(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】制御装置、PONシステム、及び、通信方法
(51)【国際特許分類】
H04L 61/5007 20220101AFI20240402BHJP
H04L 12/44 20060101ALI20240402BHJP
H04L 43/02 20220101ALI20240402BHJP
【FI】
H04L61/5007
H04L12/44 200
H04L43/02
(21)【出願番号】P 2020087946
(22)【出願日】2020-05-20
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】吉房 宏之
(72)【発明者】
【氏名】池野田 和行
(72)【発明者】
【氏名】岩田 康裕
【審査官】鈴木 香苗
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-527213(JP,A)
【文献】特表2016-526339(JP,A)
【文献】特表2018-504812(JP,A)
【文献】国際公開第2015/166791(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103701956(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0032687(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 61/5007
H04L 12/44
H04L 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
局側装置を介して宅側装置を制御する制御装置であって、
IPアドレスの設定に係る情報を含んだログ取得要求を送信することと、
前記ログ取得要求に基づきIPアドレスの設定及び活性化が完了した前記宅側装置からの応答に基づいて、レイヤ3ネットワークを利用して前記宅側装置のログを取得することと、を実行するように構成された制御装置。
【請求項2】
局側装置と、該局側装置に接続された宅側装置と、前記局側装置を介して前記宅側装置を制御する制御装置と、を備えたPONシステムであって、
前記制御装置が、IPアドレスの設定に係るログ取得要求を、前記局側装置を介して前記宅側装置に送信し、
前記宅側装置が、前記ログ取得要求に含まれた前記IPアドレスの設定に係る情報に基づき設定処理を行い、IPアドレスを設定し、
前記宅側装置が、設定したIPアドレスを活性化して、ログ取得のためにレイヤ3ネットワークで動作し、
前記制御装置が、前記レイヤ3ネットワークを利用して前記宅側装置のログを取得する、PONシステム。
【請求項3】
局側装置と、該局側装置に接続された宅側装置と、前記局側装置を介して前記宅側装置を制御する制御装置と、を備えたPONシステムの通信方法であって、
前記宅側装置がレイヤ2ネットワークで動作し、前記局側装置及び前記宅側装置間においてレイヤ2ネットワークで通信を行うことと、
前記制御装置からのログ取得要求に基づいて設定されたIPアドレスが活性化されることにより前記宅側装置がレイヤ3ネットワークで動作し、ログ取得のために前記制御装置、前記局側装置、及び前記宅側装置間においてレイヤ3ネットワークで通信を行うことと、を含む通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宅側装置、制御装置、PONシステム、通信方法、及び、保守方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FTTH(Fiber to the Home)等のサービスにおいて、光信号を複数に分岐して一心の光ファイバを複数ユーザで共有するPON(Passive Optical Network)システムが利用されている(例えば特許文献1参照)。PONシステムにおいては、例えば局側装置としてOLT(Optical Line Terminal)が用いられると共に宅側装置としてONU(OpticalNetwork Unit)が用いられ、OLTとONUとの間に光信号を合分波する光スプリッタが設けられることにより、1つのOLTに複数のONUが接続される。
【0003】
通常、ONUにはホストIPアドレスが設定されない。これは、第三者によってIPアドレスを通じた不正なアクセスが行われることを防止するためである。このようなことから、通常のONUは、レイヤ2ネットワークにおいてブリッジモードで動作している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、PONシステムの保守・運用においては、ONUのログデータを定期的に取集し、通信の正常性を確認することが好ましい。現状のONUについてログデータを収集する方法としては、例えば、ONUの筐体を開けて基板にケーブルを接続して収集する方法や、OLT及びONU間のレイヤ2ネットワークの運用・管理・保守に係るイーサネットOAM(Operations Administration Maintenance)の機能を拡張して収集する方法が考えられる。しかしながら、いずれの方法についてもログデータの収集に時間を要すること、処理が煩雑であるため運用経費が高くなること等が問題となる。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、迅速且つ容易に宅側装置のログデータを収集することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る宅側装置は、局側装置に接続された宅側装置であって、レイヤ2ネットワークで動作することと、局側装置から、IPアドレスの設定に係る情報を含んだログ取得要求を受信することと、ログ取得要求に含まれたIPアドレスの設定に係る情報に基づき設定処理を行い、IPアドレスを設定することと、設定したIPアドレスを活性化して、ログ取得のためにレイヤ3ネットワークで動作することと、を実行するように構成されている。
【0008】
本発明の一態様に係る制御装置は、局側装置を介して宅側装置を制御する制御装置であって、IPアドレスの設定に係る情報を含んだログ取得要求を送信することと、ログ取得要求に基づきIPアドレスの設定及び活性化が完了した宅側装置からの応答に基づいて、レイヤ3ネットワークを利用して宅側装置のログを取得することと、を実行するように構成されている。
【0009】
本発明の一態様に係るPONシステムは、局側装置と、該局側装置に接続された宅側装置と、局側装置を介して宅側装置を制御する制御装置と、を備えたPONシステムであって、制御装置が、IPアドレスの設定に係るログ取得要求を、局側装置を介して宅側装置に送信し、宅側装置が、ログ取得要求に含まれたIPアドレスの設定に係る情報に基づき設定処理を行い、IPアドレスを設定し、宅側装置が、設定したIPアドレスを活性化して、ログ取得のためにレイヤ3ネットワークで動作し、制御装置が、レイヤ3ネットワークを利用して宅側装置のログを取得する。
【0010】
本発明の一態様に係る通信方法は、局側装置と、該局側装置に接続された宅側装置と、局側装置を介して宅側装置を制御する制御装置と、を備えたPONシステムの通信方法であって、宅側装置がレイヤ2ネットワークで動作し、局側装置及び宅側装置間においてレイヤ2ネットワークで通信を行うことと、制御装置からのログ取得要求に基づいて設定されたIPアドレスが活性化されることにより宅側装置がレイヤ3ネットワークで動作し、ログ取得のために制御装置、局側装置、及び宅側装置間においてレイヤ3ネットワークで通信を行うことと、を含む。
【0011】
本発明の一態様に係る保守方法は、宅側装置のログ取得に係る通信事業者の保守方法であって、ログ取得を行うログ取得端末のIPアドレスと、ONUに設定するIPアドレスの設定に係る情報とを含んだ設定情報を作成するステップと、設定情報を含んだログ取得要求の宅側装置への送信指示を制御端末に設定するステップと、ログ取得要求に基づき宅側装置においてIPアドレスの設定及び活性化が完了した後において宅側装置のログ取得が実行されるように、ログ取得指示をログ取得端末に設定するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、迅速且つ容易に宅側装置のログデータを収集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るPONシステムの構成図である。
【
図2】
図2は、ONUがレイヤ3ネットワークにおいて動作するときのデータプレーンを示す図である。
【
図3】
図3は、PONシステムにおける処理を示すシーケンス図である。
【
図4】
図4は、比較例に係るPONシステムの処理イメージの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態を列記して説明する。本発明の一態様に係る宅側装置は、局側装置に接続された宅側装置であって、レイヤ2ネットワークで動作することと、局側装置から、IPアドレスの設定に係る情報を含んだログ取得要求を受信することと、ログ取得要求に含まれたIPアドレスの設定に係る情報に基づき設定処理を行い、IPアドレスを設定することと、設定したIPアドレスを活性化して、ログ取得のためにレイヤ3ネットワークで動作することと、を実行するように構成されている。
【0015】
本発明の一態様に係る宅側装置では、通常動作においてレイヤ2ネットワークで動作すると共に、ログ取得要求が受信された場合にはIPアドレスの設定に係る情報に基づきIPアドレスが設定され、活性化されて、ログ取得のための動作においてレイヤ3ネットワークで動作する。このような構成によれば、ログ取得時においてレイヤ3ネットワークのIP通信によって宅側装置のログが取得されるため、ONUの筐体を開けてログを収集する方法やOAMの機能を拡張してログを収集する方法と比較して、迅速且つ容易に宅側装置のログを取得することができる。
【0016】
宅側装置は、IPアドレスを設定するに際して、宅側装置及び該宅側装置に接続された宅内の通信端末間における通信が遮断されるように切り離し処理を行うこと、を更に実行するように構成されていてもよい。このような構成によれば、レイヤ3ネットワークのIP通信を利用して宅側装置のログを収集する際に、宅側装置及び通信端末間の通信が停止される。これにより、ログを収集する際に、IP通信可能な領域が宅側装置よりも上位側に限定され、セキュリティを向上させることができる。
【0017】
宅側装置は、IPアドレスを示す情報を含んだログ取得要求を受信し、ログ取得要求に含まれるIPアドレスを設定する設定処理を行ってもよい。このような構成によれば、宅側装置において極めて容易にIPアドレスを設定することができる。
【0018】
宅側装置は、IPアドレスを示す情報を含まないログ取得要求を受信し、ログ取得要求を受信したことを契機として、所定のアルゴリズムによりIPアドレスを生成し、生成したIPアドレスを設定する設定処理を行ってもよい。このような構成によれば、ログ取得要求にはIPアドレスを示す情報が含まれず宅側装置において所定のアルゴリズムによりIPアドレスが生成されるため、第三者にIPアドレスを盗み取られるリスクが小さく第三者による不正アクセスを好適に防止することができる。
【0019】
宅側装置は、ログ取得が完了した後において、再度レイヤ2ネットワークで動作すること、を更に実行するように構成されていてもよい。このような構成によれば、ログ取得を行う場合にのみ宅側装置がレイヤ3ネットワークで動作することとなり、ログ取得を適切に行いながら第三者による不正アクセスを好適に防止することができる。
【0020】
本発明の一態様に係る制御装置は、局側装置を介して宅側装置を制御する制御装置であって、IPアドレスの設定に係る情報を含んだログ取得要求を送信することと、ログ取得要求に基づきIPアドレスの設定及び活性化が完了した宅側装置からの応答に基づいて、レイヤ3ネットワークを利用して宅側装置のログを取得することと、を実行するように構成されている。このような制御装置によれば、IPアドレスの設定に係る情報を含んだログ取得要求が送信されて宅側装置に適切にIPアドレスを設定させると共に、IPアドレスの設定及び活性化の後においてレイヤ3ネットワークを利用して宅側装置のログが適切に取得される。これにより、迅速且つ容易に宅側装置のログを取得することができる。
【0021】
本発明の一態様に係るPONシステムは、局側装置と、該局側装置に接続された宅側装置と、局側装置を介して宅側装置を制御する制御装置と、を備えたPONシステムであって、制御装置が、IPアドレスの設定に係るログ取得要求を、局側装置を介して宅側装置に送信し、宅側装置が、ログ取得要求に含まれたIPアドレスの設定に係る情報に基づき設定処理を行い、IPアドレスを設定し、宅側装置が、設定したIPアドレスを活性化して、ログ取得のためにレイヤ3ネットワークで動作し、制御装置が、レイヤ3ネットワークを利用して宅側装置のログを取得する。このようなPONシステムによれば、上述した宅側装置と同様に、迅速且つ容易に宅側装置のログを取得することができる。
【0022】
本発明の一態様に係る通信方法は、局側装置と、該局側装置に接続された宅側装置と、局側装置を介して宅側装置を制御する制御装置と、を備えたPONシステムの通信方法であって、宅側装置がレイヤ2ネットワークで動作し、局側装置及び宅側装置間においてレイヤ2ネットワークで通信を行うことと、制御装置からのログ取得要求に基づいて設定されたIPアドレスが活性化されることにより宅側装置がレイヤ3ネットワークで動作し、ログ取得のために制御装置、局側装置、及び宅側装置間においてレイヤ3ネットワークで通信を行うことと、を含む。このような通信方法によれば、通常時において宅側装置がレイヤ2ネットワークで動作して局側装置との間でレイヤ2ネットワークにより通信が行われると共に、ログ取得時において宅側装置がレイヤ3ネットワークで動作して上位装置との間でレイヤ3ネットワークにより通信が行われる。これにより、通常のペイロード通信の機能を実現すると共に、ログ取得時においては、迅速且つ容易に宅側装置のログを取得することができる。
【0023】
本発明の一態様に係る保守方法は、宅側装置のログ取得に係る通信事業者の保守方法であって、ログ取得を行うログ取得端末のIPアドレスと、ONUに設定するIPアドレスの設定に係る情報とを含んだ設定情報を作成するステップと、設定情報を含んだログ取得要求の宅側装置への送信指示を制御端末に設定するステップと、ログ取得要求に基づき宅側装置においてIPアドレスの設定及び活性化が完了した後において宅側装置のログ取得が実行されるように、ログ取得指示をログ取得端末に設定するステップと、を含む。このような保守方法によれば、ログ取得時において宅側装置のIPアドレスの設定及びログ取得の実行が適切に行われ、迅速且つ容易に宅側装置のログを取得することができる。
【0024】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係るPONシステムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、説明において、同一要素または同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0025】
図1は、一実施形態に係るPONシステムの構成図である。PONシステム1は、例えばケーブルテレビ事業者等の事業者により運用されるシステムである。PONシステム1は、FTTHサービスの提供において、光信号を複数に分岐して一心の光ファイバを複数ユーザで共有するネットワークシステムである。
図1に示されるように、PONシステム1は、ONU10(宅側装置)と、OLT30(局側装置)と、制御装置を構成する制御端末50及びログ取得端末70と、PC(Personal Computer)100と、を備える。なお、
図1中には、一つのOLT30及び一つのONU10を示しているが、実際には、PONシステム1には複数のOLT30が含まれており、また、各OLT30に対して複数のONU10が接続されている。OLT30及び複数のONU10は、FTTHネットワークを介して互いに接続されている。制御端末50は、例えば通信事業者のセンタ内に設けられており、OLT30に一対一で対応して設けられている。なお、制御端末50は、複数のOLT30に対応して一つ設けられるものであってもよい。ログ取得端末70は、上位ネットワークNWを介して、OLT30に接続されている。
【0026】
ONU10は、
図1に示されるように、MAC論理回路11と、オプティカルリンク12と、SerDes13と、UNI-IF回路14と、DRAM15と、フラッシュメモリ16と、を備えている。オプティカルリンク12は、OLT30との間で光信号を送受信する機能である。SerDes13は、シリアル通信及びパラレル通信相互でのデータ伝送方式の変換を行う機能である。MAC論理回路11は、各種演算処理を行う回路であり、UNI-IF回路14から入力されたデータに基づきPONフレーム用のフォーマットを生成すると共に、OLT30からのデータについてフレームを解析しPC100に送信するデータについてUNI-IF回路14に出力する。UNI-IF回路14は、PC100から入力されたフレームをMAC論理回路11に出力すると共に、MAC論理回路11から入力されたフレームをPC100に出力する。DRAM15は、上り及び下りでのパケットバッファやMAC論理回路11での演算時のメモリ等に利用される。フラッシュメモリ16は、ONU10における各種処理のログデータ等を記憶している。ログデータとはより具体的には、例えばONU10起動時から起動完了までの起動処理の結果、OLT30からONU10へONU10の動作内容の設定の結果、それ以外のOLT30からONU10へ運用操作の結果、等のデータである。
【0027】
ONU10は、通常モードにおいてレイヤ2ネットワークで動作する。すなわち、ONU10は、通常モードにおいてレイヤ2ブリッジとして機能する。
【0028】
ONU10は、OLT30から、ホストIPアドレスの設定に係る情報であるONU固有情報を含んだログ取得要求を受信する。なお、当該ログ取得要求は、OLT30の上位装置である制御端末50から送信されてOLT30を介してONU10で受信される。ONU固有情報には、少なくともログ取得端末70のIPアドレス及びデフォルトゲートウェイの情報が含まれている。ONU10は、ログ取得要求を受信すると、通常モードから保守モードに切り替えるために、ホストIPアドレスの設定を行う。ONU10は、ログ取得要求に含まれたONU固有情報に基づき設定処理を行い、自身のホストIPアドレスを設定する。
【0029】
具体的には、ONU10は、ホストIPアドレスを示す情報が含まれたONU固有情報を含んだログ取得要求を受信した場合には、ログ取得要求に含まれるホストIPアドレスを設定する設定処理(以下、「方式1の設定処理」と記載する場合がある)を行う。ホストIPアドレスを示す情報とは、ホストIPアドレスそのものであってもよいし、ホストIPアドレスを一意に特定可能なホストIPアドレスに対応づいた情報であってもよい。この場合、ONU10は、再起動せずに当該ホストIPアドレスを有効化(活性化)して、IP通信を活性化する。ONU10は、ホストIPアドレスを活性化して、ログ取得のためにレイヤ3ネットワークで動作する。なお、ONU10は、ONU固有情報においてIPアドレスが指定されたログ取得端末70のみとIP通信が可能である。
【0030】
また、ONU10は、ホストIPアドレスを示す情報を含まないONU固有情報を含んだログ取得要求を受信した場合には、ログ取得要求を受信したことを契機として、所定のアルゴリズムによりホストIPアドレスを生成し、生成したホストIPアドレスを設定する設定処理(以下、「方式2の設定処理」と記載する場合がある)を行ってもよい。所定のアルゴリズムとは、ONU10のソフトウェアの中に予め設定されているアルゴリズムである。当該アルゴリズムによるホストIPアドレスの生成は、例えば、ONU10の持つユニークなMACアドレスとその時点での時刻情報とに基づいて行われる。なお、ONU10のMACアドレスは、工場出荷時に設定されるものであり、フィールドで書き換わることはない。ONU10は、設定したホストIPアドレスをOLT30に送信した上で、再起動せずに当該ホストIPアドレスを有効化(活性化)して、IP通信を活性化する。上述したアルゴリズムにより生成されるホストIPアドレスは完全にユニークなものであるため、OLT30に送信する必要がある。なお、ONU10は、ONU固有情報においてIPアドレスが指定されたログ取得端末70のみとIP通信が可能である。
【0031】
ONU10は、ホストIPアドレスを設定するに際して、ONU10及びONU10に接続された宅内のPC100間における通信が遮断されるように、切り離し処理を行う。具体的には、ONU10は、IO通信可能と判断したタイミングで、IP通信を活性化する前に、MAC論理回路11とUNI-IF回路14との接続を切り離す(
図2参照)。このように、ONU10のIP通信に係る機能はログデータを上位装置へ届けるだけの機能に留め、宅内のPC100との通信はセキュリティ保護の観点から一時停止する。
【0032】
ONU10は、ログ取得が完了した後において、再度レイヤ2ネットワークで動作する。すなわち、ONU10は、保守モードにおいてログ取得が完了すると、OLT30から、ログ取得停止要求を受信し、ホストIPアドレスを非活性化させると共にMAC論理回路11とUNI-IF回路14とを再接続し、通常モードに移行してレイヤ2ブリッジとして動作する。
【0033】
OLT30は、
図1に示されるように、CPU31と、MAC論理回路32と、オプティカルリンク33と、SerDes34と、NNI-IF回路35と、DRAM36と、フラッシュメモリ37と、を備えている。オプティカルリンク33は、ONU10との間で光信号を送受信する機能である。SerDes34は、シリアル通信及びパラレル通信相互でのデータ伝送方式の変換を行う機能である。MAC論理回路32は、各種演算処理を行う回路であり、NNI-IF回路35から入力されたデータに基づきPONフレーム用のフォーマットを生成すると共に、ONU10からのデータについてフレームを解析し上位ネットワークNWに送信するデータについてNNI-IF回路35に出力する。NNI-IF回路35は、上位ネットワークNWから入力されたフレームをMAC論理回路32に出力すると共に、MAC論理回路32から入力されたフレームを上位ネットワークNWに出力する。DRAM36は、上り及び下りでのパケットバッファやMAC論理回路32での演算時のメモリ等に利用される。フラッシュメモリ37は、OLT30における各種処理のログデータ等を記憶している。CPU31は、例えばMAC論理回路32で行わない演算処理を実行する。
【0034】
OLT30は、制御端末50からログ取得要求を受信し、該ログ取得要求をONU10に送信する。OLT30は、例えば、OLT30及びONU10間のレイヤ2ネットワークの運用・管理・保守に係るイーサネットOAMの機能を拡張した拡張OAMにより、ONU10にログ取得要求を送信する。
【0035】
例えば、ONU10が上述した方式1の設定処理を行う場合には、OLT30は、ホストIPアドレスが設定されたONU固有情報を拡張OAMにコピーし、当該拡張OAMをONU10に送信する。また、ONU10が上述した方式2の設定処理を行う場合には、OLT30は、ホストIPアドレスが設定されていないONU固有情報を拡張OAMにコピーし、当該拡張OAMをONU10に送信する。このような拡張OAMの利用方法は、既存のONUファームウェアダウンロード等でも利用されているため、OLT30及びONU10に大きな改修を行うことなく(開発工数を伴わずに)実現可能である。また、OLT30からONU10へ送信する拡張OAMは、PON区間の下り方向を流れるフレームであるため、暗号化されている。このため、拡張OAMにコピーしたONU固有情報(例えばONU10に設定されるホストIPアドレス等が含まれた情報)を盗み取られる危険性が低い。
【0036】
制御端末50(制御装置の一構成)は、OLT30を介してONU10を制御する装置である。制御端末50は、ホストIPアドレスの設定に係る情報が含まれたONU固有情報を含んだログ取得要求を、OLT30を介してONU10に送信する。上述したように、ONU固有情報には、少なくともログ取得端末70のIPアドレス及びデフォルトゲートウェイの情報が含まれている。また、ONU10が上述した方式1の設定処理を行う場合には、ONU固有情報にはホストIPアドレスが含まれている。
【0037】
制御端末50は、ログ取得端末70によるログ取得が完了すると、ログ取得停止要求を、OLT30を介してONU10に送信する。
【0038】
ログ取得端末70は、ログ取得要求に基づきホストIPアドレスの設定及び活性化が完了したONU10からの応答に基づいて、レイヤ3ネットワークを利用してONU10のログデータを取得するログ取得処理を実行する。
図2は、ONU10がレイヤ3ネットワークにおいて動作する時のデータプレーンを示す図である。
図2に示されるように、ログ取得端末70は、レイヤ3ネットワークのIP通信により、ONU10のフラッシュメモリ16からONU10のログデータを収集する。この場合、上述したように、ONU10においてはMAC論理回路11とUNI-IF回路14との接続が切り離されている。
【0039】
次に、
図3を参照して、本実施形態に係るPONシステム1における処理について説明する。
図3は、PONシステム1における処理を示すシーケンス図である。なお、
図3は、PONシステム1における通信方法を示すシーケンス図であると共に、通信事業者の保守方法を示すシーケンス図である。
【0040】
図3に示されるように、通常モードにおいて、ONU10がレイヤ2ネットワークで動作しているとする(ステップS1)。この場合において、ONU10のログデータを取得する保守モードに移行する際には、まず、通信事業者によって、制御端末50に設定される設定情報が作成される。設定情報には、ONU固有情報が設定される。ONU固有情報は、少なくともログ取得端末70のIPアドレス及びデフォルトゲートウェイの情報が含まれている。また、ONU10において上述した方式1の設定処理が行われる場合には、ONU固有情報には、ONU10に設定されるホストIPアドレスを示す情報が含まれている。そして、通信事業者によって、設定情報を含んだログ取得要求のONU10への送信指示(OLT30を介したONU10への送信指示)が制御端末50に設定される。
【0041】
制御端末50は、設定された送信指示に応じて、ONU固有情報を含んだログ取得要求をOLT30に送信する(ステップS2)。つづいて、OLT30は、当該ログ取得要求(レイヤL2ネットワークからレイヤL3ネットワークへの動作変更指示)をONU10に送信する(ステップS3)。
【0042】
ONU10は、ログ取得要求を受信すると、まず、MAC論理回路11とUNI-IF回路14との接続を切り離す(ステップS4)。つづいて、ONU10は、ホストIOアドレスの設定処理を行う(ステップS5)。具体的には、ONU10は、ホストIPアドレスを示す情報が含まれたONU固有情報を含んだログ取得要求を受信した場合には、ログ取得要求に含まれるホストIPアドレスを設定する設定処理(方式1の設定処理)を行う。また、ONU10は、ホストIPアドレスを示す情報を含まないONU固有情報を含んだログ取得要求を受信した場合には、ログ取得要求を受信したことを契機として、所定のアルゴリズムによりホストIPアドレスを生成し、生成したホストIPアドレスを設定する設定処理(方式2の設定処理)を行う。そして、ONU10は、再起動せずに当該ホストIPアドレスを有効化(活性化)して、IP通信を活性化する(ステップS6)。
【0043】
つづいて、ONU10は、ログ取得要求に対する応答(レイヤL2ネットワークからレイヤL3ネットワークへの動作変更応答)をOLT30に送信する(ステップS7)。ONU10が方式2の設定処理を行っている場合には、当該応答にはONU10に設定されたホストIPアドレスを示す情報が含まれている。OLT30は、ログ取得要求に対する応答(ログ取得が有効である旨の応答)を制御端末50に送信する(ステップS8)。この状態においては、ONU10は、レイヤ3ネットワークで動作する(ステップS9)。
【0044】
つづいて、ログ取得端末70は、ログ取得を開始し(ステップS10)、レイヤ3ネットワークを利用してONU10のログデータを取得するログ取得処理を実行する。ログ取得処理が実行される前提として、このようなログ取得処理が実行されるように、通信事業者が、ログ取得指示をログ取得端末70に設定している。ログデータの取得が完了すると、ログ取得端末70は、ログ取得処理を終了する(ステップS11)。
【0045】
ログ取得処理が終了すると、制御端末50は、ログ取得停止要求をOLT30に送信する(ステップS12)。つづいて、OLT30は、当該ログ取得停止要求(レイヤL3ネットワークからレイヤL2ネットワークへの動作変更指示)をONU10に送信する(ステップS13)。
【0046】
ONU10は、ログ取得停止要求を受信すると、ホストIPアドレスを非活性化させる(ステップS14)。そして、ONU10は、MAC論理回路11とUNI-IF回路14とを再接続する(ステップS15)。
【0047】
つづいて、ONU10は、ログ取得停止要求に対する応答(レイヤL3ネットワークからレイヤL2ネットワークへの動作変更応答)をOLT30に送信する(ステップS16)。OLT30は、ログ取得停止要求に対する応答(ログ取得が無効である旨の応答)を制御端末50に送信する(ステップS17)。この状態においては、ONU10は、通常モードに移行してレイヤ2ブリッジとして動作する(ステップS18)。
【0048】
次に、本実施形態に係る構成の作用効果について、比較例に係るPONシステム500(
図4参照)と対比しながら説明する。
【0049】
図4に示される比較例に係るPONシステム500は、ONU10、OLT30、及び制御端末50を備える点において、本実施形態に係るPONシステム1と同様である。ここで、
図4に示されるようなPONシステム500は、本実施形態のPONシステムとは異なり、ONU10のログ取得に係る構成(ログ取得端末70)を備えておらず、また、ONU10にはホストIPアドレスが設定されずにONU10がレイヤ2ネットワークにおいてのみ動作する。このような構成においてONU10のログデータを取得する場合には、例えば、ONU10の筐体を開けて基板にケーブルを接続して収集する方法や、拡張OAMを利用する方法が採用される。しかしながら、これらの方法では、ログデータの収集に時間を要し、また、処理が煩雑であるため運用経費が高くなってしまう。
【0050】
これに対して、本実施形態に係るPONシステム1のONU10は、OLT30に接続されたONU10であって、レイヤ2ネットワークで動作することと、OLT30から、ホストIPアドレスの設定に係る情報を含んだログ取得要求を受信することと、ログ取得要求に含まれたホストIPアドレスの設定に係る情報に基づき設定処理を行い、ホストIPアドレスを設定することと、設定したホストIPアドレスを活性化して、ログ取得のためにレイヤ3ネットワークで動作することと、を実行するように構成されている。
【0051】
このようなONU10では、通常モードにおいてレイヤ2ネットワークで動作すると共に、ログ取得要求が受信された場合にはホストIPアドレスの設定に係る情報に基づきホストIPアドレスが設定され、活性化されて、ログ取得のためのモード(保守モード)においてレイヤ3ネットワークで動作する。このような構成によれば、ログ取得時においてレイヤ3ネットワークのIP通信によってONU10のログが取得されるため、ONU10の筐体を開けてログデータを収集する方法やOAMの機能を拡張してログデータを収集する方法と比較して、迅速且つ容易にONU10のログデータを取得することができる。
【0052】
ONU10は、ホストIPアドレスを設定するに際して、ONU10及び該ONU10に接続された宅内のPC100間における通信が遮断されるように切り離し処理を行うこと、を更に実行するように構成されていてもよい。このような構成によれば、レイヤ3ネットワークのIP通信を利用してONU10のログデータを収集する際に、ONU10及びPC100間の通信が停止される。これにより、ログデータを収集する際に、IP通信可能な領域が宅側装置よりも上位側に限定され、セキュリティを向上させることができる。
【0053】
ONU10は、ホストIPアドレスを示す情報を含んだログ取得要求を受信し、ログ取得要求に含まれるホストIPアドレスを設定する設定処理を行ってもよい。このような構成によれば、ONU10において極めて容易にホストIPアドレスを設定することができる。
【0054】
ONU10は、ホストIPアドレスを示す情報を含まないログ取得要求を受信し、ログ取得要求を受信したことを契機として、所定のアルゴリズムによりホストIPアドレスを生成し、生成したホストIPアドレスを設定する設定処理を行ってもよい。このような構成によれば、ログ取得要求にはホストIPアドレスを示す情報が含まれずONU10において所定のアルゴリズムによりホストIPアドレスが生成されるため、第三者にホストIPアドレスを盗み取られるリスクが小さく第三者による不正アクセスを好適に防止することができる。
【0055】
ONU10は、ログ取得が完了した後において、再度レイヤ2ネットワークで動作すること、を更に実行するように構成されていてもよい。このような構成によれば、ログ取得を行う場合にのみONU10がレイヤ3ネットワークで動作することとなり、ログ取得を適切に行いながら第三者による不正アクセスを好適に防止することができる。
【0056】
本実施形態に係る制御端末50及びログ取得端末70からなる制御装置は、OLT30を介してONU10を制御する制御装置であって、ホストIPアドレスの設定に係る情報を含んだログ取得要求を送信することと、ログ取得要求に基づきホストIPアドレスの設定及び活性化が完了したONU10からの応答に基づいて、レイヤ3ネットワークを利用してONU10のログデータを取得することと、を実行するように構成されている。このような制御装置によれば、ホストIPアドレスの設定に係る情報を含んだログ取得要求が送信されてONU10に適切にホストIPアドレスを設定させると共に、ホストIPアドレスの設定及び活性化の後においてレイヤ3ネットワークを利用してONU10のログデータが適切に取得される。これにより、迅速且つ容易にONU10のログデータを取得することができる。
【0057】
本実施形態に係るPONシステム1は、OLT30と、該OLT30に接続されたONU10と、OLT30を介してONU10を制御する制御装置(制御端末50及びログ取得端末70)と、を備えたPONシステムであって、制御端末50が、ホストIPアドレスの設定に係るログ取得要求を、OLT30を介してONU10に送信し、ONU10が、ログ取得要求に含まれたホストIPアドレスの設定に係る情報に基づき設定処理を行い、ホストIPアドレスを設定し、ONU10が、設定したホストIPアドレスを活性化して、ログ取得のためにレイヤ3ネットワークで動作し、ログ取得端末70が、レイヤ3ネットワークを利用してONU10のログデータを取得する。このようなPONシステム1によれば、迅速且つ容易に宅側装置のログを取得することができる。
【0058】
本実施形態に係る通信方法は、OLT30と、該OLT30に接続されたONU10と、OLT30を介してONU10を制御する制御装置(制御端末50及びログ取得端末70)と、を備えたPONシステム1の通信方法であって、ONU10がレイヤ2ネットワークで動作し、OLT30及びONU10間においてレイヤ2ネットワークで通信を行うことと、制御端末50からのログ取得要求に基づいて設定されたホストIPアドレスが活性化されることによりONU10がレイヤ3ネットワークで動作し、ログ取得のために制御装置、OLT30、及びONU10間においてレイヤ3ネットワークで通信を行うことと、を含む。このような通信方法によれば、通常時においてONU10がレイヤ2ネットワークで動作してOLT30との間でレイヤ2ネットワークにより通信が行われると共に、ログ取得時においてONU10がレイヤ3ネットワークで動作して上位装置との間でレイヤ3ネットワークにより通信が行われる。これにより、通常のペイロード通信の機能を実現すると共に、ログ取得時においては、迅速且つ容易にONU10のログデータを取得することができる。
【0059】
本実施形態に係る保守方法は、ONU10のログ取得に係る通信事業者の保守方法であって、ログ取得を行うログ取得端末70のホストIPアドレスと、ONU10に設定するホストIPアドレスの設定に係る情報とを含んだ設定情報を作成するステップと、設定情報を含んだログ取得要求のONU10への送信指示を制御端末50に設定するステップと、ログ取得要求に基づきONU10においてホストIPアドレスの設定及び活性化が完了した後においてONU10のログ取得が実行されるように、ログ取得指示をログ取得端末70に設定するステップと、を含む。このような保守方法によれば、ログ取得時においてONU10のホストIPアドレスの設定及びログ取得の実行が適切に行われ、迅速且つ容易にONU10のログデータを取得することができる。
【0060】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1…PONシステム、10…ONU、30…OLT、50…制御端末、70…ログ取得端末。