(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】ブーム
(51)【国際特許分類】
B66C 23/62 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
B66C23/62
(21)【出願番号】P 2020099620
(22)【出願日】2020-06-08
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】清水 健司
(72)【発明者】
【氏名】小林 和宏
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-084061(JP,U)
【文献】特開2017-001840(JP,A)
【文献】特開2006-282287(JP,A)
【文献】特開平08-091776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向に沿って配置された起伏中心軸に回動自在に支持されるブームであって、
筒状に形成されたブーム本体と、
当該ブーム本体の長手方向の基端に設けられた仕切板と、
当該仕切板に設けられ、上記起伏中心軸が挿通されるボスを有する基端フレームとを備え、
上記ボスは、上記基端フレームの外面から上記幅方向外側に突出した突出部を有し、
上記突出部の先端部が貫通された状態で当該先端部に固着された嵌合板と、
当該嵌合板の周縁及び上記基端フレームの外面を連結し、内部に上記ボスを収容する連結板とを備えるブーム。
【請求項2】
上記連結板は、上記嵌合板及び上記基端フレームと共に箱形状を成す請求項1に記載のブーム。
【請求項3】
上記仕切板の一部が上記連結板の一部を兼ねている請求項1又は2に記載のブーム。
【請求項4】
上記ブーム本体の外面、上記仕切板の外縁及び上記基端フレームの外面に渡って配置された補強板が備えられ、当該補強板の周縁が上記ブーム本体の外面、上記仕切板の外縁及び上記基端フレームの外面に固着されている請求項3に記載のブーム。
【請求項5】
上記補強板は、上記連結板に固着されている請求項4に記載のブーム。
【請求項6】
上記ブーム本体は、テレスコピックを成し、相対的に外側に配置されたブーム本体は、相対的に内側に配置されたブーム本体に設けられたブーム固定ピンが挿抜される固定ボスを備え、
上記補強板は、上記固定ボスに固着されている請求項4または5に記載のブーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動式クレーンに搭載されるブーム、詳しくは、旋回台に支持され、起伏中心軸の周りに起伏可能なブームの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ラフテレーンクレーン等の移動式クレーンは、起伏可能なブームを備えている。ブームを支持する旋回台は、一対の支持フレームを備えている。各支持フレームは、幅方向に所定のスパンで対向配置され、各支持フレームの間にブームが配置される。上記起伏中心軸は、一対の支持フレームに支持された状態で、ブームの基端部を回動可能に軸支する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
移動式クレーンの性能、すなわち吊下可能な吊荷の最大重量やブームの伸縮長さ等に応じて、編成されるブームの段数や最大幅寸法が設計される。これに応じて旋回台も専用設計され、支持フレームのスパンが決定されるのが原則であるが、近年では、設計のモジュール化が進展し、ブームのサイズにかかわらず、共通の旋回台が採用される。つまり、最も大きいサイズのブームに対応して上記スパンが設計された旋回台が採用される。そうすると、一般にブームを軸支する起伏中心軸の長さが最適寸法よりも長くなり、特に起伏中心軸に付加される曲げモーメントの影響が大きくなる。このことは、ブームのサイズが上記スパンに対して小さくなるほど顕著である。この対策として、従来、支持フレームとブームとの間に生じる隙間に補強材(無垢の板材)が組み込まれ、起伏中心軸に生じる応力が抑えられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ブームの設計においても当然に軽量化が要請されている。ブームは、一般に鋼板が折り曲げられ、いわゆる閉断面構造の箱形に形成されるが、軽量化のために鋼板の肉厚が薄くなるように設計される。ところが、前述の無垢の補強材は一般に重量物であり、これが組み込まれることによって、結果としてブームの軽量化設計が無に帰することになりかねない。その一方で、上記補強材に代えて、単純に肉抜き構造のスペーサ等を採用すするならば、応力集中による損傷等(強度不足の問題)が生じかねない。
【0006】
本発明はかかる背景のもとになされたものであって、その目的は、旋回台の共通化を前提として、ブームの軽量化設計を達成しつつ応力集中を回避して実用に耐える強度を備えたブームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係るブームは、幅方向に沿って配置された起伏中心軸に回動自在に支持される。本発明に係るブームは、筒状に形成されたブーム本体と、当該ブーム本体の長手方向の基端に設けられた仕切板と、当該仕切板に設けられ、上記起伏中心軸が挿通されるボスを有する基端フレームとを備える。上記ボスは、上記基端フレームの外面から上記幅方向外側に突出した突出部を有する。本発明に係るブームは、上記突出部の先端部が貫通された状態で当該先端部に固着された嵌合板と、当該嵌合板の周縁及び上記基端フレームの外面を連結し、内部に上記ボスを収容する連結板とを備える。
【0008】
この構成によれば、ブームが起伏中心軸に支持されるに際して、起伏中心軸を支持する旋回台とブームとの間の幅方向の隙間に嵌合板及び連結板が配置されるので、これらのサイズを上記隙間に適合させることにより、ブームと旋回台との間の幅方向の隙間を埋めることができる。これにより、ブームのサイズが異なっても旋回台を共通化することが容易である。上記嵌合板及び連結板は、無垢の板材ではなく、いわゆる肉抜き構造の部材であるから、ブームの軽量化設計がなされる。しかも、上記嵌合板がボスに固着されることによって、当該嵌合板及び連結板の機械的強度が向上する。
【0009】
(2) 上記連結板は、上記嵌合板及び上記基端フレームと共に箱構造を成すのがよい。
【0010】
箱形状を成すことによって嵌合板及び連結板よりなる部材の剛性が向上し、軽量化に資する。
【0011】
(3) 上記仕切板の一部が上記連結板の一部を兼ねていてもよい。
【0012】
仕切板と連結板とが一体に構成されるため、嵌合板及び連結板よりなる部材の強度を高くすることができる。
【0013】
(4) 上記ブーム本体の外面、上記仕切板の外縁及び上記基端フレームの外面に渡って配置された補強板が備えられ、当該補強板の周縁が上記ブーム本体の外面、上記仕切板の外縁及び上記基端フレームの外面に固着されているのが好ましい。
【0014】
この構成によれば、補強板がブーム本体と仕切板と基端フレームとに渡って配置されている。そのため、基端フレームとブーム本体との境界部(仕切板の周辺部)の亀裂その他の破損を防ぐことができる。
【0015】
(5) 上記補強板は、上記連結板に固着されているのが好ましい。
【0016】
補強板と連結板とが一体に構成されるため、嵌合板及び連結板よりなる部材の強度を高くすることができる。
【0017】
(6) 上記ブーム本体は、テレスコピックを成し、相対的に外側に配置されたブーム本体は、相対的に内側に配置されたブーム本体に設けられたブーム固定ピンが挿抜される固定ボスを備えていてもよく、上記補強板は、上記固定ボスに固着されているのが好ましい。
【0018】
補強板と固定ボスとが一体に構成されるため、補強板の強度を高くすることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、旋回台の共通化を前提として、ブームの軽量化設計を達成しつつ応力集中を回避して実用に耐える強度を備えたブームが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るブームが採用された移動式のクレーンの左側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るブームの基端部の斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るベースブームの斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る基端フレームの斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係る基端フレームの斜視図である。
【
図6】
図6(A)は、本発明の一実施形態に係る仕切板の斜視図であり、
図6(B)は、本発明の一実施形態に係る嵌合板及び連結板の斜視図であり、
図6(C)は、本発明の一実施形態に係る補強板の斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係る基端フレームの縦断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態に係る基端フレーム及び旋回台の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施形態は、本発明の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは、言うまでもない。
【0022】
図1が示すように、クレーン10は、走行体11と、ブーム装置12と、キャビン13と、ウインチ39とを備える。
【0023】
走行体11は、車体20と、車輪21とを備える。車体20は、不図示の車軸を回転可能に支持している。車軸は、車体20の前部及び後部に位置している。車輪21が、車軸の両端に保持されている。車軸及び車輪21は、エンジン(不図示)によって回転駆動される。これにより、走行体11は走行する。
【0024】
ブーム装置12は、旋回台31と、旋回モータ(不図示)と、ブーム50と、伸縮シリンダ(不図示)と、起伏シリンダ36とを備える。
【0025】
旋回台31は、車体20によって上下方向に延びた旋回軸周りに旋回可能に支持されている。旋回台31は、旋回モータによって旋回される。ブーム50は、旋回台31に支持されている。ブーム50は、旋回台31と一体に旋回可能である。
【0026】
また、ブーム50の長手方向101の基端部は、幅方向100(
図2参照、
図1の紙面奥行き方向)に沿って配置された起伏中心軸30によって回動自在に支持されている。
【0027】
図8が示すように、旋回台31は、基台24と、一対の支持フレーム22とを備えている。基台24は、車体20(
図1参照)に支持されており、上下方向に延びる旋回中心軸の周りに旋回可能である。一対の支持フレーム22は、対向配置され、基台24の上面から上方へ突出している。各支持フレーム22は、貫通孔を有している。当該貫通孔に、ボス23が嵌め込まれている。このボス23に、起伏中心軸30の両端部が挿通される。つまり、起伏中心軸30の両端部は、旋回台31に設けられた一対の支持フレーム22によって支持されている。
【0028】
図9が示すように、起伏中心軸30は、ブーム50の長手方向101の基端部を構成する基端フレーム70に挿通されている。具体的には、基端フレーム70はボス75(特許請求の範囲に記載された「ボス」に相当)を有し、このボス75に起伏中心軸30が挿通されている。これにより、ブーム50は、起伏中心軸30を中心として回動可能(すなわち起伏動作可能)となっている。ブーム50の長手方向101の基端部の構造については、後に詳細に説明される。
【0029】
ブーム50は、起伏シリンダ36の伸縮によって、起伏中心軸30を中心にして倒伏位置と起立位置とに変位する。
図1は、倒伏位置にあるブーム50を実線で示し、起立位置にあるブーム50を破線で示している。
【0030】
図1が示すように、ブーム50は、テレスコピックを成している。ブーム50は、トップブーム52、中間ブーム53、及びベースブーム54を備えている。トップブーム52、中間ブーム53、及びベースブーム54は、特許請求の範囲に記載されたブーム本体の一例である。つまり、ブーム50は、3段構成である。これらは、いわゆる閉断面を有する箱状部材からなり、いわゆる入れ子状に組み立てられている。ベースブーム54に対して中間ブーム53及びトップブーム52が、ブーム50の長手方向101にスライドするように組み立てられている。ブーム50は、内部に配置された伸縮シリンダによって、当該スライドが実行されて伸縮される。なお、
図1は、ブーム50が収縮した状態が示されている。また、ブーム50は3段構成である必要はなく、ブーム50は2つ以上の中間ブーム53を備えていてもよい。
【0031】
キャビン13は、旋回台31に搭載されている。キャビン13は、操作者が着座するシートと、走行体11の運転に用いる運転装置と、ブーム装置12の操縦に用いる操縦装置とを有する。すなわち、クレーン10は、いわゆるラフテレーンクレーンであって、走行体11の運転及びブーム装置12の操縦が1つのキャビン13内で行われる。但し、クレーン10は、運転装置を有するキャビンと、操縦装置を有するキャビンとの2つのキャビンを備えたオールテレーンクレーンであってもよい。運転装置は、ステアリング機構、スロットル機構、トランスミッション機構、ブレーキ機構等を有し、操作者は、運転装置を操作して走行体11を走行させる。操縦装置は、旋回モータや、伸縮シリンダや、起伏シリンダ36や、ウインチモータ(不図示)等を駆動させるための複数のレバー等を有する。操作者は、操縦装置を用いて、ブーム装置12を操作する。
【0032】
ウインチ39は、ワイヤロープ42が巻回された回転自在のドラム41と、ワイヤロープ42に繋がれた吊下フック40とを有する。
【0033】
ドラム41は、旋回台31に回転可能に支持されている。なお、ドラム41は、旋回台31以外、例えばベースブーム54に支持されていてもよい。ドラム41は、ウインチモータによって回転される。回転するドラム41は、ワイヤロープ42を繰り出し、或いはワイヤロープ42を巻き取る。
【0034】
ワイヤロープ42は、ドラム41からブーム50に沿って架け渡されている。詳細には、ワイヤロープ42は、ブーム50の基端部に設けられたワイヤシーブ44に巻き掛けられ、ブーム50の上面の上方を、ブーム50の長手方向101に沿って、ブーム50の基端部から先端部へ架け渡されている。ワイヤロープ42は、ブーム50の先端部に設けられたワイヤシーブ43に巻き掛けられ、垂下している。
【0035】
吊下フック40は、ワイヤロープ42の先端に繋がれている。吊下フック40は、ブーム50の先端部からワイヤロープ42によって吊下される。吊下フック40は、ドラム41が回転することによって昇降する。
【0036】
以下に、本発明の特徴部分であるブーム50の長手方向101の基端部の構造が説明される。
【0037】
図2が示すように、ブーム50の基端部は、ベースブーム54と、仕切板60と、基端フレーム70と、嵌合板90と、連結板91と、補強板32とを備えている。
【0038】
図3が示すように、ベースブーム54は、鋼板が折り曲げられることによって、いわゆる閉断面を有する箱状に構成されている。ベースブーム54は、筒状に形成されている。ベースブーム54は、長手方向101の先端側に開口55を有しており、長手方向101の基端側に開口56を有している。
【0039】
ベースブーム54内に、中間ブーム53(
図1参照)が配置されている。中間ブーム53は、ベースブーム54に対して相対的にスライドすることによって、開口55を通じてベースブーム54から突出され、開口55を通じてベースブーム54内に収容される。なお、中間ブーム53内にトップブーム52(
図1参照)が配置されており、ベースブーム54に対する中間ブーム53と同様に、トップブーム52が中間ブーム53に対してスライドする。これにより、ブーム50が伸縮する。
【0040】
ベースブーム54は、固定ボス25を備えている。固定ボス25は、ベースブーム54の外側面541に形成された貫通孔に嵌め込まれており、両者は溶接されている。本実施形態において、固定ボス25は、幅方向100の両外側面541にそれぞれ4つ設けられている。固定ボス25は、ベースブーム54の基端部に1対、先端部に2対、長手方向101の中央部に1対設けられている。なお、固定ボス25の数や位置は、特に限定されるものではない。
【0041】
固定ボス25は、ベースブーム54内に配置された中間ブーム53(
図1参照)を、ベースブーム54に固定するためのものである。すなわち、中間ブーム53は、
図2に破線で示されたブーム固定ピン26を備えている。つまり、相対的に内側に配置された中間ブーム53がブーム固定ピン26を備え、相対的に外側に配置されたベースブーム54が固定ボス25を備えている。ブーム固定ピン26は、不図示の駆動機構によって駆動伝達されることによって、固定ボス25に対して進退する。ブーム固定ピン26が固定ボス25に挿通された状態において、中間ブーム53はベースブーム54に固定される。一方、ブーム固定ピン26が固定ボス25から脱抜した状態において、中間ブーム53はベースブーム54に対してスライド可能である。
【0042】
なお、固定ボス25は、中間ブーム53にも設けられていてもよい。この場合、トップブーム52に設けられたブーム固定ピン26が当該固定ボス25に対して進退することにより、トップブーム52と中間ブーム53との固定の有無を切り替え可能である。
【0043】
図2及び
図4が示すように、仕切板60は鋼板からなり、これが屈曲形成されている。仕切板60は、ベースブーム54と基端フレーム70との間に配置されており、ベースブーム54及び基端フレーム70の境界を仕切る部材である。
【0044】
図6(A)が示すように、仕切板60は、貫通孔61を有する。仕切板60の外形は、ベースブーム54の開口56の縁58(
図3参照)の外形に対応している。仕切板60の第1面63の外縁部がベースブーム54の開口56の縁58に合わされた状態で、両者が溶接されている。つまり、
図2が示すように、仕切板60は、ベースブーム54の長手方向101の基端に設けられている。
【0045】
図6(A)が示すように、仕切板60は、その幅方向100の外縁から外側へ突出する凸部65を備えている。
【0046】
図4が示すように、基端フレーム70は、仕切板60の第1面63の裏面である第2面に溶接されている。つまり、前述のように、基端フレーム70は、長手方向101において、ベースブーム54との間に仕切板60を挟んでいる(
図2参照)。なお、
図2が示すように、基端フレーム70端面の外形は、仕切板60の外形に対応している。
【0047】
図4及び
図5が示すように、基端フレーム70は、幅方向100に対向する一対の基部71と、各基部71の上部同士を連結する上連結部72と、各基部71の下部同士を連結する下連結部73とを備えている。一対の基部71、上連結部72、及び下連結部73は、一体に構成されている。基端フレーム70は、一対の基部71、上連結部72、及び下連結部73によって区画された貫通孔74を有している。貫通孔74は、仕切板60の貫通孔61に対応する位置に形成されている。仕切板60の第1面63及びその裏面にベースブーム54及び基端フレーム70が溶接された状態(
図2参照)において、ベースブーム54の内部空間は、貫通孔61、74を通じて外部と連通している。
【0048】
図7が示すように、基端フレーム70の一対の基部71は、それぞれボス75を有する。各ボス75は筒状である。各ボス75は、基部71を幅方向100に貫通している。2つのボス75は、幅方向100において一直線上に位置している。各ボス75は、基部71の幅方向100の外面711、つまり基端フレーム70の外面よりも幅方向100の外側へ突出した突出部76を有している。
【0049】
ボス75の間に、筒状部材77が設けられている。筒状部材77の両端は、ボス75に溶接されている。筒状部材77は、2つのボス75と幅方向100において一直線上に位置している。なお、筒状部材77の有無は任意である。
【0050】
基端フレーム70が旋回台31の一対の支持フレーム22の間に位置する状態で、2つのボス75及び筒状部材77に、起伏中心軸30(
図8参照)が挿通される。これにより、
図9が示すように、ブーム50の基端部が、起伏中心軸30によって回動可能に支持される。
図9において、起伏中心軸30は破線で示されている。
【0051】
本実施形態では、一本の起伏中心軸30が基端フレーム70(ブーム50の基端部)を支持しているが、二本の起伏中心軸30が基端フレーム70を支持していてもよい。つまり、二本の起伏中心軸30の一方が左側の支持フレーム22と左側の基部71とに挿通されており、二本の起伏中心軸30の他方が右側の支持フレーム22と右側の基部71とに挿通されていてもよい。
【0052】
図4、
図5、及び
図7が示すように、嵌合板90及び連結板91は、一対の基部71の各々に設けられている。なお、以下では、一方の基部71に設けられた嵌合板90及び連結板91の構成が説明される。他方の基部71に設けられた嵌合板90及び連結板91の構成は、一方の基部71に設けられた嵌合板90及び連結板91と同様であるため、その説明は省略される。
【0053】
図6(B)が示すように、嵌合板90は、鋼板からなり、貫通孔92を有する。
図7が示すように、ボス75の突出部76の先端部761が、貫通孔92に貫通されている。先端部761と嵌合板90の貫通孔92を区画する内面とが溶接されている。
【0054】
図5及び
図6(B)が示すように、連結板91は、鋼板からなり、嵌合板90の周縁から突出した状態で当該周縁に溶接されている。連結板91は、嵌合板90の上端部から突出した上板911と、嵌合板90の下端部から突出した下板912と、長手方向101の仕切板60とは反対側の端において上板911と下板912とを繋いでいる側板913とを備えている。
【0055】
図4、
図5、及び
図7が示すように、連結板91の先端は、基部71の幅方向100の外面711に溶接されている。これにより、連結板91は、嵌合板90の周縁と基部71の外面711(基端フレーム70の外面)とを連結している。
【0056】
仕切板60の凸部65は、連結板91の一部を兼ねている。
図4が示すように、仕切板60の凸部65の先端は、嵌合板90に溶接されている。また、凸部65の上端は、上板911の仕切板60側の端に溶接されている。また、凸部65の下端は、下板912の仕切板60側の端に溶接されている。
【0057】
以上のように構成された連結板91(上板911、下板912、側板913、及び凸部65)は、嵌合板90及び基端フレーム70と共に内部に空洞が形成された箱構造を成している。
【0058】
ボス75の突出部76は、連結板91(上板911、下板912、側板913、及び仕切板60の凸部65)に四方を囲まれている。つまり、連結板91は、その内部にボス75を収容している。
【0059】
図2及び
図6(C)が示す補強板32は、ブーム50の幅方向100の両側にそれぞれ設けられている。なお、
図2は、ブーム50の幅方向100の一方側に設けられた補強板32のみを示している。一対の補強板32は同様の構成であるため、以下では、一対の補強板32のうちの一方の構成が説明され、他方の構成の説明は省略される。
【0060】
図6(C)が示すように、補強板32は、基部321と、基部321の上端部から長手方向101の先端側へ延びた延出部322と、基部321の上端部から長手方向101の基端側へ延びた上延出部323と、基部321の下端部から長手方向101の基端側へ延びた下延出部324とよりなる。
【0061】
図2が示すように、補強板32は、ベースブーム54の外側面541、仕切板60の外縁62、及び基端フレーム70の外面(基部71の外面711)に渡って配置されており、これら外側面541、外縁62、及び外面711に溶接されている。
【0062】
補強板32の基部321及び延出部322の縁328(
図6(C)参照)は、上方及び長手方向101の基端側から固定ボス25(詳細には、ベースブーム54の基端部に設けられた固定ボス25)に溶接されている。補強板32の基部321の縁325(
図6(C)参照)は、長手方向101の先端側から仕切板60の凸部65に溶接されている。補強板32の上延出部323の縁326(
図6(C)参照)は、上方から連結板91の上板911に溶接されている。補強板32の下延出部324の縁327(
図6(C)参照)は、下方から連結板91の下板912(
図6(B)参照)に溶接されている。
【0063】
[実施形態の作用効果]
【0064】
本実施形態によれば、ブーム50が起伏中心軸30に支持されるに際して、起伏中心軸30を支持する旋回台31とブーム50との間の幅方向100の隙間に、嵌合板90と連結板91よりなる部材が配置される(
図7及び
図9参照)。これにより、起伏中心軸30を支持する部位の十分な剛性及び機械的強度が維持される。しかも、嵌合板90及び連結板91からなる部材は、無垢の板材ではなく、前述のように内部に空洞が形成された箱構造を有するので、ブーム50の軽量化も実現される。さらに、嵌合板90がボス75に溶接されることによって、上記箱構造の剛性が一層向上し、起伏中心軸30を支持する部位の機械的強度がより高くなる。
【0065】
本実施形態では、嵌合板90のサイズ(幅方向の寸法)を変えるだけで、ブーム50のサイズが変更された場合であっても、ブーム50と旋回台31との間の隙間を埋めることができる。そのため、旋回台31が共通の部品として使用され得る。
【0066】
本実施形態では、によれば、連結板91が嵌合板90及び基端フレーム70と共に箱形状を成しているため、嵌合板90及び連結板91よりなる部材の強度を高くすることができる。
【0067】
本実施形態では、仕切板60及び連結板91が一体構造であるから、嵌合板90及び連結板91が成す構造の剛性がより一層高くなるという利点がある。
【0068】
本実施形態では、補強板32がベースブーム54と仕切板60と基端フレーム70との間に掛け渡されている。そのため、基端フレーム70とベースブーム54との境界部(仕切板60の周辺部)の亀裂その他の破損を防ぐことができるし、仮に仕切板60の周辺に亀裂等が生じた場合であっても、その進展が防止される。
【0069】
本実施形態では、補強板32及び連結板91が一体構造であるから、嵌合板90及び連結板91が成す箱構造の剛性がより一層高くなる。
【0070】
本実施形態では、補強板32及び固定ボス25が一体構造とされるため、両者が相まって互いの機械的強度を補強し合うという利点がある。
【0071】
[変形例]
【0072】
上記実施形態では、嵌合板90とボス75の先端部761、嵌合板90と連結板91、補強板32と基端フレーム70、補強板32と連結板91、補強板32と固定ボス25が溶接されているが、接着その他の固着手段が採用されてもよい。固着手段としては、一体的に形成されている場合も含む。例えば、嵌合板90及び連結板91が、単一の鋼板が屈曲ないし湾曲され、場合によっては機械加工が施されることにより成形されてもよい。
【0073】
本実施形態において、連結板91は箱状に形成されていたが、連結板91は箱状でなくてもよい。例えば、連結板91は、上板911と下板912のみで構成され、側板913を備えていなくてもよい。
【0074】
本実施形態において、仕切板60の一部である凸部65が連結板91の一部を兼ねているが、仕切板60の一部が連結板91を兼ねていなくてもよい。例えば、仕切板60が凸部65を備えていなくてもよい。この場合、連結板91が上板911、下板912、側板913に加えて、凸部65の位置に第2の側板を備えていてもよい。この第2の側板は、例えば、長手方向101の仕切板60側の端において上板911と下板912とを繋ぐ板状部材である。
【0075】
連結板91は、補強板32に溶接されていなくてもよい。また、ブーム50は、補強板32を備えていなくてもよい。
【0076】
補強板32は、固定ボス25に溶接されていなくてもよい。また、ブーム50は、固定ボス25を備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0077】
10・・・クレーン
11・・・走行体
12・・・ブーム装置
13・・・キャビン
20・・・車体
21・・・車輪
22・・・支持フレーム
23・・・ボス
24・・・基台
25・・・固定ボス
26・・・ブーム固定ピン
30・・・起伏中心軸
31・・・旋回台
32・・・補強板
36・・・起伏シリンダ
39・・・ウインチ
40・・・吊下フック
41・・・ドラム
42・・・ワイヤロープ
43・・・ワイヤシーブ
44・・・ワイヤシーブ
50・・・ブーム
52・・・トップブーム
53・・・中間ブーム(ブーム本体)
54・・・ベースブーム(ブーム本体)
55・・・開口
56・・・開口
58・・・縁
60・・・仕切板
61・・・貫通孔
62・・・外縁
63・・・第1面
65・・・凸部
70・・・基端フレーム
71・・・基部
72・・・上連結部
73・・・下連結部
74・・・貫通孔
75・・・ボス
76・・・突出部
77・・・筒状部材
90・・・嵌合板
91・・・連結板
92・・・貫通孔
100・・・幅方向
101・・・長手方向
321・・・基部
322・・・延出部
323・・・上延出部
324・・・下延出部
325・・・縁
326・・・縁
327・・・縁
328・・・縁
541・・・外側面
711・・・外面
761・・・先端部
911・・・上板
912・・・下板
913・・・側板