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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/225 20160101AFI20240402BHJP
   H02K 29/12 20060101ALI20240402BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H02K11/225
H02K29/12
H02K1/22 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020101754
(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公開番号】P2021197790
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】大竹 新一
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕章
(72)【発明者】
【氏名】枡谷 智矢
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-231648(JP,A)
【文献】特表2007-532872(JP,A)
【文献】特開昭51-93308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/225
H02K 29/12
H02K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石が配置されるとともに電磁鋼板により構成されるロータコアを含むロータと、
磁束を発生させる励磁コイルと、前記励磁コイルからの磁束の変化に応じて起電力を発生させる受信コイルとを含み、前記ロータコアの軸方向の一方側の軸方向端面と前記軸方向に対向するように配置されるセンサ部と、を備え、
前記ロータコアは、前記ロータコアを前記軸方向に貫通するとともに前記電磁鋼板を流れる前記永久磁石の磁束を遮断するフラックスバリアを含み、
前記センサ部は、前記軸方向から見て前記ロータコアの回転時に前記フラックスバリアが通過する領域に配置されている、回転電機。
【請求項2】
前記センサ部は、前記ロータコアの回転に伴う前記受信コイルと前記フラックスバリアとの重なり面積の変化に応じた、前記受信コイルと前記軸方向端面とに対する前記励磁コイルの磁束の鎖交面積の変化に起因する、前記起電力の変化を検出するように構成されている、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記センサ部は、前記フラックスバリアとの間に障害物が設けられないように配置されているとともに、前記励磁コイルからの磁束により前記軸方向端面に渦電流が生じる位置に配置されている、請求項1または2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記フラックスバリアは、周方向において、前記ロータコアの回転軸を中心に等角度間隔で複数配置されており、
前記センサ部は、前記軸方向から見て、前記ロータコアの回転に伴って前記複数のフラックスバリアの各々と重なるように設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記受信コイルは、sinコイルと、前記sinコイルと周方向において90度の電気角度分ずらされて配置されているcosコイルとを含み、
前記センサ部は、前記軸方向から見て、前記sinコイルおよび前記cosコイルの各々が前記ロータコアの回転時に前記フラックスバリアが通過する前記領域に配置されるように設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項6】
前記フラックスバリアの径方向外側の端部は、前記sinコイルの径方向外側の端部、および、前記cosコイルの径方向外側の端部の各々に対して、径方向において同じ位置か、または、径方向外側に設けられ、
前記フラックスバリアの径方向内側の端部は、前記sinコイルの径方向内側の端部、および、前記cosコイルの径方向内側の端部の各々に対して、径方向において同じ位置か、または、径方向内側に設けられている、請求項5に記載の回転電機。
【請求項7】
前記フラックスバリアの前記周方向における幅は、前記sinコイルの前記周方向における幅、および、前記cosコイルの前記周方向における幅以下である、請求項5または6に記載の回転電機。
【請求項8】
前記フラックスバリアは、前記軸方向から見て、矩形状に形成されており、
前記sinコイルおよび前記cosコイルの各々は、前記軸方向から見て、正弦波状に形成されている、請求項5~7のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項9】
前記sinコイルおよび前記cosコイルの各々は、前記軸方向から見て、前記永久磁石とオーバラップしない位置で、かつ、前記フラックスバリアとオーバラップする位置に設けられている、請求項5~8のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項10】
前記ロータコアは、前記軸方向の両端に設けられるエンドプレートをさらに含み、
少なくとも前記センサ部と前記ロータコアとの間に設けられる前記エンドプレートは、前記軸方向から見て、前記フラックスバリアと重なる位置に設けられる貫通孔を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項11】
前記ロータコアの回転に伴う前記受信コイルと前記フラックスバリアとの重なり面積の変化に応じた、前記受信コイルと前記軸方向端面とに対する前記励磁コイルの磁束の鎖交面積の変化に起因する、前記起電力の変化に関する情報を前記センサ部から取得するとともに、前記センサ部から取得した前記起電力の変化に関する情報に基づいて、前記ロータコアの磁極位置を検出する磁極位置検出部をさらに備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項12】
前記受信コイルは、sinコイルと、前記sinコイルと周方向において90度の電気角度分ずらされて配置されているcosコイルとを含み、
前記sinコイルは、第1sinコイルと、前記第1sinコイルと前記軸方向から見て重なる位置に配置されている第2sinコイルとにより構成されており、
前記cosコイルは、第1cosコイルと、前記第1cosコイルと前記軸方向から見て重なる位置に配置されている第2cosコイルとにより構成されており、
前記磁極位置検出部は、前記第1sinコイルと前記軸方向端面との前記鎖交面積の変化に基づく信号と、前記第2sinコイルと前記軸方向端面との前記鎖交面積の変化に基づく信号との差分、および、前記第1cosコイルと前記軸方向端面との前記鎖交面積の変化に基づく信号と、前記第2cosコイルと前記軸方向端面との前記鎖交面積の変化に基づく信号との差分に基づいて、前記ロータコアの磁極位置を検出するように構成されている、請求項11に記載の回転電機。










【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、永久磁石が配置されている回転電機が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、永久磁石が挿入される貫通孔が設けられるロータコアを含むモータが開示されている。また、ロータコアの軸方向の両端には、端板(エンドプレート)が配置されている。このエンドプレートは、軸方向に窪む凹部と軸方向に突出する凸部とが周方向において交互に設けられる形状を有している。また、モータには、正弦波コイル、余弦波コイル、および励磁コイルを含むセンサステータが設けられている。センサステータは、エンドプレートと軸方向に対向する位置に配置されている。
【0004】
ここで、励磁コイルが発生する磁束がエンドプレートの凸部に入ると、渦電流が発生することに起因して励磁コイルの磁束とは逆向きの磁束が発生する。その結果、励磁コイルの磁束が打ち消され、減衰する。したがって、正弦波コイル(余弦波コイル)が、エンドプレートの凸部と対向している場合、磁束が減衰することに起因して正弦波コイル(余弦波コイル)において発生する誘起電圧が減衰する。一方、正弦波コイル(余弦波コイル)が、エンドプレートの凹部と対向している場合、渦電流が発生しないことに起因して磁束が打ち消されないので、正弦波コイル(余弦波コイル)に誘起電圧が発生する。すなわち、凹部および凸部に対向している場合に正弦波コイル(余弦波コイル)に発生する誘起電圧に差が出る。正弦波コイルの出力値と余弦波コイルの出力値との比を変数とする逆正接関数は、電気角と一義的に対応している。したがって、上記特許文献1には明記されていないが、正弦波コイルの出力値と余弦波コイルの出力値との比に基づいて磁極位置を検出することが可能である。これにより、ロータコアの角度変位が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-231648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載のモータでは、端板(エンドプレート)に凹部と凸部とが形成されているために、エンドプレートの構造が複雑化する。また、エンドプレートに凹部と凸部とを形成するために、エンドプレートに対して機械加工(切削加工等)を行う必要がある。また、エンドプレートに凹凸を設ける必要があるため、ロータの軸方向の長さが大きくなる場合がある。このため、ロータの構造が複雑化するとともにロータの軸方向の長さが大きくなるという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ロータの構造が複雑化することおよびロータの軸方向の長さが大きくなるのを防止することが可能な回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における回転電機は、永久磁石が配置されるとともに電磁鋼板により構成されるロータコアを含むロータと、磁束を発生させる励磁コイルと、励磁コイルからの磁束の変化に応じて起電力を発生させる受信コイルとを含み、ロータコアの軸方向の一方側の軸方向端面と軸方向に対向するように配置されるセンサ部と、を備え、ロータコアは、ロータコアを軸方向に貫通するとともに電磁鋼板を流れる永久磁石の磁束を遮断するフラックスバリアを含み、センサ部は、軸方向から見てロータコアの回転時にフラックスバリアが通過する領域に配置されている。
【0009】
この発明の一の局面による回転電機では、上記のように、センサ部は、軸方向から見てロータコアの回転時にフラックスバリアが通過する領域に配置されている。これにより、ロータコアの回転に伴うフラックスバリアと受信コイルとの重なり面積の変化に応じて、受信コイルとロータコアの軸方向端面とに対する励磁コイルの磁束の鎖交面積を変化させることができる。この鎖交面積の変化に起因して受信コイルの起電力が変化するので、受信コイルの起電力の変化に基づいて、ロータコアの磁極位置を検出することができる。上記のように、ロータコアにフラックスバリアが設けられていれば、受信コイルとロータコアの軸方向端面とに対する励磁コイルの磁束の鎖交面積を変化させるために、機械加工により凹凸形状が形成されたエンドプレートをロータコアに配置する必要がない。その結果、ロータの構造の複雑化を防止することができる。また、軸方向に凹凸する凹凸形状を有するエンドプレートが配置されないので、ロータ(ロータコア)の軸方向の長さが大きくなるのを防止することができる。したがって、ロータの構造が複雑化することおよびロータの軸方向の長さが大きくなるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロータの構造が複雑化することおよびロータの軸方向の長さが大きくなるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態による回転電機の構成を示す平面図である。
図2図1の200-200線に沿った断面図である。
図3】一実施形態によるセンサ部の構成を示す平面図である。
図4】一実施形態によるsinコイルとフラックスバリアとの関係を示した部分拡大平面図である。
図5】一実施形態によるcosコイルとフラックスバリアとの関係を示した部分拡大平面図である。
図6】一実施形態によるロータコアの回転に伴うsinコイルと電磁鋼板とに対する磁束の鎖交面積の変化を示した部分拡大平面図である。
図7】一実施形態による受信コイルと電磁鋼板とに対する磁束の鎖交面積の変化を示した図である。
図8】一実施形態によるセンサ部(受信コイル)が受信する磁束を示した断面図である。(図8(a)は、センサ部がフラックスバリアと重なる位置に設けられる場合の磁束を示す図である。図8(b)は、センサ部が電磁鋼板と重なる位置に設けられる場合の磁束を示す図である。)
図9】一実施形態による磁束の鎖交面積の変化に起因する起電力の変化に基づいて集積回路が生成した波形信号である。
図10】一実施形態による磁極位置検出部がセンサ部からの波形信号に基づいて生成した信号である。
図11】一実施形態による磁極位置検出部が算出したロータ回転角度とarctan(sin/cos)との関係を示した図である。
図12】一実施形態の変形例による回転電機の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
[本実施形態]
図1図11を参照して、本実施形態による回転電機100について説明する。
【0014】
本明細書では、「軸方向」とは、ロータ1(ロータコア4)の回転軸線Cに沿った方向を意味し、図中のZ方向を意味する。また、「径方向」とは、ロータ1(ロータコア4)の径方向(R1方向またはR2方向)を意味し、「周方向」は、ロータ1(ロータコア4)の周方向(E1方向またはE2方向)を意味する。
【0015】
図1に示すように、回転電機100は、ロータ1とステータ2とを備える。また、ロータ1およびステータ2は、それぞれ、円環状に形成されている。そして、ロータ1は、ステータ2の径方向内側に対向して配置されている。すなわち、本実施形態では、回転電機100は、インナーロータ型の回転電機として構成されている。また、ロータ1(ロータコア4)には、図示しないシャフトが配置されるシャフト挿入孔3が設けられている。上記シャフトは、ギア等の回転力伝達部材を介して、エンジンや車軸等に接続されている。たとえば、回転電機100は、モータ、ジェネレータ、または、モータ兼ジェネレータとして構成されており、車両に搭載されるように構成されている。
【0016】
また、ロータコア4は、複数の電磁鋼板4a(図2参照)が積層されることによって形成されている。また、ロータコア4は、永久磁石5を備える。ロータコア4には、永久磁石5が挿入される磁石挿入孔6が複数設けられている。すなわち、回転電機100は、埋込永久磁石型モータ(IPMモータ:Interior Permanent Magnet Motor)として構成されている。また、永久磁石5は、ロータコア4のうちの径方向外側の領域A2に配置されている。また、互いに隣接する2つの磁石挿入孔6は、V字状に配置されている。なお、磁石挿入孔6の配置および個数は、これに限られない。また、ロータコア4は、軸方向の一方側(Z1側)の軸方向端面4cと、軸方向の他方側(Z2側)の軸方向端面4dとを有する。
【0017】
また、ステータ2は、ステータコア2aと、ステータコア2aに配置された図示しないコイルとを含む。ステータコア2aは、たとえば、複数の電磁鋼板(珪素鋼板)が軸方向に積層されており、磁束を通過可能に構成されている。コイルは、外部の電源部に接続されており、電力(たとえば、3相交流の電力)が供給されるように構成されている。そして、コイルは、電力が供給されることにより、磁界を発生させるように構成されている。また、ロータ1および図示しないシャフトは、コイルに電力が供給されない場合でも、エンジン等の駆動または車軸の回転に伴って、ステータ2に対して回転するように構成されている。
【0018】
永久磁石5は、ロータコア4の軸方向に直交する断面が長方形形状を有している。なお、永久磁石5は、たとえばネオジウム磁石である。
【0019】
また、ロータコア4は、磁石挿入孔6に充填されている熱硬化性の図示しない樹脂材を備える。樹脂材は、磁石挿入孔6に配置されている永久磁石5を磁石挿入孔6内に固定するように設けられている。
【0020】
また、ロータコア4は、電磁鋼板4aを流れる永久磁石5の磁束を遮断するフラックスバリア7を含む。フラックスバリア7は、ロータコア4を軸方向に貫通する(図2参照)ように設けられている。また、フラックスバリア7は、軸方向から見て、矩形状に形成されている。なお、矩形状は、4角形形状に加えて扇形状を含む。
【0021】
フラックスバリア7は、周方向において、ロータコア4の回転軸を中心に等角度間隔で複数配置されている。本実施形態では、フラックスバリア7は8つ設けられているので、フラックスバリア7は、45度間隔で配置されている。
【0022】
また、フラックスバリア7は、周方向において、V字状に配置される一対の磁石挿入孔6の間に設けられている。また、複数のフラックスバリア7の各々は、磁石挿入孔6よりも径方向内側に設けられている。なお、上記のフラックスバリア7および磁石挿入孔6の個数および配置等は一例であり、これに限られない。
【0023】
ここで、回転電機100は、ロータコア4の軸方向の一方側(本実施形態ではZ1側)に配置されるセンサ部8を備える。センサ部8は、ロータコア4の軸方向一方側の軸方向端面4cと軸方向に対向するように配置されている。センサ部8は、軸方向から見て、センサ部8の径方向位置が、フラックスバリア7の径方向位置と重なるように配置されている。また、センサ部8は、ロータコア4の曲率に沿った円弧状に形成されている。
【0024】
図3に示すように、センサ部8は、励磁コイル80と、受信コイル81とを含む。励磁コイル80は、電流が流れることに起因して磁束を発生させるように構成されている。また、受信コイル81は、励磁コイル80からの磁束の変化に応じて起電力を発生させるように構成されている。励磁コイル80は、軸方向から見て、受信コイル81(後述する第1sinコイル81b、第2sinコイル81c、第1cosコイル81eおよび第2cosコイル81f)を取り囲むように設けられている。なお、以下では、特に断りなく受信コイル81と記載した場合には、後述する第1sinコイル81b、第2sinコイル81c、第1cosコイル81eおよび第2cosコイル81fに共通した内容である。
【0025】
受信コイル81は、sinコイル81aを含む。sinコイル81aは、第1sinコイル81bと、第2sinコイル81cとにより構成されている。また、受信コイル81は、cosコイル81dを含む。cosコイル81dは、第1cosコイル81eと、第2cosコイル81fとにより構成されている。以下、特に断りなくsinコイル81aと記載した場合には、第1sinコイル81bおよび第2sinコイル81cに共通した内容であるとする。同様に、特に断りなくcosコイル81dと記載した場合には、第1cosコイル81eおよび第2cosコイル81fに共通した内容であるとする。なお、第1sinコイル81b、第2sinコイル81c、第1cosコイル81eおよび第2cosコイル81fの各々は、一本のコイルにより構成されているが、複数本のコイルが束になって構成されていてもよい。
【0026】
ここで、本実施形態では、sinコイル81aおよびcosコイル81dの各々は、軸方向から見て、正弦波状に形成されている。これにより、ロータコア4の回転に伴って、sinコイル81aおよびcosコイル81dの各々と軸方向端面4cとの励磁コイル80の磁束の鎖交面積を容易に正弦波状に変化させることが可能である。その結果、sinコイル81aおよびcosコイル81dの各々の起電力が正弦波状に変化するので、それぞれの起電力の値に基づいてロータコア4の磁極位置を容易に検出することが可能である。なお、鎖交面積は、受信コイル81と励磁コイル80の径方向内側の部分(図6の破線参照)とによって取り囲まれる領域において軸方向端面4c(電磁鋼板4a)が存在している部分(図6の右下がり斜線の領域)の面積である。具体的には、sinコイル81aおよびcosコイル81dの各々は、1周期分の正弦波を模した形状を有している。
【0027】
sinコイル81aとcosコイル81dとは、周方向において90度の電気角度分ずらされて配置されている。すなわち、第1sinコイル81bと、第1cosコイル81eおよび第2cosコイル81fの各々とは、周方向において90度の電気角度分ずらされて配置されている。また、第2sinコイル81cと、第1cosコイル81eおよび第2cosコイル81fの各々とは、周方向において90度の電気角度分ずらされて配置されている。なお、このロータ1の磁極数は8であるので、電気角90度は、機械角11.25度に相当する。
【0028】
また、第1sinコイル81bと第2sinコイル81cとは、軸方向から見て、互いに重なる位置に配置されている。具体的には、第1sinコイル81bは、第2sinコイル81cに対して半周期(電気角180度分)位相がずれて配置されている。同様に、第1cosコイル81eと第2cosコイル81fとは、軸方向から見て、互いに重なる位置に配置されている。具体的には、第1cosコイル81eは、第2cosコイル81fに対して半周期(電気角180度分)位相がずれて配置されている。なお、第1sinコイル81b、第2sinコイル81c、第1cosコイル81e、および第2cosコイル81fは、周方向において同じ範囲に設けられている。
【0029】
また、センサ部8は、励磁コイル80と受信コイル81とを収容する樹脂モールド部82を含む。励磁コイル80および受信コイル81が樹脂モールド部82に収容されていることにより、励磁コイル80および受信コイル81の、耐油性、耐湿性、および耐振動性を向上させることができるとともに、異物によってセンサ部8の検出結果に誤差が生じるのを防止することが可能である。また、樹脂モールド部82には、集積回路83が収容されている。集積回路83は、励磁コイル80への電流指令の送信、および、受信コイル81からの検出値の取得等を行う。
【0030】
ここで、本実施形態では、図4および図5に示すように、フラックスバリア7の径方向外側の端部7aは、sinコイル81aの径方向外側の端部81g(図4参照)、および、cosコイル81dの径方向外側の端部81h(図5参照)の各々に対して、径方向外側に設けられている。また、フラックスバリア7の径方向内側の端部7bは、sinコイル81aの径方向内側の端部81i(図4参照)、および、cosコイル81dの径方向内側の端部81j(図5参照)の各々に対して、径方向において同じ位置に設けられている。これにより、軸方向から見て、sinコイル81aおよびcosコイル81dの各々が、フラックスバリア7と重なっている際にフラックスバリア7から径方向内側または径方向外側にはみ出すことがない。その結果、ロータコア4の回転に伴って、sinコイル81aおよびcosコイル81dの各々とフラックスバリア7との重なり面積を、sinコイル81aおよびcosコイル81dの形状に沿って確実に変化させることが可能である。
【0031】
具体的には、sinコイル81aの径方向における振幅W1(図4参照)、および、cosコイル81dの径方向における振幅W2(図5参照)の各々は、フラックスバリア7の径方向の幅W3(図4参照)よりも小さい。なお、sinコイル81aの振幅W1は、cosコイル81dの振幅W2と等しい。また、図4では、一例として第1sinコイル81bのみを図示し、第2sinコイル81cは簡略化のため図示を省略している。また、図5では、一例として第1cosコイル81eのみを図示し、第2cosコイル81fは簡略化のため図示を省略している。
【0032】
また、本実施形態では、フラックスバリア7の周方向における幅W4(図4参照)は、sinコイル81aの周方向における幅W11(図4参照)、および、cosコイル81dの周方向における幅W12(図5参照)よりも小さい。これにより、軸方向から見て、sinコイル81aおよびcosコイル81dの各々の全体がフラックスバリア7と重なる状態が、一定時間継続するのを防止することが可能である。その結果、sinコイル81aおよびcosコイル81dの各々とフラックスバリア7との重なり面積(sinコイル81aおよびcosコイル81dの各々と軸方向端面4cとの励磁コイル80の磁束の鎖交面積)が変化せずに一定になる期間が生じるのを防止することが可能である。
【0033】
また、周方向において隣り合うフラックスバリア7同士の間の部分4bの周方向の幅W5(図4参照)は、フラックスバリア7の周方向における幅W4と略等しい。また、sinコイル81aの周方向における幅W11、および、cosコイル81dの周方向における幅W12の各々は、フラックスバリア7の周方向における幅W4と、フラックスバリア7同士の間の部分4bの周方向の幅W5との合計に略等しい。
【0034】
また、本実施形態では、図1に示すように、sinコイル81aおよびcosコイル81dの各々(図4および図5参照)は、軸方向から見て、永久磁石5とオーバラップしない位置で、かつ、フラックスバリア7とオーバラップする位置に設けられている。これにより、sinコイル81aおよびcosコイル81dの各々が磁束を検知する際に、永久磁石5の磁束が影響するのを防止することが可能である。
【0035】
具体的には、センサ部8(sinコイル81aおよびcosコイル81d)は、軸方向から見てロータコア4の回転時にフラックスバリア7が通過する領域A1に配置されている。これにより、ロータコア4の回転に伴うフラックスバリア7と受信コイル81との重なり面積の変化に応じて、受信コイル81と軸方向端面4cとに対する励磁コイル80の磁束の鎖交面積を変化させることが可能である。この鎖交面積の変化に起因して受信コイル81の起電力が変化するので、受信コイル81の起電力の変化に基づいて、ロータコア4の磁極位置を検出することが可能である。上記のように、ロータコア4にフラックスバリア7が設けられていれば、受信コイル81と軸方向端面4cとに対する励磁コイル80の磁束の鎖交面積を変化させるために、機械加工により凹凸形状が形成されたエンドプレートをロータコア4に配置する必要がない。その結果、ロータ1の構造の複雑化を防止することが可能である。また、軸方向に凹凸する凹凸形状を有するエンドプレートが配置されないので、ロータ1(ロータコア4)の軸方向の長さが大きくなるのを防止することが可能である。したがって、ロータ1の構造が複雑化することおよびロータ1の軸方向の長さが大きくなるのを防止することが可能である。
【0036】
また、sinコイル81aとフラックスバリア7との重なり面積を変化させた場合の起電力、および、cosコイル81dとフラックスバリア7との重なり面積を変化させた場合の起電力の両方に基づいてロータコア4の磁極位置を検出することができるので、より確実にロータコア4の磁極位置を検出することが可能である。
【0037】
また、本実施形態では、センサ部8(sinコイル81aおよびcosコイル81d)は、軸方向から見て、ロータコア4の回転に伴って複数のフラックスバリア7の各々と重なるように設けられている。すなわち、センサ部8(sinコイル81aおよびcosコイル81d)は、軸方向から見て、周方向に並ぶ複数のフラックスバリア7と順番に(周期的に)重なるように設けられている。これにより、ロータコア4の回転に伴って、フラックスバリア7と受信コイル81との重なり面積を周期的に変化させることが可能であるとともに上記鎖交面積を周期的に変化させることが可能である。その結果、受信コイル81の起電力を周期的に変化させることが可能である。これにより、フラックスバリア7が、周方向において、ロータコア4の回転軸を中心に等角度間隔で複数配置されているロータコア4において、ロータコア4の磁極位置を容易に検出することが可能である。
【0038】
また、センサ部8(sinコイル81aおよびcosコイル81d)は、軸方向から見てロータコア4の回転時に永久磁石5が通過する領域A2には重ならないように配置されている。なお、領域A1は、軸方向から見て、回転時にフラックスバリア7の径方向外側の端部7a(図4参照)が描く円周と、フラックスバリア7の径方向内側の端部7b(図4参照)が描く円周とに挟まれる領域である。また、領域A2は、回転時に永久磁石5の径方向外側の端部5a(図1参照)が描く円周と、永久磁石5の径方向内側の端部5b(図1参照)が描く円周とに挟まれる領域である。
【0039】
ここで、本実施形態では、図6に示すように、センサ部8は、ロータコア4の回転に伴う受信コイル81(sinコイル81aおよびcosコイル81d)とフラックスバリア7との重なり面積の変化に応じた、受信コイル81(sinコイル81aおよびcosコイル81d)と軸方向端面4c(電磁鋼板4a)とに対する励磁コイル80の磁束の鎖交面積(図6の右下がり斜線部分の面積)の変化に起因する、起電力の変化を検出するように構成されている。これにより、上記起電力の変化に基づいて、ロータコア4の磁極位置を容易に検出することが可能である。
【0040】
具体的には、ロータコア4の回転に伴って、図6の左図から右図の状態に遷移することによって、受信コイル81とフラックスバリア7との重なり面積が変化する。受信コイル81とフラックスバリア7との重なり面積とは、軸方向から見て、フラックスバリア7内において、受信コイル81とフラックスバリア7の径方向内側の端部7b(図4参照)とによって挟まれる領域(図6の左下がり斜線の領域)の面積である。これに伴って、受信コイル81と電磁鋼板4aとに対する励磁コイル80の磁束の鎖交面積は、正弦波状に変化(図7参照)する。なお、図6では一例として第1sinコイル81bのみを図示している。
【0041】
また、フラックスバリア7は、ロータコア4において、周方向に回転軸を中心として等角度間隔に設けられているので、受信コイル81とフラックスバリア7との重なり面積は周期的に変化する。その結果、受信コイル81と電磁鋼板4aとに対する励磁コイル80の磁束の鎖交面積も周期的(かつ正弦波状)に変化(図7参照)する。
【0042】
ここで、図8(a)および図8(b)に示すように、センサ部8は、フラックスバリア7との間に障害物が設けられていないように配置されている。また、センサ部8は、励磁コイル80からの磁束により軸方向端面4cに渦電流が生じる位置に配置されている。
【0043】
具体的には、図8(a)に示すように、フラックスバリア7とセンサ部8(受信コイル81)とが軸方向に重なっている場合では、励磁コイル80から発生する磁束B1がフラックスバリア7を通過するので、磁束B1は軸方向端面4c(電磁鋼板4a)を通過せず渦電流が発生しない。その結果、渦電流に起因する磁束が発生しないので、磁束B1は減衰しない。
【0044】
一方、図8(b)に示すように、電磁鋼板4aとセンサ部8(受信コイル81)とが軸方向に重なっている場合では、励磁コイル80から発生する磁束B1が軸方向端面4c(電磁鋼板4a)を通過することに起因して渦電流が発生する。この渦電流によって磁束B1を打ち消す方向の磁束B2が発生するため、磁束B1が減衰される。
【0045】
上記のように、センサ部8がフラックスバリア7と軸方向に重なっている場合は渦電流を発生させずに、センサ部8が軸方向端面4cと軸方向に重なっている場合は渦電流を発生させることが可能である。その結果、センサ部8がフラックスバリア7と軸方向に重なっている場合と、センサ部8が軸方向端面4cと軸方向に重なっている場合とで、受信コイル81が検出する磁束を異ならせることが可能である。このように、センサ部8(受信コイル81)とフラックスバリア7との位置関係に起因して、受信コイル81が受信する磁束が変化するため、受信コイル81により発生される起電力が変化する。
【0046】
また、図9に示すように、センサ部8の集積回路83(図3参照)は、受信コイル81により発生された起電力の変化を、後述する磁極位置検出部9に入力可能な電圧レベルにゲイン調整するように構成されている。具体的には、集積回路83は、受信コイル81により発生された起電力の変化に基づいて、2.5Vを中心とした振幅1.5V(3Vp-p)の波形信号を生成する。
【0047】
また、図1に示すように、回転電機100は、磁極位置検出部9を備える。磁極位置検出部9は、上記の鎖交面積の変化に起因する上記起電力の変化に関する情報をセンサ部8から取得する。具体的には、磁極位置検出部9は、図9に示す波形信号の情報をセンサ部8から取得する。なお、磁極位置検出部9は、回転電機100に電力を供給する図示しないインバータ側に設けられているマイコンである。
【0048】
ここで、本実施形態では、磁極位置検出部9は、センサ部8から取得した起電力の変化に関する情報に基づいて、ロータコア4の磁極位置を検出するように構成されている。これにより、磁極位置検出部9とセンサ部8とが別個に設けられるので、センサ部8が磁極位置の検出を行う場合に比べて、センサ部8の制御負荷を軽減することが可能である。
【0049】
具体的には、磁極位置検出部9は、第1sinコイル81bと軸方向端面4c(電磁鋼板4a)との鎖交面積の変化に基づく信号と、第2sinコイル81cと軸方向端面4cとの鎖交面積の変化に基づく信号との差分、および、第1cosコイル81eと軸方向端面4cとの鎖交面積の変化に基づく信号と、第2cosコイル81fと軸方向端面4cとの鎖交面積の変化に基づく信号との差分に基づいて、ロータコア4の磁極位置を検出するように構成されている。ここで、上記のように、第1sinコイル81bと第2sinコイル81cとが軸方向から見て重なる位置に配置されていることによって、第1sinコイル81bと軸方向端面4cとの鎖交面積の変化に基づく信号、および、第2sinコイル81cと軸方向端面4cとの鎖交面積の変化に基づく信号の各々において、共通のノイズ成分が含まれる。したがって、第1sinコイル81bと軸方向端面4cとの鎖交面積の変化に基づく信号と、第2sinコイル81cと軸方向端面4cとの鎖交面積の変化に基づく信号との差分において、上記ノイズ成分がキャンセルされる。なお、第1cosコイル81eおよび第2cosコイル81fにおいても同様の効果が得られる。これらの結果、ロータコア4の磁極位置をより一層確実に検出することが可能である。
【0050】
詳細には、磁極位置検出部9は、第1sinコイル81bの波形信号と第2sinコイル81cの波形信号との差分(第1sinコイル81b-第2sinコイル81c)を算出する。また、磁極位置検出部9は、第1cosコイル81eの波形信号と第2cosコイル81fの波形信号との差分(第1cosコイル81e-第2cosコイル81f)を算出する。これにより、図10に示すように、0Vを中心とした振幅3V(6Vp-p)のsin信号およびcos信号が得られる。
【0051】
次に、磁極位置検出部9は、算出したsin信号とcos信号とに基づいて、arctan(sin/cos)とロータ1の回転角度との関係を示す波形信号(図11参照)を生成する。図11の縦軸は、電気角を表している。すなわち、ロータコア4が機械角で180度回転する間に、電気角が180度変化すること(-90度から90度へ変化すること)が8回起こっている。
【0052】
また、磁極位置検出部9は、生成した図11に示す波形信号に基づいて、たとえばarctan(sin/cos)の値が90度となった回数をカウントするように構成されている。そして、磁極位置検出部9は、上記のカウント数と、arctan(sin/cos)の値とに基づいて、磁極位置の検出(ロータコア4の回転角度の算出)を行うように構成されている。
【0053】
[本実施形態の効果]
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0054】
本実施形態では、上記のように、センサ部(8)は、軸方向から見てロータコア(4)の回転時にフラックスバリア(7)が通過する領域(A1)に配置されている。これにより、ロータコア(4)の回転に伴うフラックスバリア(7)と受信コイル(81)との重なり面積の変化に応じて、受信コイル(81)と軸方向端面(4c)とに対する励磁コイル(80)の磁束の鎖交面積を変化させることができる。この鎖交面積の変化に起因して受信コイル(81)の起電力が変化するので、受信コイル(81)の起電力の変化に基づいて、ロータコア(4)の磁極位置を検出することができる。上記のように、ロータコア(4)にフラックスバリア(7)が設けられていれば、受信コイル(81)と軸方向端面(4c)とに対する励磁コイル(80)の磁束の鎖交面積を変化させるために、機械加工により凹凸形状が形成されたエンドプレートをロータコア(4)に配置する必要がない。その結果、ロータ(1)の構造の複雑化を防止することができる。また、軸方向に凹凸する凹凸形状を有するエンドプレートが配置されないので、ロータ(1)(ロータコア(4))の軸方向の長さが大きくなるのを防止することができる。したがって、ロータ(1)の構造が複雑化することおよびロータ(1)の軸方向の長さが大きくなるのを防止することができる。
【0055】
また、本実施形態では、上記のように、センサ部(8)は、ロータコア(4)の回転に伴う受信コイル(81)とフラックスバリア(7)との重なり面積の変化に応じた、受信コイル(81)と軸方向端面(4c)とに対する励磁コイル(80)の磁束の鎖交面積の変化に起因する、起電力の変化を検出するように構成されている。このように構成すれば、上記起電力の変化に基づいて、ロータコア(4)の磁極位置を容易に検出することができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、センサ部(8)は、フラックスバリア(7)との間に障害物が設けられないように配置されている、励磁コイル(80)からの磁束により軸方向端面(4c)に渦電流が生じる位置に配置されている。このように構成すれば、センサ部(8)がフラックスバリア(7)と軸方向に重なっている場合は渦電流を発生させずに、センサ部(8)が軸方向端面(4c)と軸方向に重なっている場合は渦電流を発生させることができる。その結果、センサ部(8)がフラックスバリア(7)と軸方向に重なっている場合と、センサ部(8)が軸方向端面(4c)と軸方向に重なっている場合とで、受信コイル(81)が検出する磁束を容易に異ならせることができる。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、フラックスバリア(7)は、周方向において、ロータコア(4)の回転軸を中心に等角度間隔で複数配置されている。また、センサ部(8)は、軸方向から見て、ロータコア(4)の回転に伴って複数のフラックスバリア(7)の各々と重なるように設けられている。このように構成すれば、ロータコア(4)の回転に伴って、フラックスバリア(7)と受信コイル(81)との重なり面積を周期的に変化させることができるとともに上記鎖交面積を周期的に変化させることができる。その結果、受信コイル(81)の起電力を周期的に変化させることができる。これにより、フラックスバリア(7)が、周方向において、ロータコア(4)の回転軸を中心に等角度間隔で複数配置されているロータコア(4)において、ロータコア(4)の磁極位置を容易に検出することができる。
【0058】
また、本実施形態では、上記のように、受信コイル(81)は、sinコイル(81a)と、sinコイル(81a)と周方向において90度の電気角度分ずらされて配置されているcosコイル(81d)とを含む。また、センサ部(8)は、軸方向から見て、sinコイル(81a)およびcosコイル(81d)の各々がロータコア(4)の回転時にフラックスバリア(7)が通過する領域(A1)に配置されるように設けられている。このように構成すれば、ロータコア(4)の回転に伴って、sinコイル(81a)およびcosコイル(81d)の各々とフラックスバリア(7)との重なり面積を変化させることができる。その結果、sinコイル(81a)とフラックスバリア(7)との重なり面積を変化させた場合の起電力、および、cosコイル(81d)とフラックスバリア(7)との重なり面積を変化させた場合の起電力の両方に基づいてロータコア(4)の磁極位置を検出することができる。その結果、より確実にロータコア(4)の磁極位置を検出することができる。
【0059】
また、本実施形態では、上記のように、フラックスバリア(7)の径方向外側の端部(7a)は、sinコイル(81a)の径方向外側の端部(81g)、および、cosコイル(81d)の径方向外側の端部(81h)の各々に対して、径方向において同じ位置か、または、径方向外側に設けられている。また、フラックスバリア(7)の径方向内側の端部(7b)は、sinコイル(81a)の径方向内側の端部(81i)、および、cosコイル(81d)の径方向内側の端部(81j)の各々に対して、径方向において同じ位置か、または、径方向内側に設けられている。このように構成すれば、軸方向から見て、sinコイル(81a)およびcosコイル(81d)の各々が、フラックスバリア(7)と重なっている際にフラックスバリア(7)から径方向内側または径方向外側にはみ出すことがない。その結果、ロータコア(4)の回転に伴って、sinコイル(81a)およびcosコイル(81d)の各々とフラックスバリア(7)との重なり面積を、sinコイル(81a)およびcosコイル(81d)の形状に沿って確実に変化させることができる。
【0060】
また、本実施形態では、上記のように、フラックスバリア(7)の周方向における幅(W4)は、sinコイル(81a)の周方向における幅(W11)、および、cosコイル(81d)の周方向における幅(W12)以下である。このように構成すれば、軸方向から見て、sinコイル(81a)およびcosコイル(81d)の各々の全体がフラックスバリア(7)と重なる状態が、一定時間継続するのを防止することができる。その結果、sinコイル(81a)およびcosコイル(81d)の各々とフラックスバリア(7)との重なり面積(sinコイル(81a)およびcosコイル(81d)の各々と軸方向端面(4c)との鎖交面積)が変化せずに一定になる期間が生じるのを防止することができる。
【0061】
また、本実施形態では、上記のように、フラックスバリア(7)は、軸方向から見て、矩形状に形成されている。また、sinコイル(81a)およびcosコイル(81d)の各々は、軸方向から見て、正弦波状に形成されている。このように構成すれば、ロータコア(4)の回転に伴って、sinコイル(81a)およびcosコイル(81d)の各々と軸方向端面(4c)との鎖交面積を容易に正弦波状に変化させることができる。その結果、sinコイル(81a)およびcosコイル(81d)の各々の起電力が正弦波状に変化するので、それぞれの起電力の値に基づいてロータコア(4)の磁極位置を容易に検出することができる。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように、sinコイル(81a)およびcosコイル(81d)の各々は、軸方向から見て、永久磁石(5)とオーバラップしない位置で、かつ、フラックスバリア(7)とオーバラップする位置に設けられている。このように構成すれば、sinコイル(81a)およびcosコイル(81d)の各々が磁束を検知する際に、永久磁石(5)の磁束が影響するのを防止することができる。
【0063】
また、本実施形態では、上記のように、回転電機(100)は、ロータコア(4)の回転に伴う受信コイル(81)とフラックスバリア(7)との重なり面積の変化に応じた、受信コイル(81)と軸方向端面(4c)とに対する励磁コイル(80)の磁束の鎖交面積の変化に起因する、起電力の変化に関する情報をセンサ部(8)から取得するとともに、センサ部(8)から取得した起電力の変化に関する情報に基づいて、ロータコア(4)の磁極位置を検出する磁極位置検出部(9)を備える。このように構成すれば、磁極位置検出部(9)とセンサ部(8)とを別個に設けることができるので、センサ部(8)が磁極位置の検出を行う場合に比べて、センサ部(8)の制御負荷を軽減することができる。
【0064】
また、本実施形態では、上記のように、受信コイル(81)は、sinコイル(81a)と、sinコイル(81a)と周方向において90度の電気角度分ずらされて配置されているcosコイル(81d)とを含む。sinコイル(81a)は、第1sinコイル(81b)と、第1sinコイル(81b)と軸方向から見て重なる位置に配置されている第2sinコイル(81c)とにより構成されている。また、cosコイル(81d)は、第1cosコイル(81e)と、第1cosコイル(81e)と軸方向から見て重なる位置に配置されている第2cosコイル(81f)とにより構成されている。また、磁極位置検出部(9)は、第1sinコイル(81b)と軸方向端面(4c)との鎖交面積の変化に基づく信号と、第2sinコイル(81c)と軸方向端面(4c)との鎖交面積の変化に基づく信号との差分、および、第1cosコイル(81e)と軸方向端面(4c)との鎖交面積の変化に基づく信号と、第2cosコイル(81f)と軸方向端面(4c)との鎖交面積の変化に基づく信号との差分に基づいて、ロータコア(4)の磁極位置を検出するように構成されている。このように構成すれば、第1sinコイル(81b)と第2sinコイル(81c)とが軸方向から見て重なる位置に配置されていることによって、第1sinコイル(81b)と軸方向端面(4c)との鎖交面積の変化に基づく信号、および、第2sinコイル(81c)と軸方向端面(4c)との鎖交面積の変化に基づく信号の各々において、共通のノイズ成分が含まれる。したがって、第1sinコイル(81b)と軸方向端面(4c)との鎖交面積の変化に基づく信号と、第2sinコイル(81c)と軸方向端面(4c)との鎖交面積の変化に基づく信号との差分において、上記ノイズ成分をキャンセルすることができる。なお、第1cosコイル(81e)および第2cosコイル(81f)においても同様の効果が得られる。これらの結果、ロータコア(4)の磁極位置をより一層確実に検出することができる。
【0065】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0066】
たとえば、上記実施形態では、ロータコア4にエンドプレートが配置されていない例を示したが、本発明はこれに限られない。ロータコア4にエンドプレートが配置されていてもよい。
【0067】
具体的には、図12に示すように、ロータコア14は、軸方向の両端に設けられるエンドプレート10(Z1側)とエンドプレート11(Z2側)とを含む。エンドプレート10およびエンドプレート11のうち少なくともセンサ部8とロータコア14との間に設けられるエンドプレート10は、軸方向から見て、フラックスバリア7と重なる位置に設けられる貫通孔10aを含む。貫通孔10aは、軸方向から見て、フラックスバリア7がエンドプレート10から完全に露出されるように位置および大きさが調整されている。なお、エンドプレート11にも、エンドプレート10と同様の位置に貫通孔が設けられていてもよい。また、この場合、エンドプレート10のZ1側の端面10bは、特許請求の範囲の「軸方向端面」の一例である。
【0068】
これにより、エンドプレート10(11)によりロータコア4の電磁鋼板4aを固定しながら、貫通孔10aにより渦電流がエンドプレート10において発生するのを防止することができる。その結果、エンドプレート10を配置しながら、フラックスバリア7が設けられている部分と電磁鋼板4aが設けられている部分とにおいて、受信コイル81が検知する磁束に差を生じさせることができる。
【0069】
また、上記実施形態では、フラックスバリア7の径方向外側の端部7aが、sinコイル81aの径方向外側の端部81g、および、cosコイル81dの径方向外側の端部81hに対して、径方向外側に設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。フラックスバリア7の径方向外側の端部7aが、端部81gおよび端部81hに対して、径方向において同じ位置に設けられていてもよい。また、フラックスバリア7の径方向内側の端部7bが、sinコイル81aの径方向内側の端部81i、および、cosコイル81dの径方向内側の端部81jに対して、径方向内側に設けられていてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、軸方向から見て、フラックスバリア7が矩形状に形成されているとともに、sinコイル81a(cosコイル81d)が正弦波状に形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。ロータコア4の回転に伴って受信コイル81と電磁鋼板4aとに対する磁束の鎖交面積が正弦波状に変化するならば、上記構成に限られない。たとえば、軸方向から見て、フラックスバリア7が正弦波状に形成されているとともに、sinコイル81a(cosコイル81d)が矩形状(ブロック状)に形成されていてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、励磁コイル80と受信コイル81とが、共通の樹脂モールド部82に収容されている例を示したが、本発明はこれに限られない。軸方向から見て受信コイル81と励磁コイル80とが同じ領域に配置されていれば、励磁コイル80と受信コイル81とが別々の部材(樹脂モールド部)に収容されていてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、sinコイル81aが、第1sinコイル81bおよび第2sinコイル81cにより構成されているとともに、cosコイル81dが、第1cosコイル81eおよび第2cosコイル81fにより構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。sinコイル81aが、第1sinコイル81bおよび第2sinコイル81cの一方のみを含むとともに、cosコイル81dが、第1cosコイル81eおよび第2cosコイル81fの一方のみを含んでいてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、フラックスバリア7の周方向の幅W4と、フラックスバリア7同士の間の部分4bの周方向の幅W5とが略等しい例を示したが、本発明はこれに限られない。sinコイル81a(cosコイル81d)の周方向の幅W11(W12)が、フラックスバリア7の周方向の幅W4と、フラックスバリア7同士の間の部分4bの周方向の幅W5との合計と略等しければ、上記の幅W4および上記の幅W5が互いに異なっていてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、複数のフラックスバリア7の各々が1つの貫通孔により構成される例を示したが、本発明はこれに限られない。複数のフラックスバリア7の各々が、複数の分断された貫通孔により構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 ロータ
4、14 ロータコア
4a 電磁鋼板
4c 軸方向端面
5 永久磁石
6 磁石挿入孔
7 フラックスバリア
7a 端部(フラックスバリアの径方向外側の端部)
7b 端部(フラックスバリアの径方向内側の端部)
8 センサ部
9 磁極位置検出部
10、11 エンドプレート
10a 貫通孔
10b 端面(軸方向端面)
80 励磁コイル
81 受信コイル
81a sinコイル
81b 第1sinコイル
81c 第2sinコイル
81d cosコイル
81e 第1cosコイル
81f 第2cosコイル
81g 端部(sinコイルの径方向外側の端部)
81h 端部(cosコイルの径方向外側の端部)
81i 端部(sinコイルの径方向内側の端部)
81j 端部(cosコイルの径方向内側の端部)
100 回転電機
A1 領域
W4 幅(フラックスバリアの周方向の幅)
W11 幅(sinコイルの周方向の長さ)
W12 幅(cosコイルの周方向の長さ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12