IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱レイヨン・クリンスイ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-浄水カートリッジ及び浄水器 図1
  • 特許-浄水カートリッジ及び浄水器 図2
  • 特許-浄水カートリッジ及び浄水器 図3
  • 特許-浄水カートリッジ及び浄水器 図4
  • 特許-浄水カートリッジ及び浄水器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】浄水カートリッジ及び浄水器
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/28 20230101AFI20240402BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20240402BHJP
【FI】
C02F1/28 G
C02F1/44 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020063482
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021159849
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】504346204
【氏名又は名称】三菱ケミカル・クリンスイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】竹田 はつ美
(72)【発明者】
【氏名】照井 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】松山 雅樹
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-346550(JP,A)
【文献】特開2000-288314(JP,A)
【文献】特開2005-152876(JP,A)
【文献】特開昭60-164524(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101839342(CN,A)
【文献】特開2014-128803(JP,A)
【文献】特開2011-152492(JP,A)
【文献】特開2019-136635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/28
1/44
B01J 20/00 - 20/28
20/30 - 20/34
B01D 61/00 - 71/82
23/00 - 35/04
35/08 - 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着材を有する浄水カートリッジにおいて、
該吸着材に接するシール部分に凸条部が設けられ、
かつ、該凸条部が該吸着材と圧着するように設けられている浄水カートリッジであって、
前記吸着材は取り外し可能であり、
前記シール部分はパッキンであり、
前記パッキンは、平板円環形の平パッキン部と、該平パッキン部の少なくとも一方の面に設けられた前記凸条部とを有するものであり、
該凸条部は、該平パッキン部の内周と外周との間において該平パッキン部を周回していることを特徴とする浄水カートリッジ。
【請求項2】
前記吸着材に接する部材と一体に前記シール部分が設けられている請求項1の浄水カートリッジ。
【請求項3】
前記吸着材は筒形であり、筒形吸着材の第1端面に前記シール部分が接している請求項1又は2の浄水カートリッジ。
【請求項4】
前記筒形吸着材の内側に濾過材が配置されている請求項3の浄水カートリッジ。
【請求項5】
前記濾過材は中空糸膜を有する請求項4の浄水カートリッジ。
【請求項6】
前記中空糸膜の一端側にポッティング材が設けられ、該ポッティング材が保持筒の一端側の内部に配置されている請求項5の浄水カートリッジ。
【請求項7】
前記吸着材は、浄水カートリッジの外殻の一部を構成する本体ケース内に配置されており、
該本体ケースは、大径部、小径部及びそれらの間の肩部とを有しており、
該小径部に前記保持筒の前記一端側が配置されている請求項6の浄水カートリッジ。
【請求項8】
前記保持筒は、前記肩部に重なる第1フランジ部を有しており、
該第1フランジ部と前記吸着材の第1端面との間に、前記パッキンとしての第1パッキンが介在されている請求項7の浄水カートリッジ。
【請求項9】
前記筒形吸着材の第2端面を押える中蓋を備えている請求項3~8のいずれかの浄水カートリッジ。
【請求項10】
前記中蓋は、前記筒形吸着材の第2端面に対峙する第2フランジ部を有していることを特徴とする請求項9の浄水カートリッジ。
【請求項11】
前記第2フランジ部と筒形吸着材の第2端面との間に、前記パッキンとしての第2パッキンが介在されている請求項10の浄水カートリッジ。
【請求項12】
前記中蓋を押える外蓋を有している請求項9~11の浄水カートリッジ。
【請求項13】
吸着材を有する浄水カートリッジにおいて、
該吸着材に接するシール部分に凸条部が設けられ、
かつ、該凸条部が該吸着材と圧着するように設けられている浄水カートリッジであって、
前記吸着材は取り外し可能であり、
前記シール部分はパッキンであり、
前記パッキンは、平板円環形の平パッキン部と、該平パッキン部の少なくとも一方の面に設けられた前記凸条部とを有するものであり、
該凸条部は、該平パッキン部の内周と外周との間において該平パッキン部を周回しており、
前記吸着材は筒形であり、筒形吸着材の第1端面に前記シール部分が接しており、
前記筒形吸着材の内側に濾過材が配置されており、
前記濾過材は中空糸膜を有しており、
前記中空糸膜の一端側にポッティング材が設けられ、該ポッティング材が保持筒の一端側の内部に配置されており、
前記吸着材は、浄水カートリッジの外殻の一部を構成する本体ケース内に配置されており、
該本体ケースは、大径部、小径部及びそれらの間の肩部を有しており、
該小径部に前記保持筒の前記一端側が配置されており、
前記保持筒は、前記肩部に重なる第1フランジ部を有しており、
該第1フランジ部と前記吸着材の第1端面との間に、前記パッキンとしての第1パッキンが介在されていることを特徴とする浄水カートリッジ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかの浄水カートリッジを備えた浄水器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水カートリッジと、この浄水カートリッジを用いた浄水器とに関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭用の浄水器として、ピッチャー型(ポット型)、携帯型、蛇口直結型、ビルトイン型、冷蔵庫型など、手軽に取り付けて使用できる浄水器が広く用いられている(特許文献1,2)。
【0003】
特許文献1には、中空糸膜用ケースと吸着剤用ケースから成る筒状のカートリッジ本体容器、焼結フィルターが嵌め込まれた原水導入口が設けられた蓋体、浄水出口が設けられたキャップ、から構成されるカートリッジ外側容器内に、中空糸膜エレメント、吸着濾過体が着脱可能に収容された浄水カートリッジが記載されている。
【0004】
特許文献2には、中央流路が設けられた筒状の成形濾材を収容し、上部から蓋体を勘合した浄水カートリッジが記載されている。成形濾材の端面に圧着された弾性部材は、中央流路側の内周面に沿う環状の鍔部が突出形成することで、位置決めが図られている。
【0005】
浄水器用の浄水カートリッジの濾材としては、活性炭やイオン交換樹脂等の吸着材や、中空糸膜等の濾過膜を組み合わせたものが一般的である。
【0006】
これらの濾材は水質等により、各々の寿命が異なることが多い。濾材を個別に交換できない場合は、カートリッジ全体を交換する必要があり、濾過能力が残っている濾材も廃棄されていた。また、分別されず、カートリッジ全体として廃棄されるケースが多々見受けられている。そこで、特許文献1では、カートリッジ容器(容器構成部品を含む)と、吸着材、濾過膜(中空糸膜)、及び封止部材を分解可能としている。
【0007】
特許文献3には、浄水カートリッジのケーシングを生分解プラスチックで構成することが記載されている(0051段落)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-071443号公報
【文献】特開2014-138929号公報
【文献】特開平11-29627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のカートリッジでは、吸着濾過体を交換し易いように袋体に充填しているが、袋体の状態で収容すると袋体の周囲を流れた水が吸着濾過体に接触せず、ショートパスを起こし、十分な濾過性能を得られなくなる。即ち、成形状濾過体を収容しても、特許文献1のカートリッジ構造では同様に成形状濾過体の周囲を流れた水が成形状濾過体に接触せず、ショートパスを起こし、十分な濾過性能を得られなくなる。一方、ショートパス防止のため、粉状や粒状の吸着濾過体をケース内に直接高充填した場合、濾過体の取り出しが容易ではなくなり交換がし難くなってしまう。
【0010】
特許文献2のカートリッジでは、成形濾材の端面に圧着された弾性部材は、中央流路側の内周面に沿う環状の鍔部が突出形成されることにより、弾性部材を成型濾材に対して適切に位置決めできる。また、成形濾材の両端面におけるリーク防止を図っている。しかし、工業製品における成形濾材は寸法に多少の誤差があり、特許文献2の弾性部材は、成形濾材の中央流路側の内周面に沿って、弾性部材の内周端部に鍔部が環状に設けられ、成形濾材の一定の位置決めがなされているが、弾性部材の成形濾材両端面と接する部分は平面となっていることから、寸法誤差に対応しきれず、成形濾材の両端面での封止が不十分となり、リークを起こす虞がある。
【0011】
本発明は、吸着材と弾性部材が接着しておらず、また、吸着材部分が取り外し可能であり吸着材端面のシール性に優れた浄水カートリッジと、この浄水カートリッジを用いた浄水器とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の浄水カートリッジは、吸着材を有する浄水カートリッジにおいて、該吸着材に接するシール部分に凸条部が設けられている。
凸条部は吸着材に圧着するように設けられている。
【0013】
本発明の一態様では、前記シール部分はパッキンである。
【0014】
本発明の一態様では、前記パッキンは、平板円環形の平パッキン部と、該平パッキン部の少なくとも一方の面に設けられた凸条部とを有する。
【0015】
本発明の一態様では、前記吸着材に接する部材と一体に前記シール部分が設けられている。
【0016】
本発明の一態様では、前記吸着材は筒形であり、筒形吸着材の第1端面に前記シール部分が接している。
【0017】
本発明の一態様では、前記筒形吸着材の内側に濾過材が配置されている。
【0018】
本発明の一態様では、前記濾過材は中空糸膜を有する。
【0019】
本発明の一態様では、前記中空糸膜の一端側にポッティング材が設けられ、該ポッティング材が保持筒の一端側の内部に配置されている。
【0020】
本発明の一態様では、前記吸着材は、浄水カートリッジの外殻の一部を構成する本体ケース内に配置されており、該本体ケースは、大径部、小径部及びそれらの間の肩部とを有しており、該小径部に前記保持筒の前記一端側が配置されている。
【0021】
本発明の一態様では、前記保持筒は、前記肩部に重なる第1フランジ部を有しており、該第1フランジ部と前記吸着材の第1端面との間に、凸条部を有した第1パッキンが介在されている。
【0022】
本発明の一態様では、前記筒形吸着材の第2端面を押える中蓋を備えている。
【0023】
本発明の一態様では、前記中蓋は、前記筒形吸着材の第2端面に対峙する第2フランジ部を有している。
【0024】
本発明の一態様では、前記第2フランジ部と筒形吸着材の第2端面との間に凸条部を有した第2パッキンが介在されている。
【0025】
本発明の一態様では、前記中蓋を押える外蓋を有している。
【0026】
本発明の浄水器は、かかる本発明の浄水カートリッジを備えたものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の浄水カートリッジにあっては、吸着材に接するシール部分に凸条部が設けられているので、吸着材の長さ方向に多少の寸法誤差があっても、吸着材端面のシール性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施の形態に係る浄水カートリッジの斜視図である。
図2】実施の形態に係る浄水カートリッジの縦断面図である。
図3図2の一部の拡大図である。
図4】実施の形態に係る浄水カートリッジの分解斜視図である。
図5】(a)はリブ付きパッキンの斜視図、(b)は(a)のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図1~5を参照して実施の形態について説明する。
【0030】
図1,2,4の通り、この浄水カートリッジ1は、略円筒状の本体ケース2と、該本体ケース2の上端部に着脱可能に嵌合した外蓋3とによって外殻が構成されている。
【0031】
外蓋3は、円板形の頂面部3aと、該頂面部3aの外周から下方に立設された外側環状壁3bと、頂面部3aの下面において、該外側環状壁3bと同軸的に下方に立設された内側環状壁3cとを有している。外側環状壁3bが本体ケース2の上端部に着脱可能に外嵌している。内側環状壁3cに対し、後述の中蓋20の突出部23が着脱可能に内嵌している。内側環状壁3cの下端が後述の中蓋20の天面部22に当接している。
【0032】
本体ケース2と外蓋3は樹脂製であり、本体ケース2上端外周面に外蓋3の内周面が嵌め込まれている。嵌合方法としては、着脱のし易さの点からは、バヨネット方式、ネジ式が好適であるが、中蓋20の確実な当接・圧入からバヨネット式がより好適である。
【0033】
本体ケース2の上部の側周面に入水口4が設けられている。本体ケース2の下端部は小径部2aとなっており、該小径部2aの下面に出水口5が下方に向って開口している。
【0034】
本体ケース2の該小径部2aよりも上側は大径部2bとなっており、大径部2bと該小径部2aとの間が肩状部2cとなっている。
【0035】
本体ケース2の大径部2b内に略円筒状の吸着材としての成形炭(成形活性炭:活性炭を略円筒形に成形したもの)6が配置されている。成形炭6の内側に中空糸膜ユニット7が配置されている。
【0036】
中空糸膜ユニット7は、多数本の中空糸膜8と、該中空糸膜8の下端側を固定するポッティング部9と、中空糸膜8及び該ポッティング部9が内嵌した保持筒10とを有している。
【0037】
中空糸膜8は、長手方向の途中で折り返されており、折り返した部分と反対側の両端部がそれぞれポッティング部9に包埋されている。中空糸膜8の該両端部の先端面は、ポッティング部9の下面において開放しており、ポッティング部9の下側の空室(集水スペース)18に臨んでいる。
【0038】
保持筒10は、図4にも明示の通り、本体ケース2の小径部2aに内嵌する保持筒下部11と、成形炭6内に内嵌する保持筒上部12と、該保持筒下部11と保持筒上部12との連接部から側外方に拡開するフランジ部(第1フランジ部)13とを有する。該フランジ部13が本体ケース2の肩部2cに対し上方から重なっている。
【0039】
保持筒下部11内にポッティング部9が配置されている。ポッティング部9の外周面は保持筒下部11の内周面に対し水密的に固着している。保持筒下部11の下端面とポッティング部9の下面とは面一状となっている。
【0040】
保持筒下部11の外周面にOリング14が装着されており、該Oリング14によって保持筒下部11の外周面と小径部2aの内周面との間がシールされている。
【0041】
本実施形態では、保持筒下部11を小径部2aに押し込んで嵌め込んでいるが、嵌め込み方法として、他にもネジ式、バヨネット式等、被濾過水の水圧に応じて適宜選択できる。ピッチャー型(ポット型)のような自重濾過方式の場合、水圧が低いので、脱着操作の容易性から、押し込み式が好ましい。
【0042】
フランジ部13と成形炭6の下端面(第1端面)との間にパッキン(第1パッキン)30が配置されている。
【0043】
保持筒上部12には、保持筒上部12の外周側と内周側とを連通する多数の窓孔15が設けられている。保持筒上部12の上端部は上方に向って開放している。
【0044】
中空糸膜8の上部は、保持筒上部12の上端近傍にまで延在している。保持筒上部12の上端は、成形炭6の上端面よりも若干下位に位置している。
【0045】
本体ケース2内において、成形炭6の上側に中蓋20が配置されている。中蓋20は、筒状部21と、該筒状部21の上面を塞ぐ天面部22及び天面部22の中央部から上方に突出する突出部23と、筒状部21の下端よりも若干上位から側外方に拡開するフランジ部(第2フランジ部)24とを有する。筒状部21の下端部が図2,3に示されるように、成形炭6の上部に内嵌状に差し込まれている。
【0046】
前述の通り、天面部22に対し、外蓋3の内側環状壁3bが上方から当接し、内側環状壁3bに対し突出部23が内嵌している。
【0047】
この実施の形態では、中蓋20および外蓋3は無孔となっているが、空気抜き孔が設けられてもよい。
【0048】
フランジ部24と成形炭6の上端面(第2端面)との間にパッキン(第2パッキン)40が介在されている。
【0049】
本体ケース2に外蓋3を外嵌すると中蓋20が圧入されることにより、フランジ部24が第2パッキン40の上部に当接される。第2パッキン40にフランジ24からの圧力が加わることにより、第2パッキン40から成形炭6の上端面に圧力が加わり、第1パッキン30に成形炭6の下端面が当接する。
【0050】
フランジ部24及びパッキン40の外径は、本体ケース2の大径部2bの内径よりも小さく、フランジ部24及びパッキン40の外周縁と本体ケース2の内周面との間には、上方から下方へ水が通過する間隔があいている。
【0051】
パッキン30,40は、いずれも図3,5の通り、平板円環形の平パッキン部31,41と、該平パッキン部31,41の内周と外周との中間付近を周回する凸条部(リブ)32,42とを有したリブ付きパッキンよりなる。凸条部32,42は平パッキン部31,41の上下両面にそれぞれ設けられている。
凸条部は、環状に連なっていると、よりシール性を高めることができることから好適である。
【0052】
凸条部32,42(リブ)は、平パッキン部31、41の内周と外周の端部より内側(内周と外周との間)に凸条になるように配置される。平パッキン部31、41の外周および内周の端部に位置すると、多少の寸法誤差により成形炭6の端面と上手く当接せずシール性が低下する虞がある。また、圧着の際、成形炭の端部を崩してしまう虞があるため、平パッキン部31、41の内周と外周との中間付近に凸条になるように位置すると良い。
平パッキン部31、41の内周と外周との距離において、両端部より10%以上中央部に寄せた位置に配置するのが好ましい。特に、平パッキン部31、41の中央付近に位置すると、成形炭6と凸条部32、42との当接のズレの虞が少なく、より高いシール性を確保する上で、より好ましい。
【0053】
このように構成された浄水カートリッジ1は、前記特許文献1,2と同様にして浄水器に組み込まれる。浄水器に水を供給すると、この水は入水口4を通って本体ケース2内に流入し、フランジ部24と本体ケース2の内周面との間を通過し、成形炭6の外周面と本体ケース2の大径部2bの内周面との間に流入する。次いで、この水が成形炭6を透過して吸着処理が行われる。成形炭6を透過した水は、窓孔15を通過して又は保持筒上部12の上側から保持筒上部12内に入り、中空糸膜8によって濾過される。濾過された水は、中空糸膜8内を下方に向って流れ、中空糸膜8の下端から集水スペース18内に流出し、出水口5から浄水として流出する。
【0054】
この浄水カートリッジ1においては、成形炭6の上下両端面を封止するパッキン30,40がリブ32,42を有したリブ付きパッキンとなっているので、フランジ部24と成形炭6の上端面及びフランジ部13と成形炭6の下端面との間のシール特性に優れる。
【0055】
一般に、成形炭6(成形活性炭(成形吸着材))は、寸法に若干の誤差があり、成形炭の端面に平パッキンを当接させただけではシールが不十分でリーク(ショートパス)が発生する虞がある。
【0056】
パッキン30,40は、周回環状の凸条部32,42を有しているので、多少の寸法誤差を吸収し、シール面でのリークを抑えることが可能となり、濾過性能が安定・向上する。
【0057】
パッキンの平パッキン部31,41と凸条部32,42は一体成型されていることが望ましい。
【0058】
凸条部32,42は、平パッキン部31,41の片面でも良いが、両面に設けられていることが好ましい。
【0059】
凸条部32,42は圧着により変形し易い(潰れ易い)弾性率の材料によって柔らかめとなっていることが好ましい。凸条部32,42(リブ)は、平パッキン部と同一の材料が好ましい。材料はシリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、天然ゴム(NR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ウレタンゴム(U)、クロロプレンゴム(CR)、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)等が挙げられるが、シール性、コスト、成形性、耐熱性、安全性等鑑み、シリコーンゴムがより好ましい。
本発明における圧着とは、押しつけて、略液密状態に接することを意味する。
【0060】
凸条部32,42の高さは、成形炭の寸法精度により異なるが、0.2mm~2.0mmが好ましい。0.2mm~2.0mmとすることで、成形炭の多少の寸法誤差に対応して凸条部が成形炭端面に圧着することができ、水圧に負けず、シール性を確保することが出来る。凸条部32,42の断面形状は半円形状が好ましい。
【0061】
浄水カートリッジ1は、本体ケース2に外嵌されている外蓋3を外すと、中蓋20、第2パッキン40、成形炭6、中空糸膜ユニット7、第1パッキン30を、本体ケース2内から順に取り外すことが可能である。
【0062】
本発明により、円筒状の成形炭6と成形炭6両端面の押さえ板(本実施形態の場合は、上下のフランジ部24,13)とが接着していなくても、成形炭6端面部のシール面でのリークが起こらず、濾過性能が安定・向上することから、分解可能を実現した。
【0063】
分解できることにより、パーツ毎に分別が可能となり、環境負荷軽減を実現可能となる。また、パーツ毎に可能な限り同一の材料を使用することにより、より分別し易くなる。
【0064】
上記実施の形態では、周囲の部材と別体のパッキン30,40が用いられているが、パッキンは中蓋のフランジ部24や保持筒のフランジ部13と一体成型されてもよい。中蓋や保持筒を柔らかめの材料によって構成し、パッキンを有した中蓋や保持筒としてもよい。
【0065】
上記実施の形態では、成形炭を用いているが、同様の形状の他の構成の吸着材を用いてもよい。例えば、同様の形状で、外周側面に導水孔が開口しており、内周面に出水孔が開口している吸着材ケースの中に粒状活性炭を充填したものでも良い。
【0066】
上記実施の形態では、濾過膜(中空糸膜)を用いているが、中空糸膜は省略されてもよい。即ち、吸着材のみでも良い。
【0067】
本発明では、カートリッジ容器の少なくとも1部にバイオマスプラスチックを用いてもよい。
【0068】
なお、給水装置への接続が不要で気軽に使用することができるピッチャー形などの自重濾過用の浄水器が知られている。自重濾過用の浄水器は、自重圧のみで濾過する必要がある。十分な濾過流量を確保するためには、カートリッジ内の空気が濾過を妨げないようにコントロールする必要がある。
【0069】
通常、カートリッジ内の空気を排出する空気抜き孔をカートリッジ上端に配するが、空気抜き孔からカートリッジ内部の濾過材が漏れ易いという問題がある。
【0070】
しかし、当業者であれば空気が抜ける孔がなければ十分な濾過流量を確保することができないと考えるところ、一定以上の空気溜まり部Sをカートリッジ内の上部空間(中空糸膜の上端より上に)設けることにより、十分な濾過流量を確保することができ、さらに、浄水カートリッジ内の濾材の漏れを抑制することが可能となる。
【0071】
空気溜まり部Sは浄水カートリッジ内の成形炭6の内側に入り込んだ空気が移動した後に留まる空間である。本願の成形炭6よりも内側で、空気溜まり部Sは使用時において窓孔15より鉛直方向上側に、空気を密封する。つまり、空気溜まり部Sは成形炭6よりも内側で、使用時において窓孔15より鉛直方向上側となる位置に配置される。浄水カートリッジがカートリッジ内部に空気溜まり部Sを備えていることにより、浄水カートリッジの成形炭6の内側の空間に入り込んだ空気が空気溜まり部Sに抜けることができる。そのため、空気溜まり部Sの上部が、例えば本実施形態のように中蓋20によって覆われていても、十分な濾過流量を確保することができる。
【0072】
空気溜まり部Sは、成形炭6よりも内側で、窓孔15の開口している部分のうち最も鉛直方向上側の位置より上側に、空気を密封するものであればよい。なお、空気溜まり部Sは、使用時において鉛直方向上側に空気を密封するものであり、鉛直方向下側、つまり中空糸膜8のある方向には密封とならず、空気の移動が可能になっている。
【0073】
空気溜まり部Sの容積は、十分な濾過流量を確保することができるという効果をより高めることができる観点から、中空糸膜8の容積に対して、50体積%以上である。ここで、中空糸膜8の容積とは、保持筒10内の中空糸膜の下端から上端までが存在する空間の容積である。
【符号の説明】
【0074】
1 浄水カートリッジ
2 本体ケース
2a 小径部
2b 大径部
2c 肩部
3 外蓋
4 入水口
5 出水口
6 成形炭
7 中空糸膜ユニット
8 中空糸膜
9 ポッティング部
10 保持筒
13 フランジ部
20 中蓋
21 筒状部
22 天面部
23 突出部
30,40 パッキン
32,42 凸条部
図1
図2
図3
図4
図5