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  • 特許-コード付き基板の取付構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】コード付き基板の取付構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/14 20060101AFI20240402BHJP
   H05K 7/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H05K7/14 F
H05K7/00 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020140640
(22)【出願日】2020-08-24
(65)【公開番号】P2022036434
(43)【公開日】2022-03-08
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】山内 雄司
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-78262(JP,A)
【文献】特開2014-199893(JP,A)
【文献】実開平3-27079(JP,U)
【文献】特表2013-529277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/14
H05K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線用のコードが一端部から導出されたコード付き基板を電子機器筐体に取付けるコード付き基板の取付構造であって、
前記コード付き基板は、複数の貫通穴を有し、
前記電子機器筐体は、前記複数の貫通穴にそれぞれ挿通されて前記コード付き基板を保持する複数のピンを有し、
前記複数のピンのうち、前記コード付き基板の他端部側に位置するピンは、前記貫通穴の内周部との接触により前記コード付き基板の外れ止めとなる抜け止め部を有し、
前記抜け止め部は、前記コードを配線するときに前記コード付き基板に加えられる力の方向とは反対方向に向けて傾斜する傾斜面によって形成されていることを特徴とするコード付き基板の取付構造。
【請求項2】
請求項1記載のコード付き基板の取付構造において、
前記コード付き基板は、前記一端部と前記他端部とが互いに対向する辺となる矩形状に形成され、
前記コードを配線するときに前記コード付き基板に加えられる力の方向は、前記他端部から前記一端部に向かう方向であり、
前記傾斜面は、前記ピンの基端から先端に向かうにしたがって次第に前記コード付き基板の前記一端部から離れるように傾斜していることを特徴とするコード付き基板の取付構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のコード付き基板の取付構造において、
前記抜け止め部を有する前記ピンは、さらに、前記傾斜面より前記ピンの先端側に突起を有し、
前記突起は、前記ピンの先端から基端に向かうにしたがって次第に前記傾斜面の傾斜方向に突出するように形成されていることを特徴とするコード付き基板の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源基板等、コードが配線された基板を電子機器筐体に取り付けるために用いるコード付き基板の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
配線用のコードが導出されたコード付き基板を電子機器筐体に取付けるに当たっては、コードの遊動を防ぐためにコードを電子機器筐体に保持させることがある。従来では、基板に取り付けられたコネクタのコードを押さえる構造として、特許文献1に記載されているような構造が知られている。
【0003】
この特許文献1に示すコードの固定装置においては、電子機器筐体に形成された凹部と凸部とによってコードを挟む構造が採られている。このコードの固定装置によれば、コードが端子に接触したり、バタつかないように、組立時に上からコードを押さえこむようにしてコードの遊動を規制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭58-166081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1示すようにコードを押さえこむことにより、コードの接続先である基板が引っ張られ、組み立てる工程において基板が外れてしまい、組立作業が煩雑になる。これを防止するためには、基板を取り付けるために電子機器筐体にボスを形成し、ボスに基板をねじ止めするのが一般的である。しかし、この構成を採ると、ねじ分の部品点数が多くなり、コスト高になる。
【0006】
本発明の目的は、コードを押さえこんだとしても基板が外れることを防止でき、かつ部品点数の増加やコスト高にならないコード付き基板の取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコード付き基板の取付構造は、配線用のコードが一端部から導出されたコード付き基板を電子機器筐体に取付けるコード付き基板の取付構造であって、前記コード付き基板は、複数の貫通穴を有し、前記電子機器筐体は、前記複数の貫通穴にそれぞれ挿通されて前記コード付き基板を保持する複数のピンを有し、前記複数のピンのうち、前記コード付き基板の他端部側に位置するピンは、前記貫通穴の内周部との接触により前記コード付き基板の外れ止めとなる抜け止め部を有し、前記抜け止め部は、前記コードを配線するときに前記コード付き基板に加えられる力の方向とは反対方向に向けて傾斜する傾斜面によって形成されているものである。
【0008】
本発明は、前記コード付き基板の取付構造において、前記コード付き基板は、前記一端部と前記他端部とが互いに対向する辺となる矩形状に形成され、前記コードを配線するときに前記コード付き基板に加えられる力の方向は、前記他端部から前記一端部に向かう方向であり、前記傾斜面は、前記ピンの基端から先端に向かうにしたがって次第に前記コード付き基板の前記一端部から離れるように傾斜していてもよい。
【0009】
本発明は、前記コード付き基板の取付構造において、前記抜け止め部を有する前記ピンは、さらに、前記傾斜面より前記ピンの先端側に突起を有し、前記突起は、前記ピンの先端から基端に向かうにしたがって次第に前記傾斜面の傾斜方向に突出するように形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
コードの配線時にコード付き基板の一端部がコードによって引かれると、コード付き基板が一端部を中心にして傾斜し、コード付き基板の他端部がピンから抜ける方向に移動することがある。このような場合、コード付き基板の他端部側に位置するピンの傾斜面にコード付き基板の貫通穴の内周部が当接し、このピンからコード付き基板が抜けることを防ぐことができる。この抜け止めを行うにあたってねじ部材は不要である。
したがって、本発明によれば、コードを押さえこんだとしてもコード付き基板が外れることを防止でき、かつ部品点数の増加やコスト高にならないコード付き基板の取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明に係るコード付き基板の取付構造を有する電子機器筐体の一部を示す平面図である。
図2図2は、本発明に係るコード付き基板の取付構造を有する電子機器筐体の一部を示す斜視図である。
図3図3は、図1における要部のIII-III線断面図である。
図4図4は、図1における要部のIV-IV線断面図である。
図5図5は、位置決めピンの要部を拡大して示す断面図である。
図6図6は、位置決めピンの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るコード付き基板の取付構造の一実施の形態を図1図5を参照して詳細に説明する。
図1中に符号1で示すものは、電話機のロアケースである。この実施の形態においては、ロアケース1が本発明でいう「電子機器筐体」に相当する。ロアケース1には、図3に示すように、上方からアッパーケース2が被せられる。図3においては、ロアケース1の要部のみを破断して示し、ロアケース1のそれ以外の部分は二点鎖線で外形のみを示して省略している。
【0013】
このロアケース1には、図1および図2に示すように、本発明でいうコード付き基板としての第1の基板3が第1~第3の位置決めピン4~6を含むコード付き基板の取付構造7によって取付けられている。第1~第3の位置決めピン4~6の説明は後述する。
【0014】
この実施の形態による第1の基板3は、図1において左右方向に長い長方形状に形成されている。以下において、本発明を説明するうえで方向を示すにあたっては、便宜上、図1に図示されている方向で説明する。すなわち、第1の基板3の長手方向を左右方向とし、第1の基板3の部品実装面に沿う方向であって長手方向とは直交する方向を上下方向として説明する。
【0015】
第1の基板3の右側の端部であって上下方向の略中央部には、第1のコネクタ11を介して配線用コード12の一端が接続されている。以下においては、第1の基板3の右側の端部を単に一端部3aといい、第1の基板3の左側の端部を単に他端部3bという。一端部3aと他端部3bは、長方形状の第1の基板3の互いに対向する辺となる。
コード12は、第1の基板3から右下側に延び、第1の基板3から下方に離れて位置する第2の基板13に第2のコネクタ14を介して接続されている。図3に示すように、第1の基板3と第2の基板13との間には、コード12の配線経路を定めるためのコードガイド15が設けられている。
【0016】
コードガイド15は、図2に示すようにロアケース1に立設されたガイド板16と、図3に示すように、ガイド板16と対向するようにアッパーケース2に設けられたコード抜け止めリブ17とによって構成されている。ガイド板16には、コード12を通すための溝16aが形成されている。コード抜け止めリブ17は、ガイド板16との間に微小な隙間が形成されるように形成されている。この隙間は、コード12の外径より狭い。このため、溝16aにコード12を挿入した状態でロアケース1にアッパーケース2を取付けることによって、コード12の遊動がコードガイド15によって規制される。
【0017】
第1の基板3は、図1において左下側に位置する第1の位置決めピン4と、右下側に位置する第2の位置決めピン5と、上側であって左右方向の中央より僅かに右側に偏って位置する第3の位置決めピン6とによってロアケース1に取付けられている。これらの第1~第3の位置決めピン4~6は、それぞれ第1の基板3の貫通穴21に挿通され、貫通穴21の内周部との間の摩擦で第1の基板3を保持している。
【0018】
第1の位置決めピン4は、本発明でいう「コード付き基板の他端部側に位置するピン」に相当するピンで、図2に示すように、先端側から見てT字状に形成されている。詳述すると、第1の位置決めピン4は、貫通穴21の穴壁面に右側と上下両側とから対向するように形成されている。第1の位置決めピン4における、貫通穴21の穴壁面に右側から対向する部分には図4および図5に示すように、傾斜面22からなる抜け止め部23が形成されている。
【0019】
傾斜面22は、第1の位置決めピン4の基端(図5においては下端)から先端に向かうにしたがって次第に左側に位置するように(第1の基板3における第1のコネクタ11を有する一端部3aから離れるように)傾斜している。この第1の位置決めピン4の抜け止め部23は、貫通穴21の内周部に接触することにより第1の基板3の外れ止めとなる。
【0020】
第2の位置決めピン5と第3の位置決めピン6は、先端側から見て十字状に形成されている。すなわち、これらの第2および第3の位置決めピン5,6は、第1の基板3の貫通穴21の穴壁面に左右両側と上下両側とから対向するように構成されており、図4に示すように、第1の基板3の厚み方向に傾斜することなく延びている。
【0021】
このように構成されたコード付き基板の取付構造7によって第1の基板3をロアケース1に取付けるためには、先ず、第1の基板3の3つの貫通穴21に第1~第3の位置決めピン4~6を挿通させる。第1~第3の位置決めピン4~6が貫通穴21に通されることにより、第1の基板3が水平状態となってロアケース1に保持される。ここでいう水平状態とは、第1の基板3の一端部3a(右側端部)と他端部3b(左側端部)とで高低差がほとんどない状態をいう。
【0022】
その後、第1の基板3に第1のコネクタ11を介してコード12の一端を接続し、このコード12の他端を第2のコネクタ14によって第2の基板13に接続する。この配線の過程で図2に示すようにコード12の中間部をガイド板16の溝16aに挿入する。このとき、コード12が第1のコネクタ11を介して第1の基板3を引っ張るようになる。
【0023】
コード12の配線時に第1の基板3の一端部3a(図1においては右側の端部)がコード12によって他端部3bから一端部3aに向かう方向(右方)に引かれると、第1の基板3が一端部3aを中心にして傾斜し、第1の基板3の他端部3bが第1の位置決めピン4から抜ける方向に移動することがある。第1の位置決めピン4の抜け止め部23は、上述したようにコード12を配線するときに第1の基板3に加えられる力の方向(右方向)とは反対方向に向けて傾斜する傾斜面22によって形成されている。
【0024】
このため、第1の基板3がコード12によって引かれると、第1の位置決めピン4の傾斜面22に第1の基板3の貫通穴21の内周部が当接し、この第1の位置決めピン4から第1の基板3が抜けることを防ぐことができる。この抜け止めを行うにあたってねじ部材は不要である。
したがって、この実施の形態によれば、コード12を押さえこんだとしても基板が外れることを防止でき、かつ部品点数の増加やコスト高にならないコード付き基板の取付構造を提供することができる。
【0025】
この実施の形態によるコード付き基板の取付構造7に用いる第1の基板3は、一端部3aから他端部3bに向かう方向が長手方向となる長方形状に形成されている。コード12を配線するときに第1の基板3に加えられる力の方向は、主に他端部3bから一端部3aに向かう方向である。第1の位置決めピン4の傾斜面22は、第1の位置決めピン4の基端から先端に向かうにしたがって次第に第1の基板3の一端部3aから離れるように傾斜している。
このため、第1の基板3が長手方向の一端部3aを中心にして傾斜することを第1の位置決めピン4によって規制することができるから、第1の基板3の外れ止めを強固に行うことができる。
【0026】
(第1の位置決めピンの変形例)
第1の位置決めピン4は、図6に示すように構成することができる。 図6において図1図5によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0027】
図6に示す第1の位置決めピン4は、傾斜面22より先端側に突起31を有している。この突起31は、第1の位置決めピン4の先端から基端に向かうにしたがって次第に傾斜面22の傾斜方向に突出するように形成されている。
図6に示す第1の位置決めピン4を使用することにより、突起31が第1の基板3の外れ止めとして機能するから、第1の基板3をより一層強固に保持することが可能になる。
【0028】
上述した実施の形態においては、第1の基板3の部品実装面の形状が長方形状である場合の例を示した。しかし、本発明は、第1の基板3の形状にとらわれることはない。すなわち、第1の基板3は、部品実装面が正方形を含めて矩形状のものを使用することができる。正方形の第1の基板3を使用する場合は、互いに対向する辺が一端部3aと他端部3bになる。
【符号の説明】
【0029】
1…ロアケース(電子機器筐体)、3…第1の基板(コード付き基板)、3a…一端部、3b…他端部、4…第1の位置決めピン、5…第2の位置決めピン、6…第3の位置決めピン、7…コード付き基板の取付構造、12…コード、21…貫通穴、22…傾斜面、23…抜け止め部、31…突起。
図1
図2
図3
図4
図5
図6