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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】点滴監視装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20240402BHJP
   A61M 5/14 20060101ALI20240402BHJP
   G01F 13/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
A61M5/168 532
A61M5/168 510
A61M5/14 520
G01F13/00 301V
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020056040
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021153776
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】松浦 浩二
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/118944(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0146654(US,A1)
【文献】特開2017-202259(JP,A)
【文献】特開2014-176600(JP,A)
【文献】特開2004-147870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61M 5/14
G01F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点滴筒内において輸液の液滴の滴下を監視する点滴監視装置であって、
前記液滴に対して光を照射する発光部と、
前記発光部から放出された光を受光する第1受光部と、
前記第1受光部よりも下側に配置され、前記発光部から放出された光を受光する第2受光部と、
前記第1受光部及び前記第2受光部からの出力電圧を増幅する増幅回路と、
前記増幅回路から出力された電圧をA/D変換するA/D変換部と、
前記A/D変換部から出力された信号の変化を検出する信号変化検出部と、
前記信号変化検出部により前記信号の変化が検出された後に、予め設定された第1の期間前記A/D変換部の動作を休止させるA/D変換制御部と、
前記信号変化検出部により検出された前記信号の変化が、所定のカウント条件を満たす場合、前記信号の変化を前記液滴としてカウントするカウント処理を実行する液滴カウント処理部と、
前記液滴の間隔を検出する間隔検出部と、
前記信号変化検出部により検出された前記信号の変化が、所定のカウントキャンセル条件を満たす場合、前記信号の変化を前記液滴としてカウントしないカウントキャンセル部と、を備え、
前記カウントキャンセル部は、前記間隔検出部により検出された直前の前記液滴の間隔が前記第1の期間より長い第2の期間を下回った場合、前記信号変化検出部により検出された前記信号の変化が前記カウントキャンセル条件を満たすと、前記信号の変化を前記液滴としてカウントする、
点滴監視装置。
【請求項2】
前記液滴の数をカウントするカウント条件は、前記A/D変換部において、前記信号変化検出部により検出された信号の変化として、前記増幅回路から出力された前記第1受光部からの出力電圧の後に、前記増幅回路から出力された前記第2受光部からの出力電圧を受け付けることを含む、請求項1に記載の点滴監視装置。
【請求項3】
前記液滴の数のカウントをキャンセルするカウントキャンセル条件は、前記A/D変換部において、前記信号変化検出部により検出された信号の変化として、前記増幅回路から出力された前記第2受光部からの出力電圧の後に、前記増幅回路から出力された前記第1受光部からの出力電圧を受け付けることを含む、請求項1又は2に記載の点滴監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点滴監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、輸液治療時に使用される輸液セットの点滴筒の滴下口に形成された液滴を監視する点滴監視装置が知られている。点滴監視装置は、液滴の流量等を監視し、医師や看護師等の医療従事者は、監視結果に基づき適切な処置を行うことができる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-17407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような点滴監視装置は、発光部及び受光部を備え、発光部から光を照射し、液滴によって減衰される光を受光部において検出することによって点滴筒内における液滴を検出している。しかし、点滴監視装置は、液滴の跳ね返りや、液滴の流量が過剰な場合等において液滴の誤検出が発生する場合がある。
【0005】
したがって、本発明は、液滴の誤検出を防ぎ、液滴の流量が過剰な場合であっても液滴を検出する性能を確保することができる点滴監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、点滴筒内において輸液の液滴の滴下を監視する点滴監視装置であって、前記液滴に対して光を照射する発光部と、前記発光部から放出された光を受光する第1受光部と、前記第1受光部よりも下側に配置され、前記発光部から放出された光を受光する第2受光部と、前記第1受光部及び前記第2受光部からの出力電圧を増幅する増幅回路と、前記増幅回路から出力された電圧をA/D変換するA/D変換部と、前記A/D変換部から出力された信号の変化を検出する信号変化検出部と、前記信号変化検出部により前記信号の変化が検出された後に、予め設定された第1の期間前記A/D変換部の動作を休止させるA/D変換制御部と、前記信号変化検出部により検出された前記信号の変化が、所定のカウント条件を満たす場合、前記信号の変化を前記液滴としてカウントするカウント処理を実行する液滴カウント処理部と、前記液滴の間隔を検出する間隔検出部と、前記信号変化検出部により検出された前記信号の変化が、所定のカウントキャンセル条件を満たす場合、前記信号の変化を前記液滴としてカウントしないカウントキャンセル部と、を備え、前記カウントキャンセル部は、前記間隔検出部により検出された直前の前記液滴の間隔が前記第1の期間より長い第2の期間を下回った場合、前記信号変化検出部により検出された前記信号の変化が前記カウントキャンセル条件を満たすと、前記信号の変化を前記液滴としてカウントする。
【0007】
また、前記液滴の数をカウントするカウント条件は、前記A/D変換部において、前記信号変化検出部により検出された信号の変化として、前記増幅回路から出力された前記第1受光部からの出力電圧の後に、前記増幅回路から出力された前記第2受光部からの出力電圧を受け付けることを含む。
【0008】
また、前記液滴の数のカウントをキャンセルするカウントキャンセル条件は、前記A/D変換部において、前記信号変化検出部により検出された信号の変化として、前記増幅回路から出力された前記第2受光部からの出力電圧の後に、前記増幅回路から出力された前記第1受光部からの出力電圧を受け付けることを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液滴の誤検出を防ぎ、液滴の流量が過剰な場合であっても液滴を検出する性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る点滴監視装置の概要を示す図である。
図2】制御部の概要を示す図である。
図3】第1受光部及び第2受光部から出力される電圧の関係を示す図である。
図4】液滴をカウントするカウント処理を示す図である。
図5】液滴をカウントするカウント処理及びカウント処理をキャンセルするカウントキャンセル処理を示す図である。
図6】液滴の間隔及び流量との関係を示す図である。
図7】液滴を誤検出する例を示す図である。
図8】誤検出を防ぐための液滴の間隔及び流量との関係を示す図である。
図9】カウント処理及びカウントキャンセル処理の例を示す図である。
図10】点滴監視装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、点滴監視装置1は、発光部5と、第1受光部6aと、第2受光部6bと、増幅回路7と、制御部8と、制御回路9と、LEDドライバ10と、LED11と、LCDドライバ12と、LCD13と、を備える。また、点滴監視装置1は、各構成要素に電力を供給するための電源(図示せず)を備える。
【0012】
点滴監視装置1は、点滴を監視するための装置であり、例えば医療機関において輸液治療時に使用される。輸液は、輸液バッグ2から輸液チューブに供給され、輸液チューブの途中に設けられた点滴筒3へ入る。点滴監視装置1は、点滴筒3の滴下口に形成された液滴D(以下、単に液滴という)の滴下を監視する。また、輸液の量は、輸液チューブの中途部分を開閉するためのクレンメ4により調節される。
【0013】
発光部5は、点滴筒3内を滴下する液滴に対して光を照射する。発光部5から照射する光は、可視光であっても、赤外光であってもよい。発光部5は、例えば、1又は複数のLEDで構成される。
【0014】
第1受光部6a及び第2受光部6bは、受光した光の強さに応じて出力電圧が変化するように構成された受光素子である。例えば、第1受光部6a及び第2受光部6bは、受光した光の強さが強ければ、出力電圧が高くなり、受光した光の強さが弱ければ、出力電圧が低くなる。
【0015】
第1受光部6aは、発光部5に対向して配置され、第2受光部6bは、第1受光部6aの鉛直方向下側に配置される。発光部5から照射された光は、液滴を通過すると減衰され、第1受光部6a及び第2受光部6bにおいて受光される。光が減衰されたため、受光した光の強さは弱くなり、第1受光部6a及び第2受光部6bからの出力電圧は、液滴が通過しない場合に比べて低くなる。このことを利用して点滴監視装置1は、液滴の滴下を検出する。
【0016】
増幅回路7は、第1受光部6a及び第2受光部6bからの出力電圧を増幅し、制御部8へ出力する。
【0017】
制御部8は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである。制御部8は、プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)や、CPUがプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納するためのRAM(Random Access Memory)等を備えてもよい。
制御回路9は、制御部8から制御信号に従い発光部5を制御する。
【0018】
LEDドライバ10は、制御部8からの制御信号に従いLED11を制御する。
LED(Light Emitting Diode)11は、LEDドライバ10の制御に従い発光する。LED11は、例えば、液滴が落下した場合に、一定時間点灯するように制御される。
【0019】
LCDドライバ12は、制御部8からの制御信号に従いLCD11を制御する。
LCD(Liquid Crystal Display)13は、LCDドライバ12の制御に従い画像を表示する。LCD12は、例えば、液滴の流量(mL/h)を表示するように制御される。
【0020】
図2に示すように、制御部8は、A/D変換部81と、信号変化検出部82と、A/D変換制御部83と、液滴カウント処理部84と、間隔検出部85と、カウントキャンセル部86と、を備える。
【0021】
A/D変換部81は、増幅回路から出力された電圧をA/D変換する。
信号変化検出部82は、A/D変換部81から出力された信号の変化を検出する。
A/D変換制御部83は、信号変化検出部82により信号の変化が検出された後に、予め設定された第1の期間、A/D変換部81の動作を休止させる。
【0022】
液滴カウント処理部84は、信号変化検出部82により検出された信号の変化が、所定のカウント条件を満たす場合、信号の変化を液滴としてカウントするカウント処理を実行する。
【0023】
間隔検出部85は、制御部8に内蔵されるタイマ等を用いて液滴間の時間的な間隔を検出する。ここで、一滴当たりの輸液の体積は予め分かっているため、液滴間の時間的な間隔を検出することにより、点滴監視装置1は、単位時間当たりの流量(mL/h)を求めることができる。
カウントキャンセル部86は、信号変化検出部82により検出された信号の変化が、所定のカウントキャンセル条件を満たす場合、信号の変化を液滴としてカウントしない。
【0024】
また、カウントキャンセル部86は、間隔検出部85により検出された直前の液滴の間隔が第1の期間より長い第2の期間を下回った場合、信号変化検出部82により検出された信号の変化がカウントキャンセル条件を満たすと、信号の変化を液滴としてカウントする。
【0025】
次に、図3から図10を参照して制御部8の動作について詳述する。図3は、第1受光部6a及び第2受光部6bから出力される電圧の関係を示す図である。
液滴が発光部5と第1受光部6aとの間を通過したとき、第1受光部6aは、滴により減衰された光を受光する。その結果、第1受光部6aの出力については、滴が通過したときに電位が降下し、滴が通過した後に電位は中間電圧まで戻る。
【0026】
第1受光部6a及び第2受光部6bは、鉛直方向において上下に配置されているため、光が第1受光部6a及び第2受光部6bにおいて受光されるタイミングは、時間差を生じる。
【0027】
増幅回路7は、第1受光部6a及び第2受光部6bにおいて受光される光の変化の差分を増幅する。
第1受光部6a及び第2受光部6bの出力電圧に変動がない場合、増幅回路7の出力は、中間電圧Vcとなる。
【0028】
液滴が第1受光部6aを通過し、第1受光部6aの出力電圧が降下した場合、増幅回路7は、第1受光部6aの出力電圧の変動分を中間電圧Vcに対して降下する側に増幅する。
【0029】
一方、液滴が第2受光部6bを通過し、第2受光部6bの出力電圧が降下した場合、増幅回路7は、第2受光部6bの出力電圧の変動分を中間電圧Vcに対して上昇する側に増幅する。
【0030】
図4は、液滴をカウントするカウント処理を示す図である。
液滴カウント処理部84は、信号変化検出部82により検出された信号の変化が、所定のカウント条件を満たす場合、信号の変化を液滴としてカウントするカウント処理を実行する。
【0031】
滴が第1受光部6aを通過したとき、増幅回路の出力は、中間電圧VcからVa降下する。信号変化検出部82は、A/D変換部81から出力された信号の変化である降下量Vaを検出する。その後、信号変化検出部82は、A/D変換部81から出力された信号の変化である振幅Vbを検出する。そして、液滴カウント処理部84は、振幅Vbが閾値を超えた場合、信号の変化を液適としてカウントするカウント処理を実行する。
【0032】
すなわち、液滴カウント処理部84において、液滴の数をカウントする所定のカウント条件は、信号変化検出部82により検出された信号の変化として、増幅回路7の出力が中間電圧VcからVa降下し、その後、振幅Vbが閾値Vtを超えることを含む。
間隔検出部85は、増幅回路7の出力が中間電圧VcからVa降下し、その後、振幅Vbが閾値Vtを超えて液滴をカウントした時点を開始点として、次の液滴をカウントするまでの時間Tを、制御部8に内蔵されるタイマ等を用いて検出する。
【0033】
図5は、液滴をカウントするカウント処理及びカウント処理をキャンセルするカウントキャンセル処理を示す図である。
【0034】
図5に示すように、滴通過時に増幅回路7の出力電圧は、中間電圧VcからVaだけ降下する。その後、液滴カウント処理部84は、信号変化検出部82により検出された信号の変化である振幅Vbが閾値Vtを超えた場合、カウント処理を実行する。A/D変換制御部83は、消費電力を抑えるために、信号変化検出部82により信号の変化が検出された後に、予め設定された第1の期間(休止期間)、A/D変換部81の動作を休止させる。
【0035】
第1の期間(休止期間)は、次の滴が通過するまでには終了するように予め設定される。第1の期間が経過すると、A/D変換部81は、再び増幅回路7からの出力電圧をA/D変換する。
【0036】
また、液滴が滴下した後に、液面から滴が跳ね返る場合がある。この場合、跳ね返った液滴は、発光部5と第2受光部6bとの間を通過した後に、発光部5と第1受光部6aとの間を通過する。跳ね返った液滴を誤検出することを防ぐために、増幅回路7の出力電圧が中間電圧VcからVd上昇する側に変動した場合、信号変化検出部82により検出された信号の変化が、所定のカウントキャンセル条件を満たし、カウントキャンセル部86は、信号の変化を液滴としてカウントしない。これにより、制御部8は、液面から跳ね返った液滴による誤検出を防ぐ。
【0037】
すなわち、カウントキャンセル部86において、液滴の数のカウントをキャンセルする所定のカウントキャンセル条件は、信号変化検出部82により検出された信号の変化として、増幅回路7の出力電圧が中間電圧Vcから閾値Vd上昇する側に変動することを含む。
【0038】
図6は、液滴の間隔及び流量との関係を示す図である。
点滴監視装置1は、輸液の液滴を検出すると共に、液滴の間隔から液滴の流量を算出し、LCDドライバ12を介してLCD13に液滴の流量を表示する。
【0039】
図6に示すように、液滴間の間隔が徐々に短くなると、単位時間当たりに落下する液滴の数が増加し、液滴の流量は増加する。液滴間の間隔が長くなると、単位時間当たりに落下する液滴の数が減少し、液滴の流量は減少する。
【0040】
制御部8は、有効範囲よりも液滴の流量が多い場合には、液滴の流量が過剰であると判定し、液滴の流量が過剰であることを示す情報をLCDドライバ12によりLCD13に表示させる。また、制御部8は、有効範囲よりも液滴の流量が少ない場合には、液滴の流量が過小であると判定し、液滴の流量が過小であることを示す情報をLCDドライバ12によりLCD13に表示させる。
【0041】
図7は、液滴を誤検出する例を示す図である。図7に示すように、液滴の間隔が非常に短い場合、時間T0において滴を検出してA/D変換部81の休止期間が経過した後に、時間T1において、増幅回路7の出力電圧は、中間電圧Vcから閾値Vd上昇する側に変動する。そして、信号変化検出部82は、中間電圧Vcから閾値Vd上昇する側への変動を検出し、これは、液滴の数のカウントをキャンセルするカウントキャンセル条件を満たすため、カウントキャンセル部86は、液滴カウント処理部84によるカウント処理をキャンセルする。また、時間T2でも同様に、カウントキャンセル条件を満たすため、カウントキャンセル部86は、カウント処理をキャンセルする。
【0042】
これらの場合、実際には液滴の間隔は短いため、液滴の流量は過剰であるが、カウント処理をキャンセルしたことにより、検出される液滴の間隔は長くなる。このため、制御部8は、液滴の流量が過小であることを示す情報をLCD13に表示させてしまう。
【0043】
そこで、本実施形態に係る点滴監視装置1は、このような流量の誤検出を防ぐために、以下に説明するように、特定の条件を満たす場合、カウントキャンセル部86は、信号の変化を液滴としてカウントする。
【0044】
図8は、誤検出を防ぐための液滴の間隔及び流量の関係を示す図である。
図8において、無効領域は、点滴監視装置1が滴の検出を保証できない領域を示しており、有効領域は、滴の検出を保証できる領域であり、検出限界Tdは、点滴監視装置1が検出できる滴間隔の限界値である。

図8に示すように、液滴の間隔が非常に短い場合、すなわち、液滴の流量が過剰な場合、間隔検出部85によって検出された液滴の間隔が第1の期間(休止期間)よりも長い第2の期間Taを下回った場合(流量がL以上の量になった場合)に、カウントキャンセル部86は、カウントキャンセル処理を停止させ、以降は処理を無効として、信号の変化を液滴としてカウントする。
【0045】
図9は、カウント処理及びカウントキャンセル処理の例を示す図である。
図9に示すように、液滴の間隔が短くなった場合、時間T3において液滴を検出して、滴間隔T6を検出した後、滴間隔T6が第1の期間(休止期間)よりも長い第2の期間Ta以下であると判定した場合、以降カウントキャンセル処理は無効となり、時間T4において、カウントキャンセル部86は、AD変換期間内の信号の立ち上がりでは、カウントキャンセル処理を行わず、AD変換期間内の信号の立ち下がりを検出して、液滴としてカウントする。
【0046】
すなわち、時間T4において、液滴の数をカウントするカウント処理が実行される。
また、時間T5でも同様に、カウントキャンセル部86は、信号の変化を液滴としてカウントする。
【0047】
このように、液滴の間隔が非常に短くなる前に、カウントキャンセル部86のカウントキャンセル処理を無効にすることにより、時間T4及びT5において液滴をカウントするカウント処理が実行されるため、A/D変換部81の休止期間が経過した後に、液滴の数がカウントされる。
よって、図7の場合と比べて、点滴監視装置1において検出される液滴の間隔は短くなる。このため、制御部8は、液滴の流量が過剰であることを示す情報をLCD13に表示させることができる。
【0048】
図10は、点滴監視装置1の処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS1において、第1受光部6a及び第2受光部6bは、発光部5から照射された光を受光する。
【0049】
ステップS2において、増幅回路7は、第1受光部6a及び第2受光部6bからの出力電圧を増幅し、制御部8へ出力する。
ステップS3において、A/D変換部81は、増幅回路から出力された電圧をA/D変換する。
ステップS4において、信号変化検出部82は、A/D変換部81から出力された信号の変化を検出する。また、A/D変換制御部83は、信号変化検出部82により信号の変化が検出された後に、予め設定された第1の期間、A/D変換部81の動作を休止させる。
【0050】
ステップS5において、液滴カウント処理部84は、信号変化検出部82により検出された信号の変化が、所定のカウント条件を満たすか否かを判定する。カウント条件を満たす場合(YES)、処理は、ステップS6へ移り、カウント条件を満たさない場合(NO)、処理は、ステップS7に移る。
【0051】
ステップS6において、液滴カウント処理部84は、信号の変化を液滴としてカウントするカウント処理を実行し、間隔検出部85は、前回の滴検出からの時間を滴間隔として検出し、処理は終了する。
ステップS7において、カウントキャンセル部86は、間隔検出部85で検出した滴間隔が第1の期間(休止期間)よりも長い第2の期間Taより大きいか判定する。滴間隔がTaより大きいと判定された場合(YES)、処理は、ステップS8へ移り、滴間隔がTa以下と判定された場合(NO)、処理はステップS9へ移る。
【0052】
ステップS8において、カウントキャンセル部86は、カウントキャンセル処理を有効として処理を終了する。なお、カウントキャンセル部86は、信号変化検出部82により検出された信号の変化が、所定のカウントキャンセル条件を満たす場合、信号の変化を液滴としてカウントしなくてもよい。
【0053】
ステップS9において、カウントキャンセル部86は、カウントキャンセル処理を無効として処理を終了する。即ち、この場合、液滴カウント処理部84は、信号の変化を液滴としてカウントするカウント処理を実行し、間隔検出部85は、前回の滴検出からの時間を滴間隔として検出した後、処理は終了する。なお、カウントキャンセル部86は、間隔検出部85により検出された直前の液滴の間隔が第1の期間より長い第2の期間Taを下回った場合、信号変化検出部82により検出された信号の変化がカウントキャンセル条件を満たすと、信号の変化を液滴としてカウントしてもよい。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、点滴監視装置1は、信号変化検出部82により検出された信号の変化が、所定のカウント条件を満たす場合、信号の変化を液滴としてカウントするカウント処理を実行する液滴カウント処理部84と、液滴の間隔を検出する間隔検出部85と、信号変化検出部82により検出された信号の変化が、所定のカウントキャンセル条件を満たす場合、信号の変化を液滴としてカウントしないカウントキャンセル部86と、を備え、カウントキャンセル部86は、間隔検出部85により検出された液滴の間隔が第1の期間(休止期間)よりも長い第2の期間Taを下回った場合、カウントキャンセル処理を無効にし、液滴の間隔がTaを上回った場合、カウントキャンセル処理を有効にする。
【0055】
液滴の間隔が非常に短い場合、A/D変換を休止する所定の休止期間経過後に、液滴の数をキャンセルする処理を実行すると、本来ならばカウントされるべき液滴の数がキャンセルされる。その結果、液滴の数がカウントされない期間が長くなるため、液滴の間隔も長くなり、制御部8は、流量が過小であるとLCD13に表示させてしまう。しかし、実際には液滴間隔は短く、流量も多いため、点滴監視装置1は、誤った流量をLCD13に表示してしまう。上述したように液滴の間隔が短くなった場合に、検出限界の前にカウントキャンセル処理を無効にすることで、液滴の数がカウントされ、点滴監視装置1は、液滴の間隔及び流量をより適切な値で検出することができる。
【0056】
また、所定のカウント条件は、A/D変換部81において、信号変化検出部82により検出された信号の変化として、増幅回路7から出力された第1受光部6aからの出力電圧の後に、増幅回路7から出力された第2受光部6bからの出力電圧を受け付けることを含む。これにより、点滴監視装置1は、第1受光部6a及び第2受光部6bの順に通過した液滴の数を適切にカウントすることができる。
【0057】
また、所定のカウントキャンセル条件は、A/D変換部81において、信号変化検出部82により検出された信号の変化として、増幅回路7から出力された第2受光部6bからの出力電圧の後に、増幅回路7から出力された第1受光部6aからの出力電圧を受け付けることを含む。これにより、点滴監視装置1は、液滴の跳ね返りによって第2受光部6b及び第1受光部6aの順に通過した液滴の数を適切にキャンセルすることができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0059】
1 点滴監視装置
2 輸液バッグ
3 点滴筒
4 クレンメ
5 発光部
6a 第1受光部
6b 第2受光部
7 増幅回路
8 制御部
9 制御回路
10 LEDドライバ
11 LED
12 LCDドライバ
13 LCD
81 A/D変換部
82 信号変化検出部
83 A/D変換制御部
84 液滴カウント処理部
85 間隔検出部
86 カウントキャンセル部
図1
図2
図3
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図8
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図10