(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】画像検査装置、画像検査方法、および画像検査プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20240402BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G01N21/892 A
G03G21/00 510
(21)【出願番号】P 2020136779
(22)【出願日】2020-08-13
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】浅井 慎一
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-079709(JP,A)
【文献】特開2002-183731(JP,A)
【文献】特開2006-051229(JP,A)
【文献】特開平11-045919(JP,A)
【文献】米国特許第05091963(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに対して範囲の異なる平滑化フィルターにより平滑化処理して得られた各画像データの差分データを計算する計算部と、
前記差分データに基づき異常候補を抽出する抽出部と、
抽出された複数の異常候補をまとめた範囲を対象領域として、前記対象領域に含まれる複数の異常候補の中から前記差分データに基づき、1つの異常候補を異常として検出する検出部と、
を有する、画像検査装置。
【請求項2】
前記画像データは、印刷ジョブに含まれる元画像データ、および、前記元画像データにより記録材に形成された画像を読み取って得られた読取画像データであり、
前記抽出部は、前記元画像データの平滑化処理によって得られた差分データと、前記読取画像データの平滑化処理によって得られた差分データに基づき、異常候補を抽出する、請求項1に記載の画像検査装置。
【請求項3】
前記平滑化フィルターは、第1領域の範囲を平滑化する第1平滑化フィルター、および、第1領域より広い第2領域の範囲を平滑化する第2平滑化フィルターであり、
前記計算部は、前記第1平滑化フィルターによって平滑化処理された画像データと、前記第2平滑化フィルターによって平滑化処理された画像データとの差分データを計算する、請求項1または2に記載の画像検査装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記対象領域に含まれる各異常候補の中のそれぞれの画素の階調値に基づき、1つの異常候補を異常として検出する、請求項1~3のいずれか一つに記載の画像検査装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記対象領域に含まれる各異常候補の中のそれぞれの画素の階調値の符号に基づき、1つの異常候補を異常として検出する、請求項1~4のいずれか一つに記載の画像検査装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記対象領域に含まれる各異常候補の中の画素の個数に基づき、1つの異常候補を異常として検出する、請求項1~5のいずれか1つに記載の画像検査装置。
【請求項7】
前記検出部は、前記対象領域に含まれる各異常候補の中の各画素の階調値と画素の個数との積算値に基づき、1つの異常候補を異常として検出する、請求項1~6のいずれか1つに記載の画像検査装置。
【請求項8】
前記検出部は、前記対象領域に含まれる各異常候補の位置に基づき、1つの異常候補を異常として検出する、請求項1~7のいずれか1つに記載の画像検査装置。
【請求項9】
前記検出部は、注目画素に対する円形フィルターの処理により、複数の異常候補をまとめて、前記対象領域とする、請求項1~8のいずれか1つに記載の画像検査装置。
【請求項10】
前記異常は、色画像の中に、当該色画像の階調値よりも白色に近い階調値となっている画素である、請求項1~9のいずれか1つに記載の画像検査装置。
【請求項11】
画像データに対して範囲の異なる平滑化フィルターにより平滑化処理して得られた各画像データの差分データを計算する段階(a)と、
前記差分データに基づき異常候補を抽出する段階(b)と、
抽出された複数の異常候補をまとめた範囲を対象領域として、前記対象領域に含まれる複数の異常候補の中から前記差分データに基づき、1つの異常候補を異常として検出する段階(c)と、
を有する、画像検査方法。
【請求項12】
前記画像データは、印刷ジョブに含まれる元画像データ、および、前記元画像データにより記録材に形成された画像を読み取って得られた読取画像データであり、
前記段階(b)は、前記元画像データの平滑化処理によって得られた差分データと、前記読取画像データの平滑化処理によって得られた差分データに基づき、異常候補を抽出する、請求項11に記載の画像検査方法。
【請求項13】
前記平滑化フィルターは、第1領域の範囲を平滑化する第1平滑化フィルター、および、第1領域より広い第2領域の範囲を平滑化する第2平滑化フィルターであり、
前記段階(a)は、前記第1平滑化フィルターによって平滑化処理された画像データと、前記第2平滑化フィルターによって平滑化処理された画像データとの差分データを計算する請求項11または12に記載の画像検査方法。
【請求項14】
前記段階(c)は、前記対象領域に含まれる各異常候補の中のそれぞれの画素の階調値に基づき、1つの異常候補を異常として検出する、請求項11~13のいずれか一つに記載の画像検査方法。
【請求項15】
前記段階(c)は、前記対象領域に含まれる各異常候補の中のそれぞれの画素の階調値の符号に基づき、1つの異常候補を異常として検出する、請求項11~14のいずれか一つに記載の画像検査方法。
【請求項16】
前記段階(c)は、前記対象領域に含まれる各異常候補の中の画素の個数に基づき、1つの異常候補を異常として検出する、請求項11~15のいずれか1つに記載の画像検査方法。
【請求項17】
前記段階(c)は、前記対象領域に含まれる各異常候補の中の各画素の階調値と画素の個数との積算値に基づき、1つの異常候補を異常として検出する、請求項11~16のいずれか1つに記載の画像検査方法。
【請求項18】
前記段階(c)は、前記対象領域に含まれる各異常候補の位置に基づき、1つの異常候補を異常として検出する、請求項11~17のいずれか1つに記載の画像検査方法。
【請求項19】
前記段階(c)は、注目画素に対する円形フィルターの処理により、複数の異常候補をまとめて、前記対象領域とする、請求項11~18のいずれか1つに記載の画像検査方法。
【請求項20】
前記異常は、色画像の中に、当該色画像の階調値よりも白色に近い階調値となっている画素である、請求項11~19のいずれか1つに記載の画像検査方法。
【請求項21】
請求項11~20のいずれか1つに記載の画像検査方法をコンピューターに実行させるための画像検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像検査装置、画像検査方法、および画像検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式により画像形成された印刷物には、画像異常が発生する場合がある。印刷物の画像異常の例としては、スポット(点)状の異常がある。
【0003】
一方、電子写真方式による画像形成時には、元画像データにはないスポット状の異常が発生することがある。このスポット状の異常は、ホタルと称されている。ホタルは、画像形成物において、淡い起伏となって現れる。ホタルは、特にハーフトーン画像の印刷物においては、人の目で検知されやすく、印刷物の品質低下となる。
【0004】
従来、印刷物における画像の異常を検出するための技術としては、たとえば、特許文献1の技術がある。特許文献1では、正常な画像を最小値フィルターおよび/または最大値フィルターによりフィルター処理を施して基準画像を作り、これと検査画像と比較して差分値を求め、この差分値と許容値(閾値)とを比較して画像の異常を検出する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術では、フィルター処理後の画素の階調値と検査画像の画素の階調値を比較している。このため、従来の技術では、大きな異常があると、その異常画素に近接して、逆符号の差分値が現れることがある。このような逆符号の差分値が現れると、従来の技術では、その画素を、異常ではない場合でも、異常として誤検出してしまうことがあった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、画像の検査精度を向上させることのできる画像検査装置、画像検査方法、および画像検査プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0009】
(1)画像データに対して範囲の異なる平滑化フィルターにより平滑化処理して得られた各画像データの差分データを計算する計算部と、
前記差分データに基づき異常候補を抽出する抽出部と、
抽出された複数の異常候補をまとめた範囲を対象領域として、前記対象領域に含まれる複数の異常候補の中から前記差分データに基づき、1つの異常候補を異常として検出する検出部と、
を有する、画像検査装置。
【0010】
(2)前記画像データは、印刷ジョブに含まれる元画像データ、および、前記元画像データにより記録材に形成された画像を読み取って得られた読取画像データであり、
前記抽出部は、前記元画像データの平滑化処理によって得られた差分データと、前記読取画像データの平滑化処理によって得られた差分データに基づき、異常候補を抽出する、上記(1)に記載の画像検査装置。
【0011】
(3)前記平滑化フィルターは、第1領域の範囲を平滑化する第1平滑化フィルター、および、第1領域より広い第2領域の範囲を平滑化する第2平滑化フィルターであり、
前記計算部は、前記第1平滑化フィルターによって平滑化処理された画像データと、前記第2平滑化フィルターによって平滑化処理された画像データとの差分データを計算する、上記(1)または(2)に記載の画像検査装置。
【0012】
(4)前記検出部は、前記対象領域に含まれる各異常候補の中のそれぞれの画素の階調値に基づき、1つの異常候補を異常として検出する、上記(1)~(3)のいずれか一つに記載の画像検査装置。
【0013】
(5)前記検出部は、前記対象領域に含まれる各異常候補の中のそれぞれの画素の階調値の符号に基づき、1つの異常候補を異常として検出する、上記(1)~(4)のいずれか一つに記載の画像検査装置。
【0014】
(6)前記検出部は、前記対象領域に含まれる各異常候補の中の画素の個数に基づき、1つの異常候補を異常として検出する、上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の画像検査装置。
【0015】
(7)前記検出部は、前記対象領域に含まれる各異常候補の中の各画素の階調値と画素の個数との積算値に基づき、1つの異常候補を異常として検出する、上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の画像検査装置。
【0016】
(8)前記検出部は、前記対象領域に含まれる各異常候補の位置に基づき、1つの異常候補を異常として検出する、上記(1)~(7)のいずれか1つに記載の画像検査装置。
【0017】
(9)前記検出部は、注目画素に対する円形フィルターの処理により、複数の異常候補をまとめて、前記対象領域とする、上記(1)~(8)のいずれか1つに記載の画像検査装置。
【0018】
(10)前記異常は、色画像の中に、当該色画像の階調値よりも白色に近い階調値となっている画素である、上記(1)~(9)のいずれか1つに記載の画像検査装置。
【0019】
(11)画像データに対して範囲の異なる平滑化フィルターにより平滑化処理して得られた各画像データの差分データを計算する段階(a)と、
前記差分データに基づき異常候補を抽出する段階(b)と、
抽出された複数の異常候補をまとめた範囲を対象領域として、前記対象領域に含まれる複数の異常候補の中から前記差分データに基づき、1つの異常候補を異常として検出する段階(c)と、
を有する、画像検査方法。
【0020】
(12)前記画像データは、印刷ジョブに含まれる元画像データ、および、前記元画像データにより記録材に形成された画像を読み取って得られた読取画像データであり、
前記段階(b)は、前記元画像データの平滑化処理によって得られた差分データと、前記読取画像データの平滑化処理によって得られた差分データに基づき、異常候補を抽出する、上記(11)に記載の画像検査方法。
【0021】
(13)前記平滑化フィルターは、第1領域の範囲を平滑化する第1平滑化フィルター、および、第1領域より広い第2領域の範囲を平滑化する第2平滑化フィルターであり、
前記段階(a)は、前記第1平滑化フィルターによって平滑化処理された画像データと、前記第2平滑化フィルターによって平滑化処理された画像データとの差分データを計算する上記(11)または(12)に記載の画像検査方法。
【0022】
(14)前記段階(c)は、前記対象領域に含まれる各異常候補の中のそれぞれの画素の階調値に基づき、1つの異常候補を異常として検出する、上記(11)~(13)のいずれか一つに記載の画像検査方法。
【0023】
(15)前記段階(c)は、前記対象領域に含まれる各異常候補の中のそれぞれの画素の階調値の符号に基づき、1つの異常候補を異常として検出する、上記(11)~(14)のいずれか一つに記載の画像検査方法。
【0024】
(16)前記段階(c)は、前記対象領域に含まれる各異常候補の中の画素の個数に基づき、1つの異常候補を異常として検出する、上記(11)~(15)のいずれか1つに記載の画像検査方法。
【0025】
(17)前記段階(c)は、前記対象領域に含まれる各異常候補の中の各画素の階調値と画素の個数との積算値に基づき、1つの異常候補を異常として検出する、上記(11)~(16)のいずれか1つに記載の画像検査方法。
【0026】
(18)前記段階(c)は、前記対象領域に含まれる各異常候補の位置に基づき、1つの異常候補を異常として検出する、上記(11)~(17)のいずれか1つに記載の画像検査方法。
【0027】
(19)前記段階(c)は、注目画素に対する円形フィルターの処理により、複数の異常候補をまとめて、前記対象領域とする、上記(11)~(18)のいずれか1つに記載の画像検査方法。
【0028】
(20)前記異常は、色画像の中に、当該色画像の階調値よりも白色に近い階調値となっている画素である、上記(11)~(19)のいずれか1つに記載の画像検査方法。
【0029】
(21)上記(11)~(20)のいずれか1つに記載の画像検査方法をコンピューターに実行させるための画像検査プログラム。
【発明の効果】
【0030】
本発明では、画像データに対して範囲の異なる平滑化フィルターにより平滑化処理して得られた各画像データの差分データを計算し、差分データに基づき異常候補を抽出して、複数の異常候補をまとめた範囲を対象領域とする。そして、本発明は、対象領域に含まれる複数の異常候補の中から差分データに基づき、1つの異常候補を異常として検出することとした。これにより、本発明では、範囲の異なる平滑化フィルターによる処理後の差分データに発生する逆符号の差分値の画素を異常として誤検出してしまうことを抑え、画像の検査精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】一実施形態に係る画像検査装置を含む画像形成システムの概略構成を示す図である。
【
図2】画像形成システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】第1平滑化フィルターを説明するための平面図である。
【
図4】第2平滑化フィルターを説明するための平面図である。
【
図5】2種類の平滑化フィルターによる処理後の階調値を示すグラフである。
【
図6】ホタルがある読取画像データに対する第1平滑化フィルターと第2平滑化フィルターによる平滑化処理後の差分データを示すグラフである。
【
図7】ホタルのある画素とその周辺画素を説明するための平面図である。
【
図8】各画素の階調値を絶対値化したグラフである。
【
図9】検査装置による画像検査処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像検査装置を含む画像形成システムの概略構成を示す図である。
図2は、画像形成システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0034】
図1、
図2に示すように、画像形成システム1は、画像形成装置10、画像検査装置20、および後処理装置30を備える。
【0035】
画像形成装置10は元画像データ(印刷データともいう)に基づいて用紙90(記録材)上に画像を形成する。
【0036】
画像検査装置20は、読取部23を備え、画像形成装置10で印刷された用紙90上の画像を読み取り、読取画像データを生成する。また、画像検査装置20は、生成した読取画像データにより、画像濃度、色、画像形成位置の検査を行い、異常を検出したり、濃度調整、色調整、位置ずれ調整等の各種の画像調整を行ったりする。
【0037】
後処理装置30は、画像形成装置10で印刷された用紙に対して、各種の後処理を行う。
【0038】
なお、以下の実施形態においては、
図1に示すように、画像検査装置20は、画像形成装置10に連結された別体の構成として説明するが、画像形成装置10と筐体を共用し、一体として構成されていてもよい。また、以下においては、画像検査装置20は、用紙90の搬送方向において、画像形成装置10の下流側に位置し、画像形成装置10で画像形成された用紙90の検査をリアルタイムで行うものとして説明する。しかしながら、画像検査装置20を画像形成装置10とは別体で、ネットワークで通信接続した構成とし、オフラインで、読取画像データとこれに対応する元画像データを取得することで、画像の検査を行うようにしてもよい。この場合、読取部(後述の読取部23)は、画像形成装置10の内部を搬送する用紙90を読み取るように搬送経路内に配置されてもよい。
【0039】
(画像形成装置10)
図2に示すように、画像形成装置10は、制御部11、記憶部12、画像形成部13、給紙搬送部14、操作表示部15、および通信部19を備え、これらは信号をやり取りするためのバスを介して相互に接続される。
【0040】
(制御部11、記憶部12)
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)であり、プログラムにしたがって装置各部の制御や各種の演算処理を行う。記憶部12は、予め各種プログラムや各種データを格納しておくROM(Read Only Memory)、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するRAM(Random Access Memory)、各種プログラムや各種データを格納するハードディスク等からなる。このような、制御部11および記憶部12などの構成は、コンピューターと同様である。
【0041】
(画像形成部13)
画像形成部13は、たとえば電子写真方式により画像を形成し、基本色(YMCK)のそれぞれに対応した書込部131、および作像部を備える。各作像部は、感光体ドラム132、帯電極(図示せず)、トナー、およびキャリアからなる2成分現像剤を収容する現像部133、クリーニング部(図示せず)を含む。各色の作像部で形成されたトナー画像は、中間転写ベルト134上で重ね合わせされ、2次転写部135において搬送された用紙90に転写される。用紙90上の(フルカラーの)トナー画像は下流側の定着部136で加熱、加圧されることで用紙90上に定着される。
【0042】
(給紙搬送部14)
給紙搬送部14は、複数の給紙トレイ141、搬送路142、143、ならびに、これらの搬送路142、143に配置した複数の搬送ローラー、およびこれを駆動する駆動モーター(図示せず)を備える。給紙トレイ141から給紙された用紙90は、搬送路142を搬送され、画像形成部13で画像形成された後、下流側の画像検査装置20に送られる。
【0043】
また印刷ジョブの印刷設定が、両面印刷の設定であれば、給紙搬送部14は、片面(第1面)に画像形成された用紙90を、画像形成装置10の下部にあるADU搬送路143に搬送する。このADU搬送路143に搬送された用紙90は、スイッチバック経路で表裏を反転された後、搬送路142に合流し、再び画像形成部13で用紙90のもう一方の面(第2面)に画像形成される。
【0044】
(操作表示部15)
操作表示部15はタッチパネル、テンキー、スタートボタン、ストップボタン等を備え、画像形成システム1の状態を表示し、ユーザーによる各種設定、および指示の入力に使用される。また、ユーザーによる、後述の色調整、画像位置調整の実行指示を受け付ける。また、画像検査装置20により検査で異常が判定された場合には、解析結果を表示する。
【0045】
(通信部19)
通信部19は、画像形成装置10が、画像検査装置20、後処理装置30、およびPC等の外部機器との間で通信するためのインターフェースである。通信部19は、画像検査装置20との間で、各種設定値や動作タイミング制御に必要な各種情報等の送受信を行う。そして、通信部19は、外部機器から印刷ジョブを受信する。
【0046】
通信部19には、SATA(Serial Advanced Technology Attachment)、PCI(Peripheral Component Interconnect) Express、USB(Universal Serial Bus)、イーサネット(登録商標)、IEEE1394などの規格によるネットワークインターフェース、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11などの無線通信インターフェースなどが用いられる。
【0047】
(画像検査装置20)
図1、
図2に示すように、画像検査装置20は、制御部21、記憶部22、読取部23、搬送部24、および通信部29を備える。これらは信号をやり取りするためのバス等の信号線を介して相互に接続される。
【0048】
制御部21、記憶部22は、上述の制御部11、記憶部12と同様の構成を備える。この制御部21は、画像形成装置10の制御部11と協働することで、画像形成システム1の画像調整、画像検査、等を行う。
【0049】
(制御部21、記憶部22)
制御部21は、画像解析部210として機能する。制御部21は、CPUであり、装置各部の制御や各種の演算処理を行う。特に、制御部21は、画像検査プログラムを実行することで画像解析部の機能を実行する。記憶部22は、予め画像検査プログラムや各種データを格納しておくROM、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するRAM、各種プログラムや各種データを格納するハードディスク等からなる。特に、記憶部22は、元画像データ、読取画像データなどを記憶する。このような、制御部21および記憶部22などの構成は、コンピューターと同様である。
【0050】
(読取部23)
読取部23は、搬送路241上に配置され、画像形成装置10で画像形成され、搬送された用紙90上の画像の読み取りを行う。なお、両面の同時(1パス)読み取りが行えるように、搬送路241の下側にも同じ読取部を配置してもよい。あるいは、画像形成装置10のADU搬送路143と同様の搬送路を設け、1個の読取部23で両面読み取りを行うようにしてもよい。
【0051】
読取部23は、センサーアレイ、レンズ光学系、LED(Light Emitting Diode)光源およびこれらを収納する筐体等を備える。センサーアレイは、複数の光学素子を主走査方向に沿ってライン状に配置したカラーラインセンサー(たとえばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサー、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサーなど)であり、幅方向における読取領域は用紙90の全幅に対応している。光学系は、複数のミラーとレンズから構成される。LED光源からの光は、原稿ガラスを透過し、搬送路241上の読取位置を通過する用紙90の表面を照射する。この読取位置の表面反射光による像は、光学系により導かれ、センサーアレイ上に結像する。読取部23の解像度は、100~数百dpiである。
【0052】
(搬送部24)
搬送部24は、搬送路241、ならびに、この搬送路241に配置した複数の搬送ローラー、およびこれを駆動する駆動モーター(図示せず)を備える。搬送路241は、上流側の搬送路142と連結し、画像形成装置10で画像形成された用紙90を受け入れ、下流側の後処理装置30に送る。
【0053】
(通信部29)
通信部29は、元画像データ入出力部290として機能する。通信部29は、画像形成装置10の通信部19との間で、各種設定値や動作タイミング制御に必要な各種情報等の送受信を行う。そして、通信部29は、制御部21の制御によって、画像形成装置10の通信部19から印刷ジョブに含まれている元画像データを受信する。通信部29は、受信した元画像データを記憶部22に記憶する。通信部29は、通信部19と通信するために必要なローカル接続インターフェースを備えている。
【0054】
(後処理装置30)
後処理装置30は、
図1に示すように、後処理部31、および搬送部34を備える。搬送部34は、搬送路341、343、ならびに、この搬送路341、343に配置した複数の搬送ローラー、およびこれを駆動する駆動モーター(図示せず)を備える。また、後処理装置30は、排紙トレイ342、344を備える。なお、図示は省略するが、後処理装置30も
図2に示した他の装置と同様に、制御部、記憶部、および通信部を備え、他の装置と協働することで、用紙90への処理を行う。
【0055】
搬送路341は、上流側の搬送路241と連結し、画像検査装置20から搬送された用紙90を受け入れ、印刷設定に応じて後処理を施した後、排紙トレイ342に排出する。そして、印刷設定に応じて、搬送された用紙90を、搬送路343を経由して排紙トレイ344に排出する。また、後述する検査で正常判定の用紙90を通常の排紙トレイ342に、異常判定された用紙90を別の排紙トレイ344に排出するようにしてもよい。
【0056】
後処理部31は、ステイプル処理、パンチ処理、冊子形成処理、等の各種の後処理を行う。たとえば後処理部31は、用紙をスタックするスタック部とステイプル部を有し、複数枚の用紙90をこのスタック部で重ねた後、ステイプル部でステイプルを用いた平綴じ処理を行う。
【0057】
(画像検査)
画像検査処理は、画像形成装置10によって用紙90に印刷された画像の異常を検出する処理である。画像検査処理は、画像検査装置20の制御部21が、画像解析部210の機能として実行する。
【0058】
画像解析部210は、画像データに対して範囲の異なる平滑化フィルターにより平滑化処理した各画像データの差分データを計算する計算部として機能する。また、画像解析部210は、差分データに基づき異常候補を抽出する抽出部として機能する。また、画像解析部210は、抽出された複数の異常候補をまとめた範囲を対象領域として、対象領域に含まれる複数の異常候補の中から差分データに基づき、1つの異常候補を異常として検出する検出部として機能する。
【0059】
画像検査処理では、まず、画像形成装置10の制御部11が主体となり用紙への画像の印刷および印刷後用紙の画像検査装置20への搬送が行われる。そして、画像検査装置20の制御部21が、読取部23に搬送された印刷後用紙から画像を読み取らせる。
【0060】
本実施形態においては、画像検査処理として、画像内における異常の1つであるホタル(白抜け、ホワイトスポットともいう)を検出対象とした場合を例にして説明する。ここでいう「ホタル」とは、たとえば、現像部133のキャリアが感光体ドラム132を経由して中間転写ベルト134に付着し、2次転写時にそのキャリアが異物となり、用紙90と中間転写ベルト134の密着性がキャリア周辺で不十分となるために、転写後の画像が円形状に白く抜ける(濃度が薄くなる)現象である。このためホタルは、色画像の中に白抜けした画素として現れることが多い。色画像とは、たとえば、用紙の地色以外の色のついた画像であり、黒一色の画像を含む。特に、ホタルは、均一な中間濃度の、いわゆるハーフトーン画像において目立ちやすい。
【0061】
処理手順については後述するが、画像検査処理では、まず、印刷ジョブの中から印刷に使用する元画像データが取得されるとともに、印刷後の用紙90を読み取らせて読取画像データが生成される。
【0062】
続いて、画像検査処理では、元画像データおよび読取画像データのそれぞれに対して、処理範囲の異なる平滑化フィルターによって平滑化処理が行われる。平滑化フィルターは、第1平滑化フィルターと第2平滑化フィルターである。
【0063】
図3は、第1平滑化フィルターを説明するための平面図である。
図4は、第2平滑化フィルターを説明するための平面図である。
【0064】
第1平滑化フィルター201の平滑化処理する範囲は、第1領域である。第2平滑化フィルター202の平滑化処理する範囲は、第1領域より広い第2領域である。
図3に示した第1平滑化フィルター201は、5×5画素の矩形範囲(第1領域)を平滑化処理する。一方、
図4に示した第2平滑化フィルター202は、21×21画素の矩形範囲(第2領域)を平滑化処理する。
【0065】
第1平滑化フィルター201は、高周波成分(ノイズ)除去のための小面積平滑化フィルターである。第2平滑化フィルター202は、背景の平均階調計算のための大面積平滑化フィルターである。
【0066】
図5は、2種類の平滑化フィルターによる処理後の階調値を示すグラフである。
図5のグラフは、
図3および4で説明した各平滑化フィルターのA-A線方向の画素を横軸とし、階調値を縦軸としている。階調値は、白色ほど高い値となるようにしている。また、このグラフは、読取画像データにおいて、各平滑化フィルターのほぼ中央にホタル(異常)のある例を示している。
【0067】
図5に示すように、ホタルがある場合、第1平滑化フィルター201および第2平滑化フィルター202のグラフは、ともに山形となる。そして、第1平滑化フィルター201のグラフは、第2平滑化フィルター202のグラフよりもピーク値の高い形状となっている。
【0068】
続いて、画像検査処理では、2種類の平滑化フィルターによる平滑化処理後の画素データから差分データを計算する。差分データは、第1平滑化フィルター201による平滑化処理後の各画素の階調値から第2平滑化フィルター202による平滑化処理後の各画素の階調値を減算した値である。差分データは、読取画像データおよび元画像データの両方について、それぞれ求める。
【0069】
そして、画像検査処理では、読取画像データに対する平滑化処理後の差分データと、元画像データに対する平滑化処理後の差分データとを比較することで、異常候補を抽出する。
【0070】
図6は、ホタルがある読取画像データに対する第1平滑化フィルター201と第2平滑化フィルター202による平滑化処理後の差分データを示すグラフである。
図6において、横軸は、
図5の横軸に対応した画素であり、縦軸は、階調値である。以下では、読取画像データに対する平滑化処理後の差分データは、読取画像データの差分データと称し、元画像データに対する平滑化処理後の差分データは、元画像データの差分データと称する。
【0071】
図6に示すように、読取画像データの差分データのグラフでは、ホタルのあるほぼ中央で山部分が認められる。また、読取画像データの差分データのグラフでは、グラフの山のすそ野の部分に、谷部分も認められる。谷部分は、差分値0よりも低い値である。この谷部分は、偽ホタルと称する。
【0072】
一方、元画像データには、ホタルのような異常は存在しない。図示しないが、このため、元画像データの差分データのグラフは山形にはならない。したがって、元画像データの差分データと、
図6に示したような読取画像データの差分データとを比較することで、元画像データの差分データには存在しないグラフ形状が、読取画像データの差分データに存在すれば、その部分の複数の画素が異常候補として抽出される。
【0073】
本実施形態を適用しない画像評価方法では、元画像データの差分データにおける各画素の階調値と、読取画像データの差分データにおける各画素の階調値とを比較して、異なる階調値の画素を異常ありと判定する方法がある。このような本実施形態を適用しない画像評価方法では、
図6におけるホタルの部分は、異常ありと判定される。そして、本実施形態を適用しない画像評価方法では、
図6における偽ホタルの部分も、異常ありと判定される。このような偽ホタルを異常と判定するのは、誤検出である。このような誤検出は、ホタル自体の階調値が低い場合、偽ホタルも小さいため、閾値を入れることで回避できる可能性はある。しかし、ホタル自体の階調値が高い場合は、偽ホタルの階調値も高くなる。このため、閾値によって階調値の低い値を誤検出しないようにしても、偽ホタルそのものの階調値が高くなると、誤検出を防止できない。
【0074】
そこで、本実施形態は、偽ホタルの誤検出を抑制または防止するために、偽ホタル除去処理を行っている。
【0075】
図7は、ホタルのある画素とその周辺画素を説明するための平面図であり、
図7(a)は平滑化フィルター処理後の差分値の状態を示し、
図7(b)は拡張処理後の状態を示し、
図7(c)は拡張フィルターの一例を示し、
図7(d)は偽ホタル除去後の状態を示している。
【0076】
図7(a)には、上述した大小2種類の平滑化フィルターによる処理後の差分値として階調値が0以外の画素を示している。
図7(a)では、階調値が0以外の画素が連続し、かつ、符号が同じ範囲を一塊の異常候補No.1~No.4として抽出する。異常候補No.1の符号は、正であり、
図6のホタルの位置に相当する。異常候補No.2~No.4の符号は負であり、
図6の偽ホタルの位置に相当する。
【0077】
続いて、偽ホタル除去処理では、複数の異常候補を含む領域を拡張する。拡張処理は、各異常候補内の画素ごとに、拡張フィルター203を当てて、拡張フィルター203に含まれる画素の範囲に拡張する。拡張フィルター203は、
図7(c)に示すように、複数の画素を範囲とする円形フィルターである。拡張後の領域は、異常を検出するための対象領域となる。拡張フィルター203の適用は、拡張フィルター203の中央画素(
図7(c)の黒画素部分)を異常候補No.1~No.4の中の各画素(注目画素)に配置して、拡張フィルター203に含まれる範囲を対象領域(
図7(b)参照)とする。
【0078】
そして、偽ホタル除去処理では、対象領域内において最も高い階調値の画素を持つ異常候補を、1つだけ選択してホタルあり(異常あり)と判定する。
【0079】
図8は、各画素の階調値を絶対値化したグラフである。
図8に示すように、各画素の階調値を絶対値化することで比較が容易になる。また、本実施形態では、異常判定のための検出閾値を設けている。検出閾値は、階調値のあまりにも小さな変化を異常として検出しないためである。検出閾値は、たとえば、これまでの経験上、または、目視によりホタル(偽ホタルではない)などの異常として検出できない階調値などを設定するとよい。
【0080】
図8においては、異常候補No.1に、最も高い階調値を有している画素がある。したがって、異常候補No.1の一塊がホタルの異常部位として検出される。
図7(d)は、異常候補No.1のみがホタルとして検出された状態を示している。
【0081】
次に、画像検査装置20による画像検査処理の手順を説明する。
【0082】
図9は、検査装置による画像検査処理の手順を示すフローチャートである。
【0083】
制御部21は、通信部29を介して元画像データを取得するとともに、読取部23に用紙90を読み取らせて読取画像データを生成する(S101)。元画像データと読取画像データは一対の画像データとして紐付けられ、記憶部22に記憶される。
【0084】
続いて、制御部21は、元画像データおよび読取画像データのそれぞれに対して、第1平滑化フィルター201および第2平滑化フィルター202によって平滑化処理を行う(S102)。
【0085】
続いて、制御部21は、平滑化後の元画像データおよび読取画像データのそれぞれの差分データを計算する(S103)。
【0086】
続いて、制御部21は、差分データ(差分値)を絶対値化する(S104)。なお、絶対値化の処理は、この後の最大階調値検索(S108)の前であれば、処理内容に合わせてどの段階で行ってもよい。
【0087】
続いて、制御部21は、差分データの各画素の階調値を取得する(S105)。
【0088】
続いて、制御部21は、読取画像データの差分データと元画像データの差分データとを比較して、閾値以上に階調値が異なる画素を同じ符号ごとに一塊の異常候補として抽出する(S106)。
【0089】
続いて、制御部21は、拡張フィルター203により異常候補を含む範囲を拡張して対象領域を設定する(S107)。
【0090】
続いて、制御部21は、対象領域の中から、最大階調値の画素を検索する(S108)。
【0091】
続いて、制御部21は、最大階調値の画素を含む異常候補1つをホタルとして検出する(S109)。以上により画像検査処理は終了する。
【0092】
以上説明したように、本実施形態では、真にホタルのある異常候補と偽ホタルのある異常候補とを含めた対象領域の中から、最も階調値の高い画素を含む異常候補1つをホタルありとしたことで、偽ホタルを異常として検出してしまうことを防止できる。したがって、本実施形態によれば、画像異常の検出精度を向上させることができる。
【0093】
(変形例)
上述した本実施形態では、対象領域に含まれる各異常候補の中のそれぞれの画素の階調値に基づき、1つの異常候補を異常(ホタル)として検出した。しかし、対象領域に含まれる複数の異常候補の中から、偽ホタルを除去して1つの異常候補を異常(ホタル)として検出するための方法はこれに限定されない。以下、1つの異常候補を異常(ホタル)として検出するための他の方法を変形例として説明する。なお、他の方法においても、対象領域の設定までは、上述した実施形態における画像検査処理と同じである。
【0094】
(変形例1)
変形例1は、対象領域に含まれる各異常候補の中のそれぞれの画素の階調値の符号に基づき、1つの異常候補を異常として検出する。すでに説明した
図7からわかるように、偽ホタル(No.2~4)は、差分データにおいて負の値となる。そこで、変形例1では、対象領域内にある異常候補ごとに、その中の画素の符号が正となっている異常候補1つをホタルとして検出する。変形例1は、異常候補の符号を検査するだけであるので、画像異常の検出を簡単に行うことができる。しかも、変形例1においても、偽ホタルを除外し、異常検出の精度を上げることができる。
【0095】
(変形例2)
変形例2は、対象領域に含まれる各異常候補の中の画素の個数に基づき、1つの異常候補を異常として検出する。すでに説明した
図7からわかるように、偽ホタル(No.2~4)は、真のホタル(No.1)と比較して、一塊となっている異常候補の中の画素数が少ない。そこで、変形例2では、対象領域内にある各異常候補の中から、最も画素数の多い異常候補1つをホタルとして検出する。変形例2は、異常候補の画素の個数をカウントするだけであるので、画像異常の検出を簡単に行うことができる。しかも、変形例2においても、偽ホタルを除外し、異常検出の精度を上げることができる。
【0096】
(変形例3)
変形例3は、対象領域に含まれる各異常候補の中の各画素の階調値と画素の個数との積算値に基づき、1つの異常候補を異常として検出する。偽ホタル(No.2~4)は、すでに説明した
図6および7からわかるように、真のホタル(No.1)と比較して、階調値および一塊となっている異常候補の中の画素数が異なる。そこで、変形例3では、対象領域内にある異常候補ごとに、各画素の階調値と画素数を積算して、積算値が最も高い異常候補1つをホタルとして検出する。変形例3は、異常候補の画素の階調値と個数を使用するので、画像異常の検出精度をより高めることができる。もちろん、変形例3においても、偽ホタルを除外し、異常検出の精度を上げることができる。
【0097】
(変形例4)
変形例4は、前記対象領域に含まれる各異常候補の位置に基づき、1つの異常候補を異常として検出する。偽ホタル(No.2~4)は、すでに説明した
図6および7からわかるように、真のホタル(No.1)の周囲に発生する。そこで、変形例4では、対象領域内にある異常候補ごとに、他の異常候補と位置関係を比較して、他の異常候補と異常候補との間にある異常候補1つをホタルとして検出する。変形例4は、異常候補の画素の位置を使用することで、偽ホタルを除外し、異常検出の精度を上げることができる。
【0098】
さらに、画像検査処理としては、上述した実施形態および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0099】
以上、本発明の実施形態を説明したが、様々な変形が可能である。上述した実施形態および変形例においては、検出する異常としてホタルを例に説明したが、本発明により検出できる異常はホタルに限定されない。本発明により検出できる異常は、たとえば、周辺画素に対して階調値の高い線となって表れる筋傷なども検出可能である。筋傷は、ホタル同様に、2種類の平滑化フィルターによる差分データを取ると、真の筋傷の周囲に偽筋が現れることがある。本発明を適用することで、このような偽筋を除去し、筋傷の検出精度を上げることができる。
【0100】
また、本発明の実施形態および変形例としては、元画像データには存在しない、周辺画素より高濃度となっているスポット状の異常や筋傷などの検出精度も向上させることができる。周辺画素より高濃度となっているスポット状の異常や筋傷などは、周辺画素より階調値が低くなる。このような異常の場合、読取画像データ内では、異常部分で階調値が下がる。したがって、このような異常の場合、実施形態および変形例と同様に、周辺画素(背景)を0とするグラフでは、異常部分で、階調値の符号が-(マイナス)の方向に突出した形状(谷形)となる。そして、このような異常においても、平滑化処理後の差分データのグラフでは、真の異常である大きな谷形の近傍に偽異常となる小さな山形(符号が+)が現れる。このようなグラフ形状は、異常および偽異常の部分の符号が、実施形態で説明した白抜け異常と逆転しているだけである。このため、周辺画素より階調値が低い異常についても、上述した実施形態および変形例と同様の処理により、真の異常のみを検出することができる。しかも、実施形態では、処理の途中で差分データの値を絶対値化しているので、異常部分における符号の違いは考慮せずに、処理することが可能である。
【0101】
そのほか、実施形態の説明の中で使用した条件や数値などはあくまでも説明のためのものであり、本発明がこれら条件や数値に限定されるものではない。
【0102】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された構成に基づき様々な改変が可能であり、それらについても本発明の範疇である。
【符号の説明】
【0103】
1 画像形成システム、
10 画像形成装置、
11 制御部、
12 記憶部、
13 画像形成部、
14 給紙搬送部、
15 操作表示部、
19 通信部、
20 画像検査装置、
21 制御部、
210 画像解析部、
22 記憶部、
23 読取部、
24 搬送部、
29 通信部、
30 後処理装置、
31 後処理部、
201 第1平滑化フィルター、
202 第2平滑化フィルター、
203 拡張フィルター。