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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】サイドドア構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/04 20060101AFI20240402BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20240402BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B60J5/04 M
B60J5/00 501B
B60R13/02 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020108589
(22)【出願日】2020-06-24
(65)【公開番号】P2022006394
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金澤 淳平
(72)【発明者】
【氏名】淺井 邦人
(72)【発明者】
【氏名】長村 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】木舟 太郎
(72)【発明者】
【氏名】平田 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】カムレッシュ クマール シャルマ
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-062194(JP,A)
【文献】特開2012-066722(JP,A)
【文献】特開2018-002110(JP,A)
【文献】特開2010-069931(JP,A)
【文献】特開2016-141360(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0195013(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/04
B60J 5/00
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のサイドドア(D)の下部を構成するドア本体(1)と、アウタパネルとインナパネルとからなり、且つ前記ドア本体の上部に設けられる窓開口部(20)を有する窓枠部(2)とを備え、前記窓枠部の後部の前端にサッシュ部材(6)が配置され、前記サッシュ部材(6)は、コ字形又はL字形の断面形状を呈し前記窓開口部(20)内の窓ガラスを支持し、且つ案内するガイド(5)を有し、前記サッシュ部材のサッシュ上部(61)は前記窓枠部のベルトライン(L)から上方に、且つ前記窓枠部の後部に延出され、前記サッシュ部材(6)のサッシュ下部(62)は前記窓枠部のベルトライン(L)から下方に前記ドア本体内に延出されて、前記サッシュ部材が前記ガイドを車両前後方向前方に向けるように設置されるサイドドア構造において、
前記サッシュ上部(61)に車両前後方向後方に張り出される拡張部(61A)を備え、
前記拡張部(61A)の車両前後方向の長さが前記拡張部の拡張部上端から拡張部下端に向けて漸次長く形成され、前記拡張部上端及び前記拡張部下端にそれぞれ、車両前後方向後方に突出されて前記インナパネルに固定される上側第1固定部(611)、下側第1固定部(612)を有し、前記拡張部下端で前記下側第1固定部に対して少なくとも車両上下方向で重なるように設けられて前記アウタパネルに固定される第2固定部(613)を有し、
前記窓枠部(2)の後部は、前記サッシュ部材が前記上側第1固定部(611)と前記下側第1固定部(612)とを介して前記インナパネルに固定し、且つ前記第2固定部を介して前記アウタパネルに固定することによって閉断面構造(C)に形成される、
ことを特徴とするサイドドア構造。
【請求項2】
前記窓枠部の前記窓開口部(20)の後端部と前記窓枠部の後部(21)との間で車室内側の面にインナガーニッシュ取付部(22)が形成され、インナガーニッシュ(7)が第1係止部(71、72)と、第2係止部(73、74)とを有し、前記第1係止部(71、72)は、前記インナガーニッシュ取付部(22)に対向する面のインナガーニッシュ前端に配置され、インナガーニッシュ上部及び車両上下方向において前記サッシュ部材の前記第2固定部(613)よりも上方かつ当該第2固定部に近接するインナガーニッシュ下部にそれぞれ設けられ、前記サッシュ部材の車両幅方向内側面に固定され、前記第2係止部(73、74)は、前記インナガーニッシュ取付部に対向する面のインナガーニッシュ後端に配置され、インナガーニッシュ上部及び車両上下方向において前記サッシュ部材の下側第1固定部よりも上方かつ当該下側第1固定部に近接するインナガーニッシュ下部にそれぞれ設けられ、前記インナパネルの車両幅方向内側面に固定され、前記インナガーニッシュは、前記第1係止部で前記サッシュ部材に固定され、前記第2係止部で前記インナパネルに固定される請求項1に記載のサイドドア構造。
【請求項3】
前記サッシュ部材の前記上側第1固定部(611)、前記下側第1固定部(612)、前記第2固定部(613)は、車両前後方向において、前記インナガーニッシュの前記第1係止部と前記第2係止部との間に配置される請求項2に記載のサイドドア構造。
【請求項4】
前記窓枠部のベルトライン(L)より下側で前記インナパネルの車室内側の面がドアトリム(9)に固定され、前記インナガーニッシュ()の下端は前記ドアトリム(9)に対向する面に前記ドアトリムに固定される第3係止部を有し、前記インナガーニッシュの下端は前記第3係止部(75)で前記ドアトリムに固定される請求項2又は3に記載のサイドドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサイドドアの窓枠部の剛性を向上させるサイドドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のサイドドアには、ドア本体の上部に設けられる窓枠部の後部にインナガーニッシュ、アウタガーニッシュが取り付けられて、意匠的効果を図ったものが知られている。
【0003】
この種のサイドドアが特許文献1に開示されている。この文献1のサイドドアでは、図10に示すように、窓枠部Aの後部aがインナパネルbとアウタパネルcとからなり、その前端部にドアガラスを支持案内するサッシュ部材dが設けられる。インナガーニッシュeはインナパネルbに固定され、アウタガーニッシュfはアウタパネルcに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-66722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のサイドドア構造では、窓枠部Aの後部aはインナパネルbとアウタパネルcが接合されたうえで、インナパネルbが前方に延長され、インナパネルbの先端部にサッシュ部材dが固定されている。このため、このサイドドア構造では、窓枠部Aの後部aの前端部の剛性を高くすることが困難で、側面衝突(以下、側突という。)時に、窓枠部Aに十分な強度を確保することができない。また、窓枠部Aの後部aの前端部の剛性が低いと、側突時に、ドア本体に受ける衝撃荷重により、窓枠部Aの後部aからインナガーニッシュeやアウタガーニッシュfが脱落するおそれがある。インナガーニッシュeが脱落すると、乗員に危害を及ぼすことになりかねない。
【0006】
本発明はこのような従来の問題を解決するものであり、この種のサイドドア構造において、サイドドアの窓枠部の剛性を向上させること、併せて、側突時に、窓枠部後部からインナガーニッシュが脱落するのを防ぎ、乗員に危害を及ぼすおそれをなくし、又はそのおそれを著しく低減すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のサイドドア構造は、
車両のサイドドア(D)の下部を構成するドア本体(1)と、アウタパネルとインナパネルとからなり、且つ前記ドア本体の上部に設けられる窓開口部(20)を有する窓枠部(2)とを備え、前記窓枠部の後部の前端にサッシュ部材(6)が配置され、前記サッシュ部材(6)は、コ字形又はL字形の断面形状を呈し前記窓開口部(20)内の窓ガラスを支持し、且つ案内するガイド(5)を有し、前記サッシュ部材のサッシュ上部(61)は前記窓枠部のベルトライン(L)から上方に、且つ前記窓枠部の後部に延出され、前記サッシュ部材(6)のサッシュ下部(62)は前記窓枠部のベルトライン(L)から下方に前記ドア本体内に延出されて、前記サッシュ部材が前記ガイドを車両前後方向前方に向けるように設置されるサイドドア構造において、
前記サッシュ上部(61)に車両前後方向後方に張り出される拡張部(61A)を備え、
前記拡張部(61A)の車両前後方向の長さが前記拡張部の拡張部上端から拡張部下端に向けて漸次長く形成され、前記拡張部上端及び前記拡張部下端にそれぞれ、車両前後方向後方に突出されて前記インナパネルに固定される上側第1固定部(611)、下側第1固定部(612)を有し、前記拡張部下端で前記下側第1固定部に対して少なくとも車両上下方向で重なるように設けられて前記アウタパネルに固定される第2固定部(613)を有し、
前記窓枠部(2)の後部は、前記サッシュ部材が前記上側第1固定部(611)と前記下側第1固定部(612)とを介して前記インナパネルに固定し、且つ前記第2固定部を介して前記アウタパネルに固定することによって閉断面構造(C)に形成される、
ことを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のサイドドア構造では、次のような本発明独自の格別な効果を奏する。
窓枠部の後部でサッシュ部材は、ガイドのコ字形又はL字形の断面形状により、車両側面からの衝撃に対して剛性が高く、曲げ変形しにくい。このサッシュ部材がインナパネルに固定されることで、インナパネルの車両幅方向の剛性をより向上させることができる。また、窓枠部の後部とドア本体との間に設置されるサッシュ部材の上部拡張部が上端部から下端部に向けて漸次長く形成され、所謂テーパ形状になっている。これにより、車両側面からの衝撃が大きく、応力が集中しやすい窓枠部の下端でのサッシュ部材の強度を、重量の増加を抑えて、より向上させることができ、インナパネルの変形をより効果的に抑制することができる。さらに、このサッシュ部材がアウタパネルにも固定されて、窓枠部の後部に閉断面構造が形成されることで、側突時にサイドドアで受ける車両幅方向の衝撃荷重に対して、窓枠部の剛性を一層向上させることができる。
したがって、このサイドドア構造によれば、サイドドアの窓枠部の剛性を向上させて変形を低減することができ、窓枠部の変形により乗員に危害を及ぼすおそれをなくし、又はそのおそれを著しく低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)ドア本体のアウタパネル側の側面図(b)ドア本体のインナパネル側の側面図
図2】サイドドア構造の要部の構成を示す要部側面図
図3】(a)図2のA-A線断面図(b)図2のB-B線断面図(c)図2のC-C断面図
図4】(a)サッシュ部材の側面図(b)サッシュ部材の正面図
図5】サイドドア構造の要部の構成を示す要部側面図
図6】サイドドア構造の要部の構成を示す要部側面図
図7】サイドドア構造の要部の構成を示す要部側面図
図8】サイドドア構造の要部の構成を示す要部側面図
図9】サイドドア構造の要部の構成を示す要部側面図
図10】従来のサイドドア構造の要部の構成を示す平面断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1図2及び図3に示すように、本発明の一実施の形態に係るサイドドア構造は、窓枠部2の後部21がアウタパネル3とインナパネル4とからなり、窓枠部2の後部21の前端に窓ガラスを支持案内するガイド5を有するサッシュ部材6が設けられる。ガイド5はコ字形又はL字形の断面形状を呈する。サッシュ部材6は、サッシュ上部61が窓枠部2のベルトラインLから上方に窓枠部2の後部21に延出され、サッシュ下部62(図4参照)が窓枠部2のベルトラインLから下方にドア本体1内に延出されて、ガイド5を車両前後方向前方に向けて設置される。
そして、このサイドドア構造では、ガイド5のコ字形又はL字形の断面形状により車両側面からの衝撃に対して剛性が高く、曲げ変形しにくいサッシュ部材6がインナパネル4に固定され、インナパネル4の車両幅方向の剛性をより向上させる。また、サッシュ部材6の上部拡張部61Aが上端部から下端部に向けて漸次長い、所謂テーパ形状に形成される。このテーパ形状により、車両側面からの衝撃が大きく、応力が集中しやすい窓枠部2の下端でのサッシュ部材6の強度を、重量の増加を抑えて、より向上させ、インナパネル4の変形をより効果的に抑制する。そして、このサッシュ部材6はアウタパネル3に固定され、窓枠部2の後部21に閉断面構造Cが形成される。この閉断面構造Cにより、側突時にサイドドアDで受ける車両幅方向の衝撃荷重に対して、窓枠部2の剛性を向上させる。
このようにこのサイドドア構造は、サッシュ部材6に補強構造を設け、このサッシュ部材6をインナパネル4及びアウタパネル3に固定することで、窓枠部2に特別の補強部材を追加することなしに、窓枠部2の剛性を向上させて変形を低減する。このようにして窓枠部2の変形により乗員に危害を及ぼすおそれをなくし、又はそのおそれを著しく低減する。
【0011】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るサイドドア構造は、車両のサイドドアDの下部を構成するドア本体1と、アウタパネル3とインナパネル4とからなり、且つドア本体1の上部に設けられる窓開口部20を有する窓枠部2とを備えて構成される。窓枠部2の後部21の前端にはサッシュ部材6が配置される。図3に示すように、サッシュ部材6は、コ字形又はL字形の断面形状を呈し窓開口部20内の窓ガラスを支持し、且つ案内するガイド5を有する。図2に示すように、サッシュ部材6のサッシュ上部61は窓枠部2のベルトラインLから上方に、且つ窓枠部2の後部21に延出され、サッシュ部材6のサッシュ下部62(図4参照)は窓枠部2のベルトラインLから下方にドア本体1内に延出されて、サッシュ部材6がガイド5を車両前後方向前方に向けるように設置される。
【0012】
このサイドドア構造では、図4に示すように、サッシュ上部61に車両前後方向後方に張り出される拡張部61Aを備える。
【0013】
拡張部61Aの車両前後方向の長さは拡張部61Aの拡張部61A上端から拡張部61A下端に向けて漸次長く形成される。
【0014】
拡張部61A上端及び拡張部61A下端にそれぞれ、車両前後方向後方に突出されてインナパネル4に固定される上側第1固定部611(図3(a)参照)、下側第1固定部612(図3(c)参照)を有する。
【0015】
拡張部61A下端に、図5に示すように、下側第1固定部612に対して少なくとも車両上下方向で重なるように設けられてアウタパネル3に固定される第2固定部613(図3(c)参照)を有する。
【0016】
このようにして窓枠部2の後部21は、サッシュ部材6が上側第1固定部611と下側第1固定部612とを介してインナパネル4に固定され、且つ第2固定部613を介してアウタパネル3に固定されることによって閉断面構造Cに形成される。
【0017】
このようにこのサイドドア構造では、窓枠部2の後部21でサッシュ部材6が、ガイド5のコ字形又はL字形の断面形状により、車両側面からの衝撃に対して剛性が高く、曲げ変形しにくい。このサッシュ部材6がインナパネル4に固定されることで、インナパネル4の車両幅方向の剛性をより向上させることができる。また、窓枠部2の後部21とドア本体1との間に設置されるサッシュ部材6のサッシュ上部61の拡張部61Aが上端部から下端部に向けて漸次長く形成され、所謂テーパ形状になっている。これにより、車両側面からの衝撃が大きく、応力が集中しやすい窓枠部2の下端でのサッシュ部材6の強度を、重量の増加を抑えて、より向上させることができ、インナパネル4の変形をより効果的に抑制することができる。さらに、このサッシュ部材6がアウタパネル3にも固定されて、窓枠部2の後部21に閉断面構造Cが形成される。これにより、側突時にサイドドアDで受ける車両幅方向の衝撃荷重に対して、窓枠部2の剛性を一層向上させることができる。
したがって、このサイドドア構造によれば、サイドドアDの窓枠部2の剛性を向上させて変形を低減することができ、窓枠部2の変形により乗員に危害を及ぼすおそれをなくし、又はそのおそれを著しく低減することができる。
【0018】
また、このサイドドア構造は、図2に示すように、窓枠部2の窓開口部20の後端部と窓枠部2の後部21との間で車室内側の面にインナガーニッシュ取付部22が形成される。図3に示すように、インナガーニッシュ7は、第1係止部71、72(上部第1係止部71、下部第1係止部72)と、第2係止部73、74(上部第2係止部73、下部第2係止部74)とを有する。第1係止部71、72は、図2図3に示すように、インナガーニッシュ取付部22に対向する面のインナガーニッシュ7前端に配置され、インナガーニッシュ7上部及び車両上下方向においてサッシュ部材6の第2固定部613よりも上方かつ当該第2固定部613に近接するインナガーニッシュ7下部にそれぞれ設けられる。これら第1係止部71、72はサッシュ部材6の車両幅方向内側面に固定される。第2係止部73、74は、図2図3に示すように、インナガーニッシュ取付部22に対向する面のインナガーニッシュ7後端に配置され、インナガーニッシュ7上部及び車両上下方向においてサッシュ部材6の下側第1固定部612よりも上方かつ当該下側第1固定部612に近接するインナガーニッシュ7下部にそれぞれ設けられる。これらの第2係止部73、74はインナパネル4の車両幅方向内側面に固定される。
このようにしてインナガーニッシュ7は、図2図3に示すように、上下の第1係止部71、72でサッシュ部材6に固定され、上下の第2係止部73、74でインナパネル4に固定される。
【0019】
このようにこのサイドドア構造では、前述のとおり、窓枠部2の後部21のベルトラインL側の閉断面構造Cにより、窓枠部2の下側の剛性が向上し、ベルトラインLから上側の窓枠部2の変形が抑えられる。これにより、インナパネル4が車両幅方向の荷重に対して剛性が向上し、車両側面からの衝撃に対して変形しにくくなり、インナガーニッシュ7の第1、第2係止部71、72、73、74がそれぞれ、サッシュ部材6、インナパネル4から外れにくくなる。これによって、側突時に、窓枠部2の後部21からインナガーニッシュ7の脱落を防止することができる。
【0020】
また、このサイドドア構造の場合、図6に示すように、サッシュ部材6の上側第1固定部611、下側第1固定部612、第2固定部613は、車両前後方向において、インナガーニッシュ7の上下の第1係止部71、72(図2図3参照)と第2係止部73、74との間に配置される。
このような配置にして、ガイド5のコ字形又はL字形の断面形状により高い剛性を有するサッシュ部材6、及び窓枠部2の後部21のベルトラインL側の閉断面構造Cにより高い剛性を有するインナパネル4に、インナガーニッシュ7は第1係止部71、72と第2係止部73、74とにより係止される(図3図6参照)。すなわち、サッシュ部材6側に設けられる被係止部614、615(図3参照)、インナパネル4側に設けられる被係止部414、415(図6参照)は、それぞれ、変形しにくくなっている。よって、インナガーニッシュ7の第1係止部71、72、第2係止部73、74(図3図6参照)への応力集中を防止できる。したがって、側突時の衝撃により、インナガーニッシュ7の各係止部71、72、73、74(図3図6参照)は外れにくく、インナガーニッシュ7が脱落しにくくなる。また、サッシュ部材6側、インナパネル4側の各被係止部614、615、414、415が変形しにくいことで、これら被係止部614、615、414、415の変形によるインナガーニッシュ7の折損の発生を防ぐことができる。これにより、乗員にインナガーニッシュ7の端部や折損部により危害を及ぼすおそれをなくし、又はそのおそれを著しく低減することができる。
【0021】
さらに、このサイドドア構造では、図7に示すように、窓枠部2のベルトラインLより下側でインナパネル4の車室内側の面がドアトリム9に固定される。そして、インナガーニッシュ7の下端はドアトリム9に対向する面にドアトリム9に固定される第3係止部75を有し、インナガーニッシュ7の下端は第3係止部75でドアトリム9に固定される。
【0022】
このようにインナガーニッシュ7の下端が第3係止部75でドアトリム9に固定されることで、側突時の衝撃によってインナガーニッシュ7の下端がドアトリム9から外れ、車室内側に突出するのを防止することができる。これにより、乗員にインナガーニッシュ7により危害を及ぼすおそれをなくし、又はそのおそれを著しく低減することができる。
【0023】
この実施の形態の説明で用いている図はまた、このサイドドア構造の各部を、それぞれの一例として、より具体的に示している。なお、ドア本体1及び窓枠部2(窓枠部2の後部21を除く。)については一般的な構造になっているので、ここではその説明を省略する。
【0024】
図3に示すように、窓枠部2の後部21はアウタパネル3とインナパネル4とからなり、アウタパネル3とインナパネル4は接合されたうえでその前端部が車両前後方向前方に延ばされる。アウタパネル3の前端部は窓枠部2の後部21の前端へ、言い換えれば窓枠部2の窓開口部20の後端部へ延ばされる。インナパネル4の前端部は窓枠部2の後部21の前端近傍へ、言い換えれば窓枠部2の窓開口部20の後端部近傍へ延ばされる。
【0025】
この窓枠部21の窓開口部20の後端部に、窓枠部2のベルトラインを跨いで上下方向に延びるサッシュ部材6が設置される。
サッシュ部材6は、図4に示すように、樹脂成型により一体に形成され、ガイド5と拡張部61Aと複数の固定部611、612、613とからなる。
【0026】
この場合、ガイド5はコ字形の断面形状を有する上下方向に延びる部材である。勿論、ガイド5はL字形の断面形状であってもよい。このガイド5は上部が窓枠部2のベルトラインから上方に窓枠部2の後部21に延出される部分で、下部が窓枠部2のベルトラインから下方にドア本体1内に延出される部分になっている。かくしてガイド5は窓枠部2の窓開口部20の後端部にガイド5の開放面を車両前後方向前方に向けて配置され、窓開口部20内に昇降可能に配置される窓ガラスを支持案内する。
【0027】
また、この場合、拡張部61Aはガイド5の上部に車両前後方向後方に張り出される。拡張部61Aは車両前後方向の長さが上端部で短く、上端部から下端部に向けて漸次長く形成されて、側面視上下方向に細長い三角形状になっている。この拡張部61Aの上端部後縁部及び下端部後縁部にそれぞれ、インナパネル4に固定される上側第1固定部611、下側第1固定部612が車両前後方向後方に半レーストラック形状に突出されて設けられる。なお、この場合、上側第1固定部611、下側第1固定部612にはボルト挿通孔が設けられる。また、拡張部61Aの側面下端部でガイド5寄りにかつ下側第1固定部612に対して車両上下方向で同じ高さに又は少なくとも一部が重なる高さにアウタパネルに固定される第2固定部613が設けられる。なお、この場合、第2固定部613にはボルト挿通孔が設けられる。
【0028】
このようにしてサッシュ部材6は、図3(a)、(c)に示すように、上側第1固定部611、下側第1固定部612で、この場合、ボルトにより、インナパネル4に固定され、第2固定部613で、この場合、ボルトにより、アウタパネル3及びアウタガーニッシュ8に固定される。この場合、第2固定部613はアウタガーニッシュ8にナットが保持され、サッシュ部材6、アウタパネル3、アウタガーニッシュ8が、ボルト・ナットにより、共締めされる。これにより、サッシュ部材6とアウタパネル3とインナパネル4とによって、窓枠部2の後部21に閉断面構造Cが形成される。
【0029】
このように窓枠部2の後部21でサッシュ部材6は、ガイド5のコ字形又はL字形の断面形状により、車両側面からの衝撃に対して剛性が高く、曲げ変形しにくい。このサッシュ部材6がインナパネル4に固定されることで、インナパネル4の車両幅方向の剛性をより向上させることができる。また、サッシュ部材6の上部拡張部61Aは上端部から下端部に向けて漸次長く形成されて上下に細長い三角形状に、所謂テーパ形状になっている。これにより、車両側面からの衝撃が大きく、応力が集中しやすい窓枠部2の下端でのサッシュ部材6の強度を、重量の増加を抑えて、より向上させることができ、インナパネル4の変形をより効果的に抑制することができる。さらに、このサッシュ部材6はアウタパネル3とアウタガーニッシュ8にも固定されて、窓枠部2の後部21に閉断面構造Cが形成されるので、側突時にサイドドアDで受ける車両幅方向の衝撃荷重に対して、窓枠部2の剛性を一層向上させることができる。
したがって、このサイドドア構造によれば、サイドドアDの窓枠部2の剛性を向上させて変形を低減することができ、窓枠部2の変形により乗員に危害を及ぼすおそれをなくし、又はそのおそれを著しく低減することができる。
【0030】
図5に示すように、インナガーニッシュ取付部22は窓枠部2の窓開口部20の後端部と窓枠部2の後部21の車両前後方向中間部との間で車室内側の面に形成される。この場合、インナガーニッシュ取付部22はサッシュ部材6の車両幅方向内側面とインナパネル4の車両幅方向内側面に設けられる。インナガーニッシュ取付部22にはインナガーニッシュ7の取付面の前端部上下の第1係止部71、72(図3参照)、後端部上下の第2係止部73、74に対応して被係止部614、615、414、415が設けられる。この場合、インナガーニッシュ7の取付面の前端部上下の各第1係止部71、72に対応して、サッシュ部材6の車両幅方向内側面の上下に、被係止部614、615が設けられる。なお、この場合、各被係止部614、615にピン係合孔が設けられる。また、この場合、サッシュ部材6の車両幅方向内側面に縦方向、横方向に複数のリブ63が形成され、各被係止部614、615が補強される。この補強により、サッシュ部材6が被係止部614、615と係止部71、72との係合が外れる方向に撓みにくくなっている。また、これらのリブ63はインナガーニッシュ7の意匠外周部に接続され、これら被係止部614、615の形成面の強度が高められる。インナガーニッシュ7の取付面の後端部上下の各第2係止部73、74に対応して、インナパネル4の車両幅方向内側面の上下に、被係止部414、415が設けられる。なお、この場合、各被係止部414、415にピン係合孔が設けられる。インナガーニッシュ7の取付面はインナガーニッシュ7の取付時においてインナガーニッシュ取付部22に対向する面である。この取付面の前端部で上部及び下部にそれぞれ、サッシュ部材6の車両幅方向内側面に固定される第1係止部71、72(図3参照)が設けられる。なお、この場合、第1係止部71、72に係止ピンが設けられる。また、この場合、下部第1係止部72にあってはサッシュ部材6の第2固定部613よりも車両上下方向上方でこの第2固定部613に近接して設けられる。この取付面の後端部で上部及び下部にそれぞれ、インナパネル4の車両幅方向内側面に固定される第2係止部73、74が設けられる。なお、この場合、各第2係止部73、74に係止ピンが設けられる。また、この場合、下部第2係止部74にあってはサッシュ部材6の下側第1固定部612よりも車両上下方向上方でこの下側第1固定部612に近接して設けられる。このようにしてインナガーニッシュ7はインナガーニッシュ取付部22に相互の各係止部71、72、73、74と各被係止部614、615、414、415との係合により取り付けられる。
【0031】
このようにインナガーニッシュ7は前端部及び後端部の第1係止部71、72、第2係止部73、74がサッシュ部材6の車両幅方向内側面とインナパネル4の車両幅方向内側面に係止される。図7に示すように、サッシュ部材6はガイド5のコ字形又はL字形の断面形状により高い剛性を有し、インナパネル4は窓枠部2の後部21のベルトライン側の閉断面構造Cにより、高い剛性を有している。これにより、サッシュ部材6側、インナパネル4側に設けられる被係止部614、615、414、415は変形しにくく、インナガーニッシュ7の第1係止部71、72、第2係止部73、74への応力集中を防止できる。したがって、側突時の衝撃により、インナガーニッシュ7の第1係止部71、72、第2係止部73、74がサッシュ部材6、インナパネル4から外れにくく、インナガーニッシュ7が脱落しにくくなる。また、サッシュ部材6側、インナパネル4側の各被係止部614、615、414、415が変形しにくいことから、これら被係止部614、615、414、415の変形によるインナガーニッシュ7の折損の発生を防ぐことができる。これにより、乗員にインナガーニッシュ7の端部や折損部により危害を及ぼすおそれをなくし、又はそのおそれを著しく低減することができる。
【0032】
また、この場合、図6に示すように、サッシュ部材6の拡張部61Aの上側第1固定部611、第2固定部613は、車両前後方向において、インナガーニッシュ7の上側第1係止部71と下側第1係止部72とを結ぶ仮想ラインと上側第2係止部73と下側第2係止部74とを結ぶ仮想ラインとの間に配置される。このようにしてインナガーニッシュ7の各係止部71、72、73、74がサッシュ部材6とインナパネル4との固定点の周辺及びサッシュ部材6とアウタパネル3とアウタガーニッシュ8との固定点の周辺に配置される。このようにすることで、インナガーニッシュ7の各係止点が外的入力に対しての動きを最小限に抑え、各係止点の外れを防止することができる。
【0033】
窓枠部2の後部21は、図8に示すように、窓枠部2のベルトラインLより下側でインナパネル4が車室内側の面をドアトリム9に固定される。そしてインナガーニッシュ7の下端はドアトリム9に対向する面にドアトリム9に固定される第3係止部75を有し、インナガーニッシュ7の下端は第3係止部75でドアトリム9に固定される。
【0034】
このように窓枠部2の後部21のインナパネル4はドアトリム9に固定され、インナガーニッシュ7の下端が第3係止部75でドアトリム9に固定される。これにより、側突時の衝撃によってインナガーニッシュ7の下端がドアトリム9から外れ、車室内側に突出するのを防止することができる。したがって、乗員にインナガーニッシュ7により危害を及ぼすおそれをなくし、又はそのおそれを著しく低減することができる。
【0035】
以上説明したように、このサイドドア構造によれば、既述のとおり、サイドドアDの窓枠部2の剛性を向上させて変形を低減することができ、窓枠部2の後部21からインナガーニッシュ7の脱落を防止することができる。したがって、窓枠部2の変形やインナガーニッシュ7の脱落により乗員に危害を及ぼすおそれをなくし、又はそのおそれを著しく低減することができる。そして、この構造では、さらに次のような利点を有する。
(1)この構造では、インナガーニッシュ7は、窓枠部2の窓開口部20の後端部と窓枠部2の後部21の車両前後方向中間部との間で車室内側の面に形成されるインナガーニッシュ取付部22に、相互の各係止部と各被係止部との係合により取り付けられる。この場合、インナガーニッシュ7の前端部上下の第1係止部71、72とサッシュ部材6の上下の被係止部614、615との係合、インナガーニッシュ7の後端部上下の第2係止部73、74とインナパネル4の上下の被係止部414、415との係合とにより取り付けられる。このようにインナガーニッシュ7の前端部上下の第1係止部71、72とサッシュ部材6の上下の被係止部614、615とを係合させ、インナガーニッシュ7とインナガーニッシュ取付部22との係合箇所を増やしたことで、インナガーニッシュ7の保持力を高めることができる。また、インナガーニッシュ7の前端部上下及び後端部上下、つまり、インナガーニッシュ7の周端部付近が、第1係止部71、72、第2係止部73、74により、サッシュ部材6、インナパネル4に取り付けられるので、インナガーニッシュ7の保持力を向上させることができる。このインナガーニッシュ7の保持力の向上により、側突時の衝撃によるインナガーニッシュ7の脱落をより確実に防ぐことができる。
(2)この構造では、インナガーニッシュ7の上部第1係止部71及び上部第2係止部73はサッシュ部材6とインナパネル4との上側第1固定部611の近傍に配置される。この配置により、上部第1係止部71は外的入力に対して動きを最小限に抑え、インナガーニッシュ7の上部第1係止部71、上部第2係止部73の外れを防止することができる。また、インナガーニッシュ7の下部第1係止部72及び下部第2係止部74は窓枠部2の後部21のベルトライン側の閉断面構造Cに近接して配置される。この窓枠部2の後部21のベルトライン側の閉断面構造Cにより、窓枠部2の変形は少ない。この閉断面構造Cに近接してインナガーニッシュ7の下部第1係止部72及び下部第2係止部74が配置されることで、各係止部72、74で受ける荷重が低減される。これにより、側突時の衝撃荷重による、インナガーニッシュ7の下部第1係止部72、下部第2係止部74の外れを防止することができる。よってインナガーニッシュ7が窓枠部2の後部21から脱落するのを防止することができる。そして、サッシュ部材6、アウタパネル3及びアウタガーニッシュ8は第2固定部613で固定される。このように第2固定部613は複数の部品に跨ることで、局所的な変形に対して、これらの部品全体が外れるのを防止することができる。
(3)この構造では、サッシュ部材6の車両幅方向内側面に縦方向、横方向に複数のリブ63が設けられる。これにより、この面の剛性が確保され、側突時の衝撃荷重によっても撓みにくく、サッシュ部材6の被係止部614、615からインナガーニッシュ7の係止部71、72が外れるのを防止することができる。また、これらのリブ63はサッシュ部材6の意匠外周部に接続されるので、側突時の衝撃荷重に対して、これら被係止部614、615の面の強度が確保される。これにより、サッシュ部材6の被係止部614、615からインナガーニッシュ7の係止部71、72が外れるのを防止することができる。
(4)この構造では、インナガーニッシュ7の下部第1係止部72と第3係止部75とを結ぶ仮想ライン上にサッシュ部材6の第2固定部613が配置される。インナガーニッシュ7の下部第2係止部74と第3係止部75とを結ぶ仮想ライン上にサッシュ部材6の下側第1固定部612が配置される。このようにして窓枠部2の後部21のベルトライン側の閉断面構造Cの上下を跨いでインナガーニッシュ7の第1係止部71、72、第2係止部73、74、第3係止部75が配置される。これにより、インナガーニッシュ7の第1係止部71、72、第2係止部73、74は変形しにくくなる。インナガーニッシュ7の第1係止部71、72、第2係止部73、74は安定し、インナガーニッシュ7が窓枠部2の後部21から脱落するのを防止することができる。
(5)この構造では、図9に示すように、サッシュ部材6、インナガーニッシュ7及びアウタパネル3(図3参照)間の第2固定部613とサッシュ部材6及びインナパネル4間の下側第1固定部612との間にパッド部材Pが設置され、インナガーニッシュ7がサッシュ部材6にパッド部材Pを介して取り付けられる。このようにインナガーニッシュ7とサッシュ部材6との間にパッド部材Pが介在されることで、インナガーニッシュ7とサッシュ部材6との間に適宜の間隔が確保され、インナガーニッシュ7とドアトリム9との間の嵌め合いに隙間が生じるのを防ぎ、インナガーニッシュ7とドアトリム9との第3係止部75による係止を補強することができる。
【0036】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0037】
D サイドドア
1 ドア本体
2 窓枠部
20 窓開口部
21 後部
22 インナガーニッシュ取付部
3 アウタパネル
4 インナパネル
5 ガイド
6 サッシュ部材
61 サッシュ上部
61A 拡張部
611 上側第1固定部
612 下側第1固定部
613 第2固定部
62 サッシュ下部
7 インナガーニッシュ
71 上部第1係止部
72 下部第1係止部
73 上部第2係止部
74 下部第2係止部
75 第3係止部
9 ドアトリム
C 閉断面構造
P パッド部材
L ベルトライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10