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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】ワイヤハーネスユニット
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20240402BHJP
   H02G 3/03 20060101ALI20240402BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20240402BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20240402BHJP
   H01B 7/42 20060101ALI20240402BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240402BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H02G3/03
H02G3/04 068
H02G3/22
H01B7/42 C
H05K7/20 M
H05K9/00 L
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020099405
(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公開番号】P2021193652
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】丸地 岳夫
(72)【発明者】
【氏名】桑原 正紀
(72)【発明者】
【氏名】木本 裕一
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-128507(JP,U)
【文献】実開昭54-180295(JP,U)
【文献】特開2018-120745(JP,A)
【文献】国際公開第2007/032391(WO,A1)
【文献】特開2001-332139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H02G 3/03
H02G 3/04
H02G 3/22
H01B 7/42
H05K 7/20
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載機器間に電気を伝導する導電路と、
前記導電路を冷却する冷却部と、を備え、
前記導電路は、導電性を有する中空の筒状導体と、前記筒状導体よりも柔軟な柔軟導体と、端子と、を有し、
前記冷却部は、内部に冷却媒体が流通可能であるとともに、前記筒状導体とは別体である冷却チューブを有し、
前記筒状導体は、前記冷却チューブよりも剛性に優れており、
前記柔軟導体は、前記筒状導体と電気的に接続される筒状の第1端部と、前記端子と電気的に接続される第2端部と、を有し、
前記冷却チューブは、前記筒状導体を貫通し、前記柔軟導体の前記筒状の第1端部と前記第2端部との間において前記柔軟導体をさらに貫通する、
ワイヤハーネスユニット。
【請求項2】
前記冷却チューブの外周面は、前記筒状導体の内周面に接触している、請求項1に記載のワイヤハーネスユニット。
【請求項3】
記柔軟導体は、導電性の素線を筒状に編組した編組部材である、
請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネスユニット。
【請求項4】
前記筒状導体は、前記柔軟導体よりも長い、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のワイヤハーネスユニット。
【請求項5】
前記冷却チューブの少なくとも一部と前記筒状導体を覆う電磁シールド部材を備え、
前記電磁シールド部材は、金属素線を編組した編組部材であり、
前記冷却チューブは、前記編組部材を貫通している、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワイヤハーネスユニット。
【請求項6】
前記冷却チューブの少なくとも一部と前記導電路とを覆う外装部材を備え、
前記外装部材は、筒状外装部材と、前記筒状外装部材の端部に接続されるグロメットとを有し、
前記冷却チューブは、前記グロメットを貫通している、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のワイヤハーネスユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネスユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車や電気自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスは、複数の電気機器間を電気的に接続する。また、電気自動車では、車両と地上設備とをワイヤハーネスにより接続し、車両に搭載した蓄電装置を地上設備から充電する。ワイヤハーネスにより供給する電圧が高くなることにより、ワイヤハーネスの発熱量が増加する。このため、ワイヤハーネスを冷却する構成が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、被覆電線と、被覆電線を覆う内筒と、所定の間隔を空けて内筒を覆う外筒とを備え、内筒と外筒との間に冷却媒体の流通通路が形成されているワイヤハーネスを開示する。流通通路は、被覆電線とは別体の内外筒とによって形成されており、被覆電線は流通経路の径方内側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-115253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のワイヤハーネスは、流通通路(冷却媒体が流通する通路)は被覆電線の外側に配置されているため、冷却媒体から熱源である被覆電線の中心部までが遠く、被覆電線を冷却効率の観点で改善の余地がある。
【0006】
本開示の目的は、冷却効率を向上できるワイヤハーネスユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様であるワイヤハーネスユニットは、車載機器間に電気を伝導する導電路と、前記導電路を冷却する冷却部と、を備え、前記導電路は、導電性を有する中空の筒状導体を有し、前記冷却部は、内部に冷却媒体が流通可能であるとともに、前記筒状導体とは別体である冷却チューブを有し、前記筒状導体は、前記冷却チューブよりも剛性に優れており、前記冷却チューブは、前記筒状導体を貫通している。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様であるワイヤハーネスユニットによれば、冷却効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態におけるワイヤハーネスユニットが配策された車両を示す模式図である。
図2図2は、ワイヤハーネスユニットの概略図である。
図3図3は、ワイヤハーネスユニットの概略を示す一部断面図である。
図4図4は、ワイヤハーネスユニットの断面図である。
図5図5は、筒状導体と柔軟導体と端子との接続を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
[1]本開示のワイヤハーネスユニットは、車載機器間に電気を伝導する導電路と、前記導電路を冷却する冷却部と、を備え、前記導電路は、導電性を有する中空の筒状導体を有し、前記冷却部は、内部に冷却媒体が流通可能であるとともに、前記筒状導体とは別体である冷却チューブを有し、前記筒状導体は、前記冷却チューブよりも剛性に優れており、前記冷却チューブは、前記筒状導体を貫通している。
【0011】
この構成によれば、冷却媒体が流通している冷却チューブが筒状導体を貫通することで、筒状導体の内側に冷却媒体を供給できる。このため、筒状導体を内部から冷却でき、冷却効率を向上できる。
【0012】
[2]前記冷却チューブの外周面は、前記筒状導体の内周面に接触していることが好ましい。
この構成によれば、冷却媒体が流通している冷却チューブが筒状導体の内周面に接触していることで、より筒状導体(導電路)を冷却できる。
【0013】
[3]前記導電路は、柔軟導体と、端子とを有し、前記柔軟導体は、前記筒状導体と電気的に接続される第1端部と、前記端子と電気的に接続される第2端部と、を有し、前記柔軟導体は、前記筒状導体はよりも柔軟であることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、筒状導体の端部に柔軟導体が接続されることで、導電路の寸法公差を吸収できる。さらに、車両走行時に発生する揺動の対策にもなる。
[4]前記筒状導体は、前記柔軟導体よりも長いことが好ましい。
【0015】
この構成によれば、筒状導体に冷却チューブが接触する区間が長くなるため、筒状導体をより冷却できる。
[5]前記冷却チューブの少なくとも一部と前記筒状導体を覆う電磁シールド部材を備え、前記電磁シールド部材は、金属素線を編組した編組部材であり、前記冷却チューブは、前記編組部材を貫通していることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、導電路からの電磁ノイズの放射を抑制するシールド性と、冷却部の組立作業性とを両立できる。
[6]前記冷却チューブの少なくとも一部と前記導電路とを覆う外装部材を備え、前記外装部材は、筒状外装部材と、前記筒状外装部材の端部に接続されるグロメットとを有し、前記冷却チューブは、前記グロメットを貫通していることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、冷却チューブがグロメットを貫通して外部に導出されているため、ワイヤハーネスユニットの止水性の低下を抑制できる。
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のワイヤハーネスユニットの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。本明細書における「平行」や「直交」は、厳密に平行や直交の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね平行や直交の場合も含まれる。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
(ワイヤハーネスユニット10の概略構成)
図1に示すワイヤハーネスユニット10は、車両Vに搭載された2個の車載機器を電気的に接続する。車両Vは、例えばハイブリッド車や電気自動車等である。ワイヤハーネスユニット10は、車載機器M1と車載機器M2とを電気的に接続する導電路20と、導電路20を覆う外装部材60とを有している。導電路20は、例えば、その長さ方向の一部が車両Vの床下を通る態様で車載機器M1から車載機器M2にかけて配索されている。車載機器M1及び車載機器M2の一例としては、車載機器M1が車両Vの前方寄りに設置されたインバータであり、車載機器M2が車載機器M1よりも車両Vの後方に設置された高圧バッテリである。インバータとしての車載機器M1は、例えば、車両走行の動力源となる車輪駆動用のモータ(図示略)と接続される。インバータは、高圧バッテリの直流電力から交流電力を生成し、その交流電力をモータに供給する。高圧バッテリとしての車載機器M2は、例えば、百ボルト以上の電圧を供給可能なバッテリである。すなわち、本実施形態の導電路20は、高圧バッテリとインバータ間の高電圧のやりとりを可能とする高圧回路を構成している。
【0019】
2、図3図4に示すように、ワイヤハーネスユニット10は、2つの導電路20、2つの冷却チューブ40、電磁シールド部材50、外装部材60、コネクタ71,72を有している。
【0020】
図3図4図5に示すように、導電路20は、筒状導体21、絶縁被覆22、柔軟導体23,24、端子25,26を有している。
筒状導体21は、導電性を有し、内部が中空の構造である。筒状導体21は、例えば金属製であり、形状保持性が高い。つまり、筒状導体21は、形状を保持可能である。筒状導体21の材料は、例えば銅系やアルミニウム系などの金属材料である。筒状導体21は、図1に示すワイヤハーネスユニット10の配策経路に合わせた形状に形成されている。筒状導体21は、パイプベンダー(パイプ曲げ加工装置)によって曲げ加工が施される。
【0021】
図4は、ワイヤハーネスユニット10の長さ方向と直交する平面によってワイヤハーネスユニット10を切断した断面を示す。図4において、筒状導体21の長さ方向は、図4の紙面表裏方向である。筒状導体21の長さ方向、即ち筒状導体21の延びる方向であって筒状導体21の軸方向に垂直な平面によって筒状導体21を切断した断面形状(つまり、横断面形状)は、例えば円環状である。なお、筒状導体21の断面形状は、任意の形状とすることができる。また、筒状導体21の断面形状において、外周の形状と内周の形状とが互いに異なるものであってもよい。また、筒状導体21の長さ方向において断面形状が異なっていてもよい。
【0022】
絶縁被覆22は、例えば、筒状導体21の外周面を周方向全周にわたって被覆している。絶縁被覆22は、例えば、合成樹脂などの絶縁材料によって構成されている。絶縁被覆22の材料としては、例えば、シリコーン樹脂、架橋ポリエチレンや架橋ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を主成分とする合成樹脂、等を用いることができる。絶縁被覆22の材料としては、1種の材料を単独で、又は2種以上の材料を適宜組み合わせて用いることができる。絶縁被覆22は、例えば、筒状導体21に対する押出成形(押出被覆)によって形成することができる。
【0023】
図3に示すように、筒状導体21は、筒状導体21の長さ方向における両端部である第1端部21aと第2端部21bとを有している。第1端部21aと第2端部21bは、絶縁被覆22から露出している。
【0024】
図3図5に示すように、第1端部21aと第2端部21bには、柔軟導体23,24の一端がそれぞれ接続され、柔軟導体23,24の他端には図2に示す端子25,26が接続されている。詳述すると、柔軟導体23は、筒状導体21の第1端部21aと電気的に接続される第1端部23aと、図2図5に示す端子25と電気的に接続される第2端部23bとを有している。柔軟導体24は、筒状導体21の第2端部21bと電気的に接続される第1端部24aと、図2に示す端子26と電気的に接続される第2端部24bとを有している。
【0025】
柔軟導体23,24は、筒状導体21よりも柔軟性に優れた導電体である。本実施形態の柔軟導体23,24は筒状に形成されている。柔軟導体23,24は、例えば、導電性の素線を筒状に編み込んだ編組線である。素線の材料は、例えば、銅系やアルミニウム系の金属材料である。
【0026】
図3に示すように、筒状に形成された柔軟導体23の第1端部23aの内側に筒状導体21の第1端部21aが配置されている。つまり、筒状の柔軟導体23の第1端部23aは、筒状導体21の第1端部21aを覆っている。柔軟導体23の外周側には締付バンド31aが装着されている。柔軟導体23は、締付バンド31aによって筒状導体21の外周面に圧着される。この締付バンド31aにより、柔軟導体23の第1端部23aは、筒状導体21の第1端部21aの外周面に電気的に接続される。なお、筒状導体21と柔軟導体23とは、例えば超音波溶接等の溶接により接続されてもよい。
【0027】
筒状に形成された柔軟導体24の第1端部24aの内側に筒状導体21の第2端部21bが配置されている。つまり、筒状の柔軟導体24の第1端部24aは、筒状導体21の第2端部21bを覆っている。柔軟導体24の外周側には締付バンド31bが装着されている。柔軟導体24は、締付バンド31bによって筒状導体21の外周面に圧着される。この締付バンド31bにより、柔軟導体24の第1端部24aは、筒状導体21の第2端部21bの外周面に電気的に接続される。なお、柔軟導体24と筒状導体21とは、例えば超音波溶接等の溶接により接続されてもよい。
【0028】
図5は、筒状導体と柔軟導体と端子との接続を示す説明図である。なお、図5では、導電路20のうち、図2図3の左側に示す部材について括弧無しの符号にて示し、図2図3の右側に示す部材について括弧付きの符号にて示す。
【0029】
端子25は、図1図2に示すコネクタ71に保持され、車載機器M1に接続される。端子25は、柔軟導体23の第2端部23bに接続される。例えば、端子25は、一対の圧着片を有し、その圧着片によって柔軟導体23の第2端部23bに圧着されている。端子26は、図1図2に示すコネクタ72に保持され、車載機器M2に接続される。端子26は、柔軟導体24の第2端部24bに接続される。例えば、端子26は、一対の圧着片を有し、その圧着片によって柔軟導体24の第2端部24bに圧着されている。
【0030】
図3図4に示すように、冷却チューブ40は、筒状導体21を貫通している。冷却チューブ40は、中空状に形成されている。冷却チューブ40は、筒状導体21よりも柔軟性に優れている。言い換えると、筒状導体21は、冷却チューブ40よりも剛性に優れている。
【0031】
図4に示すように、本実施形態において、冷却チューブ40の外周面40aは、筒状導体21の内周面21cに接している。なお、冷却チューブ40の外周面40aと筒状導体21の内周面21cとの間に、接着剤や粘着剤等の樹脂材料が介在されてもよい。介在される樹脂材料としては、熱伝導性の良好な材料を用いることができる。冷却チューブ40の材料は、柔軟性を有する樹脂材料、例えばPP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、架橋PE(ポリエチレン)等である。
【0032】
冷却チューブ40の内部には、冷却媒体41が供給される。冷却媒体41は、例えば、水、不凍液、等の液体、気体、気体と液体とが混ざり合う気液二相流、等の各種の流体である。冷却媒体41は、図示しないポンプにより供給される。冷却チューブ40は、冷却媒体41を循環する循環経路の一部を構成する。循環経路は、例えば上記したポンプ、放熱部を含む。ポンプは、冷却媒体41を冷却チューブ40に圧送する。冷却チューブ40に供給された冷却媒体41は、冷却チューブ40の外側に位置する筒状導体21との間で熱交換する。放熱部は、熱交換によって温度が上昇した冷却媒体41の熱を外部へ放熱し、冷却媒体41を冷却する。冷却された冷却媒体41は、再びポンプによって冷却チューブ40へと圧送される。冷却チューブ40は、このように循環する冷却媒体41によって筒状導体21を冷却する冷却部を構成する。
【0033】
図3図4に示すように、電磁シールド部材50は、2つの導電路20を覆っている。電磁シールド部材50は、金属製の素線を筒状に編組した編組部材である。電磁シールド部材50は、シールド性を有する。また、電磁シールド部材50は、柔軟性を有する。図3に示すように、電磁シールド部材50の一端はコネクタ71に接続され、電磁シールド部材50の他端はコネクタ72に接続される。したがって、電磁シールド部材50は、高圧電圧を伝達する導電路20の全長を覆う。これにより、導電路20から発生する電磁ノイズの外部への放射を抑制する。
【0034】
外装部材60は、導電路20を覆っている。上記の冷却チューブ40は、導電路20の筒状導体21を貫通している。したがって、外装部材60は、導電路20と、冷却チューブ40の少なくとも一部を覆っている。
【0035】
外装部材60は、筒状外装部材61と、筒状外装部材61の第1端部61aと第2端部61bとにそれぞれ接続されたグロメット62,63とを有している。
筒状外装部材61は、例えば、筒状導体21の長さ方向の一部の外周を被覆するように設けられている。筒状外装部材61は、例えば、筒状導体21の長さ方向の両端が開口する筒状をなしている。筒状外装部材61は、例えば、複数の筒状導体21の外周を周方向全周にわたって包囲するように設けられている。本実施形態の筒状外装部材61は、円筒状に形成されている。筒状外装部材61は、例えば、筒状外装部材61の中心軸線が延びる軸線方向(長さ方向)に沿って環状凸部と環状凹部とが交互に連設された蛇腹構造を有している。筒状外装部材61の材料としては、例えば、導電性を有する樹脂材料や導電性を有さない樹脂材料を用いることができる。樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ABS樹脂などの合成樹脂を用いることができる。本実施形態の筒状外装部材61は、合成樹脂製のコルゲートチューブである。
【0036】
グロメット62は、概略筒状に形成されている。グロメット62は、例えばゴム製である。グロメット62は、コネクタ71と筒状外装部材61との間に掛け渡されるように形成されている。グロメット62は、締付バンド64aによりコネクタ71の外面に密着するように締付固定されている。また、グロメット62は、締付バンド64bにより、筒状外装部材61の第1端部61aの外側に密着するように締結固定されている。グロメット62には、グロメット62を貫通する貫通孔62aが形成されている。貫通孔62aは、グロメット62の内部と外部とを連通する。
【0037】
本実施形態において、グロメット62には、2つの貫通孔62aが形成され、各貫通孔62aに冷却チューブ40がそれぞれ挿通されている。各貫通孔62aは、それぞれに挿通される冷却チューブ40の外周面と密着するように形成されている。図3に示すように、冷却チューブ40は、柔軟導体23と電磁シールド部材50を貫通し、グロメット62の貫通孔62aからグロメット62の外部へと導出されている。
【0038】
グロメット63は、概略筒状に形成されている。グロメット63は、例えばゴム製である。グロメット63は、コネクタ72と筒状外装部材61との間に掛け渡されるように形成されている。グロメット63は、締付バンド65aによりコネクタ72の外面に密着するように締付固定されている。また、グロメット63は、締付バンド65bにより、筒状外装部材61の第2端部61bの外側に密着するように締結固定されている。グロメット63には、グロメット63を貫通する貫通孔63aが形成されている。貫通孔63aは、グロメット63の内部と外部とを連通する。
【0039】
本実施形態において、グロメット63には、2つの貫通孔63aが形成され、各貫通孔63aに冷却チューブ40が挿通されている。各貫通孔63aは、それぞれに挿通される冷却チューブ40の外周面と密着するように形成されている。図3に示すように、冷却チューブ40は、柔軟導体24と電磁シールド部材50を貫通し、グロメット63の貫通孔63aからグロメット63の外部へと導出されている。
【0040】
(作用)
次に、本実施形態のワイヤハーネスユニット10の作用を説明する。
ワイヤハーネスユニット10は、車載機器M1,M2間に電気を伝導する導電路20と、導電路20を冷却する冷却部を構成する冷却チューブ40とを備える。導電路20は、導電性を有する中空の筒状導体21を有し、冷却チューブ40は、内部に冷却媒体41が流通可能であるとともに、筒状導体21とは別体である。筒状導体21は、冷却チューブ40よりも剛性に優れている。そして、冷却チューブ40は、筒状導体21を貫通している。
【0041】
冷却チューブ40には、冷却媒体41が供給される。筒状導体21は、冷却チューブ40に供給される冷却媒体41との間の熱交換によって冷却される。このように、筒状導体21を内側から冷却することができる。
【0042】
筒状導体21は、同一断面積の複数の金属素線を撚り合わせた撚線や中実構造の単芯線と比べ、外周の長さが長い。つまり、筒状導体21は、撚線や単芯線と比べ、外周側の面積が大きい。したがって、より大きな面積から外部に向けて放熱できるため、放熱性を向上できる。
【0043】
導電路20は、筒状導体21の第1端部21aと第2端部21bとに接続された柔軟導体23,24を有している。柔軟導体23,24は、筒状導体21よりも柔軟性に優れている。したがって、導電路20の寸法公差を吸収できる。また、車両Vが振動した場合、この振動に起因する柔軟導体23,24の両側に接続された部品同士の位置ずれを吸収できる。本実施形態では、筒状導体21とコネクタ71,72との間、つまり筒状導体21と車載機器M1,M2との間の位置ずれを吸収できる。したがって、コネクタ71,72や端子25,26に加わる負荷を低減できる。
【0044】
また、図3に示すように、筒状導体21の長さL1は、柔軟導体23,24の長さL2,L3よりも長い。柔軟導体23,24の長さL2,L3は、柔軟導体23,24の柔軟性により導電路20を曲げることが可能な範囲を示す長さである。本実施形態において、長さL2,L3は、筒状導体21とコネクタ71,72との間の距離である。したがって、冷却チューブ40が貫通する筒状導体21が長い、つまり冷却チューブ40と筒状導体21とが接して熱交換する区間を長くできるため、筒状導体21をより冷却できる。なお、柔軟導体23,24の長さL2,L3は、互いに等しくてもよく、互いに異なっていてもよい。
【0045】
本実施形態の柔軟導体23,24は、金属製の素線を筒状に編組した編組部材である。このため、冷却チューブ40を柔軟導体23,24の途中で、柔軟導体23,24から導出できる。これにより、冷却チューブ40をワイヤハーネスユニット10の外部へと容易に導出でき、冷却チューブ40に対して、冷却媒体41を循環させるための構成部材を容易に接続できる。
【0046】
電磁シールド部材50は、2つの導電路20を覆っている。電磁シールド部材50は、金属製の素線を筒状に編組した編組部材である。このため、導電路20から発生する電磁ノイズの外部への放射を抑制できる。また、このため、冷却チューブ40を電磁シールド部材50の途中で、電磁シールド部材50から導出できる。これにより、冷却チューブ40をワイヤハーネスユニット10の外部へと容易に導出でき、冷却チューブ40に対して、冷却媒体41を循環させるための構成部材を容易に接続できる。
【0047】
ワイヤハーネスユニット10は、冷却チューブ40の少なくとも一部と導電路20とを覆う外装部材60を備えている。外装部材60は、筒状外装部材61と、筒状外装部材61の第1端部61aと第2端部61bとにそれぞれ接続されたグロメット62,63とを有している。冷却チューブ40は、グロメット62,63を貫通している。このように、冷却チューブ40がグロメット62,63を貫通してワイヤハーネスユニット10の外部に導出されているため、ワイヤハーネスユニット10の止水性の低下を抑制できる。
【0048】
以上記述したように、本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)ワイヤハーネスユニット10は、車載機器M1,M2間に電気を伝導する導電路20と、導電路20を冷却する冷却部を構成する冷却チューブ40とを備える。導電路20は、導電性を有する中空の筒状導体を有し、冷却チューブ40は、内部に冷却媒体41が流通可能であるとともに、筒状導体21とは別体である。筒状導体21は、冷却チューブ40よりも剛性に優れている。そして、冷却チューブ40は、筒状導体21を貫通している。
【0049】
冷却チューブ40には、冷却媒体41が供給される。筒状導体21は、冷却チューブ40に供給される冷却媒体41との間の熱交換によって冷却される。このように、筒状導体21を内側から冷却することができ、冷却効率を向上できる。
【0050】
(2)筒状導体21は、同一断面積の複数の金属素線を撚り合わせた撚線や中実構造の単芯線と比べ、外周の長さが長い。つまり、筒状導体21は、撚線や単芯線と比べ、外周側の面積が大きい。したがって、より大きな面積から外部に向けて放熱できるため、放熱性を向上できる。
【0051】
(3)導電路20は、筒状導体21の第1端部21aと第2端部21bとに接続された柔軟導体23,24を有している。柔軟導体23,24は、筒状導体21よりも柔軟性に優れている。したがって、導電路20の寸法公差を吸収できる。また、車両Vが振動した場合、この振動に起因する柔軟導体23,24の両側に接続された部品同士の位置ずれを吸収できる。本実施形態では、筒状導体21とコネクタ71,72との間、つまり筒状導体21と車載機器M1,M2との間の位置ずれを吸収できる。したがって、コネクタ71,72や端子25,26に加わる負荷を低減できる。
【0052】
(4)筒状導体21の長さL1は、柔軟導体23,24の長さL2,L3よりも長い。したがって、冷却チューブ40が貫通する筒状導体21が長い、つまり冷却チューブ40と筒状導体21とが接して熱交換する区間を長くできるため、筒状導体21をより冷却できる。
【0053】
(5)柔軟導体23,24は、金属製の素線を筒状に編組した編組部材である。このため、冷却チューブ40を柔軟導体23,24の途中で、柔軟導体23,24から導出できる。これにより、冷却チューブ40をワイヤハーネスユニット10の外部へと容易に導出でき、冷却チューブ40に対して、冷却媒体41を循環させるための構成部材を容易に接続できる。
【0054】
(6)電磁シールド部材50は、2つの導電路20を覆っている。電磁シールド部材50は、金属製の素線を筒状に編組した編組部材である。このため、導電路20から発生する電磁ノイズの外部への放射を抑制できる。また、このため、冷却チューブ40を電磁シールド部材50の途中で、電磁シールド部材50から導出できる。これにより、冷却チューブ40をワイヤハーネスユニット10の外部へと容易に導出でき、冷却チューブ40に対して、冷却媒体41を循環させるための構成部材を容易に接続できる。
【0055】
(7)ワイヤハーネスユニット10は、冷却チューブ40の少なくとも一部と導電路20とを覆う外装部材60を備えている。外装部材60は、筒状外装部材61と、筒状外装部材61の第1端部61aと第2端部61bとにそれぞれ接続されたグロメット62,63とを有している。冷却チューブ40は、グロメット62,63を貫通している。このように、冷却チューブ40がグロメット62,63を貫通してワイヤハーネスユニット10の外部に導出されているため、ワイヤハーネスユニット10の止水性の低下を抑制できる。
【0056】
(変更例)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0057】
・冷却チューブ40を、互いに接続して冷却媒体41を循環させるようにしてもよい。
例えば、ワイヤハーネスユニット10に対する冷却媒体41の供給側において、1本の冷却チューブを図3に示す冷却チューブ40に接続し、1本の冷却チューブから供給する冷却媒体41を2本の冷却チューブ40に分岐させる。冷却チューブの分岐部分は、グロメット62の外部することもでき、又はグロメット62の内部に配置することもできる。このようにすると、冷却媒体41の供給のために1本の冷却チューブをワイヤハーネスユニット10に接続すればよく、ワイヤハーネスユニット10の取り付け工程を簡略化できる。
【0058】
また、ワイヤハーネスユニット10に対する冷却媒体41の排出側において、2本の冷却チューブ40を接続し、各冷却チューブ40の冷却媒体41を合流させる。冷却チューブの合流部分は、グロメット63の外部することもでき、又はグロメット63の内部に配置することもできる。このようにすると、冷却媒体41の排出のために1本の冷却チューブをワイヤハーネスユニット10に接続すればよく、ワイヤハーネスユニット10の取り付け工程を簡略化できる。
【0059】
・上記実施形態では、グロメット62,63から冷却チューブ40を導出する、つまり冷却チューブ40がグロメット62,63を貫通していたが、冷却チューブ40をコネクタ71,72から導出するようにしてもよい。このようにすることで、筒状導体21とコネクタ71,72とを冷却できる。
【0060】
・上記実施形態の電磁シールド部材50を、金属テープ等としてもよい。
・上記実施形態に対し、1つ又は3つ以上の導電路を備えたワイヤハーネスユニットとしてもよい。
【0061】
・上記実施形態の柔軟導体23,24として、複数の金属素線を撚り合わせた撚線を用いてもよい。
・上記実施形態に対し、筒状の柔軟導体23,24は、筒状導体21を覆わなくてもよい。例えば、筒状の柔軟導体23,24を丸めて棒状とし、その柔軟導体23,24を筒状導体21の外周面に対して締付バンド31a,31bによって圧着することで、柔軟導体23,24を筒状導体21と電気的に接続してもよい。この場合、筒状導体21を貫通する冷却チューブ40を柔軟導体23,24の途中から導出する必要がなく、組み立てを容易に行うことができる。
【0062】
・上記実施形態に対し、例えば筒状の柔軟導体23,24をシート状とし、その柔軟導体23,24を筒状導体21の外周面に対してすし巻き状に巻き付け、締付バンド31a,31bによって筒状導体21に圧着してもよい。柔軟導体23,24は、筒状導体21を貫通する冷却チューブ40に対して巻き付けられてもよく、巻き付けられていなくてもよい。冷却チューブ40に柔軟導体23,24を巻き付けた場合、すし巻き状に重ねられた柔軟導体23,24の間から冷却チューブ40を容易に引き出すことができる。
【0063】
・上記実施形態及び変更例では、コネクタ71側における柔軟導体23の形状と、コネクタ72側における柔軟導体24の形状とを互いに同じとしたが、互いに異なる形状としてもよい。例えば、筒状の柔軟導体23の内側に筒状導体21の第1端部21aを配置して締付バンド31aによって柔軟導体23と筒状導体21とを互いに接続し、棒状とした柔軟導体24を締付バンド31bによって筒状導体21の外周面に圧着して柔軟導体24と筒状導体21とを互いに接続するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 ワイヤハーネスユニット
20 導電路
21 筒状導体
21a 第1端部
21b 第2端部
21c 内周面
22 絶縁被覆
23 柔軟導体
23a 第1端部
23b 第2端部
24 柔軟導体
24a 第1端部
24b 第2端部
25,26 端子
31a,31b 締付バンド
40 冷却チューブ
40a 外周面
41 冷却媒体
50 電磁シールド部材
60 外装部材
61 筒状外装部材
61a 第1端部
61b 第2端部
62 グロメット
62a 貫通孔
63 グロメット
63a 貫通孔
64a,64b 締付バンド
65a,65b 締付バンド
71,72 コネクタ
L1,L2,L3 長さ
M1,M2 車載機器
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5