(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】モータ制御装置、モータ制御装置の設定方法および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H02P 8/12 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
H02P8/12
(21)【出願番号】P 2020066159
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 博之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一充
(72)【発明者】
【氏名】橘 優太
(72)【発明者】
【氏名】宮島 聡司
(72)【発明者】
【氏名】張 光栄
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-283835(JP,A)
【文献】国際公開第2007/097424(WO,A1)
【文献】特開2000-253696(JP,A)
【文献】国際公開第2009/101676(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステッピングモータのコイルに通電する駆動回路と、
前記コイルに回生電流が発生するタイミングで前記駆動回路に同期整流または非同期整流をさせるPWM制御手段と、
前記駆動回路が前記コイルの通電時に流れる電流と設定電流値とを比較する比較手段と、
前記設定電流値を設定すると共に、前記比較手段により前記コイルの通電時に流れる電流が前記設定電流値を超えたことを検出したならば、前記PWM制御手段による同期整流の実施を許可する制御手段と、
前記駆動回路の温度を検出する温度検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記駆動回路の温度が所定温度に到達した場合、前記比較手段により前記コイルの通電時に流れる電流が前記設定電流値を超えたことを検出した回数を比較する所定回数を減少させる、
モータ制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記設定電流値が閾値を超えた後に、前記比較手段により前記コイルの通電時に流れる電流が前記設定電流値を超えたことを検出したならば、前記PWM制御手段による同期整流の実施を許可する、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、同期整流の開始の閾値と終了の閾値とが異なる、
請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記比較手段により前記コイルの通電時に流れる電流が前記設定電流値を超えたことを所定回数だけ検出したならば、前記PWM制御手段による同期整流の実施を許可する、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、進相して他相に通電が切り替わったら、前記PWM制御手段による同期整流を強制的に停止させる、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記ステッピングモータの動作モードが切り替わったら、前記PWM制御手段による同期整流を強制的に停止させる、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記ステッピングモータが搬送する記録媒体の種類が切り替わったら、前記PWM制御手段による同期整流を強制的に停止させる、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記ステッピングモータの回転速度が切り替わったら、前記PWM制御手段による同期整流を強制的に停止させる、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項9】
前記制御手段は、進相毎に設定電流値が変化する励磁モードにおいて、進角毎に閾値と設定電流値を比較して、同期整流の実行を許可するか否かを判断する、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項10】
用紙を搬送するステッピングモータと、
前記ステッピングモータのコイルに通電する駆動回路と、
前記コイルに回生電流が発生するタイミングで前記駆動回路に同期整流または非同期整流をさせるPWM制御手段と、
前記駆動回路が前記コイルの通電時に流れる電流と設定電流値とを比較する比較手段と、
前記設定電流値を設定すると共に、前記比較手段により前記コイルの通電時に流れる電流が前記設定電流値を超えたことを検出したならば、前記PWM制御手段による同期整流の実施を許可する制御手段と、
前記用紙の種類に応じて、前記駆動回路に同期整流させるか否かを前記PWM制御手段に設定する設定手段と、
前記駆動回路の温度を検出する温度検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記駆動回路の温度が所定温度に到達した場合、前記比較手段により前記コイルの通電時に流れる電流が前記設定電流値を超えたことを検出した回数を比較する所定回数を減少させる、
画像形成装置。
【請求項11】
ステッピングモータのコイルに通電する駆動回路と、
前記コイルに回生電流が発生するタイミングで前記駆動回路に同期整流または非同期整流をさせるPWM制御手段と、
前記駆動回路と前記PWM制御手段に設定する設定手段と、
前記駆動回路が前記コイルの通電時に流れる電流と設定電流値とを比較する比較手段と、
前記駆動回路の温度を検出する温度検出手段と、
を具えるモータ制御装置による設定方法であって、
前記設定手段が、前記駆動回路が前記コイルの通電時に流す電流の設定値を定め、
前記コイルに回生電流が発生するタイミングで前記駆動回路に同期整流させるか否かを前記設定値に基づいて設定し、
前記比較手段により前記コイルの通電時に流れる電流が前記設定電流値を超えたことを検出したならば、前記PWM制御手段による同期整流の実施を許可
し、
前記駆動回路の温度が所定温度に到達した場合、前記比較手段により前記コイルの通電時に流れる電流が前記設定電流値を超えたことを検出した回数を比較する所定回数を減少させる、
モータ制御装置の設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置、モータ制御装置の設定方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステッピングモータの各相(巻線)への通電オン/オフ制御において、スイッチング素子(MOSFET:metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)をオンする事で各相への電流通電を行い、電流値が設定値に到達するとスイッチング素子をオフすることを繰り返す。このスイッチング素子のオフに伴い、コイルから回生電流が流れ出す。この回生電流は、スイッチング素子に寄生しているボディダイオードを経由して流れる。回生電流が大きい場合には、ボディダイオードによる損失が大きくなって発熱する。この発熱が部品のジャンクション温度を超えると、破損するおそれがある。
【0003】
駆動回路に使用するMOSFETは、大電流を流し発熱する可能性が高いため、MOSFETから発せられる熱をプリント基板上の放熱パターンから逃がし、かつ放熱性能を高めるために放熱パターン面積を広くする事が一般的な手法である。
しかし、基板面積を広くすると装置の大型化してしまうという問題がある。また消費電力が増大してしまうという問題もある。
【0004】
そこで、回生電流によるボディダイオードの発熱を抑制するため、ボディダイオードよりも損失の少ないスイッチング素子をオンする制御(同期整流)を行う事で、発熱の抑制が可能となる。例えば特許文献1には、回生動作時における同期整流制御を可能とする発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ステッピングモータの制御において、同期整流を行う事でスイッチング素子の発熱を抑制可能である。しかし、電流の設定値が小さい場合、回生電流も小さいため、同期整流から通電動作に反転してしまい、制御不能になるという課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、ステッピングモータの駆動回路が同期整流を行い、かつ小電流時に電流を逆方向に流さないことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の上記課題は、下記の構成により解決される。
(1)
ステッピングモータのコイルに通電する駆動回路と、
前記コイルに回生電流が発生するタイミングで前記駆動回路に同期整流または非同期整流をさせるPWM制御手段と、
前記駆動回路が前記コイルの通電時に流れる電流と設定電流値とを比較する比較手段と、
前記設定電流値を設定すると共に、前記比較手段により前記コイルの通電時に流れる電流が前記設定電流値を超えたことを検出したならば、前記PWM制御手段による同期整流の実施を許可する制御手段と、
前記駆動回路の温度を検出する温度検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記駆動回路の温度が所定温度に到達した場合、前記比較手段により前記コイルの通電時に流れる電流が前記設定電流値を超えたことを検出した回数を比較する所定回数を減少させる、
モータ制御装置。
【0009】
(2)
前記制御手段は、前記設定電流値が閾値を超えた後に、前記比較手段により前記コイルの通電時に流れる電流が前記設定電流値を超えたことを検出したならば、前記PWM制御手段による同期整流の実施を許可する、
(1)に記載のモータ制御装置。
【0010】
(3)
前記制御手段は、同期整流の開始の閾値と終了の閾値とが異なる、
(2)に記載のモータ制御装置。
【0011】
(4)
前記制御手段は、前記比較手段により前記コイルの通電時に流れる電流が前記設定電流値を超えたことを所定回数だけ検出したならば、前記PWM制御手段による同期整流の実施を許可する、
(1)に記載のモータ制御装置。
【0013】
(5)
前記制御手段は、進相して他相に通電が切り替わったら、前記PWM制御手段による同期整流を強制的に停止させる、
(1)に記載のモータ制御装置。
【0014】
(6)
前記制御手段は、前記ステッピングモータの動作モードが切り替わったら、前記PWM制御手段による同期整流を強制的に停止させる、
(1)に記載のモータ制御装置。
【0015】
(7)
前記制御手段は、前記ステッピングモータが搬送する記録媒体の種類が切り替わったら、前記PWM制御手段による同期整流を強制的に停止させる、
(1)に記載のモータ制御装置。
【0016】
(8)
前記制御手段は、前記ステッピングモータの回転速度が切り替わったら、前記PWM制御手段による同期整流を強制的に停止させる、
(1)に記載のモータ制御装置。
【0017】
(9)
前記制御手段は、進相毎に設定電流値が変化する励磁モードにおいて、進角毎に閾値と設定電流値を比較して、同期整流の実行を許可するか否かを判断する、
(1)に記載のモータ制御装置。
【0018】
(10)
用紙を搬送するステッピングモータと、
前記ステッピングモータのコイルに通電する駆動回路と、
前記コイルに回生電流が発生するタイミングで前記駆動回路に同期整流または非同期整流をさせるPWM制御手段と、
前記駆動回路が前記コイルの通電時に流れる電流と設定電流値とを比較する比較手段と、
前記設定電流値を設定すると共に、前記比較手段により前記コイルの通電時に流れる電流が前記設定電流値を超えたことを検出したならば、前記PWM制御手段による同期整流の実施を許可する制御手段と、
前記用紙の種類に応じて、前記駆動回路に同期整流させるか否かを前記PWM制御手段に設定する設定手段と、
前記駆動回路の温度を検出する温度検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記駆動回路の温度が所定温度に到達した場合、前記比較手段により前記コイルの通電時に流れる電流が前記設定電流値を超えたことを検出した回数を比較する所定回数を減少させる、
を備える画像形成装置。
【0019】
(11)
ステッピングモータのコイルに通電する駆動回路と、
前記コイルに回生電流が発生するタイミングで前記駆動回路に同期整流または非同期整流をさせるPWM制御手段と、
前記駆動回路と前記PWM制御手段に設定する設定手段と、
前記駆動回路が前記コイルの通電時に流れる電流と設定電流値とを比較する比較手段と、
前記駆動回路の温度を検出する温度検出手段と、
を具えるモータ制御装置による設定方法であって、
前記設定手段が、前記駆動回路が前記コイルの通電時に流す電流の設定値を定め、
前記コイルに回生電流が発生するタイミングで前記駆動回路に同期整流させるか否かを前記設定値に基づいて設定し、
前記比較手段により前記コイルの通電時に流れる電流が前記設定電流値を超えたことを検出したならば、前記PWM制御手段による同期整流の実施を許可し、
前記駆動回路の温度が所定温度に到達した場合、前記比較手段により前記コイルの通電時に流れる電流が前記設定電流値を超えたことを検出した回数を比較する所定回数を減少させる、
モータ制御装置の設定方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ステッピングモータの駆動回路が同期整流を行い、かつ小電流時に電流を逆方向に流さないことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態における画像形成装置の概略を示す構成図である。
【
図3】記憶部に記憶されているモータ制御のための設定パラメータを説明する図である。
【
図4】PWM制御部の非同期整流動作を示すモード遷移図である。
【
図5】PWM制御部の同期整流動作を示すモード遷移図である。
【
図6】駆動回路がコイルに電流を流すときの動作を示す図である。
【
図7】駆動回路がコイルに流れる回生電流を非同期整流する動作を示す図である。
【
図8】駆動回路がコイルに流れる回生電流を同期整流する動作を示す図である。
【
図9】駆動回路による非同期整流の動作を示すタイムチャートである。
【
図10】駆動回路による同期整流の動作を示すタイムチャートである。
【
図11】相電流の設定値が小さいときの駆動回路による非同期整流の動作を示すタイムチャートである。
【
図12】相電流の設定値が小さいときの駆動回路による同期整流の動作を示すタイムチャートである。
【
図13】ステッピングモータのマイクロステップ制御を示すグラフである。
【
図14】相電流の設定値を変化させたときのPWM制御信号を示すタイムチャートである。
【
図15】相電流の設定値とオペアンプ出力電圧との関係を示すグラフである。
【
図16】本実施形態のステッピングモータの制御のタイミングチャートである。
【
図17】動作モードと相電流の設定値と同期整流の実施の有無との関係を示す図である。
【
図18】動作モードに応じて駆動回路に同期整流または非同期整流を実行させるためのフローチャートである。
【
図19】コンパレータ出力信号の立ち上がりエッジによる割り込み処理を示すフローチャートである。
【
図20】紙種情報と電流の設定値と同期整流の実施の有無との関係を示す図である。
【
図21】紙種情報に応じて駆動回路に同期整流または非同期整流を実行させるためのフローチャートである。
【
図22】回転速度と電流の設定値と同期整流の実施の有無との関係を示す図である。
【
図23】回転速度に応じて駆動回路に同期整流または非同期整流を実行させるためのフローチャートである。
【
図24】温度に応じて電流の設定値を閾値よりも高くする処理のフローチャートである。
【
図25】温度に応じて閾値を電流の設定値よりも低くする処理のフローチャートである。
【
図26】コンパレータ出力信号の立ち上がりエッジの規定回数を、温度に応じて減らす処理のフローチャートである。
【
図27】非同期整流から同期整流へ遷移するときの相電流閾値を示すグラフである。
【
図28】同期整流から非同期整流へ遷移するときの相電流閾値を示すグラフである。
【
図29】ステッピングモータの2W1-2相励磁での駆動モード時におけるタイミングチャートである。
【
図30】各マイクロステップにおける設定電流と同期整流の実施/未実施とを示す図である。
【
図31】ステッピングモータの2相励磁での駆動モード時におけるタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
ステッピングモータの駆動回路の温度上昇対策として同期整流制御を行う場合、小電流時に同期整流を行うと回生電流が少ないため電流が逆方向に流れてしまい制御不能となる。このような事態を抑制するため、本発明では、電流の設定値に応じて同期整流の実施/未実施を切換える。
【0023】
図1は、本実施形態における画像形成装置5の概略を示す構成図である。
画像形成装置5は、用紙上にトナー像を形成させるための装置であり、例えばプリンタや複合機などである。画像形成装置5は、搬送路7上に中間ローラ31,32と、ループローラ33,34と、レジストローラ35,36と、転写ローラ37,38と、定着ローラ60,61と、排紙ローラ39,30とが順に配置されて構成される。画像形成装置5は更に、2相のステッピングモータ1A~1Eと、これらを駆動するモータ制御回路2A~2Eと、これらを統制御する上位制御部4を備えている。後記する
図2において、ステッピングモータ1と、これを駆動するモータ制御回路2について説明する。
【0024】
搬送路7上を中間ローラ31,32から用紙が送られると、この用紙はループローラ33,34に達する。ループローラ33,34は、用紙をレジストローラ35,36に突き当ててスキューを除去するためのローラである。レジストローラ35,36は、励磁モードにしてスキューを除去するとともに、スキューが除去された用紙を転写ローラ37,38に搬送するためのローラである。転写ローラ37,38は、トナー像を用紙に転写するためのローラである。定着ローラ60,61は、用紙を加熱加圧してトナー像を定着させるためのローラであり、ステッピングモータによって駆動されていない。排紙ローラ39,30は、画像形成装置5の外に用紙を排出させるためのローラである。
【0025】
ステッピングモータ1Aは、中間ローラ31を駆動する駆動源であり、モータ制御回路2Aによって駆動される。ステッピングモータ1Bは、ループローラ33を駆動する駆動源であり、モータ制御回路2Bによって駆動される。ステッピングモータ1Cは、レジストローラ35を駆動する駆動源であり、モータ制御回路2Cによって駆動される。ステッピングモータ1Dは、転写ローラ37を駆動する駆動源であり、モータ制御回路2Dによって駆動される。ステッピングモータ1Eは、排紙ローラ39を駆動する駆動源であり、モータ制御回路2Aによって駆動される。
【0026】
図2は、モータ制御回路2と2相のステッピングモータ1を示す図である。
ステッピングモータ1は、A相の2つのコイルL1,L2と、B相の2つのコイルL3,L4とを含んで構成される。コイルL1とコイルL2とは、同一の鉄心に逆向きに巻き回されており、相互誘導が発生する。コイルL3とコイルL4とも、同一の鉄心に逆向きに巻き回されており、相互誘導が発生する。なお、
図1に示すモータ制御回路2B~2Eは、モータ制御回路2と同様に構成されている。
【0027】
モータ制御回路2は、制御部21と、PWM制御部28と、D/A変換器22a,22bと、A/D変換器23と、コンパレータ24a,24bと、オペアンプ26a,26bと、温度センサ27とを含んで構成される。モータ制御回路2は更に、プリドライブ回路25と、抵抗R1~R4と、電界効果トランジスタQ1~Q4と、シャント抵抗R5,R6と含んで構成される駆動回路20を備える。この駆動回路20は、ステッピングモータ1のコイルL1~L4に通電するユニポーラ駆動回路である。なお、図面において電界効果トランジスタのことを、FET(field-effect transistor)と省略して記載している場合がある。
【0028】
制御部21は、後記する
図3に示す電流の設定値リストなどを記憶する記憶部211を備える。この制御部21には、MODE信号と、CWB信号と、CLOCK信号と、ENABLE信号と、RESETB信号と、画像形成装置情報とが入力される。MODE信号は、2相励磁、1-2相励磁、W1-2相励磁、2W1-2相励磁のうち何れかを設定する信号である。CWB信号は、モータの正転・逆転を設定する信号である。CLOCK信号は、この制御部21やPWM制御部28の動作の基準信号である。ENABLE信号は、モータ電流をカットさせる信号である。RESETB信号は、モータ電流をアクティブにする信号である。
【0029】
制御部21には更に、A/D変換器23が接続されている。制御部21は、リファレンス電圧Vrefと、温度センサ27の出力信号とA/D変換器23によって読み取ることができる。温度センサ27は、サーミスタであり、駆動回路20の近傍に設置されて、駆動回路20の温度を検知することができる。制御部21には更に、PWM制御部28が接続されており、このPWM制御部28に対して各種設定を行って、ステッピングモータ1を制御する。
【0030】
PWM制御部28のA+相/A-相/B+相/B-相の各制御端子は、プリドライブ回路25に接続されている。プリドライブ回路25のA+相の制御端子は、抵抗R1を介して電界効果トランジスタQ1のゲートに接続されている。プリドライブ回路25のA-相の制御端子は、抵抗R2を介して電界効果トランジスタQ1のゲートに接続されている。プリドライブ回路25のB+相の制御端子は、抵抗R3を介して電界効果トランジスタQ1のゲートに接続されている。プリドライブ回路25のB-相の制御端子は、抵抗R4を介して電界効果トランジスタQ1のゲートに接続されている。
【0031】
《A+相/A-相の駆動回路20の構成と動作》
電界効果トランジスタQ1のドレインは、ステッピングモータ1のA+相のコイルL1の一端に接続されている。電界効果トランジスタQ2のドレインは、ステッピングモータ1のA-相のコイルL2の一端に接続されている。電界効果トランジスタQ1,Q2のソースは、シャント抵抗R5を介してグランドに接続されている。ステッピングモータ1のA+相のコイルL1とA-相のコイルL2の他端は、24Vの電源に接続されている。
【0032】
電界効果トランジスタQ1,Q2のソースとシャント抵抗R5とが接続されたノードは、オペアンプ26aの入力端子に接続されている。オペアンプ26aの出力端子は、コンパレータ24aの反転入力端子に接続されている。制御部21は、D/A変換器22aの入力側に接続されており、D/A変換器22aの出力側は、コンパレータ24aの非反転入力端子に接続されている。コンパレータ24aの出力端子は、PWM制御部28に接続されている。
【0033】
シャント抵抗R5は、A+相およびA-相に流れる電流を検出する抵抗である。シャント抵抗R5の電圧は、オペアンプ26aで増幅されてコンパレータ24aの反転入力端子に印加される。制御部21は、電流の設定値に応じた電圧のデジタル値をD/A変換器22aに出力し、D/A変換器22aは、電流の設定値に応じた電圧をコンパレータ24aの非反転入力端子に印加する。コンパレータ24aは、反転入力端子の電圧値と非反転入力端子の電圧値とを比較してHレベルまたはLレベルを出力する。コンパレータ24aは、オペアンプ26aの出力電圧が電流の設定値に応じた電圧以下ならばHレベルを出力し、オペアンプ26aの出力電圧が電流の設定値に応じた電圧を超えたならばLレベルを出力する。
【0034】
つまり、A相に流れる電流が電流の設定値を超えたときに、コンパレータ24aの出力信号がHレベルとなる。このとき、PWM制御部28は、A+相の電界効果トランジスタQ1をターンオフする。
【0035】
《B+相/B-相の駆動回路20の構成と動作》
電界効果トランジスタQ3のドレインは、ステッピングモータ1のB+相のコイルL3の一端に接続されている。電界効果トランジスタQ4のドレインは、ステッピングモータ1のB-相のコイルL4の一端に接続されている。電界効果トランジスタQ3,Q4のソースは、シャント抵抗R6を介してグランドに接続されている。ステッピングモータ1のB+相のコイルL3とB-相のコイルL4の他端は、24Vの電源に接続されている。
【0036】
電界効果トランジスタQ3,Q4のソースとシャント抵抗R6とが接続されたノードは、オペアンプ26bの入力端子に接続されている。オペアンプ26bの出力端子は、コンパレータ24bの反転入力端子に接続されている。制御部21は、D/A変換器22bの入力側に接続されており、D/A変換器22bの出力側は、コンパレータ24bの非反転入力端子に接続されている。コンパレータ24bの出力端子は、PWM制御部28に接続されている。
【0037】
B相の動作は、A相の動作と同様である。シャント抵抗R6は、B+相およびB-相に流れる電流を検出する抵抗である。シャント抵抗R6の電圧は、オペアンプ26bで増幅されてコンパレータ24aの反転入力端子に印加される。制御部21は、電流の設定値に応じた電圧のデジタル値をD/A変換器22bに出力し、D/A変換器22bは、電流の設定値に応じた電圧をコンパレータ24bの非反転入力端子に印加する。コンパレータ24bは、反転入力端子の電圧値と非反転入力端子の電圧値とを比較してHレベルまたはLレベルを出力する。コンパレータ24bは、オペアンプ26bの出力電圧が電流の設定値に応じた電圧以下ならばHレベルを出力し、オペアンプ26bの出力電圧が電流の設定値に応じた電圧を超えたならばLレベルを出力する。
【0038】
つまり、B相に流れる電流が電流の設定値を超えたときに、コンパレータ24bの出力信号がHレベルとなる。このとき、PWM制御部28は、B+相の電界効果トランジスタQ3をターンオフする。
【0039】
温度センサ27は、例えばサーミスタであり、電界効果トランジスタQ1~Q4の近傍に設けられている。これにより、電界効果トランジスタQ1~Q4の温度検出が可能となる。
【0040】
図3は、記憶部211に記憶されているモータ制御のための設定パラメータを説明する図である。
中間モータとは、
図1の中間ローラ31を駆動するステッピングモータ1Aである。ループモータとは、
図1のループローラ33を駆動するステッピングモータ1Bである。レジストモータとは、
図1のレジストローラ35を駆動するステッピングモータ1Cである。転写モータとは、
図1の転写ローラ37を駆動するステッピングモータ1Dである。排紙モータとは、
図1の排紙ローラ39を駆動するステッピングモータ1Eである。
【0041】
「定速1」欄と「定速2」欄は、所定の回転速度を維持して駆動する場合を示している。「加速」欄は、回転速度を加速して駆動する場合を示し、「減速」欄は減速する場合を示している。「励磁」欄は、回転子を停止状態とする場合を示している。モータごとに負荷や回転速度が異なるため、それに従って設定電流が異なっている。
【0042】
中間モータ(ステッピングモータ1A)は、定速1のときに2.0Aを流し、定速2のときに1.8Aを流し、加速のときに2.0Aを流し、減速のときに2.0Aを流し、励磁のときに0.8Aを流す。よって、駆動回路20は、ステッピングモータ1Aの励磁のときに同期整流を実施せず、それ以外のときには同期整流を実施する。
【0043】
ループモータ(ステッピングモータ1B)は、定速1のときに2.0Aを流し、定速2のときに1.8Aを流し、加速のときに2.0Aを流し、減速のときに2.0Aを流し、励磁のときに0.8Aを流す。よって、駆動回路20は、ステッピングモータ1Bの励磁のときに同期整流を実施せず、それ以外のときには同期整流を実施する。
【0044】
レジストモータ(ステッピングモータ1C)は、定速1のときに2.5Aを流し、定速2のときに2.0Aを流し、加速のときに2.5Aを流し、減速のときに2.5Aを流し、励磁のときに1.2Aを流す。よって、駆動回路20は、ステッピングモータ1Cの全ての動作モードにおいて同期整流を実施する。
【0045】
転写モータ(ステッピングモータ1D)は、定速1のときに2.5Aを流し、定速2のときに2.0Aを流し、加速のときに2.5Aを流し、減速のときに2.5Aを流し、励磁のときに1.2Aを流す。よって、駆動回路20は、ステッピングモータ1Dの全ての動作モードにおいて同期整流を実施する。
【0046】
排紙モータ(ステッピングモータ1E)は、定速1のときに2.0Aを流し、定速2のときに2.0Aを流し、加速のときに2.0Aを流し、減速のときに2.0Aを流し、励磁のときに0.5Aを流す。よって、駆動回路20は、ステッピングモータ1Eの励磁のときに同期整流を実施せず、それ以外のときには同期整流を実施する。
【0047】
これら設定電流(設定パラメータ)は、
図2に示す制御部21の記憶部211に記憶されている。
【0048】
図4は、PWM制御部28の非同期整流の場合を示すモード遷移図である。
非同期整流に設定された場合、PWM制御部28は、PWM周期が開始すると共にモードM10に遷移して電界効果トランジスタQ1をターンオンし、電界効果トランジスタQ2をオフする。これにより後記する
図5に示すように、A+相のコイルL1に電流が流れる。A+相の電流が電流の設定値を超えたとき、モードM11に遷移する。
モードM11において、PWM制御部28は、電界効果トランジスタQ1をターンオフする。電界効果トランジスタQ2は、オフしたままである。これにより、後記する
図6に示すように、A-相のコイルL2に回生電流が発生する。この回生電流は、電界効果トランジスタQ2のボディダイオードに流れる。モードM11において、このPWM周期が終了し、次のPWM周期になると、PWM制御部28は、モードM10に戻る。
【0049】
図5は、PWM制御部28の同期整流の場合を示すモード遷移図である。
同期整流に設定された場合、PWM制御部28は、PWM周期が開始すると共にモードM20に遷移して電界効果トランジスタQ1をターンオンし、電界効果トランジスタQ2をオフする。これにより後記する
図5に示すように、A+相のコイルL1に電流が流れる。A+相の電流が設定値を超えたとき、モードM21に遷移する。
【0050】
モードM21において、PWM制御部28は、電界効果トランジスタQ1をターンオフし、電界効果トランジスタQ2をターンオンする。これにより、後記する
図7に示すように、A-相のコイルL2に発生した回生電流は、電界効果トランジスタQ2を流れる。モードM21において、このPWM周期が終了し、次のPWM周期になると、PWM制御部28は、モードM20に戻り、電界効果トランジスタQ1をターンオンして電界効果トランジスタQ2をターンオフする。
【0051】
同期整流を行うのは、電界効果トランジスタQ2の温度上昇対策のためである。同期整流により、電界効果トランジスタQ2の整流中の損失を低減して温度上昇を抑制する。通電相のA+相の制御波形は、非同期整流の制御波形と同じである。
【0052】
図6は、駆動回路20がコイルL1に電流を流すときの動作を示す図である。
図6には、ステッピングモータ1のA+相のコイルL1と、A-相のコイルL2とが示されている。A+相・A-相の駆動回路20は、電界効果トランジスタQ1,Q2と、シャント抵抗R5を含んで構成される。
コイルL1の一端は、電界効果トランジスタQ1のドレインに接続され、コイルL1の他端は、24Vまたは36Vの電源に接続されている。コイルL2の一端は、電界効果トランジスタQ2のドレインに接続され、コイルL2の他端は、24Vまたは36Vの電源に接続されている。電界効果トランジスタQ1,Q2のソースは、シャント抵抗R5を介してグランドに接続されている。電界効果トランジスタQ1,Q2のソースとシャント抵抗R5とが接続されたノードは、オペアンプ26aの入力端子に接続されている。オペアンプ26aの出力端子は、コンパレータ24aの反転入力端子に接続されている。
【0053】
この
図6に示すモータ制御回路2は、駆動相(A+)に通電中である。このとき電界効果トランジスタQ1のゲートにはオン電圧が印加され、ドレインとソース間が通電されている。これにより破線矢印に示すように、電源からコイルL1と電界効果トランジスタQ1とシャント抵抗R5を介して電流が流れる。電界効果トランジスタQ2のゲートにはオフ電圧が印加されており、ドレインとソース間はオフされている。
【0054】
図7は、駆動回路20がコイルL2に流れる回生電流を非同期整流する動作を示す図である。
図6に示す駆動回路20が
図7に遷移すると、駆動相のA+相の電界効果トランジスタQ1は、ターンオフされる。コイルL1とコイルL2とは、同一の鉄心に逆向きに巻き回されているので、コイルL1の磁場の変化でコイルL2に電磁誘導(相互誘導)が起こり、回生電流が生じる。つまり、コイルL2には、電界効果トランジスタQ2のドレイン側から電源側に向けて回生電流が生じる。
【0055】
このとき、電界効果トランジスタQ2のゲートにはオフ電圧が印加されており、ドレインとソース間はオフされているので、破線矢印で示す回生電流は、電界効果トランジスタQ2のボディダイオードを介して流れる。これにより、反転相のA-相側で非同期整流が行われる。このときの損失を、以下の式(1)に示す。
(数1)
L=Vf×Ir ・・・(1)
ここに L :損失
Vf:順方向電圧降下
Ir:回生電流
【0056】
回生電流が3Aの場合、順方向電圧降下は0.7Vなので、損失は2100mWとなる。
(数2)
L=3×0.7 =2.1 ・・・(2)
【0057】
図8は、駆動回路20がコイルL2に流れる回生電流を同期整流する動作を示す図である。
図6に示す駆動回路20が
図8に遷移すると、駆動相のA+相の電界効果トランジスタQ1は、ターンオフされる。コイルL1とコイルL2とは、同一の鉄心に逆向きに巻き回されているので、コイルL1の磁場の変化でコイルL2に電磁誘導(相互誘導)が起こり、反転相のA-相側に回生電流が生じる。つまり、コイルL2には、電界効果トランジスタQ2のドレイン側から電源側に向けて回生電流が生じる。
【0058】
このとき、電界効果トランジスタQ2のゲートにはオン電圧が印加されており、ドレインとソース間は通電されているので、破線矢印で示す回生電流は、電界効果トランジスタQ2のソースからドレインに流れる。これにより、反転相のA-相側で同期整流が行われる。このときの損失を、以下の式(3)に示す。
(数3)
L=Ir2 × Rs ・・・(3)
ここに L :損失
Ir:回生電流
Rs:シャント抵抗
【0059】
回生電流が3.0Aであり、かつシャント抵抗が30mΩの場合、損失は270mWとなる。
(数4)
L = 3.02 × 30 = 270 ・・・(4)
【0060】
式(4)に示した同期整流時の損失は、式(2)に示した非同期整流時の損失に対して約13%である。つまり、同期整流時の損失は、非同期整流時の損失よりも小さい。
【0061】
図9は、駆動回路20による非同期整流の動作を示すタイムチャートである。以下に示す
図9から
図12は、それぞれA+相の電界効果トランジスタQ1の制御信号、A-相の電界効果トランジスタQ2の制御信号、A+相の電流、A-相の電流、A相の電流検出のオペアンプ26aの出力信号、A相のコンパレータ24aの出力信号を示している。
【0062】
時刻T0にPWM周期が開始する。これによりA+相の電界効果トランジスタQ1のゲートにオン信号が印加され、A-相の電界効果トランジスタQ2のゲートにオフ信号が印加される。これにより電界効果トランジスタQ1がターンオンしてコイルL1にA+相の電流が流れる。
図9ではA+相の電流を模式的にランプ波形で示している。
【0063】
A相電流を検出するオペアンプ26aは、シャント抵抗R5の一端の電圧を増幅して出力し、よってA+相の電流に応じた電圧を出力する。A相のコンパレータ24aは、A+相の電流に応じた電圧と電圧V1との比較結果を出力する。時刻T0において、コンパレータ24aの出力はLレベルである。
【0064】
時刻T1において、A+相の電流に応じた電圧は電圧V1を超え、A相のコンパレータ24aの出力がHレベルになる。これにより
図2に示すPWM制御部28は、A+相の電界効果トランジスタQ1をターンオフする。
【0065】
電界効果トランジスタQ1のターンオフに伴い、コイルL1の磁場の変化でコイルL2に電磁誘導(相互誘導)が起こり、反転相のA-相側に回生電流が生じる。つまり、コイルL2には、電界効果トランジスタQ2のドレイン側から電源側に向けて回生電流が生じる。この回生電流は、
図7に示すように、電界効果トランジスタQ2のボディダイオード(寄生ダイオード)を流れ、時間経過とともに減少する。
図9では回生電流を模式的にランプ波形で示している。
【0066】
時刻T2に次のPWM周期が開始する。
図2に示すPWM制御部28は、A+相の電界効果トランジスタQ1をターンオンさせる。これによりA-相の電流は0Aとなり、A+相に電流が流れ始める。時刻T3における動作は、時刻T1における動作と同様である。このようなPWM周期を繰り返すことにより、ステッピングモータ1を駆動することができる。
【0067】
図10は、駆動回路20による同期整流の動作を示すタイムチャートである。
時刻T10にPWM周期が開始する。これによりA+相の電界効果トランジスタQ1のゲートにオン信号が印加され、A-相の電界効果トランジスタQ2のゲートにオフ信号が印加される。これにより電界効果トランジスタQ1がターンオンしてコイルL1にA+相の電流が流れる。ここではA+相の電流を模式的にランプ波形で示している。
【0068】
A相電流を検出するオペアンプ26aは、シャント抵抗R5の一端の電圧を増幅して出力し、よってA+相の電流に応じた電圧を出力する。A相のコンパレータ24aは、A+相の電流に応じた電圧と電圧V1との比較結果を出力する。時刻T10において、コンパレータ24aの出力はLレベルである。
【0069】
時刻T11において、A+相の電流に応じた電圧は電圧V1を超え、A相のコンパレータ24aの出力がHレベルになる。これにより
図2に示すPWM制御部28は、A+相の電界効果トランジスタQ1をターンオフし、同時にA-相の電界効果トランジスタQ2をターンオンする。
【0070】
電界効果トランジスタQ1のターンオフに伴い、コイルL1の磁場の変化でコイルL2に電磁誘導(相互誘導)が起こり、反転相のA-相側に回生電流が生じる。つまり、コイルL2には、電界効果トランジスタQ2のドレイン側から電源側に向けて回生電流が生じる。回生電流は、
図8に示すように電界効果トランジスタQ2のソースからドレインに流れ、時間経過とともに減少する。
図10では回生電流を模式的にランプ波形で示している。
【0071】
時刻T12に次のPWM周期が開始する。
図2に示すPWM制御部28は、A+相の電界効果トランジスタQ1をターンオンさせる。これによりA-相の電流は0Aとなり、A+相に電流が流れ始める。時刻T13における動作は、時刻T11における動作と同様である。このようなPWM周期を繰り返すことにより、ステッピングモータ1を駆動することができる。
ここでは回生電流が0Aになるまえに次のPWM周期が来ているので、A-相の電流が0Aを越えて+側に流れだすことはない。
【0072】
図11は、相電流の設定値が低いときの駆動回路20による非同期整流の動作を示すタイムチャートである。
時刻T20にPWM周期が開始する。これによりA+相の電界効果トランジスタQ1のゲートにオン信号が印加され、A-相の電界効果トランジスタQ2のゲートにオフ信号が印加される。これにより電界効果トランジスタQ1がターンオンしてコイルL1にA+相の電流が流れる。
【0073】
A相電流を検出するオペアンプ26aは、シャント抵抗R5の一端の電圧を増幅して出力し、よってA+相の電流に応じた電圧を出力する。A相のコンパレータ24aは、A+相の電流に応じた電圧と電圧V2との比較結果を出力する。時刻T20において、コンパレータ24aの出力はLレベルである。
【0074】
時刻T21において、A+相の電流に応じた電圧は電圧V2を超え、A相のコンパレータ24aの出力がHレベルになる。これにより
図2に示すPWM制御部28は、A+相の電界効果トランジスタQ1をターンオフする。
【0075】
電界効果トランジスタQ1のターンオフに伴い、コイルL2には、電界効果トランジスタQ2のドレイン側から電源側に向けて回生電流が生じる。この回生電流は、
図7に示すように、電界効果トランジスタQ2のボディダイオード(寄生ダイオード)を流れ、時間の経過とともに減少し、時刻T22において0Aに達する。ここではボディダイオードの整流効果により、A-相電流が0Aを超えることはない。
【0076】
時刻T23に次のPWM周期が開始する。
図2に示すPWM制御部28は、A+相の電界効果トランジスタQ1をターンオンさせる。これによりA-相の電流は0Aとなり、A+相に電流が流れ始める。時刻T24における動作は、時刻T21における動作と同様である。このようなPWM周期を繰り返すことにより、ステッピングモータ1を駆動することができる。
【0077】
図12は、相電流の設定値が低いときの駆動回路20による同期整流の動作を示すタイムチャートである。
時刻T30にPWM周期が開始する。これによりA+相の電界効果トランジスタQ1のゲートにオン信号が印加され、A-相の電界効果トランジスタQ2のゲートにオフ信号が印加される。これにより電界効果トランジスタQ1がターンオンしてコイルL1にA+相の電流が流れる。
【0078】
A相電流を検出するオペアンプ26aは、シャント抵抗R5の一端の電圧を増幅して出力し、よってA+相の電流に応じた電圧を出力する。A相のコンパレータ24aは、A+相の電流に応じた電圧と電圧V2との比較結果を出力する。時刻T30において、コンパレータ24aの出力はLレベルである。
【0079】
時刻T31において、A+相の電流に応じた電圧は電圧V2を超え、A相のコンパレータ24aの出力がHレベルになる。これにより
図2に示すPWM制御部28は、A+相の電界効果トランジスタQ1をターンオフし、同時にA-相の電界効果トランジスタQ2をターンオンする。
【0080】
電界効果トランジスタQ1のターンオフに伴い、コイルL2には、電界効果トランジスタQ2のドレイン側から電源側に向けて回生電流が生じる。回生電流は、
図8に示すように電界効果トランジスタQ2のソースからドレインに流れ、時間の経過とともに減少し、時刻T32において0Aを超えて電流の方向が逆転し、更に時間経過と共に増加する。これに伴い、A相の電流検出アンプの出力が増加する。
【0081】
時刻T33に、A相の電流検出アンプの出力が電圧V2を超えるので、コンパレータ24aの出力はHレベルとなる。
図2に示すPWM制御部28は、A+相の電界効果トランジスタQ1をターンオフするが、A-相の電界効果トランジスタQ2をオンし続けるため、A-側の電流は増え続ける。
このような現象を防ぐため、ステッピングモータ1に小電流を流す場合には非同期整流を行い、閾値を超えた電流を流す場合には同期整流を行う。この閾値は、例えば電流の設定値が1.0Aの場合である。ここで閾値は、PWM周期における電流増加量の2倍としている。
【0082】
図13は、ステッピングモータ1のマイクロステップ制御を示すグラフである。
制御部21は、ステッピングモータ1のコイルに、所定の電流を所定期間だけ通電して制御する。
【0083】
マイクロステップM1~M3は、A+相のコイルL1に通電するマイクロステップである。マイクロステップM1において、制御部21は、PWM制御部28を介して駆動回路20を制御し、A+相のコイルL1に1.7Aを通電する。マイクロステップM2において、制御部21は、PWM制御部28を介して駆動回路20を制御し、A+相のコイルL1に1.2Aを通電する。このとき制御部21は、PWM制御部28を介して駆動回路20に同期整流を行わせる。
マイクロステップM3において、制御部21は、PWM制御部28を介して駆動回路20を制御し、A+相のコイルL1に0.6Aを通電し、駆動回路20に非同期整流を行わせる。
【0084】
マイクロステップM4~M7は、A-相のコイルL2に通電するマイクロステップである。マイクロステップM4において、制御部21は、駆動回路20を制御してA-相のコイルに0.2Aを通電する。マイクロステップM5において、制御部21は、PWM制御部28を介して駆動回路20を制御し、A-相のコイルL2に0.6Aを通電し、駆動回路20に非同期整流を行わせる。
【0085】
マイクロステップM6において、制御部21は、PWM制御部28を介して駆動回路20を制御し、A-相のコイルL2に1.2Aを通電する。マイクロステップM7において、制御部21は、PWM制御部28を介して駆動回路20を制御し、A-相のコイルL2に1.7Aを通電する。このとき制御部21は、駆動回路20に同期整流を行わせる。
【0086】
つまり制御部21は、電流の設定値と閾値(1.0A)とを比較し、設定値が閾値以下の場合は非同期整流を実行する旨をPWM制御部28に設定し、設定値が閾値を超える場合は同期整流を実行する旨をPWM制御部28に設定する。
【0087】
図14は、相電流の設定値を変化させたときのPWM制御信号を示すタイムチャートである。グラフの縦軸は、電界効果トランジスタの制御信号を示している。
図14に示したマイクロステップM5において、A-相の電界効果トランジスタQ2は、所定のオン・デューティのPWM信号で制御され、よってA-相のコイルL2に0.6Aを通電する。
【0088】
マイクロステップM6において、A-相の電界効果トランジスタQ2は、所定のオン・デューティのPWM信号で制御され、よってA-相のコイルL2に1.2Aを通電する。マイクロステップM7において、A-相の電界効果トランジスタQ2は、所定のオン・デューティのPWM信号で制御され、よってA-相のコイルL2に1.7Aを通電する。
【0089】
制御部21は、PWM制御による一定周期の中で、オン・デューティを変化させる事で平均電圧を変化させる。これにより、相電流を変化させることができる。
【0090】
図15は、相電流の設定値とオペアンプ26aの出力電圧との関係を示すグラフである。グラフの縦軸は設定値を示している。グラフの横軸は、オペアンプ26aの出力電圧を示している。
相電流は、シャント抵抗R5を流れるので、シャント抵抗R5の両端には所定の電圧が生じる。オペアンプ26aは、シャント抵抗R5の一端の電圧を線形に増幅する。
オペアンプ26aの出力が、160mV以下の場合、相電流は1.0A以下である。このとき、非同期整流が実施される。
オペアンプ26aの出力が、160mVを超える場合、相電流は1.0Aを超える。このとき、同期整流が実施される。
【0091】
《第1の実施形態》
第1の実施形態は、画像形成装置5の上位制御部4より得た動作モード情報を基に設定電流を可変し、同期整流の実施を判断する制御を示す。
【0092】
図16は、本実施形態のステッピングモータの制御のタイミングチャートである。
図16の第1番目のグラフは、通電相の制御信号を示しており、第2番目のグラフはPWMクロックを示している。ここで時刻T40から時刻T44までは、A+相であり、電界効果トランジスタQ1がPWMパルスに従ってオンする。
時刻T44以降はA-相であり、
図8に示すように電界効果トランジスタQ2がPWMパルスに従ってオンする。
【0093】
第3番目のグラフは、コンパレータ24aの入力端子に印加される入力電圧を示している。この入力電圧は、シャント抵抗R5の両端電圧であり、シャント抵抗R5に流れる電流に比例する。第4番目のグラフは、コンパレータ24aの出力電圧を示している。
第5番目のグラフは、A+相の電界効果トランジスタQ1の制御信号を示している。第6番目のグラフは、A-相の電界効果トランジスタQ2の制御信号を示している。
時刻T40において、電界効果トランジスタQ1がオンする。これにより、入力電圧はランプ状に増加する。
【0094】
時刻T41において、入力電圧が設定値Vthを超えると、コンパレータ24aの出力電圧が3.3Vになる。この設定値Vthは、シャント抵抗R5に流れる電流が設定電流値を超えたか否かを比較するためのものである。これにより電界効果トランジスタQ1が所定時間に亘ってオフし、入力電圧はそれに伴って下がる。これは、非同期整流の動作である。所定時間の経過後、電界効果トランジスタQ1は再びオンし、入力電圧はランプ状に増加する。
【0095】
時刻T42において、入力電圧が設定値Vthを超えると、コンパレータ24aの出力電圧が3.3Vになる。これにより電界効果トランジスタQ1が所定時間に亘ってオフし、入力電圧はそれに伴って下がる。所定時間の経過後、電界効果トランジスタQ1は再びオンし、入力電圧はランプ状に増加する。
【0096】
時刻T43において、入力電圧が設定値Vthを超えると、コンパレータ24aの出力電圧が3.3Vになる。これにより電界効果トランジスタQ1が所定時間に亘ってオフすると共に、電界効果トランジスタQ2が所定時間に亘ってオンし、入力電圧はそれに伴って下がる。これは、同期整流の動作である。
所定時間の経過後、電界効果トランジスタQ1は再びオンし、入力電圧はランプ状に増加する。以下、時刻T44まで同様な動作を繰り返す。
【0097】
時刻T44以降は、A-相である。A+相からA-相に進相して通電が切り替わると、同期整流は強制的に停止する。時刻T44以降の最初のPWMクロックの立下りにより、電界効果トランジスタQ1がオンする。これにより、入力電圧はランプ状に増加する。
時刻T45において、入力電圧が設定値Vthを超えると、コンパレータ24aの出力電圧が3.3Vになる。これにより電界効果トランジスタQ2が所定時間に亘ってオフし、入力電圧はそれに伴って下がる。これは、非同期整流の動作である。所定時間の経過後、電界効果トランジスタQ2は再びオンし、入力電圧はランプ状に増加する。
【0098】
時刻T45において、入力電圧が設定値Vthを超えると、コンパレータ24aの出力電圧が3.3Vになる。これにより電界効果トランジスタQ2が所定時間に亘ってオフし、入力電圧はそれに伴って下がる。所定時間の経過後、電界効果トランジスタQ2は再びオンし、入力電圧はランプ状に増加する。
【0099】
時刻T46において、入力電圧が設定値Vthを超えると、コンパレータ24aの出力電圧が3.3Vになる。これにより電界効果トランジスタQ1が所定時間に亘ってオフすると共に、電界効果トランジスタQ2が所定時間に亘ってオンし、入力電圧はそれに伴って下がる。これは、同期整流の動作である。
【0100】
このように、コンパレータ24aによりコイルの通電時に流れる電流が設定電流値(設定値Vth)を超えたことを3回に亘って検出したならば、同期整流を実施している。このように構成することで、ノイズ等で誤って同期整流を実施してしまうことを抑止可能である。
【0101】
図17は、動作モードと電流の設定値と同期整流の実施の有無との関係を示す図である。
動作モードが低速・加速・減速の場合、相電流の設定値は2.0Aである。このとき駆動回路20は、同期整流を実施する。動作モードが励磁の場合、相電流の設定値は1.0Aである。このとき駆動回路20は、同期整流を実施しない。このテーブルは、例えば制御部21の記憶部211に格納されている。
【0102】
図18は、動作モードに応じて駆動回路20に同期整流または非同期整流を実行させるためのフローチャートである。
【0103】
最初、制御部21は、上位制御部4より動作モード情報を取得し(S10)、
図16に示すテーブルに基づき、D/A変換器22a,22bの出力を動作モードごとの電流の設定値に変更する(S11)。
【0104】
制御部21は、コンパレータの出力信号の立ち上がりの検出の規定回数を設定する(S12)。なお、
図18では、コンパレータの出力信号の立ち上がりのことを簡略化して、「コンパレータHi」と記載している。
【0105】
ここで規定回数とは、非同期整流から同期整流への遷移する為に規定された回数のことをいう。例えば
図16に示した例では、規定回数は3回である。更に制御部21は、コンパレータの出力信号の立ち上がり検出回数に係る変数を0で初期化する(S13)。
【0106】
制御部21は、設定値に対応する電流値が1.0Aを超えているか否かを判定する(S14)。制御部21は、設定値に対応する電流値が1.0Aを超えているならば(Yes)、同期整流許可フラグをセットし(S15)、ステップS17に進む。制御部21は、設定値に対応する電流値が1.0A以下ならば(No)、同期整流許可フラグをクリアし(S16)、ステップS17に進む。
【0107】
ステップS17において、制御部21は、上位制御部4の動作モード情報が変更されたか否かを判定する。制御部21は、上位制御部4の動作モード情報が変更されたならば(Yes)、ステップS11の処理に戻る。制御部21は、上位制御部4の動作モード情報が変更されていないならば(No)、ステップS18に進む。
【0108】
ステップS18において、制御部21は、進相して他相の通電に切り替わったか否かを判定する。制御部21は、他相の通電に切り替わったならば(Yes)、同期整流を強制的に停止して(S19)、ステップS11の処理に戻る。制御部21は、他相の通電に切り替わっていないならば(No)、ステップS17の判定処理に戻る。
【0109】
図19は、コンパレータ出力信号の立ち上がりエッジによる割り込み処理を示すフローチャートである。
コンパレータの出力信号の立ち上がりエッジにより、この割り込み処理が開始する。
制御部21は、同期整流許可フラグがセットされているか否かを判定する(S20)。制御部21は、同期整流許可フラグがクリアされていれば(No)、PWM制御部28に非同期整流の実施を指示して(S24)、
図19の処理を完了する。
【0110】
制御部21は、同期整流許可フラグがセットされていれば(Yes)、検出回数に1を加算する(S21)。制御部21は更に、検出回数が規定回数以上であるか否かを判定する(S22)。
【0111】
制御部21は、検出回数が規定回数以上ならば(Yes)、PWM制御部28に同期整流の実施を指示して(S23)、
図19の処理を完了する。制御部21は、検出回数が規定回数未満ならば(No)、PWM制御部28に非同期整流の実施を指示して(S24)、
図19の処理を完了する。
【0112】
このように、制御部21は、コンパレータの出力信号の立ち上がりが設定値を超えた後、かつ検出回数が規定回数以上に達したことを確認したのちに、同期整流の実施させている。これにより、制御部21は、ノイズ等による誤動作を防ぐことができる。
【0113】
《第2の実施形態》
画像形成装置5の上位制御部4より得た紙種情報を基に設定電流を可変し、同期整流の実施を判断する制御のフローチャートを示す。
図20は、紙種情報と電流の設定値と同期整流の実施の有無との関係を示す図である。
紙種が普通紙・厚紙1・厚紙2の場合、相電流の設定値は2.0Aである。このとき駆動回路20は、同期整流を実施する。紙種が薄紙1・薄紙2の場合、相電流の設定値は1.0Aである。このとき駆動回路20は、同期整流を実施しない。このテーブルは、例えば制御部21の記憶部211に格納されている。
【0114】
図21は、紙種情報に応じて駆動回路20に同期整流または非同期整流を実行させるためのフローチャートである。
最初、制御部21は、上位制御部4より紙種情報を取得し(S30)、
図20に示すテーブルに基づき、D/A変換器22a,22bの出力を紙種ごとの電流の設定値に変更する(S31)。
【0115】
制御部21は、コンパレータの出力信号の立ち上がりの検出の規定回数を設定する(S32)。ここで規定回数とは、非同期整流から同期整流への遷移する為に規定された回数のことをいう。例えば
図16に示した例では、規定回数は3回である。更に制御部21は、コンパレータの出力信号の立ち上がり検出回数に係る変数を0で初期化する(S33)。
【0116】
制御部21は、設定値に対応する電流値が1.0Aを超えているか否かを判定する(S34)。制御部21は、設定値に対応する電流値が1.0Aを超えているならば(Yes)、同期整流許可フラグをセットし(S35)、ステップS37に進む。ここで同期整流許可フラグは、揮発性メモリに設けられたビット変数である。制御部21は、設定値に対応する電流値が1.0A以下ならば(No)、同期整流許可フラグをクリアし(S36)、ステップS37に進む。
【0117】
ステップS37において、制御部21は、上位制御部4の紙種情報が変更されたか否かを判定する。制御部21は、上位制御部4の紙種情報が変更されたならば(Yes)、ステップS31の処理に戻る。制御部21は、上位制御部4の紙種情報が変更されていないならば(No)、ステップS38に進む。
【0118】
ステップS38において、制御部21は、進相して他相の通電に切り替わったか否かを判定する。制御部21は、他相の通電に切り替わったならば(Yes)、同期整流を強制的に停止して、ステップS31の処理に戻る。制御部21は、他相の通電に切り替わっていないならば(No)、ステップS37の判定処理に戻る。
進相直後には、コンパレータが反応するまで同期整流を強制的に停止して、非同期整流モードで動作させている。これにより、進相直後におけるコンパレータの思わぬ動作を抑止できる。
【0119】
《第3の実施形態》
第3の実施形態は、画像形成装置5の上位制御部4より得たモータ回転速度情報を基に設定電流を可変し、同期整流の実施を判断する制御である。
図22は、回転速度と電流の設定値と同期整流の実施の有無との関係を示す図である。
回転速度が200~500RPMの場合、相電流の設定値は0.8Aである。このとき駆動回路20は、同期整流を実施しない。
【0120】
回転速度が501~1000RPMの場合、相電流の設定値は1.4Aである。このとき駆動回路20は、同期整流を実施する。回転速度が1001~1500RPMの場合、相電流の設定値は2.0Aである。このとき駆動回路20は、同期整流を実施する。このテーブルは、例えば制御部21の記憶部211に格納されている。
【0121】
図23は、回転速度に応じて駆動回路20に同期整流または非同期整流を実行させるためのフローチャートである。
最初、制御部21は、上位制御部4より回転速度情報を取得し(S40)、
図22に示すテーブルに基づき、D/A変換器22a,22bの出力を回転速度情報ごとの電流の設定値に変更する(S41)。
【0122】
制御部21は、コンパレータの出力信号の立ち上がりの検出の規定回数を設定する(S42)。ここで規定回数とは、非同期整流から同期整流への遷移する為に規定された回数のことをいう。例えば
図16に示した例では、規定回数は3回である。更に制御部21は、コンパレータの出力信号の立ち上がり検出回数に係る変数を0で初期化する(S43)。
【0123】
制御部21は、設定値に対応する電流値が1.0Aを超えているか否かを判定する(S44)。制御部21は、設定値に対応する電流値が1.0Aを超えているならば(Yes)、同期整流許可フラグをセットし(S45)、ステップS47に進む。制御部21は、設定値に対応する電流値が1.0A以下ならば(No)、同期整流許可フラグをクリアし(S46)、ステップS47に進む。
【0124】
ステップS47において、制御部21は、上位制御部4の回転速度が変更されたか否かを判定する。制御部21は、上位制御部4の回転速度が変更されていないならば(No)、ステップS47の判定を繰り返し、上位制御部4の回転速度が変更されたならば(Yes)、ステップS41の処理に戻る。
【0125】
第3の実施形態において制御部21は、回転速度が200~500RPMの場合、相電流の設定値は0.8Aなので同期整流を未実施とする。制御部21は、回転速度が501~1000RPMの場合、相電流の設定値は1.4Aなので同期整流を実施する。制御部21は、回転速度が1001~1500RPMの場合、相電流の設定値は2.0Aなので同期整流を実施する。これにより制御部21は、ステッピングモータの駆動回路が同期整流を行い、かつ回転速度が小さい小電流時に電流を逆方向に流さないように制御可能である。
【0126】
《第4の実施形態》
第4の実施形態は、温度に応じて電流の設定値を閾値よりも高くする制御である。
図24は、温度に応じて電流の設定値を閾値よりも高くする処理のフローチャートである。駆動回路20の近傍に備えた温度センサ27によって検知した駆動回路20の温度を基に、同期整流の実施を判断する制御のフローチャートを示す。
【0127】
ステップS50において、制御部21は、励磁モードであるか否かを判定する。制御部21は、励磁モードでないならば(No)、ステップS50の判定を繰り返し、励磁モードならば(Yes)、ステップS51に進む。
【0128】
ステップS51において、制御部21は、閾値のデフォルト値を設定する。このデフォルト値は、例えば1.0Aである。そして制御部21は、電流の設定値を更新する(S52)。ここで電流の設定値は、例えば0.8Aである。
【0129】
制御部21は、設定値に対応する電流値が閾値を超えているか否かを判定する(S53)。制御部21は、設定値に対応する電流値が閾値を超えているならば(Yes)、同期整流許可フラグをセットし(S54)、ステップS56に進む。制御部21は、設定値に対応する電流値が閾値以下ならば(No)、同期整流許可フラグをクリアし(S55)、ステップS56に進む。
【0130】
ステップS56において、制御部21は、温度センサ27による検出温度が所定値(例えば80℃)以下であるか否かを判定する。制御部21は、検出温度が所定値以下ならば(Yes)、ステップS53の処理に戻り、検出温度が所定値を超えたならば(No)、ステップS57の処理に進む。
【0131】
ステップS57において、制御部21は、電流の設定値を現在の閾値よりも高く設定し、ステップS52の処理に戻る。ここで新たな電流の設定値は、例えば1.1Aである。
【0132】
第4の実施形態において制御部21は、閾値が1Aで電流の設定値が0.8Aにおいて、検出温度が所定値(例えば80℃)以下であれば電流の設定値を変化させず同期整流を未実施とする。検出温度が所定値を超えたと判断した場合には、電流の設定値を0.8Aから閾値より高い1.1Aに変化させ同期整流を実施させる。
【0133】
《第5の実施形態》
第5の実施形態は、温度に応じて閾値を電流の設定値よりも低くする制御である。
【0134】
図25は、温度に応じて閾値を電流の設定値よりも低くする処理のフローチャートである。
ステップS60において、制御部21は、励磁モードであるか否かを判定する。制御部21は、励磁モードでないならば(No)、ステップS60の判定を繰り返し、励磁モードならば(Yes)、ステップS61に進む。
【0135】
ステップS61において、制御部21は、閾値のデフォルト値を設定する。このデフォルト値は、例えば1.0Aである。そして制御部21は、電流の設定値を更新する(S62)。ここで電流の設定値は、例えば0.8Aである。
【0136】
制御部21は、設定値に対応する電流値が1.0Aを超えているか否かを判定する(S63)。制御部21は、設定値に対応する電流値が1.0Aを超えているならば(Yes)、同期整流許可フラグをセットし(S64)、ステップS66に進む。制御部21は、設定値に対応する電流値が1.0A以下ならば(No)、同期整流許可フラグをクリアし(S65)、ステップS66に進む。
【0137】
ステップS66において、制御部21は、温度センサ27による検出温度が所定値(例えば80℃)以下であるか否かを判定する。制御部21は、検出温度が所定値以下ならば(Yes)、ステップS63の処理に戻り、検出温度が所定値を超えたならば(No)、ステップS67の処理に進む。
【0138】
ステップS67において、制御部21は、閾値を現在の電流の設定値よりも低く設定し、ステップS62の処理に戻る。ここで新たな閾値は、例えば0.7Aである。
【0139】
第5の実施形態では、閾値が1Aで電流の設定値が0.8Aにおいて、検出温度が所定値(例えば80℃)以下であれば電流の設定値を変化させず同期整流許可フラグをクリアする。検出温度が所定値を超えたと判断した場合には、閾値を1.0Aから0.7Aのように、電流の設定値より低い値に変化させて同期整流許可フラグをセットする。その後、所定回数のコンパレータの出力信号の立ち上がりを検出すると、同期整流を実施する。これにより、消費電流を抑えてモータドライバの発熱を防ぐことができる。
【0140】
《第6の実施形態》
第6の実施形態は、温度に応じてコンパレータ出力信号の立ち上がりエッジの規定回数を減らす制御である。
【0141】
図26は、コンパレータ出力信号の立ち上がりエッジ検出の規定回数を、温度に応じて減らす処理のフローチャートである。
制御部21は、コンパレータの出力信号の立ち上がりの検出の規定回数を初期値に設定する(S70)。初期値とは、例えば3である。
図26では、コンパレータの出力信号の立ち上がりのことを簡略化して、「コンパレータHi」と記載している。
【0142】
制御部21は、温度センサ27による検知温度を更新し(S71)、所定温度に到達したか否かを判定する(S72)。制御部21は、検知温度が所定温度に到達していないならば(No)、ステップS70の処理に戻り、検知温度が所定温度に到達したならば(Yes)、コンパレータの出力信号の立ち上がりの検出の規定回数を1だけ減らす(S73)。これにより規定回数は2となり、より早く同期整流を開始可能となる。
【0143】
そして、制御部21は、再び温度センサ27による検知温度を更新し(S74)、所定温度に到達したか否かを判定する(S75)。制御部21は、検知温度が所定温度に到達していないならば(No)、ステップS70の処理に戻り、検知温度が所定温度に到達したならば(Yes)、コンパレータの出力信号の立ち上がりの検出の規定回数を維持し(S76)、ステップS74に戻る。
温度センサ27が検出した温度が所定温度に到達した場合、コンパレータの出力信号の立ち上がりの検出の規定回数を減らす。これにより、より早く同期整流を開始して発熱を抑制可能である。
【0144】
《第7の実施形態》
第7の実施形態は、非同期整流から同期整流へ遷移するときの相電流の閾値にヒステリシスを設けるものである。
【0145】
図27は、非同期整流から同期整流へ遷移するときの相電流の閾値を示すグラフである。グラフの縦軸は設定値を示している。グラフの横軸は、オペアンプ26aの出力電圧を示している。非同期整流から同期整流を許可する場合、設定電流の閾値は1Aである。
【0146】
図28は、同期整流から非同期整流へ遷移するときの相電流の閾値を示すグラフである。グラフの縦軸は設定値を示している。グラフの横軸は、オペアンプ26aの出力電圧を示している。同期整流から非同期整流を許可する場合、その設定電流の閾値は0.75Aである。
以上の様に同期整流から非同期整流に切替わる場合は、低めの設定値にする事で、安易に非同期整流になってしまい、モータドライバが発熱する事を抑制することができる。
【0147】
図29は、ステッピングモータの2W1-2相励磁での駆動モード時におけるタイミングチャートである。第1番目のグラフは、A相の閾値を示している。第2番目のグラフは、縦軸がA相の設定値割合を示している。第1番目のグラフは、縦軸がB相の設定値割合を示している。
2W1-2相励磁での駆動モード時において、新相する度に各相の電流の設定値の割合が変化する。そのため、PWM制御部28は、新相毎に同期整流を実施判断する閾値と電流の設定値を比較する。駆動回路20は、電流の設定値が閾値より低いタイミングでは同期整流を実施せず、電流の設定値より閾値が高いタイミングでは同期整流を実施する。ここで、期間P11~P15と、期間P21~P26では同期整流を実施して、駆動回路20の発熱を抑止している。
【0148】
また発明者らは、マイクロステップの電圧が減少する際の閾値は、マイクロステップの電圧が増加する際の閾値よりも小さくしても非同期整流時の不具合が発生しないことを見出した。よって、A相の閾値は、マイクロステップの電圧の増加時は1.0Aであり、マイクロステップの電圧の減少時は0.8Aである。これにより、消費電力を更に抑制することができる。
【0149】
図30は、各マイクロステップにおける設定電流と同期整流の実施/未実施とを示す図である。
設定値の割合が100%のとき、電流の設定値は2.0Aである。設定値の割合が92%のとき、電流の設定値は1.8Aである。設定値の割合が83%のとき、電流の設定値は1.7Aである。設定値の割合が71%のとき、電流の設定値は1.4Aである。設定値の割合が55%のとき、電流の設定値は1.1Aである。これらの場合において、駆動回路20は同期整流を実施する。
【0150】
設定値の割合が40%のとき、電流の設定値は0.8Aである。設定値の割合が20%のとき、電流の設定値は0.4Aである。設定値の割合が0%のとき、電流の設定値は0.0Aである。これらの場合において、駆動回路20は同期整流を実施しない。
また、全ての設定値の割合において、マイクロステップの電圧の増加時の閾値は1.0Aであり、マイクロステップの電圧の減少時の閾値は0.8Aである。このテーブルは、
図2に示す記憶部211に記憶されている。
【0151】
図31は、ステッピングモータの2相励磁での駆動モード時におけるタイミングチャートである。
2相励磁では、新相する事に各相の電流の設定値の割合が変化するため、制御部21は、新相毎に同期整流を実施判断する閾値と電流の設定値を比較する。ここでは電流の設定値が閾値より高い状態が継続するため、駆動回路20は同期整流を継続している。
【0152】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能であり、例えば、次の(a)~(d)のようなものがある。
【0153】
(a) 本発明は、画像形成装置に限定されず、モータとその制御装置を搭載した任意の装置に適用してもよい。
(b) 同期整流を実施するか否かの判定条件は、回転速度や紙種や動作モードに限定されない。
(c) 閾値は1.0Aに限定されず、相電流が0Aを超えない任意の値であればよい。
(d) 同期整流の開始の閾値と終了の閾値とが異なり、ヒステリシスを持っていてもよい。
【符号の説明】
【0154】
1,1A~1E ステッピングモータ
2,2A~2E モータ制御回路
20 駆動回路
21 制御部 (制御手段)
211 記憶部
22a,22b D/A変換器 (制御手段の一部)
23 A/D変換器
24a,24b コンパレータ (制御手段の一部)
25 プリドライブ回路
26a,26b オペアンプ
27 温度センサ
28 PWM制御部 (PWM制御手段)
R1~R4 抵抗
R5,R6 シャント抵抗
Q1~Q4 電界効果トランジスタ (駆動回路の一例)
L1~L4 コイル
31,32 中間ローラ
33,34 ループローラ
35,36 レジストローラ
37,38 転写ローラ
39,30 排紙ローラ
4 上位制御部
5 画像形成装置
7 搬送路
60,61 定着ローラ