(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】虚像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240402BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
(21)【出願番号】P 2020062278
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】松本 大輝
(72)【発明者】
【氏名】米窪 政敏
(72)【発明者】
【氏名】武田 高司
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-008749(JP,A)
【文献】特開2019-204092(JP,A)
【文献】国際公開第94/001798(WO,A1)
【文献】特開平07-159719(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0050008(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01 - 27/02
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像光生成装置と、
前記画像光生成装置から射出された画像光を投射する投射光学系と、
前記投射光学系からの前記画像光を反射する折り返しミラーと、
前記折り返しミラーからの前記画像光の一部を反射又は透過させる半透過ミラーと、
前記半透過ミラーを経た前記画像光を前記半透過ミラーに向けて反射して射出瞳を形成
する凹面ミラーとを備え、
前記折り返しミラーから前記半透過ミラーに向かう光軸と、前記凹面ミラーから射出瞳
に向かう光軸とを含む基準平面に対して交差する方向に投射光学系の光軸が配置され
、
前記折り返しミラーは、前記画像光生成装置からの光路順で、第1ミラーと第2ミラー
とを含み、
前記第2ミラーと前記半透過ミラーとは、前記凹面ミラーの軸線に垂直な平面に対して
、水平軸の周りにそれぞれ45°傾斜させた状態を基準として、異なる傾斜角をなすよう
に傾斜させた状態で配置されている、虚像表示装置。
【請求項2】
前記第2ミラーと前記半透過ミラーとは、前記軸線に垂直な平面となす角度が45°未
満となるように配置される、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項3】
前記折り返しミラーは、前記画像光生成装置からの光路順で、前記第1ミラーと前記第
2ミラーとを含み、
前記投射光学系から前記第1ミラーにかけての光軸は、前記第2ミラーでの反射の前後
における光軸を含む平面の法線であって前記第1ミラーからの光軸の始点を通るものを基
準として、前記第1ミラーでの反射後の光軸の周りに回転するように傾斜する、請求項1
~2のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項4】
前記第2ミラーと前記凹面ミラーとが一体的に接続されている、請求項1~3のいずれ
か一項に記載の虚像表示装置。
【請求項5】
前記画像光生成装置から前記折り返しミラーにかけての光路が前記半透過ミラーの上側
に配置される、請求項1~4のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項6】
前記画像光生成装置から前記折り返しミラーにかけての光路が前記半透過ミラーの下側
に配置される、請求項1~5のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項7】
前記折り返しミラーは、前記凹面ミラー及び前記半透過ミラーの有効領域を遮ることを
回避するように配置される、請求項1~6のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項8】
前記半透過ミラーと前記凹面ミラーの軸線に垂直な平面とがなす角度が、前記第2ミラ
ーと前記凹面ミラーの軸線に垂直な平面とがなす角度よりも大きいとき、前記画像光生成
装置の表示領域は前記投射光学系の光軸を回転軸として前記凹面ミラーの軸線と平行な面
を基準に時計回りに配置され、
前記半透過ミラーと前記凹面ミラーの軸線に垂直な平面とがなす角度が、前記第2ミラ
ーと前記凹面ミラーの軸線に垂直な平面とがなす角度よりも小さいとき、前記画像光生成
装置の表示領域は前記投射
光学系の光軸を回転軸として前記凹面ミラーの軸線と平行な面
を基準に反時計回りに配置される、請求項1または請求項2に記載の虚像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドマウントディスプレイ等である虚像表示装置に関し、特に半透過反射面を用いることによって画像光を凹面ミラーに入射させ凹面ミラーからの反射光を観察するタイプの虚像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半透過反射面と凹面ミラーとを備える虚像表示装置として、例えば半透過反射面を組み込んだプリズム部材を備えるものが存在する(特許文献1参照)。この装置では、プリズム部材に入射した画像光をプリズム部材の全反射面で半透過反射面に向けて全反射させて導くとともに、半透過反射面によって画像光をプリズム部材の前方に配置された集光反射面に向けて反射することが記載されている。この虚像表示装置では、表示デバイスからの横方向に沿って射出された画像光を投射光学部材に付随するプリズムミラーにより折り曲げて、下方に配置されたプリズム部材に入射させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の虚像表示装置では、プリズム部材において外界側の面と使用者側の面とを平行にするため、2つのプリズムを貼り合わせる必要があり、光学系が重くなったり、凹面ミラーをプリズム部材の外界側に配置しなければならないため凹面ミラー部分が厚く出っ張ってしまったりすることがあった。
【0005】
さらに、半透過反射面と凹面ミラーとを組み合わせた虚像表示装置において、コンパクト化や外観をスタイリッシュにする要請から、半透過反射面の傾斜を所望の程度に調整したり、投射光学系の光軸を凹面ミラーの中心光軸を含む鉛直面に対して交差するように所望の方向に折り曲げたりする必要が生じる場合がある。このような場合、画像光の傾き又は回転が生じる可能性があるが、これを補正して傾きのない画像を表示する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面における虚像表示装置は、画像光生成装置と、画像光生成装置から射出された画像光を投射する投射光学系と、投射光学系からの画像光を反射する折り返しミラーと、折り返しミラーからの画像光の一部を反射又は透過させる半透過ミラーと、半透過ミラーを経た画像光を半透過ミラーに向けて反射して射出瞳を形成する凹面ミラーとを備え、折り返しミラーから半透過ミラーに向かう光軸と、凹面ミラーから射出瞳に向かう光軸とを含む基準平面に対して交差する方向に投射光学系の光軸が配置され、折り返しミラーは、画像光生成装置からの光路順で、第1ミラーと第2ミラーとを含み、第2ミラーと半透過ミラーとは、凹面ミラーの軸線に垂直な平面に対して、水平軸の周りにそれぞれ45°傾斜させた状態を基準として、異なる傾斜角をなすように傾斜させた状態で配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の虚像表示装置の装着状態を説明する外観斜視図である。
【
図2】
図1の虚像表示装置等の構造を説明する概念的な斜視図である。
【
図3】
図1の虚像表示装置の平面図及び側面図である。
【
図4】画像光生成装置の傾斜配置について説明する斜視図である。
【
図5】第2ミラー等の傾斜と画像光生成装置の傾斜配置との関係について説明する図である。
【
図6】第2実施形態の虚像表示装置の平面図及び側面図である。
【
図7】第3実施形態の虚像表示装置の背面図及び側面図である。
【
図8】第4実施形態の虚像表示装置の側面図及び平面図である。
【
図9】第5実施形態の虚像表示装置の側面図である。
【
図10】第6実施形態の虚像表示装置の側面図である。
【
図11】変形例の虚像表示装置を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明に係る第1実施形態の虚像表示装置及びこれに組み込まれる光学ユニットについて説明する。
【0009】
図1は、ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDとも称する。)200の外観を説明する斜視図であり、これを装着する観察者又は装着者USに虚像としての映像を認識させる。
図1等において、X、Y、及びZは、直交座標系であり、+X方向は、HMD200又は虚像表示装置100を装着した観察者又は装着者USの両眼EYの並ぶ横方向に対応し、+Y方向は、装着者USにとっての両眼EYの並ぶ横方向に直交する上方向に相当し、+Z方向は、装着者USにとっての前方向又は正面方向に相当する。±Y方向は、鉛直軸に平行になっている。
【0010】
HMD200は、右眼用の第1表示装置100Aと、左眼用の第2表示装置100Bと、表示装置100A,100Bを支持するテンプル状の支持装置100Cとを備える。第1表示装置100Aは、上部に配置される表示駆動部102と、メガネレンズ状で眼前を覆う外観部材103とで構成される。第2表示装置100Bも同様に、上部に配置される表示駆動部102と、メガネレンズ状で眼前を覆う外観部材103とで構成される。支持装置100Cは、表示駆動部102を介して外観部材103の上端側を支持している。第1表示装置100Aと第2表示装置100Bとは、光学的に左右を反転させたものであり、以後では、右眼用の第1表示装置100Aを代表の虚像表示装置100として説明する。
【0011】
図2は、右眼用の表示装置100Aである虚像表示装置100を説明する斜視図であり、
図3は、虚像表示装置100の光学的構造を説明する図である。
図3において、第1領域AR1は、画像光生成装置11及び光学ユニット12の平面図であり、第2領域AR2は、画像光生成装置11及び光学ユニット12の側面図である。
【0012】
図2に示すように、虚像表示装置100は、画像光生成装置11と光学ユニット12と表示制御回路13とを備える。ただし、本明細書において、表示制御回路13を除いたものも、光学的機能を達成する観点で虚像表示装置100と呼ぶ。
【0013】
画像光生成装置11は、自発光型の表示デバイスであり、例えば有機EL(有機エレクトロルミネッセンス、Organic Electro-Luminescence)であり、2次元の表示領域11aにカラーの静止画又は動画を形成する。画像光生成装置11は、表示制御回路13に駆動されて表示動作を行う。画像光生成装置11の表示領域11aは、詳細は後述するが、光学ユニット12における光路の傾きに応じて傾けて配置されている。図示の例では、画像光生成装置11は、+X方向に向かってつまり画像光生成装置11の背後から見て、時計方向に回転するように傾斜した表示領域を有する。画像光生成装置11は、有機ELに限らず、無機EL、LEDアレイ、有機LED、レーザーアレイ、量子ドット発光型素子等に置き換えることができる。画像光生成装置11は、自発光型の画像光生成装置に限らず、LCDその他の光変調素子で構成され、当該光変調素子をバックライトのような光源によって照明することによって画像を形成するものであってもよい。画像光生成装置11として、LCDに代えて、LCOS(Liquid crystal on silicon, LCoSは登録商標)や、デジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。
【0014】
図2及び3に示すように、光学ユニット12は、投射光学系21と、折り返しミラー22と、半透過ミラー23と、凹面ミラー24とを備える。ここで、画像光生成装置11から折り返しミラー22にかけての光路が半透過ミラー23の上側に配置されている。光学ユニット12において、投射光学系21の光軸である投射光軸AX0は、折り返しミラー22から半透過ミラー23に向かう光軸である反射光軸AX2と、凹面ミラー24から射出瞳EPに向かう光軸である射出光軸AXEとを含むYZ面に平行で仮想平面である基準平面SP1に対して、交差する方向に配置されている。基準平面SP1は、半透過ミラー23の法線NLと凹面ミラー24の軸線MXとを含むものとなっている。この光学ユニット12では、例えば反射光軸AX2が鉛直方向のY方向に対して角度をなしており、折り返しミラー22と半透過ミラー23とによって、傾いてねじれて折れ曲がる光路を形成している。投射光軸AX0と反射光軸AX2と射出光軸AXEとは、画像光生成装置11の表示領域11aから射出される画像光MLのうち表示領域11aの中心からの主光線が通る軸である。
【0015】
投射光学系21は、画像光生成装置11から射出された画像光MLを投射する。投射光学系21は、画像光生成装置11から射出された画像光MLを結像するように収束させつつ折り返しミラー22に向けて入射させる。投射光学系21は、単レンズに限らず、
図3に示す例では3つのレンズ21a,21b,21cを含むが、2又は4以上のレンズで構成することができる。レンズ21a,21b,21cは、球面レンズに限らず、非球面レンズとすることができる。投射光学系21の光軸である投射光軸AX0は、横のX軸方向に平行に延びている。
【0016】
折り返しミラー22は、画像光生成装置11からの光路順で、第1ミラー22aと第2ミラー22bとを含む。折り返しミラー22は、投射光学系21からの画像光MLを交差方向に反射する。ここで、交差方向とは、投射光軸AX0に対して0°より大きな角度をなす方向であって、ねじれの関係にある方向を含む。本実施形態の場合、2つのミラー22a,22bによって、ねじれの関係にある垂直方向に光路が折り曲げられている。第2ミラー22bの光射出側には、後述する半透過ミラー23が配置されており、半透過ミラー23を第3ミラーと呼ぶこともある。折り返しミラー22の手前、つまり画像光MLの進行方向に対して逆方向の画像光生成装置11側には、虚像表示装置100の入射瞳PIが配置されている。
【0017】
第1ミラー22aは、平板状の光学部材であり、平面反射面MS1を有する。第1ミラー22aの平面反射面MS1は、金属膜又は誘電体多層膜からなる。この場合、平板平面上に、例えばAl、Agのような金属で形成された単層膜又は多層膜からなる反射膜を蒸着等によって成膜する。第1ミラー22aは、平面反射面MS1によって横のX方向に進む画像光MLを前方向に折り曲げ、第2ミラー22bに入射させる。この際、投射光学系21の光軸である投射光軸AX0と、第1ミラー22aから第2ミラー22bに向かう反射光軸AX1とは交差する。反射光軸AX1は、YZ面に沿って+Z方向及び-Y方向に延びるものとなっており、前方斜め下方向に傾斜するものとなっている。第1ミラー22aは、不図示の部材によって
図1に示す表示駆動部102のフレームに固定されている。
【0018】
第1ミラー22a又は平面反射面MS1は、鉛直方向に延びるXY面を基準とした場合、XY面に対して上から見てY軸の周りに時計方向に角度α1=45°傾いた状態となっている。平面反射面MS1の法線は、上から見て+Z方向と-X方向との中間方向であってそれぞれに対して45°の方向に延びている。なお、第1ミラー22aは、X軸の周りにも第2ミラー22bに向けて僅かに伏すように傾いた状態となっている。
【0019】
第2ミラー22bは、平板状の光学部材であり、平面反射面MS2を有する。第2ミラー22bの平面反射面MS2は、金属膜又は誘電体多層膜からなる。この場合、平板平面上に、例えばAl、Agのような金属で形成された単層膜又は多層膜からなる反射膜を蒸着等によって成膜する。第2ミラー22bは、平面反射面MS2によって前方向に進む画像光MLを後方向に折り曲げ、第3ミラーである半透過ミラー23に入射させる。この際、第1ミラー22aから第2ミラー22bに向かう反射光軸AX1と、第2ミラー22bから半透過ミラー23に向かう反射光軸AX2とは交差する。反射光軸AX2は、YZ面に沿って-Z方向及び-Y方向に延びるものとなっており、後方斜め下方向に傾斜するものとなっている。第2ミラー22bは、不図示の部材によって
図1に示す表示駆動部102のフレームに固定されている。
【0020】
第2ミラー22b又は平面反射面MS2は、軸線である射出光軸AXEに垂直な平面であるXY面となす角度が45°未満となるように配置されている。より具体的には、平面反射面MS2は、鉛直方向に延びるXY面を基準とした場合、XY面に対して、画像光生成装置11から見て、つまり+X方向に向かって、X軸の周りに反時計方向に角度α2=20~40°程度傾いた状態となっている。平面反射面MS2の法線は、YZ面に平行な面内にあって-Y方向よりも-Z方向に5°~25°程度多く傾いた状態となっている。
【0021】
半透過ミラー23は、半透過性を有する表面ミラーとして機能する平板状の光学部材であり、平面反射面MS3を有する。半透過ミラー23は、第2ミラー22bからの画像光MLを反射する第3ミラーである。半透過ミラー23は、一様な厚さを有し透過性を有する平行平板23aの一方面23fに金属膜又は誘電体多層膜を形成して平面反射面MS3としている。平面反射面MS3の反射率及び透過率は、例えば50%程度に設定される。なお、平行平板23aの他方面23r上には、反射防止膜を形成することができる。半透過ミラー23は、平面反射面MS3によって斜め後方向に進む画像光MLを前方に折り曲げ、凹面ミラー24に入射させる。この際、第2ミラー22bから半透過ミラー23に向かう反射光軸AX2と、半透過ミラー23から凹面ミラー24に向かう射出光軸AXEとは交差する。射出光軸AXEは、凹面ミラー24の軸線MXと一致し、+Z方向である前方に延びるものとなっている。ここで、凹面ミラー24の軸線MXとは、通常は凹面ミラー24の回転対称軸を意味する。例えば凹面ミラー24が回転対称な形状からずれている場合、凹面ミラー24の軸線MXとは、射出光軸AXEと凹面ミラー24との交点を通り、この交点における凹面ミラー24に対する接平面の法線を意味する。半透過ミラー23は、凹面ミラー24と眼EY又は瞳孔が配置される射出瞳EPとの間に配置されて射出瞳EPを覆っている。半透過ミラー23は、
図1に示す表示駆動部102のフレームに対して直接又は間接的に固定することができ、凹面ミラー24等に対する配置関係が適切に設定された状態とすることができる。
【0022】
半透過ミラー23又は平面反射面MS3は、軸線である射出光軸AXEに垂直な平面であるXY面となす角度が45°未満となるように配置されている。より具体的には、平面反射面MS3は、鉛直方向に延びるXY面を基準とした場合、XY面に対して、画像光生成装置11から見て、つまり+X方向に向かって、X軸の周りに反時計方向に角度α3=20~40°程度傾いた状態となっている。平面反射面MS3の法線NLは、YZ面に平行な面内にあって、Z軸に対して反時計周り20~40°程度傾いた状態となっている。以上のように、半透過ミラー23は、鉛直軸であるY軸と半透過ミラー23とがなす角度が45°未満となるように配置されている。Y軸と半透過ミラー23とがなす角度が仮に45°よりも大きくなると、半透過ミラー23が標準より倒れた状態となって、半透過ミラーのZ軸方向における厚みが増えてしまうが、Y軸と半透過ミラー23とがなす角度が45°よりも小さくなると、半透過ミラー23が標準よりも立ち上がった状態となって、半透過ミラーのZ軸方向における厚みが減る。 この結果、つまり、本実施形態のようにY軸と半透過ミラー23とがなす角度を45°未満とすることで、凹面ミラー24を基準として半透過ミラー23が背面の-Z方向に大きく突出する配置になることを回避することができ、虚像表示装置100又は光学ユニット12の前後のZ方向に関する厚みが増すことを回避することができる。
【0023】
凹面ミラー24は、半透過性の表面ミラーとして機能する湾曲した光学部材であり、射出瞳EPに向かって凹形状を有する凹面反射面MCを有する。凹面ミラー24は、一様な厚さを有し透過性を有する湾曲した板状体24aの一方面24rに金属膜又は誘電体多層膜を形成して凹面反射面MCとしている。平面反射面MS3の反射率は、例えば20~50%程度に設定される。なお、板状体24aの他方面24f上には、反射防止膜を形成することができる。凹面反射面MCは、球面に限らず、非球面とすることができる。凹面ミラー24は、半透過ミラー23で反射されて前方に進む画像光MLを反射して半透過ミラー23に戻しつつ半透過ミラー23を部分的に透過させ射出瞳EPに集める。この際、半透過ミラー23から凹面ミラー24に向かう射出光軸AXEは、凹面ミラー24で折り返されて射出瞳EPに向かう射出光軸と一致している。射出瞳EPは、折り返しミラー22の手前に配置された入射瞳PIと共役な位置となっている。
【0024】
凹面ミラー24は、
図1に示す外観部材103の一部を構成するように組み込まれている。つまり、凹面ミラー24の周囲に透過性を有し或いは透過性を有しない板状部材を拡張するように設けることで、凹面ミラー24を含む外観部材103とすることができる。外観部材103は、メガネレンズ状のものに限らず、様々な輪郭又は外観とすることができる。
【0025】
以上において、第2ミラー22bは、半透過ミラー23に対して平行でない。つまり、半透過ミラー23の傾斜角度である角度α3に対して、第2ミラー22bの傾斜角度である角度α2は、異なるものとなっている。この結果として、投射光学系21の投射光軸AX0について考えたとき、つまり投射光軸AX0に沿って見たとき、画像の横方向に対応する横軸Hは、水平なZ方向に対して傾斜角θをなすように回転させてある。画像の横軸Hは、画像光生成装置11の表示領域11aが図示のように矩形である場合、その横辺に対応する。画像の横軸Hは、射出瞳EPを通る射出光軸AXEについて考えたとき、つまり射出光軸AXEに沿って見たとき、X方向に平行に延びるHDに相当するものとなっている。
【0026】
図4を参照して、画像光生成装置11の表示領域11aを投射光軸AX0の周りで回転させている傾斜配置について説明する。ここでは、表示領域11aのうち投射光軸AX0から外れた周辺部から射出される周辺光LPについて考える。第1ミラー22aから第2ミラー22bに向かう光線LPaが、第2ミラー22bから半透過ミラー23に向かう光線LPbと、半透過ミラー23から凹面ミラー24に向かう光線LPcとがなす面SIから外れているとき、画像が回転し、観察される虚像の傾きを回避する観点で、画像光生成装置11又は表示領域11aを座標軸に沿った標準的な配置から投射光軸AX0の周りに回転又は傾斜させる姿勢調整の必要が生じる。
【0027】
図5を参照して、第2ミラー22bや半透過ミラー23の傾斜の画像光生成装置11の姿勢への影響について具体的に説明する。
図5において、第1領域BR1は、一般的な光学ユニット12の側面図であり、第2領域BR2は、一般的な光学ユニット12の平面図である。一般的な光学ユニット12では、第1ミラー22aが上から見てXY面に対してY軸の周りに時計方向に回転するように角度α10=45°傾いた状態となっているだけでなく、第2ミラー22bが画像光生成装置11のある側から見てXY面に対してX軸の周りに反時計方向に回転するように角度α20=45°傾いた状態であり、かつ、半透過ミラー23がXY面に対して画像光生成装置11のある側から見てX軸の周りに反時計方向に回転するように角度α30=45°傾いた状態である。つまり、図示のように基準状態にある第2ミラー22bは、凹面ミラー24の軸線MXに垂直な平面SP2を、軸線MXに垂直に延びる水平軸HX2の周りに+Xに向かって反時計方向に45°傾斜させた状態となっている。図示のように基準状態にある半透過ミラー23は、凹面ミラー24の軸線MXに垂直な平面SP3を、軸線MXに垂直な水平軸HX3の周りに+Xに向かって反時計方向に45°傾斜させた状態となっている。このような一般的な光学ユニット12において、像の回転は生じない。
【0028】
ここで、図示の第2ミラー22bを単独で2点鎖線で示すようにX軸の周りに反時計方向R1により倒れるように回転させると、画像光MLの入射角が小さくなって、画像光生成装置11や表示領域11aは、2点鎖線で示すようにX軸の周りに反時計方向に回転させる必要がある。例えば、第2ミラー22bをX軸の周りに反時計方向R1に5°回転させる場合、画像光生成装置11の表示領域11aをX軸の周りに反時計方向に10°回転させることで、射出瞳EPから見て傾きのない画像を観察することができる。逆に、第2ミラー22bを単独でX軸の周りに時計方向により立てるように回転させると、画像光MLの入射角が大きくなって、画像光生成装置11や表示領域11aは、X軸の周りに時計方向に回転させる必要がある。なお、以上の説明では、表示領域11aの上下方向又は±Y方向の並進的な移動は無視している。
【0029】
また、図示の半透過ミラー23を単独で2点鎖線で示すようにX軸の周りに時計方向R2により立てるように回転させると、画像光MLの入射角が小さくなって、画像光生成装置11や表示領域11aは、2点鎖線で示すようにX軸の周りに反時計方向に回転させる必要がある。例えば、半透過ミラー23をX軸の周りに時計方向R2に5°回転させると、第2ミラー22bの姿勢に変化がなければ、画像光生成装置11をX軸の周りに反時計方向に10°回転させることで、射出瞳EPから見て傾きのない画像を観察することができる。逆に、半透過ミラー23を単独でX軸の周りに反時計方向により倒れるように回転させると、画像光MLの入射角が大きくなって、画像光生成装置11や表示領域11aは、X軸の周りに時計方向に回転させる必要がある。なお、以上の説明では、表示領域11aの上下方向又は±Y方向の並進的な移動は無視している。
【0030】
つまり、第2ミラー22bと半透過ミラー23とが平行であれば、結果的に、画像光生成装置11を回転させなくても、傾きのない画像を観察することができる。本実施形態では、
図3に示すように、半透過ミラー23の角度α3と第2ミラー22bの角度α2とを異なるものとして(α3>α2)、半透過ミラー23が
図5に示す基準状態から立ち上がる角度よりも第2ミラー22bが
図5に示す基準状態から立ち上がる角度を大きくしている。これにより、光路に関する設計の自由度と光学系の省スペース化を図りつつ、これを補償するように、画像光生成装置11や表示領域11aの横軸Hが水平のZ方向に対して傾斜角θとなるように画像光生成装置11の表示領域11aを時計方向に回転させている。この結果、画像の欠けがなくなり、表示領域11aの画面全体を有効に活用することができる。
【0031】
以下では、投射光学系21の投射光軸AX0の傾きの画像光生成装置11の姿勢への影響について説明する。まず、
図5に示す基準状態に対して投射光軸AX0を第1ミラー22aとの交点を基点としてY軸の周りに回転させても、表示領域11aは、水平なXZ面に沿って投射光軸AX0とともに横方向に移動するだけであり、投射光軸AX0の周りに回転する傾きは生じない。一方、投射光軸AX0をY軸に非平行な軸の周りに回転させると、表示領域11aは、投射光軸AX0の周りに回転して画像が傾く傾向が生じる。具体的には、投射光学系21から第1ミラー22aにかけての投射光軸AX0は、第2ミラー22bでの反射の前後における反射光軸AX1,AX2を含む平面PL1の法線であって第1ミラー22aからの反射光軸AX1の始点を通るもの(具体的には、
図5の場合、半透過ミラー23の法線NLと凹面ミラー24の軸線MXとを含む基準平面SP1の法線NL0に相当)を基準として、第1ミラー22aでの反射後の反射光軸AX1の周りに回転するように傾斜する成分があると、この傾斜に応じて画像光生成装置11の表示領域11aを回転させる必要がある。例えば、画像光生成装置11が-X側において-Y側に下がるように投射光軸AX0を回転させると、正面に向いて時計方向の回転であり、表示領域11aは+X方向に向いて時計方向に回転し、逆に、画像光生成装置11が-X側おいて+Y側に上がるように投射光軸AX0を回転させると、正面に向いて反時計方向の回転であり、表示領域11aは+Xに向いて反時計方向に回転する。
【0032】
第2ミラー22bと半透過ミラー23との相対角度に起因する表示領域11aの投射光軸AX0の周りに関する回転又は傾斜と、投射光軸AX0の反射光軸AX1の周りの回転に起因する表示領域11aの投射光軸AX0の周りに関する回転又は傾斜とは、相互に加算するように作用するので、これらを総合して、射出瞳の位置EPで像の傾きを相殺するように表示領域11aの傾斜状態を設定することで、傾きの少ない画像表示が可能になる。
【0033】
図3を参照して、半透過ミラー23と凹面ミラー24とに対する折り返しミラー22の配置関係について説明する。折り返しミラー22は、半透過ミラー23と凹面ミラー24との間に配置されている。具体的には、第1ミラー22aと第2ミラー22bとは、半透過ミラー23の平面反射面MS3についてこれを仮想的に延長した延長平面P21と、凹面ミラー24の上端外側を鉛直Y方向に仮想的に延長した鉛直円筒状曲面P11との間に挟まれた断面楔形の空間内に配置されている。さらに、より好ましい条件を満たすように、第1ミラー22aと第2ミラー22bは、半透過ミラー23の平面反射面MS3についてその上端を鉛直Y方向に仮想的に延長した鉛直平面P22と、凹面ミラー24の上端外側を仮想的に延長した2次の近似曲面P12との間に配置されている。以上では、凹面ミラー24の上端外側を鉛直Y方向に仮想的に延長した鉛直円筒状曲面P11との間に挟まれた空間を、断面楔形の空間と称しているが、折り返しミラー22を配置する空間は、半透過ミラー23や凹面ミラー24の配置や形状に依存し、断面楔形に限るものではない。以下に説明する別の実施形態や変形例においても同様である。
【0034】
半透過ミラー23と凹面ミラー24とに対する投射光学系21及び画像光生成装置11の配置関係も折り返しミラー22と同様であることが望ましいが、投射光学系21の長さ等のサイズ上の制限を受ける。投射光学系21と画像光生成装置11とは、半透過ミラー23の延長平面P21と、凹面ミラー24について設定した鉛直円筒状曲面P11との間に挟まれた断面楔形の空間内に配置されることが望ましいが、これが容易でない場合、画像光生成装置11の表示領域11aから折り返しミラー22まで延びる投射光軸AX0が延長平面P21と鉛直円筒状曲面P11との間に配置されることが望ましい。より好ましくは、投射光学系21と画像光生成装置11とは、半透過ミラー23について設定した鉛直平面P22と、凹面ミラー24について設定した近似曲面P12との間に配置されることが望ましいが、これが容易でない場合、表示領域11aから折り返しミラー22まで延びる投射光軸AX0が鉛直平面P22と近似曲面P12との間に配置されることが望ましい。
【0035】
折り返しミラー22を構成する第1ミラー22aと第2ミラー22bとは、凹面ミラー24の有効領域EA1や半透過ミラー23の有効領域EA2を遮ることを回避するように配置されている。例えば有効領域EA1については、半透過ミラー23の近傍に点線で示している。具体的には、第2ミラー22bの位置は、側面から見て、有効領域EA1と、有効領域EA2と、半透過ミラー23によって反射される画像光MLの上下の最端の画角の光線とで形成される領域よりも画像表示装置側11に配置されている。光学設計上は、折り返しミラー22を構成する第2ミラー22bを-Y側に下げることは容易であるが、第2ミラー22b等を過度に下げると射出瞳EPからの視界が妨げられる。このように、折り返しミラー22が凹面ミラー24及び半透過ミラー23の有効領域EA1,EA2を遮ることを回避するように配置されることで、折り返しミラー22を過度に下げて凹面ミラー24や半透過ミラー23との間で干渉が生じることを防止できる。つまり、装着者USの眼EY又は射出瞳EPから見て、折り返しミラー22が映像領域に対応する画角を遮らないように配置されている。
【0036】
光路について説明すると、画像光生成装置11からの画像光MLは、投射光学系21によって結像されるように集光され、折り返しミラー22の第1ミラー22aと第2ミラー22bとによって順次反射され、半透過ミラー23に入射する。半透過ミラー23で例えば50%程度反射された画像光MLは、凹面ミラー24に入射して凹面反射面MCによって例えば50%程度以下の反射率で反射される。凹面ミラー24で反射された画像光MLは、装着者USの眼EY又は瞳孔が配置される射出瞳EPに入射する。半透過ミラー23と第2ミラー22bと間には、中間像IIが形成されている。中間像IIは、画像光生成装置11の表示領域11aに形成された画像を適宜拡大したものとなっている。射出瞳EPには、凹面ミラー24を通過した外界光OLも入射する。つまり、HMD200を装着した装着者USは、外界像に重ねて、画像光MLによる虚像を観察することができる。
【0037】
以上で説明した、第1実施形態の虚像表示装置100では、折り返しミラー22と半透過ミラー23との配置の傾きに応じて画像光生成装置11の表示領域11aを傾けて配置するので、光路の設定によって画像の傾き又は回転が生じても、これを補償するように画像光生成装置11の表示領域11aを傾けて配置することで、装着者USにとって傾きのない画像を表示することができる。
【0038】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態の虚像表示装置及びこれに組み込まれる光学ユニットについて説明する。第2実施形態の虚像表示装置等は、第1実施形態の虚像表示装置等を部分的に変更したものであり、共通部分については説明を省略する。
【0039】
図6は、第2実施形態の虚像表示装置100の光学的構造を説明する図である。
図6において、第1領域CR1は、画像光生成装置11及び光学ユニット12の平面図であり、第2領域CR2は、画像光生成装置11及び光学ユニット12の側面図である。
【0040】
この場合、投射光学系21の光軸である投射光軸AX0は、上から見て横のX軸方向に対して鉛直のY軸の周りに時計方向に角度α0傾いた状態となっている。これに対応して、第1ミラー22a又は平面反射面MS1は、鉛直方向に延びるXY面に対してY軸の周りに45°傾いた方向を基準とした場合、上から見て基準面SSに対してY軸の周りに時計方向に角度α1=α0/2傾いた状態となっている。
【0041】
第2実施形態の虚像表示装置100や光学ユニット12において、画像光生成装置11や投射光学系21は、半透過ミラー23の法線と凹面ミラー24の軸線MXに一致する射出光軸AXEとを含む基準面(YZ面)の法線(X軸に平行な線)に対して、光路上流において半透過ミラー23側(つまり-Z側)に投射光軸AX0が傾斜するように配置されている。
【0042】
以上において、第1ミラー22aがXY面に対してY軸の周りに45°傾いた方向を基準として、上から見て基準面SSに対してY軸の周りに時計方向に回転させているだけであり、第1実施形態の場合と同様に、画像光生成装置11や表示領域11aの横軸Hが水平方向に対して傾斜角θとなるように、画像光生成装置11等を背後から見て投射光軸AX0の周りに時計方向に回転させている。
【0043】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態の虚像表示装置及びこれに組み込まれる光学ユニットについて説明する。第3実施形態の虚像表示装置等は、第1実施形態及び第2実施形態の虚像表示装置等を部分的に変更したものであり、共通部分については説明を省略する。
【0044】
図7は、第3実施形態の虚像表示装置100の光学的構造を説明する図である。
図7において、第1領域DR1は、画像光生成装置11及び光学ユニット12の背面図であり、第2領域DR2は、画像光生成装置11及び光学ユニット12の側面図である。
【0045】
この場合、投射光学系21の光軸である投射光軸AX0は、背後から正面に向いて横のX軸方向を基準として水平のZ軸の周りに時計方向に角度α01傾いた状態となっているが、上から見て横のX軸方向に対して平行な状態となっている。
【0046】
第3実施形態の虚像表示装置100や光学ユニット12において、投射光学系21から第1ミラー22aにかけての投射光軸AX0は、第2ミラー22bでの反射の前後における反射光軸AX1,AX2を含む平面PL1の法線であって第1ミラー22aからの反射光軸AX1の始点を通るもの(具体的には、
図7の場合、半透過ミラー23の法線NLと凹面ミラー24の軸線MXとを含む基準平面SP1の法線NL0に相当)を基準として、第1ミラー22aでの反射後の反射光軸AX1の周りに回転するように傾斜しており、画像光生成装置11の表示領域11aにおいて像を回転させる必要がある。具体的には、投射光軸AX0は、背後から正面に向いて横のX軸方向を基準として水平のZ軸の周りに時計方向に角度α01傾いた状態となっており、表示領域11aは+Xに向いて反時計方向に追加的に微小回転させる必要がある。結果的に、第1実施形態や第2実施形態の場合と同様に、画像光生成装置11の表示領域11aの横軸Hが水平方向に対して傾斜角θとなるように、画像光生成装置11の表示領域11aを背後から見て投射光軸AX0の周りに時計方向に回転させている。
【0047】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態の虚像表示装置及びこれに組み込まれる光学ユニットについて説明する。第4実施形態の虚像表示装置等は、第1実施形態及び第2実施形態の虚像表示装置等を部分的に変更したものであり、共通部分については説明を省略する。
【0048】
図8は、第4実施形態の虚像表示装置100の光学的構造を説明する図である。
図8において、第1領域ER1は、画像光生成装置11及び光学ユニット12の側面図であり、第2領域ER2は、画像光生成装置11及び光学ユニット12の平面図である。この場合、折り返しミラー22は、単一のミラー122aのみからなる。ミラー122aの平面反射面MS12の法線は、-X方向、-Y方向、及び-Z方向に延びるものとなっている。折り返しミラー22は、投射光学系21からの画像光MLを交差方向に反射する。具体的には、投射光学系21の投射光軸AX0はX方向に延び、折り返しミラー22から半透過ミラー23に向かう反射光軸AX2はYZ面に沿って-Y方向と-Z方向との間の斜め方向に設定されている。この光学ユニット12では、反射光軸AX2が鉛直方向のY方向に対して角度をなしており、折り返しミラー22と半透過ミラー23とによって、傾いてねじれて折れ曲がる光路を形成している。
【0049】
図示を省略するが、上記のような光学ユニット12において、半透過ミラー23については、凹面ミラー24の軸線MXに垂直な平面SP3に対する角度α3が45°となるように傾斜させた状態が基準となる。また、ミラー122aは、XY面を基準として、上から見てXY面に対してY軸の周りに時計方向に45°回転させるとともに、画像光生成装置11や表示領域11aのある側から見てX軸の周りに時計方向に45°回転させた状態が基準となる。基準状態のミラー122aの法線は、-X方向、-Y方向、及び-Z方向に対してそれぞれ45°傾いた状態となる。これに対し、第4実施形態の虚像表示装置100では、半透過ミラー23の角度α3は、20~40°程度に設定され、基準の45°に対して傾斜させた状態で配置されている。結果的に、ミラー122aから半透過ミラー23に向かう反射光軸AX2が標準的なY軸に対して角度β=90°-2×α3だけ傾斜することになり、ミラー122aは、上記のような基準状態から、画像光生成装置11等のある側から見てX軸の周りに時計方向に回転して立ち上がるように傾いた状態となっている。投射光軸AX0に沿って見たとき、画像の横方向に対応する横軸Hは、鉛直なY方向が本来の長手方向であるが、これに対して傾斜角θをなすように回転させたものとなっている。画像の横軸Hは、射出瞳EPを通る射出光軸AXEについて考えたとき、つまり射出光軸AXEに沿って見たとき、X方向に平行に延びるHDに相当するものとなっている。
【0050】
なお、光学ユニット12が、半透過ミラー23が角度α3=45°傾斜し、ミラー122aが各軸方向に対して45°傾斜した基準状態にある一般的なものと仮定して、ミラー122aを背後から見て前後のZ軸の周りに時計方向又は反時計方向に回転させても、像の高さ位置が変化するだけで像の回転は生じないので、画像光生成装置11の表示領域11aを投射光軸AX0のまわりに回転させる必要は生じない。一方、ミラー122aを上から見て鉛直のY軸の周りに例えば時計方向に回転させると、像の回転が生じ、画像光生成装置11の表示領域11aを、ミラー122aの回転に合わせて投射光軸AX0のまわりに画像光生成装置11のある側から見て時計方向に回転させる必要が生じる。具体的には、ミラー122aをY軸の周りに5°傾けると、表示領域11aが7°傾く。
【0051】
図8に示す状態では、反射光軸AX2が標準的なY軸に対して傾いているので、ミラー122aを横軸Hに垂直な縦軸Vに平行な軸の周りに回転させても、画像光生成装置11の表示領域11aを投射光軸AX0のまわりに回転させる必要が生じないが、ミラー122aを横軸Hに平行な軸の周りに回転させると、画像光生成装置11の表示領域11aを投射光軸AX0のまわりに回転させる必要が生じる。つまり、投射光学系21からミラー122aにかけての投射光軸AX0が、半透過ミラー23での反射の前後における反射光軸AX2及び射出光軸AXEを含む平面PL2の法線であってミラー122aからの反射光軸AX2の始点を通るもの(具体的には、
図8の場合、半透過ミラー23の法線NLと凹面ミラー24の軸線MXとを含む基準平面SP1の法線NL0に相当)を基準として、ミラー122aでの反射後の反射光軸AX2の周りに回転するように傾斜する成分があると、この傾斜に応じて画像光生成装置11の表示領域11aにおいて像を回転させる必要がある。
【0052】
〔第5実施形態〕
以下、第5実施形態の虚像表示装置及びこれに組み込まれる光学ユニットについて説明する。第5実施形態の虚像表示装置等は、第1実施形態の虚像表示装置等を部分的に変更したものであり、共通部分については説明を省略する。
【0053】
図9は、第5実施形態の虚像表示装置100の光学的構造を説明する図である。この場合、第1実施形態の虚像表示装置100を上下反転させたものである。結果的に、画像光生成装置11、投射光学系21、及び折り返しミラー22が、半透過ミラー23や凹面ミラー24の下端以下に配置される。つまり、画像光生成装置11から折り返しミラー22にかけての光路が半透過ミラー23の下側に配置されている。
【0054】
〔第6実施形態〕
以下、第6実施形態の虚像表示装置及びこれに組み込まれる光学ユニットについて説明する。第6実施形態の虚像表示装置等は、第4実施形態の虚像表示装置等を部分的に変更したものであり、共通部分については説明を省略する。
【0055】
図10は、第6実施形態の虚像表示装置100の光学的構造を説明する図である。この場合、凹面ミラー24を半透過ミラー23の下側に配置している。
【0056】
光路について説明すると、画像光生成装置11からの画像光MLは、投射光学系21を経て折り返しミラー22を構成する単一のミラー122aによって反射され、半透過ミラー23に入射する。半透過ミラー23を例えば50%程度で部分的に透過した画像光MLは、凹面ミラー24に入射して凹面反射面MCによって反射される。凹面ミラー24で反射された画像光MLは、半透過ミラー23で部分的に反射され、装着者USの眼EY又は瞳孔が配置される射出瞳EPに入射する。射出瞳EPには、凹面ミラー24を通過した外界光OLも入射する。
【0057】
この場合、半透過ミラー23が角度α3=45°傾斜し、ミラー122aが背後から見て前後のZ軸の周りに時計方向に45°回転する状態が基本であるが、投射光軸AX0を上から見て-X方向を基準として時計方向に傾斜させており、像の回転が生じ、画像光生成装置11の表示領域11aを、ミラー122aの回転に合わせて投射光軸AX0のまわりに回転させる必要が生じる。
【0058】
〔変形例その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0059】
上記実施形態の虚像表示装置100では、画像光生成装置11として有機EL素子等の自発光型の表示デバイスやLCDその他の光変調素子を用いているが、これに代えて、レーザー光源とポリゴンミラー等であるスキャナーとを組みあわせたレーザスキャナーを用いた構成も可能である。つまり、レーザー網膜投影型のヘッドマウントディスプレイに対して本発明を適用することも可能である。
【0060】
図2、3等において、第2ミラー22bは、凹面ミラー24とは別体として配置されているが、第2ミラー22bの配置や角度の調整等の工夫によって凹面ミラー24から上側に連続するように連結することもできる。
【0061】
図11に示すように、第2ミラー22bは、凹面ミラー24の上端から延びる連結部材28を介して連結されている。凹面ミラー24、第2ミラー22b、及び連結部材28は、略等しい厚みを有する。また、凹面ミラー24と連結部材28との境界は滑らかに変形し、第2ミラー22bと連結部材28との境界は滑らかに変形している。この場合、
図1に示す外観部材103は、凹面ミラー24や第2ミラー22bを含む一体的な部材とすることができる。
【0062】
以上の実施形態では、凹面ミラー24に画像光を入射させ反射させる射出光軸AXEが水平方向又はX方向に延びていたが、射出光軸AXEは、半透過ミラー23側からみて水平方向に対して所定角度下側に向きに設定することもできる。
【0063】
凹面ミラー24の外界側には、凹面ミラー24の透過光を制限することで調光を行う調光デバイスを取り付けることができる。調光デバイスは、例えば電動で透過率を調整する。調光デバイスとして、ミラー液晶、電子シェード、エレクトロクロミック素子等を用いることができる。調光デバイスは、外光照度に応じて透過率を調整するものであってもよい。調光デバイスによって外界光OLを遮断する場合、外界像の作用を受けていない虚像のみを観察することができる。また、本願発明の虚像表示装置は、外光を遮断し画像光のみを視認させるいわゆるクローズ型の頭部搭載型表示装置(HMD)に適用できる。この場合、虚像表示装置と撮像装置とで構成されるいわゆるビデオシースルーの製品に対応させたりするものとしてもよい。
【0064】
画像光生成装置11の表示領域11aの輪郭は、矩形に限らず、平行四辺形、三角形、六角形等の各種多角形とすることができ、円形や楕円形とすることもできる。
【0065】
以上では、虚像表示装置100が頭部に装着されて使用されることを前提としたが、上記虚像表示装置100は、頭部に装着せず双眼鏡のようにのぞき込むハンドヘルドディスプレイとしても用いることができる。つまり、本発明において、ヘッドマウントディスプレイには、ハンドヘルドディスプレイも含まれる。
【0066】
具体的な態様における虚像表示装置は、画像光生成装置と、画像光生成装置から射出された画像光を投射する投射光学系と、投射光学系からの画像光を反射する折り返しミラーと、折り返しミラーからの画像光の一部を反射又は透過させる半透過ミラーと、半透過ミラーを経た画像光を半透過ミラーに向けて反射して射出瞳を形成する凹面ミラーとを備え、折り返しミラーから半透過ミラーに向かう光軸と、凹面ミラーから射出瞳に向かう光軸とを含む基準平面に対して交差する方向に投射光学系の光軸が配置され、折り返しミラーと半透過ミラーとの配置の傾きに応じて画像光生成装置の表示領域を傾けて配置する。
【0067】
上記虚像表示装置では、折り返しミラーと半透過ミラーとの配置の傾きに応じて画像光生成装置の表示領域を傾けて配置するので、光路の設定によって画像の傾き又は回転が生じても、これを補償するように画像光生成装置の表示領域を傾けて配置することで、傾きのない画像を表示することができる。
【0068】
具体的な側面において、折り返しミラーは、画像光生成装置からの光路順で、第1ミラーと第2ミラーとを含み、第2ミラーと半透過ミラーとは、凹面ミラーの軸線に垂直な平面に対して、水平軸の周りにそれぞれ45°傾斜させた状態を基準として、異なる傾斜角をなすように傾斜させた状態で配置されている。この場合、画像を画像光生成装置の光軸の周りに回転させる作用が生じ、それを相殺するように、画像光生成装置の表示領域を回転又は傾斜させる。
【0069】
別の側面において、第2ミラーと半透過ミラーとは、軸線に垂直な平面となす角度が45°未満となるように配置される。この場合、半透過ミラー等の射出光軸方向の幅が減少し、虚像表示装置の薄型化が容易となる。
【0070】
さらに別の側面において、折り返しミラーは、画像光生成装置からの光路順で、第1ミラーと第2ミラーとを含み、投射光学系から第1ミラーにかけての光軸は、第2ミラーでの反射の前後における光軸を含む平面の法線であって第1ミラーからの光軸の始点を通るものを基準として、第1ミラーでの反射後の光軸の周りに回転するように傾斜する。この場合、画像を画像光生成装置の光軸の周りに回転させる作用が生じ、それを相殺するように、画像光生成装置の表示領域を回転又は傾斜させる。
【0071】
さらに別の側面において、第2ミラーと凹面ミラーとが一体的に接続されている。この場合、第2ミラーや凹面ミラーの支持が容易になり、凹面ミラーや第2ミラーを一体化して外観部材とすることができる。
【0072】
さらに別の側面において、折り返しミラーは、単一のミラーを含み、半透過ミラーは、凹面ミラーの軸線に垂直な平面を軸線に垂直な水平軸の周りに45°傾斜させた状態を基準として、基準に対して傾斜させた状態で配置されている。この場合、画像を画像光生成装置の光軸の周りに回転させる作用が生じ、それを相殺するように、画像光生成装置の表示領域を回転又は傾斜させる。
【0073】
さらに別の側面において、折り返しミラーは、単一のミラーを含み、投射光学系から単一のミラーにかけての光軸は、半透過ミラーの反射の前後における光軸を含む平面の法線であって単一のミラーからの光軸の始点を通るものを基準として、単一のミラーでの反射後の光軸の周りに回転するように傾斜する。この場合、画像を画像光生成装置の光軸の周りに回転させる作用が生じ、それを相殺するように、画像光生成装置の表示領域を回転又は傾斜させる。
【0074】
さらに別の側面において、画像光生成装置から折り返しミラーにかけての光路が半透過ミラーの上側に配置される。この場合、凹面ミラーの下側をスマートな配置とすることができる。
【0075】
さらに別の側面において、画像光生成装置から折り返しミラーにかけての光路が半透過ミラーの下側に配置される。この場合、凹面ミラーの上側をスマートな配置とすることができる。
【0076】
さらに別の側面において、折り返しミラーは、凹面ミラー及び半透過ミラーの有効領域を遮ることを回避するように配置される。この場合、折り返しミラーを過度に下げて凹面ミラーや半透過ミラーとの間で干渉が生じることを防止できる。
【0077】
さらに別の側面において、半透過ミラーと凹面ミラーの軸線に垂直な平面とがなす角度が、第2ミラーと凹面ミラーの軸線に垂直な平面とがなす角度よりも大きいとき、画像光生成装置の表示領域は、投射光軸を回転軸として凹面ミラーの軸線と平行な面を基準に時計回りに配置され、半透過ミラーと凹面ミラーの軸線に垂直な平面とがなす角度が、第2ミラーと凹面ミラーの軸線に垂直な平面とがなす角度よりも小さいとき、画像光生成装置の表示領域は、投射光軸を回転軸として凹面ミラーの軸線と平行な面を基準に反時計回りに配置される。
【符号の説明】
【0078】
11…画像光生成装置、11a…表示領域、12…光学ユニット、13…表示制御回路、21…投射光学系、22…折り返しミラー、22a…第1ミラー、22b…第2ミラー、23…半透過ミラー、23a…平行平板、24…凹面ミラー、24a…板状体、28…連結部材、100…虚像表示装置、100A,100B…表示装置、100C…支持装置、102…表示駆動部、103…外観部材、122a…単一のミラー、AX0…投射光軸、AX1,AX2…反射光軸、AXE…射出光軸、EA1,EA2…有効領域、EP…射出瞳、H…横軸、II…中間像、LP…周辺光、LPa,LPb,LPc…光線、MC…凹面反射面、ML…画像光、MS1,MS12,MS2,MS3…平面反射面、MX…軸線、OL…外界光、PI…入射瞳、PL1,PL2…平面、SP1…基準平面、SP2,SP3…平面、SS…基準面、US…装着者