(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】疑似接着紙用ラベル紙および配送伝票用紙
(51)【国際特許分類】
D21H 27/00 20060101AFI20240402BHJP
B42D 11/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
D21H27/00 A
B42D11/00 E
(21)【出願番号】P 2020108767
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 真理子
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-228171(JP,A)
【文献】特開平08-262781(JP,A)
【文献】特開2008-162042(JP,A)
【文献】特開平04-031088(JP,A)
【文献】特表2009-535474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B42D 1/00-15/02
B42D 25/00-25/485
D21B 1/00-D21J7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疑似接着紙用原紙
の一方の面に、疑似接着剤を付与してなる疑似接着剤層を備え、
該疑似接着剤層を介して、加圧によ
り疑似接着紙用ラベル紙
が剥離可能に疑似接着され、
疑似接着紙用原紙の他方の面に、粘着剤層、剥離紙が順次積層されてなる、
配送伝票用紙であって、
疑似接着紙用ラベル紙の縦および横方向の曲げこわさの平均値が、80
μN・m以上125
μN・m以下であり、
疑似接着紙用ラベル紙において、疑似接着紙用原紙と疑似接着剤層を介して接着される疑似接着面における水の接触角が、77°以上91°以下である、
配送伝票用紙。
【請求項2】
前記疑似接着面の表面粗さが、2.4μm以上3.8μm以下である、請求項1に記載の
配送伝票用紙。
【請求項3】
疑似接着紙用ラベル紙のJIS P 8122:2004に準拠したステキヒト法によるサイズ度が、14.5秒以上23.0秒以下である、請求項1または2に記載の
配送伝票用紙。
【請求項4】
前記疑似接着紙用ラベル紙を構成する原料パルプ中の広葉樹晒クラフトパルプの含有量が90質量%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の
配送伝票用紙。
【請求項5】
前記疑似接着紙用原紙の疑似接着剤が付与される面における表面開口率が、1.00%以上1.50%以下である、請求項
1~4のいずれか1項に記載の配送伝票用紙。
【請求項6】
前記疑似接着紙用原紙を構成する繊維の平均繊維長が、0.65mm以上1.00mm以下である、請求項
1~5のいずれか1項に記載の配送伝票用紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疑似接着紙用ラベル紙および配送伝票用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
疑似接着紙は、たとえば、疑似接着紙用原紙と、該疑似接着紙用原紙の少なくとも一面に形成される疑似接着剤層とを備え、疑似接着紙用ラベル紙などの被接着体が、加圧または加熱加圧により、疑似接着剤層に剥離可能に疑似接着されるものである。疑似接着剤層は、通常、常温常圧下では接着力がないが、加圧または加熱加圧により接着力が付与され、被接着体が疑似接着剤層に接着された後、容易に剥離することができる機能を有する。
【0003】
特許文献1には、圧着後に剥離可能である感圧接着剤層が接着剤と微粒子充填剤とからなる感圧接着剤組成物であり、該感圧接着剤層表面のシリコーンオイルの接触角が特定値以下であり、該微粒子充填剤の比表面積および吸油量が特定の範囲であり、特定の接着剤を用い、該接着剤の含有量が特定の範囲である再剥離性圧着記録用紙が開示されており、離型剤であるシリコーンオイル塗布後の接着強度低下が小さく、親展葉書として使用する場合、接着および再剥離性を満足させる再剥離性圧着記録用紙が得られると記載されている。
【0004】
剥離可能である疑似接着紙の被接着体を剥離した際、被接着体のカールが大きいと、剥離後の被接着体は、取り扱いづらいという課題があった。このような課題を解決するために、特許文献2には、複数の紙片を重ね合わせてなり、この重ね合わせ面が、通常では接着せず所定の圧を加えると接着可能となり、接着後には剥離可能な接着剤によって剥離可能に接着される一方、前記重ね合わせ面を形成する紙片の少なくとも一つの紙片における情報を印字しない面には、カール防止層(合成樹脂フィルム層)を設けた隠蔽情報所持体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4839090号公報
【文献】実開平5-78580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2では、追加のカール防止層を設けることで被接着体のカールを防止しているが、カール防止層などの追加層を設けず、製造工程数が少なく、剥離後の被接着体のカールを小さくできる疑似接着紙および疑似接着紙を構成する被接着体の実現が望まれていた。
【0007】
本発明は、上述した課題の存在に鑑みてなされたものであり、カール防止層などの追加層を設けることなく、剥離後のカールを小さくできる、被接着体としての疑似接着紙用ラベル紙および該疑似接着紙用ラベル紙を用いた配送伝票用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、疑似接着紙用ラベル紙の縦および横方向の曲げこわさの平均値を特定の範囲とし、疑似接着紙用原紙と疑似接着剤層を介して疑似接着される疑似接着面の水の接触角を特定の範囲にすることにより、カール防止層などの追加層を設けることなく、剥離後の疑似接着紙用ラベル紙のカールを小さくできることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の<1>~<7>に関する。
<1> 疑似接着紙用原紙に、加圧により疑似接着剤層を介して剥離可能に疑似接着される疑似接着紙用ラベル紙であって、縦および横方向の曲げこわさの平均値が、80μN・m以上125μN・m以下であり、疑似接着紙用原紙と疑似接着剤層を介して接着される疑似接着面における水の接触角が、77°以上91°以下である、疑似接着紙用ラベル紙。
<2> 前記疑似接着面の表面粗さが、2.4μm以上3.8μm以下である、<1>に記載の疑似接着紙用ラベル紙。
<3> JIS P 8122:2004に準拠したステキヒト法によるサイズ度が、14.5秒以上23.0秒以下である、<1>または<2>に記載の疑似接着紙用ラベル紙。
<4> 前記疑似接着紙用ラベル紙を構成する原料パルプ中の広葉樹晒クラフトパルプの含有量が90質量%以上である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の疑似接着紙用ラベル紙。
<5> 前記疑似接着紙用原紙の一方の面に、疑似接着剤を付与してなる疑似接着剤層を備え、該疑似接着剤層を介して、<1>~<4>のいずれか1つに記載の疑似接着紙用ラベル紙が、疑似接着され、疑似接着紙用原紙の他方の面に、粘着剤層、剥離紙が順次積層されてなる、配送伝票用紙。
<6> 前記疑似接着紙用原紙の疑似接着剤が付与される面における表面開口率が、1.00%以上1.50%以下である、<5>に記載の配送伝票用紙。
<7> 前記疑似接着紙用原紙を構成する繊維の平均繊維長が、0.65mm以上1.00mm以下である、<5>または<6>に記載の配送伝票用紙。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カール防止層などの追加層を設けることなく、剥離後の疑似接着紙用ラベル紙のカールを小さくできる疑似接着紙用ラベル紙および該疑似接着紙用ラベル紙を用いた配送伝票用紙が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[疑似接着紙用ラベル紙]
本発明の疑似接着紙用ラベル紙(以下、単に「疑似接着紙用ラベル紙」ともいう)は、疑似接着紙用原紙に、加圧により疑似接着剤層を介して剥離可能に疑似接着される疑似接着紙用ラベル紙であって、縦および横方向の曲げこわさの平均値が、80μN・m以上125μN・m以下であり、疑似接着紙用原紙と疑似接着剤層を介して接着される疑似接着面における水の接触角が、77°以上91°以下である。
【0011】
カール防止層などの追加層を設けることなく、疑似接着紙用ラベル紙のみで、紙の腰を強くしようとすると、高叩解したり、紙の厚さを厚くしたりすること等が必要になる。しかし、高叩解すると、電力消費が増加し、非経済的であり、また、紙の厚さを厚くすると、非経済的であるばかりでなく、所望の用途に好適な厚さではなくなる場合がある。そのため、高叩解したり、紙の厚さを厚くすること等には限界がある。
【0012】
本発明によれば、疑似接着紙用ラベル紙の縦および横方向の曲げこわさの平均値を特定の範囲とし、疑似接着紙用原紙と疑似接着剤層を介して疑似接着される疑似接着面の水の接触角を特定の範囲にすることによって、疑似接着紙用ラベル紙の腰を強くし、かつ、剥離時に必要な引きはがし力を小さくでき、その結果として、剥離後のカールが小さい疑似接着紙用ラベル紙が得られることを見出した。したがって、本発明によれば、製造時の電力消費を抑えることができるとともに、製造工程数を増やすことなく、経済性に優れ、剥離後のカールが小さい疑似接着紙用ラベル紙を提供できる。また、本発明の疑似接着紙用ラベル紙は、厚さが厚すぎないため、たとえば、配送伝票用紙に好適である。なお、本発明の疑似接着紙用ラベル紙は、疑似接着紙用原紙と疑似接着剤層を介して疑似接着されない側の面、すなわち、疑似接着面と反対側の面に、感熱記録層を備えることが好ましく、感熱記録層に加えて下塗り層および保護層を備え、下塗り層、感熱記録層、および保護層をこの順に備えることがより好ましい。
【0013】
(曲げこわさ)
本発明の疑似接着紙用ラベル紙の縦および横方向の曲げこわさの平均値は、80μN・m以上であり、好ましくは82μN・m以上、より好ましくは85μN・m以上であり、そして、125μN・m以下であり、好ましくは123μN・m以下である。縦および横方向の曲げこわさの平均値が上記範囲であると、疑似接着紙用ラベル紙の腰が弱すぎず、剥離後のカールを小さくできるとともに、電力消費を抑えることができ、経済性に優れる。ここで、たとえば、矩形状を有し、かつ、疑似接着紙用原紙と疑似接着剤層を介して疑似接着された疑似接着紙用ラベル紙を剥離する場合、一般的に、いずれかの角部から斜め方向に剥離するため、縦および横方向の曲げこわさの平均値を指標として採用した。なお、曲げこわさは、原料パルプの種類、叩解度、各種添加剤および疑似接着紙用ラベル紙の厚さおよび坪量などを調整することなどにより所望の範囲に制御できる。
【0014】
疑似接着紙用ラベル紙の縦および横方向の曲げこわさの平均値Sは、以下のように求められる。JIS P 8118:2014に準拠し、疑似接着紙用ラベル紙の厚さT[m]が測定される。JIS P 8113:2006に準拠し、疑似接着紙用ラベル紙の縦および横方向の引張弾性率が測定され、該縦および横方向の引張弾性率の相乗平均値を求め、引張弾性率E[N/m2]とする。疑似接着紙用ラベル紙の厚さT[m]および引張弾性率E[N/m2]の値から、下式により疑似接着紙用ラベル紙の縦および横方向の曲げこわさの平均値Sが求められる。
縦および横方向の曲げこわさの平均値S[N・m]={引張弾性率E[N/m2]×(紙の厚さT[m]3)}÷12
【0015】
(水の接触角)
本発明の疑似接着紙用ラベル紙は、疑似接着紙用原紙と疑似接着剤層を介して接着される疑似接着面における水の接触角が、77°以上であり、そして、91°以下である。疑似接着面における水の接触角が上記範囲であると、疑似接着剤層を介した疑似接着紙用原紙との粘着力(疑似接着力)が、弱すぎて自然に剥離してしまうことがなく、かつ、強すぎずに剥離時に必要な引きはがし力(剥離力)が小さくなるため、疑似接着紙用ラベル紙の曲げこわさを大幅に高めることなく、剥離後のカールを小さくできる。なお、疑似接着面における水の接触角は、内添サイズ剤および表面サイズ剤の量を調整すること等により制御できる。
疑似接着面における水の接触角は、疑似接着面にイオン交換水を滴下し、滴下30秒後の接触角を、動的接触角試験機(たとえば、Fibro社製、1100DAT)を用いて10回測定し、その平均値を疑似接着面における水の接触角とする。
【0016】
<原料パルプ>
疑似接着紙用ラベル紙を構成する原料パルプとしては、たとえば、木材パルプ、非木材パルプ、および脱墨パルプが挙げられる。木材パルプとしては、特に限定されないが、たとえば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、特に限定されないが、たとえば、コットンリンター、コットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、竹、バガス等の非木材系パルプが挙げられる。脱墨パルプとしては、特に限定されないが、たとえば、古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。原料パルプは、上記の1種を単独でも2種以上混合して用いてもよい。なお、原料パルプに、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の有機合成繊維、ポリノジック繊維等の再生繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維等の無機繊維を混用してもよい。
【0017】
原料パルプは、入手のしやすさという観点から、木材パルプおよび脱墨パルプが好ましい。また、原料パルプは、木材パルプの中でも、疑似接着紙用原紙と疑似接着剤層を介した粘着力の経時的な低下を抑制する観点から、好ましくは化学パルプであり、より好ましくはクラフトパルプであり、さらに好ましくはユーカリ、アカシア等の広葉樹クラフトパルプ、およびマツ、スギ等の針葉樹クラフトパルプから選択される1種以上であり、よりさらに好ましくは広葉樹晒クラフトパルプおよび針葉樹晒クラフトパルプから選択される1種以上である。
【0018】
疑似接着紙用ラベル紙を構成する原料パルプ中の広葉樹晒クラフトパルプの含有量は、安価で経済性に優れる疑似接着紙用ラベル紙を得る観点および所望の曲げこわさを有する疑似接着紙用ラベル紙の得やすさの観点から、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上であり、その上限は100質量%であってもよい。
【0019】
(カナダ標準ろ水度(CSF))
原料パルプは、JIS P 8121-2:2012に準拠したカナダ標準ろ水度(CSF)が、好ましくは350mL以上、より好ましくは380mL以上、さらに好ましくは390mL以上、よりさらに好ましくは400mL以上、よりさらに好ましくは410mL以上であり、そして、好ましくは500mL以下、より好ましくは490mL以下、さらに好ましくは480mL以下、よりさらに好ましくは470mL以下である。原料パルプのCSFが上記範囲であると、疑似接着紙用ラベル紙の縦および横方向の曲げこわさの平均値を上述した範囲に制御しやすく、疑似接着紙用ラベル紙の腰が弱すぎず、剥離後のカールを小さくできるとともに、製造時の電力消費を抑えることができ、経済性に優れる。
原料パルプのCSFは、2種以上の原料パルプを使用する場合には、別々に叩解したパルプを混合して上記範囲に調整してもよいし、予め混合したパルプを叩解して上記範囲に調整してもよい。なお、パルプを叩解する方法は、特に限定されず、リファイナー等の一般的な叩解機が用いられる。
【0020】
(内添サイズ剤)
原料パルプには、内添サイズ剤が配合されることが好ましい。内添サイズ剤としては、ロジンサイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤等が挙げられる。内添サイズ剤の配合量は、内添サイズ剤の種類等によって適宜変更されるが、原料パルプ(絶乾質量)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.02質量部以上であり、そして、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.7質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下、よりさらに好ましくは0.4質量部以下である。内添サイズ剤の添加量が上記範囲であると、疑似接着紙用ラベル紙の疑似接着面における水の接触角を上述した範囲に制御しやすく、疑似接着剤層を介した疑似接着紙用原紙との粘着力が、弱すぎて自然に剥離してしまうことがなく、かつ、強すぎずに剥離時に必要な引きはがし力が小さくなるため、疑似接着紙用ラベル紙の曲げこわさを大幅に高めることなく、剥離後のカールを小さくできる。
ロジンサイズ剤の配合量は、原料パルプ(絶乾質量)100質量部に対して、好ましくは0.15質量部以上、より好ましくは0.20質量部以上であり、そして、好ましくは0.35質量部以下、より好ましくは0.30質量部以下である。
合成サイズ剤の配合量は、原料パルプ(絶乾質量)100質量部に対して、好ましくは0.010質量部以上、より好ましくは0.015質量部以上、そして、好ましくは0.040質量部以下、より好ましくは0.035質量部以下である。
石油樹脂系サイズ剤の配合量は、原料パルプ(絶乾質量)100質量部に対して、好ましくは0.050質量部以上、より好ましくは0.070質量部以上、そして、好ましくは0.150質量部以下、より好ましくは0.130質量部以下である。
【0021】
(任意成分)
疑似接着紙用ラベル紙は、必要に応じて、たとえば、アニオン性、カチオン性もしくは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、填料等の内添助剤、染料、蛍光増白剤等の任意成分を含んでいてもよい。
歩留向上剤としては、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド等の高分子系歩留向上剤が挙げられる。硫酸アルミニウムの添加量は、特に限定されないが、原料パルプ(絶乾質量)100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.4質量部以上、そして、好ましくは0.6質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。高分子系歩留向上剤の添加量は、特に限定されないが、原料パルプ(絶乾質量)100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上であり、そして、好ましくは0.05質量部以下、より好ましくは0.03質量部以下である。
乾燥紙力増強剤としては、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。乾燥紙力増強剤の添加量は、特に限定されないが、原料パルプ(絶乾質量)100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.07質量部以上であり、そして、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
湿潤紙力増強剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
填料としては、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の無機填料、アクリル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の有機填料が挙げられる。填料の添加量は、特に限定されないが、原料パルプ(絶乾質量)100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.07質量部以上であり、そして、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下である。
【0022】
<その他の層>
本発明の疑似接着紙用ラベル紙は、その他の層として、感熱記録層を備えることが好ましい。感熱記録層は、加熱により呈色する層をいい、特に限定されない。また、本発明の疑似接着紙用ラベル紙は、感熱記録層に加えて下塗り層および保護層を備え、下塗り層、感熱記録層、保護層をこの順に備えることがより好ましい。下塗り層は、記録感度等を高めるために設けられる層であり、特に限定されない。保護層は、感熱記録層を保護する層をいい、特に限定されない。
なお、疑似接着紙用ラベル紙が感熱記録層を備える場合、感熱記録層、下塗り層、保護層などのその他の層を付与する前の疑似接着紙用ラベル紙を疑似接着紙用ラベル原紙と呼ぶことがある。
【0023】
[疑似接着紙用ラベル紙の製造方法]
疑似接着紙用ラベル紙の製造方法は、上記の原料パルプを含むスラリーを抄紙し、乾燥する工程を含むことが好ましい。抄紙方法については、特に限定されず、たとえば、pHが4.5付近で抄紙を行う酸性抄紙法、pHが約6~約9で抄紙を行う中性抄紙法等が挙げられる。抄紙工程では、必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙工程用薬剤を適宜添加できる。抄紙機についても、特に限定されず、たとえば、長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機またはこれらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機等を用いることができる。乾燥方法についても、特に限定されず、公知の乾燥装置を用いて実施することができる。
【0024】
本発明の疑似接着紙用ラベル紙の製造方法では、抄紙された疑似接着紙用ラベル紙に表面サイズ剤を塗布する工程を有することが好ましい。塗布方法については、特に限定されず、たとえば、サイズプレス等を用いて塗布する方法等が挙げられる。表面サイズ剤は、少なくとも、疑似接着紙用原紙と疑似接着剤層を介して疑似接着される疑似接着面に塗布されることが好ましい。
表面サイズ剤としては、スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸共重合体等が挙げられる。表面サイズ剤の塗布量は、好ましくは0.0005g/m2以上、より好ましくは0.0008g/m2以上であり、そして、好ましくは0.005g/m2以下、より好ましくは0.004g/m2以下である。表面サイズ剤の塗布量が上記範囲であると、疑似接着紙用ラベル紙の疑似接着面における水の接触角を上述した範囲に制御しやすく、疑似接着剤層を介した疑似接着紙用原紙との粘着力が、弱すぎて自然に剥離してしまうことがなく、かつ、強すぎずに剥離時に必要な引きはがし力が小さくなるため、疑似接着紙用ラベル紙の曲げこわさを大幅に高めることなく、剥離後のカールを小さくできる。
【0025】
疑似接着紙用ラベル紙の製造方法は、疑似接着紙用原紙と疑似接着剤層を介して疑似接着されない側の面、すなわち、疑似接着面と反対側の面に、下塗り層用塗工液、感熱記録層用塗工液、および保護層用塗工液を、この順に塗工し、乾燥する工程を含むことが好ましい。
【0026】
<疑似接着紙用ラベル紙の特性>
(表面粗さ)
疑似接着紙用原紙と疑似接着剤層を介して疑似接着される疑似接着紙用ラベル紙の疑似接着面の表面粗さは、好ましくは2.4μm以上、より好ましくは2.5μm以上、さらに好ましくは2.6μm以上であり、そして、好ましくは3.8μm以下、より好ましくは3.7μm以下、さらに好ましくは3.6μm以下である。疑似接着面の表面粗さが上記範囲であると、疑似接着剤とのアンカー効果が好適に発揮され、粘着力が弱すぎて自然に剥離してしまうことがなく、かつ、強すぎずに剥離時に必要な引きはがし力が小さくなるため、疑似接着紙用ラベル紙の曲げこわさを大幅に高めることなく、剥離後のカールを小さくできる。
疑似接着面の表面粗さは、以下のように測定される。レーザ変位計(たとえば、株式会社キーエンス製、KS-1100)を用いて、疑似接着面の表面の凹凸データを20.5mm四方の面積で取得する。得られた凹凸データのうち、0.02~1mmの波長成分の凹凸の標準偏差を求め、疑似接着面の表面粗さとする。
【0027】
(ステキヒト法によるサイズ度)
疑似接着紙用ラベル紙のJIS P 8122:2004に準拠したステキヒト法によるサイズ度は、好ましくは14.5秒以上、より好ましくは15.5秒以上であり、そして、好ましくは23.0秒以下、より好ましくは22.0秒以下である。サイズ度が上記範囲であると、粘着力が弱すぎて自然に剥離してしまうことがなく、かつ、強すぎずに剥離時に必要な引きはがし力が小さくなるため、疑似接着紙用ラベル紙の曲げこわさを大幅に高めることなく、剥離後のカールを小さくできる。
【0028】
(厚さ)
疑似接着紙用ラベル紙の厚さは、好ましくは35μm以上、より好ましくは45μm以上、さらに好ましくは55μm以上、よりさらに好ましくは65μm以上であり、そして、好ましくは115μm以下、より好ましくは105μm以下、さらに好ましくは95μm以下、よりさらに好ましくは85μm以下である。厚さが上記範囲であると、疑似接着紙用ラベル紙の縦および横方向の曲げこわさの平均値を上述した範囲に制御しやすく、疑似接着紙用ラベル紙の腰が弱すぎず、剥離後のカールを小さくできる。また、厚さが上記範囲の疑似接着紙用ラベル紙は、たとえば、配送伝票用紙等に好適に用いられる。
疑似接着紙用ラベル紙の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
【0029】
(坪量)
疑似接着紙用ラベル紙の坪量は、好ましくは50g/m2以上、より好ましくは55g/m2以上、さらに好ましくは60g/m2以上であり、そして、好ましくは80g/m2以下、より好ましくは75g/m2以下、さらに好ましくは70g/m2以下である。坪量が上記範囲であると、疑似接着紙用ラベル紙は、たとえば配送伝票用紙等に好適に用いられる。
疑似接着紙用原紙の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
【0030】
[配送伝票用紙]
本発明の配送伝票用紙は、疑似接着紙用原紙の一方の面に、疑似接着剤を付与してなる疑似接着剤層を備え、該疑似接着剤層を介して、疑似接着紙用ラベル紙が、疑似接着され、疑似接着紙用原紙の他方の面に、粘着剤層、剥離紙が順次積層されてなる。
【0031】
<疑似接着紙用原紙>
(原料パルプ)
疑似接着紙用原紙を構成する原料パルプとしては、疑似接着紙用ラベル紙を構成する原料パルプとして挙げられたものを用いることができる。
【0032】
≪平均繊維長≫
疑似接着紙用原紙を構成する繊維の平均繊維長は、好ましくは0.65mm以上、より好ましくは0.70mm以上、さらに好ましくは0.75mm以上、よりさらに好ましくは0.80mm以上であり、そして、好ましくは1.00mm以下、より好ましくは0.95mm以下である。平均繊維長が上記範囲であると、疑似接着剤層に疑似接着される疑似接着紙用ラベル紙を剥がす際に、疑似接着紙用原紙が層間剥離してしまうことを防ぐことができる。
疑似接着紙用原紙を構成する繊維の繊維長は、繊維長測定装置(たとえば、メッツォ社製、カヤーニファイバーラボ)を用いて2回測定され、その平均値を平均繊維長とする。
【0033】
(任意成分)
疑似接着紙用原紙は、必要に応じて、たとえば、アニオン性、カチオン性もしくは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、填料、内添サイズ剤等の内添助剤、表面サイズ剤、染料、蛍光増白剤等の任意成分を含んでいてもよい。任意成分の具体例としては、疑似接着紙用ラベル紙の任意成分等で挙げられたものを用いることができる。
【0034】
疑似接着紙用原紙は、疑似接着紙用ラベル紙の製造方法と同様の方法により製造することができる。
【0035】
(疑似接着紙用原紙の特性)
≪表面開口率≫
疑似接着紙用原紙の疑似接着剤が付与される面における表面開口率は、好ましくは1.00%以上、より好ましくは1.10%以上であり、そして、好ましくは1.50%以下、より好ましくは1.40%以下、さらに好ましくは1.30%以下である。表面開口率が上記範囲内であると、疑似接着剤層が十分に形成され、疑似接着剤が疑似接着紙用原紙へ過度に浸透してしまうことを抑制できるので、疑似接着力に優れ、疑似接着力が経時的に低下することを抑制することができる。疑似接着紙用原紙の表面開口率は、原料パルプの種類およびCSF、疑似接着紙用原紙を構成する繊維の平均繊維長等を変更することにより調整することができる。
疑似接着紙用原紙の疑似接着剤が付与される面における表面開口率は、以下のように求められる。疑似接着紙用原紙において、疑似接着剤が付与される面の表面画像をSEMにより取得し、画像解析ソフトで読み込んで256階調に分級し、濃度値と度数とのヒストグラムにおいて、度数が最も大きくなる濃度値から60を引いた値を閾値として設定し、256階調に分級した疑似接着剤が付与される面の表面画像を2値化した際の黒色部分(開口部)の面積を3回測定して、表面画像全体の面積に占める黒色部分(開口部)の面積率を算出し、その平均値を表面開口率とする。
【0036】
<疑似接着剤層>
疑似接着剤層を構成する疑似接着剤は、基剤として、好ましくはアクリル系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、およびゴム系接着剤のいずれか1種以上を含有し、より好ましくはアクリル系接着剤および酢酸ビニル系接着剤のいずれか1種以上を含有する。
【0037】
疑似接着剤は、微粒子充填剤を含むことが好ましい。微粒子充填剤としては、合成シリカ、澱粉、タルクが好ましく、合成シリカと澱粉とを併用することがより好ましい。
微粒子充填剤として、合成シリカと澱粉とを併用する場合、疑似接着剤は、アクリル系接着剤および酢酸ビニル系接着剤のいずれか1種以上を65質量%以上85質量%以下、合成シリカを12.5質量%以上32.5質量%以下、かつ、澱粉を0.5質量%以上2.5質量%以下含有することが好ましい。疑似接着剤中の各成分の含有量が上記範囲であると、疑似接着性、加工性等に優れる。
【0038】
微粒子充填剤として、合成シリカと澱粉とを併用する場合、合成シリカの平均粒子径が0.2μm以上3.0μm以下であり、かつ、澱粉の平均粒子径が7.0μm以上15.0μm以下であることが好ましい。平均粒子径が上記範囲内であると、疑似接着性、加工性等に優れる。
微粒子充填剤としてタルクを用いる場合、タルクの平均粒子径は、2.0μm以上5.0μm以下であることが好ましい。平均粒子径が上記範囲内であると、疑似接着性、加工性等に優れる。
【0039】
疑似接着紙用原紙に疑似接着剤を付与する方法は、特に限定されず、疑似接着紙用原紙に、疑似接着剤を塗布する方式、フィルム状にした疑似接着剤を圧着する方式、疑似接着剤を紫外線硬化型ワニス組成物として塗布した後に紫外線を照射して硬化させる方式等を採用することができる。
【0040】
粘着剤としては、特に限定されないが、たとえば、合成樹脂系粘着剤、合成ゴム系粘着剤等が挙げられる。粘着剤を疑似接着紙用原紙に付与する方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
【0041】
剥離紙は、配送伝票用紙の状態では粘着剤に粘着しており、配送伝票用紙が使用される荷物等の被貼付体に配送伝票用紙が貼付される際に、粘着剤から剥離可能なものであればよい。
【0042】
<配送伝票用紙の特性>
(粘着力(引きはがし力))
配送伝票用紙の疑似接着紙用ラベル紙の粘着力(引きはがし力)は、好ましくは0.40N/50mm以上、より好ましくは0.45N/50mm以上、さらに好ましくは0.48N/50mm以上であり、そして、好ましくは0.70N/50mm以下、より好ましくは0.65N/50mm以下、さらに好ましくは0.63N/50mm以下である。粘着力(引きはがし力)が上記範囲であると、粘着力(疑似接着力)が小さすぎて疑似接着紙用ラベル紙が自然に剥離してしまうことがなく、かつ、剥離時に必要な引きはがし力(剥離力)を小さくし、疑似接着紙用ラベル紙の曲げこわさを大幅に高めることなく、剥離後のカールを小さくできる。
配送伝票用紙の疑似接着紙用ラベル紙の粘着力(引きはがし力)は、JIS Z 0237:2009に準拠して測定される。
【0043】
本発明の配送伝票用紙によれば、粘着力が弱すぎて疑似接着紙用ラベル紙が自然に剥離してしまうことがなく、かつ、強すぎずに剥離時に必要な引きはがし力を小さくし、疑似接着紙用ラベル紙の曲げこわさを大幅に高めることなく、剥離後のカールを小さくできる。
【実施例】
【0044】
以下に実施例と比較例とを挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0045】
[評価および分析]
実施例および比較例の原料パルプ、疑似接着紙用ラベル紙、疑似接着紙用原紙、および配送伝票用紙について、以下の評価および分析を行った。
【0046】
<原料パルプ>
(カナダ標準ろ水度(CSF)の測定)
原料パルプのカナダ標準ろ水度(CSF)は、JIS P 8121-2:2012に準拠して測定した。
【0047】
<疑似接着紙用ラベル紙>
(厚さ)
疑似接着紙用ラベル紙の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定した。
【0048】
(坪量)
疑似接着紙用ラベル紙の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定した。
【0049】
(密度)
疑似接着紙用ラベル紙の密度は、上述した測定方法により得られた厚さおよび坪量から算出した。
【0050】
(曲げこわさ)
疑似接着紙用ラベル紙の縦および横方向の曲げこわさの平均値は、以下のように求めた。JIS P 8118:2014に準拠し、疑似接着紙用ラベル紙の厚さT[m]を測定した。JIS P 8113:2006に準拠し、疑似接着紙用ラベル紙の縦および横方向の引張弾性率を測定し、該縦および横方向の引張弾性率の相乗平均値を求め、引張弾性率E[N/m2]とした。疑似接着紙用ラベル紙の厚さT[m]および引張弾性率E[N/m2]の値から、下式により疑似接着紙用ラベル紙の縦および横方向の曲げこわさの平均値Sを求めた。
縦および横方向の曲げこわさの平均値S[N・m]={引張弾性率E[N/m2]×(紙の厚さT[m])3}÷12
【0051】
(水の接触角)
疑似接着紙用原紙と疑似接着剤層を介して接着される疑似接着面における水の接触角は、疑似接着面にイオン交換水を滴下し、滴下30秒後の接触角を、動的接触角試験機(Fibro社製、1100DAT)を用いて10回測定し、その平均値を疑似接着面における水の接触角とした。
【0052】
(表面粗さ)
疑似接着面の表面粗さは、以下のように測定した。レーザ変位計(株式会社キーエンス製、KS-1100)を用いて、疑似接着面の表面の凹凸データを20.5mm四方の面積で取得した。得られた凹凸データのうち、0.02~1mmの波長成分の凹凸の標準偏差を求め、疑似接着面の表面粗さとした。
【0053】
(ステキヒト法によるサイズ度)
疑似接着紙用ラベル紙のステキヒト法によるサイズ度は、疑似接着面を上にして、JIS P 8122:2004に準拠して測定した。
【0054】
<疑似接着紙用原紙>
(表面開口率)
表面開口率は、疑似接着紙用原紙において、疑似接着剤が付与される面の表面画像を、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の「走査電子顕微鏡 S-3600N」により取得し、株式会社アイスペック製の画像解析ソフト「IOMate2007」で読み込んで256階調に分級し、濃度値と度数とのヒストグラムにおいて、度数が最も大きくなる濃度値から60を引いた値を閾値として設定し、256階調に分級した疑似接着剤が付与される面の表面画像を2値化した際の黒色部分(開口部)の面積を3回測定して、表面画像全体の面積(1.72mm×2.56mm)に占める黒色部分(開口部)の面積率を算出し、その平均値を表面開口率とした。
【0055】
(平均繊維長)
疑似接着紙用原紙を構成する繊維の平均繊維長は、以下のように測定した。JIS P 8220-1:2012に準拠し、疑似接着紙用原紙を離解して試料を得た。繊維長測定装置(メッツォ社製、カヤーニファイバーラボ)を用いて、得られた試料の長さ加重平均繊維長を2回測定し、その平均値を平均繊維長とした。
【0056】
<配送伝票用紙>
(粘着力(引きはがし力))
配送伝票用紙の疑似接着紙用ラベル紙の粘着力(引きはがし力)は、JIS Z 0237:2009に準拠して測定した。粘着力(引きはがし力)は、0.40N/50mm以下では、少し触れただけで剥がれてしまうおそれがあり、0.70N/50mm以上では、剥がしにくく、剥離後のカールが大きくなる。
【0057】
(カール)
配送伝票用紙の疑似接着紙用ラベル紙のカールは、5枚の矩形状を有する疑似接着紙用ラベル紙において、通常の使用方向における右上角部から左下角部に向かって斜め方向に、疑似接着紙用原紙から疑似接着紙用ラベル紙を剥がし、剥離後の疑似接着紙用ラベル紙を5枚重ねて、以下の基準により評価した。
A:剥離後の疑似接着紙用ラベル紙のカールが小さく、容易に5枚重ねることができた。
B:剥離後の疑似接着紙用ラベル紙は、多少カールがあるものの、1枚ずつ広げる作業をすることなく、5枚重ねることができた。
C:剥離後の疑似接着紙用ラベル紙のカールが大きく、5枚重ねることが困難であったか、または疑似接着紙用ラベル紙を重ねてもカールしてしまうため、重ねる度に疑似接着紙用ラベル紙を広げる作業が必要であった。
【0058】
[実施例1]
<疑似接着紙用ラベル紙の製造>
(疑似接着紙用ラベル原紙の作製)
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)100質量%の原料パルプを、カナダ標準ろ水度(CSF)が420mLとなるように調製し、原料パルプ(絶乾質量)100質量部に対して、硫酸アルミニウム0.5質量部、カチオン化澱粉(商品名:ピラーP3Y、ピラースターチ(PIRAAB STARCH)社製)0.2質量部、ロジンサイズ剤(商品名:サイズパインOK-6、荒川化学工業株式会社製)を0.28質量部、タルク3.0質量部、カチオン性歩留向上剤(商品名:ハイモロック RX-1100、ハイモ株式会社製)0.008質量部、ベントナイト0.1質量部添加して紙料を調製し、該紙料をメッツォ社製の長網抄紙機により抄紙し、疑似接着紙用原紙と疑似接着剤層を介して疑似接着される疑似接着面に、サイズプレスにて表面サイズ剤(商品名:ケイコートSA-805、東邦化学工業株式会社製)を0.002g/m2塗布し、乾燥して疑似接着紙用ラベル原紙を得た。
【0059】
(塗工液の調製)
≪下塗り層用塗工液の調製≫
水80質量部に焼成カオリン(商品名:アンシレックス93、BASF社製)60質量部を分散して得られた分散物に、プラスチック微小中空粒子(ローペイクSN-1055、ダウ・ケミカル社製、固形分濃度26.5%)75質量部、スチレン/ブタジエン系ラテックス(商品名:L-1571、旭化成ケミカルズ株式会社製、固形分濃度48%)31質量部、カルボキシメチルセルロース(商品名:セロゲン7A、第一工業製薬株式会社製)2.5質量部、カルボキシメチルセルロース(商品名:セロゲンAGガム、第一工業製薬株式会社製)1質量部、および水15.5質量部を混合および撹拌して、下塗り層用塗工液を得た。
≪感熱記録層用塗工液の調製≫
3-ジ-(n-ブチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン10質量部、メチルセルロースの5%水溶液5質量部、および水15質量部からなる組成物を、サンドミルでレーザ回折式粒度分布測定装置SALD-2200(株式会社島津製作所製)によるメジアン径が0.5μmになるまで粉砕してロイコ染料分散液(以下、A液ともいう)を得た。
N-p-トルエンスルホニル-N’-3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレア10質量部、メチルセルロースの5%水溶液5質量部、および水15質量部からなる組成物を、サンドミルでレーザ回折式粒度分布測定装置SALD-2200(株式会社島津製作所製)によるメジアン径が1.5μmになるまで粉砕して呈色剤分散液(以下、B液ともいう)を得た。
シュウ酸ジ-p-メチルベンジルエステル10質量部、メチルセルロースの5%水溶液5質量部、および水15質量部からなる組成物を、サンドミルでレーザ回折式粒度分布測定装置SALD-2200(株式会社島津製作所製)によるメジアン径が1.0μmになるまで粉砕して増感剤分散液(以下、C液ともいう)を得た。
A液33.5質量部、B液68質量部、C液10.5質量部、完全鹸化ポリビニルアルコール(商品名:PVA-110、株式会社クラレ製、鹸化度:99モル%、平均重合度:1000)の10%水溶液30質量部、部分鹸化ポリビニルアルコール(商品名:PVA-205、株式会社クラレ製、鹸化度:88モル%、平均重合度:500)の20%水溶液5質量部、ブタジエン系共重合体ラテックス(商品名:L-1571、旭化成ケミカルズ株式会社製、固形分濃度48%)16.5質量部、軽質炭酸カルシウム(商品名:Brilliant-15、白石工業株式会社製)42質量部、パラフィンワックスエマルジョン(商品名:ハイドリンL-700、中京油脂株式会社製、固形分濃度30%)10質量部、および水75質量部を、混合および撹拌して感熱記録層用塗工液を得た。
≪保護層用塗工液の調製≫
カオリン(商品名:HYDRAGLOSS90、KaMin LLC社製)55.5質量部、水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH-42M、昭和電工株式会社製)4質量部、水溶性アクリル酸系分散剤(商品名:アロンT-50、東亞合成株式会社製、固形分濃度40%)0.5質量部、水40質量部からなる組成物を、ホモミキサーで1時間分散し、保護層用顔料分散物を得た。
アセトアセチル変性ポリビニルアルコールA(商品名:ゴーセファイマーZ-200、日本合成化学工業株式会社製、鹸化度:99.4モル%、平均重合度:1000、変性度:5モル%)の10%水溶液210質量部、アセトアセチル変性ポリビニルアルコールB(商品名:ゴーセファイマーZ-100、日本合成化学工業株式会社製、鹸化度:99.4モル%、平均重合度:500、変性度:5モル%)の20%水溶液80質量部、上記保護層用顔料分散物100質量部、ステアリン酸亜鉛の水分散物(商品名:ハイドリンZ-8-36、中京油脂株式会社製、固形分濃度36%)5.6質量部、ポリエチエンワックスエマルジョン(商品名:ケミパールW400、三井化学株式会社製、固形分濃度40%)2.5質量部、および酢酸マグネシウム(米山化学工業株式会社製)3質量部からなる組成物を、混合および撹拌し、保護層用塗工液を得た。
【0060】
(疑似接着紙用ラベル紙の製造)
得られた疑似接着紙用ラベル原紙の疑似接着紙用原紙と疑似接着剤層を介して疑似接着されない側の面、すなわち、疑似接着面の反対側の面に、下塗り層用塗工液、感熱記録層用塗工液、および保護層用塗工液をこの順に、乾燥後の塗工量が、それぞれ6.0g/m2、4.5g/m2、2.0g/m2となるように塗工し、乾燥して疑似接着紙用ラベル紙を得た。測定結果を表1に示す。
【0061】
<疑似接着紙用原紙の製造>
広葉樹晒クラフトパルプ80質量%および針葉樹晒クラフトパルプ20質量%からなる原料パルプをJIS P 8121-2:2012に準拠して測定されるカナダ標準ろ水度(CSF)が400mLとなるように調製し、原料パルプ(絶乾質量)100質量部に対して、カチオン化澱粉(ピラーP3Y、ピラースターチ(PIRAAB STARCH)社製)0.2質量部を添加して紙料を調製し、該紙料をメッツォ社製の長網抄紙機により抄紙し、乾燥して疑似接着紙用原紙を得た。測定結果を表1に示す。
【0062】
<配送伝票用紙の製造>
疑似接着紙用原紙の片面に、アクリル系接着剤76質量%、合成シリカ(平均粒子径:1.3μm)22.3質量%、澱粉(平均粒子径:12.4μm)1.7質量%を含有する疑似接着剤を、バーコーター(10番手)を用いて塗布し、乾燥した。剥離紙の片面に、乾燥後の厚さが20μmとなるようにエマルジョン系アクリル系粘着剤を塗布し、乾燥した後、疑似接着紙用原紙の疑似接着剤が塗布されていない面に貼合した。疑似接着紙用原紙の疑似接着剤が塗布された面と疑似接着紙用ラベル紙の疑似接着面とを貼合し、ロール加圧により圧着して配送伝票用紙を得た。測定および評価結果を表1に示す。
【0063】
[実施例2~5および比較例1~6]
疑似接着紙用ラベル原紙の製造において、原料パルプのCSF、内添サイズ剤の添加量、および表面サイズ剤の塗布量を、表1および表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして配送伝票用紙を得た。測定および評価結果を表1および表2に示す。
【0064】
【0065】
【0066】
比較例3~6の配送伝票用紙の疑似接着紙用ラベル紙は、粘着力(疑似接着力)が小さいため、少し触っただけで疑似接着紙用ラベル紙が剥がれてしまった。
実施例および比較例の結果から、本発明の疑似接着紙用ラベル紙および配送伝票用紙によれば、疑似接着剤層を介した疑似接着紙用原紙との粘着力(疑似接着力)が、弱すぎて自然に剥離してしまうことがなく、かつ、強すぎずに剥離時に必要な引きはがし力(剥離力)が小さくなるため、疑似接着紙用ラベル紙の曲げこわさを大幅に高めることなく、剥離後のカールを小さくできることがわかる。