾性部材25bを介して対向し、ベアリングホルダ26との間で第1シール部材を圧縮する第2支持部122を有する。
【0031】
上記の構成によれば、モータハウジング11の第1収容凹部11aにバスバーユニット120を収容した状態で、ベアリングホルダ26をモータハウジング11に固定するだけで、バスバーユニット120をベアリングホルダ26とステータ23との間で安定に固定できる。バスバーユニット120を、モータハウジング11またはステータ23に締結する必要がなくなるので、電動オイルポンプ100の組み立て作業性が向上する。
【0032】
また、バスバーユニット120には、モータハウジング11に対して固定するための機構が不要になるので、バスバーユニット120の直径を小さくできる。これにより、モータハウジング11の直径を小さくでき、電動オイルポンプ100を小型化できる。
【0033】
本実施形態では、Oリングからなる弾性部材25bを用いる。この構成によれば、ベアリングホルダ26とバスバーカバー25とに対して、周方向において均一に弾性力が付与される。また、電動オイルポンプ100の組み立て時に、作業者は、バスバーカバー25に弾性部材25bを設置しやすい。
【0034】
弾性部材25bは、Oリング以外の弾性部材であってもよい。例えば、弾性部材25bとして、半球形または錐台形の弾性体が中心軸J回りの周方向に複数個配置される構成としてもよい。さらに、弾性部材25bは、ばねであってもよい。例えば、弾性部材25bとして、コイルばね、板ばねなどを、バスバーカバー25Aとベアリングホルダ26との間に配置し、コイルばねまたは板ばねの弾性力を軸方向に作用させてもよい。弾性部材25bの種類または形状が変更される場合には、弾性部材25bの態様に合わせて溝部25aの形状等も変更される。
【0035】
本実施形態において、バスバーユニット120は、軸方向に並んで配置される第1部材(バスバーアッシー24)と第2部材(バスバーカバー25)とを有する。バスバーユニット120を2つの部材からなる構成とすることで、バスバーを保持する機能を有する第1部材と、モータハウジング11内のスペーサとして機能する第2部材のそれぞれを最適な形状で設計しやすくなる。また、特に第1部材であるバスバーアッシー24において、バスバーとコイルとの接続の作業性が向上する。
【0036】
なお、バスバーユニット120は、バスバーカバー25とバスバーアッシー24とが固着された部材であってもよい。例えば、バスバーカバー25とバスバーホルダ24dとを、単一部品の一部として構成してもよい。バスバーカバー25とバスバーアッシー24とを、接着や溶着、ねじ止めなどの方法によって連結してもよい。
【0037】
本実施形態では、
図2に示すように、ベアリングホルダ26のシール領域26Aは、弾性部材25bを介してバスバーカバー25のリア側を向く面と対向し、シール部材29を介してモータハウジング11の開口部の端面11Aと対向する。この構成によれば、弾性部材25bとシール部材29とが径方向に接近して配置される。ベアリングホルダ26は、シール部材29のすぐ外側においてモータハウジング11にねじ締結されるので、上記構成により、弾性部材25bが、ベアリングホルダ26を固定しているねじ締結部の近くに配置される。これにより、弾性部材25bに対して軸方向に圧縮する力を作用させやすくなる。これにより、バスバーユニット120をモータハウジング11内において安定に固定できる。シール領域26Aを1回の加工で形成できるため、製造の工数を削減できる。
【0038】
円筒部26aのリア側の端部に、ブリーザ26eが挿入される。すなわち、電動オイルポンプ100では、モータカバーとして機能するベアリングホルダ26がブリーザ26eを有する。この構成によれば、ブリーザ26eがモータハウジング11に設置される構成と比較して、製造が容易になり、組み立て作業性が向上する。
【0039】
ブリーザ26eは、ベアリングホルダ26の内外に空気を流通させる。ベアリングホルダ26の内側の空間は、円筒部26aを介して第1収容凹部11aの内部に繋がる。第1収容凹部11aは、第2収容凹部12aおよび第3収容凹部13aと繋がる。したがって、ブリーザ26eは、ポンプボディ10の内部空間と、外部空間との間で空気を流通させる。
【0040】
電動オイルポンプ100では、第1ベアリング27を保持するベアリングホルダ26がモータカバーとして機能する構成であることにより、モータカバーとベアリングホルダが別部品である構成と比較して、製造が容易であり、組み立て作業性が向上する。
さらに、電動オイルポンプ100では、モータカバーとして機能するベアリングホルダ26が、ベアリングホルダ26を軸方向に貫通する貫通孔を有する円筒部26aを有しており、円筒部26aのリア側の端部にブリーザ26eを保持し、円筒部26aのフロント側の端部に第1ベアリング27を保持する。この構成によれば、ベアリングホルダ26において、第1ベアリング27とブリーザ26eとが軸方向に並ぶので、第1収容凹部11aの内部において、第1ベアリング27の周囲のスペースを有効に利用できる。電動オイルポンプ100の大型化を抑制できる。
【0041】
第2ベアリング28は、第1収容凹部11aと第2収容凹部12aとを接続する第1貫通孔10aに、リア側から挿入される。第1貫通孔10aの内部には、オイルシール15と、固定リング16と、ウェーブワッシャ17と、第2ベアリング28とが、フロント側から順に配置される。
【0042】
第1貫通孔10aは、内部に複数の段差を有する段付き孔である。第1貫通孔10aは、内部に、いずれもリア側を向く第1段差面10cおよび第2段差面10dを有する。したがって、第1貫通孔10aの内径は、フロント側に向かうに従って、上記段差を通過するごとに小さくなる。オイルシール15は、軸方向において第1段差面10cと固定リング16との間に位置する。固定リング16は、第2段差面10dにリア側から突き当てられる。固定リング16は、リア側を向く面によってウェーブワッシャ17を支持する。ウェーブワッシャ17は、第2ベアリング28の外輪をフロント側からリア側に向かって押す。
【0043】
シャフト21は、第2ベアリング28、ウェーブワッシャ17、固定リング16、およびオイルシール15の内孔に通される。シャフト21のフロント側の端部は、第1貫通孔10aを通り抜けて第2収容凹部12a内に達する。
【0044】
ポンプ機構30は、シャフト21のフロント側の端部に連結されるインナーロータ31と、インナーロータ31を径方向外側から囲むアウターロータ32とを有する。インナーロータ31およびアウターロータ32は、第2収容凹部12aとポンプカバー12bとの間に収容される。インナーロータ31およびアウターロータ32は、それぞれトロコイド歯形を有する。すなわち、ポンプ機構30は、トロコイドポンプである。
【0045】
基板ユニット140は、制御基板40と、制御基板40を径方向外側から保持する基板ホルダ141と、を備える。
【0046】
基板ホルダ141は、基板ハウジング13側(+Z側)に向かって開口する箱形の部材である。制御基板40は、基板ホルダ141の図示上側を向く開口部に固定される。基板ホルダ141は、本実施形態の場合、樹脂製である。基板ホルダ141は、複数の金属端子141aがインサート成形されたコネクタ141bと、複数のジョイントバスバー51a~51cがインサート成形されたバスバー支持部141cと、を有する。
【0047】
コネクタ141bの複数の金属端子141aは、制御基板40のフロント側の端部に接続される。ジョイントバスバー51a~51cは、制御基板40のリア側の端部に接続される。
【0048】
バスバー支持部141cは、基板ホルダ141の一部であり、樹脂からなる。バスバー支持部141cは、基板ホルダ141のリア側の端部からモータ20側(図示上側)へ突出する。ジョイントバスバー51a~51cは、制御基板40との接続位置からリア側へ延びてバスバー支持部141c内に挿入される。ジョイントバスバー51a~51cは、バスバー支持部141c内を径方向に延び、バスバー支持部141cの先端からモータ20側へ突出する。
【0049】
ジョイントバスバー51a~51cは、モータ20と制御基板40とを接続する。ジョイントバスバー51a~51cおよびバスバー支持部141cは、第3収容凹部13aと第1収容凹部11aとを繋ぐ第2貫通孔10bに、径方向外側から挿入される。ジョイントバスバー51a~51cの先端は、第1収容凹部11a内に位置し、軸方向から見てバスバーアッシー24と重なる。ジョイントバスバー51a~51cは、バスバーアッシー24のバスバー24a~24cにねじ止めされる。これにより、制御基板40とモータ20とが、ジョイントバスバー51a~51cを介して電気的に接続される。
【0050】
基板ユニット140は、制御基板40をモータ20側に向けた状態で、ポンプボディ10の基板ハウジング13に固定される。本実施形態の場合、基板ユニット140の基板ホルダ141が、基板ハウジング13にねじ止めされる。制御基板40は、ポンプボディ10と基板ホルダ141との間に封入される。
【0051】
本実施形態の電動オイルポンプ100では、制御基板40は、モータ20の側面に沿って配置される。そして、ポンプボディ10の第2貫通孔10bの内部に位置し、モータ20と制御基板40とを電気的に接続するジョイントバスバー51a、51b、51cを有する。この構成によれば、制御基板40の板面が径方向を向いており、モータ20と制御基板40とを、ジョイントバスバー51a~51cによって径方向に接続するので、制御基板40が径方向に大きく張り出すことがない。これにより、電動オイルポンプ100の大型化を抑制できる。
また、金属の板材からなるジョイントバスバー51a~51cを用いるので、ポンプボディ10の内部における接続がしやすい。本実施形態の電動オイルポンプ200は、効率よく製造可能である。
【0052】
また本実施形態の電動オイルポンプ100は、制御基板40と基板ホルダ141とジョイントバスバー51a~51cとが、1つの部品として組み立てられた基板ユニット140を備える。この構成によれば、基板ユニット140を基板ハウジング13に装着し、ジョイントバスバー51a~51cとバスバー24a~24cとを接続することで、制御基板40を取り付けることができる。本実施形態の電動オイルポンプ100は、少ない工数で効率よく製造可能である。
【0053】
(変形例)
本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。
【0054】
上記実施形態では、バスバーカバー25とベアリングホルダ26との間に位置する弾性部材25bが、バスバーカバー25の溝部25a内に配置される構成としたが、弾性部材25bの位置は変更可能である。以下、弾性部材25bの配置を変更した構成を、第1変形例および第2変形例として説明する。
【0055】
図4は、弾性部材25bの配置の第1変形例を示す電動オイルポンプ100の部分断面図である。
第1変形例の電動オイルポンプ100は、バスバーユニット120Aを備える。バスバーユニット120Aは、バスバーアッシー24と、バスバーカバー25Aとを有する。バスバーカバー25Aは、バスバーアッシー24とベアリングホルダ26との間に位置する。
【0056】
バスバーカバー25Aは、リア側(-X側)を向く面の外周端の角部に、段差部25cを有する。段差部25cは軸方向から見て円環状である。段差部25cは、リア側を向く面と、径方向外側を向く面とを有する。段差部25cの内部に、Oリングからなる弾性部材25bが配置される。
【0057】
第1変形例においても、弾性部材25bは、バスバーカバー25Aとベアリングホルダ26との間で軸方向に圧縮される。弾性部材25bの弾性復帰力により、バスバーカバー25Aがフロント側へ押される。バスバーカバー25Aは、バスバーアッシー24をフロント側へ押す。これにより、バスバーカバー25Aとバスバーアッシー24からなるバスバーユニット120Aが、ベアリングホルダ26とステータ23との間に固定される。
【0058】
図5は、弾性部材25bの配置の第2変形例を示す電動オイルポンプ100の部分断面図である。
第2変形例の電動オイルポンプ100は、バスバーユニット120Bを備える。バスバーユニット120Bは、バスバーアッシー24と、バスバーカバー25Bとを有する。バスバーカバー25Bは、バスバーアッシー24とベアリングホルダ26との間に位置する。
【0059】
バスバーカバー25Bは、リア側(-X側)を向く面の外周端の角部に、テーパー部25dを有する。テーパー部25dは軸方向から見て円環状である。テーパー部25dは、バスバーカバー25Bのリア側を向く面からフロント側に向かうに従って径方向外側へ傾斜する傾斜面を有する。テーパー部25dと径方向に対向する位置に、Oリングからなる弾性部材25bが配置される。すなわち、弾性部材25bは、テーパー部25dと、ベアリングホルダ26のシール領域26Aと、モータハウジング11の内周面とに囲まれる領域に配置される。
【0060】
第2変形例においても、弾性部材25bは、バスバーカバー25Bとベアリングホルダ26との間で軸方向に圧縮される。弾性部材25bの弾性復帰力により、バスバーカバー25Bがフロント側へ押される。バスバーカバー25Bは、バスバーアッシー24をフロント側へ押す。これにより、バスバーカバー25Bとバスバーアッシー24からなるバスバーユニット120Bが、ベアリングホルダ26とステータ23との間に固定される。
【0061】
以上に説明した第1変形例および第2変形例においても、
図1から
図3に示した実施形態の電動オイルポンプ100と同様の作用効果が得られる。すなわち、第1変形例および第2変形例によれば、電動オイルポンプの組み立て作業性が向上する。
【符号の説明】
【0062】
11…モータハウジング、11A…端面、20…モータ、21…シャフト、22…ロータ、22a…ロータコア、23…ステータ、24a~24c…バスバー、24e…端部、25a…溝部、25b…弾性部材、25c…段差部、25d…テーパー部、26e…ブリーザ、26A…シール領域、29…シール部材、30…ポンプ機構、120,120A,120B…バスバーユニット、121…第1支持部、122…第2支持部、J…中心軸