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特許7463802電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/05 20060101AFI20240402BHJP
   G03G 5/147 20060101ALI20240402BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G03G5/05 104B
G03G5/147 504
G03G21/00 318
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020056880
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021157042
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 有杜
(72)【発明者】
【氏名】山田 渉
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 真宏
(72)【発明者】
【氏名】草野 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】福井 泰佑
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-056496(JP,A)
【文献】特開2011-197443(JP,A)
【文献】特開2013-088714(JP,A)
【文献】特開2003-195541(JP,A)
【文献】特開2005-099438(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139555(WO,A1)
【文献】特開2009-237568(JP,A)
【文献】国際公開第2020/013336(WO,A1)
【文献】特開2010-152234(JP,A)
【文献】特開2021-080328(JP,A)
【文献】特開2020-181151(JP,A)
【文献】特開平01-255862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/05-5/147
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、
最表面層が、フッ素含有樹脂粒子と、フッ素含有グラフトポリマーと、消泡剤と、を含有し、
前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が、炭素数10あたり7個以上30個以下であり、
前記最表面層の比誘電率が3.75以上3.90以下であり、
前記最表面層における純水の接触角が90°以上であり、
前記フッ素含有樹脂粒子の含有量に対する前記フッ素含有グラフトポリマーの含有量が、4.5質量%以上9.0質量%以下であり、
前記最表面層に対する前記消泡剤の含有量が10ppm以上10000ppm以下である、
電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面に接触してクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング手段と、を備え、
前記クリーニングブレードの、前記電子写真感光体と接触する接触部における、押し込み弾性率(EIT[MPa])と反発弾性率(Re[%])との比(EIT/Re)が0.65以上であり、且つ反発弾性率(Re[%])が28%以上である部材で構成されている、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ
【請求項2】
前記最表面層の比誘電率が3.80以上3.90以下であり、
前記最表面層における純水の接触角が95°以上である、
請求項1に記載のプロセスカートリッジ
【請求項3】
前記消泡剤が、シリコーン系消泡剤及びフッ素系消泡剤から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載のプロセスカートリッジ
【請求項4】
前記消泡剤が、ジメチルポリシロキサンである請求項3に記載のプロセスカートリッジ
【請求項5】
前記フッ素含有樹脂粒子の含有量に対する前記消泡剤の含有量が、0.01質量%以上15質量%以下である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ
【請求項6】
前記最表面層に対する前記消泡剤の含有量が100ppm以上5000ppm以下である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ
【請求項7】
導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、
最表面層が、フッ素含有樹脂粒子と、フッ素含有グラフトポリマーと、消泡剤と、を含有し、
前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が、炭素数10 あたり7個以上30個以下であり、
前記最表面層の比誘電率が3.75以上3.90以下であり、
前記最表面層における純水の接触角が90°以上であり、
前記フッ素含有樹脂粒子の含有量に対する前記フッ素含有グラフトポリマーの含有量が、4.5質量%以上9.0質量%以下であり、
前記最表面層に対する前記消泡剤の含有量が10ppm以上10000ppm以下である、
電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記電子写真感光体の表面に接触してクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング手段と、を備え、
前記クリーニングブレードの、前記電子写真感光体と接触する接触部における、押し込み弾性率(EIT[MPa])と反発弾性率(Re[%])との比(EIT/Re)が0.65以上であり、且つ反発弾性率(Re[%])が28%以上である部材で構成されている、
像形成装置。
【請求項8】
前記最表面層の比誘電率が3.80以上3.90以下であり、
前記最表面層における純水の接触角が95°以上である、
請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記消泡剤が、シリコーン系消泡剤及びフッ素系消泡剤から選ばれる少なくとも1種である請求項7又は請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記消泡剤が、ジメチルポリシロキサンである請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記フッ素含有樹脂粒子の含有量に対する前記消泡剤の含有量が、0.01質量%以上15質量%以下である請求項7~請求項10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記最表面層に対する前記消泡剤の含有量が100ppm以上5000ppm以下である、請求項7~請求項11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「被帯電体に、帯電処理手段により該被帯電体面を帯電処理する工程を含む作像プロセスを適用して画像形成を行う電子写真装置において、前記被帯電体が、導電性支持体上に電荷発生層及び浸せき塗布により形成する電荷輸送層をこの順に積層し、該浸せき塗布により形成する電荷輸送層が表面層である電子写真感光体であって、該表面層が電荷輸送材料、バインダー樹脂およびシリコーン系消泡剤を含有し、該シリコーン系消泡剤がジメチルポリシロキサンであり、該表面層におけるジメチルポリシロキサンの含有量がバインダー樹脂に対して0.002乃至0.01重量%であり、前記被帯電体の帯電処理手段は、電圧を印加した帯電部材を該被帯電体に当接させて被帯電体面を帯電する直接帯電装置であることを特徴とする電子写真装置。」が提案されている。
【0003】
特許文献2には、「導電性支持体上に感光層及び保護層を有する電子写真感光体において、該保護層が導電性粒子、フッ素原子含有化合物、シロキサン化合物、フッ素原子含有樹脂粒子及びバインダー樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体。」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3950559号公報
【文献】特開2000-292960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、前記最表面層が、フッ素含有樹脂粒子と、フッ素含有グラフトポリマーと、を含有する電子写真感光体において、前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が炭素数10あたり30個超過である、前記最表面層の比誘電率が3.75未満若しくは3.90超過である、前記最表面層における純水の接触角が90°未満である、前記最表面層が更に消泡剤を含有する場合において前記フッ素含有樹脂粒子の含有量に対する前記フッ素含有グラフトポリマーの含有量が、4.5質量%未満若しくは9.0質量%超過である、又は、前記最表面層が更に消泡剤を含有する場合において前記最表面層に対する前記消泡剤含有量が10ppm未満若しくは10000ppm超過である場合と比較して、残留電位が低下し、最表面層表面の気泡の発生が抑制される電子写真感光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち
<1> 導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、
最表面層が、フッ素含有樹脂粒子と、フッ素含有グラフトポリマーと、を含有し、
前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が、炭素数10あたり0個以上30個以下あり、
前記最表面層の比誘電率が3.75以上3.90以下であり、
前記最表面層における純水の接触角が90°以上である、
電子写真感光体。
<2> 前記最表面層の比誘電率が3.80以上3.90以下であり、
前記最表面層における純水の接触角が95°以上である、
前記<1>に記載の電子写真感光体。
<3> 導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、
最表面層が、フッ素含有樹脂粒子と、フッ素含有グラフトポリマーと、消泡剤と、を含有し、
前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が、炭素数10あたり0個以上30個以下あり、
前記フッ素含有樹脂粒子の含有量に対する前記フッ素含有グラフトポリマーの含有量が、4.5質量%以上9.0質量%以下であり、
前記最表面層に対する前記消泡剤の含有量が10ppm以上10000ppm以下である、電子写真感光体。
<4> 前記消泡剤が、シリコーン系消泡剤及びフッ素系消泡剤から選ばれる少なくとも1種である前記<3>に記載の電子写真感光体。
<5> 前記消泡剤が、ジメチルポリシロキサンである前記<4>に記載の電子写真感光体。
<6> 前記フッ素含有樹脂粒子の含有量に対する前記消泡剤の含有量が、比誘電率0.01質量%以上15質量%以下である前記<3>~<5>のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
<7> 前記最表面層に対する前記消泡剤の含有量が100ppm以上5000ppm以下である、前記<3>~<6>のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
<8> 前記<1>~<7>のいずれか1つに記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
<9> 前記電子写真感光体の表面に接触してクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング手段を備え、
前記クリーニングブレードの、前記電子写真感光体と接触する接触部における、押し込み弾性率(EIT[MPa])と反発弾性率(Re[%])との比(EIT/Re)が0.65以上であり、且つ反発弾性率(Re[%])が25%以上である部材で構成されている、
前記<8>に記載のプロセスカートリッジ。
<10> 前記<1>~<7>のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
<11> 前記電子写真感光体の表面に接触してクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング手段を備え、
前記クリーニングブレードの、前記電子写真感光体と接触する接触部における、押し込み弾性率(EIT[MPa])と反発弾性率(Re[%])との比(EIT/Re)が0.65以上であり、且つ反発弾性率(Re[%])が25%以上である部材で構成されている、
前記<10>に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0007】
<1>、<2>、<4>又は<5>に係る発明によれば、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、フッ素含有樹脂粒子と、フッ素含有グラフトポリマーと、を含有する電子写真感光体において、前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が、炭素数10あたり30個超過である、前記最表面層の比誘電率が3.80未満若しくは3.90超過である、又は、前記最表面層における純水の接触角が95°未満である場合と比較して、残留電位が低下し、最表面層表面の気泡の発生が抑制される電子写真感光体が提供される。
【0008】
<3>に係る発明によれば、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、フッ素含有樹脂粒子と、フッ素含有グラフトポリマーと、消泡剤と、を含有する電子写真感光体において、前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が、炭素数10あたり30個超過である、前記フッ素含有樹脂粒子の含有量に対する前記フッ素含有グラフトポリマーの含有量が、4.5質量%以上9.0質量%以下である、又は、前記最表面層に対する前記消泡剤含有量が10ppm未満若しくは10000ppm超過である場合と比較して、残留電位が低下し、最表面層表面の気泡の発生が抑制される電子写真感光体が提供される。
【0009】
<6>に係る発明によれば、前記フッ素含有樹脂粒子の含有量に対する前記消泡剤の含有量が、0.01質量%未満又は15質量%超過である場合と比較して、残留電位が低下し、最表面層表面の気泡の発生が抑制される電子写真感光体が提供される。
【0010】
<7>に係る発明によれば、前記最表面層に対する前記消泡剤の含有量が100ppm未満又は5000ppm超過である場合と比較して、残留電位が低下し、最表面層表面の気泡の発生が抑制される電子写真感光体が提供される。
【0011】
<8>又は<10>に係る発明によれば、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、フッ素含有樹脂粒子と、フッ素含有グラフトポリマーと、を含有し、前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が炭素数10あたり30個超過である、前記最表面層の比誘電率が3.75未満若しくは3.90超過である、前記最表面層における純水の接触角が90°未満である、前記最表面層が更に消泡剤を含有する場合において前記フッ素含有樹脂粒子の含有量に対する前記フッ素含有グラフトポリマーの含有量が、4.5質量%未満若しくは9.0質量%超過である、又は、前記最表面層が更に消泡剤を含有する場合において前記最表面層に対する前記消泡剤含有量が10ppm未満若しくは10000ppm超過である電子写真感光体を備えた場合と比較して、残留電位が低下し、最表面層表面の気泡の発生が抑制される電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジ又は画像形成装置が提供される。
【0012】
<9>又は<11>に係る発明によれば、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、フッ素含有樹脂粒子と、フッ素含有グラフトポリマーと、を含有し、前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が、炭素数10あたり0個以上30個以下あり、前記最表面層の比誘電率が3.75以上3.90以下であり、前記最表面層における純水の接触角が90°以上である電子写真感光体、又は、前記最表面層が更に消泡剤を含有し、前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が、炭素数10あたり0個以上30個以下あり、前記フッ素含有樹脂粒子の含有量に対する前記フッ素含有グラフトポリマーの含有量が、4.5質量%以上9.0質量%以下であり、前記最表面層に対する前記消泡剤含有量が10ppm以上10000ppm以下である電子写真感光体と、前記電子写真感光体の表面に接触してクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング手段と、を備えたプロセスカートリッジ又は画像形成装置において、前記クリーニングブレードの、前記電子写真感光体と接触する接触部における、押し込み弾性率(EIT[MPa])と反発弾性率(Re[%])との比(EIT/Re)が0.65未満、又は、反発弾性率(Re[%])が25%未満である部材で構成されている場合と比較して、残留電位が低下し、最表面層表面の気泡の発生が抑制される電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジ又は画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の一例を示す模式断面図である。
図2】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図3】本実施形態におけるクリーニングブレードの一例を示す概略図である。
図4】本実施形態におけるクリーニングブレードの他の一例を示す概略図である。
図5】本実施形態におけるクリーニングブレードの他の一例を示す概略図である。
図6】本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0015】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0016】
<電子写真感光体>
第一実施形態に係る電子写真感光体(以下「感光体」ともいう)は、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、フッ素含有樹脂粒子と、フッ素含有グラフトポリマーと、を含有する。
また、前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が、炭素数10あたり0個以上30個以下あり、前記最表面層の比誘電率が3.75以上3.90以下であり、前記最表面層における純水の接触角が90°以上である。
【0017】
第一実施形態に係る感光体は、上記構成により、残留電位が低下し、最表面層表面の気泡の発生が抑制される。その理由は、次の通り推測される。
【0018】
感光体の耐摩耗性向上の目的で、感光体の最表面層にフッ素含有樹脂粒子を含有する方法が用いられている。炭素数10あたり0個以上30個以下のカルボキシ基を含有するフッ素含有樹脂粒子は、感光層の帯電性を高める一方で、最表面層の作製に用いられる最表面層塗布液中に均一分散させにくく、分散性を高める必要があった。また、炭素数10あたり0個以上30個以下のカルボキシ基を含有するフッ素含有樹脂粒子を含む感光層は、比誘電率が低く、残留電位が残存しやすかった。これに対し発明者らは分散剤であるフッ素含有グラフトポリマーを多量に添加することで、上記フッ素含有樹脂粒子の分散性が向上すると共に、比誘電率が高まることで残留電位の上昇が抑制される効果があることを明らかにした。
しかしながら、塗布液中に遊離したフッ素含有グラフトポリマーが界面活性剤として働くことにより、最表面層塗布液の起泡性および気泡の安定化作用が高まり、最表面層表面に気泡が欠陥として残留しやすかった。
一方、第一実施形態に係る感光体は、最表面層における純水の接触角が上記記載の範囲内となるように最表面層塗布液中を調製することで、感光体の最表面層製造の際に、最表面層塗布液の表面張力を低下することができ、気泡が生じにくくなる。これにより、第一実施形態に係る感光体は、最表面層表面における気泡の発生を抑制できる。また、詳細は明らかでないが、感光体の最表面層に、カルボキシ基の個数が炭素数10あたり0個以上30個以下であるフッ素含有樹脂粒子とともに、フッ素含有グラフトポリマーを含有すると最表面層の比誘電率が向上する。そして、最表面層の比誘電率が上記記載の範囲内となる様に調整することで、感光層の残留電位の残存を抑制することができる。
【0019】
そのため、第一実施形態に係る感光体は、残留電位が低下し、最表面層表面の気泡の発生が抑制すると推測される。
【0020】
第二実施形態に係る感光体は、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、フッ素含有樹脂粒子と、フッ素含有グラフトポリマーと、消泡剤と、を含有する。
また、前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が、炭素数10あたり0個以上30個以下あり、前記フッ素含有樹脂粒子の含有量に対する前記フッ素含有グラフトポリマーの含有量が4.5質量%以上9.0質量%以下であり、前記最表面層に対する前記消泡剤含有量が10ppm(ppmは質量基準。以下同様とする。)以上10000ppm以下である。
【0021】
第二実施形態に係る感光体は、上記構成により、残留電位が低下し、最表面層表面の気泡の発生が抑制される。その理由は、次の通り推測される。
【0022】
前述の様に、最表面層に炭素数10あたり0個以上30個以下のカルボキシ基を含有するフッ素含有樹脂粒子を含有する感光層は、最表面層表面に気泡が発生しやすく、残留電位が残存しやすいことがあった。
第二実施形態に係る感光体は、感光体の最表面層にフッ素含有樹脂粒子とともにフッ素含有グラフトポリマーと、消泡剤と、を含有する。前記最表面層は、前記消泡剤を最表面層に対して10ppm以上10000ppm以下の濃度で含有することで、感光体の最表面層製造の際に、最表面層塗布液の表面張力を低下することができ、攪拌力を上げても気泡が生じにくくなる。また、最表面層中の消泡剤の濃度を前記範囲とすることで、例えば、最表面層における純水の接触角が90°以上となりやすい。これにより、第二実施形態に係る感光体は、最表面層表面における気泡の発生を抑制できる。さらに、詳細は明らかでないが、感光体の最表面層に、カルボキシ基の個数が炭素数10あたり0個以上30個以下であるフッ素含有樹脂粒子の含有量に対して、フッ素含有グラフトポリマーを4.5質量%以上9.0質量%以下の濃度で添加することで、例えば、最表面層の比誘電率が3.75以上3.90以下となりやすく、感光層の残留電位の残存を抑制することができる。
【0023】
そのため、第二実施形態に係る感光体は、残留電位が低下し、最表面層表面の気泡の発生が抑制すると推測される。
【0024】
以下、第一及び第二実施形態に係る感光体のいずれにも該当する感光体(以下「本実施形態に係る感光体」とも称する)について詳細に説明する。ただし、本発明の感光体の一例は、第一及び第二実施形態に係る感光体のいずれか一方に該当する感光体であればよい。
【0025】
以下、本実施形態に係る電子写真感光体について図面を参照して説明する。
図1に示す電子写真感光体7Aは、例えば、導電性基体4上に、下引層1と電荷発生層2と電荷輸送層3とが、この順序で積層された構造を有する感光体7Aが挙げられる。電荷発生層2及び電荷輸送層3が感光層5を構成している。
【0026】
なお、電子写真感光体7Aは、下引層1が設けられていない層構成であってもよい。
また、電子写真感光体7Aは、電荷発生層2と電荷輸送層3との機能が一体化した単層型感光層を有する感光体であってもよい。単層型感光層を有する感光体の場合、単層型感光層が最表面層を構成する。
また、電子写真感光体7Aは、電荷輸送層3上、又は単層型感光層上に、表面保護層を有する感光体であってもよい。表面保護層を有する感光体の場合、表面保護層が最表面層を構成する。
【0027】
以下、本実施形態に係る電子写真感光体の各層について詳細に説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0028】
(導電性基体)
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
【0029】
導電性基体の表面は、電子写真感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
【0030】
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて導電性基体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
【0031】
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。
【0032】
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
【0033】
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
【0034】
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
【0035】
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0036】
(下引層)
下引層は、例えば、無機粒子と結着樹脂とを含む層である。
【0037】
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)10Ωcm以上1011Ωcm以下の無機粒子が挙げられる。
これらの中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化錫粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子がよく、特に、酸化亜鉛粒子が好ましい。
【0038】
無機粒子のBET法による比表面積は、例えば、10m/g以上がよい。
無機粒子の体積平均粒径は、例えば、50nm以上2000nm以下(好ましくは60nm以上1000nm以下)がよい。
【0039】
無機粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
【0040】
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0041】
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
【0042】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
シランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤と他のシランカップリング剤とを併用してもよい。この他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法又は湿式法のいずれでもよい。
【0045】
表面処理剤の処理量は、例えば、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0046】
ここで、下引層は、無機粒子と共に電子受容性化合物(アクセプター化合物)を含有することが、電気特性の長期安定性、キャリアブロック性が高まる観点からよい。
【0047】
電子受容性化合物としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン等のフルオレノン化合物;2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)-1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’テトラ-t-ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;等の電子輸送性物質等が挙げられる。
特に、電子受容性化合物としては、アントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン化合物、アミノアントラキノン化合物、アミノヒドロキシアントラキノン化合物等が好ましく、具体的には、例えば、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
【0048】
電子受容性化合物は、下引層中に無機粒子と共に分散して含まれていてもよいし、無機粒子の表面に付着した状態で含まれていてもよい。
【0049】
電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着させる方法としては、例えば、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
【0050】
乾式法は、例えば、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させた電子受容性化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させて、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。電子受容性化合物の滴下又は噴霧するときは、溶剤の沸点以下の温度で行うことがよい。電子受容性化合物を滴下又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に制限されない。
【0051】
湿式法は、例えば、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により、無機粒子を溶剤中に分散しつつ、電子受容性化合物を添加し、攪拌又は分散した後、溶剤除去して、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。溶剤除去方法は、例えば、ろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後には、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては、電子受容性化合物を添加する前に無機粒子の含有水分を除去してもよく、その例として溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
【0052】
なお、電子受容性化合物の付着は、表面処理剤による表面処理を無機粒子に施す前又は後に行ってよく、電子受容性化合物の付着と表面処理剤による表面処理と同時に行ってもよい。
【0053】
電子受容性化合物の含有量は、例えば、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下がよく、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
【0054】
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の公知の高分子化合物;ジルコニウムキレート化合物;チタニウムキレート化合物;アルミニウムキレート化合物;チタニウムアルコキシド化合物;有機チタニウム化合物;シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂、導電性樹脂(例えばポリアニリン等)等も挙げられる。
【0055】
これらの中でも、下引層に用いる結着樹脂としては、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好適であり、特に、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂が好適である。
これら結着樹脂を2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
【0056】
下引層には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層に添加してもよい。
【0057】
添加剤としてのシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0058】
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0059】
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0060】
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0061】
これらの添加剤は、単独で、又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0062】
下引層は、ビッカース硬度が35以上であることがよい。
下引層の表面粗さ(十点平均粗さ)は、モアレ像抑制のために、使用される露光用レーザ波長λの1/(4n)(nは上層の屈折率)から1/2までに調整されていることがよい。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子等を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が挙げられる。また、表面粗さ調整のために下引層の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が挙げられる。
【0063】
下引層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた下引層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。
【0064】
下引層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。
【0065】
下引層形成用塗布液を調製するときの無機粒子の分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。
【0066】
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0067】
下引層の膜厚は、例えば、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上50μm以下の範囲内に設定される。
【0068】
(中間層)
図示は省略するが、下引層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。
中間層は、例えば、樹脂を含む層である。中間層に用いる樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
中間層は、有機金属化合物を含む層であってもよい。中間層に用いる有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素等の金属原子を含有する有機金属化合物等が挙げられる。
これらの中間層に用いる化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0069】
これらの中でも、中間層は、ジルコニウム原子又はケイ素原子を含有する有機金属化合物を含む層であることが好ましい。
【0070】
中間層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた中間層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0071】
中間層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。なお、中間層を下引層として使用してもよい。
【0072】
(電荷発生層)
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂とを含む層である。また、電荷発生層は、電荷発生材料の蒸着層であってもよい。電荷発生材料の蒸着層は、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro-Luminescence)イメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合に好適である。
【0073】
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料;ピロロピロール顔料;フタロシアニン顔料;酸化亜鉛;三方晶系セレン等が挙げられる。
【0074】
これらの中でも、近赤外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、金属フタロシアニン顔料、又は無金属フタロシアニン顔料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、特開平5-263007号公報、特開平5-279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン;特開平5-98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン;特開平5-140472号公報、特開平5-140473号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン;特開平4-189873号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより好ましい。
【0075】
一方、近紫外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;チオインジゴ系顔料;ポルフィラジン化合物;酸化亜鉛;三方晶系セレン;特開2004-78147号公報、特開2005-181992号公報に開示されたビスアゾ顔料等が好ましい。
【0076】
450nm以上780nm以下に発光の中心波長があるLED,有機ELイメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合にも、上記電荷発生材料を用いてもよいが、解像度の観点より、感光層を20μm以下の薄膜で用いるときには、感光層中の電界強度が高くなり、基体からの電荷注入による帯電低下、いわゆる黒点と呼ばれる画像欠陥を生じやすくなる。これは、三方晶系セレン、フタロシアニン顔料等のp-型半導体で暗電流を生じやすい電荷発生材料を用いたときに顕著となる。
【0077】
これに対し、電荷発生材料として、縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、アゾ顔料等のn-型半導体を用いた場合、暗電流を生じ難く、薄膜にしても黒点と呼ばれる画像欠陥を抑制し得る。n-型の電荷発生材料としては、例えば、特開2012-155282号公報の段落[0288]~[0291]に記載された化合物(CG-1)~(CG-27)が挙げられるがこれに限られるものではない。
なお、n-型の判定は、通常使用されるタイムオブフライト法を用い、流れる光電流の極性によって判定され、正孔よりも電子をキャリアとして流しやすいものをn-型とする。
【0078】
電荷発生層に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、結着樹脂としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。
結着樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。ここで、「絶縁性」とは、体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0079】
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが好ましい。
【0080】
電荷発生層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0081】
電荷発生層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。なお、電荷発生層の形成は、電荷発生材料の蒸着により行ってもよい。電荷発生層の蒸着による形成は、特に、電荷発生材料として縮環芳香族顔料、ペリレン顔料を利用する場合に好適である。
【0082】
電荷発生層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等が挙げられる。これら溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いる。
【0083】
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、例えば、高圧状態で分散液を液-液衝突や液-壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
なお、この分散の際、電荷発生層形成用塗布液中の電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
【0084】
電荷発生層形成用塗布液を下引層上(又は中間層上)に塗布する方法としては、例えばブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0085】
電荷発生層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上5.0μm以下、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下の範囲内に設定される。
【0086】
(電荷輸送層)
電荷輸送層は、例えば、電荷輸送材料と結着樹脂とを含む層である。電荷輸送層は、高分子電荷輸送材料を含む層であってもよい。
【0087】
電荷輸送層が最表面層である場合、電荷輸送層は、結着樹脂及び電荷輸送材料に加え、フッ素含有樹脂粒子と、フッ素含有グラフトポリマーと、消泡剤と、を含有する。
なお、電荷輸送層上に他の層(例えば保護層等)が設けられており、電荷輸送層が最表面層ではない場合は、電荷輸送層は、電荷輸送層は少なくとも結着樹脂及び電荷輸送材料を含有していればよく、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。結着樹脂、電荷輸送材料、及びその他の添加剤については、電荷輸送層が最表面層である場合と同様である。
以下、最表面層である電荷輸送層に含有される成分について説明する。
【0088】
-結着樹脂-
電荷輸送層に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、スチレン-アルキッド樹脂、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの中でも、結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂が好適である。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上で用いる。
なお、電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は、質量比で10:1から1:5までが好ましい。
ここで、結着樹脂の含有量は、例えば、感光層(電荷輸送層)の全固形分に対して、10質量%以上90質量%以下が好ましく、30質量%以上90質量%以下がより好ましく、50質量%以上90質量%以下が更に好ましい。
【0089】
-電荷輸送材料-
電荷輸送材料としては、p-ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物;キサントン系化合物;ベンゾフェノン系化合物;シアノビニル系化合物;エチレン系化合物等の電子輸送性化合物が挙げられる。電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物も挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上で用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0090】
電荷輸送材料としては、電荷移動度の観点から、下記構造式(a-1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び下記構造式(a-2)で示されるベンジジン誘導体が好ましい。
【0091】
【化1】
【0092】
構造式(a-1)中、ArT1、ArT2、及びArT3は、各々独立に置換若しくは無置換のアリール基、-C-C(RT4)=C(RT5)(RT6)、又は-C-CH=CH-CH=C(RT7)(RT8)を示す。RT4、RT5、RT6、RT7、及びRT8は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
【0093】
【化2】
【0094】
構造式(a-2)中、RT91及びRT92は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基を示す。RT101、RT102、RT111及びRT112は各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは無置換のアリール基、-C(RT12)=C(RT13)(RT14)、又は-CH=CH-CH=C(RT15)(RT16)を示し、RT12、RT13、RT14、RT15及びRT16は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。Tm1、Tm2、Tn1及びTn2は各々独立に0以上2以下の整数を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
【0095】
ここで、構造式(a-1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び前記構造式(a-2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「-C-CH=CH-CH=C(RT7)(RT8)」を有するトリアリールアミン誘導体、及び「-CH=CH-CH=C(RT15)(RT16)」を有するベンジジン誘導体が、電荷移動度の観点で好ましい。
【0096】
高分子電荷輸送材料としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等の電荷輸送性を有する公知のものが用いられる。特に、特開平8-176293号公報、特開平8-208820号公報等に開示されているポリエステル系の高分子電荷輸送材は特に好ましい。なお、高分子電荷輸送材料は、単独で使用してよいが、結着樹脂と併用してもよい。
【0097】
-フッ素含有樹脂粒子-
フッ素含有樹脂粒子としては、フルオロオレフィンのホモポリマーの粒子、2種以上の共重合体であって、フルオロオレフィンの1種又は2種以上と非フッ素系のモノマー(つまり、フッ素原子を有さないモノマー)との共重合体の粒子が挙げられる。
【0098】
フルオロオレフィンとしては、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、パーフルオロビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などのパーハロオレフィン、フッ化ビニリデン(VdF)、トリフルオロエチレン、フッ化ビニルなどの非パーフルオロオレフィン等が挙げられる。これらの中でも、VdF、TFE、CTFE、HFPなどが好ましい。
【0099】
一方、非フッ素系のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテンなどのハイドロカーボン系オレフィン;シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)、エチルビニルエーテル(EVE)、ブチルビニルエーテル、メチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル;ポリオキシエチレンアリルエーテル(POEAE)、エチルアリルエーテルなどのアルケニルビニルエーテル;ビニルトリメトキシシラン(VSi)、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シランなどの反応性α,β-不飽和基を有する有機ケイ素化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのメタクリル酸エステル;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、「ベオバ」(商品名、シェル社製のビニルエステル)などのビニルエステル;などが挙げられる。これらの中でも、ルキルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、ビニルエステル、反応性α,β-不飽和基を有する有機ケイ素化合物が好ましい。
【0100】
これらの中でも、フッ素含有樹脂粒子としては、フッ素化率の高い粒子が好ましく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などの粒子がより好ましく、PTFE、FEP、PFAの粒子が特に好ましい。
【0101】
フッ素含有樹脂粒子は、カルボキシル基の個数が炭素数10個あたり0個以上30個以下である。
フッ素含有樹脂粒子のカルボキシル基の個数を上記範囲にすることで、帯電性を向上することができる。
【0102】
フッ素含有樹脂粒子のカルボキシル基の個数は、帯電性を向上する観点から、0個以上20個が好ましい。
【0103】
ここで、フッ素含有樹脂粒子のカルボキシル基は、例えば、フッ素含有樹脂粒子に含まれる末端カルボン酸に由来するカルボキシル基である。
【0104】
フッ素含有樹脂粒子のカルボキシル基の量を低減する方法としては、1)粒子製造の過程で放射線を照射しない方法、2)放射線を照射する際に酸素が存在しない条件又は酸素濃度を低減した条件で行う方法等が挙げられる。
【0105】
フッ素含有樹脂粒子のカルボキシル基の量は、特開平4-20507などに記載のように、次の通り測定する。
フッ素含有樹脂粒子をプレス機にて予備成型し、およそ0.1mm厚みのフィルムを作製した。作製したフィルムを赤外吸収スペクトルを測定した。フッ素含有樹脂粒子にフッ素ガスを接触させて作製したカルボン酸末端を完全にフッ素化したフッ素含有樹脂粒子についても赤外吸収スペクトルを測定し、両者の差スペクトルから次式によって末端カルボキシル基の個数(炭素数10個当たり)=(l×K)/t
l:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚さ(mm)
カルボキシル基の吸収波数は3560cm-1、補正係数は440とする。
【0106】
ここで、フッ素含有樹脂粒子は、放射線を照射して得られる粒子(本明細書では、「放射線照射型のフッ素含有樹脂粒子」とも称する)、重合法により得られる粒子(本明細書では、「重合型のフッ素含有樹脂粒子」とも称する)等が挙げられる。
【0107】
放射線照射型のフッ素含有樹脂粒子(放射線を照射して得られるフッ素含有樹脂粒子)とは、放射線重合と共に粒状化したフッ素含有樹脂粒子、重合後のフッ素含有樹脂を放射線照射による分解で、低分量化かつ微粒化したフッ素含有樹脂粒子を示す。
放射線照射型のフッ素含有樹脂粒子は、空気中での放射線の照射により、カルボン酸が多く生成するため、カルボキシル基も多く含有する。
【0108】
一方、重合型のフッ素含有樹脂粒子(重合法により得られるフッ素含有樹脂粒子)とは、懸濁重合法、乳化重合法等により、重合と共に粒状化し、かつ放射線照射されていないフッ素含有樹脂粒子を示す。
【0109】
フッ素含有樹脂粒子は、重合型のフッ素含有樹脂粒子がよい。重合型のフッ素含有樹脂粒子は、上述のように、懸濁重合法、乳化重合法等により、重合と共に粒状化し、かつ放射線照射されていないフッ素含有樹脂粒子である。
ここで、懸濁重合法によるフッ素含有樹脂粒子の製造は、例えば、分散媒中で、フッ素含有樹脂を形成するためのモノマーと共に、重合開始剤、触媒等の添加物を懸濁した後、モノマーを重合させつつ、重合物を粒子化する方法である。
また、乳化重合法によるフッ素含有樹脂粒子の製造は、例えば、分散媒中で、フッ素含有樹脂を形成するためのモノマーと共に、重合開始剤、触媒等の添加物を、界面活性剤(つまり乳化剤)により乳化させた後、モノマーを重合させつつ、重合物を粒子化する方法である。
特に、フッ素含有樹脂粒子は、製造工程において放射線照射を行われないで得られた粒子であることがよい。
ただし、フッ素樹脂粒子は、酸素が存在しない又は酸素濃度が低減された条件で放射線照射が行われた放射線照射型のフッ素樹脂粒子も適用してもよい。
【0110】
フッ素含有樹脂粒子の平均粒径は、特に制限はないが、0.2μm以上4.5μm以下が好ましく、0.2μm以上4μm以下がより好ましい。
【0111】
フッ素含有樹脂粒子の平均粒径は、次の方法により測定される値である。
SEM(走査型電子顕微鏡)により例えば倍率5000倍以上で観察し、フッ素含有樹脂粒子(一次粒子が凝集した二次粒子)の最大径を測定し、これを50個の粒子について行った平均値をフッ素含有樹脂粒子の平均粒径とする。なお、SEMとして日本電子製JSM-6700Fを使用し、加速電圧5kVの二次電子画像を観察する。
【0112】
フッ素含有樹脂粒子の比表面積(BET比表面積)は、分散安定性の観点から、5m/g以上15m/g以下であることが好ましく、7m/g以上13m/g以下であることがより好ましい。
なお、比表面積は、BET式比表面積測定器(島津製作所製:フローソープII2300)を用い窒素置換法にて測定した値である。
【0113】
フッ素含有樹脂粒子の見掛密度は、分散安定性の観点から、0.2g/ml以上0.5g/ml以下であることが好ましく、0.3g/ml以上0.45g/ml以下であることがより好ましい。
なお、見掛密度はJIS K6891(1995年)に準拠して測定される値である。
【0114】
フッ素含有樹脂粒子の溶融温度は、300℃以上340℃以下であることが好ましく、325℃以上335℃以下であることがより好ましい。
なお、溶融温度はJIS K6891(1995年)に準拠して測定される融点である。
【0115】
フッ素含有樹脂粒子の含有量は、最表面層に対して1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、7質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。
【0116】
-フッ素含有グラフトポリマー-
フッ素含有グラフトポリマーは、フッ素元素を有する分散剤である。
フッ素含有グラフトポリマーとしては、フッ化アルキル基を有する重合性化合物を単独重合又は共重合した重合体(以下「フッ化アルキル基含有重合体」とも称する)が挙げられる。
【0117】
フッ素含有グラフトポリマーとして具体的には、フッ化アルキル基を有する(メタ)アクリレートの単独重合体、フッ化アルキル基を有する(メタ)アクリレートとフッ素原子を有さないモノマーとのランダム又はブロック共重合体等が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの双方を意味する。
【0118】
フッ化アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アククリレートが挙げられる。
【0119】
フッ素原子を有さないモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アククリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルo-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0120】
その他、フッ素含有グラフトポリマーとして具体的には、米国特許5637142号明細書、特許第4251662号公報などに開示されたブロック又はブランチポリマーも挙げられる。更に、フッ素含有グラフトポリマーとして具体的には、フッ素系界面活性剤も挙げられる。
【0121】
これらの中でも、フッ素含有グラフトポリマーとしては、下記一般式(FA)で示される構造単位を有するフッ化アルキル基含有重合体が好ましく、下記一般式(FA)で示される構造単位と、下記一般式(FB)で示される構造単位とを有するフッ化アルキル基含有重合体がより好ましい。
【0122】
以下、下記一般式(FA)で示される構造単位と、下記一般式(FB)で示される構造単位とを有するフッ化アルキル基含有重合体について説明する。
【0123】
【化3】

【0124】
一般式(FA)及び(FB)中、RF1、RF2、RF3及びRF4は、各々独立に、水素原子、又はアルキル基を表す。
F1は、アルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖、-S-、-O-、-NH-、又は単結合を表す。
F1は、アルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖、-(Cfx2fx-1(OH))-又は単結合を表す。
F1は、-O-、又は-NH-を表す。
fl、fm及びfnは、各々独立に、1以上の整数を表す。
fp、fq、fr及びfsは、各々独立に、0または1以上の整数を表す。
ftは、1以上7以下の整数を表す。
fxは1以上の整数を表す。
【0125】
一般式(FA)及び(FB)中、RF1、RF2、RF3及びRF4を表す基としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基等が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0126】
一般式(FA)及び(FB)中、XF1及びYF1を表すアルキレン鎖(未置換アルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖)としては、炭素数1以上10以下の直鎖状又は分岐状のアルキレン鎖が好ましい。
F1を表す-(Cfx2fx-1(OH))-中のfxは、1以上10以下の整数を表すことが好ましい。
fp、fq、fr及びfsは、それぞれ独立に0または1以上10以下の整数を表すことが好ましい。
fnは、例えば、1以上60以下が好ましい。
【0127】
ここで、フッ素含有グラフトポリマーにおいて、一般式(FA)で示される構造単位と一般式(FB)で示される構造単位との比、つまり、fl:fmは、1:9から9:1までの範囲が好ましく、3:7から7:3までの範囲がより好ましい。
【0128】
フッ素含有グラフトポリマーは、一般式(FA)で示される構造単位と一般式(FB)で示される構造単位とに加え、一般式(FC)で示される構造単位を更に有していてもよい。一般式(FC)で示される構造単位の含有比は、一般式(FA)及び(FB)で示される構造単位の合計、即ちfl+fmとの比(fl+fm:fz)で、10:0から7:3までの範囲が好ましく、9:1から7:3までの範囲がより好ましい。
【0129】
【化4】
【0130】
一般式(FC)中、RF5、及びRF6は、各々独立に、水素原子、又はアルキル基を表す。fzは、1以上の整数を表す。
【0131】
一般式(FC)中、RF5、及びRF6を表す基としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基等が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0132】
フッ素含有グラフトポリマーの市販品としては、例えば、GF300、GF400(東亞合成社製)、サーフロンシリーズ(AGCセイミケミカル社製)、フタージェントシリーズ(ネオス社製)、PFシリーズ(北村化学社製)、メガファックシリーズ(DIC製)、FCシリーズ(3M製)等が挙げられる。
【0133】
フッ素含有グラフトポリマーの重量平均分子量Mwは、フッ素含有樹脂粒子の分散性向上の観点から、2万以上20万以下が好ましく、5万以上20万以下がより好ましい。
【0134】
フッ素含有グラフトポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される値である。GPCによる分子量測定は、例えば、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120を用い、東ソー製カラム・TSKgel GMHHR-M+TSKgel GMHHR-M(7.8mmI.D.30cm)を使用し、クロロホルム溶媒で行い、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作製した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0135】
フッ素含有グラフトポリマーの含有量は、フッ素含有樹脂粒子の含有量に対して4.5質量%以上9.0質量%以下である。
フッ素含有グラフトポリマーの含有量を上記範囲内とすることで、感光層の比誘電率が向上する。
【0136】
感光層の比誘電率向上の観点から、フッ素含有グラフトポリマーの含有量は、フッ素含有樹脂粒子の含有量に対して、5質量%以上6質量%以下とすることが好ましい。
【0137】
なお、フッ素含有グラフトポリマーは、1種を単独でまたは2種以上を併用してもよい。
【0138】
-消泡剤-
消泡剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤、フッ素系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0139】
シリコーン系消泡剤としては、例えば、ジメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、有機変性シリコーン、等が挙げられる。
【0140】
フッ素系消泡剤としては、例えば、フッ素変性シリコーン(フルオロシリコーン)、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物、等が挙げられる。
ポリエーテル系消泡剤としては、例えば、炭素数が16~20の脂肪族アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加して得られるポリオキシアルキレングリコールモノアルキル(又はアルケニル)エーテル等が挙げられる。
脂肪酸エステル系消泡剤としては、例えば、グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート等が挙げられる。
【0141】
消泡剤としては、最表面層表面の気泡の発生を抑制する観点から、ジメチルポリシロキサン及びフッ素系消泡剤から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ジメチルポリシロキサンであることがより好ましい。
【0142】
消泡剤の含有量は、最表面層に対して10ppm以上10000ppm以下である
消泡剤の含有量が、最表面層に対して10ppm以上10000ppm以下となると、最表面層製造の際に最表面層塗布液の表面張力を低下することができ、気泡が生じにくくなる。
【0143】
最表面層表面の気泡の発生を抑制する観点から、最表面層に対する消泡剤の含有量が10ppm以上5000ppm以下であることが好ましく、100ppm以上5000ppm以下であることがより好ましい。
【0144】
最表面層表面の気泡の発生を抑制する観点から、フッ素含有樹脂粒子の含有量に対する消泡剤の含有量が、0.01質量%以上15質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0145】
-最表面層の比誘電率-
本実施形態に係る感光体は、最表面層の比誘電率が3.75以上3.90以下である。
最表面層の比誘電率を3.75以上3.90以下とすることで、感光層の比誘電率が向上し、残留電位の残存を抑制することができる。
【0146】
最表面層の比誘電率を上記範囲内とするためには、フッ素含有グラフトポリマーの含有量を、フッ素含有樹脂粒子の含有量に対して4.5質量%以上9.0質量%以下とすることが好ましい。
【0147】
感光層の比誘電率が向上し、残留電位の残存を抑制する観点から、最表面層の比誘電率が3.77以上3.90以下であることが好ましく、3.80以上3.90以下であることがより好ましい。
【0148】
最表面層の比誘電率の測定について説明する。
電子写真感光体の測定対象層から板状試料を採取する。板状試料を金電極とアルミプレートで挟み、セルを作製する。このセルに対して、SOLARTRON社製Impedance Analyzerにて交流印加抵抗、静電容量測定を行って、比誘電率を算出する。測定条件は以下の通りである。
・測定周波数帯:1000000Hz~0.001Hz
・バイアス電圧:0V
・印加ピーク交流電場:0.2V/μm
・測定環境:30℃、85%RH
【0149】
-最表面層における純水の接触角-
本実施形態に係る感光体は、最表面層における純水の接触角が90°以上である。
最表面層における純水の接触角が90°以上となるように最表面層塗布液を調製することで、感光体の最表面層製造の際に最表面層塗布液の表面張力を低下することができ、最表面層に気泡が生じにくくなる。
【0150】
最表面層における純水の接触角を上記範囲内とするためには、最表面層に含有される消泡剤の含有量を、最表面層に対して10ppm以上10000ppm以下とすることが好ましい。
【0151】
最表面層表面の気泡の発生を抑制する観点から、最表面層における純水の接触角が95°以上120°以下であることが好ましく、100°以上110°以下であることがより好ましい。
【0152】
最表面層における純水の接触角の測定は、接触角計(協和界面化学(株)製、CA-X)を用い、温度25℃湿度50%の環境下で、純水を水平に置いた最表面層に3.1μl滴下し、滴下してから15秒後の液滴を光学顕微鏡により撮影し、その写真から純水の接触角θを求める。
【0153】
電荷輸送層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0154】
電荷輸送層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
【0155】
電荷輸送層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2-ブタノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状又は直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
【0156】
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0157】
電荷輸送層の膜厚は、例えば、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下の範囲内に設定される。
【0158】
(保護層)
保護層は、必要に応じて感光層上に設けられる。保護層は、例えば、帯電時の感光層の化学的変化を防止したり、感光層の機械的強度をさらに改善する目的で設けられる。
そのため、保護層は、硬化膜(架橋膜)で構成された層を適用することがよい。これら層としては、例えば、下記1)又は2)に示す層が挙げられる。
【0159】
1)反応性基及び電荷輸送性骨格を同一分子内に有する反応性基含有電荷輸送材料を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり当該反応性基含有電荷輸送材料の重合体又は架橋体を含む層)
2)非反応性の電荷輸送材料と、電荷輸送性骨格を有さず、反応性基を有する反応性基含有非電荷輸送材料と、を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり、非反応性の電荷輸送材料と、当該反応性基含有非電荷輸送材料の重合体又は架橋体と、を含む層)
【0160】
反応性基含有電荷輸送材料の反応性基としては、連鎖重合性基、エポキシ基、-OH、-OR[但し、Rはアルキル基を示す]、-NH、-SH、-COOH、-SiRQ1 3-Qn(ORQ2Qn[但し、RQ1は水素原子、アルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、RQ2は水素原子、アルキル基、トリアルキルシリル基を表す。Qnは1~3の整数を表す]等の周知の反応性基が挙げられる。
【0161】
連鎖重合性基としては、ラジカル重合しうる官能基であれば特に限定されるものではなく、例えば、少なくとも炭素二重結合を含有する基を有する官能基である。具体的には、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、スチリル基(ビニルフェニル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基等が挙げられる。なかでも、その反応性に優れることから、連鎖重合性基としては、ビニル基、スチリル基(ビニルフェニル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基であることが好ましい。
【0162】
反応性基含有電荷輸送材料の電荷輸送性骨格としては、電子写真感光体における公知の構造であれば特に限定されるものではなく、例えば、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の含窒素の正孔輸送性化合物に由来する骨格であって、窒素原子と共役している構造が挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン骨格が好ましい。
【0163】
これら反応性基及び電荷輸送性骨格を有する反応性基含有電荷輸送材料、非反応性の電荷輸送材料、反応性基含有非電荷輸送材料は、周知の材料から選択すればよい。
【0164】
保護層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0165】
保護層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた保護層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱等の硬化処理することで行う。
【0166】
保護層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
なお、保護層形成用塗布液は、無溶剤の塗布液であってもよい。
【0167】
保護層形成用塗布液を感光層(例えば電荷輸送層)上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0168】
保護層の膜厚は、例えば、好ましくは1μm以上20μm以下、より好ましくは2μm以上10μm以下の範囲内に設定される。
【0169】
(単層型感光層)
単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)は、例えば、電荷発生材料と電荷輸送材料と、必要に応じて、結着樹脂、及びその他周知の添加剤と、を含む層である。なお、これら材料は、電荷発生層及び電荷輸送層で説明した材料と同様である。
そして、単層型感光層中、電荷発生材料の含有量は、全固形分に対して0.1質量%以上10質量%以下がよく、好ましくは0.8質量%以上5質量%以下である。また、単層型感光層中、電荷輸送材料の含有量は、全固形分に対して5質量%以上50質量%以下がよい。
単層型感光層の形成方法は、電荷発生層や電荷輸送層の形成方法と同様である。
単層型感光層の膜厚は、例えば、5μm以上50μm以下がよく、好ましくは10μm以上40μm以下である。
【0170】
<画像形成装置(及びプロセスカートリッジ)>
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤により電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、を備える。そして、電子写真感光体として、上記本実施形態に係る感光体が適用される。
【0171】
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段を備える装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に電子写真感光体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;電子写真感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための電子写真感光体加熱部材を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
【0172】
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0173】
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
【0174】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、電子写真感光体を備える部分が、画像形成装置に対して着脱されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る感光体を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。なお、プロセスカートリッジには、電子写真感光体以外に、例えば、帯電手段、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
【0175】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0176】
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、図2に示すように、電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9(静電潜像形成手段の一例)と、転写装置40(一次転写装置)と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。図示しないが、中間転写体50に転写されたトナー像を記録媒体(例えば用紙)に転写する二次転写装置も有している。なお、中間転写体50、転写装置40(一次転写装置)、及び二次転写装置(不図示)が転写手段の一例に相当する。
【0177】
図2におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8(帯電手段の一例)、現像装置11(現像手段の一例)、及びクリーニング装置13(クリーニング手段の一例)を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材の一例)131を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。なお、クリーニング部材は、クリーニングブレード131の態様ではなく、導電性又は絶縁性の繊維状部材であってもよく、これを単独で、又はクリーニングブレード131と併用してもよい。
【0178】
なお、図2には、画像形成装置として、潤滑剤14を電子写真感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、及び、クリーニングを補助する繊維状部材133(平ブラシ状)を備えた例を示してあるが、これらは必要に応じて配置される。
【0179】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の各構成について説明する。
【0180】
-帯電装置-
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
【0181】
-露光装置-
露光装置9としては、例えば、電子写真感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体の分光感度領域内とする。半導体レーザの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
【0182】
-現像装置-
現像装置11としては、例えば、現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置が挙げられる。現像装置11としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて電子写真感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが好ましい。
【0183】
現像装置11に使用される現像剤は、トナー単独の一成分系現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤であってもよい。また、現像剤は、磁性であってもよいし、非磁性であってもよい。これら現像剤は、周知のものが適用される。
【0184】
-クリーニング装置-
クリーニング装置13は、クリーニングブレード131を備えるクリーニングブレード方式の装置が用いられる。
【0185】
クリーニングブレード131は、感光体表面層の摩耗の進行を均一にする観点から、電子写真感光体と接触する接触部が、押し込み弾性率(EIT[MPa])と反発弾性率(Re[%])との比(EIT/Re)が0.65以上であり、且つ反発弾性率(Re[%])が25%以上である部材で構成されていることが好ましい。
【0186】
クリーニングブレード131は、上記特性を満たす部材(以下「接触部材」と称す)を、少なくとも電子写真感光体との接触部に有していることが好ましい。つまり、接触部材からなり且つ電子写真感光体表面に接触する第一層と、該第一層の背面に、背面層としての第二層が設けられた2層構成であってもよいし、3層以上の構成であってもよい。また、電子写真感光体と接触する部分の角部のみが接触部材からなり、その周囲が他の材料からなる構成であってもよい。
【0187】
図3は、クリーニングブレード131の1つ目の例を示す概略図であり、クリーニングブレード131Aが電子写真感光体7の表面に接触した状態を示す図である。また、図4はクリーニングブレード131の2つ目の例を示す概略図であり、クリーニングブレード131Bが電子写真感光体7の表面に接触した状態を示す図である。図5はクリーニングブレード131の3つ目の例を示す概略図であり、クリーニングブレード131Cが電子写真感光体7の表面に接触した状態を示す図である。
【0188】
まず、クリーニングブレードの各部について図3を用いて説明する。以下においては、図3に示すごとく、クリーニングブレード131Aは、駆動する電子写真感光体7に接触して電子写真感光体7の表面をクリーニングする接触部(接触角部)131AAと、接触角部131AAが1つの辺を構成し且つ前記駆動の方向(矢印A方向)の上流側を向く先端面131ABと、接触角部131AAが1つの辺を構成し且つ前記駆動の方向(矢印A方向)の下流側を向く腹面131ACと、先端面131ABと1つの辺を共有し且つ腹面131ACに対向する背面131ADと、を有する。
また、接触角部131AAと平行な方向を奥行き方向と、接触角部131AAから先端面131ABが形成されている側の方向を厚み方向と、接触角部131AAから腹面131ACが形成されている側の方向を幅方向と称す。
【0189】
図3に示すクリーニングブレード131Aは、電子写真感光体7と接触する部分(接触角部)131AAを含めて、全体が単一の材料から構成されており、即ち接触部材のみからなる態様である。
【0190】
なお、クリーニングブレード131は、図4に示す例のごとく、電子写真感光体7と接触する部分(接触角部)131AAを含み、腹面131AC側全面に渡って形成され且つ接触部材からなる第一層131BBと、該第一層よりも背面131AD側に形成され且つ接触部材とは異なる材料からなる背面層としての第二層131BCと、が設けられた2層構成であってもよい。
【0191】
更に、クリーニングブレード131は、図5に示す例のごとく、電子写真感光体7と接触する部分つまり接触角部131AAを含み、1/4にカットされた円柱が奥行き方向に伸びた形状を有し該形状の直角部分が接触角部131AAを形成する、接触部材からなる接触部材(エッジ部材)131CAと、接触部材131CAの厚み方向の背面131AD側および幅方向の先端面131ABとは反対側を覆い、つまり前記接触部材131CA以外の部分を構成する、接触部材とは異なる材料からなる背面部材131CCと、が設けられた構成であってもよい。
なお、図5では接触部材として1/4にカットされた円柱の形状を有する部材の例を示したが、これに限定されるものではない。接触部材としては、例えば楕円状の円柱が1/4にカットされた形状や、正方形の四角柱、長方形の四角柱等の形状であってもよい。
【0192】
また、通常クリーニングブレードは、例えば、剛性板状支持材に接着されて用いられる。
【0193】
[接触部材の組成]
クリーニングブレード131における接触部材は、ポリウレタンゴムを含有していることが好ましい。そして、接触部材は、押し込み弾性率(EIT[MPa])と反発弾性率(Re[%])との比(EIT/Re)が0.65以上であり、且つ反発弾性率(Re[%])が25%以上である部材で構成されていることが好ましい。
【0194】
・ポリウレタンゴム
ポリウレタンゴムは、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、を少なくとも重合したポリウレタンゴムである。ポリウレタンゴムは、必要に応じて、ポリオール成分以外にポリイソシアネートのイソシアネート基と反応し得る官能基を有する樹脂を重合したポリウレタンゴムであってもよい。
【0195】
ポリウレタンゴムは、ハードセグメントとソフトセグメントとを有していることが好ましい。「ハードセグメント」および「ソフトセグメント」とは、ポリウレタンゴム材料中で、前者を構成する材料の方が、後者を構成する材料よりも相対的に硬い材料からなり、後者を構成する材料の方が前者を構成する材料よりも相対的に柔らかい材料からなるセグメントを意味する。
なお、ハードセグメントを構成する材料(ハードセグメント材料)としては、ポリオール成分のうち低分子ポリオール成分、ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応し得る官能基を有する樹脂等が挙げられる。一方、ソフトセグメントを構成する材料(ソフトセグメント材料)としては、ポリオール成分のうち高分子ポリオール成分が挙げられる。
【0196】
ここで、ハードセグメントの凝集体の平均粒子径は、1μm以上10μm以下が好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましい。
ハードセグメントの凝集体の平均粒子径を1μm以上とすることで、接触部材の表面の摩擦抵抗が低減され易くなる。そのため、ブレード挙動が安定化され、局所的な摩耗が抑制され易くなる。
一方、ハードセグメントの凝集体の平均粒子径を10μm以下とすることで、欠けの発生が抑制され易くなる。
【0197】
ハードセグメントの凝集体の平均粒子径は、次の通り測定される。偏光顕微鏡(オリンパス製BX51-P)を用い、倍率×20にて画像を撮影し、画像処理を施して画像を2値化し、クリーニングブレード1本につき5点(1点につき5個の凝集体の粒子径を測定)、クリーニングブレード20本について、凝集体の粒子径(円相当径)を測定し、計500個から平均粒子径を算出する。
なお、画像の2値化は、画像処理ソフトOLYMPUS Stream essentials(オリンパス社製)を用い、結晶部およびハードセグメントの凝集体を黒、非晶部(ソフトセグメントに相当)を白になるよう色相/彩度/輝度の閾値を調整する。
【0198】
・ポリオール成分
ポリオール成分は、高分子ポリオールと低分子ポリオールとが含まれることが好ましい。
【0199】
高分子ポリオール成分は、数平均分子量が500以上(好ましくは500以上5000以下)のポリオールであることが好ましい。高分子ポリオール成分としては、低分子ポリオールと二塩基酸との脱水縮合で得られるポリエステルポリオール、低分子ポリオールとアルキルカーボネートの反応により得られるポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール等の周知のポリオールが挙げられる。なお、高分子ポリオールの市販品としては、例えば、ダイセル化学社製のプラクセル205やプラクセル240などが挙げられる。
【0200】
ここで、数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法で測定された値である。以下、同様である。
【0201】
これら高分子ポリオールは、単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0202】
高分子ポリオール成分の重合比は、ポリウレタンゴムの全重合成分に対して、30モル%以上50モル%以下がよく、好ましくは40モル%以上50モル%以下であることが好ましい。
【0203】
低分子ポリオール成分は、分子量(数平均分子量)500未満のポリオールであることが好ましい。低分子ポリオールは、鎖長延長剤、及び架橋剤として機能する材料である。
【0204】
低分子ポリオール成分としては、1,4-ブタンジオールが好ましい。1,4-ブタンジオールの割合は、全ポリオール成分(高分子ポリオール+低分子ポリオール)に対して50モル%超え75モル%以下(好ましくは52モル%以上75モル%、より好ましくは55モル%以上75モル%以下、さらに好ましくは55モル%以上60モル%以下)であることが好ましい。
なお、1,4-ブタンジオールにおける全低分子ポリオール成分に対する割合は、好ましくは80モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上であり、更に好ましくは100モル%である。つまり、全低分子ポリオール成分として、1,4-ブタンジオールを使用することが最も好ましい。
【0205】
低分子ポリオール成分として、1,4-ブタンジオール以外に、鎖長延長剤及び架橋剤として周知なジオール(2官能)、トリオール(3官能)、又はテトラオール(4官能)等も挙げられる。
これら1,4-ブタンジオール以外のポリオールは、単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0206】
低分子ポリオール成分の重合比は、ポリウレタンゴムの全重合成分に対して、50モル%を超え75モル%以下がよく、好ましくは52モル%以上75モル%、より好ましくは55モル%以上75モル%以下、さらに好ましくは55モル%以上60モル%以下である。
【0207】
・ポリイソシアネート成分
ポリイソシアネート成分としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、1,6-ヘキサンジイソシアネート(HDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)および3,3-ジメチルビフェニル-4,4-ジイソシアネート(TODI)などが挙げられる。
【0208】
ポリイソシアネート成分としては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)がより望ましい。
【0209】
これらポリイソシアネート成分は、単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0210】
ポリイソシアネート成分の重合比は、ポリウレタンゴムの全重合成分に対して、5モル%以上25モル%以下がよく、好ましくは10モル%以上20モル%以下である。
【0211】
・イソシアネート基に対して反応し得る官能基を有する樹脂
イソシアネート基に対して反応し得る官能基を有する樹脂(以下「官能基含有樹脂」と称する)は、柔軟性のある樹脂であることが望ましく、柔軟性の点から直鎖構造を有する脂肪族系の樹脂であることがより望ましい。官能基含有樹脂の具体例としては、2つ以上のヒドロキシル基を含むアクリル樹脂や、2つ以上のヒドロキシル基を含むポリブタジエン樹脂、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0212】
2つ以上のヒドロキシル基を含むアクリル樹脂の市販品としては、例えば、綜研化学社製のアクトフロー(グレード:UMB-2005B、UMB-2005P、UMB-2005、UME-2005等)が挙げられる。
【0213】
2つ以上のヒドロキシル基を含むポリブタジエン樹脂の市販品としては、例えば、出光興産社製、R-45HT等が挙げられる。
【0214】
2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂としては、従来の一般的なエポキシ樹脂のごとく硬くて脆い性質を有するものではなく、従来のエポキシ樹脂よりも柔軟強靭性であるものが望ましい。上記エポキシ樹脂としては、例えば、分子構造の面では、その主鎖構造中に、主鎖の可動性を高くし得る構造(柔軟性骨格)を有するものが好適であり、柔軟性骨格としては、アルキレン骨格や、シクロアルカン骨格、ポリオキシアルキレン骨格等が挙げられ、特にポリオキシアルキレン骨格が好適である。
また、物性面では、従来のエポキシ樹脂と比べて、分子量に比して粘度が低いエポキシ樹脂が好適である。具体的には、重量平均分子量が900±100の範囲内であり、25℃における粘度が15000±5000mPa・sの範囲内であることが望ましく、15000±3000mPa・sの範囲内であることがより望ましい。この特性を有するエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、DIC製、EPLICON EXA-4850-150等が挙げられる。
【0215】
・ポリウレタンゴムの製造方法
ポリウレタンゴムの製造は、プレポリマー法やワンショット法など、ポリウレタンの一般的な製造方法が用いられる。プレポリマー法は耐摩耗性及び欠け性に優れるポリウレタンが得られるため好適であるが、製法により制限されるものではない。
なお、クリーニングブレードの成形は、上記方法により調製されたクリーニングブレード形成用の組成物を、例えば、遠心成形や押し出し成形等を利用して、シート状に形成し、切断加工等を施すことにより作製される。
【0216】
ここで、ポリウレタンゴムの製造に使用する触媒としては、第三級アミン等のアミン系化合物、第四級アンモニウム塩、有機錫化合物等の有機金属化合物等が挙げられる。
上記第三級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン等のトリアルキルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ブタンジアミン等のテトラアルキルジアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミノアルコール、エトキシル化アミン、エトキシル化ジアミン、ビス(ジエチルエタノールアミン)アジペート等のエステルアミン、トリエチレンジアミン(TEDA)、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン等のシクロヘキシルアミン誘導体、N-メチルモルホリン、N-(2-ヒドロキシプロピル)-ジメチルモルホリン等のモルホリン誘導体、N,N’-ジエチル-2-メチルピペラジン、N,N’-ビス-(2-ヒドロキシプロピル)-2-メチルピペラジン等のピペラジン誘導体等が挙げられる。
【0217】
第四級アンモニウム塩としては、例えば、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム・オクチル酸塩、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)・オクチル酸塩、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)-オクチル酸塩、DBU-オレイン酸塩、DBU-p-トルエンスルホン酸塩、DBU-蟻酸塩、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム・蟻酸塩等が挙げられる。
【0218】
有機錫化合物としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキソエート)等のジアルキル錫化合物や、2-エチルカプロン酸第1錫、オレイン酸第1錫等が挙げられる。
【0219】
これら触媒の中でも、耐加水分解性の点では第三級アンモニウム塩のトリエチレンジアミン(TEDA)が用いられ、加工性の点で第四級アンモニウム塩が好適に用いられる。第四級アンモニウム塩の中でも、高反応活性である1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)・オクチル酸塩、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)-オクチル酸塩、DBU-蟻酸塩が好適に用いられる。
【0220】
触媒の含有量は、接触部材を構成するポリウレタンゴム全体の0.0005質量%以上0.03質量%以下の範囲が好ましく、特に好ましくは0.001質量%以上0.01質量%以下である。
これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0221】
[接触部材の物性]
【0222】
クリーニングブレード131は、感光体表面層の摩耗を均一に進行させる観点から、電子写真感光体と接触する接触部が、押し込み弾性率(EIT[MPa])と反発弾性率(Re[%])との比(EIT/Re)が0.65以上であり、且つ反発弾性率(Re[%])が25%以上である部材で構成されていることが好ましい。
【0223】
感光体表面層の摩耗を均一に進行させる観点から、接触部材(ポリウレタンゴム部材)のEIT/Re比(押し込み弾性率(EIT[MPa])と反発弾性率(Re[%])との比)は、好ましくは0.65以上であり、より好ましくは0.75以上であり、更に好ましくは0.85以上である。なお、接触部材のEIT/Re比の上限は、耐欠け性の点から、1.1以下が好ましく、より好ましくは1.0以下である。
【0224】
接触部材(ポリウレタンゴム部材)の反発弾性率(Re[%])は、好ましくは25%以上であるが、より好ましくは28%以上であり、更に好ましくは30%以上である。なお、接触部の反発弾性率(Re[%])の上限は、ブレード鳴きの抑制及び耐摩耗性の点から、60%以下が好ましく、より好ましくは40%以下である。
【0225】
接触部材(ポリウレタンゴム部材)の押し込み弾性率(EIT[MPa])は、10MPa以上30MPa以下が好ましく、より好ましくは15MPa以上25MPa以下である。
【0226】
押し込み弾性率(EIT)は、ISO14577(2002)に準拠して、圧子の荷重-侵入量曲線のうち、除荷時に得られた除荷曲線において、最大荷重の65%~95%の荷重域における傾きから測定する。測定条件は、次の通りである。
・測定装置:ナノインデンテーション法 ダイナミック超微小硬度計「商品名PICODENTOR HM500、(製造元フィッシャー・インストルメンツ社製)」
・圧子:120゜の面角を持つ円錐のBerkovich型ダイヤモンド圧子
・圧子の押込み深さ:20μm
・圧子の押込み速度:12.5μm/秒
・圧子の除荷速度:12.5m/秒
【0227】
反発弾性率は、JIS K6255(1996年)に準じて、23℃環境下にてリュプケ式反発弾性試験機を用いて求める。
【0228】
[非接触部材の組成]
次に、クリーニングブレード131が、図4又は図5に示す例のごとく、接触部材と該接触部材以外の領域(非接触部材)とがそれぞれ異なる材料にて構成されている場合における、非接触部材の組成について説明する。
【0229】
非接触部材は、接触部材を支持する機能を有していれば、特に限定されずに公知の如何なる材料をも用い得る。具体的には、非接触部材に用いられる材料としては、例えば、ポリウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、プロロプレンゴム、ブタジエンゴム等が挙げられる。これらの中で、ポリウレタンゴムがよい。ポリウレタンゴムとしては、エステル系ポリウレタン、エーテル系ポリウレタンが挙げられ、特にエステル系ポリウレタンが望ましい。
【0230】
[クリーニングブレードの製造]
図3に示す接触部材のみからなるクリーニングブレードの場合には、前述の接触部材の成形方法によってクリーニングブレードが製造される。
【0231】
また、図4に示す二層構成などの複数層構成のクリーニングブレードの場合には、接触部材としての第一層および非接触部材としての第二層(3層以上の層構成である場合には複数の層)を、相互に貼り合わせることによりクリーニングブレードが作製される。上記貼り合わせる方法としては、両面テープ、各種接着剤等が好適に用いられる。また、成型時に時間差を置いて各層の材料を金型に流し込み、接着層を設けずに材料間で結合させることによって複数の層を接着してもよい。
【0232】
また、図5に示す接触部材(エッジ部材)と非接触部材(背面部材)とを有する構成の場合には、図5に示す接触部材131CAを2つ、腹面131AC側同士を重ね合わせた半円柱の形状に対応する空洞(接触部材形成用の組成物を流し込む領域)を有する第一金型と、接触部材131CAおよび非接触部材131CCを2つ、腹面131AC側同士を重ね合わせた形状に対応する空洞を有する第二金型と、を準備する。前記第一金型の前記空洞に接触部材形成用の組成物を流し込んで硬化させ接触部材131CAが2つ重なった形状の第一成形物を形成する。次いで、上記第一金型を取り外した後、更に第二金型の空洞の内部に前記第一成形物が配置されるよう、第二金型を設置する。その後、第二金型の空洞内に、前記第一成形物を覆うよう非接触部材形成用の組成物を流し込み硬化させ、前記接触部材131CAおよび非接触部材131CCが2つ腹面131AC側同士で重なった形状の第二成形物を形成する。次いで、形成された第二成形物を真ん中、つまり腹面131ACとなる部分で切断して、半円柱形状の接触部材が真ん中で分断されて1/4に切断された円柱形状となるようカットし、更に定められた寸法にカットすることで図5に示すクリーニングブレードが得られる。
【0233】
なお、クリーニングブレード方式以外にも、ファーブラシクリーニング方式、現像同時クリーニング方式を採用してもよい。
【0234】
-転写装置-
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0235】
-中間転写体-
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等を含むベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いてもよい。
【0236】
図6は、本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図6に示す画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【実施例
【0237】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0238】
<フッ素含有樹脂粒子の製造>
(フッ素含有樹脂粒子(1)の製造)
次の通り、フッ素含有樹脂粒子(1)を製造した。
オートクレーブに、脱イオン水3リットルおよびパーフルオロオクタン酸アンモニウム3.0g、さらに乳化安定剤としてパラフィンワックス(日本石油(株)製)110gを仕込み、窒素で3回、TFE(テトラフルオロエチレン)で2回系内を置換して酸素を取り除いた後、TFEで内圧を1.0MPaにして、250rpmで撹拌しながら、内温を70℃に保った。つぎに、連鎖移動剤として常圧で150cc分のエタンおよび重合開始剤である300mgの過硫酸アンモニウムを溶かした20mlの水溶液を系内に仕込み反応を開始した。反応中は、系内の温度を70℃に保ち、オートクレーブの内圧は常に1.0±0.05MPaに保つように連続的にTFEを供給した。開始剤を添加してから反応で消費されたTFEが1000gに達した時点で、TFEの供給と撹拌を停止し、反応を終了した。その後遠心分離により粒子を分離し、更にメタノール400質量部を採取し超音波を照射しながら攪拌機250rpmにて10分洗浄し、上澄みをろ過した。本操作を3回繰り返した後、ろ過物を減圧下60度、17時間乾燥させた。
以上の工程を経て、フッ素含有樹脂粒子(1)を製造した。
【0239】
(フッ素含有樹脂粒子(2)の製造)
次の通り、フッ素含有樹脂粒子(2)を製造した。
市販のホモポリテトラフルオロエチレンファインパウダー(ASTM D 4895(2004)に準拠して測定した標準比重:2.175)100質量部、添加剤としてエタノール2.4質量部をバリアナイロン製の袋に採取し、酸素濃度が10%になるように袋全体を窒素置換した。その後、室温にてコバルト-60γ線を150kGy照射し、低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末を得た。得られた粉末を粉砕し、フッ素含有樹脂粒子(2)を得た。
【0240】
(フッ素含有樹脂粒子(C1)の製造)
次の通り、フッ素含有樹脂粒子(C1)を製造した。
市販のホモポリテトラフルオロエチレンファインパウダー(ASTM D 4895(2004)に準拠して測定した標準比重2.175)100質量部、添加剤としてエタノール2.4質量部をバリアナイロン製の袋に採取した。その後、空気中、室温にてコバルト-60γ線を150kGy照射し、低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末を得た。得られた粉末を粉砕し、フッ素含有樹脂粒子(C1)を得た。
【0241】
(フッ素含有樹脂粒子(C2)の製造)
次の通り、フッ素含有樹脂粒子(C2)を製造した。
市販のホモポリテトラフルオロエチレンファインパウダー(ASTM D 4895(2004)に準拠して測定した標準比重:2.175)100質量部、添加剤としてエタノール2.4質量部をバリアナイロン製の袋に採取し、酸素濃度が15%になるように袋全体を窒素置換した。その後、室温にてコバルト-60γ線を150kGy照射し、低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末を得た。得られた粉末を粉砕し、フッ素含有樹脂粒子(C2)を得た。
【0242】
<フッ素含有グラフトポリマーの製造>
次の通り、フッ素含有グラフトポリマーを製造した。
撹拌装置、還流冷却管、温度計及び窒素ガス吹き込み口を備えた500mLの反応容器に、メチルイソブチルケトン5質量部を入れて撹拌し、窒素ガス雰囲気下で反応容器内の溶液温度を80℃に維持した。パーフルオロヘキシルエチルアクリレート9質量部、マクロモノマーAA-6(東亞合成株式会社製)21質量部、重合開始剤としてパーヘキシルO(日油株式会社製)0.2質量部、メチルイソブチルケトン45質量部の混合溶液を、シリンジ滴下ポンプを使用して反応容器内へ2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に2時間撹拌を続けた後、溶液温度を90℃に上げて更に2時間撹拌した。
反応後に得られたメチルイソブチルケトン樹脂溶液に、メタノール400mlを滴下し、フッ素含有グラフトポリマーを析出させた。析出した固形分をろ別後、乾燥させフッ素含有グラフトポリマーを得た。
【0243】
<クリーニングブレードの製造>
<クリーニングブレード(1)~(7)、クリーニングブレード(C1)~(C4)>
表1に従って、ポリオールの配合に従って、高分子ポリオール成分、低分子ポリオール成分及びイソシアネート成分の種類及びモル比、並びに、硬化成熟条件を変更し、クリーニングブレードを作製した。具体的には、次の通りである。
【0244】
まず、アジピン酸(HOOC-C-COOH)と、1,4ブタンジオールと、を1:1(モル比)で重合し、かつ末端が-OHとなるよう処理をして、炭素数4の直鎖ジオール(ブタンジオール)が重合されたポリエステルポリオールを得た。得られたポリエステルポリオールの数平均分子量は2000であった。
【0245】
次に、高分子ポリオール成分としてポリエステルポリオール、低分子ポリオールとして1,4ブタンジオール(1,4-BD,鎖延長剤)、イソシアネートとして4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI、ポリイソシアネート、日本ポリウレタン工業(株)製、ミリオネートMT)、及び架橋剤としてトリメチロールプロパン(TMP、三菱ガス化学株式会社製)を、表1に示す配合量(モル比)で、窒素雰囲気下、80℃で2時間反応させ、クリーニングブレード形成用組成物A1を調製した。
次いで、140℃に金型を調整した遠心成形機に上記クリーニングブレード形成用組成物A1を流し込み、表1に示す硬化成熟条件で、硬化した後、成熟加熱した。そして、冷却した硬化物をカットして、幅8mm、厚さ2mmのクリーニングブレードを得た。
【0246】
ただし、クリーニングブレード(6)では、高分子ポリオール成分としてポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)を使用した。
【0247】
なお、表1に示す硬化成熟条件A~Eは、次の通りである。
・硬化成熟条件A:100℃で1時間硬化反応後、110℃で24時間成熟加熱
・硬化成熟条件B:110℃で1時間硬化反応後、110℃で24時間成熟加熱
・硬化成熟条件C:110℃で2時間硬化反応後、110℃で48時間成熟加熱
・硬化成熟条件D:100℃で40分硬化反応後、110℃で24時間成熟加熱
・硬化成熟条件E:100℃で40分硬化反応後、100℃で24時間成熟加熱
また、表1記載の「mol%」は全ポリオール成分(高分子ポリオール+低分子ポリオール)に対する、各成分のモル%の値である。
【0248】
<実施例1>
-感光体の作製-
得られたフッ素含有樹脂粒子を使用し、次の通り感光体を作製した。
【0249】
酸化亜鉛:(平均粒径70nm:テイカ社製:比表面積値15m/g)100部をテトラヒドロフラン500部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBE503:信越化学工業社製)1.4部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間)焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛を得た。
前記表面処理を施した酸化亜鉛110部を500部のテトラヒドロフランと攪拌混合し、アリザリン0.6部を50部のテトラヒドロフランに溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧ろ過にてアリザリンを付与させた酸化亜鉛をろ別し、さらに60℃で減圧乾燥を行い、アリザリン付与酸化亜鉛を得た。
このアリザリン付与酸化亜鉛60部と硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製):13.5部とブチラール樹脂 (エスレックBM-1、積水化学工業社製)15部とメチルエチルケトン85部とを混合し混合液を得た。この混合液38部と、メチルエチルケトン25部と、を混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い、分散液を得た。
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005部、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社):30部を添加し、下引層用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて、円筒状アルミニウム基材上に塗布し、170℃、30分の乾燥硬化を行い厚さ24μmの下引層を得た。
【0250】
次に、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°、28.3°に強い回折ピークを持つヒドロキシガリウムフタロシアニン1部を、ポリビニルブチラール(エスレックBM-5、積水化学工業社製)1部及び酢酸n-ブチル80部と混合し、これをガラスビーズと共にペイントシェーカーで1時間分散処理することにより電荷発生層用塗布液を調製した。得られた塗布液を下引層が形成された導電性支持体上に浸漬塗布し、130℃で10分間加熱乾燥して膜厚0.15μmの電荷発生層を形成した。
【0251】
電荷輸送材料として下記式(CTM1)で表されるベンジジン化合物45部、結着樹脂として下記式(PCZ1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物(粘度平均分子量:40,000)55部をトルエン150部、テトラヒドロフラン350部に溶解させ、フッ素含有樹脂粒子(1)8部、フッ素含有グラフトポリマーを0.4部及び消泡剤(D1)として、シリコーン系消泡剤である品名:KP-340(信越化学工業社製)0.06部(最表面層に対してシリコーン成分50ppm)加え、高圧ホモジナイザーで5回処理して、電荷輸送層用塗布液を調製した。
得られた塗布液を上記電荷発生層上に浸漬塗布法で塗布し、130℃、45分の加熱を行い膜厚31μmの電荷輸送層を形成した。
【0252】
【化5】

【0253】
【化6】

【0254】
以上の工程を経て、各感光体を作製した。
【0255】
(プロセスカートリッジの作製)
作製した感光体を、画像形成装置(DocuCentre-V C7775、富士ゼロックス社製)のクリーニングブレード(1)を備えるプロセスカートリッジに装着し、プロセスカートリッジを得た。
【0256】
<実施例2~30、比較例1~10>
フッ素含有樹脂粒子の種類及び添加量、フッ素含有グラフトポリマーの添加量、消泡剤の種類及び添加量、並びに、クリーニングブレードの種類を表2~表4記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、感光体及びプロセスカートリッジを作製した。
【0257】
<評価>
(気泡発生評価)
各例にて電荷輸送層塗布時における、気泡発生の有無を目視により確認し以下の基準で判断した。
-気泡評価基準-
A(○):気泡未発生
B(△):気泡が軽微に発生
C(×):気泡が多数発生
【0258】
(フッ素含有樹脂粒子の分散性の評価)
各例で得られた感光体について、片刃トリミング用カミソリ(日新EM(株)製)を用いて下引層から最表面層までの積層の切片を切り出し、光硬化性アクリル樹脂(品名D-800:日本電子データム製)を用いて切片を包埋した。次にダイヤモンドナイフを用いるミクロトーム法(ミクロトーム装置:LEICA社製)で、積層の切片の断面が表れるように切削した。切片の断面を、オリンパス光学工業社製のレーザ顕微鏡OLS-1100にて、ステップ量0.01μmの条件で観察し、以下の基準で判断した。
【0259】
-評価基準-
A(○):凝集が確認されなかった
B(△):部分的に弱い凝集が確認された
C(×):著しい凝集が確認された
【0260】
(実機評価)
-評価用画像形成装置-
得られた感光体電子写真感光体を、富士ゼロックス社製 DocuCentre-V C7775に装着した。また、表面電位計(トレック社製、トレック334)を用いて、感光体の表面から1mm離れた位置に測定対象の領域に表面電位プローブを設けた。
この装置を下記帯電性維持性及び残留電位評価用画像形成装置とした。
【0261】
(帯電性維持性の評価)
得られた感光体の帯電性について、次の通り評価した。
評価用画像形成装置により、帯電後の表面電位を-700Vに設定した後、高温高湿環境下(温度28℃、湿度85%RHの環境下)で、A4用紙に画像濃度30%の全面ハーフトーン画像を70,000枚出力した。そして、表面電位計により表面電位を測定し、下記評価基準で評価した。
A(○):表面電位が-700V以上-680V未満
B(△):表面電位が-680V以上-660V未満
C(×):表面電位が-660V以上-680V未満
【0262】
(残留電位の評価)
得られた感光体の残留電位について、次の通り評価した。
評価用画像形成装置により、帯電後の表面電位を-700Vに設定した後、高温高湿環境下(温度28℃、湿度85%RHの環境下)で、A4用紙に画像濃度30%の全面ハーフトーン画像を70,000枚出力した。
そして、表面電位計により、100枚出力後、除電した感光体の初期残留電位と、70,000枚出力後、除電した感光体の経時残留電位と、を測定し、その差分(絶対値)を求め、下記基準で評価した。
A(○):残留電位の差分が10V未満
B(△):残留電位の差分が10V以上-20V未満
C(×):残留電位の差分が20V以上
【0263】
以下、表2~表4中の記載について説明する。
消泡剤種「D2」は、フッ素系消泡剤(品名:サーフロンS-651、AGCセイミケミカル社製)を表す。
「-」は該当する成分を含有しないことを示す。
【0264】
【表1】
【0265】
【表2】
【0266】
【表3】
【0267】
【表4】
【0268】
上記結果から、本実施例の感光体は、残留電位が低下し、最表面層表面の気泡の発生が抑制されることがわかる。
【符号の説明】
【0269】
1 下引層、2 電荷発生層、3 電荷輸送層、4 導電性基体、7A,7 電子写真感光体、8 帯電装置、9 露光装置、11 現像装置、13 クリーニング装置、14 潤滑剤、40 転写装置、50 中間転写体、100 画像形成装置、120 画像形成装置、131 クリーニングブレード、132 繊維状部材(ロール状)、133 繊維状部材(平ブラシ状)、300 プロセスカートリッジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6