IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特許7463900画像データ処理装置、画像形成装置、画像データ処理方法及びプログラム
<>
  • 特許-画像データ処理装置、画像形成装置、画像データ処理方法及びプログラム 図1
  • 特許-画像データ処理装置、画像形成装置、画像データ処理方法及びプログラム 図2
  • 特許-画像データ処理装置、画像形成装置、画像データ処理方法及びプログラム 図3
  • 特許-画像データ処理装置、画像形成装置、画像データ処理方法及びプログラム 図4
  • 特許-画像データ処理装置、画像形成装置、画像データ処理方法及びプログラム 図5
  • 特許-画像データ処理装置、画像形成装置、画像データ処理方法及びプログラム 図6
  • 特許-画像データ処理装置、画像形成装置、画像データ処理方法及びプログラム 図7
  • 特許-画像データ処理装置、画像形成装置、画像データ処理方法及びプログラム 図8
  • 特許-画像データ処理装置、画像形成装置、画像データ処理方法及びプログラム 図9
  • 特許-画像データ処理装置、画像形成装置、画像データ処理方法及びプログラム 図10
  • 特許-画像データ処理装置、画像形成装置、画像データ処理方法及びプログラム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】画像データ処理装置、画像形成装置、画像データ処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/393 20060101AFI20240402BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B41J29/393 103
B41J2/01 201
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020131325
(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公開番号】P2022028119
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】今西 和彦
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-184144(JP,A)
【文献】特開2012-171316(JP,A)
【文献】再公表特許第2017/018341(JP,A1)
【文献】特開2016-041495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00 - 29/70
B41J 2/01 - 2/215
B41J 5/00 - 5/52
B41J 21/00 - 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を形成する形成動作部による形成画像から当該形成画像の形成異常を検出する検出手段と、
検出された前記形成異常の範囲を含む前記形成画像の異常画像形成範囲を特定する範囲特定手段と、
前記異常画像形成範囲に前記形成異常の原因を特定するための検査画像を配置し、前記異常画像形成範囲外に、正常に形成されていない画像を再配置した画像データを設定する再配置設定手段と、
前記再配置後の画像データに応じて前記形成動作部により形成された前記検査画像に基づいて、前記形成異常に対応する画像形成動作の補正を行う補正手段と、
を備えることを特徴とする画像データ処理装置。
【請求項2】
前記形成動作部による形成対象の2以上の所定数の画像は、画像が形成される媒体上の一部ずつに割り当てられて面付配置され、
前記範囲特定手段は、前記面付配置された各画像の範囲ごとに前記異常画像形成範囲を特定する
ことを特徴とする請求項1記載の画像データ処理装置。
【請求項3】
前記形成異常が検出されたときに、形成対象の複数の画像のうち一部が未形成の場合に、前記再配置設定手段は、前記未形成の画像を再配置の対象に含めることを特徴とする請求項2記載の画像データ処理装置。
【請求項4】
前記再配置設定手段は、検出された前記形成異常の種別に応じた前記検査画像を配置することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の画像データ処理装置。
【請求項5】
前記形成異常の種別には、画像の濃度むら及びスジの発生のうち少なくとも一方が含まれることを特徴とする請求項4記載の画像データ処理装置。
【請求項6】
前記形成動作部は、インクを吐出するインクジェットヘッドを複数有し、
前記範囲特定手段は、前記形成異常の範囲を前記インクジェットヘッドの各々による画像形成範囲ごとに定める
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の画像データ処理装置。
【請求項7】
前記再配置設定手段は、前記形成異常の範囲に対応する前記インクジェットヘッドのみにより形成される前記検査画像を配置することを特徴とする請求項6記載の画像データ処理装置。
【請求項8】
前記形成異常が検出されたときに形成開始後かつ形成異常の検出前の中途画像がある場合には、前記再配置設定手段は、前記中途画像の前記異常画像形成範囲が特定された後に、前記再配置の設定を行うことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の画像データ処理装置。
【請求項9】
前記再配置設定手段により当初の配置とは異なる位置に再配置されて再形成された画像から前記形成異常が検出された場合に、この画像における前記形成異常の範囲と、最初の前記形成異常の検出時の前記画像における前記形成異常の範囲との比較の結果に基づいてその後の処理を選択する選択手段を備えることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の画像データ処理装置。
【請求項10】
操作受付部を備え、
前記比較の結果、前記画像における前記形成異常の範囲が同一と判別された場合に、前記選択手段は、前記操作受付部が受け付けた入力操作の内容に基づいて前記その後の処理を選択する
ことを特徴とする請求項9記載の画像データ処理装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の画像データ処理装置と、
画像を形成する形成動作部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
前記形成画像を読み取る読取部を備え、
前記検出手段は、前記読取部による前記形成画像の読み取りデータに基づいて前記形成異常を検出する
ことを特徴とする請求項11記載の画像形成装置。
【請求項13】
画像を形成する形成動作部による形成画像から当該形成画像の形成異常を検出する検出ステップ、
検出された前記形成異常の範囲を含む前記形成画像の異常画像形成範囲を特定する範囲特定ステップ、
前記異常画像形成範囲に前記形成異常の原因を特定するための検査画像を配置し、前記異常画像形成範囲外に、正常に形成されていない画像を再配置した画像データを設定する再配置設定ステップ、
前記再配置後の画像データに応じて前記形成動作部により形成された前記検査画像に基づいて、前記形成異常に対応する画像形成動作の補正を行う補正ステップ、
を含むことを特徴とする画像データ処理方法。
【請求項14】
コンピューターを、
画像を形成する形成動作部による形成画像から当該形成画像の形成異常を検出する検出手段と、
検出された前記形成異常の範囲を含む前記形成画像の異常画像形成範囲を特定する範囲特定手段と、
前記異常画像形成範囲に前記形成異常の原因を特定するための検査画像を配置し、前記異常画像形成範囲外に、正常に形成されていない画像を再配置した画像データを設定する再配置設定手段と、
前記再配置後の画像データに応じて前記形成動作部により形成された前記検査画像に基づいて、前記形成異常に対応する画像形成動作の補正を行う補正手段と、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像データ処理装置、画像形成装置、画像データ処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクといった色材などを媒体に付与して画像を形成する画像形成装置がある。各画像が各媒体に各々別個の画像として形成される場合だけではなく、複数の画像が1つの画像データに統合されてまとめて記録媒体に形成され(面付)、後に裁断されたり折り曲げたりされる場合もある。このような画像形成動作の途中で形成画像に画質の問題が生じたり、媒体にジャムなどのトラブルが生じた場合、全ての画像を出力しなおすのは無駄である。これに対し、既に正常に出力された画像を除外して、残りの画像をレイアウトしなおして画像形成をする技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-1358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
色材を出力する形成動作部と媒体とを相対移動させながら色材を出力させることでシングルパス方式により画像形成を行う場合、相対移動の方向に垂直な幅方向について特定の位置に画像の形成異常が生じる場合がある。このような異常は、継続して発生しやすく、その原因を特定して速やかに対処することが必要となる。しかしながら、このような画像形成装置において、通常の画像の形成動作を完全に中断して原因特定動作などを行うと、媒体や時間の消費が増大することになる場合があり、作業効率が低下するという課題がある。
【0005】
この発明の目的は、より効率よく画像の形成異常に対処しつつ画像形成動作を行うことのできる画像データ処理装置、画像形成装置、画像データ処理方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
画像を形成する形成動作部による形成画像から当該形成画像の形成異常を検出する検出手段と、
検出された前記形成異常の範囲を含む前記形成画像の異常画像形成範囲を特定する範囲特定手段と、
前記異常画像形成範囲に前記形成異常の原因を特定するための検査画像を配置し、前記異常画像形成範囲外に、正常に形成されていない画像を再配置した画像データを設定する再配置設定手段と、
前記再配置後の画像データに応じて前記形成動作部により形成された前記検査画像に基づいて、前記形成異常に対応する画像形成動作の補正を行う補正手段と、
を備えることを特徴とする画像データ処理装置である。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の画像データ処理装置において、
前記形成動作部による形成対象の2以上の所定数の画像は、画像が形成される媒体上の一部ずつに割り当てられて面付配置され、
前記範囲特定手段は、前記面付配置された各画像の範囲ごとに前記異常画像形成範囲を特定する
ことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の画像データ処理装置において、
前記形成異常が検出されたときに、形成対象の複数の画像のうち一部が未形成の場合に、前記再配置設定手段は、前記未形成の画像を再配置の対象に含めることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の画像データ処理装置において、
前記再配置設定手段は、検出された前記形成異常の種別に応じた前記検査画像を配置することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の画像データ処理装置において、
前記形成異常の種別には、画像の濃度むら及びスジの発生のうち少なくとも一方が含まれることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の画像データ処理装置において、
前記形成動作部は、インクを吐出するインクジェットヘッドを複数有し、
前記範囲特定手段は、前記形成異常の範囲を前記インクジェットヘッドの各々による画像形成範囲ごとに定める
ことを特徴とする。
【0012】
また、請求項7記載の発明は、請求項6記載の画像データ処理装置において、
前記再配置設定手段は、前記形成異常の範囲に対応する前記インクジェットヘッドのみにより形成される前記検査画像を配置することを特徴とする。
【0013】
また、請求項8記載の発明は、請求項1~7のいずれか一項に記載の画像データ処理装置において、
前記形成異常が検出されたときに形成開始後かつ形成異常の検出前の中途画像がある場合には、前記再配置設定手段は、前記中途画像の前記異常画像形成範囲が特定された後に、前記再配置の設定を行うことを特徴とする。
【0014】
また、請求項9記載の発明は、請求項1~6のいずれか一項に記載の画像データ処理装置において、
前記再配置設定手段により当初の配置とは異なる位置に再配置されて再形成された画像から前記形成異常が検出された場合に、この画像における前記形成異常の範囲と、最初の前記形成異常の検出時の前記画像における前記形成異常の範囲との比較の結果に基づいてその後の処理を選択する選択手段を備えることを特徴とする。
【0015】
また、請求項10記載の発明は、請求項9記載の画像データ処理装置において、
操作受付部を備え、
前記比較の結果、前記画像における前記形成異常の範囲が同一と判別された場合に、前記選択手段は、前記操作受付部が受け付けた入力操作の内容に基づいて前記その後の処理を選択する
ことを特徴とする。
【0016】
また、請求項11記載の発明は、
請求項1~10のいずれか一項に記載の画像データ処理装置と、
画像を形成する形成動作部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0017】
また、請求項12記載の発明は、請求項11記載の画像形成装置において、
前記形成画像を読み取る読取部を備え、
前記検出手段は、前記読取部による前記形成画像の読み取りデータに基づいて前記形成異常を検出する
ことを特徴とする。
【0018】
また、請求項13記載の発明は、
画像を形成する形成動作部による形成画像から当該形成画像の形成異常を検出する検出ステップ、
検出された前記形成異常の範囲を含む前記形成画像の異常画像形成範囲を特定する範囲特定ステップ、
前記異常画像形成範囲に前記形成異常の原因を特定するための検査画像を配置し、前記異常画像形成範囲外に、正常に形成されていない画像を再配置した画像データを設定する再配置設定ステップ、
前記再配置後の画像データに応じて前記形成動作部により形成された前記検査画像に基づいて、前記形成異常に対応する画像形成動作の補正を行う補正ステップ、
を含むことを特徴とする画像データ処理方法である。
【0019】
また、請求項14記載の発明は、
コンピューターを、
画像を形成する形成動作部による形成画像から当該形成画像の形成異常を検出する検出手段と、
検出された前記形成異常の範囲を含む前記形成画像の異常画像形成範囲を特定する範囲特定手段と、
前記異常画像形成範囲に前記形成異常の原因を特定するための検査画像を配置し、前記異常画像形成範囲外に、正常に形成されていない画像を再配置した画像データを設定する再配置設定手段と、
前記再配置後の画像データに応じて前記形成動作部により形成された前記検査画像に基づいて、前記形成異常に対応する画像形成動作の補正を行う補正手段と、
として機能させることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0020】
本発明に従うと、より効率よく画像の形成異常に対処しつつ画像形成動作を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態の画像形成装置の概略構成を示す斜視図である。
図2】ヘッドユニットの媒体と対向する底面について説明する図である。
図3】画像形成装置の機能構成を示すブロック図である。
図4】面付画像について説明する図である。
図5】面付画像の異常検出に係るデータについて説明する図表である。
図6】再配置画像について説明する図である。
図7】検品に係る設定画面の例を示す図である。
図8】画像形成制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
図9】画像形成制御処理で呼び出される再配置設定処理の制御手順を示すフローチャートである。
図10】補完処理で対処できない可能性のある異常が検出された場合の例を示す図である。
図11】変形例の再配置設定処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の画像形成装置1の概略構成を示す斜視図である。
【0023】
画像形成装置1は、インクジェット方式で画像を形成する。画像形成装置1は、搬送部10と、形成動作部20と、撮像部30(読取部)と、制御部40となどを備える。
【0024】
搬送部10は、画像が形成される対象の媒体Mを供給し、画像形成位置に移動させ、また、排出させる。搬送部10は、駆動ローラー11と、搬送ベルト12と、従動ローラー13と、搬送モーター14と、押さえローラー15などを備える。
【0025】
搬送ベルト12は、ここでは、無端状であり、駆動ローラー11と従動ローラー13との間にかけ渡されて、駆動ローラー11の回転に応じて移動する。駆動ローラー11は、搬送モーター14の回転動作に応じた速度で回転動作する。従動ローラー13は、搬送ベルト12の移動に応じた速度で回転する。搬送ベルト12の外周面上に所定位置で媒体Mが載置されて移動しながら画像が形成され、画像形成後に所定位置で排出される。押さえローラー15は、搬送ベルト12に載置された媒体Mを搬送ベルト12に押し付けることでしわなどによる媒体Mの浮き上がりを除去する。押さえローラー15は、自重で媒体Mを搬送ベルト12に押さえ付け、媒体M及び搬送ベルト12の移動に応じて回転するものであってよい。媒体Mは、例えば、印刷用紙である。用紙の種別は、普通紙、上質紙、コート紙、厚紙、エンボス紙など種々のものから適宜選択されてよく、また、必要に応じて入れ替えられてよい。また、媒体Mは、紙に限られない。例えば、フィルム樹脂やプラスチック板などであってもよいし、段ボール材などであってもよい。搬送部10は、媒体Mの種別に応じて各部の動作が調整されてもよい。
【0026】
形成動作部20は、搬送ベルト12上の媒体Mに対してインクを吐出して画像を形成する。特には限られないが、ここでは、形成動作部20は、シアン色のインクを吐出するヘッドユニット21C、マゼンタ色のインクを吐出するヘッドユニット21M、イエローのインクを吐出するヘッドユニット21Y、及び黒色のインクを吐出するヘッドユニット21Kの4色を有する。以降では、これらの一部又は全部をヘッドユニット21とも記す。
【0027】
図2は、ヘッドユニット21の媒体M(搬送ベルト12の外側面)と対向する底面について説明する図である。
【0028】
ヘッドユニット21は、キャリッジ210と、複数のインクジェットヘッド211とを有する。インクジェットヘッド211は、2つずつの組となって、媒体Mの搬送方向に垂直な幅方向について画像を形成可能な全幅にわたって配置されてキャリッジ210に固定され、ラインヘッドをなしている。各インクジェットヘッド211の底面には、ノズル27が開口しており、媒体Mから所定の間隔(搬送方向及び幅方向に垂直な高さ方向についての距離)となる位置で各々インクが吐出される。ここでは説明のためノズル27の開口が明示されているが、実際には開口のサイズ及び間隔は、これよりも非常に小さくてよい。
【0029】
撮像部30は、形成動作部20による媒体Mへの形成位置(インク着弾位置)よりも搬送方向について下流側で媒体Mの画像形成面を撮像可能に位置している。撮像部30は、例えば、CMOSセンサー(Complementary Metal Oxide Semiconductor)又はCCDセンサー(Charge Coupled Device)などを有するラインセンサーであり、幅方向について媒体Mの画像形成可能な最大幅を撮像可能となっている。媒体Mを搬送しながら順次撮像が行われることで媒体Mの表面(すなわち、形成画像)を二次元的に読み取ることができる。
【0030】
制御部40は、画像形成装置1の全体動作を統括制御するハードウェアプロセッサーを有する。
【0031】
図3は、画像形成装置1の機能構成を示すブロック図である。
画像形成装置1は、上述の搬送部10、形成動作部20、撮像部30、制御部40に加えて、駆動波形信号生成部29と、記憶部50と、通信部60と、操作受付部70と、表示部80と、電力供給部90などを備える。
【0032】
搬送部10は、上述のように搬送モーター14を備え、当該搬送モーター14に適切な駆動信号を出力することで搬送モーター14を駆動信号に応じた速さで回転動作させる。
【0033】
形成動作部20は、ヘッド駆動部25を備える。ヘッド駆動部25は、選択された圧電素子26に駆動信号を出力して圧電素子26を変形動作させて、ノズル27内のインクに圧力変動を付与して吐出させ、画像を形成する。
【0034】
駆動波形信号生成部29は、ヘッド駆動部25が出力する駆動波形信号を生成する。駆動波形信号は、特には限られないが、駆動波形を示すデジタル信号データをアナログ変換し、電圧及び電流を増幅した駆動波形信号をヘッド駆動部25に出力する。
【0035】
制御部40は、CPU41(Central Processing Unit)と、RAM42(Random Access Memory)を備える。CPU41は、各種演算処理を行って制御動作を実行する。制御動作には、画像形成動作に係る制御及び形成動作部20による形成画像の形成異常に係る異常対応動作に係る制御が含まれる。RAM42は、CPU41に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。本実施形態の画像形成装置1において、本実施形態において、制御部40は、検出手段、範囲特定手段、再配置設定手段、補正手段及び選択手段として機能し、画像データ処理装置を構成する。
【0036】
記憶部50は、形成対象の画像データを含むジョブデータ51と、形成動作部20などの動作に係る調整、検査を行うための検査画像データ52と、形成画像の異常検出及びその検査に係るプログラム54などを記憶する。また、記憶部50は、吐出異常が生じている異常ノズルの位置情報と、当該異常ノズルが本来吐出するインクを近傍のノズルに割りてる補完設定53を記憶する。ジョブデータ51は、RAMなどの揮発性メモリーに記憶されてもよく、検査画像データ52、補完設定53やプログラム54などは、不揮発性メモリーに記憶されてもよい。不揮発性メモリーは、例えば、フラッシュメモリーなどであり、これに加えて又は代えてHDD(Hard Disk Drive)などを有していてもよい。また、検査画像データ52、補完設定53やプログラム54の内容も必要に応じて動作中は読み出されて揮発性メモリーに記憶されていてもよい。
【0037】
通信部60は、外部機器との間での通信を実行制御する。通信部60は、例えば、TCP/IPなどの通信規格に基づいて外部のコンピューターと接続されて、形成対象の画像データを含むジョブデータを取得し、また、ジョブデータに基づく画像形成動作のステータスを出力する。また、通信部60は、USB(Universal Serial Bus)などにより周辺機器と直接接続されてデータの送受信がなされてもよい。
【0038】
操作受付部70は、ユーザーなどによる入力操作を受け付けて、受け付けた内容を入力信号として制御部40に出力する。操作受付部70は、例えば、タッチパネルや押しボタンスイッチなどを備える。タッチパネルは、表示部80の表示画面と重なって位置し、表示画面への表示内容と同期して操作内容が特定されてもよい。
【0039】
表示部80は、制御部40の制御に基づいて、ユーザーなどに対してステータスや選択メニューなどを示す表示を行う。表示部80は、例えば、表示画面とインディケーター(ランプ)などを有する。表示画面は、例えば、液晶表示画面などであって、各種文字や図形をドットマトリクス表示することができる。インディケーターは、例えば、LED(Light Emitting Diode)ランプなどであって、電力供給の有無や動作異常の有無などを示す場合に点灯/消灯の切替や点滅動作などがなされてもよい。
【0040】
電力供給部90は、画像形成装置1の各部に応じた電圧の電力を供給する。形成動作部20の駆動基板212には、各駆動波形のピーク電圧に応じた電圧が出力される。あるいは、最大ピーク電圧のみが出力されて、駆動基板212で複数の電圧信号が生成されてもよい。
【0041】
次に、本実施形態の画像形成装置1における面付画像形成動作について説明する。
画像形成装置1では、供給される媒体Mの一部ずつに形成対象の2以上の所定数(例えば4枚)の画像の画像形成範囲を分割して各々割り当てる面付配置を行い、画像形成させることができる。制御部40は、ジョブデータが取得されると、ジョブ設定に応じて画像データを画像形成エリアに割り当てて配置し、更に配置の設定に応じて形成動作部20を動作させるための駆動用データに変換する。当該駆動用データは、適宜なタイミングで形成動作部20に出力されて画像形成動作が行われる。形成対象が5枚以上の場合には、2枚以上の記録媒体に順次所定数ずつ画像が面付配置される。
【0042】
図4は、面付画像について説明する図である。
図4(a)に示すように、媒体Mが各々4分割されて各分割エリアに画像形成される場合、番号1~11で示されている11枚の画像は、3枚の媒体Mに割り当てられ、面付画像形成される。3枚目の媒体では、1/4の領域が残るが、11枚の画像を複数セット形成する場合には、次のセットの1枚目が引き続き割り当てられてもよい。
【0043】
この面付画像形成において、形成動作部20の動作異常や調整不良により、形成された画像の一部に画質異常(形成異常)が生じる場合がある。特に、特定のノズル27やインクジェットヘッド211に依存した異常の場合、ラインヘッドでは、幅方向について当該ノズル27やインクジェットヘッド211の位置に限ってスジ状又は帯状の画質の異常(濃度むらやすじなど)が生じる。図4(b)に示すように、筋状の異常Nが面付画像の2、4、6、8の位置に生じている。この場合、面付画像のうち、1、3、5、7の画像は正常に形成されていることになる。
【0044】
このような部分的な異常により、一部の画像が正常に形成されている場合には、正常に形成された画像を含めた全体を再度画像形成するのは無駄である。一方で、異常の発生原因が速やかに特定されて対処がなされないと、当該部分での正常な画像形成ができずに効率が低下する。
【0045】
本実施形態の画像形成装置1では、上記の部分的な異常が生じた場合に、面付配置された画像の範囲ごとに形成異常の有無を判定し、異常が生じた領域の画像(正常に形成されていない画像)を異常が生じていない部分(異常画像形成範囲外)に移動させて再形成させ、これに並行して、異常が生じた領域(異常画像形成範囲)には当該異常の原因を特定するための検査画像を形成させる。制御部40は、このような割り当てでの画像データを生成(再配置)して設定し、形成動作部20により形成させる。形成された検査画像が撮像部30により撮像されて解析され、異常の原因箇所が特定されると、形成異常に対応する画像形成動作の補正動作として、特定箇所を補完する駆動設定を行って補完設定53に登録し、その後、当該駆動設定に基づいて通常の画像形成が再開される。ここでいう補正動作は、形成動作部20の動作を調整するもの、例えば、駆動電圧(振幅)や駆動信号の波形(パルス幅など)などを変更するものと、画像データを調整するものとのうちいずれか又はこれらの組合せであってもよい。
【0046】
図5は、面付画像の異常検出に係るデータについて説明する図表である。
図5(a)に示すように、面付画像の形成時には、各媒体Mのページに対して、割り当てられる面付の領域情報が設定保持される。ここでは、各ページ(媒体M)に片面画像形成がなされ、当該片面(表面)が2×2に均等4分割されて面付がなされる。搬送方向(Y方向)下流側(先頭側)の領域に画像1、2が形成され、上流側(末尾側)の領域に画像3、4が形成されるように定められている。このデータが撮像部30により撮像された画像データから検出された形成異常の検出座標と比較されて、形成異常の範囲が含まれる面付領域(異常画像形成範囲)が特定される。
【0047】
画像が形成された媒体Mの画像形成面は、搬送方向下流側で撮像部30により撮像されて、制御部40により形成異常の有無を検出する解析処理がなされる。形成異常の有無及び範囲の検出は、特には限られないが、撮像データと、画像形成対象となった元の画像データとを比較することで行われる。例えば、元画像データに対し、所定の基準値以上異なる階調値の撮像データが得られた部分が形成異常の範囲とされてよい。
【0048】
異常検出の有無は、図5(b)に示すように、画像形成中のジョブについて略リアルタイムで面付領域ごとに判別されて記憶保持される。異常がなく正常に検出された場合には、正常出力とされて、他の部分で異常が生じている(生じた)場合でも再面付及び再度の画像形成が不要な画像として定められる。一方で、異常が検出された場合には、異常検出とされて、再配置が必要とされる。ここでは、画像形成開始後、撮像結果からの異常検出が取得されるまでの間の画像(中途画像)は、「出力中未検査」と示され、画像形成開始前(未形成)の場合には「未出力」と表示されている。
【0049】
図5(c)に示すように異常が検出されてから、当該検出がなされたときに形成中又は形成後検査前の画像の検査が終了するまでは通常の処理が継続される。出力中未検査の画像の異常有無が全て判別された後に、異常が検出された領域と再形成が必要な画像とが全て定まる。異常が検出されたときに未形成の画像については、再形成が必要な画像の数と検査画像が占めるエリアとに応じて、再配置が必要か否かが定まる。すなわち、再形成画像と検査画像との組み合わせで媒体Mに余白なく各面付領域に画像が割り当てられる場合には、未形成画像は、元の割り当て通りで画像形成が行われればよい。余白が生じた場合には、未形成画像(正常に形成されていない画像に含まれる)を挿入することで、面付の再設定(再配置)が行われる。ここでは、再形成が「要」の画像が4枚あり、また、検査画像が2面分を占めるので、面付領域のうち2か所が余白となる。したがって、未形成画像9~11は再配置される。
【0050】
図6は、再配置画像について説明する図である。
図6(a)に示すように、再配置では、先頭の媒体Mのうち、先に異常が検出された図の右側半分に検査画像Tが配置される。異常が検出されたエリアに形成されていた画像2、4が、正常に画像が形成される図の左側半分に移動し、また、画像6、8は、2枚目の媒体Mに配置される。画像9以降は、画像8以降のエリアに詰めて順番に並んでいる。上記のように、画像11の後ろの余白には、次のセットの画像が画像1から順に再び配置されてもよい。
【0051】
検査画像Tは、検出された異常の種別に応じたものが選択される。図6(b)に示すように、異常がノズル27による吐出の異常と判別(推定)された場合には、可能性のある各ノズル27から各々個別にインクを吐出させて直線を形成させることで、各ノズル27からのインクの着弾位置及び着弾量の異常が特定される。隣り合うノズル27の着弾位置は、幅方向について互いに重複し、また、異常時のずれ幅を考慮すると、2つ以上離れたノズル27からの着弾位置と重なることもあるので、ここでは、数ノズル単位で搬送方向に位置をずらした梯子状のテストパターン(ラダーチャート)を出力させる。また、幅方向について特定の範囲でのみ異常が生じる場合、当該異常を生じた範囲に対応するインクジェットヘッド211でのみ検査画像を形成させてもよい。上記のように、幅方向について略同一範囲に複数(2個)のインクジェットヘッド211が並んでいる場合には、これら複数(2個)のインクジェットヘッド211が異常を生じた範囲に対応するものとされてよい。なお、異常検出の段階で必ずしも正確な判別(推定)がなされるとは限らず、また、要因が1つに絞り込めるとも限らないので、場合によっては複数の異なる種類の検査画像Tを形成させてもよいし、原因を絞り込むための検査画像が最初に配置されてもよい。検査画像Tのサイズや数によっては、2枚目以降の媒体の同エリアにわたってテスト画像が形成されてもよい。
【0052】
なお、上記に関わらず、従来同様に面付画像単位での再配置や検査を行わないこととしたり、通常の画像形成と並行して検査を行わないことにしたりするようにユーザーが設定することもできる。
【0053】
図7は、検品に係る設定画面の例を示す図である。
この設定画面は、例えば、ユーザーが操作受付部70に対して所定の入力操作を行うことで呼び出すことができる。また、画像形成装置1外のPCなどから画像形成装置1の設定画面を呼び出して所定の入力操作により開くことが可能であってもよい。
【0054】
ここでは、面付画像単位での検査を行うか否か、及び、異常発生時に通常画像の形成と並行に画像補正を自動で実施するか否かについての選択が可能である。面付画像単位での検査を行わない選択を行っている場合には、通常の形成画像のどこかで異常が検出された場合には、通常画像の形成を完全に停止する。検査画像の形成や異常の特定処理自体は自動で行われてもよいし、ユーザーが操作受付部70への入力を介して所望の検査画像の出力を命令するまで待機してもよい。
【0055】
異常の補正を自動で行わない設定がなされている場合には、上記のように異常が特定された後、表示部80などに特定した異常の内容を表示させ、ユーザーに対応を要求(候補を選択して選択させるものであってもよい)し、要求の入力に応じた対処を行う。
【0056】
自動補正の設定有無にかかわらず、特定された異常の種別が自動的な調整や補完処理では対処できないもの、例えば、部品や消耗品の交換などを要するものや、クリーニング動作が必要なものなどである場合には、以降の画像形成動作を中止して、ユーザーに対する報知動作を行わせることとしてよい。なお、クリーニング動作については、報知動作のみで、ユーザーの承認を得ずに開始されることが可能であってもよい。
【0057】
図8は、本実施形態の画像形成装置1で実行される画像形成制御処理の制御部40による制御手順を示すフローチャートである。この画像形成制御処理は、プログラム54に含まれ、本実施形態の画像データ処理方法を含む。画像形成制御処理は、ジョブデータが受信又は受信済みのジョブデータが呼び出されることで開始される。
【0058】
画像形成制御処理が開始されると、制御部40(CPU41)は、受信したジョブデータの形成対象画像データを取得する(ステップS101)。制御部40は、画像データを処理して、形成動作部20の駆動用データに変換し、面付設定やマージン設定などに基づいて、媒体に対して配置設定する(ステップS102)。
【0059】
制御部40(CPU41)は、形成動作部20に駆動用データを出力し、画像形成動作を開始させる駆動制御を行う(ステップS103)。制御部40は、併せて、搬送部10に制御信号を出力して媒体Mの供給、搬送を開始させる。
【0060】
制御部40は、形成動作部20の動作により形成された媒体M上の画像を撮像部30により撮像させる制御を行う(ステップS104)。制御部40は、撮像された画像に検査画像が含まれているか否かを判別する(ステップS105)。含まれていると判別された場合には(ステップS105で“YES”)、制御部40は、検査画像を解析して、異常の発生箇所を特定する(ステップS111)。制御部40は、特定された内容に応じて、不具合箇所の調整、インク吐出の禁止及び他のノズルによる補完吐出設定などを行う(ステップS112;補正手段、補正ステップ)。それから、制御部40の処理は、ステップS106へ移行する。
【0061】
撮像された画像に検査画像が含まれていないと判別された場合には(ステップS105で“NO”)、制御部40の処理は、ステップS106へ移行する。
【0062】
ステップS106の処理へ移行すると、制御部40は、形成対象の通常画像の異常を検出する(ステップS106;検出手段、検出ステップ)。上記のように、制御部40は、例えば、撮像データと形成対象の画像の元画像データとを比較することで異常の検出を行う。制御部40は異常があったか否かを判別する(ステップS107)。異常があったと判別された場合には(ステップS121で“YES”)、制御部40は、再配置設定処理を呼び出して実行する。その後、制御部40の処理は、ステップS103へ戻る。
【0063】
異常がなかったと判別された場合には(ステップS107で“NO”)、制御部40は、対象画像を全て形成終了したか否かを判別する(ステップS108)。終了していないと判別された場合には(ステップS108で“NO”)、制御部40の処理は、ステップS103に戻る。終了したと判別された場合には(ステップS108で“YES”)、制御部40は、画像形成制御処理を終了する。
【0064】
図9は、図8の画像形成制御処理で呼び出される再配置設定処理の制御手順を示すフローチャートである。
【0065】
再配置設定処理が呼び出されると、制御部40は、形成済み又は形成中で未検品の画像があるか否かを判別する(ステップS201)。あると判別された場合には(ステップS201で“YES”)、制御部40は、その後の新たな画像形成動作を中断させて、残っている未検品の画像の撮像及び異常検出に係る処理を行う(ステップS202)。そして、制御部40の処理は、ステップS203へ移行する。未検品の画像がないと判別された場合には(ステップS201で“NO”)、制御部40の処理は、ステップS203へ移行する。
【0066】
ステップS203の処理へ移行すると、制御部40は、検品された全ての画像における異常箇所を抽出する(ステップS203)。制御部40は、異常箇所を含む面付領域を特定する(ステップS204;範囲特定手段、範囲特定ステップ)。制御部40は、検出された異常の種別を判別(推定)する(ステップS205)。
【0067】
制御部40は、異常が特定された領域に対し、判別された異常の種別に応じた検査画像を配置する(ステップS206)。制御部40は、異常画像を正常画像が形成されていた領域に再配置する(ステップS207)。制御部40は、未形成の画像があり、かつ上記の再配置がなされた媒体Mに余白が生じているか否かを判別する(ステップS208)。余白が生じていると判別された場合には(ステップS208で“YES”)、制御部40は、形成画像をそれぞれ再配置する(ステップS209)。そして、制御部40は、再配置設定処理を終了して処理を画像形成制御処理に戻す。
ステップS206、S207の処理が本実施形態の再配置設定手段(再配置設定ステップ)を構成し、この再配置設定手段(再配置設定ステップ)には、ステップS208、S209の処理が含まれてもよい。
【0068】
余白が生じていないと判別された場合には(ステップS209で“NO”)、制御部40は、再配置設定処理を終了して処理を画像形成制御処理に戻す。この場合、再配置された画像の形成動作に続いて、未形成の配置済画像データによる画像形成動作が継続される。未形成の配置済画像データは、再配置された画像のデータの後ろに移動されて一体化されてもよい。
【0069】
あるジョブの画像形成中に複数回異常が検出された場合には、その都度異常検出とともに再配置設定処理が呼び出されればよい。すなわち、再配置設定処理は、複数回実行されてもよい。
【0070】
上記のように、異常の種別によっては、検査画像で異常の種別を特定しきれない場合や、形成動作部20の動作に係る補完処理などの自動対応では正常な画像の形成が困難な場合がある。この場合には、画像形成装置1のユーザーが所望の対応を定める必要がある。
【0071】
図10は、補完処理で対処できない可能性のある異常が検出された場合の例を示す図である。図10(a)には、画像2、4の面付領域に筋状の異常Naが生じている。これに対し、図10(b)に示すように、異常が特定された面付領域に検査画像Tが配置され、画像2、4が、正常に画像出力された画像1、3の領域に再配置されて画像形成された場合に、再配置先の画像2、4に同一の異常Naが生じている。この場合、検査画像Tから異常は特定されず、すなわち、形成動作部20や搬送部10の異常ではないと推測され、駆動画像の生成プロセスでのトラブルなど(元の形成対象画像のデータと変換処理との相性が悪いなど)が想定される。とはいえ、たまたま異なる場所かつ画像2、4に対して相対的に同一の場所で続けて単発の異常が生じた可能性も完全に排除できるものではない。
【0072】
この場合、図10(c)のように、再開方針に係る設定選択画面が表示部80に表示され、ユーザーによるいずれかの選択入力の操作を待ち受ける。ここでは、例えば、まず、通常通り異常の検出された再配置後の画像2、4の面付領域に検査画像Tを再配置し、異常の特定されなかった検査画像Tの領域に画像2、4を戻す再配置設定を行って画像形成を再開させることが選択可能である。また、形成箇所によらない異常が検出されている画像2、4を除外して残りの未形成画像のみの形成を行わせることが選択可能である。
【0073】
あるいは、画像2、4を他の未形成画像と一緒に、再配置するものの、これ以上検査画像Tを配置せず、画像2、4についてはそのまま正常出力として扱う、又は3度目の画像形成でも異常が出た場合にはそのまま除外することが選択可能である。異常が表に出ない部分などである場合には、必ずしも対処しなくてもよい場合がある。また、画像データ自体の調整や再作成などが必要な場合には、その間に他の画像の形成動作を進めておいた方がスケジュールの遅延が小さくなる場合もある。また、更には、ジョブ全体をキャンセルする選択がなされてもよい。この場合には、その後、画像形成装置1の精密検査などが行われてもよい。
【0074】
図11は、上記の処理を含む変形例の再配置設定処理の制御手順を示すフローチャートである。この変形例の再配置設定処理は、上記の再配置設定処理に対してステップS211~S215、S221の処理が追加されている。その他の処理は同一であり、同一の処理内容については詳しい説明を省略する。
【0075】
ステップS204の処理の後、制御部40(CPU41)は、再配置、再形成された画像の面付領域に異常があったか否かを判別する(ステップS211)。ここでいう再形成された画像は、当初の配置とは異なる位置に配置されて改めて形成された画像を指し、未形成のまま再配置されて初めて形成された画像を含まない。再形成画像に異常がなかったと判別された場合には(ステップS211で“NO”)、制御部40の処理は、ステップS205へ移行する。
【0076】
再形成画像に異常があったと判別された場合には(ステップS211で“YES”)、再形成画像の面付領域における異常の検出位置と、先(最初)の異常検出時の面付領域における異常の検出位置とを比較し、同一であるか否かを判別する(ステップS212)。同一ではないと判別された場合には(ステップS212で“NO”)、制御部40の処理は、ステップS205へ移行する。
【0077】
異常検出位置が同一であると判別された場合には(ステップS212で“YES”)、制御部40は、表示部80により再開設定の選択画面を表示させて、選択の入力操作の受け付けを待ち受ける(ステップS213)。制御部40は、受け付けられた入力操作の内容に応じた選択がジョブのキャンセルであるか否かを判別する(ステップS214)。キャンセルであると判別された場合には(ステップS214で“YES”)、制御部40は、入力操作に応じて面付画像の再配置を中止し、また、画像形成動作の中止設定を行う(ステップS221)。そして、制御部40は、再配置設定処理を終了して、処理を画像形成制御処理に戻す。
【0078】
選択がジョブのキャンセルではないと判別された場合には(ステップS214で“NO”)、制御部40は、入力操作による選択内容に応じて異常が検出された再形成画像の取り扱いを決定する(ステップS215)。すなわち、上記図10(c)の例では、1回目の異常検出と同様に扱うか、再配置対象から除外するか、再形成後の位置に検査画像Tの形成を行わせないか、を決定する。それから、制御部40の処理は、ステップS205へ移行する。
ステップS214、S215の処理が、本実施形態においてステップS212で“YES”に分岐した場合のその後の処理の選択手段を構成する。
【0079】
以上のように、本実施形態の画像形成装置1は、制御部40を備える。制御部40は、検出手段として、画像を形成する形成動作部20による形成画像から当該形成画像の形成異常を検出し、範囲特定手段として、検出された形成異常の範囲を含む形成画像の異常画像形成範囲を特定し、再配置設定手段として、異常画像形成範囲に形成異常の原因を特定するための検査画像Tを配置し、異常画像形成範囲外に、正常に形成されていない画像を再配置した画像データを設定する。また、制御部40は、補正手段として、再配置後の画像データに応じて形成動作部20により形成された検査画像Tに基づいて、形成異常に対応する補正(補完設定)を行う。
このように、画像の形成異常が生じた場合に、異常画像形成範囲を避けて形成対象の画像を再形成させることで、画像形成動作を進めるとともに、異常が生じた部分には検査画像を形成させて、並行して異常を特定、対処するので、記録媒体、インクや時間の無駄を省きながら効率よく画像形成動作を進めることができる。
【0080】
また、形成動作部20による形成対象の2以上の所定数(ここでは4枚)の画像は、画像が形成される媒体M上の一部ずつに割り当てられて面付配置される。制御部40は、範囲特定手段として、面付配置された各画像の範囲ごとに異常画像形成範囲を特定する。このように、特に面付画像の形成時には、当該面付画像ごとに異常の有無を判定し、必要な画像だけ再形成させ、必要な範囲だけ検査画像を形成させて、容易かつ効率よく画像形成動作を進めることができる。
【0081】
また、画像の形成異常が検出されたときに、ジョブデータで指定されている形成対象の複数の画像のうち一部が未形成の場合に、制御部40は、再配置設定手段として、未形成の画像を再配置の対象に含めてもよい。異常画像形成範囲内の画像と検査画像を再配置した場合に、媒体Mに余白が生じるのであれば、未形成画像も再配置して余白を埋めることで、より効率よく画像形成を進めることができる。
【0082】
また、制御部40は、再配置設定手段として、検出された形成異常の種別に応じた検査画像Tを配置する。多くの形成異常では、その原因が推定可能であるので、形成異常の種別に応じて検査画像の種類を定めて形成させることで、速やかに異常の原因箇所を特定し、対処して通常の画像形成動作に復帰させることができる。
【0083】
また、形成異常の種別には、画像の濃度むら及びスジの発生のうち少なくとも一方が含まれる。これらは、画像形成装置でも頻繁に生じる形成異常であり、原因も概ね限られ、補完設定で対処可能なことも多いので、これらを判別及び対処可能に検査画像を設定しておくことで、形成異常による画像形成作業の遅延や手間を大きく低減することができる。
【0084】
また、形成動作部20は、インクを吐出するインクジェットヘッド211を複数有する。制御部40は、範囲特定手段として、形成異常の範囲をインクジェットヘッド211の各々による画像形成範囲ごとに定める。インクジェット方式の画像形成装置1では、インクジェットヘッド211単位でむらが生じたり異常が生じたりすることが多いので、当該インクジェットヘッド211を単位として形成異常の範囲を定めることで、効率よく異常に対処することができる。
【0085】
また、制御部40は、再配置設定手段として、形成異常の範囲に対応するインクジェットヘッド211のみにより形成される検査画像を配置してもよい。上記のように、インクジェットヘッド211単位で異常が生じやすいので、対応するインクジェットヘッド211でのみ検査画像を形成させれば十分なことも多く、これにより、必要以上に検査画像の場所を取らず、また、必要以上のインクを吐出させる必要がない。
【0086】
また、形成異常が検出されたときに形成開始後かつ形成異常の検出前の中途画像がある場合には、制御部40は、再配置設定手段として、中途画像の異常画像形成範囲が特定された後に、再配置の設定を行う。既に形成途中の画像がある場合、当該途中の画像が正常に形成できる場合には、途中で打ち切るのは無駄であり、一方で、形成途中の画像で他の新たな異常が生じている場合、これを考慮せずに先に生じている異常のみに対処しても、その後改めて新たな異常に対処するための検査画像の形成や解析処理、補完設定などが必要になって、時間を余計に要することになる。したがって、中途画像の画像形成を完了させ、異常の検出も行ってから再配置を行うことで、画像形成動作を効率化することができる。
【0087】
また、当初の配置とは異なる位置に再配置されて再形成された画像から形成異常が検出された場合に、制御部40は、選択手段として、この画像における形成異常の範囲と、最初の形成異常の検出時の画像における形成異常の範囲との比較の結果に基づいてその後の処理を選択する。形成動作部20に応じた位置ではなく、画像データに応じた位置に異常が続けて生じる場合には、形成動作部20や搬送部10などの異常ではなく、画像のデータ処理などの異常が想定され、ユーザーや管理者の手を介さずに補完処理で対処できない場合が多い。したがって、再形成画像で異常が検出された場合には、異常箇所を元の形成異常の範囲と比較して、画像データに応じた位置の異常であるか否かを判別することで、画像形成装置1において意味のない可能性の高い処理を無駄に繰り返すのを抑制することができる。
【0088】
また、画像形成装置1は、操作受付部70を備える。上記の比較の結果、画像における形成異常の範囲が同一と判別された場合に、制御部40は、選択手段として、操作受付部70が受け付けた入力操作の内容に基づいてその後の処理を選択する。ユーザーや管理者などの手を介す必要がある可能性がある場合には、当該ユーザーや管理者などに速やかに対処をゆだねることで、不要な時間損失を低減させることができる。また、ユーザーや管理者の判断に応じて、初めからやり直したり、必要な画像のみ再作成してその他の画像を先に画像形成させたりといった選択肢もあるので、ユーザーの判断の選択肢を複数提供してもよい。
【0089】
また、本実施形態の画像形成装置1は、上記の画像データ処理装置(少なくとも制御部40)と、画像を形成する形成動作部20と、を備える。このような画像形成装置1では、形成異常に適切に判断して効率よく異常に対処しつつ画像形成動作を進めることができる。
【0090】
また、画像形成装置1は、形成画像を撮像して読み取る撮像部30を備える。制御部40は、検出手段として、撮像部30による形成画像の読み取りデータに基づいて形成異常を検出する。画像形成装置1がインラインで撮像部30を備えることで、形成された画像をそのまま速やかに読み取り、異常を検出してこれに対処することができる。したがって、別途撮像部を取り付けて読み取り、異常の検出情報をやり取りする必要がなく、手間もかからない。また、適切な撮像部30の配置により、画像形成から異常検出までのタイムラグを小さくして、異常検出時の中途画像を少なくすることができる。これにより、中途画像の異常検出中における通常画像の形成動作の中断時間を短くすることができる。また、同一の異常を含む画像が形成される媒体Mの数も減らすことができる。
【0091】
また、本実施形態の画像データ処理方法は、画像を形成する形成動作部20による形成画像から当該形成画像の形成異常を検出する検出ステップ、検出された形成異常の範囲を含む形成画像の異常画像形成範囲を特定する範囲特定ステップ、異常画像形成範囲に形成異常の原因を特定するための検査画像を配置し、異常画像形成範囲外に、正常に形成されていない画像を再配置した画像データを設定する再配置設定ステップ、再配置後の画像データに応じて形成動作部20により形成された検査画像に基づいて、形成異常に対応する補正を行う補正ステップ、を含む。
このような画像データ処理方法により、媒体やインクの無駄を省き、画像形成動作の進行と並行して異常原因を特定して対処することで、より効率よく画像形成動作を進めることができる。
【0092】
また、上記の各処理を実行するプログラム54をインストールして起動させることで、特別な構成を備えずとも画像形成装置1で発生する画像の形成異常を検出して、対応することができるので、費用対効果や画像の形成効率を上昇させて適正な形成画像を得ることができる。
【0093】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、中途画像の異常検出が終了してから再配置及び検査画像の形成を行わせることとしたが、形成異常が検出され次第、対応箇所に検査画像を形成させてもよい。
【0094】
また、上記実施の形態では、媒体Mの片面に画像を形成する場合について説明したが、両面に画像を形成する場合、表面の画像形成後、裏面の画像形成前に形成異常の検出動作を行ってもよいし、両面の画像形成後にまとめて検出動作を行ってもよい。裏面の画像形成前に形成異常の検出動作を行う場合、表面で検出された形成異常に係る検査画像が裏面に形成されるように再配置設定がなされてもよい。
【0095】
また、上記実施の形態では、媒体Mの表面を4等分した面付画像形成の場合を例に挙げて説明したが、必ずしも4等分でなくてもよく、不均等な面積に分割された画像であってもよい。この場合、画像の位置の再配置に制限がかかる場合がある。また、特にこのような場合、再配置の順番は、画像の形成順にこだわらず、再配置可能な順番に入れ替えてなされてもよい。
【0096】
また、上記実施の形態では、面付画像の形成の場合について説明したが、一部又は全部が同一の画像を媒体に複数(複数ずつ)形成させるような場合であっても同様の再配置がなされてよい。また、所定のパターンの模様の繰り返しなどで、その形成画像の出力サイズが限定されないような場合などには、面付画像でなくても記録対象の通常の画像形成範囲と検査画像の形成範囲を適宜分割設定して並行に処理がなされてもよい。
【0097】
また、上記実施の形態では、再配置時にも形成画像に対して同一位置に形成異常が生じた場合に操作受付部による選択操作を受け付けるものとして説明したが、これに限らず、異常の原因が特定できない場合や特定しづらい場合、補完設定などで対応しきれないと判断される場合には、速やかにユーザーや管理者の判断を仰ぐことが可能に入力受付画面を表示部80に表示させてもよい。
【0098】
また、画像形成装置1が撮像部30を備えず、外部の撮像装置により撮影されたデータが取得されてもよい。
【0099】
また、上記実施の形態では、画像形成装置1の制御部40が異常検出、特定及び補正(補完)などの処理を行ったが、これらのうち少なくとも一部が外部のコンピューターなどにより行われてもよい。
【0100】
また、上記実施の形態では、色材を付与することで画像を形成するインクを吐出するものとして説明したが、透明なインクなどであってもよい。また、ここでいう画像は、色材を用いた描画によるものに限られない。特定の導体部材による回路配線構造などが含まれてもよい。また、画像の下地や上面の保護膜なども含まれてよい。また、二次元画像に限られず、エンボスなどの凹凸の形成を意図するものであってもよく、さらに、立体構造を有するものであってもよい。
【0101】
また、上記実施の形態では、インクジェット方式の画像形成装置であるものとして説明したが、これに限られない。その他の方式の画像形成装置であってもよい。また、インクジェット方式であっても、圧電素子の変形によりインクを吐出させるピエゾ方式には限られない。サーマル方式などの他の方式により画像を形成するものであってもよい。
【0102】
また、以上の説明では、本発明の測位情報の取得制御に係るプログラム54を記憶するコンピューター読み取り可能な媒体としてHDD、SSD、フラッシュメモリーなどの不揮発性メモリーなどからなる記憶部50を例に挙げて説明したが、これらに限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、MRAMなどの他の不揮発性メモリーや、CD-ROM、DVDディスクなどの可搬型媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、処理動作の内容及び手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0103】
1 画像形成装置
10 搬送部
11 駆動ローラー
12 搬送ベルト
13 従動ローラー
14 搬送モーター
15 押さえローラー
20 形成動作部
21、21C、21M、21Y、21K ヘッドユニット
210 キャリッジ
211 インクジェットヘッド
212 駆動基板
25 ヘッド駆動部
26 圧電素子
27 ノズル
29 駆動波形信号生成部
30 撮像部
40 制御部
41 CPU
42 RAM
50 記憶部
51 ジョブデータ
52 検査画像データ
53 補完設定
54 プログラム
60 通信部
70 操作受付部
80 表示部
90 電力供給部
M 媒体
T 検査画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11