(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】プリプレグの製造方法及び高圧ガス貯蔵タンクの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/24 20060101AFI20240402BHJP
C08G 59/44 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C08J5/24 CFC
C08G59/44
(21)【出願番号】P 2020066122
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池内 孝介
(72)【発明者】
【氏名】松本 信彦
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-026225(JP,A)
【文献】特開2006-070125(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208344(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/105282(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/179358(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/065248(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16;15/08-15/14
C08J 5/04-5/10;5/24
B29C 70/00-70/88
B32B 1/00-43/00
C08F 283/01;290/00-290/14
299/00-299/08
C08G 59/00-59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(I)~工程(III)を順に有する、プリプレグの製造方法。
工程(I):エポキシ樹脂(A)、下記の成分(x1)と成分(x2)との反応生成物(X)を含むエポキシ樹脂硬化剤(B)、及び溶剤を含有するエポキシ樹脂組成物を調製する工程
(x1)メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種
(x2)下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種
【化1】
(式(1)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~13のアラルキル基を表す。)
工程(II):前記エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させて、未乾燥プリプレグを得る工程
工程(III):前記未乾燥プリプレグを、下記式(i)を満たす条件で乾燥させて溶剤を除去する工程
8,000≦(K×T)/W≦30,000・・・(i)
K:乾燥温度(K)
T:乾燥時間(秒)
W:未乾燥プリプレグの厚み(mm)
【請求項2】
前記溶剤がメタノール及び酢酸エチルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項3】
前記式(i)における乾燥温度Kが330~370(K)である、請求項1又は2に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項4】
前記強化繊維が長繊維又は連続繊維である、請求項1~3のいずれか1項に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項5】
前記強化繊維がガラス繊維及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか1項に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂組成物中の前記溶剤の含有量が15~80質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂(A)がメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基の数に対する前記エポキシ樹脂硬化剤(B)中の活性アミン水素数の比が1.0超5.0以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項9】
ライナーと、繊維強化複合材からなる外層とを有する高圧ガス貯蔵タンクの製造方法であって、下記工程(Ia)~工程(IVa)を順に有する、高圧ガス貯蔵タンクの製造方法。
工程(Ia):エポキシ樹脂(A)、下記の成分(x1)と成分(x2)との反応生成物(X)を含むエポキシ樹脂硬化剤(B)、及び溶剤を含有するエポキシ樹脂組成物を調製する工程
(x1)メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種
(x2)下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種
【化2】
(式(1)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~13のアラルキル基を表す。)
工程(IIa):前記エポキシ樹脂組成物を連続繊維束に含浸させて、未乾燥トウプリプレグを得る工程
工程(IIIa):前記未乾燥トウプリプレグを、下記式(ia)を満たす条件で乾燥させて溶剤を除去し、トウプリプレグを得る工程
8,000≦(K×T)/Wa≦30,000・・・(ia)
K:乾燥温度(℃)
T:乾燥時間(秒)
Wa:未乾燥トウプリプレグの厚み(mm)
工程(IVa):前記トウプリプレグをライナーの外表面に巻き付け、次いで加熱して、繊維強化複合材からなる外層を形成する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグの製造方法及び高圧ガス貯蔵タンクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に配慮した天然ガス自動車(CNG車)や燃料電池自動車(FCV)の普及が進んでいる。燃料電池自動車は燃料電池を動力源としており、その燃料となる水素を高圧に圧縮して自動車に充填する水素ステーションの整備が不可欠である。
燃料電池自動車用の水素ステーション、あるいは、CNG車、燃料電池自動車等の車載用燃料タンクとして用いられる高圧ガス貯蔵タンクとして、これまで鋼製のタンクが使用されてきたが、タンクのライナーあるいはその外層に樹脂材料を用いた、より軽量な高圧ガス貯蔵タンクの開発が進められてきている。車載用燃料タンクを軽量化することにより、搭載車の燃費を改善できるなどのメリットがある。
【0003】
高圧ガス貯蔵タンクを構成する樹脂材料として、ガスバリア性を有する樹脂、及び、該樹脂を強化繊維に含浸させた繊維強化複合材(FRP)を用いることが知られている。
例えば特許文献1には、ガスバリア性を有する主材料としてのナイロン等の樹脂と、水素吸着性能を有する添加剤を含有するエラストマーとを有する樹脂ライナー、及び、その外周面にFRP層が積層された高圧水素タンクが開示されている。
特許文献2には、ライナーと、該ライナーの外層とを有し、外層が連続繊維と該連続繊維に含浸した所定のガスバリア性ポリアミド樹脂を含む複合材料から構成された圧力容器、及び、該複合材料から構成されるライナーが開示されている。
特許文献3には、高圧水素貯蔵タンクの被覆物である構造物が、分子内にメソゲン基を有し、硬化反応によりスメクチックの構造を形成可能なエポキシモノマー等の熱硬化性樹脂と、マイカとを含有する樹脂組成物の硬化物を含む硬化層、及び、該硬化層の片面又は両面に炭素繊維含有層を有する構造物であるものが開示されている。また、樹脂組成物中のマイカの含有率を増やすことで、マイカの迷路効果により水素ガスバリア性が向上することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-276146号公報
【文献】国際公開第2016/084475号
【文献】国際公開第2017/175775号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ライナーと、該ライナーの外層とを有し、外層が強化繊維及びマトリクス樹脂を含む複合材料から構成される圧力容器の製造方法として、フィラメントワインディング法やテープワインディング法を採用して、ライナーの外周に複合材料を巻き付けて外層を成形することも知られている(特許文献2)。
複合材料におけるマトリクス樹脂が熱可塑性樹脂ではなく熱硬化性樹脂の硬化物である場合も、同様にワインディング法を採用できる。この場合は、連続強化繊維束に熱硬化性樹脂を含浸させたもの(トウプリプレグ)をライナーの外周に巻き付け、次いで加熱硬化させて成形する。
この際、強化繊維への含浸性を高める観点から、熱硬化性樹脂を溶剤等で希釈した樹脂組成物を強化繊維に含浸させることもできる。しかしながら、得られるプリプレグ中の溶剤残留量が多いと、ワインディング成形時にボイドやピンホールが発生し、成形不良が生じることがあった。一方で、溶剤を除去するために過度に加熱乾燥させたプリプレグは、ワインディング成形時に樹脂接着性が低下するという現象も見出された。この現象は、特に速硬化性の熱硬化性樹脂を用いた場合に顕著になる。
【0006】
本発明の課題は、エポキシ樹脂、所定のエポキシ樹脂硬化剤、及び溶剤を含有するエポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させる工程を有するプリプレグの製造方法であって、成形時のボイドやピンホール等の発生が少なく、ワインディング成形に用いた際の樹脂接着性も良好なプリプレグの製造方法、及び高圧ガス貯蔵タンクの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、溶剤を含有する所定のエポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させた後、所定条件で乾燥させて溶剤を除去する工程を有するプリプレグの製造方法が、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明は、下記[1]及び[2]に関する。
[1]下記工程(I)~工程(III)を順に有する、プリプレグの製造方法。
工程(I):エポキシ樹脂(A)、下記の成分(x1)と成分(x2)との反応生成物(X)を含むエポキシ樹脂硬化剤(B)、及び溶剤を含有するエポキシ樹脂組成物を調製する工程
(x1)メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種
(x2)下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種
【化1】
(式(1)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~13のアラルキル基を表す。)
工程(II):前記エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させて、未乾燥プリプレグを得る工程
工程(III):前記未乾燥プリプレグを、下記式(i)を満たす条件で乾燥させて溶剤を除去する工程
8,000≦(K×T)/W≦30,000・・・(i)
K:乾燥温度(K)
T:乾燥時間(秒)
W:未乾燥プリプレグの厚み(mm)
[2]ライナーと、繊維強化複合材からなる外層とを有する高圧ガス貯蔵タンクの製造方法であって、下記工程(Ia)~工程(IVa)を順に有する、高圧ガス貯蔵タンクの製造方法。
工程(Ia):エポキシ樹脂(A)、下記の成分(x1)と成分(x2)との反応生成物(X)を含むエポキシ樹脂硬化剤(B)、及び溶剤を含有するエポキシ樹脂組成物を調製する工程
(x1)メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種
(x2)下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種
【化2】
(式(1)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~13のアラルキル基を表す。)
工程(IIa):前記エポキシ樹脂組成物を連続繊維束に含浸させて、未乾燥トウプリプレグを得る工程
工程(IIIa):前記未乾燥トウプリプレグを、下記式(ia)を満たす条件で乾燥させて溶剤を除去し、トウプリプレグを得る工程
8,000≦(K×T)/Wa≦30,000・・・(ia)
K:乾燥温度(℃)
T:乾燥時間(秒)
Wa:未乾燥トウプリプレグの厚み(mm)
工程(IVa):前記トウプリプレグをライナーの外表面に巻き付け、次いで加熱して、繊維強化複合材からなる外層を形成する工程
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、成形時のボイドやピンホール等の発生が少なく、ワインディング成形に用いた際の樹脂接着性も良好なプリプレグの製造方法、及び高圧ガス貯蔵タンクの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】高圧ガス貯蔵タンクの一実施形態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[プリプレグの製造方法]
本発明のプリプレグの製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう)は、下記工程(I)~工程(III)を順に有することを特徴とする。
工程(I):エポキシ樹脂(A)、下記の成分(x1)と成分(x2)との反応生成物(X)を含むエポキシ樹脂硬化剤(B)、及び溶剤を含有するエポキシ樹脂組成物を調製する工程
(x1)メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種
(x2)下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種
【化3】
(式(1)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~13のアラルキル基を表す。)
工程(II):前記エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させて、未乾燥プリプレグを得る工程
工程(III):前記未乾燥プリプレグを、下記式(i)を満たす条件で乾燥させて溶剤を除去する工程
8,000≦(K×T)/W≦30,000・・・(i)
K:乾燥温度(K)
T:乾燥時間(秒)
W:未乾燥プリプレグの厚み(mm)
【0011】
上記において未乾燥プリプレグとは、工程(III)に供される、乾燥前のプリプレグを意味し、未乾燥プリプレグの厚みとは、未乾燥プリプレグの、長手方向に垂直な断面における外径のうち最も短い部分の長さを意味する。
本発明の製造方法は上記工程(I)~工程(III)を順に有することにより、成形時のボイドやピンホール等の発生が少なく、ワインディング成形に用いた際の樹脂接着性も良好なプリプレグを製造することができる。
【0012】
本発明が上記効果を奏する理由については定かではないが、次のように考えられる。
本発明に用いる、反応生成物(X)を含むエポキシ樹脂硬化剤(B)を含有するエポキシ樹脂組成物は、水素ガス等のガスバリア性が高く、且つ速硬化性を有するものである。
繊維強化プリプレグに用いられるエポキシ樹脂組成物は、強化繊維への含浸性を高める観点から、溶剤等で希釈して用いることが好ましい。溶剤を含有するエポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させた後は、成形時における残留溶剤由来のボイドやピンホールの発生を抑えるため、通常、溶剤を除去するために加熱乾燥を行う。しかしながら速硬化性のエポキシ樹脂組成物を用いた場合は、加熱乾燥時にエポキシ樹脂組成物の硬化も進行してしまうという問題があることが判った。例えば、連続強化繊維を用いた繊維強化プリプレグを用いてフィラメントワインディング法等により成形を行う場合には、成形前にエポキシ樹脂組成物の硬化が進行すると、ワインディング後の樹脂接着性が低下するという不具合が生じる。
上記を鑑みて本発明者らが検討を行った結果、プリプレグの製造に用いるエポキシ樹脂組成物に含まれる溶剤を除去する際の乾燥条件において、乾燥温度及び乾燥時間の積と、未乾燥プリプレグの厚みとの比率を特定の範囲とすることで上記課題を解決できることを見出した。前記式(i)における(K×T)/Wが8,000以上であれば、プリプレグ中の溶剤が十分に除去され、成形時のボイドやピンホール等の発生が少ないプリプレグとすることができると考えられる。また前記式(i)における(K×T)/Wが30,000以下であれば、前記エポキシ樹脂組成物をマトリクス樹脂として用いたプリプレグであっても、溶剤乾燥時に硬化が過度に進行することがなく、ワインディング後の樹脂接着性の低下を抑制できると考えられる。
【0013】
本発明の方法により得られるプリプレグの形状は、使用する強化繊維の種類、形態、並びに用途に応じて適宜選択することができ、例えば、トウ、シート、テープ等が挙げられる。シート又はテープを構成するプリプレグの種類としては、一方向(UD)材、織物、不織布等が挙げられる。
プリプレグを高圧ガス貯蔵タンクの製造に用いる場合には、高圧ガス貯蔵タンクを後述する方法により製造する観点から、プリプレグの形状はトウプリプレグ又はテープ状のプリプレグであることが好ましく、トウプリプレグであることがより好ましい。
【0014】
<工程(I)>
工程(I)では、エポキシ樹脂(A)、下記の成分(x1)と成分(x2)との反応生成物(X)を含むエポキシ樹脂硬化剤(B)、及び溶剤を含有するエポキシ樹脂組成物を調製する。
(x1)メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種
(x2)下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種
【化4】
(式(1)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~13のアラルキル基を表す。)
該エポキシ樹脂組成物は水素ガス等のガスバリア性が高く、且つ、プリプレグ及びその硬化物である繊維強化複合材(以下、単に「複合材」ともいう)に用いた際には高い耐衝撃性を発現することができる。そのため本発明の方法により製造されるプリプレグは、後述する高圧ガス貯蔵タンクの製造に好適に用いられる。
【0015】
(エポキシ樹脂(A))
エポキシ樹脂(A)(以下、単に「成分(A)」ともいう)は、エポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ樹脂であれば特に制限されないが、高いガスバリア性の発現を考慮した場合には、芳香環又は脂環式構造を分子内に含む多官能エポキシ樹脂が好ましい。
当該多官能エポキシ樹脂の具体例としては、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミノ基及び/又はグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂及びレゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1つの樹脂が挙げられる。柔軟性や耐衝撃性、耐湿熱性などの諸性能を向上させるために、上記のエポキシ樹脂を適切な割合で2種以上混合して用いることもできる。
上記の中でも、ガスバリア性の観点から、エポキシ樹脂(A)としてはメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、及びビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とするものが好ましく、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分とするものがより好ましい。
なお、ここでいう「主成分」とは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分を含みうることを意味し、好ましくは全体の50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、さらに好ましくは90~100質量%を意味する。
【0016】
(エポキシ樹脂硬化剤(B))
エポキシ樹脂硬化剤(B)(以下、単に「成分(B)」ともいう)は、得られるプリプレグ及び複合材において高いガスバリア性と耐衝撃性とを発現する観点から、下記の成分(x1)と成分(x2)との反応生成物(X)を含むエポキシ樹脂硬化剤(B)を含有する。
(x1)メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種
(x2)下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種
【化5】
(式(1)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~13のアラルキル基を表す。)
【0017】
〔反応生成物(X)〕
反応生成物(X)は、前記成分(x1)と成分(x2)との反応生成物である。
成分(x1)はガスバリア性の観点から用いられ、ガスバリア性の点からメタキシリレンジアミンが好ましい。成分(x1)は、1種を単独で用いてもよく、2種類を混合して用いてもよい。
【0018】
成分(x2)は、前記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である。得られるプリプレグ及び複合材において高いガスバリア性と耐衝撃性とを発現する観点から、前記一般式(1)におけるR1は水素原子又は炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましく、水素原子であることがよりさらに好ましい。
また、得られるプリプレグ及び複合材において高いガスバリア性と耐衝撃性とを発現する観点から、前記一般式(1)におけるR2は水素原子又は炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましく、水素原子であることがよりさらに好ましい。
【0019】
前記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば当該不飽和カルボン酸のエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物が挙げられる。不飽和カルボン酸のエステルとしてはアルキルエステルが好ましく、良好な反応性を得る観点から当該アルキル炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2である。
【0020】
前記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体としては、アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、α-プロピルアクリル酸、α-イソプロピルアクリル酸、α-n-ブチルアクリル酸、α-t-ブチルアクリル酸、α-ペンチルアクリル酸、α-フェニルアクリル酸、α-ベンジルアクリル酸、クロトン酸、2-ペンテン酸、2-ヘキセン酸、4-メチル-2-ペンテン酸、2-ヘプテン酸、4-メチル-2-ヘキセン酸、5-メチル-2-ヘキセン酸、4,4-ジメチル-2-ペンテン酸、4-フェニル-2-ブテン酸、桂皮酸、o-メチル桂皮酸、m-メチル桂皮酸、p-メチル桂皮酸、2-オクテン酸等の不飽和カルボン酸、及びこれらのエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物等が挙げられる。
上記の中でも、得られるプリプレグ及び複合材において高いガスバリア性と耐衝撃性とを発現する観点から、成分(x2)はアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びこれらのアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらのアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種がさらに好ましく、アクリル酸のアルキルエステルがよりさらに好ましく、アクリル酸メチルがよりさらに好ましい。
成分(x2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
成分(x1)と成分(x2)との反応は、成分(x2)として不飽和カルボン酸、エステル、アミドを使用する場合には、0~100℃、より好ましくは0~70℃の条件下で成分(x1)と成分(x2)とを混合し、100~300℃、好ましくは130~250℃の条件下でマイケル付加反応及び脱水、脱アルコール、脱アミンによるアミド基形成反応を行うことにより実施される。
この場合、アミド基形成反応の際には、反応を完結させるために、必要に応じて反応の最終段階において反応装置内を減圧処理することもできる。また、必要に応じて非反応性の溶剤を使用して希釈することもできる。さらに脱水剤、脱アルコール剤として、亜リン酸エステル類などの触媒を添加することもできる。
【0022】
一方、成分(x2)として不飽和カルボン酸の酸無水物、酸塩化物を使用する場合には、0~150℃、好ましくは0~100℃の条件下で混合後、マイケル付加反応及びアミド基形成反応を行うことにより実施される。この場合、アミド基形成反応の際には、反応を完結させるために、必要に応じて反応の最終段階において反応装置内を減圧処理することもできる。また、必要に応じて非反応性の溶剤を使用して希釈することもできる。さらにピリジン、ピコリン、ルチジン、トリアルキルアミンなどの3級アミンを添加することもできる。
【0023】
成分(x1)と成分(x2)との反応により形成されるアミド基部位は高い凝集力を有しているため、当該成分(x1)と成分(x2)との反応生成物(X)を含むエポキシ樹脂硬化剤を用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物は、高いガスバリア性と、強化繊維に対する良好な接着性とを有する。
【0024】
反応生成物(X)において、成分(x1)に対する成分(x2)の反応モル比[(x2)/(x1)]は、0.3~1.0の範囲であることが好ましく、0.6~1.0の範囲であることがより好ましい。上記反応モル比が0.3以上であれば、エポキシ樹脂硬化剤中に十分な量のアミド基が生成し、高いレベルのガスバリア性及び強化繊維に対する接着性が発現する。一方、上記反応モル比が1.0以下の範囲であれば、エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基との反応に必要なアミノ基の量が十分であり、耐熱性、有機溶剤に対する溶解性にも優れる。
【0025】
反応生成物(X)は、前記成分(x1)及び成分(x2)と、さらに下記成分(x3)、成分(x4)及び成分(x5)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物との反応生成物であってもよい。
(x3)R3-COOHで表される一価のカルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種(R3は水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~7のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表す。)
(x4)環状カーボネート
(x5)炭素数2~20のモノエポキシ化合物
【0026】
成分(x3)である、R3-COOHで表される一価のカルボン酸及びその誘導体は、必要に応じて反応生成物(X)を含むエポキシ樹脂硬化剤(B)とエポキシ樹脂(A)との反応性を低下させ、作業性、ポットライフ等を向上させる観点から用いられる。
R3は水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~7のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表し、R3は、好ましくは炭素数1~3のアルキル基又はフェニル基である。
またR3-COOHで表される一価のカルボン酸の誘導体としては、例えば当該カルボン酸のエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物が挙げられる。当該カルボン酸のエステルとしてはアルキルエステルが好ましく、当該アルキル炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2である。
成分(x3)としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、グリコール酸、安息香酸等の一価のカルボン酸及びその誘導体が挙げられる。
成分(x3)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
成分(x4)である環状カーボネートは、反応生成物(X)を含むエポキシ樹脂硬化剤(B)とエポキシ樹脂(A)との反応性を低下させ、作業性、ポットライフ等を向上させる観点から、必要に応じて用いられる。
成分(x1)との反応性の観点から、成分(x4)は六員環以下の環状カーボネートであることが好ましい。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセリンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-メトキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オンなどが挙げられる。これらの中でも、ガスバリア性の観点から、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びグリセリンカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
成分(x4)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
成分(x5)であるモノエポキシ化合物は、炭素数2~20のモノエポキシ化合物であり、反応生成物(X)を含むエポキシ樹脂硬化剤(B)とエポキシ樹脂(A)との反応性を低下させ、作業性、ポットライフ等を向上させる観点から、必要に応じて用いられる。ガスバリア性の観点から、成分(x5)は炭素数2~10のモノエポキシ化合物であることが好ましく、下記式(2)で示される化合物であることがより好ましい。
【0029】
【化6】
(式(2)中、R
4は水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、クロロメチル基、又はR
5-O-CH
2-を表し、R
5はフェニル基又はベンジル基を表す。)
前記式(2)で示されるモノエポキシ化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、フェニルグリシジルエーテル、及びベンジルグリシジルエーテル等が挙げられる。
成分(x5)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
反応生成物(X)に成分(x3)、成分(x4)又は成分(x5)を用いる場合には、成分(x3)、成分(x4)及び成分(x5)からなる群から選ばれるいずれか1種の化合物を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
なお、反応生成物(X)は、前記成分(x1)~成分(x5)のほか、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに他の成分と反応させた反応生成物であってもよい。ここでいう他の成分としては、例えば芳香族ジカルボン酸又はその誘導体等が挙げられる。
但し、該「他の成分」の使用量は、反応生成物(X)を構成する反応成分の合計量の30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0032】
成分(x1)及び成分(x2)と、さらに成分(x3)、成分(x4)及び成分(x5)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物との反応生成物は、成分(x3)、成分(x4)及び成分(x5)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を、成分(x2)と併用して、ポリアミン化合物である成分(x1)と反応させて得られる。該反応は、成分(x2)~(x5)を任意の順序で添加して成分(x1)と反応させてもよく、成分(x2)~(x5)を混合して成分(x1)と反応させてもよい。
【0033】
成分(x1)と成分(x3)との反応は、成分(x1)と成分(x2)との反応と同様の条件で行うことができる。成分(x3)を用いる場合には、成分(x2)及び成分(x3)を混合して成分(x1)と反応させてもよく、初めに成分(x1)と成分(x2)とを反応させてから成分(x3)を反応させてもよい。
一方、成分(x4)及び/又は成分(x5)を用いる場合には、初めに成分(x1)と成分(x2)とを反応させてから、成分(x4)及び/又は成分(x5)と反応させることが好ましい。
成分(x1)と成分(x4)及び/又は成分(x5)との反応は、25~200℃の条件下で成分(x1)と成分(x4)及び/又は成分(x5)とを混合し、30~180℃、好ましくは40~170℃の条件下で付加反応を行うことにより実施される。また、必要に応じナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシドなどの触媒を使用することができる。
上記反応の際には、反応を促進するために、必要に応じて成分(x4)及び/又は成分(x5)を溶融させるか、もしくは非反応性の溶剤で希釈して使用することもできる。
【0034】
反応生成物(X)が、前記成分(x1)及び成分(x2)と、さらに前記成分(x3)、成分(x4)及び成分(x5)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物との反応生成物である場合にも、前記成分(x1)に対する成分(x2)の反応モル比[(x2)/(x1)]は、前記と同様の理由で0.3~1.0の範囲であることが好ましく、0.6~1.0の範囲であることがより好ましい。一方、成分(x1)に対する、前記成分(x3)、成分(x4)及び成分(x5)の反応モル比[{(x3)+(x4)+(x5)}/(x1)]は、0.05~3.1の範囲であることが好ましく、0.07~2.5の範囲であることがより好ましく、0.1~2.0の範囲であることがさらに好ましい。
ただし、ガスバリア性及び作業性、ポットライフ等の観点から、成分(x1)に対する、成分(x2)~成分(x5)の反応モル比[{(x2)+(x3)+(x4)+(x5)}/(x1)]は、0.35~2.5の範囲であることが好ましく、0.35~2.0の範囲であることがより好ましい。
【0035】
エポキシ樹脂硬化剤(B)は、反応生成物(X)以外の硬化剤成分を含有していてもよい。「反応生成物(X)以外の硬化剤成分」とは、エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基と反応し得る官能基を2つ以上有する、反応生成物(X)以外の成分であり、エポキシ樹脂(A)との反応性及びガスバリア性の観点からは、成分(x1)以外の、分子内に2つ以上のアミノ基を有するポリアミン化合物、及び、ポリアミン化合物の変性体が好ましい成分として挙げられる。
成分(x1)以外のポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン等の鎖状脂肪族ポリアミン化合物;o-キシリレンジアミン等の芳香環含有脂肪族ポリアミン化合物;イソホロンジアミン、1,2-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、メンセンジアミン、ノルボルナンジアミン、トリシクロデカンジアミン、アダマンタンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-メチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-3,6-ジエチルシクロヘキサン、ジアミノジエチルメチルシクロヘキサン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂環式構造を有するポリアミン化合物;フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、2,2’-ジエチル-4,4’-メチレンジアニリン等の芳香族ポリアミン化合物;N-アミノエチルピペラジン、N,N’-ビス(アミノエチル)ピペラジン等の複素環式構造を有するポリアミン化合物;ポリエーテルポリアミン化合物等が挙げられる。
また、ポリアミン化合物の変性体としては、ポリアミン化合物のマンニッヒ変性物、エポキシ変性物、マイケル付加物、マイケル付加・重縮合物、スチレン変性物、ポリアミド変性物等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
但し、得られるプリプレグ及び複合材において高いガスバリア性と耐衝撃性とを発現する観点からは、エポキシ樹脂硬化剤(B)は、反応生成物(X)の含有量が高いことが好ましい。上記観点から、エポキシ樹脂硬化剤(B)中の反応生成物(X)の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上である。また、上限は100質量%である。
【0037】
エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂(A)とエポキシ樹脂硬化剤(B)の配合割合については、一般にエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との反応によりエポキシ樹脂反応物を作製する場合の標準的な配合範囲であってよい。具体的には、エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基の数に対するエポキシ樹脂硬化剤(B)中の活性アミン水素数の比(エポキシ樹脂硬化剤(B)中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基の数)が0.2~12.0の範囲であることが好ましい。得られるプリプレグ及び複合材において高いガスバリア性と耐衝撃性とを発現する観点からは、(エポキシ樹脂硬化剤(B)中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基の数)は、より好ましくは0.4~10.0、さらに好ましくは0.6~8.0、よりさらに好ましくは0.9~6.0、よりさらに好ましくは1.0超5.0以下の範囲である。
【0038】
(溶剤)
工程(I)で調製するエポキシ樹脂組成物は、該組成物を低粘度化して強化繊維への含浸性を高める観点から、溶剤を含有する。
溶剤としては非反応性溶剤が好ましく、その具体例としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-プロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-プロポキシ-2-プロパノール等のアルコール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶剤:トルエン等の炭化水素系溶剤等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。
エポキシ樹脂(A)及びエポキシ樹脂硬化剤(B)の溶解性の観点、並びに溶剤の除去しやすさの観点からは、溶剤としては揮発性の高い溶剤が好ましい。具体的には、炭素数8以下の、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、及び炭化水素系溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、酢酸エチル、及びトルエンからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、メタノール及び酢酸エチルからなる群から選ばれる少なくとも1種がさらに好ましい。
【0039】
エポキシ樹脂組成物中の溶剤の含有量は特に制限されないが、エポキシ樹脂組成物の強化繊維への含浸性を高める観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、よりさらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは30質量%以上、よりさらに好ましくは40質量%以上であり、溶剤の除去しやすさの観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、よりさらに好ましくは70質量%以下である。
【0040】
エポキシ樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてさらにエポキシ樹脂(A)以外の熱硬化性樹脂、カップリング剤、反応性希釈剤、前記溶剤以外の非反応性希釈剤、硬化促進剤、湿潤剤、粘着付与剤、消泡剤、防錆剤、滑剤、顔料、酸素捕捉剤、充填剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤を配合してもよい。
エポキシ樹脂組成物が上記添加剤を含有する場合、該組成物中の上記添加剤の合計含有量は、エポキシ樹脂(A)及びエポキシ樹脂硬化剤(B)の合計量100質量部に対し20.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.001~15.0質量部である。
【0041】
但し本発明の効果を得る観点から、エポキシ樹脂組成物の固形分中のエポキシ樹脂(A)及びエポキシ樹脂硬化剤(B)の合計含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは85質量%以上であり、上限は100質量%である。「エポキシ樹脂組成物の固形分」とは、エポキシ樹脂組成物中の水及び溶剤を除いた成分を意味する。
【0042】
エポキシ樹脂組成物は、例えばエポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、溶剤、及び、必要に応じ用いられる添加剤をそれぞれ所定量配合した後、公知の方法及び装置を用いて攪拌、混合することにより調製できる。
【0043】
なお、工程(I)で調製されるエポキシ樹脂組成物の硬化物は、高いガスバリア性を有する。例えば、該硬化物の水素ガス透過係数は、好ましくは8.0×10-11[cc3・cm/(cm2・s・cmHg)]以下、より好ましくは6.0×10-11[cc3・cm/(cm2・s・cmHg)]以下、さらに好ましくは4.5×10-11[cc3・cm/(cm2・s・cmHg)]以下とすることができる。
エポキシ樹脂組成物の硬化物の水素ガス透過係数は、23℃の乾燥条件下で、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0044】
<工程(II)>
工程(II)では、工程(I)で得られたエポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させて、未乾燥プリプレグを得る。
強化繊維の形態としては、短繊維、長繊維、連続繊維が挙げられる。これらの中でも、得られるプリプレグを、後述する高圧ガス貯蔵タンクを構成する材料として用いる観点からは、長繊維又は連続繊維が好ましく、連続繊維がより好ましい。
なお本明細書において、短繊維とは繊維長が0.1mm以上10mm未満、長繊維とは繊維長が10mm以上100mm以下のものをいう。また連続繊維とは、100mmを超える繊維長を有する繊維束をいう。
【0045】
連続繊維の形状としては、トウ、シート、テープ等が挙げられ、シート又はテープを構成する連続繊維としては、一方向(UD)材、織物、不織布等が挙げられる。
プリプレグを高圧ガス貯蔵タンクの外層を構成する材料として用いる観点からは、連続繊維の形状としてはトウ又はテープが好ましく、トウがより好ましい。トウを構成する連続繊維束の本数(フィラメント数)は、高強度及び高弾性率が得られやすいという観点から、好ましくは3K~50K、より好ましくは6K~40Kである。
【0046】
連続繊維において、連続繊維束の平均繊維長には特に制限はないが、成形加工性の観点から、好ましくは1~10,000m、より好ましくは100~10,000mである。
連続繊維束の平均繊度は、成形加工性の観点、高強度及び高弾性率が得られやすいという観点から、好ましくは50~2000tex(g/1000m)、より好ましくは200~1500tex、さらに好ましくは500~1500texである。
また連続繊維束の平均引張弾性率は、好ましくは50~1000GPaである。
【0047】
強化繊維の材質としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ボロン繊維、セラミック繊維等の無機繊維;アラミド繊維、ポリオキシメチレン繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等の有機繊維が挙げられる。これらの中でも、高強度を得る観点からは無機繊維が好ましく、軽量で且つ高強度、高弾性率であることからガラス繊維及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、炭素繊維がさらに好ましい。
炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。また、リグニンやセルロースなど、植物由来原料の炭素繊維も用いることができる。
【0048】
本発明に用いる強化繊維は、処理剤で処理されたものでもよい。処理剤としては、表面処理剤又は集束剤が例示される。
上記表面処理剤としては、エポキシ樹脂硬化剤(B)中の任意成分として例示したカップリング剤が挙げられ、シランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤としては、前記と同様に、ビニル基を有するシランカップリング剤、アミノ基を有するシランカップリング剤、エポキシ基を有するシランカップリング剤、(メタ)アクリル基を有するシランカップリング剤、メルカプト基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
【0049】
上記集束剤としては、例えば、ウレタン系集束剤、エポキシ系集束剤、アクリル系集束剤、ポリエステル系集束剤、ビニルエステル系集束剤、ポリオレフィン系集束剤、ポリエーテル系集束剤、及びカルボン酸系集束剤等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上を組み合わせた集束剤としては、例えば、ウレタン/エポキシ系集束剤、ウレタン/アクリル系集束剤、ウレタン/カルボン酸系集束剤等が挙げられる。
上記の中でも、エポキシ樹脂組成物の硬化物との界面接着性を向上させ、得られるプリプレグ、及びその硬化物である繊維強化複合材の強度及び耐衝撃性をより向上させる観点から、強化繊維はウレタン系集束剤、エポキシ系集束剤及びウレタン/エポキシ系集束剤からなる群から選ばれる1種以上により処理されたものであることが好ましく、エポキシ系集束剤により処理されたものであることがより好ましい。
【0050】
前記処理剤の量は、エポキシ樹脂組成物の硬化物との界面接着性を向上させ、得られるプリプレグ、及びその硬化物である繊維強化複合材の強度及び耐衝撃性をより向上させる観点から、強化繊維に対し、好ましくは0.001~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%、さらに好ましくは0.5~2質量%である。
【0051】
強化繊維として市販品を用いることもできる。連続炭素繊維束の市販品としては、例えば東レ(株)製のトレカ糸「T300」、「T300B」、「T400HB」、「T700SC」、「T800SC」、「T800HB」、「T830HB」、「T1000GB」、「T100GC」、「M35JB」、「M40JB」、「M46JB」、「M50JB」、「M55J」、「M55JB」、「M60JB」、「M30SC」、「Z600」の各シリーズ等が挙げられる。
【0052】
工程(II)において、エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させる方法は特に制限されず、強化繊維の形態等に応じて、適宜、公知の方法を用いて行うことができる。例えばトウプリプレグを製造する場合は、エポキシ樹脂組成物を充填した樹脂浴に、ロールから巻き出した連続繊維束を浸漬させ、該組成物を含浸させた後に樹脂浴から引き上げる方法が挙げられる。その後、絞りロール等を用いて余剰のエポキシ樹脂組成物を除去する工程を行うことが好ましい。
エポキシ樹脂組成物の含浸は、必要に応じ加圧条件下、又は減圧条件下で行うこともできる。
【0053】
未乾燥プリプレグ中の強化繊維の含有量は特に制限されないが、得られるプリプレグ、及びその硬化物である繊維強化複合材において高強度及び高弾性率を得る観点から、未乾燥プリプレグ中の強化繊維の体積分率が、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.20以上、よりさらに好ましくは0.30以上、よりさらに好ましくは0.40以上となる範囲である。また、ガスバリア性、耐衝撃性及び成形加工性の観点からは、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.80以下、さらに好ましくは0.70以下、よりさらに好ましくは0.65以下となる範囲である。
未乾燥プリプレグ中の強化繊維の体積分率Vfは下記式から算出することができ、具体的には実施例に記載の方法により求めることができる。
Vf={強化繊維の質量(g)/強化繊維の比重}÷[{強化繊維の質量(g)/強化繊維の比重}+{含浸させたエポキシ樹脂組成物の質量(g)/エポキシ樹脂組成物の比重}]
【0054】
<工程(III)>
工程(III)では、工程(II)で得られた前記未乾燥プリプレグを、下記式(i)を満たす条件で乾燥させて溶剤を除去する。これにより、成形時のボイドやピンホール等の発生が少なく、ワインディング成形に用いた際の樹脂接着性が良好なプリプレグを製造することができる。
8,000≦(K×T)/W≦30,000・・・(i)
K:乾燥温度(K)
T:乾燥時間(秒)
W:未乾燥プリプレグの厚み(mm)
【0055】
上記式(i)における(K×T)/Wの値は、溶剤を十分に除去して、成形時のボイドやピンホール等の発生を抑制する観点から、8,000以上であり、好ましくは8,500以上、より好ましくは9,000以上である。また、乾燥時にエポキシ樹脂組成物の硬化が過度に進行せず、ワインディング成形に用いた際の樹脂接着性を良好にする観点から、30,000以下であり、好ましくは25,000以下、より好ましくは20,000以下、さらに好ましくは15,000以下、よりさらに好ましくは12,000以下である。
【0056】
上記式(i)において、乾燥温度Kは、溶剤を十分に除去して、成形時のボイドやピンホール等の発生を抑制する観点、及び、乾燥時にエポキシ樹脂組成物の硬化が過度に進行せず、ワインディング成形に用いた際の樹脂接着性の低下を抑制できる観点から、好ましくは300~400(K)、より好ましくは320~380(K)、さらに好ましくは330~370(K)である。
【0057】
上記式(i)において、乾燥時間Tは、溶剤を十分に除去して、成形時のボイドやピンホール等の発生を抑制する観点から、好ましくは10秒以上、より好ましくは20秒以上である。また、乾燥時にエポキシ樹脂組成物の硬化が過度に進行せず、ワインディング成形に用いた際の樹脂接着性の低下を抑制できる観点から、好ましくは220秒以下、より好ましくは200秒以下である。
【0058】
上記式(i)において、未乾燥プリプレグの厚みWは、プリプレグの形態によって異なるが、例えばプリプレグがトウプリプレグである場合は、通常、0.1~20mmであり、高圧ガス貯蔵タンクを構成する材料として用いる観点からは、好ましくは0.2~10mm、より好ましくは0.5~5mm、さらに好ましくは0.5~3mmである。
未乾燥プリプレグの厚みWは、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
【0059】
未乾燥プリプレグの乾燥は、熱風乾燥機、ヒーター、加熱ロール、熱板等を用いて公知の方法により行うことができる。例えば、未乾燥プリプレグを熱風乾燥機、ヒーター等による加熱雰囲気内を走行させる方法;未乾燥プリプレグを加熱ロール、熱板等の加熱体に接触させる方法;等が挙げられる。
【0060】
工程(III)を経て得られるプリプレグ中の強化繊維の含有量は、プリプレグの硬化物である繊維強化複合材において高強度及び高弾性率を得る観点から、プリプレグ中の強化繊維の体積分率が、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.30以上、よりさらに好ましくは0.40以上となる範囲である。また、得られる繊維強化複合材のガスバリア性、耐衝撃性及び成形加工性の観点からは、好ましくは0.98以下、より好ましくは0.95以下、さらに好ましくは0.80以下、よりさらに好ましくは0.70以下となる範囲である。
【0061】
工程(III)を経て得られたプリプレグにおいて、エポキシ樹脂組成物の固形分及び強化繊維の合計含有量は、水素ガス等のガスバリア性及び耐衝撃性に優れる繊維強化複合材を得る観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0062】
工程(III)を経て得られたプリプレグは、一旦巻き取り等を行ってプリプレグ製品としてもよく、巻き取り等を行わず、工程(III)を行った後に連続的に繊維強化複合材の製造に供することもできる。
【0063】
本発明の方法により得られたプリプレグを加熱硬化させることにより、繊維強化複合材を製造することができる。
プリプレグの硬化方法は特に制限されず、プリプレグに含まれるエポキシ樹脂組成物を硬化させるのに十分な温度及び時間において、公知の方法により行われる。プリプレグの硬化条件はプリプレグ及び形成される複合材の厚さ等にも依存するが、例えば、硬化温度は10~140℃の範囲で、硬化時間は5分~200時間の範囲で選択でき、生産性の観点から、好ましくは、硬化温度は80~120℃、硬化時間は10分~5時間の範囲である。
【0064】
本発明の方法により得られるプリプレグ及びその硬化物である繊維強化複合材は、水素ガス等のガスバリア性及び耐衝撃性に優れることから、例えば、パイプ、シャフト、ボンベ、タンク等に適用することができる。特に、以下に説明する高圧ガス貯蔵タンクの外層を形成する材料として好適である。
【0065】
[高圧ガス貯蔵タンクの製造方法]
本発明は、ライナーと、繊維強化複合材からなる外層とを有する高圧ガス貯蔵タンクの製造方法であって、下記工程(Ia)~工程(IVa)を順に有する高圧ガス貯蔵タンクの製造方法を提供する。
工程(Ia):エポキシ樹脂(A)、下記の成分(x1)と成分(x2)との反応生成物(X)を含むエポキシ樹脂硬化剤(B)、及び溶剤を含有するエポキシ樹脂組成物を調製する工程
(x1)メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種
(x2)下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種
【化7】
(式(1)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~13のアラルキル基を表す。)
工程(IIa):前記エポキシ樹脂組成物を連続強化繊維に含浸させて、未乾燥トウプリプレグを得る工程
工程(IIIa):前記未乾燥トウプリプレグを、下記式(ia)を満たす条件で乾燥させて溶剤を除去し、トウプリプレグを得る工程
8,000≦(K×T)/Wa≦30,000・・・(ia)
K:乾燥温度(℃)
T:乾燥時間(秒)
Wa:未乾燥トウプリプレグの厚み(mm)
工程(IVa):前記トウプリプレグをライナーの外表面に巻き付け、次いで加熱して、繊維強化複合材からなる外層を形成する工程
【0066】
上記製造方法によれば、ライナーと、繊維強化複合材からなる外層とを有する高圧ガス貯蔵タンクにおいて、ボイドやピンホール等の発生が少なく樹脂接着性にも優れる外層を効率よく形成することができる。
【0067】
<高圧ガス貯蔵タンク>
ライナーと、繊維強化複合材からなる外層とを有する高圧ガス貯蔵タンクについて、図面を用いて説明する。
図1は高圧ガス貯蔵タンクの一実施形態を示す断面模式図であり、高圧ガス貯蔵タンク10は、ライナー1と外層2とを有するものである。ライナー1は、内部に気体が充填される空間を備える耐圧性部材であり、通常、中空状に形成される。外層2は、繊維強化複合材からなり、ライナー1の外表面を覆うように形成されている。
口金3は、例えば、略円筒状であり、ライナー1と外層2との間に嵌入されて、固定されている。口金3の略円筒状の開口部は、高圧ガス貯蔵タンク10の開口部として機能する。口金3は、ステンレス、アルミニウム等他の金属からなるものであってもよいし、樹脂製でもよい。
ボス4は、例えば、アルミニウムからなり、一部分が外部に露出した状態で組みつけられ、タンク内部の発熱及び吸熱を、外部に導く働きをするものである。
バルブ5は、例えば、円柱状の部分に、雄ねじが形成された形状であり、口金3の内側面に形成されている雌ねじに螺合されることにより、バルブ5によって、口金3の開口部が閉じられる。なお本発明の高圧ガス貯蔵タンクにおいて、口金3、ボス4、バルブ5は、他の手段によって置き換えることもできる。
【0068】
(ライナー)
高圧ガス貯蔵タンク10を構成するライナー1の材質としては、樹脂を主成分とするライナー(以下、「樹脂ライナー」ともいう)、及び金属を主成分とするライナー(以下、「金属ライナー」ともいう)が例示される。軽量化が要求される車載用タンク等においては、樹脂ライナーを用いることが好ましい。
【0069】
樹脂ライナーに用いる樹脂としては、水素ガス等のガスバリア性及び耐圧性に優れる樹脂であれば特に制限されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の硬化物、光硬化性樹脂の硬化物等が挙げられる。これらの中でも、ライナーを容易に成形できるという観点からは熱可塑性樹脂が好ましい。
水素ガス等のガスバリア性及び耐圧性の観点から、熱可塑性樹脂の中でもポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ポリアミド樹脂がより好ましい。
ポリアミド樹脂としては、水素ガス等のガスバリア性及び耐圧性の観点から、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂が好ましい。具体的には、特許文献2(国際公開第2016/084475号)に記載されたポリアミド樹脂が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂が挙げられる。
【0070】
樹脂ライナーは、高強度、高弾性率を得る観点、並びに耐衝撃性を高める観点から、さらに強化繊維、エラストマー成分等の任意成分を含有していてもよい。強化繊維としては、前記プリプレグにおいて例示したものと同様のものを用いることができる。
【0071】
金属ライナーに用いる金属としては、アルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽合金を例示することができる。
【0072】
ライナーの厚さは、高圧ガス貯蔵タンクの容量、形状等に応じて適宜選択することができるが、水素ガス等のガスバリア性及び耐圧性の観点から、好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上、さらに好ましくは400μm以上であり、高圧ガス貯蔵タンクの小型化及び軽量化の観点からは、好ましくは60mm以下、より好ましくは40mm以下である。
【0073】
(外層)
高圧ガス貯蔵タンク10を構成する外層2は、繊維強化複合材からなるものである。
外層の厚さは、高圧ガス貯蔵タンクの容量、形状等に応じて適宜選択することができるが、高いガスバリア性及び耐衝撃性を付与する観点から、好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上、さらに好ましくは400μm以上であり、高圧ガス貯蔵タンクの小型化及び軽量化の観点からは、好ましくは80mm以下、より好ましくは60mm以下である。
【0074】
外層2の態様としては、例えば
図1に示すように、ライナー1の本体部分の外表面を、繊維強化複合材により隙間なく覆うように形成した態様が挙げられる。
外層は、ライナー外表面に直接設けてもよい。あるいは、ライナーの外表面に1層又は2層以上の他の層を設け、該他の層の表面に設けてもよい。例えば、ライナーと外層の密着性を向上させるため、ライナーと外層との間に接着層を設けることが挙げられる。
また外層の表面には、保護層、塗料層、錆止含有層等の任意の層が形成されていてもよい。
【0075】
高圧ガス貯蔵タンクの貯蔵対象となるガスは、25℃、1atmで気体のものであればよく、水素の他、酸素、二酸化炭素、窒素、アルゴン、LPG、代替フロン、メタン等が挙げられる。これらの中でも、本発明の有効性の観点から、好ましくは水素である。
【0076】
<工程(Ia)>
工程(Ia)では、エポキシ樹脂(A)、下記の成分(x1)と成分(x2)との反応生成物(X)を含むエポキシ樹脂硬化剤(B)、及び溶剤を含有するエポキシ樹脂組成物を調製する。
エポキシ樹脂組成物及びその調製方法、並びにこれらの好適態様は、前記プリプレグの製造方法における工程(I)と同じである。
【0077】
<工程(IIa)>
工程(IIa)では、工程(Ia)で得られたエポキシ樹脂組成物を連続繊維束に含浸させて、未乾燥トウプリプレグを得る。
連続繊維束を構成する強化繊維及びその好適態様も前記と同じであり、ガラス繊維及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、炭素繊維がより好ましい。
エポキシ樹脂組成物の連続繊維束への含浸は、前記プリプレグの製造方法における工程(II)と同様に行うことができる。例えば、エポキシ樹脂組成物を充填した樹脂浴に、ロールから巻き出した連続繊維束を浸漬させ、該組成物を含浸させた後に樹脂浴から引き上げる方法が挙げられる。その後、絞りロール等を用いて余剰のエポキシ樹脂組成物を除去する工程を行うことが好ましい。
エポキシ樹脂組成物の含浸は、必要に応じ加圧条件下、又は減圧条件下で行うこともできる。
【0078】
未乾燥トウプリプレグ中の強化繊維の含有量は、得られる外層において高強度及び高弾性率を得る観点から、未乾燥トウプリプレグ中の強化繊維の体積分率が、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.20以上、よりさらに好ましくは0.30以上、よりさらに好ましくは0.40以上となる範囲である。また、得られる外層のガスバリア性及び耐衝撃性、並びに成形加工性の観点からは、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.80以下、さらに好ましくは0.70以下、よりさらに好ましくは0.65以下となる範囲である。
未乾燥トウプリプレグ中の強化繊維の体積分率は、前記と同様の方法で求めることができる。
【0079】
<工程(IIIa)>
工程(IIIa)では、工程(IIa)で得られた未乾燥トウプリプレグを、下記式(ia)を満たす条件で乾燥させて溶剤を除去し、トウプリプレグを得る。これにより、得られるトウプリプレグは成形時のボイドやピンホール等の発生が少なく、且つ、以下の工程(IVa)のワインディング成形に用いた際の樹脂接着性も良好になる。
8,000≦(K×T)/Wa≦30,000・・・(ia)
K:乾燥温度(K)
T:乾燥時間(秒)
Wa:未乾燥トウプリプレグの厚み(mm)
未乾燥トウプリプレグの厚みとは、工程(IIIa)に供される、乾燥前のトウプリプレグの、長手方向に垂直な断面における外径のうち最も短い部分の長さを意味する。
【0080】
上記式(ia)における(K×T)/Waの値は、溶剤を十分に除去して、得られるトウプリプレグの成形時のボイドやピンホール等の発生を抑制する観点から、8,000以上であり、好ましくは8,500以上、より好ましくは9,000以上である。また、乾燥時にエポキシ樹脂組成物の硬化が過度に進行せず、工程(IVa)のワインディング成形に用いた際の樹脂接着性を良好にする観点から、30,000以下であり、好ましくは25,000以下、より好ましくは20,000以下、さらに好ましくは15,000以下、よりさらに好ましくは12,000以下である。
【0081】
上記式(ia)において、乾燥温度Kは、溶剤を十分に除去して、得られるトウプリプレグの成形時のボイドやピンホール等の発生を抑制する観点、及び、乾燥時にエポキシ樹脂組成物の硬化が過度に進行せず、工程(IVa)のワインディング成形に用いた際の樹脂接着性を良好にする観点から、好ましくは300~400(K)、より好ましくは320~380(K)、さらに好ましくは330~370(K)である。
【0082】
上記式(ia)において、乾燥時間Tは、溶剤を十分に除去して、得られるトウプリプレグの成形時のボイドやピンホール等の発生を抑制する観点から、好ましくは10秒以上、より好ましくは20秒以上である。また、乾燥時にエポキシ樹脂組成物の硬化が過度に進行せず、工程(IVa)のワインディング成形に用いた際の樹脂接着性を良好にする観点から、好ましくは220秒以下、より好ましくは200秒以下である。
【0083】
上記式(ia)において、未乾燥トウプリプレグの厚みWaは、高圧ガス貯蔵タンクの外層を形成する観点から、通常、0.1~20mmであり、好ましくは0.2~10mm、より好ましくは0.5~5mm、さらに好ましくは0.5~3mmである。
未乾燥トウプリプレグの厚みWaは、前記未乾燥プリプレグの厚みWと同様の方法で測定できる。
【0084】
未乾燥トウプリプレグの乾燥は、前記工程(III)で記載した方法と同様の方法により行うことができる。例えば、未乾燥トウプリプレグを熱風乾燥機、ヒーター等による加熱雰囲気内を走行させる方法;未乾燥トウプリプレグを加熱ロール、熱板等の加熱体に接触させる方法;等が挙げられる。これらの中でも、熱風乾燥機を用いる方法が好ましい。
【0085】
工程(IIIa)を経て得られるトウプリプレグ中の強化繊維の含有量は、得られる外層において高強度及び高弾性率を得る観点から、プリプレグ中の強化繊維の体積分率が、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.30以上、よりさらに好ましくは0.40以上となる範囲である。また、得られる外層のガスバリア性及び耐衝撃性、並びに成形加工性の観点からは、好ましくは0.98以下、より好ましくは0.95以下、さらに好ましくは0.80以下、よりさらに好ましくは0.70以下となる範囲である。
【0086】
工程(IIIa)で得られたトウプリプレグは、一旦巻き取り等を行ってもよく、巻き取り等を行わずに連続的に工程(IVa)に供することもできる。
【0087】
<工程(IVa)>
工程(IVa)では、工程(IIIa)で得られたトウプリプレグをライナーの外表面に巻き付け、次いで加熱して、繊維強化複合材からなる外層を形成する。これにより、ライナーと、繊維強化複合材からなる外層とを有する高圧ガス貯蔵タンクを製造できる。なお、ライナーと外層の密着性を向上させるために、ライナーの外表面に予め1層又は2層以上の他の層を設ける工程を行ってもよい。
【0088】
トウプリプレグをライナーの外表面に巻き付ける方法は特に制限されない。例えば、公知のフィラメントワインディング法を用いて、ライナーの外表面を覆うように螺旋状に隙間なく巻き付けることができる。トウプリプレグをライナーの外表面に適用するに際し、必要に応じ接着剤等を用いてもよい。
【0089】
加熱は、トウプリプレグに含まれるエポキシ樹脂組成物を硬化させるのに十分な温度及び時間において、公知の方法により行われる。生産性向上の観点から、加熱温度は80~120℃の範囲で、加熱時間は10分~5時間の範囲とすることが好ましい。
【0090】
上記のようにして外層を形成した後、さらに外層の表面に保護層、塗料層、錆止含有層等の任意の層を形成することもできる。
【実施例】
【0091】
次に実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
本実施例における測定及び評価は以下の方法で行った。
【0092】
<水素ガス透過係数[cc3・cm/(cm2・s・cmHg)]>
各例で調製したエポキシ樹脂組成物を、バーコーターを用いて、離型剤を塗布した平滑な金属板に厚み100μmで200mm角に塗工した後、100℃で5分間加熱して硬化させ、硬化物を作製した。この硬化物を用いて、蒸気透過率測定装置(GTRテック(株)製「G2700T・F」)を使用して、23℃の乾燥状態で水素ガス透過係数を測定した。
【0093】
<未乾燥プリプレグの厚み>
未乾燥プリプレグの厚みは、(株)ミツトヨ製電子ノギスを使用して測定した。
【0094】
<ボイド発生の有無>
アズワン製スクリュー管(容量110mL、外径Φ20.3mm)の外表面に、各例で得られたプリプレグ(トウプリプレグ)を、隙間が生じないように巻き付けた後、100℃の熱風乾燥器内で20分加熱して硬化させた。得られた硬化物(繊維強化複合材)表面の樹脂層におけるボイドの有無を目視で観察した。
【0095】
<ワインディング時の接着性>
各例で得られたプリプレグを23℃に冷却した後、前記と同様にしてスクリュー管に巻き付ける際、該プリプレグ表面のスクリュー管への接着の可否を目視で観察した。下記基準により接着性評価を行った結果を表1に示した。
A:室温で柔軟性を持ち、スクリュー管への接着が可
B:室温で柔軟性があるが、スクリュー管への接着が不可
C:室温で柔軟性がなく、スクリュー管への巻き付け不可
【0096】
製造例1
(エポキシ樹脂硬化剤溶液Aの調製)
反応容器に1molのメタキシリレンジアミン(MXDA)を仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.93molのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。生成するメタノールを留去しながら165℃に昇温し、2.5時間165℃を保持することで、MXDAとアクリル酸メチルとの反応生成物であるエポキシ樹脂硬化剤を得た。そこに、メタノールを1.5時間かけて滴下し、前記エポキシ樹脂硬化剤が65質量%、メタノールが35質量%のエポキシ樹脂硬化剤溶液Aを得た。
【0097】
実施例1(トウプリプレグの作製、評価)
<工程(I)>
製造例1で得られたエポキシ樹脂硬化剤溶液A 14.4gに、溶剤としてメタノールを1.5g及び酢酸エチルを9.9g、エポキシ樹脂としてメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱瓦斯化学(株)製「TETRAD-X」)4.5g(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数=1.2)を加えて撹拌し、固形分濃度40質量%のエポキシ樹脂組成物1を調製した。
なおエポキシ樹脂組成物1の硬化物の、前記方法により測定される水素ガス透過係数は3.9×10-11[cc3・cm/(cm2・s・cmHg)]であった。
【0098】
<工程(II)>
工程(I)で得られたエポキシ樹脂組成物1を充填した樹脂浴に、連続炭素繊維束(東レ(株)製「T700SC-12000」、フィラメント数:12K、引張弾性率:230GPa、織度:800tex)0.0914gを浸漬して該組成物を含浸させた。次いで樹脂浴から連続炭素繊維束を引き上げ、該繊維束から組成物が垂れ落ちない程度まで余剰の組成物を除去して、未乾燥プリプレグを得た。該未乾燥プリプレグの質量を測定し、ここから連続炭素繊維束の質量を差し引いた値をエポキシ樹脂組成物1の含浸量とした。また、未乾燥プリプレグの厚み(W)を前記方法で測定し、連続炭素繊維束の比重を1.8、エポキシ樹脂組成物1の比重を1.2として、未乾燥プリプレグ中の炭素繊維束の体積分率Vfを算出した。未乾燥プリプレグの質量、組成物の含浸量、未乾燥プリプレグの厚み(W)、及び炭素繊維束の体積分率Vfは表1に示す通りである。
次いで、前記未乾燥プリプレグを60℃(333K)の熱風乾燥機内で45秒間加熱して乾燥し、プリプレグ(トウプリプレグ)を作製した。得られたプリプレグを用いて、前記方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
実施例2
実施例1において、未乾燥プリプレグの乾燥温度を80℃(353K)、乾燥時間を30秒に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でプリプレグを作製し、前記方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
実施例3
実施例1において、連続炭素繊維束を東レ(株)製「T800SC-24000」(フィラメント数:24K、引張弾性率:294GPa、織度:1030tex)に変更し、さらに未乾燥プリプレグの乾燥時間を75秒に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でプリプレグを作製し、前記方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0101】
実施例4
実施例3において、未乾燥プリプレグの乾燥温度を80℃(353K)、乾燥時間を60秒に変更したこと以外は、実施例3と同様の方法でプリプレグを作製し、前記方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
実施例5
実施例4において、未乾燥プリプレグの乾燥時間を180秒に変更したこと以外は、実施例3と同様の方法でプリプレグを作製し、前記方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
比較例1
実施例2において、未乾燥プリプレグの乾燥時間を15秒に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でプリプレグを作製し、前記方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0104】
比較例2
比較例1において、未乾燥プリプレグの乾燥時間を240秒に変更したこと以外は、比較例1と同様の方法でプリプレグを作製し、前記方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0105】
比較例3
実施例4において、未乾燥プリプレグの乾燥時間を45秒に変更したこと以外は、実施例3と同様の方法でプリプレグを作製し、前記方法で各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0106】
比較例4
比較例3において、未乾燥プリプレグの乾燥時間を240秒に変更したこと以外は、比較例3と同様の方法でプリプレグを作製し、前記方法で各種評価を行った。しかしながら比較例4で得られたプリプレグは、プリプレグ表面の樹脂の接着性が低くワインディング成形ができなかった。そのため、成形後のボイド発生の有無についても評価することができなかった。
【0107】
【0108】
表1より、本発明の製造方法により得られたプリプレグは成形時のボイド発生が少なく、ワインディング成形に用いた際の樹脂接着性も良好であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明によれば、成形時のボイドやピンホール等の発生が少なく、ワインディング成形に用いた際の樹脂接着性も良好なプリプレグの製造方法、及び高圧ガス貯蔵タンクの製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0110】
10 高圧ガス貯蔵タンク
1 ライナー
2 外層
3 口金
4 ボス
5 バルブ