(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】車両のバッテリーシステム
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20240402BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240402BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B60R16/02 645D
H02J7/00 Q
H02J7/00 302C
H02J7/34 B
(21)【出願番号】P 2020066088
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】宮部 貴盛
(72)【発明者】
【氏名】北村 成基
(72)【発明者】
【氏名】山下 啓介
(72)【発明者】
【氏名】藤田 弘輝
(72)【発明者】
【氏名】丸谷 祐介
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-136314(JP,A)
【文献】特開2019-038476(JP,A)
【文献】特開2013-010425(JP,A)
【文献】国際公開第2017/013934(WO,A1)
【文献】特開2017-105318(JP,A)
【文献】特開2019-205268(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0319483(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102018202680(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H02J 7/00
H02J 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーセル、前記バッテリーセルと電気的に接続された外部端子、および前記バッテリーセルと前記外部端子との電気的な接続を接断するバッテリーリレーを備えるリチウムイオンバッテリーが搭載された車両のバッテリーシステムであって、
前記車両に設けられた車両部品を操作するための操作手段と、
前記車両部品を制御する制御手段と
、
報知手段とを備え、
前記制御手段は、前記操作手段に対する利用者の操作に基づいて前記車両部品を作動させるとともに、前記車両部品の作動タイミングと同じタイミングで前記バッテリーリレーを開閉
し、
前記報知手段は、前記制御手段によって前記バッテリーリレーが開閉されたときに、当該バッテリーリレーが開閉されたことを報知する、ことを特徴とする車両のバッテリーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両のバッテリーシステムにおいて、
前記車両部品は、前記リチウムイオンバッテリーからの電力供給を受けて作動するように当該リチウムイオンバッテリーと電気的に接続されており、
前記車両には、前記バッテリーリレーによって前記バッテリーセルと前記外部端子との接続が遮断されたときに前記車両部品に対して電力を供給可能な予備給電手段が設けられている、ことを特徴とする車両のバッテリーシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の車両のバッテリーシステムにおいて、
前記予備給電手段は、前記バッテリーリレーをバイパスして前記バッテリーセルと前記外部端子とを電気的に接続しているバイパスリレーである、ことを特徴とする車両のバッテリーシステム。
【請求項4】
請求項2に記載の車両のバッテリーシステムにおいて、
前記予備給電手段は、前記リチウムイオンバッテリーの外部に設けられて前記車両部品と電気的に接続されたキャパシタである、ことを特徴とする車両のバッテリーシステム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のバッテリーシステムにおいて、
前記車両部品は、その作動時に作動音を発するものである、ことを特徴とする車両のバッテリーシステム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の車両のバッテリーシステムにおいて、
前記車両部品は、車両に設けられたドアのロックあるいは当該ドアのロックの解除の少なくとも一方を行うための部品である、ことを特徴とする車両のバッテリーシステム。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の車両のバッテリーシステムにおいて、
前記車両部品は、車両に設けられたボンネットのロックを解除するための部品である、ことを特徴とする車両のバッテリーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーセル、外部端子、および前記バッテリーセルと前記外部端子との電気的な接続を接断するリレーを備えるリチウムイオンバッテリーが搭載された車両のバッテリーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるバッテリーとして、バッテリーセルと外部端子とを接断するためのリレーを有するものが用いられる場合がある。例えば、特許文献1には、複数のバッテリーセル(特許文献1では蓄電素子)、外部端子、およびバッテリーセルと外部端子とを接断するためのリレーを有するリチウムイオンバッテリー(特許文献1ではリチウムイオン電池)が搭載された車両が開示されている。
【0003】
リレーを有するバッテリーでは、リレーが正常に開閉するか否かを定期的に診断することが望まれる。しかし、リレーを開閉させると作動音が生じる。特に、バッテリーからの電力供給を受けてスタータが作動するように構成された車両では、スタータの作動時にバッテリーに大電流が流れることで、リレーのサイズを大きくする必要があり、これに伴ってリレー開閉時の作動音も大きくなる。そして、このように、リレーの開閉に伴って音が発せられると、乗員が違和感を覚えるおそれがある。
【0004】
これに対して、特許文献1の車両では、赤外センサ、圧力センサあるいは温度センサを車両に設けて、これらセンサの検出値から車両内に人が居るかどうかを判定し、車両内に人居ないと判定されてから所定の時間が経過すると、リレーの開閉を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構成によれば、車内の乗員がリレーの開閉音を聞くのは回避される。しかし、この構成では、車両内に乗員がいなくなってから所定の時間が経過した後のタイミングであって利用者にとっては予期せぬタイミングで、車両側から音が発せられることになる。そのため、車両周辺に利用者がいた場合には、かえって利用者が強い違和感を覚えるおそれがある。
【0007】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、リレーを有するバッテリーが搭載された車両において、リレーの開閉を実現しつつリレー開閉時の作動音によって利用者が違和感を覚えるのをより確実に抑制できるバッテリーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、バッテリーセル、前記バッテリーセルと電気的に接続された外部端子、および前記バッテリーセルと前記外部端子との電気的な接続を接断するバッテリーリレーを備えるリチウムイオンバッテリーが搭載された車両のバッテリーシステムであって、前記車両に設けられた車両部品を操作するための操作手段と、前記車両部品を制御する制御手段と、報知手段とを備え、前記制御手段は、前記操作手段に対する利用者の操作に基づいて前記車両部品を作動させるとともに、前記車両部品の作動タイミングと同じタイミングで前記バッテリーリレーを開閉し、前記報知手段は、前記制御手段によって前記バッテリーリレーが開閉されたときに、当該バッテリーリレーが開閉されたことを報知する、ことを特徴とする(請求項1)。
【0009】
本発明によれば、利用者が操作手段に対して所定の操作を行い、これに伴って車両部品が作動するタイミングと同時にバッテリーリレーが開閉される。そのため、バッテリー周辺からバッテリーリレーの開閉音が発せられたとしても、利用者に対して、利用者自身の操作に基づいて、さらには、車両部品が作動したことに基づいて、音が発生したと思わせることができる。そのため、利用者にとって予期せぬタイミングで車両から音が発せられるのを防止でき、バッテリーリレーの開閉を行いつつ、バッテリーリレー開閉時の作動音によって利用者が違和感を覚えるのを確実に抑制できる。しかも、バッテリーリレーの開閉に伴ってリチウムイオンバッテリー周辺から音が発せられたことを利用者に認識させることができるので、前記音の発生に伴って利用者が違和感を覚えるのをより確実に防止できる。
【0010】
ここで、「同じタイミング」とは、車両部品の作動時期とバッテリーリレーの開閉時期とが厳密に一致している場合に限らず、これらの時期の一部が重複している場合、および、これらの時期がわずかにずれている場合も含む。すなわち、本発明では、利用者に、バッテリーリレーの開閉音を、利用者の操作および車両部品の作動に伴って生じたと思わせることができればよく、この範囲において前記の時期はずれていてもよい。例えば、車両部品の作動終了後、これに連続して、あるいは、数ミリ秒程度遅れてリレーが開閉されてもよい。また、バッテリーリレーの開閉後に、これに連続して、あるいは、数ミリ秒程度遅れて車両部品が作動してもよい。
【0011】
前記構成において、好ましくは、前記車両部品は、前記リチウムイオンバッテリーからの電力供給を受けて作動するように当該リチウムイオンバッテリーと電気的に接続されており、前記車両には、前記バッテリーリレーによって前記バッテリーセルと前記外部端子との接続が遮断されたときに前記車両部品に対して電力を供給可能な予備給電手段が設けられている(請求項2)。
【0012】
この構成によれば、車両部品を作動させつつバッテリーリレーの開閉を行うことができる。すなわち、車両部品の作動タイミングとリレーの開閉タイミングとを重複させることができる。これより、利用者に対して、より確実に車両部品が作動したことに基づいて音が発生したと思わせることができる。
【0013】
前記予備給電手段の具体的な構成としては、前記予備給電手段は、前記バッテリーリレーをバイパスして前記バッテリーセルと前記外部端子とを電気的に接続している構成が挙げられる(請求項3)。
【0014】
この構成によれば、予備給電手段として、別途蓄電手段を車両に搭載する必要がなく、車両部品の増加を防止できる。
【0015】
前記構成に代えて、前記予備給電手段は、前記リチウムイオンバッテリーの外部に設けられて前記車両部品と電気的に接続されたキャパシタであるとしてもよい(請求項4)。
【0016】
この構成によっても、車両部品を作動させつつバッテリーリレーの開閉を行うことができる。
【0017】
前記構成において、前記車両部品は、その作動時に作動音を発するものであるのが好ましい(請求項5)。
【0018】
この構成によれば、利用者に対して、バッテリーリレーの開閉音を、より確実に車両部品の作動に伴って生じたものと思わせることができる。
【0019】
前記車両部品としては、車両に設けられたドアのロックあるいは当該ドアのロックの解除の少なくとも一方を行うための部品、が挙げられる(請求項6)。
【0020】
前記とは別の構成として、前記車両部品としては、車両に設けられたボンネットのロックを解除するための部品が挙げられる(請求項7)。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明の車両のバッテリーシステムによれば、リレーの開閉を実現しつつ利用者が違和感を覚えるのをより確実に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両のバッテリーシステムが搭載された車両の構成を概略的に示した図である。
【
図2】リチウムイオンバッテリーの構成を概略的に示した図である。
【
図4】リレー故障判定の手順を示したフローチャートである。
【
図5】リレー故障判定時の各パラメータの時間変化を模式的に示したタイムチャートである。
【
図6】本発明の変形例に係る
図1相当の概略図である。
【
図7】他の変形例における
図5相当のタイムチャートである。
【0025】
(1)車両の全体構成
図1は、本発明の実施形態に係るバッテリーシステム100が搭載された車両1の構成を概略的に示す図である。車両1は、エンジン2、変速機3、オルタネータ4、スタータ5、Liバッテリ(リチウムイオンバッテリ)6、ドアロックユニット50、ボンネットロックユニット70、PCM90を備える。
【0026】
図1の例では、エンジン2は、一列に並ぶ4つの気筒2cを備えた直列4気筒エンジンである。エンジン2は、車両1に設けられたエンジンルームR内に、車両の駆動源として搭載されている。車両1は、例えば4輪自動車であり、エンジン2の駆動力は、クランクシャフト2aから変速機3、終減速機、駆動軸等を介して車輪1aに伝達される。
【0027】
オルタネータ4は、ベルト等を介してエンジン2のクランクシャフト2aに連結されており、クランクシャフト2aによって回転駆動されて発電する。
【0028】
Liバッテリ6は、正極にリチウムを含み、正極と負極との間でのリチウムイオンの移動により充放電するバッテリである。オルタネータ4とLiバッテリ6とは電気的に接続されており、オルタネータ4からの電力供給を受けてLiバッテリ6は充電される。Liバッテリ6の詳細については後述する。
【0029】
スタータ5は、エンジン2を始動するための装置である。スタータ5は、Liバッテリ6と電気的に接続されており、Liバッテリ6からの電力供給を受けてエンジン2のクランクシャフト2aを回転させる。
【0030】
ドアロックユニット50は、車両1に設けられたドア51のロックおよびロック解除を行うための装置である。本実施形態では、車両1は、車室と荷室とが一体となったタイプの車両であり、乗降用の4つのドア51(車室前部の運転席および助手席横のドア、車室後部の座席の左右の2つのドア)と、車両後部に設けられて荷室を開閉するドア51(いわゆるリヤゲート)とを有する。ドアロックユニット50は、各ドア51にそれぞれ1つずつ設けられている。
【0031】
ドアロックユニット50は、車体に設けられたストライカ(不図示)と、ドア51に設けられてストライカと係合するロックレバー(不図示)と、ロックレバーをストライカと係合する位置と係合しない位置との間で移動させるロックレバー駆動部(不図示)とを有する。ドアロックユニット50(ロックレバー駆動部)は、Liバッテリ6と電気的に接続されており、Liバッテリ6から電力供給を受けて作動して、ロックレバーを移動させる。例えば、ロックレバー駆動部は、モータからなり、その出力軸の回転によってロックレバーを移動させる。
【0032】
ここで、本実施形態では、ドアロックユニット50が作動してロックレバーが移動した際には、車外からも認識可能な作動音が発生するようになっており、利用者は、ドア51がロックされたか否か、また、ドア51のロックが解除されたか否かを容易に判別できるようになっている。また、このドアロックユニット50は、請求項の「車両部品」に相当する。
【0033】
ボンネットロックユニット70は、車両1に設けられたボンネット71(エンジンルームRを覆いこれを開閉するもの)のロック解除を行うための装置である。ボンネットロックユニット70は、ドアロックユニット50と同様に、車体に取り付けられたストライカと、ボンネット71に設けられてストライカと係合するロックレバー(不図示)を有する。また、ボンネットロックユニット70も、Liバッテリ6からの電力供給を受けて作動してロックレバーを移動させるロックレバー駆動部(不図示)とを有する。ただし、ボンネットロックユニット70では、ロックレバーは付勢部材によってストライカと係合する位置に付勢されており、ロックレバー駆動部は、この付勢力に抗してロックレバーをストライカと係合する位置から係合しない位置への移動のみを行う。
【0034】
PCM90は、車両全体を統括的に制御するためのマイクロプロセッサであり、周知のCPU、ROM、RAM等から構成されている。PCM90も、Liバッテリ10からの電力供給を受けて作動する。
【0035】
(2)Liバッテリの詳細構成
図2は、Liバッテリ6の構成を説明するための模式図である。Liバッテリ6は、箱状のバッテリーケース11と、バッテリーケース11の内側に収容されたバッテリーセル12と、バッテリーケース11の外側面に設けられた一対の外部端子13(正極端子13a、負極端子13b)を有する。本実施形態では、Liバッテリ6は、複数の(図例では4つ)バッテリーセル12を有する。これらバッテリーセル12は直列に接続されている。2つの外部端子13は、所定のバッテリーセル12の正極端子と他のバッテリーセル12の負極端子とにそれぞれ接続されている。Liバッテリ6と電気的に接続されているオルタネータ4等の各電気機器は、外部端子13と電気的に接続されている。
【0036】
バッテリーケース11内には、さらに、バッテリーリレー14、バイパスリレー18、BMU15、バッテリー電流センサSN1が設けられている。
【0037】
バッテリーリレー14は、バッテリーセル12と外部端子13との電気的な接続を接断するものであり、バッテリーセル12と正極端子13aとの間に設けられている。バッテリーリレー14は、接点を有する機械式のリレーである。これより、バッテリーリレー14を介してLiバッテリ6から各電気機器に大電流を流すことが可能となっている。特に、本実施形態では、エンジン始動時にスタータ5およびLiバッテリ10を流れる電流が非常に高くなることに対応して、バッテリーリレー14としてこれに耐えれるようなサイズの大きいものが用いられている。
【0038】
バイパスリレー18は、バッテリーリレー14と並列に配設されたリレーであり、バッテリーリレー14と同様に、バッテリーセル12と外部端子13(正極端子13a)との電気的な接続を接断する。具体的には、Liバッテリ9には、バッテリーセル12と外部端子13(正極端子13a)とを電気的につなぎ途中部にバッテリーリレー14が設けられたメインラインL1と、バッテリーリレー14をバイパスしてバッテリーセル12と外部端子13(正極端子13a)とを電気的につなぐバイパスラインL2とが設けられている。バイパスリレー18はバイパスラインL2に設けられており、バイパスリレー18とバイパスラインL2とによってバイパス部19が構成されている。
【0039】
バイパスリレー18は、バッテリーリレー14とは異なり、半導体で構成された接点を有しない無接点リレーである。無接点リレーは、大電流を流すことができないものであり、バイパスラインL2には大電流が流れないように比較的高い抵抗が設けられている。例えば、バイパスリレー18には、FET(Field-Effect Trannsistor)を利用したものが用いられる。このように、本実施形態では、バイパスリレー18が設けられることで、バッテリーリレー14が開放された場合であってもLiバッテリ9から各電気機器に電力を供給できるようになっており、このバイパスリレー18が請求項の「予備給電手段」に相当する。
【0040】
ここで、接点を有しないバイパスリレー18は、開放状態から閉成状態に切り替えられたときに作動音は発生しない。一方、バッテリーリレー62は、接点を有しており、開放状態から閉成状態に切り替えられたとき、接点どうしの当接により作動音が発生する。特に、本実施形態では、バッテリーリレー14のサイズが大きく、比較的大きい作動音が発生する。
【0041】
バッテリー電流センサSN1は、Liバッテリ10を流れる電流を検出するためのセンサである。バッテリー電流センサSN1は、1のバッテリーセル12と負極端子13bとの間に設けられてこの部分を流れる電流を検出している。
【0042】
セル電圧センサSN2およびセル温度センサSN3は、各バッテリーセル12の電圧および温度をそれぞれ検出するためのセンサである。本実施形態では、4つのバッテリーセル12に対応して、Liバッテリ9に、セル電圧センサSN2およびセル温度センサSN3がそれぞれ4つずつ設けられている。
【0043】
BMU(Battery Management Unit)14は、Liバッテリ6を管理するための装置である。BMU15は、周知のCPU、ROM、RAM等から構成されるマイクロプロセッサからなる。BMU15は、バッテリーセル12からの電力供給を受けて作動する。
【0044】
(3)制御系統
PCM90とBMU15とは通信可能に接続されており、PCM90とBMU15との間では信号のやりとりが行われる。例えば、PCM90とBMU15とはCAN通信される。本実施形態では、これらPCM90とBMU15とを合わせたユニットが、請求項の「制御手段」に相当する。
【0045】
BMU15には、PCM90からの信号に加えて、バッテリー電流センサSN1、各セル電圧センサSN2および各セル温度センサSN3の信号が入力される。BMU15は、バッテリーリレー14、バイパスリレー18と電気的に接続されており、PCM90からの信号や前記センサSN1~SN3の検出値に基づいて種々の判定や演算等を実行してこれらリレー14、18に指令を出す。また、BMU15は、一部の判定・演算結果をPCM90に送信する。
【0046】
具体的には、BMU15は、Liバッテリ9の充電量を算出して、その結果をPCM90に送信する。PCM90は、オルタネータ4(詳細には、オルタネータ4の発電量等を変更する機器)と電気的に接続されており、BMU15から送信されたLiバッテリ9の充電量の情報に基づいてオルタネータ4を制御する。
【0047】
また、各バッテリーセル12の温度、電圧が適正範囲を超えるとLiバッテリ10が故障等するおそれがあることから、BMU15は、各セル電圧センサSN2および各セル温度センサSN3により検出された電圧や温度が適正範囲を超えているか否かを判定して、これらが適正範囲を超えている場合には前記各リレー14、18を開放してLiバッテリ10と各電気機器との電気的な接続を遮断する、つまり、Liバッテリ9の充放電を停止させる。
【0048】
また、BMU15は、後述するように、PCM90からの信号を受けて各リレー14、18を開閉させるとともに、リレー14、18の開閉時のバッテリー電流センサSN1の検出値に基づいてバッテリーリレー14が故障しているか否かを判定し、その判定結果をPCM90に送信する。
【0049】
PCM90には、BMU15からの信号に加えて、車両1に設けられた各種センサからの信号が入力される。例えば、PCM90には、アクセルペダル(不図示)の開度を検出するためのアクセルセンサSN100やブレーキペダル(不図示)の踏み込み量を検出するためのブレーキペダルセンサSN11等の検出値が入力される。PCM90は、これらセンサSN1、SN2の検出値等に基づいてエンジン2の各部を制御して車両1を走行させる。また、PCM90は、スタータ5と電気的に接続されており、車両1に設けられたIGスイッチ(不図示)の操作信号に基づいてスタータ5を回転駆動させる。
【0050】
PCM90には、走行に関わるアクセルペダルやブレーキペダルの他にも、車両1に設けられた各種の部品を操作するための操作部からの信号が入力される。
【0051】
具体的には、PCM90には、ドアロックユニット50を操作するための操作部からの信号が入力される。本実施形態では、車両1に、キーレスエントリーシステムが採用されており、車両1から離れた位置においてドアロックユニット50に指令を与えることのできるリモートキー200が車両1に関連付けて準備されている。リモートキー200には、ドアロックユニット50の操作部として、ドア51をロックするドアロックボタン201およびドア51のロックを解除するためのドアロック解除ボタン202が設けられている。このドアロック解除ボタン202は、請求項の「操作手段」に相当する。
【0052】
ドアロック解除ボタン202が操作された場合(例えば、押圧された場合)、リモートキー200から所定の信号(以下、ドアロック解除信号という)がPCM90に送信される。PCM90は、ドア51がロックされている状態でこのドアロック解除信号を受け取ると、ドアロックユニット50(ロックレバー駆動部)に対して、ロックレバーをストライカと係合しない位置に移動させるように指令を出す。ドアロックボタン201操作された場合(例えば、押圧された場合)も、リモートキー200から所定の信号(以下、ドアロック信号という)がPCM90に送信される。PCM90は、ドア51のロックが解除されている状態でこのドアロック信号を受け取ると、ドアロックユニット50(ロックレバー駆動部)に対して、ロックレバーをストライカと係合する位置に移動させるように指令を出す。なお、PCM90は、ロックレバーの位置を検出するセンサ等からの信号に基づいてドア51がロック状態であるかロック解除状態であるかを判定している。
【0053】
PCM90には、ボンネットロックユニット70を操作してボンネット71のロックを解除するためのボンネットロック解除ボタン210からの操作信号も入力される。つまり、ボンネットロック解除ボタン210が操作されると(例えば、押圧操作されると)、ボンネットロック解除ボタン210から所定の信号(以下、ボンネットロック解除信号という)がPCM90に送信される。PCM90は、このボンネットロック解除信号を受け取ると、ボンネットロックユニット70(ロックレバー駆動部)に対して、ロックレバーをストライカと係合する位置に移動させるように指令を出す。ボンネットロック解除ボタン210は、車両1のうち運転席の周辺に設けられている。
【0054】
本実施形態では、車両1に各種表示を行うためのモニタ102が設けられている。PCM90は、このモニタ102とも電気的に接続されており、各種の判定・演算結果等に基づく表示をモニタ102に表示させる。モニタ102は、車室前部のダッシュパネルに設けられている。本実施形態では、前記のモニタ102が、請求項の「報知手段」に相当する。
【0055】
(故障判定用リレー開閉制御)
次に、本発明の特徴部分であるリレー故障判定のためのリレー開閉制御について説明する。Liバッテリ10から車両1の各部に常時電力が供給されるように、バッテリーリレー14は基本的に閉成されている。ただし、前記のように、バッテリーセル12の温度、電圧が適正範囲を超えたとき等にはLiバッテリ10を保護するためにバッテリーリレー14を開放せねばならない。そこで、本PCM90およびBMU15は、Liバッテリ10を保護するためにバッテリーリレー14を開放させるタイミングとは別に、バッテリーリレー14を強制的に開閉して、バッテリーリレー14が適切に閉閉するか否かの判定、すなわち、リレーが故障しているか否かの判定を実施する。
【0056】
図4は、PCM90により実施される故障判定用リレー開閉制御の手順を示したフローチャートである。
【0057】
まず、ステップS1にて、PCM90は、ドアロック解除ボタン202が操作されたか否かを判定する。具体的には、PCM90は、ドア51がロックされている状態でドアロック解除信号を受信した場合はドアロック解除ボタン202が操作されたと判定し、その他の場合はドアロック解除ボタン202が操作されなかったと判定する。
【0058】
ステップS1の判定がNOであってドアロック解除ボタン202が操作されなかったと判定した場合、PCM90は、そのまま処理を終了する(ステップS1に戻る)。
【0059】
一方、ステップS1の判定がYESであってドアロック解除ボタン202が操作されたと判定した場合、PCM90は、ステップS2にて、故障判定用リレー開閉制御(次のステップS3)が未実施の期間が基準時間以上であるか否かを判定する。PCM90は、直前の故障判定用リレー開閉制御の実施時からの経過時間を計測しており、この計測時間と基準時間とを比較する。基準時間は予め設定されてPCM90に記憶されている。基準時間は、例えば、24時間に設定されている。
【0060】
ステップS2の判定がNOであって故障判定用リレー開閉制御の未実施期間が基準時間未満の場合は、ステップS10に進み、PCM90はドアロックユニット50に対してドア51のロックを解除するように指令信号を出す。具体的には、前記のように、PCM90は、ドアロックレバー駆動部に対して、ドアロックレバーの位置をストライカと係合しない位置に移動させるように指令を出す。この指令信号を受けて、ドアロックレバーは作動し、ドア51のロックが解除される。ステップS10の後は処理を終了する(ステップS1に戻る)。
【0061】
一方、ステップS2の判定がYESであってリ故障判定用リレー開閉制御の未実施期間が基準時間以上の場合は、ステップS3に進み、PCM90は、ステップS10と同様にドアロックユニット50に対してドア51のロックを解除するように指令信号を出す。この指令信号を受けると、前記のように、ドアロックレバーが作動してドア51のロックが解除される。また、PCM90は、ドアロックユニット50に対して前記の指令を出すのと同じタイミングで、BMU15に対してリレー14、18の開閉を行うように指令信号を出す。この指令信号を受けて、BMU15は、バッテリーリレー14を開閉する。具体的には、BMU15は、閉成状態にあるバッテリーリレー14を開放し、その後、閉成状態に戻す。また、BMU15は、バッテリーリレー14の開閉と同時にバイパスリレー18も開閉する。具体的には、BMU15は、開放状態にあるバイパスリレー18を閉成し、その後、開放状態に戻す。
【0062】
ステップS3の後は、ステップS4にて、PCM90は、バッテリーリレー14の開閉が行われた旨をモニタ102に所定時間継続して表示する。この所定時間は、予め設定されてPCM90に記憶されている。この所定時間は、例えば、10秒程度に設定されている。
【0063】
なお、BMU15は、バッテリーリレー14の開閉時のバッテリー電流センサSN1の検出値に基づいてバッテリーリレー14が異常であるか否かを判定し、この判定結果をPCM90に送信する。また、PCM90は、バッテリーリレー14が故障しているとの情報がBMU15から入力されると、Liバッテリ10の充放電量を小さくする等の制御を行う。
【0064】
前記の故障判定用リレー開閉制御を実施したときの各信号の入出力と、ドアロックユニットおよび各リレーの作動状態との時間変化を模式的に示すと
図5のようになる。なお、この
図5は、ドア51がロックされている状態で、且つ、故障判定用リレー開閉制御の未実施期間が基準時間以上経過している場合の様子を示している。
【0065】
ドアロック解除ボタン202が操作されるのに伴って、時刻t1にて、ドアロック解除ボタン202からPCM90に対してロック解除信号が入力されると、これを受けて、時刻t2に、PCM90からドアロックユニット50に対してロック解除の指令信号が出力される。また、時刻t2に、PCM90からBMU15に対してリレー開閉の指令信号が出力される。
【0066】
前記のロック解除の指令信号を受けて、時刻t3に、ドアロックユニット50が作動する。具体的には、ドアロックユニット50のロックレバー駆動部が作動してドア51のロックが解除される。そして、これと同時に、時刻t3にて、バッテリーリレー14が開放されるとともに、バイパスリレー18が閉成される。
【0067】
ここで、時刻t3にてバッテリーリレー14が開放されると、バッテリーリレー14を介したバッテリーセル12からPCM90やドアロックユニット50への電力供給は停止する。しかし、前記のように、時刻t3にて、バイパスリレー18が閉成される。そのため、バイパスリレー18およびバイパスラインL2を介したバッテリーセル12からPCM90やドアロックユニット50への電力供給がなされて、PCM90やドアロックユニット50への電力供給は維持される。これより、バッテリーリレー14の開閉前後において、PCM90やドアロックユニット50は、作動可能な状態に維持される。
【0068】
時刻t3の後は、時刻t4にて、ドアロックユニット50の作動が停止し、バッテリーリレー14が閉成されるとともにバイパスリレー18が開放される。
【0069】
(4)作用等
以上のように、本実施形態では、ドアロック解除ボタン202が操作されて、これに伴ってドアロックユニット50が作動する(詳細には、ドアロックユニット50によってドア51のロックが解除される)のと同じタイミングでバッテリーリレー14が開閉される。そのため、バッテリーリレー14の開閉に伴って作動音が発生しても、ドアロック解除ボタン202の操作およびドアロックユニット50の作動に伴って音が発生したと、利用者に思わせることができる。従って、何らの操作も行っていないのに車両から音が発生するという事態を回避でき、前記の作動音の発生に伴って利用者が違和感を覚えるのを確実に抑制することができる。
【0070】
特に、本実施形態では、ドアロック解除ボタン202の操作に伴ってドアロックユニット50が作動する場合、ドアロックユニット50自体からも作動音が発生するようになっている。そのため、利用者に対して、バッテリーリレーの作動音をドアロックユニット50の作動音と思わせることができ、バッテリーリレーの作動音の発生に伴って利用者が違和感を覚えるのをより確実に抑制できる。
【0071】
また、本実施形態では、バッテリーリレー14をバイパスして、バッテリーセル12と外部端子13ひいてはPCM90やドアロックユニット50に電力を供給する、バイパスラインL2およびバイパスリレー18が設けられている。そのため、前記のように、バッテリーリレー14の開閉前後で、PCM90やドアロックユニット50への通電を維持することができる。従って、バッテリーリレー14の開閉タイミングとドアロックユニット50の作動タイミングとを確実に重複させることができる。従って、利用者に対して、より確実にドアロックユニット50が作動したことに基づいてバッテリーリレー14の作動音が発生したと思わせることができる。
【0072】
(5)変形例
前記実施形態では、
図5に示したように、ドアロックユニット50が作動するのと同時に(時刻t4にて)バッテリーリレー14が開放され、ドアロックユニット50の作動が停止するのと同時に(時刻t5にて)バッテリーリレー14が閉成される場合を説明したが、ドアロックユニット50の作動タイミングとバッテリーリレー14の開閉タイミングとは、完全に同じでなくてもよい。具体的には、バッテリーリレー14の作動音が、ドアロックユニット50の作動に伴って生じたと、利用者に思わせることができる範囲において、前記のタイミングはずれていてもよい。例えば、ドアロックユニット50の作動開始から作動終了までの期間と、バッテリーリレー14の開放から閉成までの期間の一部のみが重複していてもよい。また、ドアロックユニット50の作動終了と同時(作動終了後にこれと連続して)、または、ドアロックユニット50の作動終了時期から数ms(例えば、10ms以下)経過した後に、バッテリーリレー14が開閉されてもよい。また、バッテリーリレー14の開閉終了と同時(開閉終了に連続して)、または、バッテリーリレー14の開閉終了時期から数ms(例えば、10ms以下)経過した後に、ドアロックユニット50が作動してもよい。
【0073】
前記実施形態では、リモートキー200のドアロック解除ボタン202が操作されて、これに伴ってドアロックユニット50によりドア51のロックが解除されるときに、バッテリーリレー14を開閉させる場合を説明したが、これに代えて、リモートキーのドアロックボタン201が操作されて、これに伴ってドアロックユニット50によりドア51がロックされるときにバッテリーリレー14を開閉させてもよい。
【0074】
また、いわゆる、スマートキーシステムが採用されて、リモートキー200が車外且つ車両1から所定の範囲にある状態で車両1に設けられた操作部に操作が行われることでドア51がロックされる、あるいは、ドア51のロックが解除されるようになった車両においては、この操作部の操作に伴ってドアロックユニット50が作動してドア51のロック状態が変更されたときに、バッテリーリレー14が開閉されてもよい。
【0075】
また、バッテリーリレー14の開閉と同じタイミングで作動する車両部品およびこれを操作する操作部は、ドアロックユニット50およびリモートキー200に限らない。例えば、ボンネットロック解除ボタン210が操作されて、ボンネットロックユニット70が作動したときに、バッテリーリレー14が開閉されてもよい。また、車室とは別にトランクルームが設けられた車両においては、トランクルームを開閉するドアをロックするためのドアロックユニットの作動時に、バッテリーリレー14が開閉されてもよい。そして、前記のように、前記の「同じタイミング」とは、車両部品の作動時期とバッテリーリレー14の開閉時期とが厳密に一致している場合に限らず、これらの時期の一部が重複している場合、および、これらの時期がわずかにずれている場合も含む。すなわち、利用者に、バッテリーリレー14の開閉音を、利用者の操作および車両部品の作動に伴って生じたと思わせることができればよく、この範囲において前記の時期はずれていてもよい。例えば、車両部品の作動終了後、これに連続して、あるいは、数ミリ秒程度遅れてリレーが開閉されてもよい。また、バッテリーリレー14の開閉後に、これに連続して、あるいは、数ミリ秒程度遅れて車両部品が作動してもよい。
【0076】
また、バッテリーリレー14の開閉時に作動する車両部品として、その作動時に作動音が発生しない部品が用いられてもよい。
【0077】
また、前記実施形態では、バイパスリレー18をバッテリーリレー14に並列に配設してバッテリーリレー14が開放されたときであってもバッテリーセル12からPCM90やドアロックユニット50等に電力が供給される場合を説明したが、バイパスリレー18は省略してもよい。なお、バッテリーリレー14が開放されたときにバッテリーセル12からドアロックユニット50に電力が供給されない場合には、
図7に示すように、時刻t4にてドアロックユニット50の作動が終了した直後に(時刻t5に)、バッテリーリレー14を開閉させればよい。あるいは、バッテリーリレー14の開閉が終了した直後に、ドアロックユニット50が作動するように構成してもよい。
【0078】
また、バイパスリレー18に代えて、
図6に示すように、Liバッテリ10とは別に、蓄電可能なキャパシタ300を車両1に設けて、キャパシタ300からPCM90やドアロックユニット50等に電力が供給されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 Liバッテリ(リチウムイオンバッテリ-)
12 バッテリーセル
13 外部端子
15 BMU(制御手段)
18 バイパスリレー(予備給電手段)
50 ドアロックユニット(車両部品)
51 ドア
70 ボンネットロックユニット(他の例に係る車両部品)
71 ボンネット(他の例に係る車両部品)
90 PCM(制御手段)
102 モニタ(報知手段)
202 ドアロック解除ボタン(操作手段)
300 キャパシタ(他の例に係る予備給電手段)