(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】斜め梁接合金物および梁の接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
E04B1/58 506L
E04B1/58 504L
(21)【出願番号】P 2020129645
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮介
(72)【発明者】
【氏名】福元 大輝
(72)【発明者】
【氏名】一針 建支
(72)【発明者】
【氏名】高橋 靖曜
(72)【発明者】
【氏名】橋本 大
(72)【発明者】
【氏名】竹内 悟
(72)【発明者】
【氏名】石川 達也
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-218325(JP,A)
【文献】特開2002-242316(JP,A)
【文献】特開2004-68444(JP,A)
【文献】特開2016-84607(JP,A)
【文献】実開昭58-145907(JP,U)
【文献】米国特許第5341619(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0044420(US,A1)
【文献】米国特許第4423977(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/38
E04B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁と、その梁に対し平面視において斜めに交差する斜め梁とを、前記梁が前記斜め梁に対して勝ち側となるように接合する斜め梁接合金物であって、
勝ち側の梁の側面に添接される梁添接部と、
前記梁添接部の横幅方向における中間適所から前記梁添接部に対し平面視T字形に突出する持出し部と、
前記持出し部の先端縁から前記梁添接部に対し所定の平面角をなす向きに屈折して延びる梁受け金物取付部と、
を具備し、
前記梁添接部における前記持出し部の両側方には通孔が複数個ずつ形成されるとともに、
前記梁受け金物取付部には、前記斜め梁の端部に連結される接合金物との連結手段が設けられている
ことを特徴とする斜め梁接合金物。
【請求項2】
請求項1に記載された斜め梁接合金物において、
前記梁受け金物取付部に設けられた連結手段は複数個の通孔である
ことを特徴とする斜め梁接合金物。
【請求項3】
請求項1または2に記載された斜め梁接合金物において、
前記梁添接部、前記持出し部および前記梁受け金物取付部によって囲まれた内側部分に補強リブが接合されている
ことを特徴とする斜め梁接合金物。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載された斜め梁接合金物において、
前記梁添接部に形成された前記通孔が、前記梁添接部の横幅方向を長軸とする長孔である
ことを特徴とする斜め梁接合金物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載された斜め梁接合金物を使用して、少なくとも一本の梁と、該梁に対し平面視において斜めに交差する斜め梁とを、前記梁が勝ち側となるように接合する梁の接合構造であって、
前記斜め梁接合金物の梁添接部が前記梁の側面に添接され、該梁を梁幅方向に貫通する通しボルトによって該梁の側面に締結されるとともに、
前記斜め梁の端部には、縦長矩形の当接部と、その両側縁から直角に屈折して互いに平行に突出する一対の挿込片と、を有する梁受け金物が、該端部にスリットを形成して取り付けられ、
前記斜め梁接合金物の梁受け金物取付部に前記梁受け金物の当接部が重ねられて互いにボルト・ナット締結された
ことを特徴とする梁の接合構造。
【請求項6】
請求項5に記載された梁の接合構造において、
二本の梁が直交接合された隅部の内側に、前記斜め梁が前記二本の梁に対して平面視45度で交差するように架設され、
前記斜め梁の両端部が前記梁受け金物および前記斜め梁接合金物を介して前記二本の梁にそれぞれ接合された
ことを特徴とする梁の接合構造。
【請求項7】
請求項6に記載された梁の接合構造において、
二本の梁が直交接合された隅部の内側に複数本の斜め梁が互いに平行に架設され、前記各斜め梁の両端部が前記梁受け金物および前記斜め梁接合金物を介して前記二本の梁にそれぞれ接合されるとともに、
平面視において前記各斜め梁に直交する梁つなぎが各斜め梁の間に架設され、前記梁つなぎの両端部が前記梁受け金物を介して前記各斜め梁の側面にそれぞれ接合された
ことを特徴とする梁の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願が開示する発明は、木造建物の梁同士を斜めに接合する斜め梁接合金物と、その接合金物を利用した梁の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建物の軸組架構においては、施工の効率化や耐震性能の強化を図るなどの目的で、部材同士の仕口接合部や継手接合部にさまざまな形状の接合金物が用いられる。それらのうち、特に梁の端部を他の梁や柱の側面に突き当てる形で連結する接合金物として、例えば特許文献1に開示されたような、鋼板を平面視略コ字状に折曲した梁受け金物が公知である。また、本出願人も、かかる梁受け金物の改良形態や、その梁受け金物を利用した梁の接合構造を、特許文献2~5等において提案している。
【0003】
図1は、従来の梁受け金物1を用いて二本の梁2、3を互いに直交するように接合する部位の接合構造を示している。梁受け金物1は、勝ち側の梁2の側面に当てがわれる長矩形の当接部12と、当接部12の両側縁から直角に屈折して負け側の梁3側に向け互いに平行に突出する一対の挿込片13と、を有している。両挿込片13の下端縁間は底受片(図示せず)によって接続されている。そして、当接部12に形成された複数か所の通孔(図示せず)に勝ち側の梁2を梁幅方向に貫通する通しボルト42が挿通されて、当接部12が梁2の側面に締結される。さらに、負け側の梁3の端部に形成されたスリット31に挿込片13が挿入され、挿込片13に形成されたボルト受部14や複数か所の通孔15に、負け側の梁3を梁幅方向に貫通する通しボルト43やドリフトピン44等が挿通されて梁3とも連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-104339号公報
【文献】特開平10-025811号公報
【文献】特開平10-025812号公報
【文献】特開2005-163325号公報
【文献】特開2006-328646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば
図8(a)~(c)に示すように、住宅9の屋内に吹抜け91を設け、その吹抜け91に臨む上階の床面92の隅部に平面視三角形の張出し床93を設けることによって、吹抜け91の周囲に個性的な空間を創出したり、吹抜け91を囲む動線に変化をつけたりする試みがある。このような空間を木造の軸組架構によって実現するには、吹抜け91を囲む水平構面において、梁同士が直交接合された隅部の内側に、平面視においてそれらの梁と斜めに交差する斜め梁を架け渡し、その斜め梁によって三角形の張出し床93を支持することが求められる。
【0006】
しかし、前記従来の梁受け金物は、梁同士が直交する部位にしか使用できない。そこで、本願が開示する発明は、従来の梁受け金物を併用しつつ、梁同士を斜めに接合するのに好適な斜め梁接合金物と、その斜め梁接合金物を利用した梁の接合構造を提供することを解決課題とする。
【0007】
なお、本願が開示する発明においては、木造建物の軸組架構内に略水平に架設されて水平構面を支持する横架材全般を「梁」と総称することとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するために本願が開示する発明は、梁と、その梁に対し平面視において斜めに交差する斜め梁とを、前記梁が前記斜め梁に対して勝ち側となるように接合する斜め梁接合金物として、勝ち側の梁の側面に添接される梁添接部と、前記梁添接部の横幅方向における中間適所から前記梁添接部に対し平面視T字形に突出する持出し部と、前記持出し部の先端縁から前記梁添接部に対し所定の平面角をなす向きに屈折して延びる梁受け金物取付部と、を具備し、前記梁添接部における前記持出し部の両側方には通孔が複数個ずつ形成されるとともに、前記梁受け金物取付部には、前記斜め梁の端部に連結される接合金物との連結手段が設けられている、との基本的構成を採用する。
【0009】
さらに、前記斜め梁接合金物において、前記梁受け金物取付部に設けられた連結手段は複数個の通孔である、との付加的構成を採用する。
【0010】
さらに、前記斜め梁接合金物において、前記梁添接部、前記持出し部および前記梁受け金物取付部によって囲まれた内側部分に補強リブが接合されている、との付加的構成を採用する。
【0011】
さらに、前記斜め梁接合金物において、前記梁添接部に形成された前記通孔が、前記梁添接部の横幅方向を長軸とする長孔である、との付加的構成を採用する。
【0012】
また、本願が開示する発明は、前記斜め梁接合金物を使用して、少なくとも一本の梁と、該梁に対し平面視において斜めに交差する斜め梁とを、前記梁が勝ち側となるように接合する梁の接合構造として、前記斜め梁接合金物の梁添接部が前記梁の側面に添接され、該梁を梁幅方向に貫通する通しボルトによって該梁の側面に締結されるとともに、前記斜め梁の端部には、縦長矩形の当接部と、その両側縁から直角に屈折して互いに平行に突出する一対の挿込片と、を有する梁受け金物が、該端部にスリットを形成して取り付けられ、前記斜め梁接合金物の梁受け金物取付部に前記梁受け金物の当接部が重ねられて互いにボルト・ナット締結された、との基本的構成を採用する。
【0013】
さらに、前記梁の接合構造において、二本の梁が直交接合された隅部の内側に、前記斜め梁が前記二本の梁に対して平面視45度で交差するように架設され、前記斜め梁の両端部が前記梁受け金物および前記斜め梁接合金物を介して前記二本の梁にそれぞれ接合された、との付加的構成を採用する。
【0014】
さらに、前記梁の接合構造において、二本の梁が直交接合された隅部の内側に複数本の斜め梁が互いに平行に架設され、前記各斜め梁の両端部が前記梁受け金物および前記斜め梁接合金物を介して前記二本の梁にそれぞれ接合されるとともに、平面視において前記各斜め梁に直交する梁つなぎが各斜め梁の間に架設され、前記梁つなぎの両端部が前記梁受け金物を介して前記各斜め梁の側面にそれぞれ接合された、との付加的構成を採用する。
【発明の効果】
【0015】
前述のように構成される斜め梁接合金物を公知の梁受け金物と組み合わせて使用すれば、簡単かつ確実な手順で、一方の梁の側面に、他方の梁(斜め梁)を平面視において斜めに交差するように接合することができる。すでに実用化されている梁受け金物と併用することができるのでコスト面でも有利であり、これらによる接合部は実用的に十分な強度を発揮する。
【0016】
斜め梁接合金物は、一方の梁の側面に添接される梁添接部と、梁添接部の中間適所から梁添接部と直交する向きに突出する持出し部と、持出し部の先端縁から梁添接部に対し所定の平面角をなす向きに屈折して延びる梁受け金物取付部と、を具備し、梁添接部における持出し部の両側方にボルトまたはピンを挿入し得る通孔が複数個ずつ形成されているので、梁添接部を一方の梁の側面にボルト・ナットで固定したり、梁受け金物取付部に梁受け金物をボルト・ナットで固定したりするに際して、ボルトの挿し込みやナットの締結を無理なく行うことができる。さらに、梁と柱との接合箇所や、梁同士が平面視においてT字または十字に交差する箇所に対しても、それらの接合中心に斜め梁の材軸延長線を合致させて接合することが容易になる。
【0017】
また、二本の梁が直交接合された隅部の内側に斜め梁を架設し、その斜め梁の両端部を、それぞれ梁受け金物および斜め梁接合金物を組み合わせて二本の直交梁に接合する梁の接合構造を採用すれば、例えば吹抜けを囲む水平構面の隅部に平面視三角形の床面を張り出すような床組を効率的に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】従来の梁受け金物を用いて二本の梁を互いに直交するように接合する構造を示す斜視図である。
【
図2】本願が開示する発明の第1実施形態に係る斜め梁接合金物の斜視図である。
【
図3】
図2の斜め梁接合金物を用いて二本の梁を斜めに接合する構造を拡大して示す平面図と、勝ち側の梁の側面図である。
【
図4】本願が開示する発明の第2実施形態に係る斜め梁接合金物の斜視図である。
【
図5】二本の梁が直交接合された隅部の内側に前記斜め梁接合金物を用いて斜め梁が架設された梁の接合構造を示す平面図である。
【
図6】二本の梁が直交接合された隅部の内側に前記斜め梁接合金物を用いて二本の斜め梁が架設された梁の接合構造を示す平面図である。
【
図7】
図6に示した梁の接合構造の変形例を示す平面図である。
【
図8】吹抜けに臨む床面の隅部に平面視三角形の床面を張り出した空間構成のイメージを説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願が開示する発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下に説明する実施形態は
図1に示した従来の梁受け金物1も併用するので、梁受け金物1に関係する部位・部材については
図1と共通の符号を付して、それらの詳細な説明は省略する。また、複数の実施形態について説明する際には、機能または作用が実質的に共通する構成要素に同一の数字符号を付して、後述の実施形態における重複説明を簡略化する。
【0020】
図2は本願が開示する発明の第1実施形態に係る斜め梁接合金物5を示し、
図3はその斜め梁接合金物5を従来の梁受け金物1と併用して二本の梁2、6を斜めに接合する接合構造を示している。
【0021】
斜め梁接合金物5は、鋼板を切断・折曲・溶接するなどして製作される部材である。斜め梁接合金物5は、梁添接部51と、梁添接部51の横幅方向における中間適所から平面視T字形に所定長さで突出する持出し部52と、持出し部52の先端縁から梁添接部51に対し所定の平面角(この例では45度)をなす向きに屈折して延びる梁受け金物取付部53と、梁添接部51、持出し部52および梁受け金物取付部53に対して直交するように接合された複数枚の補強リブ54と、を具備している。梁添接部51、持出し部52および梁受け金物取付部53は、それぞれを面直方向から見たときの形状が同じ高さの縦長矩形である。補強リブ54は平面視略台形をなし、梁添接部51、持出し部52および梁受け金物取付部53よって囲まれた内側部分の上部、下部および中間部の3か所に取り付けられている。
【0022】
梁添接部51における持出し部52の左方および右方には、通孔55、56が高さ方向に適宜間隔をあけてそれぞれ複数個ずつ形成されている。これらの通孔55、56は、梁添接部51の横幅方向を長軸とする長孔になっている。
【0023】
梁受け金物取付部53にも、通孔57が高さ方向に適宜間隔をあけて複数個、形成されている。これらの通孔57は丸孔であり、この斜め梁接合金物5と組み合わせて用いられる梁受け金物1の当接部12に形成された通しボルトの通孔(図示せず)と合致するように配置されている。
【0024】
この斜め梁接合金物5は、勝ち側の梁2の側面に取り付けられる。勝ち側の梁2には、予め梁添接部51に形成された通孔55、56の位置に合致する梁幅方向の貫通孔22、23と、それら貫通孔22、23の反対側面の開口端を拡径した座繰り孔24、25とが形成されており、この梁2の側面に添設された梁添接部51が梁2を幅方向に貫通する通しボルト45、46を介して梁2に固定される。
【0025】
このとき、梁受け金物取付部53が、梁添接部51から突出する持出し部52を介して梁添接部51との間に適当な間隔を設けるように形成されているので、梁2から突出する通しボルト45の先端にナット47を螺合する際に、梁受け金物取付部53がその邪魔にならない。また、梁受け金物取付部53側から梁2の貫通孔22に通しボルト45の先端を挿し込むことも可能である。
【0026】
他方、負け側になる斜め梁6の端部には、二か所のスリット61が形成されて、従来と同様の梁受け金物1が取り付けられる。その梁受け金物1の当接部12が斜め梁接合金物5の梁受け金物取付部53に重ねられ、それぞれの通孔に綴りボルト48が挿入されてナット締結される。なお、綴りボルト48は、斜め梁6の反対側へ突出するように予め当接部12に溶接されていてもよい。また、斜め梁接合金物5と梁受け金物1とを綴りボルト48で結合しておいてから、その梁受け金物1に斜め梁6の端部を連結してもよい。
【0027】
図4は、本願が開示する発明の第2実施形態に係る斜め梁接合金物5を示す。この斜め梁接合金物5は、梁せいの小さい接合部に用いられるものであり、前述の第1実施形態よりも梁添接部51、持出し部52および梁受け金物取付部53の高さ寸法が小さくなっている。その寸法に合わせて通孔55、56、57の個数も少なくなっており、補強リブ54は上部および下部の2か所にのみ取り付けられている。
【0028】
図5~
図7は、二本の梁2、3が直交接合された隅部の内側に斜め梁接合金物5を用いて斜め梁6が架設された梁の接合構造を示す平面図である。
【0029】
図5に示した二本の梁2、3は、例えば木造建物の通り芯と平行に配置されて平面視矩形の水平構面を支持する大梁である。その梁2、3に対し、平面視において45度に交差する斜め梁6が負け側となるように接合されている。斜め梁6の一端部および他端部を梁2、3に接合する斜め梁接合金物5は、平面視において左右対称の形状をなしている。この接合構造によれば、斜め梁6の端部が梁2、3から離れた位置に保持されるので、例えば図示のように通り芯の交点に柱7や他の梁3B、他の斜め梁6B等が接続する架構においても、それらと干渉しないようにして、斜め梁6の軸心延長線を通り芯の交点に合致させることが可能になる。このような梁の接合構造を利用して、平面視三角形の張出し床93を支持する床構面を合理的に架設することができる。
【0030】
図6に示した形態は、通り芯と平行に配置される二本の梁(大梁)2、3が直交接合された隅部の内側に、二本の斜め梁6、6が、数十mm程度の間隔を設けて互いに平行に架設されている。各斜め梁6、6の両端部は、それぞれ梁受け金物1および斜め梁接合金物5を介して梁2、3に接合されている。さらに、各斜め梁6、6の間には、平面視において各斜め梁6に直交する梁つなぎ81が架設されている。梁つなぎ81の両端部は、梁受け金物1を介して各斜め梁6の側面に接合されている。このような梁の接合構造を利用して、平面視三角形の張出し床を支持する床構面の大きさを拡張することができる。この床構面においては、内側の短い斜め梁6および梁つなぎ81の梁せいを、外側の長い斜め梁6の梁せいより小さくすることもできる。
【0031】
図7に示した形態は、通り芯と平行に配置されて互いに直交する梁(大梁)2、3の側方に、数十mm程度の間隔を設けて、斜め梁6を接合するための斜め梁支持梁2C、3Cが梁2、3と平行に架設されている。梁2、3と斜め梁支持梁2C、3Cとは、通り芯上の複数か所に配置された控え梁82を介して連結されている。控え梁82の両端部を梁2、3または斜め梁支持梁2C、3Cに接合する箇所にも、梁受け金物1が使用されている。
【0032】
そして、二本の斜め梁支持梁2C、3Cが直交接合された隅部の内側に、二本の斜め梁6、6が互いに平行に架設されている。各斜め梁6の両端部は、それぞれ梁受け金物1および斜め梁接合金物5を介して斜め梁支持梁2C、3Cに接合されている。さらに、平面視において各斜め梁6に直交する短い梁つなぎ81が各斜め梁6、6の間に架設され、その両端部が梁受け金物1を介して各斜め梁6、6の側面に接合されている。このような梁の接合構造を利用して、平面視三角形の張出し床を支持する床構面の形態や大きさをさらに拡張することができる。
【0033】
以上に説明したように、本願が開示する斜め梁接合金物を従来の梁受け金物と組み合わせて使用すれば、梁同士が斜めに交差する部位を効率的かつ経済的に、好ましい強度をもって接合することができる。さらに、その接合構造を利用して、二本の梁が直交接合された隅部の内側に、それらの梁と斜めに交差する斜め梁を架設することにより、平面視三角形に張り出す床面の支持構面を効率よく施工することができる。その床面の斜辺を支持する斜め梁は十分な強度を備えるので、その上部に手摺部材等を設置することも可能である。
【0034】
また、この斜め梁接合金物の梁添接部に対する梁受け金物取付部の平面角を変更すれば、梁受け金物はそのままで、斜め梁の接合角度を変えることもできる。これにより、隅角が45度の二等辺三角形だけでなく、例えば隅角が30度や60度等の三角形の床面も合理的に施工することができる。
【0035】
なお、本願が開示する発明の技術的範囲は、例示した実施の形態によって限定的に解釈されるべきものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて概念的に解釈されるべきものである。本願が開示する発明の実施に際しては、特許請求の範囲において具体的に特定していない部材等の形状、材質、寸法、数量、接合形態、相対的な位置関係等を、例示形態と実質的に同等程度以上の作用効果が得られる範囲内で適宜、改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本願が開示する発明は、木造建物の軸組架構に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 梁受け金物
12 当接部
13 挿込片
14 ボルト受部
15 通孔
2 梁(勝ち側の梁)
22 貫通孔
23 貫通孔
24 座繰り孔
25 座繰り孔
3 梁(負け側の梁)
31 スリット
42 通しボルト
43 通しボルト
44 ドリフトピン
45 通しボルト
46 通しボルト
47 ナット
48 綴りボルト
5 斜め梁接合金物
51 梁添接部
52 持出し部
53 梁受け金物取付部
54 補強リブ
55 通孔
56 通孔
57 通孔
6 斜め梁
61 スリット
7 柱
81 梁つなぎ
82 控え梁
91 吹抜け
92 床面
93 張出し床