(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】静電荷像現像用白色トナー及びこれを用いた画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/09 20060101AFI20240402BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G03G9/09
G03G9/08 391
(21)【出願番号】P 2020084569
(22)【出願日】2020-05-13
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小鶴 浩之
(72)【発明者】
【氏名】藤田 美千代
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-045225(JP,A)
【文献】特開2019-113685(JP,A)
【文献】特開2019-138951(JP,A)
【文献】特開2014-056121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも光透過率が1%以下の平板状粒子と、白色着色剤とを内包した静電荷像現像用白色トナーであって、
前記平板状粒子は、
アルミナ、ニッケルおよび酸化鉄から選択される1種または2種以上の材料から形成され、長径平均粒子径が、0.5μm以上2.5μm以下の範囲であ
り、
前記白色トナーに対して二酸化チタンの含有量が1質量%以下である、静電荷像現像用白色トナー。
【請求項2】
少なくとも光透過率が1%以下であり、表面に凹凸を有する平板状粒子と、白色着色剤とを内包した静電荷像現像用白色トナーであって、
前記平板状粒子は、
アルミナ、ニッケルおよび酸化鉄から選択される1種または2種以上の材料から形成され、長径平均粒子径Daが0.5μm以上20μm以下であり、表面凸部の平均径がDa/50~Da/3であり、かつ、凸部高さの平均が0.01~0.1μmであ
り、
前記白色トナーに対して二酸化チタンの含有量が1質量%以下である、静電荷像現像用白色トナー。
【請求項3】
前記白色トナーは、体積平均粒子径Dbが5μm以上30μm以下であり、かつDa<Dbである、請求項2に記載の静電荷像現像用白色トナー。
【請求項4】
以下に示す白色トナーを用いた画像の白色度の評価方法により測定される、45度におけるL
*(L45)と0度におけるL
*(L0)との比(L45/L0)が1.1以上5.0以下であり、かつ前記L45が70以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用白色トナー:
白色トナーを用いた画像の白色度の評価方法:明度が20~30の用紙を用いて、紙上で前記白色トナーを8g/m
2の付着量で画像形成させ、熱定着させて得た画像について、L45/L0の測定として、観測方向や照射方向が変わると色が変化して見えるフロップ効果を生じる物体色の変角測色システムを用いて測定し、入射角を変えて角度毎に分光分布の測定を実施し、45度におけるL
*(L45)と0度におけるL
*(L0)を求める。測色の条件としては、光源D50-視野角10°積分球 SCIモードを用いる。
【請求項5】
前記平板状粒子は、L
*>50、(a
*2+b
*2)<20(ここで、L
*は明度を表し、a
*、b
*は色相と彩度を示す色度を表す)を満足する、請求項1~4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用白色トナー。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の静電荷像現像用白色トナーと、少なくとも1色の有色トナーとを記録媒体に転写および定着させて画像を形成する工程を含む、画像形成方法であって、
前記白色トナーを用いた画像の白色度の評価方法により測定される、45度におけるL
*(L45)と0度におけるL
*(L0)との比(L45/L0)が1.1以上5.0以下であり、かつ前記L45が70以上である、画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用白色トナー(以下、単に白色トナーともいう)及びこれを用いた画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真システムによるドキュメントの高付加価値への関心が高まっている。その中で紙以外の記録媒体にも応用を可能とする「メディア対応性」や従来の色域に限らない「特色トナー」に対する技術開発が要求されている。
【0003】
特に、紙のような白色のメディア以外の有色のメディアや透明なメディアを用いる場合には、「白色トナー」の存在は不可欠である。白色トナーは、単独で白色画像に用いられることもあるし、白色画像上にカラー画像を形成する有色トナー像の視認性を高めるために用いられることもある。
【0004】
白色トナーは、画像濃度(白色度)を得るために、白色顔料の高充填やトナー付着量の増量が必要となるが、白色トナーの着色剤として一般的によく用いられる二酸化チタンをトナーに用いた場合、光散乱に優れ、白色度が最も高い二酸化チタンがEUの環境規制(CLP規則)で使用する場合に発がん性ラベルを必要とすることになる。そのため、二酸化チタン量を低減したまたは二酸化チタンを使用しない静電潜像現像用白色トナーが求められている。
【0005】
こうした二酸化チタンレスとした静電潜像現像用白色トナーとしては、内部に空隙を有し、体積平均粒子径が、0.2μm以上2μm以下であり、表面に高分子アミン化合物及び樹脂を少なくとも有することを特徴とする中空トナーが提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、特許文献2には、シリカで被覆されたアルミニウム顔料と結着樹脂とを含むトナー粒子を含有し、X線光電子分光法(XPS)により測定された、前記トナー粒子のSi元素の含有率A(atom%)と前記トナー粒子のC元素の含有率B(atom%)との比(A/B)が、0.040以下である静電荷像現像用トナーが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-129762号公報
【文献】特開2016-020968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のトナーは、二酸化チタンレスのトナーであるが、中空粒子による光散乱による白色化であり、十分な白色度を得ることができないという問題があった。
【0009】
また、特許文献2に記載のトナーは、シリカで被覆されたアルミニウム顔料を用いており、シリカは光を1%以上透過するので金属光沢を有する光輝性顔料を用いた銀色トナーであり、白色トナーとして利用することができないという問題があった。
【0010】
そこで本発明は、光散乱に優れる二酸化チタンを用いた白色トナーと同等レベルの白色度を出すことのできる、二酸化チタン量を低減したまたは二酸化チタンを使用しない静電潜像現像用白色トナーを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、上記二酸化チタン量を低減したまたは二酸化チタンを使用しない静電潜像現像用白色トナーを用いた画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意研究を積み重ねた。その結果、所定の光透過率と所定の大きさを有する平板状粒子に、光の散乱機能と下地の色影響を無くす機能とを持たせることで、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明の目的は、以下の手段により達成できるものである。
【0014】
1.少なくとも光透過率が1%以下の平板状の粒子と、白色着色剤とを内包した静電荷像現像用白色トナーであって、
前記平板状粒子は、長径平均粒子径が、0.5μm以上2.5μm以下の範囲である、静電荷像現像用白色トナー。
【0015】
2.少なくとも光透過率が1%以下であり、表面に凹凸を有する平板状の粒子と、白色着色剤とを内包した静電荷像現像用白色トナーであって、
前記平板状の粒子は、長径平均粒子径Daが0.5μm以上20μm以下であり、表面凸部の平均径がDa/50~Da/3であり、かつ、凸部高さの平均が0.01~0.1μmである、静電荷像現像用白色トナー。
【0016】
3.前記白色トナーは、体積平均粒子径Dbが5μm以上30μm以下であり、かつDa<Dbである、上記2に記載の静電荷像現像用白色トナー。
【0017】
4.以下に示す白色トナーを用いた画像の白色度の評価方法により測定される、45度におけるL*(L45)と0度におけるL*(L0)との比(L45/L0)が1.1以上5.0以下であり、かつ前記L45が70以上である、上記1~3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用白色トナー:
白色トナーを用いた画像の白色度の評価方法:明度が20~30の用紙を用いて、紙上で前記白色トナーを8g/m2の付着量で画像形成させ、熱定着させて得た画像について、L45/L0の測定として、観測方向や照射方向が変わると色が変化して見えるフロップ効果を生じる物体色の変角測色システムを用いて測定し、入射角を変えて角度毎に分光分布の測定を実施し、45度におけるL*(L45)と0度におけるL*(L0)を求める。測色の条件としては、光源D50-視野角10°積分球 SCIモードを用いる。
【0018】
5.前記平板状の粒子は、L*>50、(a*2+b*2)<20(ここで、L*は明度を表し、a*,b*は色相と彩度を示す色度を表す)を満足する、上記1~4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用白色トナー。
【0019】
6.上記1~5のいずれか1項に記載の静電荷像現像用白色トナーを記録媒体に転写および定着させて画像を形成する工程を含む、画像形成方法であって、
前記「白色トナーを用いた画像の白色度の評価方法」により測定される、45度におけるL*(L45)と0度におけるL*(L0)との比(L45/L0)が1.1以上5.0以下であり、かつ前記L45が70以上である、画像形成方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光散乱に優れる二酸化チタンを用いた白色トナーと同等レベルの白色度を出すことができる、二酸化チタン量を低減したまたは二酸化チタンを使用しない静電荷像現像用白色トナー及びこれを用いた画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第一実施形態の白色トナーに含まれる平板状粒子を模式的に表した図面であって、平板状粒子の高さ(厚さ)をtで表し、長径をDaで表した図面である。
【
図2A】本発明の第一実施形態の白色トナーを記録媒体である黒紙上に転写した未定着状態のトナー画像を模式的に表した図面である。
【
図2B】本発明の第二実施形態の白色トナーを記録媒体である黒紙上に転写した未定着状態のトナー画像を模式的に表した図面である。
【
図2C】従来の二酸化チタンを白色着色剤として用いた白色トナーを記録媒体である黒紙上に転写した未定着状態のトナー画像を模式的に表した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第一実施形態は、少なくとも光透過率が1%以下の平板状粒子と、白色着色剤とを内包した静電荷像現像用白色トナーであって、
前記平板状粒子は、長径平均粒子径が、0.5μm以上2.5μm以下の範囲である、静電荷像現像用白色トナーである。
【0023】
本発明の第二実施形態は、少なくとも光透過率が1%以下であり、表面に凹凸を有する平板状粒子と、白色着色剤とを内包した静電荷像現像用白色トナーであって、
前記平板状粒子は、長径平均粒子径Daが0.5μm以上20μm以下であり、表面凸部の平均径がDa/50~Da/3であり、かつ、凸部高さの平均が0.01~0.1μmである、静電荷像現像用白色トナーである。
【0024】
本発明の第三実施形態は、第一又は第二実施形態の記載の静電荷像現像用白色トナーを記録媒体に転写および定着させて画像を形成する工程を含む、画像形成方法であって、
以下に示す「白色トナーを用いた画像の白色度の評価方法」により測定される、45度におけるL*(L45)と0度におけるL*(L0)との比(L45/L0)が1.1以上5.0以下であり、かつ前記L45が70以上である、画像形成方法である。
【0025】
白色トナーを用いた画像の白色度の評価方法:明度が20~30の用紙を用いて、紙上で前記白色トナーを8g/m2の付着量で画像形成させ、熱定着させて得た画像について、L45/L0の測定として、観測方向や照射方向が変わると色が変化して見えるフロップ効果を生じる物体色の変角測色システムを用いて測定し、入射角を変えて角度毎に分光分布の測定を実施し、45度におけるL*(L45)と0度におけるL*(L0)を求める。測色の条件としては、光源D50-視野角10°積分球 SCIモードを用いる。
【0026】
上記した第一~第三実施形態の各構成を有することで、それぞれ上記した発明の効果を奏することができる。
【0027】
なぜ、上記した白色トナー及びこれを用いた画像形成方法により上記効果が得られるのか、詳細は不明であるが、下記のようなメカニズムが考えられる。なお、下記のメカニズムは推測によるものであり、本発明は下記メカニズムに何ら制限されるものではない。
【0028】
本発明者らは、白色トナーとは全く異なる粉体加飾の検討の中で、表面に凹凸がある平板状の金属酸化物粒子として、銀をコートした粒子を用いると金属光沢の無い白色粒子となった。この粒子は、粉体加飾として用いるには不適ではあるが、二酸化チタンレス白色粒子として用いることができることが示唆された。そこで、従来の白色トナーによる白色画像が得られる光散乱のメカニズムを再考し、鋭意検討を進めた。その結果、(1)白色トナーによる白色画像に求められるのは、「白色+下地の色の影響を無くす」機能であることを認識し、(2)下地の色の影響を無くする技術手段として、少なくとも光透過率が1%以下の平板状粒子を用いるとよいことが明らかとなった。また、白色化のため、平板状粒子はある程度白色度を有することがより好ましく、必要な白色度はLabで規定できることも明らかになった。
【0029】
なお、上記メカニズムは推測によるものであり、本発明は上記メカニズムに何ら拘泥されるものではない。
【0030】
以下、本発明の構成について、詳細に説明する。
【0031】
[第一実施形態の白色トナーの構成]
第一実施形態の白色トナーは、少なくとも光透過率が1%以下の平板状粒子と、白色着色剤とを内包した静電荷像現像用白色トナーであって、
前記平板状粒子は、長径平均粒子径が、0.5μm以上2.5μm以下の範囲である。
【0032】
〔平板状粒子〕
<平板状粒子のサイズ>
本実施形態において、平板状粒子は、サイズ(長径平均粒子径Da/平均高さt)が3以上50以下であり、好ましくは5以上40以下である。すなわち、本実施形態において、平板状粒子は、平均高さtがDa/50~Da/3の範囲であり、好ましくはDa/40~Da/5の範囲である。平均高さtが上記範囲より小さいと粒子強度が低いため、粉砕されてしまう。平均高さtが上記範囲より大きいと円柱状の粒子となるため、添加量当たりの隠ぺい性が低下する。
図1は、平板状粒子を模式的に表した図面であって、高さ(厚さ)をtで表し、長径をDaで表した図面である。ここで、Daは、
図1に示すように、平板状粒子の長径の平均値(長径平均粒子径)である。また、平均高さtは、
図1に示すように、平板状粒子の高さ(厚さ)の平均値である。
【0033】
<平板状粒子の表面形状>
本実施形態の平板状粒子の表面形状に関しては、特に制限されるものではない。本実施形態の平板状粒子は、長径平均粒子径が小さいため、表面に凹凸形状を形成せず、表面の平滑度が高くなっても白色トナー中に複数ランダムに配置されることにより、光を乱反射することができる。これにより、金属光沢を有することなく、トナーを白色化させることができる。また、表面に凹凸加工を施さない方が、製造が容易であり、低コスト化でき、市販の材料を用いることができる点でも好ましい。ただし、後述する第二実施形態の平板状粒子のように、表面に凹凸を有する平板状粒子を用いてもよい。この場合、平板状粒子の表面の凹凸形状は、第二実施形態の平板状粒子の表面の凹凸形状における凸部平均径や凸部高さ平均と同じにしてもよいし、異なっていてもよい。
【0034】
<平板状粒子の光透過率>
本実施形態の平板状粒子は、光透過率が1%以下である。このように平板状の光透過性の低い粒子を内包することにより、光の散乱機能と下地の色の影響を無くす機能のうち、特に下地の隠蔽性を高め、下地の色の影響を無くす機能を有効に発現することができる。その結果、白色度を高めることができる。かかる観点から、光透過率は、0.5%以下が好ましい。平板状粒子の光透過率が1%を超える場合には、下地の影響を無くす機能が低下するため好ましくない。
【0035】
上記平板状粒子に用いられる光透過率が1%以下の材料としては、例えば、アルミナ、ニッケル、黄銅、青銅、ステンレス、亜鉛、フェライトなどの金属粉末、アルミナなどを表面コート酸化鉄、黄色酸化鉄を被覆した雲母、層状ケイ酸塩、層状アルミニウムのケイ酸塩などの被覆薄片状無機結晶基質、塩基性炭酸塩、オキシ塩化ビスマスなどが挙げられる。ただし、これらに制限されるものではない。また上記材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。画像形成時の加熱定着温度(150℃程度)に対し十分な耐熱性を有し、細かな平板状の粒子に加工しやすく、光の散乱機能と下地の色の影響を無くす機能とを発現しやすいという観点から、アルミナ、ニッケル、酸化鉄などが好ましい。
【0036】
<平板状粒子の光透過率、色域の測定方法>
100μmのポリテトラフルオロエチレン(PET)に、100μmのポリビニルピロリドン(PVP)を塗布し、その上に平板状粒子を均一に塗布する。詳しくは、膜厚100μmのPETフィルムの片面に膜厚が100μmとなるようにポリビニルピロリドン(PVP)を塗布し、その上に平板状粒子を0.2mg/mm2となるように均一に塗布する。このPET-PVP-平板状粒子からなるシートを用いて、透過率測定(波長500nm)及び色域測定を実施する。
【0037】
<平板状粒子の長径平均粒子径>
本実施形態の平板状粒子は、長径平均粒子径が、0.5μm以上2.5μm以下の範囲である。このように粒子径の小さい平板状粒子を用いることにより、白色トナーの結着樹脂中に細かい平板状粒子が複数ランダムに配向された状態となり、光の散乱機能と下地の色の影響を無くす機能とを発現することができ、白色度を高めることができる。即ち、本実施形態では、上記平板状粒子が、白色トナー中に複数ランダムに配置されている。上記の長径平均粒子径の範囲であれば、既存のトナー粒子の作製方法である重合法および混練粉砕法のいずれを用いて製造したトナー粒子であっても、平板状粒子は結着樹脂中に複数ランダムに配置され、ほぼ均等に分散される。上記観点から、上記平板状粒子の長径平均粒子径は0.7μm以上2.0μm以下の範囲が好ましい。上記平板状粒子の長径平均粒子径が0.5μm未満の場合には、下地の隠ぺい性が低下し、白色度が低下するため好ましくない。一方、上記平板状粒子の長径平均粒子径が2.5μmを超える場合には、金属光沢を有してしまうため好ましくない。
【0038】
<平板状粒子の長径平均粒子径Da、平均高さt、凸部平均径、凸部高さ平均の測定方法>
セイミック(SAEMic)を用いて、走査電子顕微鏡(SEM)による長径及び高さの測定と原子間力顕微鏡(AFM)による3D形状計測とを実施する。長径平均粒子径Da、平均高さt、凸部平均径、および凸部高さ平均は、任意の平板状粒子20個をセイミックにより測定して、その平均を算出する。セイミックは、SEMによる形状、組成、元素分析(EDX)などと、AFMによる3D形状計測と力学物性情報(硬さ・吸着・摩擦)や電磁気物性(電流・抵抗・電位)、磁気物性(磁性)を同一箇所で解析評価を行うソリューション(SEM+AFM相関顕微鏡法)である。
【0039】
<平板状粒子のL*a*b*色空間(白色度)>
前記平板状粒子は、L*>50、(a*2+b*2)<20(ここで、L*は明度を表し、a*、b*は色相と彩度を示す色度を表す)を満足するのが好ましい。前記平板状粒子は上記範囲を満足する白色に近い色彩(明度と色度)の方が、白色着色剤の含有量を少なくできるためである。L*>50であれば、色を吸収しにくいため、白色度が不足することもなく平板状粒子を白色化することができる。また(a*2+b*2)<20であれば、有色になりにくいため、白色度が不足することもなく平板状粒子を白色化することができる。かかる観点から、平板状粒子は、L*>55、(a*2+b*2)<15を満足するのがより好ましい。
【0040】
<平板状粒子のL*,a*、b*の測定方法>
平板状粒子のL*,a*、b*の測定方法は、L*a*b*色空間が国際照明委員会(CIE)で規格化され、JIS Z 8781-4(2013)において採用されていることから、こうした規格基準を満たす市販の濃度計(蛍光分光濃度計)等の測定装置を用いて測定することができる。詳しくは、上記した<平板状粒子の光透過率、色域の測定方法>により、蛍光分光濃度計を用い、光源 D50、視野 2度として測定すればよい。
【0041】
<平板状粒子のトナー中の含有量>
本実施形態の平板状粒子のトナー中の含有量は、好ましくは1質量%以上60質量%以下、より好ましくは2質量%以上50質量%以下の範囲である。平板状粒子のトナー中の含有量が60質量%以下であれば、トナー中に平板状粒子が内包され、トナー中に平板状粒子が十分に取り込まれないという問題も生じない。そのため、感光体への傷等が発生するという問題も生じず、当該白色トナーを使用する画像形成装置の耐久性向上につながる。また、平板状粒子のトナー中の含有量が1質量%以上であれば、白色化できないという問題も生じない。そのため、下地の隠ぺい性を十分に発現することができ、白色度を向上することができる。
【0042】
<平板状粒子の製造など>
本実施形態の平板状粒子としては、市販の光輝性顔料を入手して使用することができる。また、上記の市販の光輝性顔料や金属インゴットを、ジェットミル・振動ミル等の微粉砕機を用いて粉砕加工したものを使用してもよい。平板状粒子の製造方法は、上記した方法に何ら限定されるものではなく、従来公知の金属加工技術を用いて製造することができる。
【0043】
以上が、第一実施形態の白色トナーの構成のうち、平板状粒子に関する説明である。平板状粒子以外の構成要件に関しては、第二実施形態の白色トナーの構成と同様である。そのため、以下では、第二実施形態の白色トナーの構成のうち、平板状粒子に関する説明を行い、その後に、第一及び第二実施形態の白色トナーの構成に共通する平板状粒子以外の構成要件に関して説明する。
【0044】
[第二実施形態の白色トナーの構成]
第二実施形態の白色トナーは、少なくとも光透過率が1%以下であり、表面に凹凸を有する平板状粒子と、白色着色剤とを内包した静電荷像現像用白色トナーであって、
前記平板状粒子は、長径平均粒子径Daが0.5μm以上20μm以下であり、表面凸部の平均径がDa/50~Da/3であり、かつ、凸部高さの平均が0.01~0.1μmである。
【0045】
〔平板状粒子〕
<平板状粒子のサイズ>
本実施形態の平板状粒子のサイズ(長径平均粒子径Da/平均高さt)、平均高さtおよびその測定方法は、第一実施形態の平板状粒子のサイズ(長径平均粒子径Da/平均高さt)、平均高さtおよびその測定方法と同様である。
【0046】
<平板状粒子の表面形状>
本実施形態の平板状粒子は、表面に凹凸を有する。平板状粒子の長径平均粒子径を大きくして、下地の隠蔽性を高めようとすると、金属光沢を有するようになり、光輝性顔料のようになるという問題が生じる場合がある。本実施形態では、こうした問題に対し、平板状粒子の表面に光を乱反射させる凹凸形状を設けることで、下地の隠蔽性を高め、かつ光を乱反射させることにより白色度を高めることができる。
【0047】
<平板状粒子の光透過率>
本実施形態の平板状粒子の光透過率、および平板状粒子の光透過率、色域の測定方法は、第一実施形態の光透過率、および平板状粒子の光透過率、色域の測定方法と同様である。
【0048】
<平板状粒子の長径平均粒子径、凸部平均径、凸部高さ平均>
本実施形態の平板状粒子は、長径平均粒子径Daが0.5μm以上20μm以下であり、表面凸部の平均径が(Da/50)~(Da/3)であり、かつ、凸部高さの平均が0.01μm以上0.1μm以下である。長径平均粒子径Daが0.5μm未満の場合には、下地の隠ぺい性が低下し、白色度が低下するため好ましくない。一方、長径平均粒子径Daが20μmを超える場合には、トナーのサイズが大きくなるため隠ぺい率が低下し白色度が低下するため好ましくない。また、表面凸部の平均径が(Da/3)を超える場合には、光が拡散せず金属光沢を有してしまうため好ましくない。一方、表面凸部の平均径が(Da/50)未満の場合には、平滑度が高くなり金属光沢を有してしまうため好ましくない。さらに、凸部高さの平均が0.2μmを超える場合には、通常の球形・円柱粒子に近い形状となってしまい、同一添加量における下地の隠ぺい性が低下し、白色度が低下するため好ましくない。また、凸部高さの平均が0.2μmを超える場合には、下地の隠ぺい性を高めるために平板状粒子の添加量を増やす必要があり、白色着色剤の含有量が相対的に減ることで、十分な白色度が得られにくくなるため好ましくない。一方、凸部高さの平均が0.01μm未満の場合には、平滑度が高くなり金属光沢を有してしまうため好ましくない。上記観点から、上記平板状粒子の長径平均粒子径Daは0.8μm以上15μm以下が好ましく、1μm以上8μm以下がより好ましく、表面凸部の平均径は(Da/40)~(Da/5)が好ましく、凸部高さの平均は0.02μm以上0.07μm以下がより好ましい。
【0049】
<平板状粒子の長径平均粒子径、凸部平均径、凸部高さ平均の測定方法>
本実施形態の平板状粒子の長径平均粒子径、凸部平均径、凸部高さ平均の測定方法は、第一実施形態の平板状粒子の長径平均粒子径、凸部平均径、凸部高さ平均の測定方法と同様である。
【0050】
<平板状粒子のL*a*b*色空間>
本実施形態の平板状粒子のL*、(a*2+b*2)、および平板状粒子のL*、a*、b*の測定方法は、第一実施形態のL*、(a*2+b*2)、および平板状粒子のL*、a*、b*の測定方法と同様である。
【0051】
<平板状粒子のトナー中の含有量>
本実施形態の平板状粒子のトナー中の含有量は、第一実施形態の平板状粒子のトナー中の含有量と同様である。
【0052】
<平板状粒子の製造など>
本実施形態の平板状粒子としては、市販のものを入手して使用することができる。また、金属加工等により金属インゴットを準備し、圧延加工などの平板加工を行った後、適当な凹凸加工(エンボス加工、デボス加工など)し、裁断、粉砕するなどして製造してもよい。また、粒子の表面に真空蒸着により微細な粒子を付着させて凹凸を作っても良い。また、粒子製造過程で温度を最適化して表面に結晶核を生成・成長させて凹凸を作っても良い。平板状粒子の製造方法は、上記した方法に何ら限定されるものではなく、従来公知の金属加工技術を用いて製造することができる。
【0053】
次に、第一及び第二実施形態の白色トナーの構成に共通する平板状粒子以外の構成要件に関して説明する。
【0054】
(白色着色剤)
白色着色剤としては、無機顔料(例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、デラミネートカオリン、アルミノ珪酸塩、セリサイト、ベントナイト、スメクサイト等)、有機顔料(例えば、ポリスチレン樹脂粒子、尿素ホリマリン樹脂粒子等)を用いることができる。ただし、これらに制限されるものではない。また上記顔料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本実施形態では、二酸化チタン量を低減したまたは二酸化チタンを使用しない白色トナーの提供を目的とすることから、好ましくは二酸化チタン量を低減し、詳しくは白色トナー全体に対して二酸化チタンの含有量を1質量%以下とし、二酸化チタン以外の上記白色顔料と組み合わせて用いるのが好ましい。より好ましくは二酸化チタンを使用しないことから、白色着色剤は、二酸化チタンを用いずに上記白色顔料を用いるのが好ましい。具体的には、二酸化チタンの次に白色度が高いことから、硫酸バリウムがより好ましい。
【0055】
(白色着色剤の形状)
白色着色剤の形状としては、特に制限されるものではなく、例えば、球状、粒状、立方状、板状、針状、棒状、無定形などが挙げられる。白色度の観点から球状が好ましい。
【0056】
(白色着色剤の平均粒子径)
白色トナーに含有される白色着色剤の平均粒子径は、白色度の観点から、10nm以上1000nm以下が好ましく、50nm以上500nm以下がより好ましい。また、分散性付与のために表面処理を施してもよい。
【0057】
(粒子の平均粒子径の測定方法)
測定対象となる粒子(樹脂粒子、着色剤粒子、離型剤粒子、外添剤粒子、トナー母体粒子、トナー等)の平均粒子径(体積基準のメジアン径)は、レーザー回折式粒度分布測定器「LA-750(HORIBA製)」または粒度分布測定装置「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)で測定することができる。また、レーザー回折式粒度分布測定器「UPA-150」(マイクロトラック社製)などでも測定可能であるし、キャリアの体積基準のメジアン径は、レーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)で測定可能である。外添剤粒子等の数平均一次粒子径は、以下のような方法でも測定できる。すなわち、走査型電子顕微鏡(SEM)「JSM-7401F」(日本電子株式会社製)を用いて撮影した写真画像をスキャナーにより取り込み、画像処理解析装置LUZEX AP(ニレコ製)を用いて該写真画像の外添剤粒子等の特定の粒子について2値化処理する。そして、外添剤粒子等の特定の粒子100個についての水平方向フェレ径を算出し、その平均値を特定の粒子の数平均一次粒子径とする。
【0058】
<白色着色剤の含有量>
従来の白色着色剤は、光の散乱により白色度を高めており、白色度が高い顔料を多量に用いる必要があった。これに対し、本発明では、上記した第一又は第二実施形態の平板状粒子を用いることで、光の散乱機能と下地の色の影響を無くす機能とを組み合わせることができ、白色度を高めて、白色着色剤量の低減、更にはトナー付着量の低減が可能となる。このことから、白色着色剤の含有量は、トナー全体の質量に対して、好ましくは2質量%以上50質量%以下、より好ましくは3質量%以上40質量%以下の範囲まで低減できる。かように白色着色剤の含有量を低減した範囲であっても、本発明では画像の色再現性を十分に確保できる。
【0059】
〔結着樹脂(非晶性樹脂および結晶性樹脂)〕
結着樹脂としては、トナーに用いられている従来公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、ポリエステル樹脂;ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびその置換体の重合体;スチレン-p-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタレン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体、スチレン樹脂;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ(メタ)アタリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン樹脂、エチレン-ノルボルネン共重合体などの環状オレフィン共重合体、ジエン系樹脂、シリコーン樹脂、ジエン系樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、マレイン酸樹脂、クマ口ン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族石油樹脂などが挙げられる。これらの中で、ポリエステル樹脂およびスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を好適に用いることができる。ポリエステル樹脂としては、例えば、芳香族ジカルボン酸とアルキレンエーテル化ビスフェノールAとの共重合ポリエステルなどを挙げることができる。スチレン-(メタ)アタリル酸エステル共重合体としては、例えば、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体などを挙げることができる。
【0060】
即ち、本発明の白色トナーは、上記した平板状粒子および白色着色剤を含み、さらに結着樹脂を含有する。前記結着樹脂は、上記したようにトナーに用いられている従来公知のものを用いることができ、好ましくは結晶性樹脂と非晶性樹脂とを含むものである。本明細書において、「結着樹脂が結晶性樹脂を含む」とは、結着樹脂が結晶性樹脂そのものを含む態様であってもよいし、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂における結晶性ポリエステル重合セグメントやハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂における結晶性ポリエステル重合セグメントのように、他の樹脂中に含まれるセグメントを含む態様であってもよい。また本明細書において、「結着樹脂が非晶性樹脂を含む」とは、結着樹脂が、非晶性樹脂そのものを含む態様であってもよいし、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂における非晶性重合セグメントやハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂における非晶性ポリエステル重合セグメントのように、他の樹脂中に含まれるセグメントを含む態様であってもよい。
【0061】
〔結晶性樹脂〕
本発明において、結晶性樹脂とは、示差走査熱量計(DSC)で測定した示差熱量曲線において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、DSC測定において、昇温速度10℃/分で測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。なお、DSC測定は、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製:Diamond DSC)を用い、この装置の検出部の温度補正にはインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。
【0062】
外添剤以外のトナーの全量、即ちトナー母体粒子に対する結晶性樹脂の含有量は、十分な低温定着性および耐熱保管性を得る観点から、トナー全体に対して好ましくは1質量%以上40質量%以下、より好ましくは5質量%以上30質量%以下である。これにより、結着樹脂のシャープメルト性を向上させて、トナーの低温定着性を向上させるという効果を得つつ、耐熱性の低下を抑制することができる。また、結着樹脂が非晶性ビニル樹脂を含む場合に、結晶性樹脂をトナー母体粒子中で均一に分散させ、結晶化を十分に抑えることができる。結晶性樹脂の含有量が1質量%以上であれば、十分な可塑効果が得られ、低温定着性が十分となるため好ましい。当該含有量が40質量%以下であれば、トナーとしての熱的安定性や物理的なストレスに対する安定性や耐熱保管性が十分となるため好ましい。
【0063】
また、白色トナーが結着樹脂として結晶性樹脂を含む場合、結晶性樹脂の全結着樹脂に対する含有量を2.0質量%以上20質量%以下の範囲内としてもよい。
【0064】
上記結晶性樹脂は、低温定着性および光沢度安定性の観点から、数平均分子量(Mn)が、3,000以上12,500以下であることが好ましく、4,000以上11,000以下であることがより好ましい。上記結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、10,000以上100,000以下であることが好ましく、15,000以上80,000以下であることがより好ましく、20,000以上50,000以下であることが特に好ましい。上記MwおよびMnが小さすぎると、定着画像の強度が不足したり、乳化液撹拌中に結晶性樹脂が粉砕されたり、過度な可塑効果によりトナーのガラス転移温度Tgが低下して、トナーの熱的安定性が低下したりすることがある。また、上記MwおよびMnが大きすぎると、シャープメルト性が発現し難くなり、定着温度が高くなりすぎることがある。上記MwおよびMnは、以下のようにゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した分子量分布から求めることができる。
【0065】
(結晶性樹脂の分子量の測定方法)
試料を濃度0.1mg/mLとなるようにテトラヒドロフラン(THF)中に添加し、40℃まで加温して完全に溶解させた後、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して、試料液(サンプル)を調製する。その後、下記条件にて測定を行った。詳しくは、GPC装置HLC-8220GPC(東ソー株式会社製)およびカラム「TSKgelSuperH3000」(東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒(溶離液)としてTHFを流速0.6mL/分で流す。キャリア溶媒とともに、調製した試料液100μLをGPC装置内に注入し、示差屈折率検出器(RI検出器)を用いて試料を検出する。そして、単分散のポリスチレン標準粒子の10点を用いて測定した検量線を用いて、試料の分子量分布を算出する。また、データ解析においては、上記フィルター起因のピークが確認された場合には、当該ピークの手前まででベースラインを設定し解析したデータを試料の分子量とする。
【0066】
測定機種:東ソー株式会社製 GPC装置HLC-8220GPC
カラム:東ソー株式会社製 「TSKgelSuperH3000」
溶離液:THF
温度:カラム恒温槽 40.0℃
流速:0.6ml/min
濃度:0.1mg/mL(0.1wt/vol%)
検量線:東ソー株式会社製 標準ポリスチレン試料
注入量:100μl
溶解性:完全溶解(40℃加温)
前処理:0.2μmのフィルターでろ過
検出器:示差屈折計(RI)。
【0067】
結晶性樹脂は、一種でもそれ以上でもよい。結晶性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、結晶性樹脂による主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂について、この樹脂が上記のように明確な吸熱ピークを示すものであれば、本発明でいう結晶性樹脂に該当するものとする。本発明に係る結晶性樹脂の例としては、結晶性ポリオレフィン樹脂、結晶性ポリジエン樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリアセタール樹脂、結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂、結晶性ポリブチレンテレフタレート樹脂、結晶性ポリフェニレンサルファイド樹脂、結晶性ポリエーテルエーテルケトン樹脂、結晶性ポリテトラフルオロエチレン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、使い易さの点や十分な低温定着性および光沢均一性を得る観点から結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。結晶性ポリエステル樹脂は、熱定着時に融解して非晶性樹脂の可塑化剤として働くため、低温定着性を向上させることができることから好ましい。
【0068】
より低い温度でトナー像を定着させる低温定着性向上の観点から、白色トナーは、結着樹脂が結晶性樹脂を含み、前記結晶性樹脂が、ポリエステル樹脂であることが好ましい。白色トナーが結着樹脂として結晶性樹脂を含み、前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂であることがより好ましい。また、低温定着性およびトナーの耐熱保存性の観点からは結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂および非晶性樹脂を組み合わせて用いることが好ましく、結晶性ポリエステル樹脂とビニル樹脂とを組み合わせて用いることがより好ましい。
【0069】
<結晶性ポリエステル樹脂>
結晶性ポリエステル樹脂とは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、実施例に記載の示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/分で測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。かかる結晶性ポリエステル樹脂では、使い易さに優れ、十分な低温定着性および光沢均一性を得ることができる。また、結晶性ポリエステル樹脂は、熱定着時に融解して非晶性樹脂の可塑化剤として働くため、低温定着性を向上させることができる。また、結晶性ポリエステル樹脂は、一種でもそれ以上の種類を用いてもよい。
【0070】
結晶性ポリエステル樹脂は、上記定義したとおりであれば特に限定されず、例えば、結晶性ポリエステル樹脂による主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂について、この樹脂が上記のように明確な吸熱ピークを示すものであれば、本発明でいう結晶性ポリエステル樹脂に該当する。
【0071】
結晶性ポリエステル樹脂の好ましい数平均分子量(Mn)、および重量平均分子量(Mw)は、上記した結晶性樹脂の場合と同様である。
【0072】
結晶性ポリエステル樹脂の酸価(AV)は5~70mgKOH/gが好ましい。該酸価は、JIS K2501:2003に記載の方法に準拠して測定できる。
【0073】
結着樹脂が結晶性ポリエステル樹脂を含む場合、結着樹脂全量に対する結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、2質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましく、7質量%以上15質量%がさらに好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、2質量%以上であれば、低温定着性に優れる。結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、20質量%以下であれば、耐熱性に優れる。
【0074】
結晶性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分および多価アルコール成分から生成される。多価カルボン酸成分および多価アルコール成分の価数としては、好ましくはそれぞれ2~3であり、特に好ましくはそれぞれ2である。
【0075】
(多価カルボン酸)
多価カルボン酸とは、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。上記多価カルボン酸の例には、ジカルボン酸が含まれる。このジカルボン酸は、一種でもそれ以上でもよく、脂肪族ジカルボン酸であることが好ましく、芳香族ジカルボン酸をさらに含んでいてもよい。脂肪族ジカルボン酸は、直鎖型であることが、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を高める観点から好ましい。
【0076】
上記脂肪族ジカルボン酸の例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸(ヘキサン二酸)、ピメリン酸、スベリン酸(オクタン二酸)、アゼライン酸、セバシン酸(デカン二酸)、n-ドデシルコハク酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸(テトラデカン二酸)、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸、これらの低級アルキルエステル、およびこれらの酸無水物が含まれる。中でも、低温定着性および転写性の両立の効果が得られやすい観点から、炭素数6以上16以下の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、さらに炭素数10以上14以下の脂肪族ジカルボン酸がより好ましい。
【0077】
上記芳香族ジカルボン酸の例には、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸および4,4’-ビフェニルジカルボン酸が含まれる。中でも、入手容易性および乳化容易性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸またはt-ブチルイソフタル酸が好ましい。
【0078】
多価カルボン酸としては、上記以外にも、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸;およびこれらカルボン酸化合物の無水物、あるいは炭素数1~3のアルキルエステルなどが挙げられる。
【0079】
上記した多価カルボン酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
結晶性ポリエステル樹脂における上記ジカルボン酸由来の構成単位に対する脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位の含有量は、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を十分に確保する観点から、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
【0081】
(多価アルコール)
多価アルコールとは、1分子中に水酸基を2個以上含有する化合物である。上記多価アルコール成分の例には、ジオールが含まれる。ジオールは、一種でもそれ以上でもよく、脂肪族ジオールであることが好ましく、それ以外のジオールをさらに含んでいてもよい。脂肪族ジオールは、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を高める観点から、直鎖型であることが好ましい。
【0082】
上記脂肪族ジオールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオールおよび1,20-エイコサンジオールが含まれる。中でも、低温定着性および転写性の両立との効果が得られやすい観点から、炭素数が2以上20以下の脂肪族ジオールが好ましく、さらに炭素数が4以上12以下の脂肪族ジオールがより好ましい。
【0083】
その他のジオールの例には、二重結合を有するジオール、およびスルホン酸基を有するジオールが含まれる。具体的には、二重結合を有するジオールの例には、1,4-ブテンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、3-ブテン-1,6-ジオールおよび4-ブテン-1,8-ジオールが含まれる。
【0084】
3価以上の多価アルコールの例には、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどが挙げられる。
【0085】
多価アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
結晶性ポリエステル樹脂におけるジオール由来の構成単位に対する脂肪族ジオール由来の構成単位の含有量は、トナーの低温定着性および最終的に形成される画像の光沢性を高める観点から、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
【0087】
結晶性ポリエステル樹脂のモノマーにおける上記ジオールと上記ジカルボン酸との割合は、ジオールのヒドロキシ基[OH]とジカルボン酸のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]で2.0/1.0以上かつ1.0/2.0以下であることが好ましく、1.5/1.0以上かつ1.0/1.5以下であることがより好ましく、1.3/1.0以上かつ1.0/1.3以下であることが特に好ましい。
【0088】
上記結晶性ポリエステル樹脂を構成するモノマーは、直鎖脂肪族モノマーを50質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましい。芳香族モノマーを用いた場合には、結晶性ポリエステル樹脂の融点(吸熱ピークのピークトップの温度)が高いものとなることが多く、分岐型の脂肪族モノマーを用いた場合には、結晶性が低くなることが多い。したがって、上記モノマーに直鎖脂肪族モノマーを用いることが好ましい。
【0089】
結晶性ポリエステル樹脂は、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸および多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより合成することができる。
【0090】
結晶性ポリエステル樹脂の合成に使用可能な触媒は、一種でもそれ以上でもよく、その例には、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウムなどの第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウムなどの金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;および、アミン化合物;が含まれる。
【0091】
具体的には、スズ化合物の例には、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、およびこれらの塩が含まれる。チタン化合物の例には、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;および、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどのチタンキレートが含まれる。ゲルマニウム化合物の例には、二酸化ゲルマニウムが含まれ、アルミニウム化合物の例には、ポリ水酸化アルミニウムなどの酸化物、アルミニウムアルコキシド、およびトリブチルアルミネートが含まれる。
【0092】
結晶性ポリエステル樹脂の重合温度は、150℃以上250℃以下であることが好ましい。また、重合時間は、0.5時間以上10時間以下であることが好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
【0093】
なお、上記結晶性樹脂の構造、構成モノマーは、結晶性樹脂の結晶化度や融解熱量に影響を与える。結晶性樹脂の結晶化度を定着に好ましい範囲に調整する観点から、上記結晶性樹脂は、以下に説明するハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、一種でもそれ以上でもよい。また、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、上記結晶性ポリエステル樹脂の全量と置き換えられていてもよいし、一部と置き換えられていてもよい。
【0094】
(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂)
本発明において、結晶性樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。さらに結晶性樹脂の一つは、結晶性ポリエステル樹脂の構造と非晶性樹脂の構造とを含有するハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂であるのが好ましい。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂はハイブリッド構造を取ることで、非晶性樹脂との相溶性が高まり、結着樹脂中でより微分散状態を保つことができ、定着時に結晶性樹脂のシャープメルト性がより発揮され、低温定着性が向上する。また、トナー母体粒子がコアシェル構造を有する場合、コア部にハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含有させることにより、トナー粒子表面に結晶性ポリエステル樹脂が露出し難くなることから好ましい。
【0095】
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル重合セグメントと、ポリエステル重合セグメント以外の非晶性重合セグメントとが化学的に結合している構造を有する樹脂である。結晶性ポリエステル重合セグメントとは、結晶性ポリエステル樹脂に由来する部分を意味する。すなわち、前述した結晶性ポリエステル樹脂を構成する分子鎖と同じ化学構造の分子鎖を意味する。また、非晶性重合セグメントとは、非晶性樹脂に由来する部分を意味する。すなわち、後述する非晶性樹脂を構成する分子鎖と同じ化学構造の分子鎖を意味する。
【0096】
(高分子量体であるハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の分子量)
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、20,000以上50,000以下であるのが好ましい。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂のMwを50,000以下とすることにより、十分な低温定着性を得ることができる。一方、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂のMwを20,000以上とすることにより、トナー保管時において当該ハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との相溶が過剰に進行することが抑制され、トナー同士の融着による画像不良を効果的に抑制することができる。かかる分子量の測定は、上述した結晶性樹脂の分子量の測定方法を適用できる。
【0097】
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、十分な低温定着性および優れた長期保管安定性を確実に両立し得るという観点から、3,000以上12,500以下であると好ましく、4,000以上11,000以下であるとより好ましい。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂のMnを12,500以下とすることにより、十分な低温定着性を得ることができる。一方、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂のMnを3,000以上とすることにより、トナー保管時において当該ハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との相溶が過剰に進行することが抑制され、トナー同士の融着による画像不良を効果的に抑制することができる。かかる分子量の測定は、上述した結晶性樹脂の分子量の測定方法を適用できる。
【0098】
結着樹脂がハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含む場合、結着樹脂全量に対するハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、2質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましく、7質量%以上15質量%がさらに好ましい。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、2質量%以上であれば、低温定着性に優れる。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、20質量%以下であれば、耐熱性に優れる。
【0099】
化学的に結合している構造についても特に制限はなく、ブロック共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよい。結晶性ポリエステル重合セグメントが、非晶性重合セグメントを主鎖として、グラフト化されていると好ましい。すなわち、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、主鎖として前記非晶性重合セグメントを有し、側鎖として前記結晶性ポリエステル重合セグメントを有するグラフト共重合体であると好ましい。
【0100】
以下、かような構造を有するハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂について説明する。
【0101】
<結晶性ポリエステル重合セグメント>
結晶性ポリエステル重合セグメントとは、結晶性ポリエステル樹脂に由来する部分を指す。すなわち、結晶性ポリエステル樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。
【0102】
結晶性ポリエステル重合セグメントは、上記した結晶性ポリエステル樹脂と同様であり、前述した多価カルボン酸と、多価アルコールとの重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂に由来する部分である。結晶性ポリエステル重合セグメントは、多価カルボン酸および多価アルコールから、前述した結晶性ポリエステル樹脂と同様に合成され得る。なお、結晶性ポリエステル重合セグメントを構成する多価カルボン酸成分および多価アルコール成分については、上記の結晶性ポリエステル樹脂で説明した「多価カルボン酸」と「多価アルコール」項目の内容と同様であるため、説明を省略する。
【0103】
結晶性ポリエステル重合セグメントの含有量は、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の全量に対して80質量%以上98質量%以下であることが好ましい。上記範囲とすることにより、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に十分な結晶性を付与することができる。なお、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(あるいはトナー)中の各セグメントの構成成分およびその含有量は、例えば、核磁気共鳴(NMR)測定、メチル化反応熱分解ガスクロマトグラフィー/質量分析法(Py-GC/MS)などの公知の分析方法を利用することにより特定することができる。
【0104】
結晶性ポリエステル重合セグメントは、モノマーに不飽和結合を有するモノマーをさらに含むことが、非晶性重合セグメントとの化学的な結合部位を当該セグメント中に導入する観点から好ましい。不飽和結合を有するモノマーは、例えば二重結合を有する多価アルコールであり、その例には、メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3-ヘキセンジオイック酸、3-オクテンジオイック酸などの二重結合を有する多価カルボン酸;2-ブテン-1,4-ジオール、3-ブテン-1,6-ジオールおよび4-ブテン-1,8-ジオールが含まれる。上記結晶性ポリエステル重合セグメントにおける上記不飽和結合を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は、0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0105】
なお、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂には、さらにスルホン酸基、カルボキシ基、ウレタン基などの官能基が導入されていてもよい。上記官能基の導入は、上記結晶性ポリエステル重合セグメント中でもよいし、上記非晶性重合セグメント中であってもよい。
【0106】
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、上記結晶性ポリエステル重合セグメントの他に、非晶性重合セグメントを含む。グラフト共重合体とすることにより、結晶性ポリエステル重合セグメントの配向を制御しやすくなり、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に十分な結晶性を付与することができる。
【0107】
<非晶性重合セグメント>
非晶性重合セグメントとは、非晶性樹脂に由来する部分を指す。すなわち、非晶性樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。非晶性重合セグメントは、本発明における結着樹脂に含まれうる非晶性樹脂と、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂との親和性を高める。それにより、ハイブリッド樹脂が非晶性樹脂中に取り込まれやすくなり、トナーの帯電均一性がより一層向上する。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(あるいはトナー)中の非晶性重合セグメントの構成成分およびその含有量は、例えば、核磁気共鳴(NMR)測定、メチル化反応熱分解ガスクロマトグラフィー/質量分析法(Py-GC/MS)などの公知の分析方法を利用することにより特定することができる。
【0108】
また、非晶性重合セグメントは、当該セグメントと同じ化学構造および分子量を有する樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する重合セグメントである。非晶性重合セグメントは、非晶性樹脂と同様に、DSCの1回目の昇温過程におけるガラス転移温度(Tg)が、30℃以上80℃以下であることが好ましく、40℃以上65℃以下であることがより好ましい。なお、当該ガラス転移温度(Tg)は、非晶性樹脂のTgと同様の方法で測定することができる。
【0109】
非晶性重合セグメントは、結着樹脂に含まれる非晶性樹脂(例えば、ビニル樹脂など)と同種の樹脂で構成されることが、結着樹脂との親和性を高め、トナーの帯電均一性を高める観点から好ましい。このような形態とすることにより、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂と非晶性樹脂との親和性がより向上する。「同種の樹脂」とは、繰り返し単位中に特徴的な化学結合を有する樹脂同士のことを意味する。
【0110】
「特徴的な化学結合」とは、物質・材料研究機構(NIMS)物質・材料データベース(http://polymer.nims.go.jp/PoLyInfo/guide/jp/term_polymer.html)に記載の「ポリマー分類」に従う。すなわち、ポリアクリル、ポリアミド、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリジエン、ポリエステル、ポリハロオレフィン、ポリイミド、ポリイミン、ポリケトン、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフェニレン、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリビニルおよびその他のポリマーの計22種によって分類されたポリマーを構成する化学結合を「特徴的な化学結合」という。
【0111】
また、樹脂が共重合体である場合における「同種の樹脂」とは、共重合体を構成する複数のモノマー種の化学構造において、上記化学結合を有するモノマー種を構成単位としている場合、特徴的な化学結合を共通に有する樹脂同士を意味する。したがって、樹脂自体の示す特性が互いに異なる場合や、共重合体中を構成するモノマー種のモル成分比が互いに異なる場合であっても、特徴的な化学結合を共通に有していれば同種の樹脂とみなす。
【0112】
たとえば、スチレン、ブチルアクリレートおよびアクリル酸によって形成される樹脂(または重合セグメント)と、スチレン、ブチルアクリレートおよびメタクリル酸によって形成される樹脂(または重合セグメント)とは、少なくともポリアクリルを構成する化学結合を有しているため、これらは同種の樹脂である。さらに例示すると、スチレン、ブチルアクリレートおよびアクリル酸によって形成される樹脂(または重合セグメント)と、スチレン、ブチルアクリレート、アクリル酸、テレフタル酸およびフマル酸によって形成される樹脂(または重合セグメント)とは、互いに共通する化学結合として、少なくともポリアクリルを構成する化学結合を有している。従って、これらは同種の樹脂である。
【0113】
さらに、非晶性重合セグメントは、前述した両性化合物をモノマーにさらに含有することが、上記結晶性ポリエステル重合セグメントとの化学的な結合部位を上記非晶性重合セグメントに導入する観点から好ましい。非晶性重合セグメントにおける上記両性化合物に由来する構成単位の含有量は、0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0114】
上記ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂における上記非晶性重合セグメントの含有量は、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に十分な結晶性を付与する観点から、2質量%以上20質量%以下であることが好ましく、3質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましく、7質量%以上9質量%以下であることが特に好ましい。
【0115】
非晶性重合セグメントを構成する樹脂成分は特に制限されないが、例えば、ビニル重合セグメント、ウレタン重合セグメント、ウレア重合セグメントなどが挙げられる。なかでも、熱可塑性を制御しやすいという理由から、ビニル重合セグメントが好ましい。またビニル重合セグメントを用いる場合、非晶性樹脂の中でも好ましいビニル樹脂を結着樹脂中、最も多くの割合を占めるように用いることで、当該ビニル樹脂との相溶性が高まり、結着樹脂中でより微分散状態を保つことができる。これにより、定着時に結晶性樹脂のシャープメルト性がより発揮されるため好ましい。ビニル重合セグメントは、ビニル樹脂と同様にして合成され得る。
【0116】
ビニル重合セグメントとしては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、アクリル酸エステル重合セグメント、スチレン-アクリル酸エステル重合セグメント、エチレン-酢酸ビニル重合セグメントなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
上記のビニル重合セグメントのなかでも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン-アクリル酸エステル重合セグメント(単にスチレンアクリル重合セグメントともいう)が好ましい。したがって、以下では、非晶性重合セグメントとしてのスチレンアクリル重合セグメントについて説明する。
【0118】
〔スチレンアクリル重合セグメント〕
スチレンアクリル重合セグメントは、少なくとも、スチレン単量体と、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、を付加重合させて形成されるものである。ここでいうスチレン単量体は、CH2=CH-C6H5の構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものを含むものである。また、ここでいう(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH2=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル化合物や、メタクリル酸エステル化合物の他に、アクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体等の構造中に公知の側鎖や官能基を有するエステル化合物を含むものである。
【0119】
以下に、スチレンアクリル重合セグメントの形成が可能なスチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例を示すが、本発明で使用されるスチレンアクリル重合セグメントの形成に使用可能なものは以下に限定されない。
【0120】
(スチレン単量体)
スチレン単量体の具体例としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン等が挙げられる。これらスチレン単量体は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0121】
((メタ)アクリル酸エステル単量体)
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。これらのうち、長鎖アクリル酸エステル単量体を使用することが好ましい。具体的には、メチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
【0122】
なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸エステル単量体」とは、「アクリル酸エステル単量体」と「メタクリル酸エステル単量体」とを総称したもので、例えば、「(メタ)アクリル酸メチル」は「アクリル酸メチル」と「メタクリル酸メチル」とを総称したものである。
【0123】
これらのアクリル酸エステル単量体またはメタクリル酸エステル単量体は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができる。すなわち、スチレン単量体と2種以上のアクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、スチレン単量体と2種以上のメタクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、あるいは、スチレン単量体とアクリル酸エステル単量体およびメタクリル酸エステル単量体とを併用して共重合体を形成することのいずれも可能である。
【0124】
スチレンアクリル重合セグメント中のスチレン単量体に由来する構成単位の含有量は、スチレンアクリル重合セグメントの全量に対し、40質量%以上90質量%以下であることが、ハイブリッド樹脂の可塑性を制御することが容易となる観点から好ましい。また、また、同様の観点から、スチレンアクリル重合セグメント中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有量は、スチレンアクリル重合セグメントの全量に対し、10質量%以上60質量%以下であることが好ましい。
【0125】
さらに、スチレンアクリル重合セグメントは、上記スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体の他、上記結晶性ポリエステル重合セグメントに化学的に結合するための化合物が付加重合されてなると好ましい。具体的には、上記結晶性ポリエステル重合セグメントに含まれる、多価アルコール成分由来のヒドロキシル基[-OH]または多価カルボン酸成分由来のカルボキシル基[-COOH]とエステル結合する化合物を用いると好ましい。したがって、スチレンアクリル重合セグメントは、上記スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体に対して付加重合可能であり、かつ、カルボキシル基[-COOH]またはヒドロキシル基[-OH]を有する化合物をさらに重合してなると好ましい。
【0126】
かような化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシル基を有する化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する化合物が挙げられる。
【0127】
スチレンアクリル重合セグメント中の上記化合物に由来する構成単位の含有量は、上記結晶性ポリエステル重合セグメントとの化学的な結合部位をスチレンアクリル重合セグメントに導入する観点からスチレンアクリル重合セグメントの全量に対し、0.5質量%以上20質量%以下であると好ましい。
【0128】
スチレンアクリル重合セグメントの形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系またはジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。
【0129】
(アゾ系またはジアゾ系重合開始剤)
アゾ系またはジアゾ系重合開始剤としては、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0130】
(過酸化物系重合開始剤)
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、ジクミルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2-ビス-(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス-(t-ブチルパーオキシ)トリアジン等が挙げられる。
【0131】
また、乳化重合法で樹脂粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩、過酸化水素等が挙げられる。
【0132】
(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の製造方法)
本発明に係る結着樹脂に含まれるハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、上記結晶性ポリエステル重合セグメントと、非晶性重合セグメントとを化学結合させた構造の重合体を形成することが可能な方法であれば、特に制限されるものではない。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の具体的な製造方法としては、例えば、以下に示す第1から第3までの製造方法によって製造することができる。
【0133】
(第1の製造方法)
第1の製造方法は、予め合成された非晶性重合セグメントの存在下で結晶性ポリエステル重合セグメントを合成する重合反応を行ってハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を製造する方法である。
【0134】
(第2の製造方法)
第2の製造方法は、結晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントとをそれぞれ形成しておき、これらを結合させてハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を製造する方法である。
【0135】
(第3の製造方法)
第3の製造方法は、結晶性ポリエステル重合セグメントの存在下で非晶性重合セグメントを合成する重合反応を行ってハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を製造する方法である。
【0136】
上記第1から第3までの製造方法の中でも、第1の製造方法は、非晶性重合鎖(非晶性樹脂鎖)に結晶性ポリエステル重合鎖(結晶性ポリエステル樹脂鎖)をグラフト化した構造のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を合成しやすいことや生産工程を簡素化できるため好ましい。第1の製造方法は、非晶性重合セグメントを予め形成してから結晶性ポリエステル重合セグメントを結合させるため、結晶性ポリエステル重合セグメントの配向が均一になりやすい。したがって、上記トナーに適したハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を確実に合成する観点から好ましい。
【0137】
〔非晶性樹脂〕
白色トナーは、結着樹脂として非晶性樹脂を含むことが好ましい。非晶性樹脂は、上記の結晶性を有さない樹脂である。トナー中に非晶性樹脂を含むことにより、加熱定着の際、結晶性樹脂と非晶性樹脂とが相溶し、トナーの低温定着性が向上する。
【0138】
非晶性樹脂は、トナー粒子または非晶性樹脂の示差走査熱量測定(DSC)を行ったときに、得られる吸熱曲線において、融点を有さず(即ち、昇温時の前述の明確な吸熱ピークがなく)、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂である。
【0139】
なお、上記非晶性樹脂のTgは、35℃以上80℃以下であることが好ましく、45℃以上65℃以下であることがより好ましい。特に、低温定着性と耐ホットオフセット性や耐熱性を高いバランスで保つことができることから、白色トナーがコアシェル構造を有するのが好ましい。さらに当該コアシェル構造のコアに3層構造の離型剤(ワックス)含有非晶性樹脂(例えば、離型剤含有非晶性ビニル樹脂)の粒子が含まれる場合、当該粒子の最外層を構成する非晶性樹脂のTgは、低温定着性と耐ホットオフセット性をより高いバランスで保つ観点から、55℃以上65℃以下の範囲であるのが好ましい。
【0140】
上記ガラス転移温度は、ASTMD3418-82に規定された方法(DSC法)にしたがって測定することができる。測定には、DSC-7示差走査カロリメーター(パーキンエルマー社製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラ(パーキンエルマー社製)などを用いることができる。
【0141】
上記非晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、非晶性樹脂の可塑性を制御しやすい観点から、20,000以上150,000以下であることが好ましく、25,000以上130,000以下であることがより好ましい。また、非晶性樹脂の数平均分子量(Mn)は、非晶性樹脂の可塑性を制御しやすい観点から、3,000以上150,000以下であることが好ましく、8,000以上70,000以下であることがより好ましい。非晶性樹脂の分子量は、上記した結晶性樹脂の分子量の測定方法と同様にして行うことができる。
【0142】
上記非晶性樹脂と上記結晶性樹脂との質量比(非晶性樹脂/結晶性樹脂)は(98/2)~(80/20)の範囲であることが好ましく、より好ましくは(95/5)~(80/20)の範囲である。質量比が上記範囲にあることにより、形成されるトナー粒子の表面に結晶性樹脂が露出せず、または、露出してもその量が極めて少なく、かつ、低温定着性を図ることができるだけの量の結晶性樹脂をトナー粒子に導入することができる。
【0143】
非晶性樹脂は、上述した結晶性樹脂とともに結着樹脂として用いられて、トナー母体粒子を構成することが好ましい。非晶性樹脂が含まれることにより、適度な定着画像強度、及び画像光沢が得られると共に温湿度の変動環境下においても良好な帯電特性を付与できるという利点が得られる。本発明に係る非晶性樹脂は、一種であってもよく数種類混合された状態であってもよい。また、非晶性樹脂の例として、非晶性ビニル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂またはハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂などが好ましく挙げられる。これらの非晶性樹脂は、公知の合成法または市販によって入手可能である。また、本発明に係るトナー母体粒子は、コアシェル構造を有する場合、トナー粒子中の分散状態の制御性や帯電特性の観点から、非晶性ビニル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とがコア部を構成することが好ましく、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂がシェル層を構成することが好ましい。
【0144】
上記非晶性樹脂は、一種でもそれ以上でもよい。非晶性樹脂の例には、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂およびスチレン-アクリル変性ポリエステル樹脂などの非晶性ポリエステル樹脂が含まれる。本実施の形態では、非晶性樹脂は、熱可塑性を制御しやすい観点から、非晶性ビニル樹脂(単に、ビニル樹脂ともいう)を含むのが好ましい。
【0145】
以下、ビニル樹脂について説明する。
【0146】
本発明では、結着樹脂中においてビニル樹脂が主成分であることが好ましい。これは、結晶性ポリエステル樹脂との組み合わせにおいてビニル樹脂が主成分であることで、相溶・非相溶の調整がしやすく、結着樹脂、特に主成分のビニル樹脂中で結晶性ポリエステル樹脂がより微分散状態を保つことができ、定着時に結晶性ポリエステル樹脂のシャープメルト性がより発揮されるためである。かかる観点から、ビニル樹脂の含有量は、結着樹脂の50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、85質量%以上が特に好ましい。ビニル樹脂を主成分(結着樹脂の50質量%以上)とすることで、結晶性樹脂との相溶性の調整がしやすく、低温定着性と耐熱性を高いバランスで保つことができる。なお、ビニル樹脂の含有量の上限は特に制限されないが、結着樹脂の98質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。
【0147】
本発明では、前記結着樹脂中においてビニル樹脂が主成分であり、非晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。これは、上記した理由によりビニル樹脂が主成分であることが好ましいが、結晶性樹脂との相溶性の調整において、非晶性ポリエステル樹脂を含むとより相溶性が調整しやすくなるためである。またコアシェル構造を考えた際に、非晶性ポリエステル樹脂の方が、耐熱性が優れているため非晶性ポリエステル樹脂を用いたシェルを設けたコアシェル構造のトナーは、耐熱性と低温定着性との両立という点で特に優れている。かかる観点から、トナー母体粒子に対する非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、2質量%以上20質量%以下が好ましく、3質量%以上18質量%以下がより好ましい。
【0148】
(ビニル樹脂)
本発明において、ビニル樹脂は、例えば、ビニル化合物の重合体であり、その例には、アクリル酸エステル樹脂、スチレン-アクリル酸エステル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、熱定着時の可塑性の観点から、スチレン-アクリル酸エステル樹脂(スチレンアクリル樹脂)が好ましい。なお、スチレンアクリル樹脂で用いられるスチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体は、上述した「スチレン単量体」、「(メタ)アクリル酸エステル単量体」の項目で説明した内容と同様のものを用いてもよい。
【0149】
スチレンアクリル樹脂は、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成される。スチレン単量体は、CH2=CH-C6H5の構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有するスチレン誘導体を含む。
【0150】
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH2=C(R1)COOR2(R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素数が1以上24以下のアルキル基を表す)で表されるアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの他に、これらのエステルの構造中に公知の側鎖や官能基を有するアクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体を含む。
【0151】
スチレン単量体の例には、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレンおよびp-n-ドデシルスチレンが含まれる。
【0152】
(メタ)アクリル酸エステル単量体の例には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレートおよびフェニルアクリレートなどのアクリル酸エステル単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル単量体;が含まれる。
【0153】
なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸エステル単量体」とは、「アクリル酸エステル単量体」と「メタクリル酸エステル単量体」との総称であり、それらの一方または両方を意味する。たとえば、「(メタ)アクリル酸メチル」は、「アクリル酸メチル」および「メタクリル酸メチル」の一方または両方を意味する。
【0154】
上記(メタ)アクリル酸エステル単量体は、一種でもそれ以上でもよい。たとえば、スチレン単量体と2種以上のアクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、スチレン単量体と2種以上のメタクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、および、スチレン単量体とアクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体とを併用して共重合体を形成すること、のいずれも可能である。
【0155】
上記スチレンアクリル樹脂の可塑性を制御する観点から、上記スチレンアクリル樹脂におけるスチレン単量体に由来する構成単位の含有量は、40質量%以上90質量%以下であることが好ましい。また、上記スチレンアクリル樹脂における(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有率は、10質量%以上60質量%以下であると好ましい。
【0156】
上記スチレンアクリル樹脂は、上記スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の他の単量体に由来する構成単位をさらに含有していてもよい。他の単量体は、多価アルコール由来のヒドロキシ基(-OH)または多価カルボン酸由来のカルボキシ基(-COOH)とエステル結合する化合物であることが好ましい。すなわち、スチレンアクリル樹脂は、上記スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体に対して付加重合可能であり、かつ、カルボキシ基またはヒドロキシ基を有する化合物(両性化合物)がさらに重合してなる重合体であることが好ましい。
【0157】
上記両性化合物の例には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等などのカルボキシ基を有する化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基を有する化合物;が含まれる。
【0158】
上記スチレンアクリル樹脂における上記両性化合物に由来する構成単位の含有量は、0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0159】
上記スチレンアクリル樹脂は、公知の油溶性または水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法によって合成することができる。油溶性の重合開始剤の例には、アゾ系またはジアゾ系重合開始剤、および、過酸化物系重合開始剤、が含まれる。具体的には、上記のスチレンアクリル重合セグメントの形成方法と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0160】
スチレンアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、20,000以上150,000以下の範囲内にあることが、また、数平均分子量(Mn)は、3,000以上150,000以下の範囲内にあることが、低温定着性と耐ホットオフセット性との両立の観点から好ましい。重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、上記結晶性樹脂の場合と同様に測定することができる。
【0161】
スチレンアクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、定着性と耐ホットオフセット性との両立の観点から、35℃以上80℃以下の範囲内にあることが好ましい。なお、ガラス転移温度は、上記非晶性樹脂の場合と同様に測定することができる。
【0162】
(ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂)
本発明にかかる結着樹脂は、ビニル樹脂との併用時に適度な相溶度が得られ、トナー粒子の形状制御性や定着後の画像強度が得られる等の観点から、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。本発明では、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を含むことで、相溶・非相溶および結晶化が調整し易いためである。なお、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂は、一部が変性された変性非晶性ポリエステル樹脂ともいえる。
【0163】
(ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の分子量)
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、20,000以上50,000以下であるのが好ましい。かかる分子量であれば、相溶・非相溶および結晶化がより調整しやすいためである。また、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、3,000以上12,500以下であるのが好ましい。かかる分子量の測定は、上述した結晶性樹脂の分子量の測定方法を適用できる。
【0164】
本発明において、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル重合セグメントと、非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメント、好ましくは非晶性ビニル重合セグメントとが化学的に結合した樹脂である。
【0165】
非晶性ポリエステル重合セグメントとは、非晶性ポリエステル樹脂に由来する部分を指す。すなわち、非晶性ポリエステル樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。また、非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメントとは、非晶性ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂に由来する部分を示す。非晶性ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂としては、たとえば、スチレンアクリル樹脂などのビニル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂などが挙げられる。非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメントは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに好適な非晶性ビニル重合セグメントとは、非晶性ビニル樹脂に由来する部分を指す。すなわち、非晶性ビニル樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。
【0166】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル重合セグメントと、非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメント、特に非晶性ビニル重合セグメントとを含むものであれば、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれの形態であってもよいが、グラフト共重合体であることが好ましい。グラフト共重合体とすることにより、最終的に得られるトナーが、良好な低温定着性を維持しつつ、耐ホットオフセット性、離型分離性が向上したものとなる。
【0167】
さらに、上記観点からは、非晶性ポリエステル重合セグメントが、非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメント、特に非晶性ビニル重合セグメントを主鎖として、グラフト化されている構造であることが好ましい。すなわち、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂は、主鎖として非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメント、特に非晶性ビニル重合セグメントを有し、側鎖として非晶性ポリエステル重合セグメントを有するグラフト共重合体であることが好ましい。このような形態とすることにより、最終的に得られるトナーが、良好な低温定着性を維持しつつ、耐ホットオフセット性、離型分離性がより向上したものとなる。
【0168】
結着樹脂がハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を含む場合、トナー母体粒子全量に対するハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、3質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0169】
(非晶性ポリエステル重合セグメント)
非晶性ポリエステル重合セグメントは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)と、2価以上のアルコール(多価アルコール成分)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂に由来する部分であって、DSCにおいて、明確な吸熱ピークが認められない重合セグメントをいう。
【0170】
非晶性ポリエステル重合セグメントは、上記定義したとおりであれば特に限定されない。例えば、非晶性ポリエステル重合セグメントによる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、非晶性ポリエステル重合セグメントを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂について、この樹脂を含むトナーが上記のように明確な吸熱ピークが認められないものであれば、その樹脂は、本発明でいう非晶性ポリエステル重合セグメントを有するハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂に該当する。
【0171】
(多価カルボン酸成分)
多価カルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β-メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン-3,5-ジエン-1,2-ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシフェニル酢酸、p-フェニレン二酢酸、m-フェニレンジグリコール酸、p-フェニレンジグリコール酸、o-フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル-p,p’-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸などのジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸などが挙げられる。これら多価カルボン酸は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
【0172】
これらの中でも、本発明の効果を得やすいという観点から、フマル酸、マレイン酸、メサコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸や、イソフタル酸やテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、コハク酸、トリメリット酸を用いることが好ましい。
【0173】
(多価アルコール成分)
また、多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンなどの3価以上のポリオールなどが挙げられる。これら多価アルコール成分は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
【0174】
これらの中でも、本発明の効果を得やすいという観点から、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコールが好ましい。
【0175】
上記の多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との使用比率は、多価アルコール成分のヒドロキシル基[OH]と多価カルボン酸成分のカルボキシル基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]において、1.5/1~1/1.5の範囲とすることが好ましく、1.2/1~1/1.2の範囲とすることがより好ましい。多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との使用比率が上記の範囲にあることにより、非晶性ポリエステル樹脂の酸価および分子量を制御することがより容易となる。
【0176】
非晶性ポリエステル重合セグメントの形成方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸成分および多価アルコール成分を重縮合する(エステル化する)ことにより当該重合セグメントを形成することができる。
【0177】
非晶性ポリエステル重合セグメントの製造の際に使用可能な触媒としては、上記(結晶性樹脂)の項で説明した触媒と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0178】
重合温度は特に限定されるものではないが、150℃以上250℃以下であることが好ましい。また、重合時間は特に限定されるものではないが、0.5時間以上10時間以下とすると好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
【0179】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂中の非晶性ポリエステル重合セグメントの含有量は、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の全量に対して50質量%以上99.9質量%以下であることが好ましく、70質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。上記範囲とすることにより、耐熱性を維持しながらより低温定着化が図れると共に、非晶性ビニル樹脂との親和性のバランス取りが可能という利点が得られる。なお、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂中の各重合セグメントの構成成分および含有割合は、例えば、NMR測定、メチル化反応Py-GC/MS測定により特定することができる。
【0180】
なお、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂には、さらにスルホン酸基、カルボキシル基、ウレタン基などの置換基が導入されていてもよい。上記置換基の導入は、非晶性ポリエステル重合セグメント中でもよいし、以下で詳説する非晶性ビニル重合セグメント中であってもよい。
【0181】
(非晶性重合セグメント)
非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメント(特に非晶性ビニル重合セグメント)は、結着樹脂に非晶性ビニル樹脂が含まれる場合に、該非晶性ビニル樹脂とハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂との親和性を制御することができる。
【0182】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂中(さらには、トナー中)に、非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメントを含有することは、例えば、NMR測定、メチル化反応Py-GC/MS測定を用いて化学構造を特定することによって確認することができる。
【0183】
また、非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメントは、当該重合セグメントと同じ化学構造および分子量を有する樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する重合セグメントである。このとき、当該ユニットと同じ化学構造および分子量を有する樹脂について、ガラス転移温度(Tg)が、35℃以上80℃以下であることが好ましく、45℃以上65℃以下であることがより好ましい。
【0184】
非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメントは、上記定義したとおりであれば特に限定されない。例えば、非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメントによる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメントを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂について、この樹脂を含むトナーが上記のような非晶性重合セグメントを有するものであれば、その樹脂は、本発明でいう非晶性重合セグメントを有するハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂に該当する。
【0185】
非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメントとしては、たとえば、ビニル化合物を重合したもの、ポリオール成分とイソシアネート成分とを重合したもの、尿素とホルムアルデヒドとを重合したものであれば特に制限されない。中でも、好適な非晶性重合セグメントとしては、ビニル化合物を重合して得られる非晶性ビニル重合セグメントが挙げられる。例えば、アクリル酸エステル重合セグメント、スチレン-アクリル酸エステル重合セグメント、エチレン-酢酸ビニル重合セグメントなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0186】
上記のビニル重合セグメントのなかでも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン-アクリル酸エステル重合セグメント(スチレンアクリル重合セグメント)が好ましい。また、非晶性ビニル樹脂の好適な形態はスチレン-アクリル樹脂であることから、非晶性ビニル重合セグメントもスチレンアクリル重合セグメントであることが好ましい。このような形態とすることにより、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂と非晶性ビニル樹脂との親和性がより向上し、トナー粒子の形状制御性が容易であるという利点が得られる。
【0187】
スチレンアクリル重合セグメントの形成に用いられる単量体や形成方法は、上記ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の項で説明した「スチレンアクリル重合セグメント」項目の内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0188】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂中の非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメントの含有量は、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の全量に対して、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。上記範囲とすることにより、コア部に非晶性ビニル樹脂が含まれた場合、該非晶性ビニル樹脂との親和性がより高くなり、最終的に得られるトナーが、良好な低温定着性と耐ホットオフセット性や耐熱性とをより高いバランスで保つことができる点で優れている。
【0189】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、上記非晶性ポリエステル重合セグメントと、非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメントとして好適な非晶性ビニル重合セグメントとを結合させた構造の重合体を形成することが可能な方法であれば、特に制限されるものではない。ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の具体的な製造方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
【0190】
(1)非晶性ビニル重合セグメントを予め重合しておき、当該非晶性ビニル重合セグメントの存在下で非晶性ポリエステル重合セグメントを形成する重合反応を行ってハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法である。
【0191】
(2)非晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性ビニル重合セグメントとをそれぞれ形成しておき、これらを結合させてハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法である。
【0192】
(3)非晶性ポリエステル重合セグメントを予め形成しておき、当該非晶性ポリエステル重合セグメントの存在下で非晶性ビニル重合セグメントを形成する重合反応を行ってハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法である。
【0193】
上記(1)~(3)の形成方法の中でも、(1)の方法は、非晶性ビニル重合セグメントに非晶性ポリエステル重合セグメントがグラフト化した構造であるハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を形成し易いことや生産工程を簡素化できるため好ましい。
【0194】
トナー中には、必要に応じて、離型剤、荷電制御剤などの内添剤;無機微粒子、有機微粒子、滑剤などの外添剤が含有されていてもよい。
【0195】
(離型剤(ワックス))
本実施形態では、トナーは、さらに離型剤(ワックス)を含むことが好ましい。離型剤には、公知のものを使用することができる。離型剤の例には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス;パラフィンワックス、サゾールワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス;および、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス、ベヘニルベヘネート(ベヘン酸ベヘニル)、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート、脂肪酸ポリグリセリンエステルなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックス;カルボニル基含有ワックス;重量平均分子量2,000~30,000の低分子量ポリエチレンなどが含まれる。上記ワックスは、ビニル樹脂と相溶化しやすい。このため、上記ワックスの可塑効果により、上記トナーのシャープメルト性を高め、十分な低温定着性を得ることができる。上記離型剤は、十分な低温定着性を得る観点から、エステル系ワックス(エステル系化合物)であることが好ましく、さらに耐熱性および低温定着性を両立させる観点から、直鎖状エステル系ワックス(直鎖状エステル系化合物)であることがより好ましい。これらの離型剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0196】
離型剤の融点は、十分な高温保存性、低温定着性及び離型性を確実に得る観点から、好ましくは40℃以上160℃以下であり、より好ましくは50℃以上120℃以下であり、さらに好ましくは70℃以上80℃以下の範囲である。離型剤の融点を上記範囲内にすることにより、トナーの耐熱保管性が確保されるとともに、低温で定着を行う場合でもコールドオフセット等を起こさずに安定したトナー画像の形成が行える。
【0197】
トナー中の離型剤の含有量は、トナー全量に対して、3質量%以上15質量%以下の範囲が好ましい。かような範囲であるとホットオフセット防止や分離性確保の効果がある。離型剤の含有量が3質量%以上であれば、分離性が向上するため好ましい。離型剤の含有量が15質量%以下であれば、耐熱性が向上するため好ましい。
【0198】
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては、公知の種々の化合物を用いることができる。荷電制御剤としては、例えば、プラス帯電用としてニグロシン系の電子供与性染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩、アルキルアミド、金属錯体、顔料、フッ素処理活性剤等、マイナス帯電用として電子受容性の有機錯体、塩素化パラフィン、塩素化ポリエステル、銅フタロシアニンのスルホニルアミン等を挙げることができる。
【0199】
荷電制御剤の含有量は、トナー中の結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上5質量部以下である。
【0200】
トナーは、いわゆる単層構造を有するものであってもよいし、コアシェル構造を有するものであってもよい。コアシェル構造を取ることで低温定着性と耐ホットオフセット性や耐熱性を高いバランスで保つことができることから、コアシェル構造を取るトナーであることが好ましい。一例を挙げれば、コア部は、上記した平板状粒子と白色着色剤と結着樹脂とを含んで構成されるものである。さらに、必要に応じて離型剤等その他の添加剤(内添剤)を含んでもよい。一例を挙げれば、シェル層は、非晶性樹脂を含んで構成されるものである。コア部は、非晶性ビニル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含む結着樹脂、上記した平板状粒子、白色着色剤、更に離型剤等の内添剤を含んで構成されることが好ましい。シェル層は、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂で構成することが好ましい。
【0201】
コアシェル構造は、シェル層がコア部の粒子表面を完全に被覆した構造のものに限定されるものではなく、例えば、シェル層がコア部の粒子表面を完全に被覆せず、所々コア部の粒子表面が露出しているものも含む。
【0202】
また、高温高湿環境下における帯電性を向上させるという観点から、トナーは、結晶性樹脂が表面に露出せず、トナー母体粒子の内部に含有されると共に、非晶性樹脂がトナー母体粒子の表面に露出した形態であると好ましい。このようなトナーの形態は、乳化凝集法によりトナー母体粒子を製造する際、各樹脂の添加のタイミング等によって制御することができる。
【0203】
トナーの形態(コアシェル構造の断面構造や結晶性ポリエステル樹脂の存在位置)は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型プローブ顕微鏡(SPM)等の公知の手段を用いて確認することが可能である。
【0204】
<トナー母体粒子の平均円形度>
低温定着性を向上させるという観点から、第一実施形態の白色トナーにおけるトナー母体粒子の平均円形度は、0.920以上1.000以下の範囲内であることが好ましく、0.940以上0.995以下の範囲内であることがより好ましい。
【0205】
一方、第二実施形態の白色トナーは、第一実施形態と同様の平均円形度を有していてもよいが、断面が円形に近い形状でなくてもよい。例えば、第二実施形態の白色トナーにおいて、トナー母体粒子は、長径平均粒子径が大きい平板状粒子の表面上に、白色着色剤や離型剤等を含む結着樹脂でコートした被覆層を有する平板状粒子に近い形状であってもよい。
【0206】
ここで、上記平均円形度は「FPIA-2100」(Sysmex社製)を用いて測定した値である。具体的には、トナー母体粒子を界面活性剤水溶液に湿潤させ、超音波分散を1分間行い、分散した後、「FPIA-2100」を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数4000個の適正濃度で測定を行う。円形度は下記式で計算される。
【0207】
【0208】
また平均円形度は、各粒子の円形度を足し合わせ、測定した全粒子数で割った算術平均値である。
【0209】
<トナー母体粒子の粒子径>
第一実施形態の白色トナーにおいて、トナー母体粒子の粒子径は、体積基準のメジアン径(D50)(体積平均粒子径)で3μm以上30μm以下であると好ましい。
図2Aは、第一実施形態の白色トナーを記録媒体である黒紙11上に転写した未定着状態のトナー画像を模式的に表した図面である。
図2Aに示すように、体積平均粒子径を上記範囲とすることにより、転写後も黒紙11上の白色トナー12A中の小粒子径の平板状粒子13Aが、複数ランダムに配向(含有)した状態を保持し得る。これにより、光の散乱機能と下地の色の影響を無くす機能とを有効に発現することができ、さらに白色トナーの付着量を低減することもできる。なお、
図2A中の符号14は白色着色剤を示す。また細線の再現性や、写真画像の高画質化が達成でき、トナー流動性も確保できる。ここで、トナー母体粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、例えば、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用のコンピュータシステムを接続した装置を用いて測定、算出することができる。
【0210】
第二実施形態の白色トナーにおいて、トナーの体積平均粒子径Dbは5μm以上30μm以下であり、かつDa<Dbであるのが好ましい。ここで、Daは、第二実施形態の白色トナー中の平板状粒子の長径平均粒子径である。
図2Bは、第二実施形態の白色トナーを記録媒体である黒紙11上に転写した未定着状態のトナー画像を模式的に表した図面である。
図2Bに示すように、トナーの体積平均粒子径Dbを上記範囲とすることにより、画像形成時に黒紙11上の白色トナー12B中の、表面に凹凸を有する大粒子径の平板状粒子13Bが黒紙11の平面と水平な方向に配向する。これにより、光の散乱機能と下地の色の影響を無くす機能とを有効に発現することができ、さらに白色トナーの付着量を低減することもできる。なお、
図2B中の符号14は白色着色剤を示す。また細線の再現性や、写真画像の高画質化が達成でき、トナー流動性も確保できる。ここで、トナーの体積平均粒子径Dbは、上記トナー母体粒子の体積基準のメジアン径(D50)の測定方法によって測定することができる。また、トナーが平板状形状またはそれに近い形状の場合には、上記した平板状粒子の長径平均粒子径の測定方法と同様にして測定することもできる。
【0211】
なお、
図2Cは、従来の二酸化チタンを白色着色剤として用いた白色トナーを黒紙11上に転写した未定着状態のトナー画像を模式的に表した図面である。
図2Cに示すように、従来、画像形成時に黒紙11上に白色トナー12Cを転写して十分な白色画像を得ようとすると、白色度が高い白色顔料を多量に使用する必要があった。さらに、白色トナー12Cの付着量も多くする必要があった。すなわち、従来の白色トナー12Cでは、結着樹脂と白色顔料14Cとの粒子界面の光の散乱により白色を出しており、高屈折率だと白色が出やすい。二酸化チタン14Cは高屈折粒子であるため、これまで白色顔料として使われていた。また、白色を発色させるためには、下地である黒紙11の影響を無くすため、上記した平板状粒子13Aや13Bを用いた白色トナー12Aや12Bに比して、多量の白色トナー12Cが必要であり、かつ白色度を高められる二酸化チタン14Cを用いる必要があった。
【0212】
トナー母体粒子の体積基準のメジアン径(D50)やトナーの体積平均粒子径Dbは、懸濁重合法や乳化凝集法などの重合法によるトナーの製造の場合、製造時の凝集・融着工程における凝集剤の濃度や溶剤の添加量、または融着時間、さらには樹脂成分の組成等によって制御することができる。混練粉砕法によるトナーの製造の場合、製造時の粉砕・分級工程等によって制御することができる。
【0213】
〔外添剤〕
トナーとしての帯電能、流動性、現像性、あるいはクリーニング性を向上させる観点から、流動化剤、帯電調整・表面抵抗調整剤、滑剤等の外添剤を施して使用することもできる。これらに使用する公知の無機粒子や有機粒子などの粒子や滑剤をトナー母体粒子の表面に外添剤として添加することできる。
【0214】
<無機粒子>
無機粒子の具体例としては、例えば、シリカ、ゾルゲルシリカ、アルミナ、チタニア、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。これらの無機粒子は、必要に応じて疎水化、帯電性コントロールの目的で、公知のシランカップリング剤や官能基を有するシランカップリング剤、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、その他の有機ケイ素化合物などの表面処理剤によって疎水化処理されていてもよい。なお、これら表面処理剤は、目的に応じて2種類以上を組み合わせて使用してもよいことはいうまでもない。無機粒子の大きさは、数平均一次粒子径で、2nm以上2000nm以下が好ましく、2nm以上500nm以下がより好ましく、2nm以上50nm以下がさらに好ましく、7nm以上30nm以下が特に好ましい。また、BET法による比表面積は、20m2/g以上500m2/g以下であることが好ましい。無機粒子の使用割合は、トナー全量に対して、0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましく、特に0.01質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。
【0215】
<有機粒子>
有機粒子の具体例としては、例えば、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体による有機粒子を使用することができる。上記有機粒子の大きさは、数平均一次粒子径で10nm以上2000nm以下であることが好ましく、その粒子形状は、例えば球形である。
【0216】
なお、無機粒子や有機粒子の数平均一次粒子径は、電子顕微鏡写真を用いて算出することができる。例えば、透過型電子顕微鏡で撮影した画像の画像処理によって求めることが可能である。あるいは走査型電子顕微鏡にてトナー試料の3万倍写真を撮影し、この写真画像をスキャナーにより取り込む。画像処理解析装置LUZEX(登録商標) AP(株式会社ニレコ製)にて、当該写真画像のトナー表面に存在する外添剤について2値化処理し、外添剤1種につき100個についての水平方向フェレ径を算出、その平均値を数平均一次粒子径としてもよい。好ましくは、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製、LA-750等)で測定し、その平均粒子径を求める。こうして求められた平均粒子径は、所謂、体積平均粒子径である。なお、電子顕微鏡を用いて無機粒子や有機粒子の平均粒子径を測定し、前記レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置による測定結果から求めた平均粒子径と比較して、それらの値が一致していることを確認する。さらに該無機粒子や有機粒子の凝集が生じていないことを確認することにより、該平均粒子径が一次粒子のものであると判断した場合に、上記平均粒子径を無機粒子や有機粒子の数平均一次粒子径とするものである。無機粒子や有機粒子の数平均一次粒子径は、例えば、分級や分級品の混合などによって調整することが可能である。
【0217】
滑剤は、クリーニング性や転写性をさらに向上させる目的で使用される。上記滑剤としては、例えば、テフロン(登録商標)、ポリフッ化ビニリデン、シリコーンオイル粒子(約40%のシリカ含有)、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウムなどの塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、リノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩などの高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。滑剤の大きさは、体積基準のメジアン径(体積平均粒子径)で0.3μm以上20μm以下であることが好ましく、0.5μm以上10μm以下であることがより好ましい。上記滑剤の体積基準のメジアン径は、JIS Z8825-1(2013年)に準じて決定されうる。これらの外添剤は、種々のものを組み合わせて使用してもよい。
【0218】
また、白色トナー粒子と逆極性の白色微粒子を現像性向上剤として少量用いてもよい。
【0219】
外添剤の含有量は、トナー全体に対して0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。上記外添剤は、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの公知の種々の混合装置を使用してトナー母体粒子の表面に付着させることができる。
【0220】
<白色トナーを用いた画像の白色度>
第一及び第二実施形態の白色トナーは、以下に示す「白色トナーを用いた画像の白色度の評価方法」により測定される、45度におけるL*(L45)と0度におけるL*(L0)との比(L45/L0)が1.1以上5.0以下であり、かつ前記L45が70以上であるのが好ましい。白色トナーを用いた画像の白色度の比(L45/L0)が5.0以下であれば、金属光沢感がなく、優れた白色画像が得られる。また、画像の白色度の比(L45/L0)が1.1以上であれば、トナー画像が不均一に形成されないので、優れた白色画像が得られる。かかる観点から、上記画像の白色度の比(L45/L0)は、1.5以上3.5以下であるのがより好ましい。また、L45は、70以上が好ましく、75以上がより好ましい。L45が70以上であれば、下地の色が見えてしまうことなく、隠ぺいすることができ、十分に白色に見える。L45が75以上であれば、下地の色の隠ぺい性がより高く、より白色に見える。また、L45は、用いた紙の影響を受ける。そのため紙種に依存しない評価として白色度(Lg)を用いてもよい。この白色度(Lg)の好ましい範囲は55以上75以下であり、より好ましくは60以上72以下である。ここで、白色度(Lg)=画像の白色度(L45)-紙の白色度(L45)で表される。そのため、実施例でも、紙の白色度(L45)の値を求めた上で、画像の白色度(L45)を求めて、表1では、画像の白色度(L45)を単に「白色度(L45)」として記載している。よって、上記に従えば、各実施例の白色度(Lg)を求めることができ、紙種に依存しない評価を行うこともできる。
【0221】
<白色トナーを用いた画像の白色度の評価方法>
「白色トナーを用いた画像の白色度の評価方法」は、明度が20~30の用紙を用いて、紙上で前記白色トナーを8g/m2の付着量で画像形成させ、熱定着させて得た画像について、L45/L0の測定として、観測方向や照射方向が変わると色が変化して見えるフロップ効果を生じる物体色の変角測色システムを用いて測定し、入射角を変えて角度毎に分光分布の測定を実施し、45度におけるL*(L45)と0度におけるL*(L0)を求める。測色の条件としては、光源D50-視野角10°積分球 SCI(正反射光含む)モードを用いる。
【0222】
〔白色トナーの製造方法〕
白色トナーを製造する方法としては、特に限定されず、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法など公知の方法が挙げられる。
【0223】
<混練粉砕法>
金属光沢を抑えるため平板状粒子を紙に対して平行に配向させない、製造容易性などの観点からは、混練粉砕法が好ましい。この混練粉砕法は、第一及び第二実施形態の白色トナーのいずれの製造方法にも好適に適用できる。以下、混練粉砕法について説明する。
【0224】
混練粉砕法は、結着樹脂、上記した第一又は第二実施形態の平板状粒子、白色顔料(白色着色剤)、必要に応じて離型剤(ワックス)や帯電制御剤、分散剤といった添加材料を混合機で乾式混合した後、混練機で熱溶融混練して均一分散させ、粉砕し分級するといった方法である。
【0225】
混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー(登録商標、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサー(川田株式会社製)、メカノミル(登録商標、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(川崎重工業株式会社製)等の装置などを利用することができる。
【0226】
混練機としては、例えば、TEM-100B(東芝機械株式会社製)、PCM-65/87(池貝株式会社製)等の1軸もしくは2軸のエクストルーダー、またはニーディックス(三井鉱山株式会社製)、2軸押出し機などのオープンロール方式のものを用いることができる。
【0227】
特に溶融混練操作においては、添加剤を効率よく分散させるために溶融時の樹脂粘度が下がりすぎないよう低温度での高シェア混練が望ましく、特にオープンロール方式のものなどが好ましい。
【0228】
また、トナー粒子の粉砕にはジェット気流を用いた衝突式気流粉砕機、機械式粉砕機等を用いることができ、風力等による分級を施して所定粒度に調整する。
【0229】
<重合法>
また、水溶液中でトナー粒子を生成する懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法等のいわゆる重合法によって得ることもできる。これらの重合法を用いることで、粒子径の均一性、形状の制御性、コアシェル構造形成の容易性に優れる。なかでも、上記効果に優れることから、乳化凝集法を採用することが好ましい。これらの重合法は、第一実施形態の白色トナーの製造方法に好適に適用できる。以下、乳化凝集法について説明する。
【0230】
<乳化凝集法>
乳化凝集法は、界面活性剤や分散安定剤によって分散された樹脂の粒子(以下、「樹脂粒子」ともいう)の分散液を、上記した第一又は第二実施形態の平板状粒子、白色着色剤の粒子、必要に応じて離型剤(ワックス)や帯電制御剤、分散剤といった添加剤などのトナー粒子構成成分(内添剤)の分散液と混合し、凝集剤を添加することによって所望のトナーの粒子径となるまで凝集させ、その後または凝集と同時に、樹脂粒子間の融着を行い、形状制御を行うことにより、トナー粒子を形成する方法である。
【0231】
ここで、樹脂粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成とする複数層で形成された複合粒子とすることもできる。
【0232】
樹脂粒子は、例えば、乳化重合法、ミニエマルション重合法、転相乳化法などにより製造、またはいくつかの製法を組み合わせて製造することができる。樹脂粒子に内添剤を含有させる場合には、中でもミニエマルション重合法を用いることが好ましい。
【0233】
トナー粒子中に内添剤を含有させる場合は、樹脂粒子に内添剤を含有したものとしてもよく、また、別途内添剤のみよりなる内添剤粒子の分散液を調製し、当該内添剤粒子を、樹脂粒子を凝集させる際に、共に凝集させてもよい。
【0234】
また、乳化凝集法によってはコアシェル構造を有するトナー粒子を得ることもできる。具体的に、コアシェル構造を有するトナー粒子は、先ず、コア部用の結着樹脂粒子と上記した第一又は第二実施形態の平板状粒子および白色着色剤を含む内添剤とを凝集(、融着)させて粒状のコア部を作製する。次いで、コア部の分散液中にシェル層用の結着樹脂粒子を添加して、コア部表面にシェル層用の結着樹脂粒子を凝集、融着させてコア部表面を被覆するシェル層を形成することにより得ることができる。
【0235】
乳化凝集法によりトナーを製造する場合、好ましい実施形態によるトナーの製造方法は、結着樹脂粒子分散液として結晶性樹脂粒子分散液および非晶性樹脂粒子分散液、ならびに第一又は第二実施形態の平板状粒子および白色着色剤を含む分散液(平板状粒子・白色着色剤分散液)を調製する工程(以下、調製工程とも称する)(1)と、結晶性樹脂粒子分散液、非晶性樹脂粒子分散液および平板状粒子・白色着色剤分散液を混合して凝集・融着させる工程(以下、凝集・融着工程とも称する)(2)と、を含む。
【0236】
以下、各工程について詳述する。
【0237】
(1)調製工程
工程(1)は、より詳細には下記結晶性樹脂粒子分散液調製工程、非晶性樹脂粒子分散液調製工程および着色剤分散液調製工程があり、また、必要に応じて、離型剤分散液調製工程などを含む。
【0238】
(1-1)結晶性樹脂粒子分散液調製工程および非晶性樹脂粒子分散液調製工程
結晶性樹脂粒子分散液調製工程は、トナー粒子を構成する結晶性樹脂を合成し、この結晶性樹脂を水系媒体中に粒子状に分散させて結晶性樹脂粒子の分散液を調製する工程である。また、非晶性樹脂粒子分散液調製工程は、トナー粒子を構成する非晶性樹脂を合成し、この非晶性樹脂を水系媒体中に粒子状に分散させて非晶性樹脂粒子の分散液を調製する工程である。
【0239】
結晶性樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、当該結晶性樹脂を有機溶媒(溶剤)中に溶解または分散させて油相液を調製し、油相液を転相乳化などによって水系媒体中に分散させて、所望の粒子径に制御された状態の油滴を形成させた後、有機溶媒を除去する方法が挙げられる。非晶性樹脂を水系媒体中に分散させる方法も、上記した結晶性樹脂を水系媒体中に分散させる方法と同様にして行うことができる。
【0240】
油相液の調製に使用される有機溶媒(溶剤)としては、油滴の形成後の除去処理が容易である観点から、沸点が低く、かつ、水への溶解性が低いものが好ましく、具体的には、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0241】
有機溶媒(溶剤)の使用量(2種類以上使用する場合はその合計使用量)は、樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上300質量部以下、より好ましくは10質量部以上200質量部以下、さらに好ましくは25質量部以上100質量部以下である。
【0242】
さらに、油相液中には、カルボキシル基をイオン乖離させて、水相に安定に乳化させて乳化を円滑に進めるためにアンモニア、水酸化ナトリウムなどを添加してもよい。
【0243】
水系媒体の使用量は、油相液100質量部に対して、50質量部以上2,000質量部以下であることが好ましく、100質量部以上1,000質量部以下であることがより好ましい。水系媒体の使用量を上記の範囲とすることで、水系媒体中において油相液を所望の粒子径に乳化分散させることができる。
【0244】
水系媒体中には、分散安定剤が溶解されていてもよく、また油滴の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂粒子などが添加されていてもよい。
【0245】
分散安定剤としては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、二酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなどの無機化合物を挙げることができるが、得られるトナー母体粒子中から分散安定剤を除去する必要があることから、リン酸三カルシウムなどのように酸やアルカリに可溶性のものを使用することが好ましく、または環境面の視点からは、酵素により分解可能なものを使用することが好ましい。
【0246】
界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤などが挙げられ、また、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤も使用することができる。
【0247】
また、分散安定性の向上のための樹脂粒子としては、粒子径が0.5μm以上3μm以下のものが好ましく、具体的には、粒子径が1μmおよび3μmのポリメタクリル酸メチル樹脂粒子、粒子径が0.5μmおよび2μmのポリスチレン樹脂粒子、粒子径が1μmのポリスチレン-アクリロニトリル樹脂粒子などが挙げられる。
【0248】
このような油相液の乳化分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、乳化分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波ホモジナイザーなどの超音波分散機、高圧衝撃式分散機アルティマイザーなどが挙げられる。
【0249】
油滴の形成後における有機溶媒の除去は、結晶性樹脂粒子が水系媒体中に分散された状態の分散液全体を、徐々に攪拌状態で昇温し、一定の温度域において強い攪拌を与えた後、脱溶媒を行うなどの操作により行うことができる。あるいは、エバポレータ等の装置を用いて減圧しながら除去することができる。非晶性樹脂粒子についても、上記した結晶性樹脂粒子と同様にして、油滴の形成後に有機溶媒を除去することができる。
【0250】
このように準備された結晶性樹脂粒子分散液または非晶性樹脂粒子分散液における結晶性樹脂粒子(油滴)または非晶性樹脂粒子(油滴)の平均粒子径は、60nm以上1000nm以下であることが好ましく、80nm以上500nm以下であることがより好ましい。なお、樹脂粒子、着色剤粒子、離型剤等の平均粒子径は、レーザー回析・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA-150」(日機装株式会社製))で測定することができる。なお、これらの樹脂粒子(油滴)の平均粒子径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさにより制御することができる。
【0251】
また、結晶性樹脂粒子分散液または非晶性樹脂粒子分散液における結晶性樹脂粒子または非晶性樹脂粒子の含有量は、分散液100質量%に対して、10質量%以上50質量%以下の範囲とすることが好ましく、15質量%以上40質量%以下の範囲がより好ましい。このような範囲であると、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
【0252】
(1-2)平板状粒子・白色着色剤分散液調製工程
この平板状粒子・白色着色剤分散液調製工程は、平板状粒子および白色着色剤を水系媒体中に粒子状に分散させて、平板状粒子および白色着色剤粒子の分散液を調製する工程である。
【0253】
当該水系媒体は上記(1-1)で説明した通りであり、この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、上記(1-1)で示した界面活性剤や樹脂粒子などが添加されていてもよい。
【0254】
平板状粒子および白色着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、このような分散機としては、特に限定されるものではなく、上記で挙げたように、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波ホモジナイザーなどの超音波分散機、または高圧衝撃式分散機アルティマイザーなどが挙げられる。
【0255】
平板状粒子・白色着色剤分散液における第一又は第二実施形態の平板状粒子の含有量は、5質量%以上50質量%以下の範囲とすることが好ましく、10質量%以上40質量%以下の範囲とすることがより好ましい。このような範囲であると、顔料分散の安定性が高い。
【0256】
また、平板状粒子・白色着色剤分散液における白色着色剤の含有量は、5質量%以上50質量%以下の範囲とすることが好ましく、10質量%以上40質量%以下の範囲とすることがより好ましい。このような範囲であると、顔料分散の安定性が高い。また、後述する有色トナーの作製に用いる各色の着色剤分散液における各色の着色剤の含有量は、いずれも10質量%以上50質量%以下の範囲とすることが好ましく、15質量%以上40質量%以下の範囲とすることがより好ましい。このような範囲であると、色再現性確保の効果がある。
【0257】
(1-3)離型剤粒子分散液調製工程
この離型剤粒子分散液調製工程は、トナー粒子として離型剤を含有するものを所望する場合に必要に応じて行う工程であって、離型剤を水系媒体中に粒子状に分散させて離型剤粒子の分散液を調製する工程である。ただし、離型剤は、結晶性樹脂粒子分散液または非晶性樹脂粒子分散液に加えてもよい。
【0258】
当該水系媒体は上記(1-1)で説明した通りであり、この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、上記(1-1)で示した界面活性剤や樹脂粒子などが添加されていてもよい。
【0259】
離型剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、このような分散機としては、特に限定されるものではなく、上記で挙げたように、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波ホモジナイザーなどの超音波分散機、高圧衝撃式分散機アルティマイザー、または高圧ホモジナイザーなどが挙げられる。離型剤粒子を分散させるにあたり、必要に応じて加熱を行ってもよい。
【0260】
離型剤粒子分散液における離型剤粒子の含有量は、10質量%以上50質量%以下の範囲とすることが好ましく、15質量%以上40質量%以下の範囲とすることがより好ましい。このような範囲であると、ホットオフセット防止および分離性確保の効果が得られる。
【0261】
(2)凝集・融着工程
この凝集・融着工程においては、結晶性樹脂粒子分散液、非晶性樹脂粒子分散液、および平板状粒子・白色着色剤分散液、また必要に応じて、離型剤粒子分散液などの他の成分を添加、混合する。その後、pH調整による粒子表面の反発力と電解質体よりなる凝集剤の添加による凝集力とのバランスを取りながら緩慢に凝集させ、平均粒子径および粒度分布を制御しながら会合を行うと同時に、加熱攪拌することで微粒子間の融着を行って形状制御を行うことにより、トナー粒子を形成する工程である。この凝集・融着工程も、必要に応じて機械的エネルギーや加熱手段を利用して行うことができる。
【0262】
凝集工程においては、まず得られた各分散液を混合して混合液とし、非晶性樹脂のガラス転移温度以下の温度で加熱して凝集させ、凝集粒子を形成する。凝集粒子の形成は、攪拌下、混合液のpHを酸性にすることによってなされる。pHとしては、2以上7以下の範囲が好ましく、2以上6以下の範囲がより好ましく、2以上5以下の範囲がさらに好ましい。この際、凝集剤を使用することが好ましい。
【0263】
用いられる凝集剤は、分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩の他、2価以上の金属を含む錯体を好適に用いることができる。
【0264】
無機金属塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マンガン、硝酸カルシウムなどの金属塩、およびポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、ポリシリカ鉄、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、アルミニウム塩およびポリ塩化アルミニウムが好適である。よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価、3価より4価の方がより適している。
【0265】
上述したように、トナー中の2価以上の金属イオンの含有量は、主に本工程における混合液のpH、凝集剤の添加量および種類等を制御することにより制御することができる。
【0266】
凝集粒子が所望の粒子径になったところで、結晶性樹脂粒子および/または非晶性樹脂粒子を追添加することで、コア凝集粒子の表面を結晶性樹脂および/または非晶性樹脂で被覆した構成のトナー(コアシェル構造を有する粒子)を作製することができる。追添加する場合、追添加前に凝集剤を添加する、またはpH調整を行う等の操作を行ってもよい。
【0267】
凝集の際には加熱、昇温することが好ましい。この際、加熱、昇温によって、融着温度以上になった場合には、融着工程も同時に進行することとなる。昇温速度としては0.1℃/分以上5℃/分以下の範囲で行うことが好ましい。また、加熱温度(ピーク温度)は40℃以上100℃以下の範囲で行うことが好ましい。
【0268】
凝集粒子が所望の粒子径になったところで、反応系内の各種の粒子の凝集を停止させる(以下、凝集停止工程とも称する)。凝集の停止は、反応系内における粒子の凝集作用を抑制するために、凝集工程における粒子の凝集作用が促進されるpH環境から脱する方向にpH調整することができる、塩基化合物からなる凝集停止剤を添加することにより行われる。凝集粒子の平均粒子径は特に限定されるものではないが、4.5μm以上7μm以下であることが好ましい。
【0269】
この凝集停止工程においては、反応系のpHを5以上9以下の範囲に調整することが好ましい。
【0270】
凝集停止剤(塩基化合物)としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびそのナトリウム塩などのアルカリ金属塩、グルコナール、グルコン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびクエン酸ナトリウム、ニトロトリアセテート(NTA)塩、GLDA(市販のL-グルタミン酸-N,N-二酢酸)、フミン酸およびフルビン酸、マルトールおよびエチルマルトール、ペンタ酢酸およびテトラ酢酸、3-ヒドロキシ-2,2’-イミノジコハク酸四ナトリウム等のカルボキシル基および水酸基の両方の官能基を有する公知の化合物もしくはその塩または水溶性ポリマー類(高分子電解質)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。凝集停止工程においては、凝集工程に準じて攪拌を行ってもよい。
【0271】
融着工程は、上記凝集停止工程を経た後または凝集工程と同時に、反応系を所期の融着温度に加温することにより、凝集粒子を構成する各粒子を融着させて凝集粒子を融合して、融合粒子を形成させる工程である。
【0272】
この融着工程における融着温度は、結晶性樹脂の融点以上であることが好ましく、融着温度は、結晶性樹脂の融点より+0℃から+20℃高い温度であることが好ましい。加熱の時間としては、融着がされる程度に行えばよく、0.5時間以上10時間以下で行えばよい。
【0273】
この凝集・融着工程においては、系内の各粒子を安定に分散させるために、水系媒体中に、上記(1-1)結晶性樹脂粒子分散液調製工程/非晶性樹脂粒子分散液調製工程等で用いられる界面活性剤と同様の界面活性剤を添加してもよい。
【0274】
この凝集・融着工程における非晶性樹脂粒子/結晶性樹脂粒子の添加割合(質量比)は、好ましくは(1/1)以上(100/1)以下の範囲である。かような範囲であれば、得られるトナーが耐ホットオフセット性に優れ、また低温定着性に優れる。
【0275】
なお、トナー粒子中に他の内添剤を導入する場合は、この凝集・融着工程の前に内添剤のみよりなる内添剤粒子分散液を調製し、この凝集・融着工程において結晶性樹脂粒子分散液、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液および着色剤分散液と共に当該内添剤粒子の分散液を混合する方法が好ましい。
【0276】
融着後に冷却し、融着粒子を得る。冷却速度は好ましくは1℃/分以上20℃/分以下の範囲である。
【0277】
乳化凝集法によりトナーを得る場合、上記凝集・融着工程の後、トナーの円形度を制御するための円形度制御工程(3)を有することが好ましい。
【0278】
(3)円形度制御工程
円形度制御処理としては、具体的には、凝集・融着工程で得られた粒子を加熱する加熱処理が挙げられる。加熱温度および保持時間により円形度を制御することができる。加熱温度を高くする、または保持時間を長くすることにより、円形度を1に近づけることができる。
【0279】
円形度制御処理における加熱温度としては、70℃以上95℃以下であることが好ましい。円形度の制御は、加温中に円形度測定装置にて2μm以上の粒子径の粒子の円形度を測定し、所望の円形度であるかどうかを適宜判断することによって制御が可能である。
【0280】
(4)濾過・洗浄工程
この濾過・洗浄工程では、得られたトナー粒子の分散液を冷却して冷却後のスラリーとし、この冷却されたトナー粒子の分散液から、水等の溶媒を用いて、トナー粒子を固液分離してトナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。具体的な固液分離および洗浄の方法としては、遠心分離法、アスピレータ、ヌッチェなどを使用する減圧濾過法、フィルタープレスなどを使用する濾過法などが挙げられ、これらは特に限定されるものではない。この濾過・洗浄工程においては適宜、pH調整や粉砕などを行ってもよい。このような操作は繰り返し行ってもよい。
【0281】
(5)乾燥工程
この乾燥工程では、洗浄処理されたトナー粒子に乾燥処理が施される。この乾燥工程で使用される乾燥機としては、オーブン、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などが挙げられ、これらは特に限定されるものではない。なお、乾燥処理されたトナー粒子中のカールフィッシャー電量滴定法にて測定される水分量は、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
【0282】
また、乾燥処理されたトナー粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集して凝集体を形成している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、コーミル、ヘンシェルミキサー(登録商標)、コーヒーミル、フードプロセッサーなどの機械式の解砕装置を使用することができる。
【0283】
(6)外添剤添加工程
この外添剤添加工程は、乾燥処理された白色トナー粒子に、流動性、帯電性の改良およびクリーニング性の向上などの目的で、荷電制御剤や種々の無機粒子、有機粒子、または滑剤などの外添剤を添加する工程であって、必要に応じて行われる。外添剤を添加するために使用される装置としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー(登録商標)、ナウターミキサー(登録商標)、V型混合機、サンプルミルなどの種々の公知の混合装置を挙げることができる。また、トナーの粒度分布を適当な範囲とするため、必要に応じ篩分級を行ってもよい。
【0284】
(現像剤)
以上のような第一又は第二実施形態の白色トナーは、例えば、磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合などが考えられ、いずれも好適に使用することができる。
【0285】
二成分現像剤を構成するキャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子を用いることが好ましい。
【0286】
キャリアとしては、その体積平均粒子径としては15μm以上100μm以下のものが好ましく、25μm以上60μm以下のものがより好ましい。
【0287】
キャリアとしては、さらに樹脂により被覆されているもの、または樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアを用いることが好ましい。被覆用の樹脂組成としては、特に限定はないが、例えば、オレフィン樹脂、シクロヘキシルメタクリレート-メチルメタクリレート共重合体、スチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂あるいはフッ素樹脂などが用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂など使用することができる。
【0288】
〔画像形成方法〕
本発明の第三実施形態である画像形成方法は、上記した第一又は第二実施形態の白色トナーを記録媒体に転写および定着させて画像を形成する工程を含む、画像形成方法であって、前記「白色トナーを用いた画像の白色度の評価方法」により測定される、45度におけるL*(L45)と0度におけるL*(L0)との比(L45/L0)が1.1以上5.0以下であり、かつ前記L45が70以上である。これにより、光散乱に優れる二酸化チタンを用いた白色トナーと同等レベルの白色度を出すことができる、二酸化チタン量を低減したまたは二酸化チタンを使用しない白色トナーを用いた画像形成方法を提供することができる。すなわち、本実施形態では、上記した第一又は第二実施形態の白色トナーからなるトナー像(白色トナー像)を記録媒体上に転写および定着させて画像を形成するものである。この際、白色トナーを記録媒体上に転写して得られる白色トナー像を定着した後に、さらに公知の有色トナー(例えば、イエロー(Y)トナー、マゼンタ(M)トナー、シアン(C)トナー及び黒色(K)トナー;これらを総称してYMCKトナーともいう)を記録媒体上に転写して得られる有色トナー像を定着してもよい。あるいは白色トナーを記録媒体上に転写して得られる白色トナー像および公知の有色トナー(YMCKトナー)を用いた有色トナー像を記録媒体上に転写して得られる有色トナー像を同時に定着してもよい。すなわち、定着システムとしては、白色トナー及び有色トナーは、一括で転写及び定着を行ってもよい(1pass)し、段階的に転写、定着の工程を繰り返して画像形成を行ってもよい(2pass)。本発明の効果がより効率的に得られ、また画像形成が速いことから、白色トナー像と有色トナー像とは、記録媒体上で重なり合いかつ同時に定着させることで画像を形成することが好ましい。また、定着画像としては、本発明の効果をより高くするためには、白色トナー層が有色トナー層よりも記録媒体に近い層であること(白色トナーが下引き層を構成する形態)が好ましい。
【0289】
<白色トナーを用いた画像の白色度>
第三実施形態での「白色トナーを用いた画像の白色度の評価方法」によるL45とL0との比(L45/L0)については、第一及び第二実施形態の白色トナーでの「白色トナーを用いた画像の白色度の評価方法」によるL45とL0との比(L45/L0)と同様である。
【0290】
好適には、像担持体上に静電的に形成された静電潜像を、現像装置において現像剤を摩擦帯電部材によって帯電させることにより顕在化させてトナー像を得て、このトナー像を記録媒体上に転写し、その後、記録媒体上に転写されたトナー像を接触加熱方式の定着処理によって記録材に定着させることにより、可視画像が得られる。
【0291】
好適な定着方法としては、いわゆる接触加熱方式のものを挙げることができる。接触加熱方式としては、特に熱圧定着方式、さらには熱ロール定着方式および固定配置された加熱体を内包した回動する加圧部材により定着する圧接加熱定着方式を挙げることができる。
【0292】
熱ロール定着方式の定着方法においては、通常、表面にフッ素樹脂などが被覆された鉄やアルミニウムなどからなる金属シリンダー内部に熱源が備えられた上ローラーと、シリコーンゴムなどで形成された下ローラーとから構成された定着装置が用いられる。
【0293】
熱源としては、線状のヒーターが用いられ、このヒーターによって上ローラーの表面温度が120~200℃程度に加熱される。上ローラーおよび下ローラー間には圧力が加えられており、この圧力によって下ローラーが変形されることにより、この変形部にいわゆるニップが形成される。ニップの幅は好ましくは1mm以上10mm以下、より好ましくは1.5mm以上7mm以下である。定着線速は40mm/sec以上600mm/sec以下であることが好ましい。
【0294】
〔記録媒体〕
記録媒体は、一般に用いられているものでよく、例えば、画像形成装置等による公知の画像形成方法により形成したトナー像を保持するものであれば特に限定されるものではない。使用可能な画像支持体として用いられるものには、例えば、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙、あるいは、コート紙等の塗工された印刷用紙、市販の和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布、いわゆる軟包装に用いられる各種樹脂材料、あるいはそれをフィルム状に成形した樹脂フィルム、ラベル等が挙げられる。
【0295】
〔有色トナー〕
有色トナーは、上記した白色トナーから、第一又は第二実施形態の平板状粒子を除き、更に白色着色剤に代えて、白色以外の有色の着色剤(着色剤を用いない場合を含む;この場合、透明トナーとなる)を用いた以外は、同様の構成である。よって、以下では、有色トナーのうち、白色トナーと異なる白色以外の有色の着色剤について説明する。
【0296】
(白色以外の有色の着色剤)
白色以外の有色の着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、染料、顔料などを任意に使用することができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが使用される。磁性体としては鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、マグネタイトなどの強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理することにより強磁性を示す合金、例えばマンガン-銅-アルミニウム、マンガン-銅-錫などのホイスラー合金と呼ばれる種類の合金、二酸化クロムなどを用いることができる。
【0297】
黒色の着色剤としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、さらにマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0298】
マゼンタまたはレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48;1、C.I.ピグメントレッド53;1、C.I.ピグメントレッド57;1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0299】
また、オレンジまたはイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。
【0300】
さらに、グリーンもしくはシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0301】
これらの着色剤は、必要に応じて単独または2つ以上を選択して用いることも可能である。
【0302】
白色以外の有色の着色剤の平均粒子径は、10nm以上1000nm以下が好ましく、50nm以上500nm以下がより好ましい。
【0303】
白色以外の有色の着色剤の添加量は、トナー全体の質量に対して、好ましくは1質量%以上60質量%以下、より好ましくは2質量%以上25質量%以下の範囲である。かような範囲であれば、画像の色再現性を確保できる。
【0304】
[画像形成装置]
上記した第三実施形態の画像形成方法に用いる画像形成装置としては、装置構成自体は公知の画像形成装置に、白色トナーと、さらに必要に応じて少なくとも1色の有色トナー、好ましくはYMCKトナーとを搭載した装置を用いることができる。白色トナーおよび有色トナーを搭載した画像形成装置の例としては、例えば、特開2002-328501号公報に記載の装置が挙げられる。
【0305】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0306】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明するが、本発明がこれらの実施形態に限定されるものではない。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25±3℃の範囲)、相対湿度50%RHで行われる。
【0307】
<平板状粒子の光透過率、色域の測定方法>
100μmのポリテトラフルオロエチレン(PET)に、100μmのポリビニルピロリドン(PVP)を塗布し、その上に平板状粒子を均一に塗布した。詳しくは、膜厚100μmのPETフィルムの片面に膜厚が100μmとなるようにポリビニルピロリドン(PVP)を塗布し、その上に平板状粒子を0.2mg/mm2となるように均一に塗布した。このPET-PVP-平板状粒子からなるシートを用いて、透過率測定(波長500nm)及び色域測定を実施した。
【0308】
<平板状粒子の長径平均粒子径Da、平均高さt、凸部平均径、凸部高さ平均の測定方法>
セイミック(SAEMic)を用いて、走査電子顕微鏡(SEM)による平均粒子径測定と原子間力顕微鏡(AFM)による3D形状計測を実施した。長径平均粒子径、平均高さ、凸部平均径、および凸部高さ平均は、任意の平板状粒子20個をセイミックにより測定して、その平均を算出した。
【0309】
<平板状粒子のL*,a*、b*の測定方法>
平板状粒子のL*,a*、b*の測定方法は、L*a*b*色空間が国際照明委員会(CIE)で規格化され、JIS(JIS Z 8781-4(2013))において採用されていることから、こうした規格基準を満たす市販の濃度計(蛍光分光濃度計)等の測定装置を用いて測定した。詳しくは、上記した<平板状粒子の光透過率、色域の測定方法>により、蛍光分光濃度計を用い、光源 D50、視野 2度として測定した。
【0310】
<平板状粒子のサイズの測定方法>
平板状粒子のサイズ(Da/t)は、上記に示す<平板状粒子の長径平均粒子径Da、平均高さt、凸部平均径、凸部高さ平均の測定方法>の長径平均粒子径Daおよび平均高さtから求められる。そのため、表1には記載していない。
【0311】
(実施例1)
<トナーの製造>
結着樹脂として、非晶性ポリエステル樹脂(重量平均分子量35,000)90部、結晶性ポリエステル樹脂(重量平均分子量25,000)10部、平板状粒子20部、白色着色剤として硫酸バリウム(平均粒子径(体積基準のメジアン径)250nm)15部、帯電制御剤としてサルチル酸亜鉛塩5部、および離型剤として低分子量ポリエチレン(重量平均分子量3,000)5部からなる原材料を用いた。
【0312】
上記平板状粒子には、表1に示すように、光透過率が0%であり、長径平均粒子径Daが2.0μmであり、平均高さtが0.20μmであり、L*が70であり、(a*2+b*2)が6である、表面に凹凸のない平滑なアルミナ製の平板状粒子を用いた。表面に凹凸のない平滑な平板状粒子とは、明細書中に記した、<平板状粒子の長径平均粒子径、凸部平均径、凸部高さ平均の測定方法>により、凸部平均径および凸部高さ平均が測定限界以下で測定できないものをいう。
【0313】
上記平板状粒子の平均高さt:0.20μmは、Da/50=0.04μm以上、Da/3=0.67μm以下を満足する。
【0314】
次に、上記原材料をミキサーで充分に混合した後、2軸押出し機により、混練温度130℃、混練回転数80rpmの条件で溶融混練して、混練物を得た。
【0315】
その後、上記混練物を圧延冷却後カッターミルで粗粉砕し、ジェット気流を用いた微粉砕機で粉砕後、旋回式風力分級装置を用いて、平均粒子径(体積基準のメジアン径(D50))が9.0μmの粒度分布に分級したトナー母体粒子を得た。
【0316】
さらに、上記トナー母体粒子100部に対して、以下の混合条件にて、外添剤として、シリカ微粉末(数平均一次粒子径16nm)1.2部、アルミナ微粉末(数一次平均粒子径20nm)0.3部を混合し、白色トナー1を得た。白色トナー1の体積平均粒子径Db(体積基準のメジアン径(D50))は9.0μmであった。
【0317】
<混合条件>
混合回転数 800rpm
混合時間 120sec
混合機 スーパーミキサー。
【0318】
<2成分現像剤の作製>
実施例1の白色トナー1に対して、シクロヘキシルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合樹脂(モノマー質量比=1:1)を被覆した体積平均粒子径30μmのフェライトキャリアを用い、トナー濃度が6質量%となるようにして混合することにより、実施例1の2成分現像剤1を得た。
【0319】
(実施例2)
平板状粒子として、表1に示すように、光透過率が0%であり、長径平均粒子径Daが1.5μmであり、平均高さtが0.15μmであり、L*が67であり、(a*2+b*2)が10である、表面に凹凸のない平滑なニッケル製の平板状粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、白色トナー2および2成分現像剤2を得た。
【0320】
上記平板状粒子の平均高さt:0.15μmは、Da/50=0.03μm以上、Da/3=0.50μm以下を満足する。
【0321】
(実施例3)
平板状粒子として、表1に示すように、光透過率が0%であり、長径平均粒子径Daが0.5μmであり、平均高さtが0.05μmであり、L*が70であり、(a*2+b*2)が6である、表面に凹凸のない平滑なアルミナ製の平板状粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、白色トナー3および2成分現像剤3を得た。
【0322】
上記平板状粒子の平均高さt:0.05μmは、Da/50=0.01μm以上、Da/3=0.17μm以下を満足する。
【0323】
(実施例4)
平板状粒子として、表1に示すように、光透過率が0%であり、長径平均粒子径Daが2.5μmであり、平均高さtが0.25μmであり、L*が70であり、(a*2+b*2)が6である、表面に凹凸のない平滑なアルミナ製の平板状粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、白色トナー4および2成分現像剤4を得た。
【0324】
上記平板状粒子の平均高さt:0.25μmは、Da/50=0.05μm以上、Da/3=0.83μm以下を満足する。
【0325】
(実施例5)
平板状粒子として、表1に示すように、光透過率が0%であり、長径平均粒子径Daが2.0μmであり、平均高さtが0.04μmであり、L*が70であり、(a*2+b*2)が6である、表面に凹凸のない平滑なアルミナ製の平板状粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、白色トナー5および2成分現像剤5を得た。
【0326】
上記平板状粒子の平均高さt:0.04μmは、Da/50=0.04μm以上、Da/3=0.67μm以下を満足する。
【0327】
(実施例6)
平板状粒子として、表1に示すように、光透過率が0%であり、長径平均粒子径Daが2.0μmであり、平均高さtが0.60μmであり、L*が70であり、(a*2+b*2)が6である、表面に凹凸のない平滑なアルミナ製の平板状粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、白色トナー6および2成分現像剤6を得た。
【0328】
上記平板状粒子の平均高さt:0.60μmは、Da/50=0.04μm以上、Da/3=0.67μm以下を満足する。
【0329】
(実施例7)
平板状粒子として、表1に示すように、光透過率が0%であり、長径平均粒子径Daが2.0μmであり、平均高さtが0.20μmであり、L*が51であり、(a*2+b*2)が19である、表面に凹凸のない平滑なアルミナ製の平板状粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、白色トナー7および2成分現像剤7を得た。
【0330】
上記平板状粒子の平均高さt:0.20μmは、Da/50=0.04μm以上、Da/3=0.67μm以下を満足する。
【0331】
(実施例8)
白色着色剤として、表1に示すように、硫酸バリウム(平均粒子径(体積基準のメジアン径)10nm)50部を用いた以外は、実施例1と同様にして、白色トナー8および2成分現像剤8を得た。
【0332】
(実施例9)
白色着色剤として、表1に示すように、硫酸バリウム(平均粒子径(体積基準のメジアン径)1000nm)50部を用いた以外は、実施例1と同様にして、白色トナー9および2成分現像剤9を得た。
【0333】
(実施例10)
白色着色剤として、表1に示すように、硫酸バリウム(平均粒子径(体積基準のメジアン径)250nm)2部を用いた以外は、実施例1と同様にして、白色トナー10および2成分現像剤10を得た。
【0334】
(比較例1)
平板状粒子として、表1に示すように、光透過率が0%であり、長径平均粒子径Daが0.3μmであり、平均高さtが0.03μmであり、L*が70であり、(a*2+b*2)が6である、表面に凹凸のない平滑なアルミナ製の平板状粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較用白色トナー1および比較用2成分現像剤1を得た。
【0335】
上記平板状粒子の平均高さt:0.03μmは、Da/50=0.006μm以上、Da/3=0.10μm以下を満足する。
【0336】
(比較例2)
平板状粒子として、表1に示すように、光透過率が0%であり、長径平均粒子径が5.0μmであり、平均高さtが0.50μmであり、L*が70であり、(a*2+b*2)が6である、表面に凹凸のない平滑なアルミナ製の平板状粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較用白色トナー2および比較用2成分現像剤2を得た。
【0337】
上記平板状粒子の平均高さt:0.50μmは、Da/50=0.10μm以上、Da/3=1.67μm以下を満足する。
【0338】
(比較例3)
平板状粒子を用いることなく、白色着色剤として、表1に示すように、酸化チタン(平均粒子径(体積基準のメジアン径)250nm)20部を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較用白色トナー3および比較用2成分現像剤3得た。
【0339】
(実施例11)
平板状粒子として、表1に示すように、光透過率が0%であり、長径平均粒子径Daが8.0μmであり、平均高さtが2.0μmであり、凸部平均径が0.3μmであり、凸部高さ平均が0.02μmであり、L*が70であり、(a*2+b*2)が10である、表面に凹凸を有するニッケル製の平板状粒子を用いた。この平板状粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、体積平均粒子径Db(体積基準のメジアン径(D50))が12.0μmの白色トナー11および2成分現像剤11を得た。
【0340】
本実施例に用いた平板状粒子の凸部平均径0.3μmは、Da/50=8/50=0.14μm以上、Da/3=8/3=2.67μm以下を満足する。また、上記平板状粒子の平均高さt:2.0μmは、Da/50=0.14μm以上、Da/3=2.67μm以下を満足する。
【0341】
(実施例12)
平板状粒子として、表1に示すように、光透過率が0%であり、長径平均粒子径Daが10.0μmであり、平均高さtが1.5μmであり、凸部平均径が0.5μmであり、凸部高さ平均が0.02μmであり、L*が70であり、(a*2+b*2)が6である、表面に凹凸を有するアルミナ表面コート酸化鉄製(アルミナ表面コート層の厚さ0.1μm)の平板状粒子を用いた。この平板状粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、体積平均粒子径Db(体積基準のメジアン径(D50))が16.0μmの白色トナー12および2成分現像剤12を得た。
【0342】
本実施例に用いた平板状粒子の凸部平均径0.5μmは、Da/50=10/50=0.20μm以上、Da/3=10/3=3.33μm以下を満足する。また、上記平板状粒子の平均高さt:1.5μmは、Da/50=0.20μm以上、Da/3=3.33μm以下を満足する。
【0343】
(実施例13)
平板状粒子として、表1に示すように、光透過率が0%であり、長径平均粒子径Daが0.5μmであり、平均高さtが0.05μmであり、凸部平均径が0.1μmであり、凸部高さ平均が0.02μmであり、L*が70であり、(a*2+b*2)が6である、表面に凹凸を有するニッケル製の平板状粒子を用いた。この平板状粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、体積平均粒子径Db(体積基準のメジアン径(D50))が12.0μmの白色トナー13および2成分現像剤13を得た。
【0344】
本実施例に用いた平板状粒子の凸部平均径0.1μmは、Da/50=0.5/50=0.01μm以上、Da/3=0.5/3=0.17μm以下を満足する。また、上記平板状粒子の平均高さt:0.05μmは、Da/50=0.01μm以上、Da/3=0.17μm以下を満足する。
【0345】
(実施例14)
平板状粒子として、表1に示すように、光透過率が0%であり、長径平均粒子径Daが20.0μmであり、平均高さtが2.0μmであり、凸部平均径が0.5μmであり、凸部高さ平均が0.04μmであり、L*が70であり、(a*2+b*2)が6である、表面に凹凸を有するニッケル製の平板状粒子を用いた。この平板状粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、体積平均粒子径Db(体積基準のメジアン径(D50))が23.0μmの白色トナー14および2成分現像剤14を得た。
【0346】
本実施例に用いた平板状粒子の凸部平均径0.5μmは、Da/50=20/50=0.40μm以上、Da/3=20/3=6.67μm以下を満足する。また、上記平板状粒子の平均高さt:2.0μmは、Da/50=0.40μm以上、Da/3=6.67μm以下を満足する。
【0347】
(実施例15)
平板状粒子として、表1に示すように、光透過率が0%であり、長径平均粒子径Daが8.0μmであり、平均高さtが2.0μmであり、凸部平均径が2.5μmであり、凸部高さ平均が0.01μmであり、L*が73であり、(a*2+b*2)が6である、表面に凹凸を有するニッケル製の平板状粒子を用いた。この平板状粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、体積平均粒子径Db(体積基準のメジアン径(D50))が12.0μmの白色トナー15および2成分現像剤15を得た。
【0348】
本実施例に用いた平板状粒子の凸部平均径2.5μmは、Da/50=8/50=0.16μm以上、Da/3=8/3=2.67μm以下を満足する。また、上記平板状粒子の平均高さt:2.0μmは、Da/50=0.16μm以上、Da/3=2.67μm以下を満足する。
【0349】
(実施例16)
平板状粒子として、表1に示すように、光透過率が0%であり、長径平均粒子径Daが8.0μmであり、平均高さtが2.0μmであり、凸部平均径が2.5μmであり、凸部高さ平均が0.10μmであり、L*が71であり、(a*2+b*2)が6である、表面に凹凸を有するニッケル製の平板状粒子を用いた。この平板状粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、体積平均粒子径Db(体積基準のメジアン径(D50))が12.0μmの白色トナー16および2成分現像剤16を得た。
【0350】
本実施例に用いた平板状粒子の凸部平均径2.5μmは、Da/50=8/50=0.16μm以上、Da/3=8/3=2.67μm以下を満足する。また、上記平板状粒子の平均高さt:2.0μmは、Da/50=0.16μm以上、Da/3=2.67μm以下を満足する。
【0351】
(実施例17)
平板状粒子として、表1に示すように、光透過率が0%であり、長径平均粒子径Daが8.0μmであり、平均高さtが2.0μmであり、凸部平均径が0.2μmであり、凸部高さ平均が0.01μmであり、L*が73であり、(a*2+b*2)が6である、表面に凹凸を有するニッケル製の平板状粒子を用いた。この平板状粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、体積平均粒子径Db(体積基準のメジアン径(D50))が12.0μmの白色トナー17および2成分現像剤17を得た。
【0352】
本実施例に用いた平板状粒子の凸部平均径0.2μmは、Da/50=8/50=0.16μm以上、Da/3=8/3=2.67μm以下を満足する。また、上記平板状粒子の平均高さt:2.0μmは、Da/50=0.16μm以上、Da/3=2.67μm以下を満足する。
【0353】
(実施例18)
平板状粒子として、表1に示すように、光透過率が0%であり、長径平均粒子径Daが8.0μmであり、平均高さtが2.0μmであり、凸部平均径が0.2μmであり、凸部高さ平均が0.1μmであり、L*が73であり、(a*2+b*2)が6である、表面に凹凸を有するニッケル製の平板状粒子を用いた。この平板状粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、体積平均粒子径Db(体積基準のメジアン径(D50))が12.0μmの白色トナー18および2成分現像剤18を得た。
【0354】
本実施例に用いた平板状粒子の凸部平均径0.2μmは、Da/50=8/50=0.16μm以上、Da/3=8/3=2.67μm以下を満足する。また、上記平板状粒子の平均高さt:2.0μmは、Da/50=0.16μm以上、Da/3=2.67μm以下を満足する。
【0355】
(比較例4)
平板状粒子として、表1に示すように、光透過率が0%であり、長径平均粒子径Daが0.3μmであり、平均高さtが0.03μmであり、凸部平均径が0.3μmであり、凸部高さ平均が0.02μmであり、L*が70であり、(a*2+b*2)が6である、表面に凹凸を有するニッケル製の平板状粒子を用いた。この平板状粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、体積平均粒子径Db(体積基準のメジアン径(D50))が12.0μmの比較用白色トナー4および比較用2成分現像剤4を得た。
【0356】
本比較例に用いた平板状粒子の凸部平均径0.3μmは、Da/50=0.3/50=0.006μm以上、Da/3=0.3/3=0.1μm以下を満足しない。また、上記平板状粒子の平均高さt:0.03μmは、Da/50=0.006μm以上、Da/3=0.1μm以下を満足する。
【0357】
(比較例5)
平板状粒子として、表1に示すように、光透過率が0%であり、長径平均粒子径Daが25.0μmであり、平均高さtが2.0μmであり、凸部平均径が0.3μmであり、凸部高さ平均が0.02μmであり、L*が70であり、(a*2+b*2)が6である、表面に凹凸を有するニッケル製の平板状粒子を用いた。この平板状粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、体積平均粒子径Db(体積基準のメジアン径(D50))が28.0μmの比較用白色トナー5および比較用2成分現像剤5を得た。
【0358】
本比較例に用いた平板状粒子の凸部平均径0.3μmは、Da/50=25/50=0.5μm以上、Da/3=25/3=8.33μm以下を満足しない。また、上記平板状粒子の平均高さt:2.0μmは、Da/50=0.5μm以上、Da/3=8.33μm以下を満足する。
【0359】
[評価]
<白色トナーを用いた画像の白色度の評価方法>
市販の複合機「bizhub PRESS(登録商標) C1070」(コニカミノルタ株式会社製)に、上記で得られた実施例および比較例の2成分現像剤をそれぞれ装填して画像を形成し、評価を行った。
【0360】
プリントは、上記複合機を用い、常温常湿(20℃、50%RH)環境下にて、A4サイズの光沢紙「テンカラー黒紙(D色)(152g/m2)(王子製紙社製)(明度:L*=23)」を用いて、紙上で白色トナーを8g/m2の付着量で画像形成させ、熱定着させて白色画像を得た。
【0361】
得られた白色画像について、L45/L0の測定として、観測方向や照射方向が変わると色が変化して見えるフロップ効果を生じる物体色の変角測色システムを用いて測定し、入射角を変えて角度毎に分光分布の測定を実施し、45度におけるL*(L45)と0度におけるL*(L0)を求めた。測色の条件としては、光源D50-視野角10°積分球 SCIモードを用いた。
【0362】
-L45の評価基準-
◎:75以上
○:70以上75未満
×:70未満。
【0363】
-L45/L0の評価基準-
◎:1.5以上3.5以下
○:1.1以上1.5未満、または3.5超5.0以下
×:1.1未満、または5.0超。
【0364】
【0365】
表1の平板状粒子の部数(質量部)および白色着色剤の部数(質量部)は、ともに結着樹脂全体100質量部に対するそれぞれの部数を表す。
【0366】
上記表1に示す結果より、実施例1~18の白色トナーおよびこれを用いて形成された白色画像は、二酸化チタン量を低減するかまたは二酸化チタンを使用しない場合であっても、二酸化チタンを用いた白色トナーと同等レベルの白色度を出すことができた。詳しくは、平板状粒子を用いることで、下地の隠ぺい性が高く、十分に高い白色度を出すことができ、優れた白色画像が得られることが確認できた。
【0367】
一方、比較例1の白色トナーおよびこれを用いて形成された白色画像は、白色トナー中の平滑な平板状粒子の長径平均粒子径が0.5μmより小さい。そのため、この平板状粒子が複数個ランダムに配向しても下地の隠ぺい率が低く、十分な白色度が出ず、十分な白色画像が得られないことが確認された。
【0368】
比較例2の白色トナーおよびこれを用いて形成された白色画像では、白色トナー中の平滑な平板状粒子の長径平均粒子径が2.5μmより大きい。トナー中でこの平板状粒子が複数個ランダムに配向することで、金属光沢が出てしまい白色画像に見えないことが確認された。
【0369】
比較例3の白色トナーおよび有色トナーを用いて形成された白色画像では、従来の白色トナーとして、平板状粒子を含まず、白色着色剤に大量の二酸化チタンを用いることで、環境規制(CLP規則)に抵触するものの、光の散乱による白色度を得ることはできる。すなわち、比較例3の「L45/L0」の評価と同程度以上のものが実施例1~18で得られることが確認できた。即ち、実施例1~18では、光散乱に優れる二酸化チタンを用いた白色トナーと同等レベルの白色度を有する、二酸化チタンレスの白色トナー及びこれを用いた画像が得られた。
【0370】
比較例4の白色トナーおよび有色トナーを用いて形成された白色画像では、白色トナー中の表面凹凸を有する平板状粒子の長径平均粒子径が0.5μmより小さく、表面凹凸の凸部平均径が(Da/3)より大きい。この平板状粒子を用いた場合、下地の隠ぺい率が低く、十分な白色度が出ず、十分な白色画像が得られないことが確認された。
【0371】
比較例5の白色トナーおよび有色トナーを用いて形成された白色画像では、白色トナー中の表面凹凸を有する平板状粒子の長径平均粒子径が20μmより大きく、凸部平均径が(Da/50)より小さい。この平板状粒子を用いた場合、画像に金属光沢が見られ、さらに画像形成時に転写ムラが生じ、その結果、白色度が出ず、十分な白色画像が得られないことが確認された。
【符号の説明】
【0372】
11 記録媒体(黒紙)、
12A 小粒子径の平板状粒子を含む白色トナー、
12B 表面に凹凸を有する大粒子径の平板状粒子を含む白色トナー、
12C 二酸化チタンを多く用いた従来の白色トナー、
13A 小粒子径の平板状粒子、
13B 表面に凹凸を有する大粒子径の平板状粒子、
14 二酸化チタン量を低減したまたは二酸化チタンを使用しない白色着色剤、
14C 従来の白色着色剤(二酸化チタン)。