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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】固定構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20240402BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20240402BHJP
   E04B 2/90 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
E04B1/58 602
E04B1/94 L
E04B2/90
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020047630
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021147841
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】辻 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】仁木 秀巳
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-084730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38 - 1/99
E04B 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造部が被覆部で被覆された構造部材と、
前記構造部材に外部取付部材を固定する固定部材と、を有する固定構造であって、
前記被覆部は、
第1平面と、
前記第1平面に交差する第2平面と、
前記第1平面と前記第2平面とが交差する交差端と、を有し、
前記固定部材は、
前記第1平面に対向する第1平面対向部と、
前記第2平面に対向する第2平面対向部と、
前記第1平面対向部と前記第2平面対向部とを接続して前記交差端で折れ曲がる折曲部と、
前記外部取付部材が固定される固定部と、
前記第1平面対向部を前記構造部に接続する第1接続部と、
前記第2平面対向部を前記構造部に接続する第2接続部と、を有する
固定構造。
【請求項2】
前記第1接続部は、
前記第1平面対向部の法線方向に前記被覆部を貫通して前記構造部に接続され、前記第1平面対向部を前記第1平面側から支持する第1圧縮用接続材と、
前記第1平面対向部の法線方向に前記第1平面対向部および前記被覆部を貫通して前記構造部に接続され、前記第1平面対向部を基準とした前記第1平面の反対側から前記第1平面対向部を支持する第1引張用接続材と、を有する
請求項に記載の固定構造。
【請求項3】
前記第2接続部は、
前記第2平面対向部の法線方向に前記被覆部を貫通して前記構造部に接続され、前記第2平面対向部を前記第2平面側から支持する第2圧縮用接続材と、
前記第2平面対向部の法線方向に前記第2平面対向部および前記被覆部を貫通して前記構造部に接続され、前記第2平面対向部を基準とした前記第2平面の反対側から前記第2平面対向部を支持する第2引張用接続材と、を有する
請求項またはに記載の固定構造。
【請求項4】
構造部が被覆部で被覆された構造部材と、
前記構造部材に外部取付部材を固定する固定部材と、を有する固定構造であって、
前記被覆部は、
第1平面と、
前記第1平面に交差する第2平面と、
前記第1平面と前記第2平面とが交差する交差端と、を有し、
前記固定部材は、
前記第1平面に対向する第1平面対向部と、
前記第2平面に対向する第2平面対向部と、
前記第1平面対向部と前記第2平面対向部とを接続して前記交差端で折れ曲がる折曲部と、
前記外部取付部材が固定される固定部と、
前記第1平面対向部および前記第2平面対向部の一方を前記構造部に接続する接続部と、を有し、
前記第1平面対向部および前記第2平面対向部のうちで接続対象となる平面対向部を接続平面対向部とするとき、
前記接続部は、
前記接続平面対向部の法線方向に前記被覆部を貫通して前記構造部に接続され、前記接続平面対向部を前記被覆部側から支持する圧縮用接続材と、
前記接続平面対向部の法線方向に前記接続平面対向部および前記被覆部を貫通して前記構造部に接続され、前記接続平面対向部を基準とした前記被覆部の反対側から前記接続平面対向部を支持する引張用接続材と、を有する
固定構造。
【請求項5】
前記第1平面が鉛直面である
請求項1~4のいずれか一項に記載の固定構造。
【請求項6】
前記第1平面が水平面である
請求項1~4のいずれか一項に記載の固定構造。
【請求項7】
前記第1平面と前記第2平面とが直交している
請求項1~6のいずれか一項に記載の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造部が被覆部に覆われた構造部材に外部取付部材を固定する固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
柱材や梁材などの構造部材においては、例えば特許文献1のように、木材などの耐火性の低い構造部を石膏材などの耐火性の高い被覆部で被覆することにより耐火性が高められる。こうした構造部材に外装材などの外部取付部材が取り付けられる場合、その外部取付部材は固定部材を介して構造部材に固定される。固定部材は、構造部材に設けられたアンカーボルトにナットを螺合させることにより構造部材に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-171988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した固定部材においては、被覆部に押し付けられるような外力が作用したときに、その外力が被覆部に直接的に伝達される。このため、被覆部が壊れやすい場合に用いることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する固定構造は、構造部が被覆部で被覆された構造部材と、前記構造部材に外部取付部材を固定する固定部材と、を有する固定構造であって、前記被覆部は、第1平面と、前記第1平面に交差する第2平面と、前記第1平面と前記第2平面とが交差する交差端と、を有し、前記固定部材は、前記第1平面に対向する第1平面対向部と、前記第2平面に対向する第2平面対向部と、前記第1平面対向部と前記第2平面対向部とを接続して前記交差端で折れ曲がる折曲部と、前記外部取付部材が固定される固定部と、前記第1平面対向部および前記第2平面対向部の少なくとも一方を前記構造部に接続する接続部と、を有する。これにより、固定部材に作用する外力が構造部に伝達されるため、該外力が被覆部に伝達されにくくなる。
【0006】
上記構成の固定構造において、前記接続部は、前記第1平面対向部を前記構造部に接続する第1接続部と、前記第2平面対向部を前記構造部に接続する第2接続部と、を有することが好ましい。これにより、固定部材に作用する外力が各平面対向部において被覆部に伝達されにくくなる。
【0007】
上記構成の固定構造において、前記第1接続部は、前記第1平面対向部の法線方向に前記被覆部を貫通して前記構造部に接続され、前記第1平面対向部を前記第1平面側から支持する第1圧縮用接続材と、前記第1平面対向部の法線方向に前記第1平面対向部および前記被覆部を貫通して前記構造部に接続され、前記第1平面対向部を基準とした前記第1平面の反対側から前記第1平面対向部を支持する第1引張用接続材と、を有することが好ましい。
【0008】
これにより、第1平面対向部を第1平面に押し付けようとする力を第1圧縮用接続材を介して構造部に伝達し、第1平面対向部を第1平面から引き離そうとする力を第1引張用接続材を介して構造部に伝達することができる。
【0009】
上記構成の固定構造において、前記第2接続部は、前記第2平面対向部の法線方向に前記被覆部を貫通して前記構造部に接続され、前記第2平面対向部を前記第2平面側から支持する第2圧縮用接続材と、前記第2平面対向部の法線方向に前記第2平面対向部および前記被覆部を貫通して前記構造部に接続され、前記第2平面対向部を基準とした前記第2平面の反対側から前記第2平面対向部を支持する第2引張用接続材と、を有することが好ましい。
【0010】
これにより、第2平面対向部を第2平面に押し付けようとする力を第2圧縮用接続材を介して構造部に伝達し、第2平面対向部を第2平面から引き離そうとする力を第2引張用接続材を介して構造部材に伝達することができる。
【0011】
上記構成の固定構造において、前記第1平面が鉛直面であってもよい。これにより、鉛直方向に延びる平面を有する構造部材に対して外部取付部材を固定することができる。
上記構成の固定構造において、前記平面が水平面であってもよい。これにより、水平方向に延びる平面を有する構造部材に対して外部取付部材を固定することができる。
【0012】
上記構成の固定構造において、前記第1平面と前記第2平面とが直交していてもよい。これにより、四角柱状の構造部材に外部取付部材を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】固定構造の一実施形態を用いて外部取付部材を構造部材に固定した状態の一例を示す斜視図。
図2図1において一点鎖線2で囲まれた部分の拡大図。
図3】固定具の一例を示す斜視図。
図4】構造部材に固定具が固定された状態を圧縮用接続材および引張用接続材とともに模式的に示す断面図。
図5】第1圧縮用接続材および第1引張用接続材の配置位置の一例を示す図。
図6】第2圧縮用接続材および第2引張用接続材の配置位置の一例を示す図。
図7】固定具に作用する力を模式的に示す図。
図8】変形例において、固定具の一例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1図7を参照して、固定構造の一実施形態について説明する。
図1に示すように、構造部材10は、木材などの耐火性の低い構造部11を石膏材などの耐火性の高い被覆部12で覆うことにより耐火性が高められる。こうした構造部材10に対しては、カーテンウォールなどの外装材といった外部取付部材13が固定部材15によって固定される。
【0015】
図2に示すように、被覆部12は、第1平面16、第2平面17、および、交差端18を有している。第1平面16は、外部取付部材13に臨むように配置される面であり、構造部材10の側面を構成する水平面である。第2平面17は、第1平面16の端部で第1平面16に直交する面であり、構造部材10の背面を構成する鉛直面である。交差端18は、第1平面16と第2平面17とが交差する部分であり、第1平面16と第2平面17とによって構成される角部である。固定部材15は、構造部材10の各所において被覆部12の第1平面16と第2平面17とに対向するように配設される固定具19を有している。
【0016】
図3に示すように、固定具19は、外部取付部材13が固定される固定部20のほか、第1平面対向部21、第2平面対向部22、および、折曲部23を有している。
第1平面対向部21は、平板状をなしており、構造部材10に固定具19が固定された状態において、被覆部12の第1平面16の一部に対向するように配設される。この第1平面対向部21には、後述する第1引張用接続材32が貫通する複数の第1貫通孔24が形成されている。各第1貫通孔24は、第1引張用接続材32の頭部を収容可能な座繰り付きの孔である。
【0017】
第2平面対向部22は、第1平面対向部21と同じ幅を有するとともに第1平面対向部21よりも短い平板状をなしており、構造部材10に固定具19が固定された状態において、被覆部12の第2平面17の一部に対向するように配設される。この第2平面対向部22には、後述する第2引張用接続材34が貫通する複数の第2貫通孔25が形成されている。各第2貫通孔25は、第2引張用接続材34の頭部を収容可能な座繰り付きの孔である。
【0018】
折曲部23は、被覆部12の交差端18の形状に倣うように折れ曲がっており、第1平面対向部21の端部と第2平面対向部22の端部とを接続している。以下では、第1平面対向部21の端部および第2平面対向部22の端部について、折曲部23側の端部を基端部、折曲部23の反対側の端部を先端部という。
【0019】
固定部20は、第1平面対向部21の外表面21aに連結されている。固定部20は、平板状をなしており、第1平面対向部21の幅方向における中央部分から第1平面対向部21の法線方向に沿って立設している。固定部20は、第1平面対向部21の法線方向において第1平面対向部21に重なる第1固定部27と、第2平面対向部22の外表面22aよりも第1平面対向部21の先端部の反対側へ突出する第2固定部28と、を有している。第1平面対向部21と固定部20との連結部分29の長さLは、固定部20の幅tよりも大きな値に設定される。
【0020】
(固定方法)
図4を参照して、構造部材10に対する固定具19の固定方法について説明する。
図4に示すように、固定部材15は、固定具19を構造部材10に接続する接続部として、第1圧縮用接続材31、第1引張用接続材32、第2圧縮用接続材33、および、第2引張用接続材34を有している。
【0021】
第1圧縮用接続材31および第1引張用接続材32は、固定具19の第1平面対向部21を構造部材10の構造部11に接続する第1接続部を構成する。第2圧縮用接続材33および第2引張用接続材34は、固定具19の第2平面対向部22を構造部材10の構造部11に接続する第2接続部を構成する。各接続材31~34は、例えば皿状の頭部を有しており、構造部材10の構造部11に対してねじ結合される。なお、各接続材31~34は、構造部11の内部に配設される部分にねじ部を有していればよい。
【0022】
構造部材10に対して固定具19を固定する際には、まず、第1圧縮用接続材31と第2圧縮用接続材33とを構造部材10の構造部11に接続する。
第1圧縮用接続材31は、被覆部12の第1平面16における所定の配置位置において、第1平面対向部21の法線方向に沿うようにねじ込まれる。これにより、第1圧縮用接続材31は、被覆部12を貫通して構造部11に接続される。第1圧縮用接続材31の頭部と被覆部12との間にはワッシャ35が配設される。第1圧縮用接続材31は、頭部と被覆部12とによってワッシャ36が挟持される位置までねじ込まれる。
【0023】
第2圧縮用接続材33は、被覆部12の第2平面17における所定の配置位置において、第2平面対向部22の法線方向に沿うようにねじ込まれる。これにより、第2圧縮用接続材33は、被覆部12を貫通して構造部11に接続される。第2圧縮用接続材33の頭部と被覆部12との間にはワッシャ36が配設される。第2圧縮用接続材33は、頭部と被覆部12とによってワッシャ36が挟持される位置までねじ込まれる。
【0024】
次に、固定具19を所定位置に配置したうえで、第1引張用接続材32と第2引張用接続材34とを構造部材10の構造部11に接続する。
第1引張用接続材32は、第1平面対向部21に形成された第1貫通孔24を通じて、第1平面対向部21の法線方向に沿うように構造部材10にねじ込まれる。第1引張用接続材32は、第1貫通孔24に設けられた座繰りに頭部が収容される位置までねじ込まれる。これにより、第1引張用接続材32は、第1平面対向部21および被覆部12を貫通して構造部11に接続される。第1引張用接続材32は、被覆部12から離間する方向への第1平面対向部21の変位が抑えられるように、その頭部が、第1平面対向部21を基準とした第1平面16の反対側から第1平面対向部21に係合している。
【0025】
第2引張用接続材34は、第2平面対向部22に形成された第2貫通孔25を通じて、第2平面対向部22の法線方向に沿うように構造部材10にねじ込まれる。第2引張用接続材34は、第2貫通孔25に設けられた座繰りに頭部が収容される位置まで構造部材10にねじ込まれる。これにより、第2引張用接続材34は、第2平面対向部22および被覆部12を貫通して構造部11に接続される。第2引張用接続材34は、被覆部12から離間する方向への第2平面対向部22の変位が抑えられるように、その頭部が、第2平面対向部22を基準とした第2平面17の反対側から第2平面対向部22に係合している。
【0026】
このようにして構造部材10に固定具19が固定されると、固定具19の第1平面対向部21と被覆部12の第1平面16との間には、第1圧縮用接続材31の頭部分の隙間38が形成される。第1平面対向部21は、被覆部12側が第1圧縮用接続材31によって支持され、被覆部12の反対側が第1引張用接続材32で支持される。また、固定具19の第2平面対向部22と被覆部12の第2平面17との間には、第2圧縮用接続材33の頭部分の隙間39が形成される。第2平面対向部22は、被覆部12側が第2圧縮用接続材33によって支持され、被覆部12の反対側が第2引張用接続材34によって支持される。
【0027】
(各接続材の配置位置)
図5を参照して、第1圧縮用接続材31および第1引張用接続材32の配置位置の一例について説明する。図5においては、第1圧縮用接続材31の配置位置を×印、第1引張用接続材32の配置位置を○印にて示している。
【0028】
図5に示すように、第1圧縮用接続材31および第1引張用接続材32は、第1平面対向部21の長さ方向に沿って並ぶように、また、幅方向に沿って並ぶように配置されている。
【0029】
第1平面対向部21の長さ方向における中央よりも折曲部23側には、第1平面対向部21の幅方向に沿って第1圧縮用接続材31が並んで配置されている。具体的には、第1圧縮用接続材31は、第1平面対向部21の幅方向における中央と、その中央の両側と、に配置されている。中央に位置する第1圧縮用接続材31は、第1平面対向部21の法線方向において固定部20に重なっている。中央の両側に位置する第1圧縮用接続材31は、固定部20の両側に配置されている。
【0030】
第1平面対向部21の長さ方向における略中央には、第1平面対向部21の幅方向に沿って第1圧縮用接続材31と第1引張用接続材32とが並んで配置されている。具体的には、第1圧縮用接続材31は、第1平面対向部21の幅方向における中央に配置されている。第1引張用接続材32は、その中央の両側に配置されている。第1圧縮用接続材31は、第1平面対向部21の法線方向において固定部20に重なっている。第1引張用接続材32は、固定部20の両側に配置されている。
【0031】
第1平面対向部21の長さ方向における中央よりもやや先端部側には、第1平面対向部21の幅方向に沿って第1圧縮用接続材31が並んで配置されている。具体的には、第1圧縮用接続材31は、第1平面対向部21の幅方向における中央と、その中央の両側と、に配置されている。中央に位置する第1圧縮用接続材31は、第1平面対向部21の法線方向において固定部20に重なっている。中央の両側に位置する第1圧縮用接続材31は、固定部20の両側に配置されている。
【0032】
第1平面対向部21の長さ方向における先端部側には、第1平面対向部21の幅方向に沿って第1圧縮用接続材31と第1引張用接続材32とが並んで配置されている。具体的には、第1圧縮用接続材31は、第1平面対向部21の幅方向における中央に配置されている。第1引張用接続材32は、その中央の両側に配置されている。
【0033】
図6を参照して、第2圧縮用接続材33および第2引張用接続材34の配置位置の一例について説明する。図6においては、第2圧縮用接続材33の配置位置を×印、第2引張用接続材34の配置位置を○印にて示している。
【0034】
図6に示すように、第2圧縮用接続材33および第2引張用接続材34は、第2平面対向部22の長さ方向における中央よりも先端部側の領域に配置される。また、第2圧縮用接続材33および第2引張用接続材34は、第2平面対向部22の幅方向における中央の両側に配置される。
【0035】
具体的には、第2圧縮用接続材33は、第2引張用接続材34よりも折曲部23に近い位置において、第2平面対向部22の幅方向に沿って並ぶように配置される。また、第2引張用接続材34は、第2圧縮用接続材33よりも折曲部23に遠い位置において、第2平面対向部22の幅方向に沿って並ぶように配置される。
【0036】
(作用)
図7を参照して、上述した固定構造の作用について説明する。
外部取付部材13から固定部20に作用する外力は、連結部分29を介して第1平面対向部21に伝達され、第1平面対向部21を介して第2平面対向部22に伝達される。また、その外力は、下記に示す5つの力に分解することができる。
【0037】
・被覆部12に沿って第1平面対向部21および第2平面対向部22をスライドさせるスライド力(図7においては、紙面鉛直方向に沿う力)
・第1平面対向部21の法線方向に沿って第1平面対向部21を被覆部12の第1平面16に押し付ける第1圧縮力F11
・第1平面対向部21の法線方向に沿って第1平面対向部21を被覆部12の第1平面16から引き離す第1引張力F12
・第2平面対向部22の法線方向に沿って第2平面対向部22を被覆部12の第2平面17に押し付ける第2圧縮力F21
・第2平面対向部22の法線方向に沿って第2平面対向部22を被覆部12の第2平面17から引き離す第2引張力F22
スライド力は、第1平面対向部21においては第1引張用接続材32を介して、第2平面対向部22においては第2引張用接続材34を介して、構造部材10の構造部11に伝達される。
【0038】
第1圧縮力F11は、第1平面対向部21においては第1圧縮用接続材31を介して、第2平面対向部22においては第2引張用接続材34を介して、構造部材10の構造部11に伝達される。
【0039】
第1引張力F12は、第1平面対向部21においては第1引張用接続材32を介して、第2平面対向部22においては第2引張用接続材34を介して、構造部材10の構造部11に伝達される。
【0040】
第2圧縮力F21は、第1平面対向部21においては第1引張用接続材32を介して、第2平面対向部22においては第2圧縮用接続材33を介して、構造部材10の構造部11に伝達される。
【0041】
第2引張力F22は、第1平面対向部21においては第1引張用接続材32を介して、第2平面対向部22においては第2引張用接続材34を介して、構造部材10の構造部11に伝達される。
【0042】
本実施形態の効果について説明する。
(1)固定具19に作用した外力を被覆部12に伝達されにくくすることができる。
(2)第1圧縮用接続材31の一部は、第1引張用接続材32よりも折曲部23に近い位置に配置されている。これにより、第1圧縮力F11と第2引張力F22とに基づくモーメントをその第1圧縮用接続材31で効果的に受け止めることができる。
【0043】
(3)第1圧縮用接続材31は、第1平面対向部21の長さ方向における複数の位置に配置されている。これにより、第1圧縮力F11と第2引張力F22とに基づくモーメントを、より効果的に第1圧縮用接続材31で受け止めることができる。
【0044】
(4)第1圧縮用接続材31の一部は、第1平面対向部21の法線方向において固定部20に重なる位置に配置されている。これにより、固定部20から第1平面対向部21に伝達された第1圧縮力F11を効率よく構造部11に伝達することができる。
【0045】
(5)第1引張用接続材32の一部は、第1圧縮用接続材31よりも折曲部23に遠い位置に配置されている。これにより、第1引張力F12と第2圧縮力F21とに基づくモーメントに起因した固定具19の変位を効果的に抑えることができる。
【0046】
(6)第1圧縮用接続材31および第1引張用接続材32は、第1平面対向部21の幅方向における中央の両側に配置されている。これにより、幅方向における一方側を第1平面16に押し付けるとともに他方側を第1平面16から引き離すようなモーメントが第1平面対向部21に作用したとしても、そのモーメントに基づく力を効率よく構造部11に伝達することができる。
【0047】
(7)第2圧縮用接続材33は、第2引張用接続材34よりも折曲部23に近い位置に配置される。これにより、第1引張力F12と第2圧縮力F21とに基づくモーメントを第2圧縮用接続材33で効果的に受け止めることができる。
【0048】
(8)第2引張用接続材34は、第2圧縮用接続材33よりも折曲部23に遠い位置に配置される。これにより、第1圧縮力F11と第2引張力F22とに基づくモーメントに起因した固定具19の変位を効果的に抑えることができる。
【0049】
(9)第2圧縮用接続材33および第2引張用接続材34は、第2平面対向部22の幅方向における中央の両側に配置される。これにより、幅方向における一方側を第2平面17に押し付けるとともに他方側を第2平面17から引き離すようなモーメントが第2平面対向部22に作用したとしても、そのモーメントに基づく力を効率よく構造部11に伝達することができる。
【0050】
(10)被覆部12の第1平面16と固定具19の第1平面対向部21との間には、第1圧縮用接続材31によって隙間38が形成されている。これにより、第1平面対向部21から第1平面16への直接的な力の伝達が回避される。
【0051】
(11)被覆部12の第2平面17と固定具19の第2平面対向部22との間には、第2圧縮用接続材33によって隙間39が形成されている。これにより、第2平面対向部22から第2平面17への直接的な力の伝達が回避される。
【0052】
(12)固定部20は、第1固定部27と第2固定部28とを有している。これにより、固定部20に対する外部取付部材13の固定位置の自由度を向上させることができる。
(13)連結部分29の長さLが固定部20の幅tよりも大きな値に設定されている。これにより、第1平面対向部21に対して固定部20をより強固に連結することができる。
【0053】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・第1平面16と第2平面17とは、交差する面であればよく、互いに直交する面に限られない。
【0054】
・固定具19は、被覆部12の平面の一部に対向する平面対向部として、第1平面対向部21のみを有する構成であってもよい。すなわち、固定部材は、平面対向部と、平面対向部に連結されて外部取付部材が固定される固定部と、被覆部を貫通して構造部に接続され、平面対向部を被覆部側から支持する圧縮用接続材と、平面対向部および被覆部を貫通して構造部に接続され、平面対向部を基準とした被覆部の反対側から平面対向部を支持する引張用接続材と、で構成されていてもよい。
【0055】
・第1平面16は、水平面に限らず、鉛直面であってもよい。これにより、鉛直面を有する構造部材10に対して固定具19を固定することができる。
・第1圧縮用接続材31は、第1引張用接続材32よりも第1平面対向部21の先端部側に位置していてもよい。
【0056】
・第2圧縮用接続材33は、第2引張用接続材34よりも第2平面対向部22の先端部側に位置していてもよい。
・固定部20は、第1固定部27のみを有する構成であってもよいし、第1平面対向部21の長さ方向において第1平面対向部21の先端部から突出する第3固定部を有していてもよい。
【0057】
・固定部20は、第1平面対向部21および第2平面対向部22の双方に設けられていてもよい。
・外部取付部材13は、カーテンウォールなどの外装材に限らず、看板や空調システムの吹出ユニットなどであってもよい。
【0058】
・被覆部12は、構造部11を被覆しているものであればよく、石膏材などで形成される層や化粧板などで形成される層など、複数の層で構成されていてもよい。
・固定具19の固定部20は、図8に示すような形状であってもよい。なお、図8においては、上記実施形態と異なる部分について詳細に説明し、上記実施形態と同様の部分については同様の符号を付すことによりその詳細な説明は省略する。
【0059】
図8に示すように、固定部20は、第1平面対向部21に連結された一対の脚部41と、一対の脚部41に連結された頂面部42と、を有している。
各脚部41は、平板状をなしており、第1平面対向部21の法線方向に沿って立設するように第1平面対向部21の外表面21aに連結されている。一対の脚部41は、第1平面対向部21の幅方向において対向するように設けられている。頂面部42は、平板状をなしており、一対の脚部41の頂端部に連結されている。頂面部42は、一対の脚部41の間に位置する中間部分と、第1平面対向部21の幅方向において一対の脚部41から突出する突出部分とを有している。
【0060】
この固定部20において、外部取付部材13は、頂面部42に固定される。外部取付部材13は、中間部分に固定されてもよいし、突出部分に固定されてもよいし、中間部分および突出部分の双方に対して固定されていてもよい。また、第1圧縮用接続材31は第1平面対向部21の法線方向において各脚部41に重なる位置に配置されることが好ましく、第1引張用接続材32は一対の脚部41の両側に配置されることが好ましい。
【0061】
こうした構成によれば、固定部20そのものの機械的強度を高めることができるとともに、第1平面対向部21に対し、より強固に固定部20を連結することができる。また、頂面部42に作用する外力は、一対の脚部41によって分散されたうえで第1平面対向部21に伝達される。このため、その外力に起因した接続材31,32の負荷、ひいては構造部11における接続材31,32の結合部分の負荷を小さくすることができる。
【0062】
・固定部20は、第1平面対向部21と外部取付部材13との相対位置、固定部20に作用する荷重などに応じて形状変更可能である。
例えば、図8に示す固定部20は、脚部41を介して第1平面対向部21に頂面部42が連結されていればよい。脚部41は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、脚部41は、第1平面対向部21の幅方向に連結部分29が延在する構成であってもよい。頂面部42は、第1平面対向部21の法線方向から見たときに、全てが第1平面対向部21に重なる形状であってもよいし、一部が第1平面対向部21の外側に位置する形状であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
F11…第1圧縮力、F12…第1引張力、F21…第2圧縮力、F22…第2引張力、10…構造部材、11…構造部、12…被覆部、13…外部取付部材、15…固定部材、16…第1平面、17…第2平面、18…交差端、19…固定具、20…固定部、21…第1平面対向部、21a…外表面、22…第2平面対向部、22a…外表面、23…折曲部、24…第1貫通孔、25…第2貫通孔、27…第1固定部、28…第2固定部、29…連結部分、31…第1接続部を構成する第1圧縮用接続材、32…第1接続部を構成する第1引張用接続材、33…第2接続部を構成する第2圧縮用接続材、34…第2接続部を構成する第2引張用接続材、35,36…ワッシャ、38,39…隙間、41…脚部、42…頂面部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8