(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】目標追尾装置、目標追尾システム、目標追尾方法、及び目標追尾プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/66 20060101AFI20240402BHJP
G01S 13/87 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G01S13/66
G01S13/87
(21)【出願番号】P 2020072236
(22)【出願日】2020-04-14
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】竹内 貴志
(72)【発明者】
【氏名】阿部 祐一
(72)【発明者】
【氏名】真坂 元貴
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正徳
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-126526(JP,A)
【文献】特開2018-205175(JP,A)
【文献】特開2019-144094(JP,A)
【文献】特開2018-115974(JP,A)
【文献】特開2019-175142(JP,A)
【文献】特開2019-120554(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110940971(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
13/00 - 17/95
G01B 11/00 - 11/30
G01C 3/00 - 3/32
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 - 20/90
30/418
40/16
40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
探知装置から入力されたプロットと、当該プロットが発生した時刻において予測される仮航跡との相関を判定する相関判定部と、
前記プロットと前記仮航跡とが相関すると前記相関判定部が判定した場合、前記仮航跡を更新する航跡更新部と、
真目標であると判明している目標物の航跡に関する情報を用いて、真目標の航跡の特徴を機械学習する学習部と、
前記学習部から出力された学習結果に基づいて、前記航跡更新部によって更新された前記仮航跡を真目標の航跡として確立するか否かを判定する確立判定部と、を備えた、
目標追尾装置。
【請求項2】
前記学習部は、
二次レーダ装置から前記情報を取得し、前記真目標の航跡の特徴を機械学習するための学習データを生成する、
請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項3】
前記学習部は、
予め記憶された航跡及び仮航跡の中から、前記二次レーダ装置から取得した前記情報に対応する前記真目標の航跡を選別し、前記学習データとする、
請求項2に記載の目標追尾装置。
【請求項4】
前記学習結果は、回帰アルゴリズムであって、
前記回帰アルゴリズムによる出力は、前記仮航跡が真目標の航跡として確立する確度を示す連続値であり、
前記確度が所定の確立閾値よりも大きい場合、前記確立判定部は、前記仮航跡を真目標の航跡として確立する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の目標追尾装置。
【請求項5】
前記確度が、前記確立閾値よりも小さい所定の削除閾値よりも小さい場合、前記確立判定部は、前記仮航跡を削除する、
請求項4に記載の目標追尾装置。
【請求項6】
前記学習結果は、分類アルゴリズムであって、
前記分類アルゴリズムによる出力は、前記仮航跡が真目標の航跡として確立するか否かの2値である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の目標追尾装置。
【請求項7】
探知装置と目標追尾装置とを備え、
前記目標追尾装置は、
前記探知装置から入力されたプロットと、当該プロットが発生した時刻において予測される仮航跡との相関を判定する相関判定部と、
前記プロットと前記仮航跡とが相関すると前記相関判定部が判定した場合、前記仮航跡を更新する航跡更新部と、
真目標であると判明している目標物の航跡に関する情報を用いて、真目標の航跡の特徴を機械学習する学習部と、
前記学習部から出力された学習結果に基づいて、前記航跡更新部によって更新された前記仮航跡を真目標の航跡として確立するか否かを判定する確立判定部と、を備えた、
目標追尾システム。
【請求項8】
探知装置から入力されたプロットと、当該プロットが発生した時刻において予測される仮航跡との相関を判定し、
前記プロットと前記仮航跡とが相関すると判定した場合、前記仮航跡を更新し、
真目標であると判明している目標物の航跡に関する情報を用いて、真目標の航跡の特徴を機械学習した学習結果に基づいて、更新された前記仮航跡を真目標の航跡として確立するか否かを判定する、
処理をコンピュータが実行する、
目標追尾方法。
【請求項9】
探知装置から入力されたプロットと、当該プロットが発生した時刻において予測される仮航跡との相関を判定し、
前記プロットと前記仮航跡とが相関すると判定した場合、前記仮航跡を更新し、
真目標であると判明している目標物の航跡に関する情報を用いて、真目標の航跡の特徴を機械学習した学習結果に基づいて、更新された前記仮航跡を真目標の航跡として確立するか否かを判定する、処理をコンピュータに実行させる、
目標追尾プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は目標追尾装置、目標追尾システム、目標追尾方法、及び目標追尾プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に開示されているように、レーダ装置から入力されたプロットに基づいて、例えば船舶等の目標の航跡を生成し、当該目標を追尾する目標追尾装置が、広く知られている。
【0003】
レーダ装置から入力されるプロットには、地面、海面、雲、雨等の偽目標によるクラッタや電気的なノイズなど、追尾対象である真目標によらないプロットも含まれる。そのため、目標追尾装置では、入力されたプロットに基づいて、一旦、仮航跡を生成する。そして、新たに入力されるプロットに基づいて、仮航跡を真目標の航跡として確立するか否かの判定(以下、「航跡確立判定」とも呼ぶ)を行う。通常、特許文献2に開示されているように、逐次確率比検定(SPRT:Sequential Probability Ratio Test)法を用いて、航跡確立判定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-126526号公報
【文献】特開2014-044131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高クラッタ環境下では、レーダ装置から目標追尾装置に入力されるプロットにおいて、偽目標によるプロットが増えるため、偽目標によるプロットと相関する仮航跡も増える。そのため、SPRT法を用いて航跡確立判定を行うと、偽目標の仮航跡を真目標の航跡として誤って確立したり、真目標の航跡の確立が遅れたりする虞があった。
【0006】
本開示は、このような課題に鑑み、航跡確立判定をより正確に行える目標追尾装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る目標追尾装置は、
探知装置から入力されたプロットと、当該プロットが発生した時刻において予測される仮航跡との相関を判定する相関判定部と、
前記プロットと前記仮航跡とが相関すると前記相関判定部が判定した場合、前記仮航跡を更新する航跡更新部と、
真目標であると判明している目標物の航跡に関する情報を用いて、真目標の航跡の特徴を機械学習する学習部と、
前記学習部から出力された学習結果に基づいて、前記航跡更新部によって更新された前記仮航跡を真目標の航跡として確立するか否かを判定する確立判定部と、を備えたものである。
【0008】
本開示の一態様に係る目標追尾システムは、
探知装置と目標追尾装置とを備え、
前記目標追尾装置は、
前記探知装置から入力されたプロットと、当該プロットが発生した時刻において予測される仮航跡との相関を判定する相関判定部と、
前記プロットと前記仮航跡とが相関すると前記相関判定部が判定した場合、前記仮航跡を更新する航跡更新部と、
真目標であると判明している目標物の航跡に関する情報を用いて、真目標の航跡の特徴を機械学習する学習部と、
前記学習部から出力された学習結果に基づいて、前記航跡更新部によって更新された前記仮航跡を真目標の航跡として確立するか否かを判定する確立判定部と、を備えたものである。
【0009】
本開示の一態様に係る目標追尾方法は、
探知装置から入力されたプロットと、当該プロットが発生した時刻において予測される仮航跡との相関を判定し、
前記プロットと前記仮航跡とが相関すると判定した場合、前記仮航跡を更新し、
真目標であると判明している目標物の航跡に関する情報を用いて、真目標の航跡の特徴を機械学習した学習結果に基づいて、更新された前記仮航跡を真目標の航跡として確立するか否かを判定するものである。
【0010】
本開示の一態様に係る目標追尾プログラムは、
探知装置から入力されたプロットと、当該プロットが発生した時刻において予測される仮航跡との相関を判定し、
前記プロットと前記仮航跡とが相関すると判定した場合、前記仮航跡を更新し、
真目標であると判明している目標物の航跡に関する情報を用いて、真目標の航跡の特徴を機械学習した学習結果に基づいて、更新された前記仮航跡を真目標の航跡として確立するか否かを判定する、処理をコンピュータに実行させるものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、航跡確立判定をより正確に行える目標追尾装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る目標追尾システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1における信号・データの流れの一例を示すブロック図である。
【
図3】比較例に係る目標追尾システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】第2の実施形態に係る目標追尾システムの構成を示すブロック図である。
【
図5】相関判定部110における相関判定処理を示すイメージ図である。
【
図6】学習部140の詳細を示すブロック図である。
【
図7】第2の実施形態に係る目標追尾方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0014】
(第1の実施形態)
<目標追尾システムの構成>
まず、
図1、
図2を参照して、第1の実施形態に係る目標追尾システムについて説明する。
図1は、第1の実施形態に係る目標追尾システムの構成を示すブロック図である。
図2は、
図1における信号・データの流れの一例を示すブロック図である。第1の実施形態に係る目標追尾システムは、例えば船舶や航空機を追尾するためのものである。
なお、
図2に示した信号・データの流れは、あくまでも一例であると共に、
図2には当該一例の説明に必要な信号・データの流れのみを示している。すなわち、各機能ブロック間における信号・データの流れは、
図2に示した矢印の方向に限定されない。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る目標追尾システムは、探知装置20及び目標追尾装置100を備えている。ここで、本実施形態に係る目標追尾装置100は、相関判定部110、航跡更新部120、確立判定部130、及び学習部140を備えている。
探知装置20は、例えばレーダ装置やソナー装置であって、電波や音波等の波を送信し、その反射波を受信することによって、目標の位置を探知する。
図1に示すように、探知装置20は、目標追尾装置100に接続されている。
【0016】
図2に示すように、探知装置20は、目標追尾装置100に対して、探知した目標(真目標又は偽目標)の位置を示すプロットplを出力する。レーダ装置から入力されるプロットplには、地面、海面、雲、雨等の偽目標によるクラッタや電気的なノイズなど、追尾対象である真目標によらないものも含まれる。また、プロットplは、プロットの位置だけでなく、例えば、位置誤差、その位置におけるクラッタ密度、プロットが発生した時刻、信号強度等の情報を含む。位置誤差は、例えば、探知装置20の性能に依存する。各位置におけるクラッタ密度は、例えば、探知装置20によって予め記憶されている。
【0017】
図1に示すように、相関判定部110は、探知装置20及び航跡更新部120に接続されている。
図2に示すように、相関判定部110は、探知装置20から入力されたプロットplと、当該プロットが発生した時刻において予測される仮航跡ttとの相関を判定する。
【0018】
判定の結果、プロットplと仮航跡ttとが相関する場合、相関判定部110は、相関するプロットplと仮航跡ttとを航跡更新部120に出力する。
なお、
図2では、相関判定部110は、仮航跡ttを外部から取得しているが、相関判定部110が仮航跡ttを内部に記憶していてもよい。
【0019】
図1に示すように、航跡更新部120は、相関判定部110及び確立判定部130に接続されている。
図2に示すように、航跡更新部120は、相関判定部110からプロットplと仮航跡ttとを取得し、プロットplに基づいて仮航跡ttを更新する。航跡更新部120は、更新した仮航跡uttを確立判定部130に出力する。
【0020】
図1に示すように、確立判定部130は、航跡更新部120及び学習部140に接続されている。
図2に示すように、確立判定部130は、後述する学習部140から出力された学習結果lrに基づいて、航跡更新部120によって更新された仮航跡uttを真目標の航跡として確立するか否かを判定する。すなわち、確立判定部13は、学習部140から出力された学習結果lrに基づいて、航跡確立判定を行う。
【0021】
判定の結果、仮航跡uttを真目標の航跡として確立する場合、確立判定部130は、更新された仮航跡uttを航跡に変更し、更新された航跡utrとして出力する。他方、仮航跡uttを真目標の航跡として確立しない場合、確立判定部130は、更新された仮航跡uttをそのまま出力する。
【0022】
図1に示すように、学習部140は、確立判定部130に接続されている。
学習部140は、真目標であると判明している目標物の航跡に関する情報を用いて、真目標の航跡の特徴を機械学習する。そして、
図2に示すように、学習部140は、学習結果lrを確立判定部130に出力する。
【0023】
ここで、
図3は、比較例に係る目標追尾システムの構成を示すブロック図である。
図3に示すように、比較例に係る目標追尾装置10は、
図1、
図2に示した本実施形態に係る目標追尾装置100と比べ、学習部140を備えていない。また、確立判定部130に代えて、確立判定部13を備えている。
【0024】
確立判定部13は、SPRT法を用いて航跡確立判定を行う。ここで、高クラッタ環境下では、レーダ装置から目標追尾装置に入力されるプロットにおいて、偽目標によるプロットが増えるため、偽目標によるプロットと相関する仮航跡も増える。比較例に係る目標追尾装置10では、SPRT法を用いて航跡確立判定を行うため、偽目標の仮航跡を真目標の航跡として誤って確立したり、真目標の航跡の確立が遅れたりする虞があった。
【0025】
これに対し、本実施形態に係る目標追尾装置100は、真目標であると判明している目標物の航跡に関する情報を用いて、真目標の航跡の特徴を機械学習する学習部140を備えている。そして、確立判定部130が、学習部140から出力された学習結果lrに基づいて、航跡確立判定を行う。
このように、本実施形態に係る目標追尾装置100では、航跡確立判定を行う際、真目標の航跡の特徴を機械学習することによって得られた学習結果lrを用いる。そのため、SPRT法を用いる比較例よりも、航跡確立判定を正確に行える。
【0026】
(第2の実施形態)
<目標追尾システムの構成>
次に、
図4を参照して、第2の実施形態に係る目標追尾システムについて説明する。
図4は、第2の実施形態に係る目標追尾システムの構成を示すブロック図である。
図4には、信号・データの流れの一例も併せて示されている。
なお、
図4に示した信号・データの流れは、あくまでも一例であると共に、
図4には当該一例の説明に必要な信号・データの流れのみを示している。すなわち、各機能ブロック間における信号・データの流れは、
図4に示した矢印の方向に限定されない。
【0027】
図4に示すように、本実施形態に係る目標追尾システムは、
図1、
図2に示した探知装置20及び目標追尾装置100に加え、表示部30を備えている。
また、本実施形態に係る目標追尾装置100は、
図1、
図2に示した相関判定部110、航跡更新部120、確立判定部130、及び学習部140に加え、航跡情報記憶部150を備えている。
【0028】
図4に示すように、航跡情報記憶部150は、相関判定部110、航跡更新部120、確立判定部130、学習部140、及び表示部30に接続されている。
航跡情報記憶部150は、航跡tr、仮航跡ttを記憶している。仮航跡ttは、航跡trとして確立されるに至っていない航跡である。航跡tr及び仮航跡ttは、目標追尾装置100が追尾する真目標(あるいは偽目標)の位置である。
ここで、
図4に示すように、航跡情報記憶部150に格納された全ての航跡trが、表示部30に表示される。他方、仮航跡ttは、表示部30に表示されない。
【0029】
上述の通り、プロットplには、地面、海面、雲、雨等の偽目標によるクラッタや電気的なノイズなど、真目標によらないプロットも含まれる。そのため、目標追尾装置100では、プロットplに基づいて新たな航跡を生成する際、航跡trとしてではなく仮航跡ttとして生成し、記憶する。
【0030】
ここで、航跡tr及び仮航跡ttは、航跡位置だけでなく、例えば航跡位置誤差、航跡速度、航跡速度誤差、及び航跡と相関するプロットpl等の情報を含む。航跡位置誤差や航跡速度誤差は、例えば、目標追尾装置100の性能に依存する。また、航跡と相関するプロットplは、上述の通り、プロットの位置、位置誤差、その位置におけるクラッタ密度、プロットが発生した時刻、信号強度等を含む。
【0031】
図4に示すように、相関判定部110は、探知装置20から入力されたプロットplと、プロットplが発生した時刻において予測される航跡tr及び仮航跡ttと、の相関を判定する。航跡情報記憶部150に記憶された全ての航跡tr及び仮航跡ttについて、相関が判定される。
【0032】
判定の結果、プロットplと相関する航跡tr又は仮航跡ttが存在すれば、相関判定部110は、相関するプロットplと航跡tr又は仮航跡ttとを航跡更新部120に出力する。他方、プロットplと相関する航跡tr又は仮航跡ttが存在しなければ、相関判定部110は、プロットplに基づいて、新たな仮航跡nttを生成し、航跡情報記憶部150に出力する。新たな仮航跡nttは、航跡情報記憶部150に仮航跡ttとして格納される。
【0033】
ここで、
図5は、相関判定部110における相関判定処理を示すイメージ図である。
図5は、時刻t3においてプロットplが発生した様子を示している。また、
図5は、仮航跡ttの場合について示しているが、航跡trの場合も同様である。相関判定部110は、相関判定に先立ち、航跡情報記憶部150に記憶された仮航跡ttから時刻t3における仮航跡を予測する。
【0034】
図5において、航跡情報記憶部150に記憶された仮航跡ttは、例えば実線で示された時刻t1、t2における仮航跡である。ここで、仮航跡における円は位置を示し、直線は進行方向を示している。また、
図5において、時刻t3において予測された仮航跡は、二点鎖線で示されている。
【0035】
続いて、相関判定部110は、相関判定を行うためのゲートを、予測された仮航跡の周囲に設定する。
図5において、楕円状のゲートが一点鎖線で示されている。
そして、相関判定部110は、プロットplがゲートの内部に位置すれば、プロットplと仮航跡ttとが相関すると判定する。他方、相関判定部110は、プロットplがゲートの外部に位置すれば、プロットplと仮航跡ttとが相関しないと判定する。
図5は、プロットplと仮航跡ttとが相関する場合を示している。
【0036】
図4に示すように、航跡更新部120は、相関判定部110から相関するプロットplと航跡tr又は仮航跡ttとを取得し、プロットplに基づいて航跡tr又は仮航跡ttを更新する。
図5には、時刻t3におけるプロットplに基づいて更新された仮航跡が実線で示されている。
図4に示すように、航跡更新部120は、更新された仮航跡uttを確立判定部130に出力し、更新された航跡utrを航跡情報記憶部150に出力する。更新された航跡utrは、航跡情報記憶部150に航跡trとして格納される。
【0037】
図4に示すように、確立判定部130は、学習部140から出力された学習結果lrに基づいて、航跡更新部120によって更新された仮航跡uttを真目標の航跡として確立するか否かを判定する。
【0038】
判定の結果、仮航跡uttを真目標の航跡として確立する場合、確立判定部130は、更新された仮航跡uttを航跡に変更し、更新された航跡utrとして航跡情報記憶部150に出力する。他方、仮航跡uttを真目標の航跡として確立しない場合、確立判定部130は、更新された仮航跡uttをそのまま航跡情報記憶部150に出力する。更新された航跡utr又は仮航跡uttは、航跡情報記憶部150に航跡tr又は仮航跡ttとして格納される。
【0039】
学習部140は、真目標であると判明している目標物の航跡に関する情報を用いて、真目標の航跡の特徴を機械学習する。そして、
図4に示すように、学習部140は、学習結果lrを確立判定部130に出力する。
【0040】
<学習部140の詳細>
次に、
図6を参照して、学習部140の詳細について説明する。
図6は、学習部140の詳細を示すブロック図である。
図6に示すように、学習部140は、学習データ生成部141、学習データ記憶部142、及び学習処理部143を備えている。
なお、
図6に示した信号・データの流れは、あくまでも一例であると共に、
図6には当該一例の説明に必要な信号・データの流れのみを示している。すなわち、各機能ブロック間における信号・データの流れは、
図6に示した矢印の方向に限定されない。
【0041】
図6に示すように、学習データ生成部141は、航跡情報記憶部150、二次レーダ装置40、及び学習データ記憶部142に接続されている。
ここで、二次レーダ装置40は、真目標であると判明している目標に関する情報(真目標情報)tgを出力する。真目標情報tgは、例えば航跡である。二次レーダ装置40は、船舶や航空機等の真目標が発する識別情報付きの電波を受信するため、真目標情報tgを出力できる。
なお、二次レーダ装置40は、学習データ生成部141が学習データldを生成する際に接続されていればよい。
【0042】
図6に示すように、学習データ生成部141は、二次レーダ装置40から取得した真目標情報tgに基づいて、航跡tr及び仮航跡ttから学習データldを生成する。より詳細には、学習データ生成部141は、探知装置20から入力されたプロットplに基づいて生成された航跡tr及び仮航跡ttにおいて、真目標情報tgに対応するものを真目標の航跡として選別する。換言すると、学習データ生成部141は、航跡tr及び仮航跡ttを、真目標の航跡と真目標でない航跡とに振り分け、学習データldとする。
【0043】
図6に示すように、学習データ記憶部142は、学習データ生成部141及び学習処理部143に接続されている。
学習データ記憶部142は、学習データld(真目標の航跡及び真目標でない航跡)を記憶している。
【0044】
図6に示すように、学習処理部143は、学習データ記憶部142及び確立判定部130に接続されている。
図6に示すように、学習処理部143は、学習データldを用いて機械学習する。より詳細には、学習処理部143は、学習データldの真目標の航跡を用いて、真目標の航跡の特徴を機械学習する。それによって、学習処理部143は、確立判定部130が航跡確立判定を行うためのアルゴリズムを生成できる。すなわち、学習処理部143が行う機械学習は、教師有り学習である。
学習処理部143は、生成したアルゴリズムを学習結果lrとして確立判定部130に出力する。
【0045】
例えば、学習結果lrが教師有り学習による回帰アルゴリズムの場合、判定対象の仮航跡ttが真目標の航跡として確立する確度を0~1(0~100%)の連続値で出力する。そのため、確立判定部130は、当該回帰アルゴリズムによる出力(確度)が所定の確立閾値以上の場合、当該仮航跡ttを真目標の航跡として確立する。確立閾値は0.5(50%)より大きく、例えば0.9(90%)程度とする。
【0046】
さらに、判定対象の仮航跡ttが真目標の航跡として確立する確度が所定の削除閾値以下の場合、確立判定部130は当該仮航跡ttを削除してもよい。削除閾値は0.5(50%)より小さく、例えば0.1(10%)程度とする。
回帰アルゴリズムとしては、ロジスティック回帰、サポートベクターマシン(SVM:Support Vector Machine)等を使用できる。
【0047】
他方、学習結果lrが教師有り学習による分類アルゴリズムの場合、判定対象の仮航跡ttが真目標の航跡として確立するか否かを直接出力する。そのため、確立判定部130は、当該分類アルゴリズムの出力に基づいて、判定対象の仮航跡ttが真目標の航跡として確立するか否かを判定する。
分類アルゴリズムとしては、パーセプトロン、リカレントニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)等を使用できる。
【0048】
さらに、学習処理部143は、学習データldの真目標でない航跡を用いて、真目標でない航跡の特徴を機械学習してもよい。それによって、学習処理部143は、航跡情報記憶部150に格納された不要な航跡tr及び仮航跡ttを削除するためのアルゴリズムを生成できる。
【0049】
その場合、確立判定部130は、当該アルゴリズムに従って、航跡情報記憶部150に格納された不要な航跡tr及び仮航跡ttを削除してもよい。例えば、確立判定部130は、このような航跡削除処理を定期的に行ってもよい。当然のことながら、
図6に示されていない確立判定部130とは別の機能ブロックが、航跡削除処理を行ってもよい。
【0050】
例えば、回帰アルゴリズムの場合、判定対象の航跡tr又は仮航跡ttが真目標の航跡でない確度を0~1(0~100%)の連続値で出力する。そのため、確立判定部130は、当該回帰アルゴリズムによる出力(確度)が所定の削除閾値以上の場合、当該航跡tr又は仮航跡ttを削除する。削除閾値は特に限定されないが、例えば0.9(90%)程度とする。
【0051】
他方、分類アルゴリズムの場合、判定対象の航跡tr又は仮航跡ttを削除するか否かを直接出力する。そのため、確立判定部130は、当該分類アルゴリズムの出力に基づいて、判定対象の航跡tr又は仮航跡ttを削除する。
【0052】
以上に説明した通り、本実施形態に係る目標追尾装置100は、真目標であると判明している目標物の航跡に関する情報を用いて、真目標の航跡の特徴を機械学習する学習部140を備えている。そして、確立判定部130が、学習部140から出力された学習結果lrに基づいて、航跡確立判定を行う。
このように、本実施形態に係る目標追尾装置100では、航跡確立判定を行う際、真目標の航跡の特徴を機械学習することによって得られた学習結果lrを用いる。そのため、SPRT法を用いる場合よりも、航跡確立判定を正確に行える。
【0053】
<目標追尾方法>
次に、
図7を参照して、第2の実施形態に係る目標追尾方法について説明する。
図7は、第2の実施形態に係る目標追尾方法を示すフローチャートである。
まず、探知装置20からプロットplが入力されると、相関判定部110は、航跡情報記憶部150に記憶された全ての航跡tr及び仮航跡ttについて、プロットplが入力された時刻における航跡を予測する(ステップST1)。
【0054】
次に、相関判定部110は、当該プロットplと、航跡情報記憶部150に記憶された全ての航跡tr及び仮航跡ttと、の相関を判定する(ステップST2)。
プロットplと相関する航跡tr又は仮航跡ttが存在しなければ(ステップST2NO)、相関判定部110は、プロットplに基づいて、新たな仮航跡nttを生成し、航跡情報記憶部150に出力する(ステップST3)。新たな仮航跡nttは、航跡情報記憶部150に仮航跡ttとして格納される。これによって、処理が終了する。
【0055】
他方、プロットplと相関する航跡tr又は仮航跡ttが存在すれば(ステップST2YES)、相関判定部110は、相関するプロットplと航跡tr又は仮航跡ttとを航跡更新部120に出力する。そして、航跡更新部120は、プロットplに基づいて航跡tr又は仮航跡ttを更新する(ステップST4)。
【0056】
次に、更新されたものが航跡の場合(ステップST5NO)、航跡更新部120は、更新された航跡utrを航跡情報記憶部150に出力する。更新された航跡utrは、航跡情報記憶部150に航跡trとして格納される。これによって、処理が終了する。
他方、更新されたものが仮航跡の場合(ステップST5YES)、航跡更新部120は、更新された仮航跡uttを確立判定部130に出力する。そして、確立判定部130は、当該更新された仮航跡uttについて航跡確立判定を行う(ステップST6)。
【0057】
仮航跡uttを真目標の航跡として確立しない場合(ステップST6NO)、確立判定部130は、更新された仮航跡uttをそのまま航跡情報記憶部150に出力する。更新された仮航跡uttは、航跡情報記憶部150に仮航跡ttとして格納される。これによって、処理が終了する。
【0058】
他方、仮航跡uttを真目標の航跡として確立する場合(ステップST6YES)、確立判定部130は、更新された仮航跡uttを航跡に変更する(ステップST7)。更新された航跡utrは、航跡情報記憶部150に航跡trとして格納される。これによって、処理が終了する。
プロットplが入力される度に、
図7に示した上記処理を繰り返す。
【0059】
上述の実施形態における各機能ブロックは、ハードウェア又はソフトウェア、もしくはその両方によって構成され、1つのハードウェア又はソフトウェアから構成してもよいし、複数のハードウェア又はソフトウェアから構成してもよい。各装置の機能(処理)を、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等を有するコンピュータにより実現してもよい。例えば、記憶装置に実施形態における方法を行うためのコンピュータプログラムを格納し、各機能を、記憶装置に格納されたコンピュータプログラムをCPUで実行することにより実現してもよい。
【0060】
これらのコンピュータプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、コンピュータプログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、コンピュータプログラムをコンピュータに供給できる。
【0061】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上記実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
例えば、本開示はMHT(Multiple Hypothesis. Tracking)を採用した目標追尾装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0062】
20 探知装置
30 表示部
40 二次レーダ装置
100 目標追尾装置
110 相関判定部
120 航跡更新部
130 確立判定部
140 学習部
141 学習データ生成部
142 学習データ記憶部
143 学習処理部
150 航跡情報記憶部