(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 401
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2020087939
(22)【出願日】2020-05-20
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】依田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】雙松 保雄
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-098638(JP,A)
【文献】特開2009-234103(JP,A)
【文献】特開2016-224200(JP,A)
【文献】特開2015-047804(JP,A)
【文献】特開2007-328222(JP,A)
【文献】特開2006-192779(JP,A)
【文献】特開2020-015588(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0355027(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向の下流に向かうに従って鉛直下方に傾斜する支持面によって支持されながら、前記搬送方向に搬送される媒体を加熱する加熱装置であって、
前記支持面に対向配置され、非接触で前記媒体を加熱する加熱部と、
前記加熱部の熱線を前記媒体に反射する反射板と、
前記加熱部に対して前記支持面と反対側に配置され、且つ前記搬送方向の上流に向かうに従って鉛直上方に傾斜することに加えて、前記鉛直下方に配置される吸い込み口と、前記鉛直上方に配置される吹き出し口と、前記吸い込み口と前記吹き出し口との間に配置される気体の流路とを有する流路部材と、
前記吸い込み口から気体が吸い込まれ、前記吹き出し口から前記支持面と前記加熱部との間に気体が吹き出されるように、前記気体の流路に気流を発生させる送風部と、
を含み、
前記気体の流路に配置され、前記加熱部に対して前記鉛直上方に位置し、所定の温度に到達すると前記加熱部への通電を停止する第1切断部と、
前記反射板に接し、所定の温度に到達すると前記加熱部への通電を停止する第2切断部と、
を備え
、
前記気体の流路は、前記吸い込み口から前記吹き出し口に向かう方向に延在する隔壁部材によって複数に区画され、
前記第1切断部は、複数に区画された前記気体の流路のそれぞれに設けられることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記第1切断部は、前記流路部材における前記加熱部の熱が対流によって伝播されやすい部位に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記支持面に直交する方向から見た平面視において、前記第2切断部は、前記媒体に重なるように配置されることを特徴とする請求項1
または2に記載の加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクが吐出されることによって画像が形成される媒体の乾燥に好適な加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、連帳紙(媒体)に付与された液体(インク)を乾燥させる乾燥装置(加熱装置)を有する印刷装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
特許文献1に記載の乾燥装置は、媒体を加熱する赤外線ヒーターと、媒体を支持するアイドラローラーと、アイドラローラーの温度を検知する温度センサーとを備え、媒体が搬送されている間は赤外線ヒーターをオン状態にし、媒体の搬送が停止したときに赤外線ヒーターをオフ状態し、さらに、温度センサーで検知した温度が所定温度以上になったときに赤外線ヒーターをオフ状態にする。
温度センサーは、アイドラローラーを挟んで赤外線ヒーターと反対側に配置される。温度センサーが、媒体と同じ熱力を受けるアイドラローラーの温度を間接的に検知することで、温度の異常が検知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載の乾燥装置では、赤外線ヒーターの熱力による乾燥に加えて、送風による乾燥を行う場合、温度の異常を適正に検知することが難しいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の加熱装置は、搬送方向の下流に向かうに従って鉛直下方に傾斜する支持面によって支持されながら、前記搬送方向に搬送される媒体を加熱する加熱装置であって、前記支持面に対向配置され、非接触で前記媒体を加熱する加熱部と、前記加熱部の熱線を前記媒体に反射する反射板と、前記加熱部に対して前記支持面と反対側に配置され、且つ前記搬送方向の上流に向かうに従って鉛直上方に傾斜することに加えて、前記鉛直下方に配置される吸い込み口と、前記鉛直上方に配置される吹き出し口と、前記吸い込み口と前記吹き出し口との間に配置される気体の流路とを有する流路部材と、前記吸い込み口から気体が吸い込まれ、前記吹き出し口から前記支持面と前記加熱部との間に気体が吹き出されるように、前記気体の流路に気流を発生させる送風部と、を含み、前記気体の流路に配置され、前記加熱部に対して前記鉛直上方に位置し、所定の温度に到達すると前記加熱部への通電を停止する第1切断部と、前記反射板に接し、所定の温度に到達すると前記加熱部への通電を停止する第2切断部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】第2部材から第2支持面に向かう方向に見た加熱装置の平面図。
【
図3】送風ファンが停止した場合の記録装置の状態を示す概略断面図。
【
図4】媒体のジャムが生じた場合の記録装置の状態を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1.実施形態
1.1記録装置の概要
図1は、記録装置11の概要を示す概略断面図である。
図1では、媒体Mが搬送される方向が白抜きの矢印で図示され、以降、媒体Mが搬送される方向を搬送方向Fと称す。さらに、加熱装置30において気体が流動する方向が太い実線の矢印で図示されている。
また、以降の説明では、記録装置11の高さ方向、すなわち鉛直方向をZ軸方向とする。Z軸方向のうち重力方向と反対方向に向かう方向は、+Z方向であり、本願における鉛直上方の一例である。Z軸方向のうち重力方向に向かう方向は、-Z方向であり、本願における鉛直下方の一例である。
最初に、
図1を参照して記録装置11の概要について説明する。
【0008】
図1に示すように、記録装置11は、本実施形態に係る加熱装置30を有するインクジェット式のプリンターであり、インクを吐出することによって媒体Mに文字、写真等の画像を記録(印刷)することができる。
記録装置11は、収容体12と、媒体Mを支持可能な支持部13と、媒体Mを支持部13に沿って搬送する搬送部14とを備える。さらに、記録装置11は、収容体12内に配置された記録部15と、収容体12外に配置された加熱装置30とを備える。加熱装置30は、インクが吐出されることによって画像が形成された媒体Mを加熱する。媒体Mは、例えば、円筒状に巻き重ねられたロール紙である。
【0009】
支持部13は、第1支持板16、第2支持板17、及び第3支持板18を有する。搬送部14により搬送される媒体Mの搬送方向Fにおいてその上流側から順に第1支持板16と、第2支持板17と、第3支持板18とが配置される。
【0010】
第1支持板16及び第2支持板17は、収容体12と対向するように配置される。第1支持板16において収容体12と対向する面が、媒体Mを支持するための第1支持面21である。第2支持板17において収容体12と対向する面が、媒体Mを支持するための第2支持面22である。支持板16,17において、鉛直方向における上方を向く面が支持面21,22である。
第3支持板18は、加熱装置30と対向するように配置される。第3支持板18において加熱装置30と対向する面が、媒体Mを支持するための第3支持面23である。第3支持板18において、鉛直方向における上方を向く面が第3支持面23である。
なお、第3支持面23は、本願における支持面の一例である。
【0011】
搬送部14は、例えば、媒体Mに接した状態で回転することによって媒体Mを搬送する搬送ローラー24を有する。搬送ローラー24は、搬送方向Fにおいて第1支持板16と第2支持板17との間に配置される。媒体Mは、第1支持面21と第2支持面22と第3支持面23とによって支持されながら、搬送部14によって、第1支持面21から第3支持面23に向かう方向に搬送される。
搬送部14により搬送される媒体Mの搬送方向Fは、支持板16,17,18の支持面21,22,23に沿う方向である。
【0012】
記録部15は、インクを吐出するヘッド25を有する。ヘッド25は、第2支持板17と対向するように配置され、第2支持板17に支持される媒体Mにインクを吐出可能である。記録部15は、媒体Mにインクを吐出することによって、媒体Mに画像を記録するように構成される。インクは、色材や、色材を分散させる(または溶解させる)溶剤などを含む。本実施形態では、溶剤として水が使用されている。
詳しくは、記録部15は、ヘッド25を保持するキャリッジ26と、キャリッジ26の移動を案内するガイド軸27とを有する。ヘッド25は、媒体Mの幅方向に延びるガイド軸27に沿って、キャリッジ26とともに往復移動しながらインクを吐出して、媒体Mに画像を形成する。また、媒体Mの幅方向は、搬送方向Fと交差する方向であり、以降、単に幅方向と称す。
【0013】
1.2加熱装置の概要
次に、記録装置11が備える加熱装置30の概要について説明する。
第3支持板18は、記録部15よりも搬送方向Fの下流側で媒体Mを支持する。第3支持板18の第3支持面23は、記録部15によってインクが付着された媒体Mを支持するための面であり、搬送方向Fの下流に向かうに従って-Z方向(鉛直下方)に傾斜している。
加熱装置30は、第3支持板18の第3支持面23に対向するように配置され、第3支持面23に対して少し間隔をあけて配置される。加熱装置30は、第3支持面23によって支持され搬送方向Fに搬送される媒体Mに対して気体を吹き付けながら、媒体Mを加熱し、媒体Mに付着したインクの水分を蒸発させる。
すなわち、加熱装置30は、搬送方向Fに搬送される媒体Mに対して、加熱による乾燥と送風による乾燥とを同時に実行する。
【0014】
加熱装置30は、第3支持面23に対向配置され非接触で媒体Mを加熱する加熱部31と、加熱部31の熱線(赤外線)を媒体Mに向けて反射する反射板32と、加熱部31に対して第3支持面23と反対側に配置され、且つ搬送方向Fの上流に向かうに従って+Z方向(鉛直上方)に傾斜する流路部材40とを有する。
【0015】
加熱部31は、非接触で媒体Mを加熱可能なヒーターであればよく、シーズヒーターやハロゲンヒーターなどを使用できる。加熱部31は、幅方向に長い円筒形状を有する。加熱部31の幅方向の寸法は、媒体Mの幅方向の寸法よりも長い。加熱部31は、第3支持面23と対向する位置に、搬送方向Fに間隔を開けて複数(本実施形態では2つ)配置される。
反射板32は、加熱部31に対して第3支持面23と反対側に配置され、凹曲面状の反射面を有する。反射板32の幅方向の寸法は、加熱部31の幅方向の寸法よりも長い。反射板32は、搬送方向Fに間隔を開けて複数配置される加熱部31のそれぞれに設けられている。反射板32は、加熱部31の熱線(赤外線)を第3支持面23(媒体M)に向けて反射する。
これにより、加熱部31からの輻射の大部分が第3支持面23に向かい、第3支持面23に支持される媒体Mが輻射によって加熱される。
【0016】
流路部材40は、加熱部31側に配置される第1部材41と、第1部材41に対して加熱部31と反対側に配置される第2部材42とを有する。第1部材41と第2部材42とは、搬送方向Fの上流に向かうに従って+Z方向(鉛直上方)に傾斜する。
第1部材41と第2部材42とが接合されることによって、加熱部31に対して第3支持面23と反対側に配置され、且つ搬送方向Fの上流に向かうに従って+Z方向(鉛直上方)に傾斜する流路部材40が形成される。
【0017】
流路部材40の内部には空洞50が形成される。流路部材40の内部に形成される空洞50は、気体の流路であり、以降、気体の流路50と称す。また、気体の流路50の搬送方向Fの下流側には、気体が吸い込まれる吸い込み口44が配置される。気体の流路50の搬送方向Fの上流側には、気体が吹き出される吹き出し口45が配置される。吸い込み口44は鉛直下方(-Z方向)に配置され、吹き出し口45は鉛直上方(+Z方向)に配置される。
このように、流路部材40は、鉛直下方(-Z方向)に配置される吸い込み口44と、鉛直上方(+Z方向)に配置される吹き出し口45と、吸い込み口44と吹き出し口45との間に配置される気体の流路50とを有する。
【0018】
気体の流路50は、吸い込み口44を始端として第3支持面23から遠ざかる第1部分50aと、搬送方向Fの上流に向かうに従って+Z方向(鉛直上方)に傾斜する第2部分50bと、気体の流動方向を反転させる第3部分50cとを有する。また、気体の流動方向を反転させる第3部分50cの末端に、吹き出し口45が配置される。気体の流路50の断面視において、第1部分50a及び第2部分50bは一方向に延びる直線形状を有し、第3部分50cはU字形状に曲がった曲線形状を有する。
【0019】
第1部材41は、吸い込み口44を始端として第3支持面23から遠ざかる第1部分41aと、搬送方向Fの上流に向かうに従って+Z方向(鉛直上方)に傾斜する第2部分41bと、気体の流動方向を反転させる第3部分41cとを有する。第1部材41の断面視において、第1部分41a及び第2部分41bは一方向に延びる直線形状を有し、第3部分41cはU字形状に曲がった曲線形状を有する。第1部材41における+Z方向(鉛直上方)の部分が、第3部分41cである。
図1では、鉛直下方に位置する第1部分41aが黒ベタで図示され、鉛直上方に位置する第3部分41cが白ベタで図示され、第1部分41aと第3部分41cとの間に位置する第2部分41bに網掛けが施されている。
【0020】
さらに、第1部材41において、第1部分41aと第2部分41bと第3部分41cとによって、第3支持面23から遠ざかる方向に窪んだ凹部47が形成される。加えて、第1部分41a及び第3部分41cにおける第3支持面23側の端には、凹部47の開口48が形成される。凹部47には、加熱部31及び反射板32が収納されている。
このように、第1部材41は、第3支持面23側に開口する開口48と、加熱部31及び反射板32が収納される凹部47とを有する。換言すれば、流路部材40は、第3支持面23側に開口し加熱部31及び反射板32が収納される凹部47を有する。
【0021】
さらに、流路部材40には、開口48を覆うように配置される金網49が設けられている。金網49は、加熱部31と第3支持面23(媒体M)との間に配置される。加熱部31の熱は、金網49越しに媒体Mに伝えられる。
【0022】
気体の流路50の中には、送風部の一例である送風ファン46が配置されている。詳しくは、送風ファン46は、気体の流路50における第2部分50bの中央に取り付けられている。送風ファン46が駆動されると、吸い込み口44から気体が吸い込まれ、吹き出し口45から第3支持面23と加熱部31との間に気体が吹き出されるように、気体の流路50に気流が発生する。
詳しくは、図中に太い矢印で示されるように、送風ファン46が駆動されると、吸い込み口44から吸い込まれた気体は、気体の流路50の第1部分50aと、気体の流路50の第2部分50bと、気体の流路50の第3部分50cとを流動し、吹き出し口45から搬送方向Fに搬送される媒体Mに向けて吹き出される。
【0023】
さらに、図中に太い矢印で示されるように、吹き出し口45から吹き出される気体の大部分は、金網49と第3支持面23との間を搬送方向Fに流動し、加熱装置30の外側に排出される。すなわち、吹き出し口45から吹き出される気体の大部分は、記録部15が位置する側と反対側に排出される。
加えて、図中に細い矢印で示されるように、吹き出し口45から吹き出される気体の一部は、金網49を通過して凹部47の中に入り、凹部47の中に収容される加熱部31や反射板32を冷やす。
【0024】
気体の流路50には、所定の温度に到達すると加熱部31への通電を停止するサーモスタット61が取り付けられている。サーモスタット61は、気体の流路50に配置され、加熱部31に対して+Z方向(鉛直上方)に位置する。
加熱部31及び送風ファン46に通電され、気体の流路50に気体が適正に流動する状態で、気体の流路50を形成する流路部材40の温度は概略40℃であり、サーモスタット61の温度は概略40℃である。
本実施形態では、サーモスタット61の温度が所定の温度(概略70℃)に到達すると、サーモスタット61は、加熱部31への通電を停止する。このため、サーモスタット61の温度が概略70℃よりも低い場合に加熱部31への通電が維持され、サーモスタット61の温度が概略70℃に到達すると加熱部31への通電が停止される。
なお、サーモスタット61は、本願における第1切断部の一例である。
【0025】
反射板32の加熱部31と反対側の面には、サーモスタット62が取り付けられている。もちろん、反射板32の加熱部31側の面に、サーモスタット62が取り付けられてもよい。
サーモスタット62は反射板32に接するように配置され、サーモスタット62の温度は反射板32の温度と同じである。加熱部31及び送風ファン46に通電され、気体の流路50に気体が適正に流動する状態で、反射板32の温度は概略60℃であり、サーモスタット62の温度は概略60℃である。
本実施形態では、サーモスタット62の温度が所定の温度(概略80℃)に到達すると、サーモスタット62は、加熱部31への通電を停止する。このため、サーモスタット62の温度が80℃よりも低い場合に加熱部31への通電が維持され、サーモスタット62の温度が概略80℃に到達すると加熱部31への通電が停止される。
なお、サーモスタット62は、本願における第2切断部の一例である。
【0026】
図2は、第2部材42から第3支持面23に向かう方向に見た加熱装置30の平面図である。第2部材42から第3支持面23に向かう方向は、第3支持面23に直交する方向であり、
図2では、第3支持面23に直交する方向から見た平面視における加熱装置30の状態が図示されている。
図2では、第3支持面23が一点鎖線で図示され、第2部材42が実線で図示され、加熱部31と反射板32とサーモスタット61,62とが細い破線で図示され、隔壁部材81が太い破線で図示されている。さらに、サーモスタット61,62に網掛けが施されている。
【0027】
記録装置11は、幅方向寸法が20インチである媒体Mから、幅方向寸法が64インチである媒体Mまでの多様なサイズの媒体Mを処理することができる。すなわち、記録装置11が処理可能な媒体Mの幅方向寸法の最小値は20インチであり、幅方向寸法が20インチである媒体Mを最小媒体M1と称す。記録装置11が処理可能な媒体Mの幅方向寸法の最大値は64インチであり、幅方向寸法が64インチである媒体Mを最大媒体M2と称す。
図2では、最小媒体M1及び最大媒体M2が二点鎖線で図示されている。
さらに、以降の説明では、媒体Mの幅方向をY軸方向とする。Y軸方向のうち一方の方向は+Y方向であり、Y軸方向のうち他方の方向は-Y方向である。また、第3支持面23に直交する方向から見た平面視を、単に平面視と称す。
【0028】
図2に示すように、記録装置11では、最小媒体M1の+Y方向の端と最大媒体M2の+Y方向の端とが同じ位置に配置された状態で、最小媒体M1及び最大媒体M2が第3支持面23によって支持されながら搬送方向Fに搬送される。最小媒体M1の+Y方向の端及び最大媒体M2の+Y方向の端が配置される位置は、基準位置HPである。
すなわち、記録装置11では、媒体Mの+Y方向の端が基準位置HPに位置合わせされた状態で、幅方向の寸法が異なる媒体Mが搬送方向Fに搬送される。
【0029】
第2部材42は加熱装置30の筐体をなし、第2部材42のY軸方向の寸法が加熱装置30のY軸方向の寸法となる。本実施形態では、第2部材42のY軸方向の寸法は概略2mである。第2部材42は板金加工によって形成され、第2部材42の構成材料は鉄である。また、第1部材41も板金加工によって形成され、第1部材41の構成材料も鉄である。
第2部材42は、第1部材41との間で気体の流路50となる空洞を形成し、+Y方向の端及び-Y方向の端が第1部材41によって支持される。第2部材42のY軸方向の寸法が概略2mと長く、+Y方向の端及び-Y方向の端が第1部材41によって支持されると、第2部材42が自重で-Z方向に撓んだ状態になる。すると、第1部材41と第2部材42との間隔、すなわち、気体の流路50における第3支持面23と直交する方向の寸法(気体の流路50の寸法と称す)が不均一になり、気体の流路50の中に気体が均一に流動しにくくなる。
【0030】
このため、本実施形態では、第1部材41と第2部材42との間に隔壁部材81が配置され、第2部材42が隔壁部材81によって支えられている。隔壁部材81は、吸い込み口44から吹き出し口45に向かう方向に延在する部材である。換言すれば、隔壁部材81は、気体の流路50において気体が流動する方向に沿って配置される。隔壁部材81は、Y軸方向に間隔を開けて複数(本実施形態では2つ)配置される。
第1部材41と第2部材42との間に隔壁部材81が配置されることによって、自重による第2部材42の撓みが抑制され、気体の流路50の寸法が均一になり、流路部材40の機械的強度が高められる。
【0031】
気体の流路50は、隔壁部材81によって、第1流路51と第2流路52と第3流路53とからなる複数の流路に区画される。さらに、第1流路51と第2流路52と第3流路53とのそれぞれには、サーモスタット61が配置されている。
このように、本実施形態は、気体の流路50が吸い込み口44から吹き出し口45に向かう方向に延在する隔壁部材81によって複数に区画され、サーモスタット61が複数に区画された気体の流路50(第1流路51、第2流路52、第3流路53)のそれぞれに設けられる構成を有する。
【0032】
もちろん、加熱装置30は、第1部材41と第2部材42との間に隔壁部材81が設けられない構成であってもよい。
第1部材41と第2部材42との間に隔壁部材81が設けられない構成は、気体の流路50が隔壁部材81によって複数に区画される構成と比べて、気体の流路50のY軸方向の寸法が長くなる。この場合、Y軸方向に間隔を開けて複数のサーモスタット61を気体の流路50に設けてもよく、単数のサーモスタット61を気体の流路50に設けてもよい。
【0033】
隔壁部材81によって自重による第2部材42の撓みが抑制されると、第1流路51と第2流路52と第3流路53とにおける気体の流路51,52,53の寸法がそれぞれ同じになり、第1流路51と第2流路52と第3流路53とにおける気体の流路50の寸法が均一になる。すると、複数に区画された気体の流路50(第1流路51、第2流路52、第3流路53)のそれぞれにおいて、気体が均一に流動するようになる。
【0034】
加熱部31のY軸方向の寸法は、最大媒体M2のY軸方向の寸法よりも長く、平面視において、最大媒体M2は加熱部31の内側に配置される。その結果、最大媒体M2が搬送方向Fに搬送される場合、加熱部31は最大媒体M2の全体を加熱することができる。もちろん、最小媒体M1が搬送方向Fに搬送される場合、加熱部31は最小媒体M1の全体を加熱することができる。
【0035】
図2において、多様なサイズの媒体Mが搬送方向Fに搬送される場合、第3支持面23が当該多様なサイズの媒体Mによって覆われた状態になる領域が、領域R1である。例えば、最小媒体M1が搬送方向Fに搬送される場合であっても、最大媒体M2が搬送方向Fに搬送される場合であっても、領域R1では、第3支持面23が媒体Mによって覆われた状態になる。このように、領域R1では、多様なサイズの媒体Mが搬送方向Fに搬送される場合、第3支持面23が媒体Mによって覆われ、第3支持面23が露出しない。
【0036】
図2において、多様なサイズの媒体Mが搬送方向Fに搬送される場合、媒体Mのサイズによっては、第3支持面23が媒体Mによって覆われない場合が発生する領域が、領域R2である。例えば、領域R2では、最小媒体M1が搬送方向Fに搬送される場合に第3支持面23が最小媒体M1によって覆われず、最大媒体M2が搬送方向Fに搬送される場合に第3支持面23が最大媒体M2によって覆われる状態になる。このように、領域R2では、多様なサイズの媒体Mが搬送方向Fに搬送される場合、第3支持面23が媒体Mによって覆われず第3支持面23が露出する場合と、第3支持面23が媒体Mによって覆われ第3支持面23が露出しない場合とが発生する。
【0037】
サーモスタット62は、多様なサイズの媒体Mが搬送方向Fに搬送される場合に、第3支持面23が媒体Mによって覆われ、第3支持面23が露出しない領域R1に配置される。
第3支持面23の構成材料は、アルミニウムなどの熱伝導性に優れた金属である。一方、媒体Mの構成材料は、セルロースやポリエステルなどの有機物である。
従って、多様なサイズの媒体Mが搬送方向Fに搬送される場合、第3支持面23に直交する方向から見た平面視において、サーモスタット62は、セルロースやポリエステルなどの有機物で構成される媒体Mに重なるように配置され、アルミニウムなどの熱伝導性に優れた金属で構成される第3支持面23に重なるように配置されない。
このように、本実施形態は、第3支持面23に直交する方向から見た平面視において、サーモスタット62は、媒体Mに重なるように配置される構成を有する。
【0038】
図3は、
図1に対応する図であり、送風ファン46が停止した場合の記録装置11の状態を示す概略断面図である。
図3では、加熱部31によって熱せられた気体の流動状態が太い矢印で図示されている。さらに、
図3では、送風ファン46が停止した場合、第1部材41における著しく温度が上昇する部分にハッチングが施されている。また、第1部材41において著しく温度が上昇する領域を、第1部材41の蓄熱領域R3と称す。第1部材41の第3部分41cにおいて、+Z方向(鉛直上方)に位置する部分が蓄熱領域R3になる。
なお、第1部材41の蓄熱領域R3は、本願における流路部材における加熱部の熱が対流によって伝播されやすい部位の一例である。
【0039】
加熱部31の熱線は、反射板32によって媒体Mに向けて反射される。加熱部31の熱線の一部は、反射板32に吸収され、輻射によって反射板32が加熱される。さらに、送風ファン46が駆動される場合、加熱部31と反射板32と凹部47を形成する第1部材41とは、吹き出し口45から吹き出される気体によって冷やされる。
このため、送風ファン46が停止し、気体の流路50に気体が流動しなくなると、反射板32の温度が上昇する。
【0040】
一方、送風ファン46や電気配線(図示省略)などの不具合によって、送風ファン46が停止する場合、
図3に太い矢印で示されるように、加熱部31の熱や反射板32の熱によって気体が熱せられ、当該熱せられた気体が上昇気流となって+Z方向(鉛直上方)に流動する。
当該熱せられた気体は、加熱部31や反射板32に対して+Z方向(鉛直上方)に位置する第1部材41の第3部分41cに滞留し、特に、第3部分41cにおける+Z方向(鉛直上方)に位置する部分(蓄熱領域R3)が加熱される。すなわち、送風ファン46が停止した場合に流路部材40において最も温度が上昇する部分が、蓄熱領域R3である。換言すれば、送風ファン46が停止した場合、流路部材40における加熱部31の熱が対流によって伝播されやすい部位が、蓄熱領域R3である。
【0041】
サーモスタット61は、送風ファン46が停止した場合に流路部材40における最も温度が上昇しやすい部位(蓄熱領域R3)に取り付けられている。すなわち、サーモスタット61は、送風ファン46が停止した場合、流路部材40における加熱部31の熱が対流によって伝播されやすい部位(蓄熱領域R3)に取り付けられている。
サーモスタット61の温度と、蓄熱領域R3の温度とは同じである。
【0042】
加熱装置30は、記録部15に対して搬送方向Fの下流側に配置され、非接触で媒体Mを加熱する加熱部31と、吹き出し口45から第3支持面23と加熱部31との間に気体が吹き出されるように、気体の流路50に気流を発生させる送風ファン46とを有する。加熱装置30は、吹き出し口45から媒体Mに対して気体が吹き出された状態で、加熱部31が搬送方向Fに搬送される媒体Mを非接触で加熱し、媒体Mに付着したインクの水分を蒸発させ、媒体Mを乾燥させる。
加熱部31によって加熱され蒸気を含む気体は、吹き出し口45から吹き出される気体によって加熱装置30の外側に排出されるので、媒体M付近に滞留せず、インクの水分の蒸発が促進され、媒体Mが素早く乾燥される。
すなわち、加熱装置30は、加熱による乾燥と送風による乾燥とを同時に実行するので、加熱による乾燥だけが実行される場合と比べて、媒体Mの乾燥速度が早くなる。
【0043】
例えば、加熱部31によって加熱され蒸気を含む気体が記録部15側に排出されると、記録部15が温められ、記録部15の記録品質に悪影響を及ぼしやすい。本実施形態では、加熱部31によって加熱され蒸気を含む気体は記録部15と反対側(搬送方向Fの下流側)に排出されるので、記録部15が温められず、記録部15の記録品質に悪影響を及ぼしにくい。
例えば、加熱部31によって媒体Mの温度が高くなりすぎると、媒体Mの品質が低下し、媒体Mの変色や媒体Mの変形などの不具合が発生する。吹き出し口45から吹き出される気体は、媒体Mの温度が高くなりすぎないように媒体Mを冷やし、媒体Mの品質低下を抑制する。
【0044】
例えば、
図4に示すように、媒体Mのジャム(紙詰まり)によって媒体Mが第3支持面23から浮き上がり、吹き出し口45が媒体Mによって塞がれ、吹き出し口45から気体が吹き出されにくくなる場合がある。この場合、吹き出し口45から気体が吹き出されにくくなると、媒体Mの温度が高くなりすぎ、媒体Mの品質が低下するおそれが生じる。
加えて、吹き出し口45から気体が吹き出されにくくなると、反射板32が冷やされにくくなり、反射板32の温度が上昇するので、媒体Mの温度上昇と反射板32の温度上昇とは正の相関を有する。このため、反射板32の温度上昇から、媒体Mの品質低下が生じる媒体Mの温度上昇を予測することができる。
以降の説明では、媒体Mの品質低下が生じる媒体Mの温度上昇を、媒体Mの過剰な温度上昇と称す。
【0045】
本実施形態では、反射板32にサーモスタット62が取り付けられ、媒体Mの過剰な温度上昇が生じる前に、サーモスタット62が動作し、加熱部31への通電が停止される。
詳しくは、吹き出し口45から気体が吹き出されにくくなり、反射板32及び媒体Mの温度が共に上昇する場合、反射板32の温度(サーモスタット62の温度)が概略80℃よりも低いと媒体Mの過剰な温度上昇が生じない。さらに、反射板32の温度(サーモスタット62の温度)が80℃に到達すると、媒体Mの過剰な温度上昇によって媒体Mの品質低下が生じるおそれがある。このため、サーモスタット62の温度が80℃(所定の温度)に到達すると、サーモスタット62が動作し、加熱部31への通電が停止され、媒体Mが加熱部31によって加熱されなくなる。その結果、媒体Mの過剰な温度上昇が抑制される。
さらに、サーモスタット62の温度が80℃よりも低くなると、媒体Mの過剰な温度上昇が生じないので、サーモスタット62が動作し、加熱部31への通電が再開され、媒体Mが加熱部31によって加熱されるようになる。
このように、本実施形態は、サーモスタット62の温度が所定の温度(80℃)に到達すると、加熱部31への通電が停止され、媒体Mが加熱部31によって加熱されなくなる構成を有する。かかる構成によって、媒体Mが加熱部31によって過剰に加熱され、媒体Mの品質が低下するおそれが抑制される。
【0046】
媒体Mのジャムによって媒体Mが第3支持面23から浮き上がり、吹き出し口45が媒体Mによって塞がれ、吹き出し口45から気体が吹き出されにくくなると、気体の流路50の中で気体が流動しにくくなり、対流によって第1部材41の蓄熱領域R3の温度が上昇し、第1部材41の蓄熱領域R3に取り付けられたサーモスタット61の温度が上昇するので、サーモスタット61の温度上昇から媒体Mの品質低下が生じる媒体Mの過剰な温度上昇を予測し、媒体Mの品質低下を抑制することができる。
ところが、対流によって温度が上昇する第1部材41の蓄熱領域R3の温度変化は、輻射によって加熱される反射板32の温度変化よりも遅い。すなわち、吹き出し口45から気体が吹き出されにくくなると、反射板32は早く温度が上昇し、第1部材41の蓄熱領域R3は遅く温度が上昇する。このため、吹き出し口45から気体が吹き出されにくくなる場合に生じる不具合は、輻射によって加熱される反射板32の温度変化によって適正に対処することができ、対流によって温度が上昇する第1部材41の蓄熱領域R3の温度変化によって適正に対処することが難しい。
従って、吹き出し口45から気体が吹き出されにくくなる場合、反射板32に取り付けられるサーモスタット62によって、媒体Mの過剰な温度上昇を抑制することが好ましい。
【0047】
本実施形態に係る加熱装置30は、サーモスタット61,62に加えて、サーミスター(図示省略)を有し、サーミスターによっても温度を検出し、温度の異常が検出される場合に加熱部31への通電を停止することができる。ところが、サーミスターを使用すると、サーモスタット61,62を使用する場合と比べて、加熱部31の制御が緩慢になり、迅速に加熱部31への通電を停止し、迅速に加熱部31への通電を再開することが難しい。
上述した、媒体Mのジャムは容易に解消される場合が多い。さらに、媒体Mのジャムが解消されると、記録装置11による処理を早く再開させることが望まれる。サーモスタット61,62を使用すると、サーミスターを使用する場合と比べて、迅速に加熱部31への通電を再開させ、迅速に記録装置11による処理を再開させることができる。
【0048】
例えば、加熱部31に過電流が流れ、加熱部31から照射される熱線の強度が強くなりすぎ、反射板32及び媒体Mの温度が共に高くなり、媒体Mの温度が高くなりすぎると、媒体Mの品質が低下するおそれがある。
加熱部31に過電流が流れ、加熱部31から照射される熱線の強度が強くなりすぎる場合、吹き出し口45から気体が吹き出されにくくなる場合と同様に、反射板32の温度(サーモスタット62の温度)が概略80℃よりも低いと媒体Mの過剰な温度上昇が生じず、反射板32の温度(サーモスタット62の温度)が80℃に到達すると、媒体Mの過剰な温度上昇が生じるおそれがある。このため、サーモスタット62の温度が80℃(所定の温度)に到達すると、サーモスタット62が動作し、加熱部31への通電が停止され、媒体Mが加熱部31によって加熱されなくなる。
このため、加熱部31に過電流が流れ、加熱部31から照射される熱線の強度が強くなりすぎる場合であっても、媒体Mが加熱部31によって過剰に加熱され、媒体Mの品質が低下するおそれが抑制される。
【0049】
例えば、最小媒体M1が搬送方向Fに搬送される場合、領域R1では第3支持面23が媒体Mによって覆われ第3支持面23が露出せず、領域R2では第3支持面23が媒体Mによって覆われず第3支持面23が露出する。
本実施形態では、サーモスタット62が反射板32の領域R1に取り付けられている。そして、最小媒体M1が搬送方向Fに搬送される場合、第3支持面23に直交する方向から見た平面視において、反射板32の領域R1に取り付けらるサーモスタット62は、媒体Mに重なるように配置される。
仮に、サーモスタット62が反射板32の領域R2に取り付けられると、最小媒体M1が搬送方向Fに搬送される場合、第3支持面23に直交する方向から見た平面視において、反射板32の領域R2に取り付けられるサーモスタット62は、第3支持面23に重なるように配置される。
【0050】
最小媒体M1が搬送方向Fに搬送される場合、反射板32の領域R1は、直接照射される加熱部31の熱線と、媒体Mの反射によって間接的に照射される加熱部31の熱線とによって加熱される。このように、反射板32の領域R1は、媒体Mの反射によって間接的に照射される加熱部31の熱線で加熱される。
一方、最小媒体M1が搬送方向Fに搬送される場合、反射板32の領域R2は、直接照射される加熱部31の熱線と、第3支持面23の反射によって間接的に照射される加熱部31の熱線とによって加熱される。すなわち、反射板32の領域R2は、第3支持面23の反射によって間接的に照射される加熱部31の熱線で加熱される。
【0051】
媒体Mの構成材料はセルロースやポリエステルなどの有機物であり、第3支持面23の構成材料はアルミニウムなどの金属であり、第3支持面23は、媒体Mよりも加熱部31の熱線(赤外線)を反射しやすい。このため、第3支持面23の反射によって間接的に照射される加熱部31の熱線の強度は、媒体Mの反射によって間接的に照射される加熱部31の熱線の強度よりも強くなる。
このため、第3支持面23の反射によって間接的に照射される加熱部31の熱線で加熱される反射板32の領域R2の温度は、媒体Mの反射によって間接的に照射される加熱部31の熱線で加熱される反射板32の領域R1の温度よりも高くなる。
【0052】
その結果、最小媒体M1が搬送方向Fに搬送される場合、反射板32の領域R1に取り付けられるサーモスタット62の温度は、反射板32の領域R2に取り付けられるサーモスタット62の温度よりも低くなる。
詳しくは、最小媒体M1が搬送方向Fに搬送される場合、反射板32の領域R1に取り付けられるサーモスタット62の温度は概略40℃であり、サーモスタット62が動作する温度(概略80℃)との温度差は概略40℃である。一方、最小媒体M1が搬送方向Fに搬送される場合、反射板32の領域R2に取り付けられるサーモスタット62の温度は概略60℃であり、サーモスタット62が動作する温度(概略80℃)との温度差は概略20℃である。
【0053】
本実施形態では、サーモスタット62が反射板32の領域R1に取り付けられているので、サーモスタット62が動作する温度(概略80℃)との温度差は概略40℃である。一方、サーモスタット62が反射板32の領域R2に取り付けられると、サーモスタット62が動作する温度(概略80℃)との温度差は概略20℃である。
サーモスタット62が動作する温度との温度差は、正常時のサーモスタット62の温度と異常時のサーモスタット62の温度との温度差である。サーモスタット62が動作する温度との温度差が大きくなるとサーモスタット62は誤動作しにくくなり、サーモスタット62が動作する温度との温度差が小さくなるとサーモスタット62は誤動作しやすくなる。
【0054】
本実施形態では、サーモスタット62が反射板32の領域R1に取り付けられ、サーモスタット62が動作する温度との温度差が大きくなるので、サーモスタット62は誤動作しにくくなり、サーモスタット62は適正に動作し、媒体Mが加熱部31によって過剰に加熱され、媒体Mの品質が低下するという不具合が適正に抑制される。
一方、サーモスタット62が反射板32の領域R2に取り付けられると、サーモスタット62が動作する温度との温度差が小さくなるので、サーモスタット62は誤動作しやすくなり、加熱部31への通電を停止する必要がない場合であっても、加熱部31への通電が停止されるおそれがある。
従って、サーモスタット62が反射板32の領域R1に取り付けられる構成、すなわち、第3支持面23に直交する方向から見た平面視において、サーモスタット62が媒体Mに重なるように配置される構成が好ましい。
【0055】
例えば、送風ファン46が停止すると、吹き出し口45から気体が吹き出されなくなり、媒体Mが吹き出し口45から吹き出される気体によって冷やされなくなり、媒体Mの温度が上昇し、媒体Mの品質が低下するおそれがある。
本実施形態では、送風ファン46が停止した場合に流路部材40における最も温度が上昇しやすい部位(蓄熱領域R3)にサーモスタット61が取り付けられているので、媒体Mの過剰な温度上昇が生じる前に、サーモスタット61が動作し、加熱部31への通電が停止される。
【0056】
詳しくは、送風ファン46が停止し、吹き出し口45から気体が吹き出されなくなり、第1部材41の蓄熱領域R3及び媒体Mの温度が共に上昇する場合、第1部材41の蓄熱領域R3の温度(サーモスタット61の温度)が概略70℃よりも低いと媒体Mの過剰な温度上昇が生じず、第1部材41の蓄熱領域R3の温度(サーモスタット61の温度)が70℃に到達すると媒体Mの過剰な温度上昇によって媒体Mの品質低下が生じるおそれがある。このため、サーモスタット61の温度が70℃(所定の温度)に到達すると、サーモスタット61が動作し、加熱部31への通電が停止され、媒体Mが加熱部31によって加熱されなくなる。さらに、サーモスタット61の温度が70℃よりも低くなると、サーモスタット61が動作し、加熱部31への通電が再開され、媒体Mが加熱部31によって加熱されるようになる。
このように、本実施形態は、サーモスタット61の温度が所定の温度(70℃)に到達すると、加熱部31への通電が停止され、媒体Mが加熱部31によって加熱されなくなる構成を有する。かかる構成によって、媒体Mが加熱部31によって過剰に加熱され、媒体Mの品質が低下するおそれが抑制される。
【0057】
以上述べたように、本実施形態に係る加熱装置30は、加熱による乾燥と送風による乾燥とを同時に実行し、記録部15の記録品質への悪影響を抑制しつつ、媒体Mを素早く乾燥させることができる。
加えて、本実施形態に係る加熱装置30は、加熱による乾燥と送風による乾燥とを同時に実行する構成を有していても、温度の異常(媒体Mの過剰な温度上昇)を適正に検知することができる。詳しくは、加熱装置30は、温度の異常(媒体Mの過剰な温度上昇)を事前に検知するサーモスタット61,62を適正な位置に配置することによって、媒体Mの過剰な温度上昇が生じる前に、サーモスタット61,62を動作させ、加熱部31への通電を停止し、媒体Mの過剰な温度上昇を抑制し、媒体Mの品質低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0058】
11…記録装置、12…収容体、13…支持部、14…搬送部、15…記録部、16…第1支持板、17…第2支持板、18…第3支持板、21…第1支持面、22…第2支持面、23…第3支持面、24…搬送ローラー、25…ヘッド、26…キャリッジ、27…ガイド軸、30…加熱装置、31…加熱部、32…反射板、40…流路部材、41…第1部材、41a…第1部分、41b…第2部分、41c…第3部分、44…吸い込み口、45…吹き出し口、46…送風ファン、47…凹部、48…開口、49…金網、50…気体の流路、50a…第1部分、50b…第2部分、50c…第3部分、51…第1流路、52…第2流路、53…第3流路、61,62…サーモスタット、81…隔壁部材。