(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】止水パネル及び止水パネルの取付構造
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20240402BHJP
E06B 7/16 20060101ALI20240402BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B7/16 C
E04H9/14 Z
(21)【出願番号】P 2020056408
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241588
【氏名又は名称】豊和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真一
(72)【発明者】
【氏名】大島 直樹
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-053506(JP,A)
【文献】特開2016-205121(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1266392(KR,B1)
【文献】実開昭50-61626(JP,U)
【文献】特開2018-145727(JP,A)
【文献】登録実用新案第3212276(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
E06B 7/16
E04H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に支柱を有する建物の開口部の下部を前方から閉塞可能な正面視横長矩形状のパネル本体と、
前記パネル本体の四辺に取り付けられる一対の縦枠及び一対の横枠と、
前記パネル本体の背面左右で
前記縦枠へ保持部材を介して上下方向に取り付けられ、前記開口部の閉塞位置で前記支柱の前面に圧接可能な縦止水ゴムと、
前記パネル本体の左右両側にそれぞれ設けられ、前記支柱との間で前記パネル本体を前記閉塞位置で固定可能な固定手段と、
下側の前記横枠の下面で左右方向の全長に亘って取り付けられ、前記閉塞位置で床面に圧接可能な横止水ゴムと、を含んでなる止水パネルであって、
前記横止水ゴムは、左右両端が開口する
横断面外形が正方形の筒状であって、
前記保持部材と、下側の前記横枠の下面に取り付けられた押さえ部材とによって、下部が前記保持部材及び前記押さえ部材の下端から突出した状態で挟持固定され、
前記床面と圧接する下面には、左右方向で前記下面の全長に亘って延びる少なくとも1つの突条が突設されて
、
前記固定手段によって前記パネル本体を前記閉塞位置で固定した状態では、前記横止水ゴムの下部は、前後に拡がる格好で変形し、下面に突出する前記突条が全長に亘って前記床面に押し付けられることを特徴とする止水パネル。
【請求項2】
前記突条は、先端が下向きとなる横断面三角形状であることを特徴とする請求項1に記載の止水パネル。
【請求項3】
左右に支柱を有する建物の開口部に、請求項1又は2に記載の止水パネルが、前記開口部の閉塞位置で固定手段を用いて前記支柱に固定されており、
前記固定手段による固定状態で、前記止水パネルの縦止水ゴムが前記支柱の前面に圧接していると共に、横止水ゴムが、下面に設けた突条を全長に亘って床面に押し付ける状態で前記床面に圧接していることを特徴とする止水パネルの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の開口部に取り付けられて建物外部からの水の浸入を防止する止水パネルと、その止水パネルを開口部へ取り付けるための取付構造とに関する。
【背景技術】
【0002】
止水パネルは、例えば特許文献1に開示されるように、正面視矩形状のパネル本体を有し、パネル本体の裏面で左右の側縁には、全高に亘って側方水密部材が設けられ、パネル本体の下端面には、全幅に亘って下方水密部材が設けられている。両水密部材はシリコンスポンジ等で形成される。パネル本体の裏面には、建物開口部の左右の縦枠(支柱)に係止する係止部と、係止部とベルトを介して連結される締め具とを含む固定手段が設けられている。
この止水パネルは、下方水密部材を床面に圧接した状態で、側方水密部材を開口部左右の縦枠に当接させ、固定手段の係止部を縦枠の裏側に係止させて、締め具を操作することで、ベルトを緊張状態に締め付けて固定することができる。この状態で、側方水密部材と下方水密部材とが圧縮されて水密状態が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような止水パネルは、外部から加わる水圧によってパネル本体の下部が縦枠側に押し付けられて傾きやすく、この場合、下方水密部材が床面に対してずれることで隙間が生じ、止水性が低下するおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、水圧によって傾くことがあっても止水性を好適に維持できる止水パネル及びその取付構造を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、左右に支柱を有する建物の開口部の下部を前方から閉塞可能な正面視横長矩形状のパネル本体と、
パネル本体の四辺に取り付けられる一対の縦枠及び一対の横枠と、
パネル本体の背面左右で縦枠へ保持部材を介して上下方向に取り付けられ、開口部の閉塞位置で支柱の前面に圧接可能な縦止水ゴムと、
パネル本体の左右両側にそれぞれ設けられ、支柱との間でパネル本体を閉塞位置で固定可能な固定手段と、
下側の横枠の下面で左右方向の全長に亘って取り付けられ、閉塞位置で床面に圧接可能な横止水ゴムと、を含んでなる止水パネルであって、
横止水ゴムは、左右両端が開口する横断面外形が正方形の筒状であって、保持部材と、下側の横枠の下面に取り付けられた押さえ部材とによって、下部が保持部材及び押さえ部材の下端から突出した状態で挟持固定され、
床面と圧接する下面には、左右方向で下面の全長に亘って延びる少なくとも1つの突条が突設されて、
固定手段によってパネル本体を閉塞位置で固定した状態では、横止水ゴムの下部は、前後に拡がる格好で変形し、下面に突出する突条が全長に亘って床面に押し付けられることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、上記構成において、突条は、先端が下向きとなる横断面三角形状であることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、止水パネルの取付構造であって、
左右に支柱を有する建物の開口部に、請求項1又は2に記載の止水パネルが、開口部の閉塞位置で固定手段を用いて支柱に固定されており、固定手段による固定状態で、止水パネルの縦止水ゴムが支柱の前面に圧接していると共に、横止水ゴムが、下面に設けた突条を全長に亘って床面に押し付ける状態で床面に圧接していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、横止水ゴムが、左右両端が開口する横断面外形が正方形の筒状であって、保持部材と、下側の横枠の下面に取り付けられた押さえ部材とによって、下部が保持部材及び押さえ部材の下端から突出した状態で挟持固定され、床面と圧接する下面には、左右方向で下面の全長に亘って延びる少なくとも1つの突条が突設されている。そして、固定手段によってパネル本体を閉塞位置で固定した状態では、横止水ゴムの下部は、前後に拡がる格好で変形し、下面に突出する突条が全長に亘って床面に押し付けられるので、外部からの水圧によって止水パネルの下部が傾くことがあっても、突条によって止水性を好適に維持可能となる。また、水圧に伴い、突条が床面に押し付けられる方向へ力が加わるため、横止水ゴムを押し付けるための専用の押し付け機構が不要となる。
請求項2に記載の発明によれば、上記効果に加えて、突条は、先端が下向きとなる横断面三角形状となっているので、床面との密着性が高くなり、止水性の向上に繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】止水パネルを開口部に取り付けた状態を示す正面図である。
【
図2】止水パネルの一部を断面で示す正面図である。
【
図4】止水パネルを開口部の閉塞位置にセットする状態を示す説明図で、(A)は側面、(B)はA-A線断面をそれぞれ示す。
【
図5】止水パネルを閉塞位置に取り付けた状態を示す説明図で、(A)は側面、(B)はB-B線断面をそれぞれ示す。
【
図7】固定手段の変更例を示す説明図で、(A)は止水パネルを開口部の閉塞位置にセットする状態、(B)はD-D線断面、(C)はフックの背面をそれぞれ示す。
【
図8】固定手段の変更例を示す説明図で、(A)は止水パネルを開口部の閉塞位置に取り付けた状態、(B)はE-E線断面をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、止水パネルの一例を開口部に取り付けた状態を示す正面図である。止水パネル1は、建物の開口部30の左右に立設される一対の支柱31,31に固定されて、開口部30の下部を閉塞して外部からの水の浸入を防止するものである。支柱31,31の背面側には、開口部30を開閉する扉32,32が設けられている。
図2及び
図3に示すように、止水パネル1は、正面視横長矩形状のパネル本体2と、パネル本体2の四辺に取り付けられる一対の縦枠3A,3B及び一対の横枠4A,4Bを備えている。縦枠3A,3Bを含む止水パネル1の左右方向の長さは、支柱31,31の外法寸法と略同じとなっている。
【0010】
パネル本体2は、ハニカム構造を有する紙製の芯材6を金属製のケース5内に収容してなる。縦枠3A,3B及び横枠4A,4Bは、横断面コ字状の金属製で、それぞれケース5の外周の四面に嵌合させることでケース5の外周を連続して周回する状態で固定される。ケース5と縦枠3A,3B及び横枠4A,4Bとの間には、ゴム製のシール材7,7・・と、ケース5の角部でシール材7,7の端部を抑えるコーナー金具7a,7a・・とが介在されている。
ここではパネル本体2の芯材6を紙製のハニカム構造とすることで、従来のアルミ等の金属製のものと比較して軽量化できる。よって、一人でも持ち運びが可能で、開口部30への設置も簡単に行える。
【0011】
縦枠3A,3Bの外面には、支柱31,31への留め具8,8が、上下に2箇所ずつ設けられている(
図1~3では留め具8を簡略化して示している)。留め具8は、
図4に示すように、レバー9とリング10とからなるパッチン錠で、レバー9が、上下方向の軸によって縦枠3A,3Bの左右の外側面へ回転可能に設けられている。各支柱31の左右の外側面で留め具8,8に対応する位置には、リング10が係止可能なフック33,33が、後ろ向きに固定されている。
また、縦枠3A,3Bの背面には、縦枠3A,3Bの上下寸法の全長に亘って、横断面コ字状の保持部材11,11が、開口を後ろ向きにした状態でそれぞれ固定されて、この保持部材11に、縦止水ゴム12が嵌着されている。縦止水ゴム12は、保持部材11の前後の内寸法よりも前後に厚く形成される横断面正方形状を有し、後面を保持部材11の後端よりも後方に突出させている。保持部材11及び縦止水ゴム12は、下側の横枠4Bの下面を越えて下方に突出している。
【0012】
一方、上側の横枠4Aの上面には、左右一対の取手13,13が取り付けられている。下側の横枠4Bの下面には、止水パネル1の左右寸法の全長に亘って、横止水ゴム14が取り付けられている。この横止水ゴム14は、
図4に示すように、内部を中空として横断面の外形が正方形となる筒状で、左右両端は外部に開口している。縦枠3A,3Bの保持部材11,11において、下側の横枠4Bから下方への突出部分では、前板部分が切除されて、横止水ゴム14は、後方の縦止水ゴム12に密着した状態で横枠4Bの下面に取り付けられている。横止水ゴム14の前側で横枠4Bの下面には、横枠4Bからの保持部材11の突出長さと同じ長さで下方へ突出する横断面L字状の押さえ部材15が取り付けられて、保持部材11との間で横止水ゴム14を挟持している。横止水ゴム14は、保持部材11及び押さえ部材15の下端を越えて下方に突出している。
そして、横止水ゴム14の下面には、突条16が設けられている。この突条16は、横止水ゴム14の前後方向の中央部において左右の全長に亘って一体に形成される。突条16は、先端が下向きとなる横断面三角形状となっている。
【0013】
以上の如く構成された止水パネル1の取付手順を説明する。
まず、横枠4Aの取手13,13を把持して止水パネル1を、左右の支柱31,31の前面に左右の縦止水ゴム12,12がそれぞれ当接する位置にセットする。
次に、左右の留め具8,8のリング10,10を、それぞれ支柱31のフック33,33に係止させてレバー9,9を前側に倒す。すると、
図5に示すように、止水パネル1は、左右の縦止水ゴム12,12がそれぞれ支柱31,31の前面に圧接し、横止水ゴム14が床面Fに圧接する閉塞位置で支柱31,31に固定される。このとき横止水ゴム14の下部は、
図6にも示すように、前後に広がる格好で変形し、下面に突出する突条16が全長に亘って床面Fに押し付けられることで、下面が上側へ湾曲した格好となる。
【0014】
よって、止水パネル1と支柱31,31との間は縦止水ゴム12,12によって止水され、止水パネル1と床面Fとの間は横止水ゴム14で止水され、外部からの水の浸入を防ぐことができる。特に横止水ゴム14では、左右両端の開口から内部に水が浸入し、
図6に矢印で示すように外側へ広がる方向へ水圧が加わる。この内部からの水圧によって下面が下向きに押されて突条16をさらに床面Fに押し付けることになる。このため、外部からの水圧によって止水パネル1の下部が支柱31,31側へ押圧されて止水パネル1が傾くことがあっても、突条16と床面Fとの密接状態は維持され、開口部30への水の浸入を防止することができる。
【0015】
このように、上記形態の止水パネル1によれば、左右に支柱31,31を有する建物の開口部30の下部を前方から閉塞可能な正面視横長矩形状のパネル本体2と、パネル本体2の背面左右で上下方向に取り付けられ、開口部30の閉塞位置で支柱31,31の前面に圧接可能な縦止水ゴム12,12と、パネル本体2の左右両側にそれぞれ設けられ、支柱31,31との間でパネル本体2を閉塞位置で固定可能な留め具8(固定手段)と、パネル本体2の下面で左右方向の全長に亘って取り付けられ、閉塞位置で床面Fに圧接可能な横止水ゴム14と、を含んでなり、横止水ゴム14は、左右両端が開口する筒状であって、床面Fと圧接する下面には、左右方向で下面の全長に亘って延びる突条16が突設されている。
よって、止水パネル1を取り付けた状態では、留め具8による固定状態で、止水パネル1の縦止水ゴム12,12が支柱31,31の前面に圧接していると共に、横止水ゴム14が、下面に設けた突条16を全長に亘って床面Fに押し付ける状態で床面Fに圧接することになる。
【0016】
この構成により、外部からの水圧によって止水パネル1の下部が傾くことがあっても、突条16によって止水性を好適に維持可能となる。また、水圧に伴い、突条16が床面Fに押し付けられる方向へ力が加わるため、横止水ゴム14を押し付けるための専用の押し付け機構が不要となる。
特に、突条16は、先端が下向きとなる横断面三角形状となっているので、床面Fとの密着性が高くなり、止水性の向上に繋がる。
【0017】
なお、横止水ゴムの下面に設ける突条は1つに限らず、前後方向へ所定間隔をおいて複数の突条を平行に設けてもよい。突条の横断面形状も三角形に限らず、台形や四角形、半円形等とすることもできる。
横止水ゴムの横断面形状も外形を正方形とする構造の他、台形や半円形等の他の形状も採用できる。
【0018】
一方、上記形態では、固定手段の留め具を止水パネルに設け、フックを支柱に設けているが、逆にしてもよい。
また、留め具とフックとの構造は上記形態に限らない。
図7では、支柱31の裏面に、T字状の被係合部35を切欠き形成したフック34を横向きに固定し、止水パネル1の背面に受け金具20を、ヒンジ軸21によって左右へ揺動可能に設けている。ここでの留め具22は、受け金具20に係止するフック部23と、フック34の被係合部35に係止するT字状の係合部25を備えた係止板24とを備えており、レバー板26を起こして回転操作すると、フック部23が係止板24に対して後方へスライドし、所定のストロークでロックされるようになっている。
よって、
図8に示すように、係止板24の係合部25をフック34の被係合部35に係止させた後、レバー板26を起こして回転させると、フック部23が後方へ引き込まれてロックされ、受け金具20を介して止水パネル1を支柱31へ押圧させることになる。
ここでは支柱31の背面に設けたフック34の被係合部35に係止板24の係合部25を係合させているので、フック部23を後方へ引き込んだ際、留め具22の浮き上がりが防止されるようになっている。
【0019】
その他、パネル本体の構造についても、芯材は他の材質でも差し支えないしハニカム構造でなくてもよい。また、縦枠と横枠との形態も変更できる他、縦枠と横枠とを省略して縦止水ゴムと横止水ゴムとを直接ケースに取り付けてもよい。
開口部の構造も上記形態に限定せず、例えば扉を2枚とした両引きでなく、扉を1枚とした片引きであってもよい。
【符号の説明】
【0020】
1・・止水パネル、2・・パネル本体、3A,3B・・縦枠、4A,4B・・横枠、5・・ケース、6・・芯材、8,22・・留め具、11・・保持部材、12・・縦止水ゴム、14・・横止水ゴム、16・・突条、23・・フック部、24・・係止板、25・・係合部、26・・レバー板、30・・開口部、31・・支柱、33,34・・フック、35・・被係合部、F・・床面。