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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20240402BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240402BHJP
   C09D 5/33 20060101ALI20240402BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G09F9/00 304
B32B27/18 Z
C09D5/33
G02F1/1333
G09F9/00 350Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020103440
(22)【出願日】2020-06-16
(65)【公開番号】P2021196522
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】萩原 充紀
【審査官】新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-300414(JP,A)
【文献】特開2018-084809(JP,A)
【文献】特開2014-177148(JP,A)
【文献】特開2018-177204(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0205788(US,A1)
【文献】特開2019-003102(JP,A)
【文献】特開2011-043713(JP,A)
【文献】特開平10-109571(JP,A)
【文献】特開2020-076914(JP,A)
【文献】特開2019-167521(JP,A)
【文献】特表2010-517817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00
B32B 27/18
C09D 5/33
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
固定先に固定され、前記表示部を露出させる前面と、前記前面と略反対側に面する背面と、前記前面と前記背面とを接続する側面と、を有し、前記背面又は前記側面の少なくとも一部に前記固定先に対して露出する露出部を形成するケース部材と、
前記露出部の少なくとも一部に形成される、金属膜と、を備え
前記金属膜は、可視光線を透過し、且つ近赤外線を反射する材料からなり、前記可視光線の透過率が50%から100%であり、
前記ケース部材は、カーボンブラック含有の樹脂により形成され、前記金属膜の光沢によりユーザに対しピアノブラック調に視認される表示装置。
【請求項2】
前記金属膜は、前記近赤外線の透過率が0%から30%である、請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記金属膜は、前記露出部の全領域に形成される、請求項1記載の表示装置。
【請求項4】
前記金属膜は、前記露出部のうち前記側面のみに形成される、請求項1記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両等に搭載される表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダッシュボード上であって、フロントガラスの前に支持される表示装置が知られている。このような表示装置は、ケース部材の前面のみならず、側面及び背面も露出し、ユーザに視認される状態で配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-023701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したケース部材は、フロントガラスを透過した太陽光線に照射されることにより、高温になりやすい。このため、ケース部材の熱が内部の電子部品に伝わり、電子部品が劣化してしまう虞がある。
【0005】
本開示はこのような事情を考慮してなされたもので、熱対策に優れた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の表示装置は、上述した課題を解決するために、表示部と、固定先に固定され、前記表示部を露出させる前面と、前記前面と略反対側に面する背面と、前記前面と前記背 面とを接続する側面と、を有し、前記背面又は前記側面の少なくとも一部に前記固定先に対して露出する露出部を形成するケース部材と、前記露出部の少なくとも一部に形成される、金属膜と、を備える。

表示部と、固定先に固定され、前記表示部を露出させる前面と、前記前面と略反対側に面する背面と、前記前面と前記背面とを接続する側面と、を有し、前記背面又は前記側面の少なくとも一部に前記固定先に対して露出する露出部を形成するケース部材と、前記露出部の少なくとも一部に形成される、金属膜と、を備え、前記金属膜は、可視光線を透過し、且つ近赤外線を反射する材料からなり、前記可視光線の透過率が50%から100%であり、前記ケース部材は、カーボンブラック含有の樹脂により形成され、前記金属膜の光沢によりユーザに対しピアノブラック調に視認される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の表示装置においては、優れた熱対策ができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の表示装置の実施形態である表示装置を前面側から見た斜視図。
図2】本開示の表示装置の実施形態である表示装置を背面側から見た斜視図。
図3図1のIII-III線に沿う縦断面図。
図4図3の領域IVの拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の表示装置の実施形態を添付図面に基づいて説明する。本開示の表示装置は、例えば自動車や二輪車等の車両や、船舶、農業機械、建設機械に搭載され得る。
【0010】
図1は、本開示の表示装置の実施形態である表示装置1を前面12側から見た斜視図である。
図2は、本開示の表示装置の実施形態である表示装置1を背面13側から見た斜視図である。
図3は、図1のIII-III線に沿う縦断面図である。
【0011】
以下の説明において、「前(前面)」、「後(背面)」、「上」、「下」、「右」、及び「左」は、図1から図3における定義「Fr.」、「Re.」、「To.」、「Bo.」、「R」、及び「L」に従う。
【0012】
表示装置1は、車両のコラムチューブ2に、ビス等を用いて固定される。コラムチューブ2は、ステアリングシャフト3を内包する筒状部材である。コラムチューブ2は、更にコラムカバー4により覆われ、ユーザに対して遮蔽される。
【0013】
表示装置1は、ケース10と、表示ユニット30と、回路基板40と、保護カバー50と、を主に有する。
【0014】
ケース10(ケース部材)は、表示ユニット30、回路基板40等を収容し、外的衝撃や塵埃等からこれらを保護する。ケース10は、垂直部分及び水平部分を有する断面略L字状に形成されることにより、固定先としての車両に固定される構造を有する。具体的には、ケース10(表示装置1)は、水平部分がコラムカバー4内に固定され、垂直部分がコラムカバー4の開口4aから立ち上がった状態で配置される。
【0015】
ケース10は、前面12と、背面13と、側面14と、を有する。前面12は、表示ユニット30の表示画面35(表示部)を前面側に露出させる前側開口10aを有する。背面13は、前面12と略反対側に面する面である。背面13は、水平部分の表面も含み得る。側面14は、前面12と背面13とに直交する面であり、前面12と背面13とを接続する。ケース10は、前面12、背面13及び側面14の大部分(背面13及び側面14の少なくとも一部)が固定先としての車両に対して露出し、これら露出した部分はユーザに視認可能な状態である露出部18である。ケース10の詳細な構成については、後述する。
【0016】
表示ユニット30(表示部)は、液晶表示素子と、光源と、を有する。液晶表示素子は、例えば一対のガラス基板間に液晶分子を封入して形成されるTFT(Thin Film Transistor)型の液晶表示パネルである。液晶表示素子の例えば下側の端部30bには、フレキシブルプリント基板33の一端と電気的に接続される複数の電極端子が設けられる。フレキシブルプリント基板33の他端は、表示ユニット30の下側の端部30bから水平に後方に延び、回路基板40と接続する。
【0017】
光源は、例えば表示ユニット30の下側の端部30bに設けられ、液晶表示素子を照明するLED(Light Emitting Diode)である。また、表示ユニット30は、光源の光を液晶表示素子の全面に行き渡らせるための導光板、導光板の背面に設けられた反射板、及び導光板の前面に設けられた拡散板を有する。すなわち、本実施形態における表示ユニット30は、いわゆるエッジライト方式のバックライトユニットを有する。
【0018】
回路基板40は、ケース10(水平部17)内に配置され、ビス等によりケース10に固定される。回路基板40は、表示ユニット30を制御するための制御部を主に有する。制御部は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有しており、例えば、ROMに書き込まれたプログラムに従って所定の演算処理を実行する。制御部は、例えば、車両のECU(Electronic Control Unit)から車速、エンジン回転数、各種車両情報、ナビゲーション情報等を、各種センサ等を介して取得する。制御部は、取得した情報に基づき、表示ユニット30に情報を表示させる。
【0019】
保護カバー50は、透光性を有する板状部材(例えば無機ガラス、ポリカーボネート樹脂、PMMA樹脂)である。保護カバー50は、ケース10の前側開口10aを覆うことにより、ケース10の内部の表示ユニット30や回路基板40を塵埃等から保護する。保護カバー50は、透光性接着剤により、表示ユニット30の前面30aとオプティカルボンディングにより接着される。透光性接着剤は、保護カバー50とほぼ同等の屈折率を有する、透明な樹脂材(例えばシリコーン系、ウレタン系、又はアクリル系樹脂)である。
【0020】
次に、ケース10の詳細な構成について説明する。
【0021】
図4は、図3のケース10の領域IVの拡大図である。
【0022】
ケース10は、金属ケース15と、樹脂ケース21と、を有する。金属ケース15及び樹脂ケース21は、インサート成形により一体に形成された、一体成形品である。
【0023】
金属ケース15は、金属(例えばマグネシウム)製である。金属ケース15は、垂直部16及び水平部17を有し、断面略L字状を有する。
【0024】
垂直部16は、前後方向に面し前方に開口した略四角形状の箱状部材であり、内部空間に表示ユニット30を収容する。水平部17は、垂直部16の下端から後方へ水平に伸びた、上下方向に面し下方に開口した略四角形状の箱状部材であり、内部空間に回路基板40を収容する。水平部17の開口は、底面カバー11により覆われる。底面カバー11は、板金(例えば電気亜鉛めっき鋼板(SECC))からなり、水平部17に収容された回路基板40を保護する。水平部17は、表示装置1を車両のコラムチューブ2に、ビス等で固定するためにも用いられる。
【0025】
樹脂ケース21は、カーボンブラック含有の合成樹脂(例えばポリカーボネート樹脂、ABS樹脂)製である。樹脂ケース21は、金属ケース15の、少なくとも車両に搭載された場合にユーザから視認される領域であり、太陽光線により高温になる可能性のある領域を覆う。具体的には、樹脂ケース21は、垂直部16、及び水平部17の上面17aのうちコラムカバー4の開口4aから視認される虞のある領域を覆う。すなわち、これら樹脂ケース21の領域は、露出部18となる。
【0026】
一方、水平部17の大部分は、コラムカバー4の内側に収納されるため、これらの部分には樹脂ケース21は設けられず、金属ケース15が露出する。また、水平部17がコラムカバー4から露出する場合には、樹脂ケース21は、露出する水平部17にも設けられてもよい。すなわち、ユーザは樹脂ケース21のみ視認及び触れることができ、金属ケース15は視認及び触れることができない。
【0027】
ケース10は、上述した露出部18の全領域の表面上に、ケース10に遮熱性を持たせるための金属膜25を有する。金属膜25は、可視光線を主に透過(一部を反射)し、且つ太陽光線(熱輻射)の主成分の1つである近赤外線を主に反射(一部を透過)する材料からなる。金属膜25は、好ましくは透明であって(透過性を有し)、可視光線の透過率が50%から100%であり、且つ近赤外線の透過率が0%から30%である。金属膜25の可視光線の透過率が50%以下の場合は、金属膜25自身の金属色が目立つと共に、下地となるケース10の色が見え難くなるといった問題が生じる。金属膜25の近赤外線の透過率が30%以上の場合は、金属膜25が太陽光線を吸収し伝熱することで、ケース10及びその内部が高温になるといった問題が生じる。金属膜25は、例えば、スズ酸化インジウム(ITO)、アンチモン酸化スズ(ATO)、リン酸化スズ(AZO)、六ホウ化ランタン(LaB6)、セシウム酸化タングステン(CsWO)、銀合金等により形成される。
【0028】
金属膜25は、例えば樹脂ケース21の表面に直接形成されてもよいし、フィルムを介して形成されてもよい。また、金属膜25は、バインダー樹脂を利用するウェットコーティング法よりも、真空蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スパッタリング法等の金属微粒子を直接膜として形成するドライコーティング法により形成されるのが好ましい。ウェットコーティング法は、バインダー樹脂中に金属微粒子が点在した膜であり、膜中で無数に反射を繰り返すうちに、近赤外線を熱として吸収し、ケース10の内部に伝えてしまう。そのため、ドライコーティング法を用いることにより、金属膜25は、近赤外線をほとんど吸収することなく反射し、ケース10の内部に熱を伝えることを抑制できる。また、ドライコーティング法を用いる金属膜25は、ウェットコーティング法を用いる場合に比べて、金属微粒子による反射効果が得られ、ケース10に、より一層光沢を付与することができる。
【0029】
このような表示装置1は、ケース10の露出部18に金属膜25を形成することにより、優れた熱対策ができる。すなわち、表示装置1は、コラムカバー4(ダッシュボード)上に配置されており、車両のフロントガラスを透過した太陽光線に照射される環境下で使用される。このため、ケース10のうちフロントガラスと対面する背面13及び側面14は高温となる。ケース10(樹脂ケース21)は、フロントガラスに映り込んだ時に目立ち難く、熱や紫外線で退色しにくい黒色で形成される場合が多く、特に熱を吸収してしまう。また、表示装置1の外観性の向上のために、カーボンブラックが含有される場合には、太陽光線の主成分である近赤外線を吸収しやすい特性を有するため、高温になりやすい。
【0030】
また、ケース10が高温化すると、ケース10内部の電子部品に熱が伝わり、電子部品の劣化や故障を引き起こす虞がある。特に、TFT型の液晶パネルは熱の影響を受けやすく、耐熱温度以上の温度になることにより劣化や故障する虞がある。
【0031】
これに対し、本実施形態における表示装置1は、ケース10の露出部18に金属膜25を形成した。金属膜25は、近赤外線を主に透過させることなく反射する。このため、金属膜25がない場合に比べて、露出部18が太陽光線により高温化しにくく、ケース10内部の電子部品に与える熱の影響を低減できる。更に、表示装置1は、金属膜25により内部の電子部品から伝わる熱を断熱することなく、放熱することもできる。
【0032】
また、金属膜25は可視光線を主に透過するため、金属膜25の内側に配置される樹脂ケース21をユーザに視認させる。これにより、表示装置1は、ユーザに対しては、樹脂ケース21の色彩を視認させることができ、デザイン性は維持できる。例えば、樹脂ケース21がカーボンブラックを含む樹脂からなる場合には、金属膜25の光沢が樹脂ケース21に付加されることにより、ユーザに対しては高光沢のピアノブラック調に視認させることができる。これにより、表示装置1は、外観上において商品性を向上させることができる。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0034】
例えば、金属膜25が形成されるケース10は一例であって、どのような形状及び材料(金属等)のケースの表面に金属膜25を形成してもよい。
【0035】
また、金属膜25が露出部18のうち背面13及び側面14に形成される例を説明したが、これらの一部の領域にのみ形成されてもよいし、背面13のみ、又は側面14のみに形成されていてもよい。例えば、側面14のみに形成されることにより、表示装置1の製造コストを低減できたり、背面13にユーザに対して視認させたくないダッシュボード上の構造物(通気口等)等の不要な映り込みが発生することを回避できたりする。
【符号の説明】
【0036】
1 表示装置
2 コラムチューブ
3 ステアリングシャフト
4 コラムカバー
4a 開口
10 ケース
10a 前側開口
11 底面カバー
12 前面
13 背面
14 側面
15 金属ケース
16 垂直部
17 水平部
17a 上面
18 露出部
21 樹脂ケース
25 金属膜
30 表示ユニット
30a 前面
30b 端部
33 フレキシブルプリント基板
35 表示画面
40 回路基板
50 保護カバー
図1
図2
図3
図4