(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20240402BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240402BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20240402BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20240402BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H01L23/36 A
H01L25/04 C
H01L23/48 G
H01L23/36 D
(21)【出願番号】P 2020141512
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石野 寛
(72)【発明者】
【氏名】三瓶 宏和
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-032879(JP,A)
【文献】特開2010-129795(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0227339(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0337613(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0102302(US,A1)
【文献】特開2007-288054(JP,A)
【文献】特開2016-104862(JP,A)
【文献】特開2019-041111(JP,A)
【文献】特開2017-108002(JP,A)
【文献】特開2003-086756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 25/07
H01L 23/48
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面(101)と、前記一面とは反対側の他面(102)と、を有する金属導体ベース(100)と、
前記金属導体ベースの前記一面に固定された第1リードフレーム(310)と、
前記金属導体ベースの前記一面に固定されると共に、前記第1リードフレームから離間して配置された第2リードフレーム(320)と、
前記金属導体ベースの前記一面に垂直な厚み方向において、前記第1リードフレームの上方に配置された第3リードフレーム(330)と、
前記厚み方向において、前記第2リードフレームの上方に配置された第4リードフレーム(340)と、
一端部(411)と、前記一端部とは反対側の他端部(412)と、を有し、前記一端部は前記第1リードフレームに一体化され、前記他端部は前記第4リードフレームに一体化され、前記第1リードフレームと前記第4リードフレームとを電気的に接続する継手部(410)と、
前記第1リードフレームと前記第3リードフレームとの間に配置され、前記第1リードフレームと前記第3リードフレームとに電気的に接続された第1パワー素子(510)と、
前記第2リードフレームと前記第4リードフレームとの間に配置され、前記第2リードフレームと前記第4リードフレームとに電気的に接続された第2パワー素子(520)と、
前記金属導体ベースの前記他面を露出させた状態で、前記金属導体ベースの一部、前記第1リードフレーム、前記第2リードフレーム、前記第1パワー素子、前記第2パワー素子、前記継手部、前記第3リードフレーム、及び前記第4リードフレームを一体的に封止するモールド樹脂部(800)と、
を含み、
前記第1リードフレームと前記金属導体ベースの前記一面との固定、及び、前記第2リードフレームと前記金属導体ベースの前記一面との固定は、ポリイミド系材料の有機絶縁皮膜(600)によってなされており、
前記有機絶縁皮膜のうちの前記金属導体ベースと前記第1リードフレームとに挟まれた部分の厚みをt
press1と定義し、前記有機絶縁皮膜のうちの前記金属導体ベースと前記第2リードフレームとに挟まれた部分の厚みをt
press2と定義し、前記有機絶縁皮膜のうちの前記金属導体ベースと前記第1リードフレームとに挟まれていない部分であると共に前記金属導体ベースと前記第2リードフレームとに挟まれていない部分の厚みをt
cast1と定義すると、
前記有機絶縁皮膜は、t
press1>t
cast1、及び、t
press2>t
cast1を満たすように形成されている、半導体装置。
【請求項2】
前記金属導体ベースの前記一面の面積は、前記第1リードフレームのうちの前記金属導体ベースの前記一面に設置される設置面(311)の面積と、前記第2リードフレームのうちの前記金属導体ベースの前記一面に設置される設置面(324)の面積と、の和の面積よりも大きくなっており、
前記第1リードフレーム及び前記第2リードフレームは、前記金属導体ベースの前記一面のうちの外縁部(103)よりも内側に配置される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記有機絶縁皮膜(600)は、前記金属導体ベースの前記一面に形成されたベース側皮膜(610)と、前記第1リードフレームのうちの前記金属導体ベースの前記一面に設置される設置面(311)に形成された第1皮膜(620)と、前記第2リードフレームのうちの前記金属導体ベースの前記一面に設置される設置面(324)に形成された第2皮膜(630)と、を有し、
前記第1皮膜の表層部及び前記第2皮膜の表層部と、前記ベース側皮膜の表層部と、が重合体を構成することによって化学的に結合される、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記有機絶縁皮膜は、ヤング率が20GPa未満であり、
前記金属導体ベースの体積をベース導体体積と定義し、前記第1リードフレームの体積と前記第2リードフレームの体積との和を実装側体積と定義すると、前記実装側体積を前記ベース導体体積で割ったことにより得られる表裏体積比は7.0以下である、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2リードフレームは、第1接続部(322)と、前記第1接続部とは反対側の第1先端部(323)と、を有する第1配線端子(321)を備え、
前記第1配線端子の前記第1接続部は、前記第2リードフレームに一体化され、
前記第1配線端子の前記第1先端部は、前記第1リードフレームと前記第2リードフレームとが配置された配置方向において前記第1リードフレームを基準として前記第2リードフレームの側とは反対側に配置され、
前記第1配線端子のうちの前記第1接続部と前記第1先端部との中間部分の一部は、前記第1リードフレーム、前記第3リードフレーム、及び前記第1パワー素子に接触しない状態で、前記第1リードフレームと前記第3リードフレームとの間に配置され、
前記第3リードフレームは、第2接続部(332)と、前記第2接続部とは反対側の第2先端部(333)と、を有する第2配線端子(331)を備え、
前記第2配線端子の前記第2接続部は、前記第3リードフレームに一体化され、
前記第2配線端子の前記第2先端部は、前記配置方向において前記第3リードフレームを基準として前記第4リードフレームの側とは反対側に配置されており、
前記モールド樹脂部は、前記第1配線端子の前記第1先端部及び前記第2配線端子の前記第2先端部を露出させた状態で、前記第1配線端子及び前記第2配線端子を封止する、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1リードフレーム、前記第2リードフレーム、前記第3リードフレーム、前記第4リードフレーム、前記継手部、前記第1パワー素子、及び前記第2パワー素子の組を3組含み、
前記3組は、前記金属導体ベースの前記一面において、前記金属導体ベースの前記一面のうちの前記第1リードフレームと前記第2リードフレームとが配置された配置方向に対して垂直な垂直方向に並べられ、
前記3組の3つの前記第2リードフレームは、1つのリードフレームとして一体的に構成され、
前記3組の3つの前記第3リードフレームは、1つのリードフレームとして一体的に構成される、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記金属導体ベース、前記一面、及び前記他面を、第1金属導体ベース(100)、第1一面(101)、及び第1他面(102)と定義し、前記有機絶縁皮膜を第1有機絶縁皮膜(600)と定義し、
第2一面(201)と、前記第2一面とは反対側の第2他面(202)と、を有する第2金属導体ベース(200)を含み、
前記第3リードフレーム及び前記第4リードフレームは、前記第2金属導体ベースの前記第2一面に互いに離間して固定され、
前記モールド樹脂部は、前記第1金属導体ベースの前記第1他面及び前記第2金属導体ベースの前記第2他面を露出させた状態で、前記第1金属導体ベースの一部、前記第1リードフレーム、前記第2リードフレーム、前記第1パワー素子、前記第2パワー素子、前記継手部、前記第3リードフレーム、前記第4リードフレーム、前記第2金属導体ベースの一部を一体的に封止し、
前記第3リードフレームと前記第2金属導体ベースの前記第2一面との固定、及び、前記第4リードフレームと前記第2金属導体ベースの前記第2一面との固定は、ポリイミド系材料の第2有機絶縁皮膜(700)によってなされており、
前記第2有機絶縁皮膜のうちの前記第2金属導体ベースと前記第3リードフレームとに挟まれた部分の厚みをt
press3と定義し、前記第2有機絶縁皮膜のうちの前記第2金属導体ベースと前記第4リードフレームとに挟まれた部分の厚みをt
press4と定義し、前記第2有機絶縁皮膜のうちの前記第2金属導体ベースと前記第3リードフレームとに挟まれていない部分であると共に前記第2金属導体ベースと前記第4リードフレームとに挟まれていない部分の厚みをt
cast2と定義すると、
前記第2有機絶縁皮膜は、t
press3>t
cast2、及び、t
press4>t
cast2を満たすように形成されている、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項8】
一面(101)と、前記一面とは反対側の他面(102)と、を有する金属導体ベース(100)と、
前記金属導体ベースの前記一面に、ポリイミド系材料の有機絶縁皮膜(600)によって固定された第1リードフレーム(310)と、
前記金属導体ベースの前記一面に前記有機絶縁皮膜によって固定されると共に、前記第1リードフレームから離間して配置された第2リードフレーム(320)と、
前記金属導体ベースの前記一面に垂直な厚み方向において、前記第1リードフレームの上方に配置された第3リードフレーム(330)と、
前記厚み方向において、前記第2リードフレームの上方に配置された第4リードフレーム(340)と、
一端部(411)と、前記一端部とは反対側の他端部(412)と、を有し、前記一端部は前記第1リードフレームに一体化され、前記他端部は前記第4リードフレームに一体化され、前記第1リードフレームと前記第4リードフレームとを電気的に接続する継手部(410)と、
前記第1リードフレームと前記第3リードフレームとの間に配置され、前記第1リードフレームと前記第3リードフレームとに電気的に接続された第1パワー素子(510)と、
前記第2リードフレームと前記第4リードフレームとの間に配置され、前記第2リードフレームと前記第4リードフレームとに電気的に接続された第2パワー素子(520)と、
前記金属導体ベースの前記他面を露出させた状態で、前記金属導体ベースの一部、前記第1リードフレーム、前記第2リードフレーム、前記第1パワー素子、前記第2パワー素子、前記継手部、前記第3リードフレーム、及び前記第4リードフレームを一体的に封止するモールド樹脂部(800)と、
を含む半導体装置の製造方法であって、
前記金属導体ベース、前記第1リードフレーム、及び前記第2リードフレームを用意する、準備工程と、
前記準備工程の後、前記金属導体ベースの前記一面にポリイミド系樹脂のベース側皮膜(610)を塗布し、前記第1リードフレームのうちの前記金属導体ベースの前記一面に設置される設置面(311)にポリイミド系樹脂の第1皮膜(620)を塗布し、前記第2リードフレームのうちの前記金属導体ベースの前記一面に設置される設置面(324)にポリイミド系樹脂の第2皮膜(630)を塗布する、塗布工程と、
前記塗布工程の後、前記ベース側皮膜、前記第1皮膜、及び前記第2皮膜を乾燥させることにより、前記ベース側皮膜、前記第1皮膜、及び前記第2皮膜を半硬化させる、乾燥成型工程と、
前記乾燥成型工程の後、前記ベース側皮膜と前記第1皮膜とを貼り合わせると共に、前記ベース側皮膜と前記第2皮膜とを貼り合わせる、貼り合わせ工程と、
前記貼り合わせ工程の後、前記ベース側皮膜、前記第1皮膜、及び前記第2皮膜を硬化させることにより、前記有機絶縁皮膜を形成する、本硬化工程と、
前記本硬化工程の後、前記厚み方向において、前記第1リードフレームの上方に前記第3リードフレームを配置すると共に、前記第2リードフレームの上方に前記第4リードフレームを配置し、前記継手部によって前記第1リードフレームと前記第4リードフレームとを電気的に接続する、接続工程と、
を含み、
前記本硬化工程では、前記有機絶縁皮膜のうちの前記金属導体ベースと前記第1リードフレームとに挟まれた部分の厚みをt
press1と定義し、前記有機絶縁皮膜のうちの前記金属導体ベースと前記第2リードフレームとに挟まれた部分の厚みをt
press2と定義し、前記有機絶縁皮膜のうちの前記金属導体ベースと前記第1リードフレームとに挟まれていない部分であると共に前記金属導体ベースと前記第2リードフレームとに挟まれていない部分の厚みをt
cast1と定義すると、t
press1>t
cast1、及び、t
press2>t
cast1を満たすように前記有機絶縁皮膜を形成する、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記塗布工程では、前記ベース側皮膜、前記第1皮膜、及び前記第2皮膜として溶媒が含まれた溶液状のものを塗布し、
前記乾燥成型工程では、前記溶媒の温度をTと定義し、前記温度Tに対する前記溶媒の蒸気圧をP
VP=10
(9.368-3477/(273.15+T))と定義し、前記ベース側皮膜、前記第1皮膜、及び前記第2皮膜が配置される真空圧力をPと定義したとき、0.01P
VP<P<P
VP、かつ、T≧100℃の条件を満たす状態で、前記ベース側皮膜、前記第1皮膜、及び前記第2皮膜を半硬化させる、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記乾燥成型工程では、前記ベース側皮膜、前記第1皮膜、及び前記第2皮膜を225℃以上、275℃以下の温度で加熱することにより、前記ベース側皮膜、前記第1皮膜、及び前記第2皮膜を半硬化させる、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記本硬化工程では、前記金属導体ベースと前記第1リードフレームとのプレス圧力が5Mpaを超える状態で、及び、前記金属導体ベースと前記第2リードフレームとのプレス圧力が5Mpaを超える状態で、前記ベース側皮膜、前記第1皮膜、及び前記第2皮膜を硬化させることにより、前記有機絶縁皮膜を形成する、請求項8ないし10のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電力変換装置としてパワーモジュールが知られている。特許文献1には、2つの絶縁基板の間に半導体デバイスが配置されたパワーモジュールが提案されている。2つの絶縁基板は、表面及び裏面の両方に形成された配線パターンを有する。2つの絶縁基板の各対向面に形成された配線パターン同士は、2つの絶縁基板の間の空間において、金属製のビアによって電気的に接続される。
【0003】
また、特許文献2には、一対の放熱ベースを備えたパワーモジュールが提案されている。一対の放熱ベースの間には、電気的に直列接続された2つの半導体デバイスが導体板に挟まれた構造が配置される。放熱ベースのうちの導体板に対向する面のサイズは、導体板のうちの放熱ベースに対向する面のサイズよりも大きい。導体板は、端子が形成された配線に接続される。導体板、配線、及び端子は、予め所望の形状に加工されたものが用いられる。
【0004】
半導体デバイス及び導体板は、導体板のうちの半導体デバイスの側とは反対側の面が露出するように、樹脂によって一次封止される。一対の放熱ベースは、放熱ベースのうちの導体板の側とは反対側が露出するように、樹脂によって二次封止される。
【0005】
上記の構成において、放熱ベースと導体板とは絶縁シートで絶縁される。絶縁シートは、まず、一次封止された導体板に熱圧着される。続いて、絶縁シートと放熱ベースとが熱圧着される。この後、二次封止が行われる。これにより、絶縁シートが放熱ベースと導体板とに挟まれた構造となる。
【0006】
特許文献2には、導体板、配線、端子が予め加工されたものが用いられていた。これに対し、特許文献3には、熱圧着の後に金属板を所望のパターンに加工することが可能な技術が提案されている。
【0007】
具体的には、絶縁シートとしての接着シートが金属箔に貼り付けられた積層板を2つ用意し、2つの積層板の接着シート同士を熱圧着することで、両面が金属箔の積層板を製造する。そして、金属箔を加工することにより、金属箔に所望のパターンを形成することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2013/0307156号明細書
【文献】国際公開第2015/025582号
【文献】特開2017-205948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在、パワーモジュールは、電力変換を必要とする機器に搭載された状態で動作する。このため、機器は、当該機器の筐体にパワーモジュールを搭載するためのスペースを必要とする。また、パワーモジュールは機器の筐体に搭載できるサイズであることを必要とする。よって、パワーモジュールの小型化が望まれている。
【0010】
しかしながら、特許文献1に示されたパワーモジュールでは、2つの絶縁基板の配線パターン同士の電気的な接続がビアによって行われる。このため、絶縁基板の表裏面に半導体デバイスのための領域だけでなく、ビアのための接続領域も確保する必要がある。よって、絶縁基板の表裏面の面方向のサイズを小さくすることが難しい。
【0011】
また、小型化のために、パワーモジュールに複数の半導体デバイスを集約することが必要になる。しかし、特許文献1では、各絶縁基板の表裏面に配線パターンが形成されているので、複数の半導体デバイスの集約に伴って配線パターンが複雑化してしまう。これにより、配線パターンの線膨張係数と絶縁基板の線膨張係数との差によって絶縁基板に反りが発生してしまう。さらに、各絶縁基板の表裏面に形成された配線パターンの粗密の差によっても各絶縁基板に反りが発生してしまう。このため、パワーモジュールに複数の半導体デバイスを集約することが難しい。
【0012】
一方、特許文献2に示されたパワーモジュールでは、2つの半導体デバイスを集約することができる。しかし、放熱ベースのうちの導体板に対向する面のサイズと、導体板のうちの放熱ベースに対向する面のサイズと、が異なる。このため、絶縁シートのうちの放熱ベースと導体板との両方に挟まれない部分は熱圧着時に圧力が印加されないので、当該挟まれない部分は未接着となる。そして、当該挟まれない部分は、導体板から加圧されないことから、経年劣化に伴って絶縁シートから剥離する起点になってしまう。
【0013】
また、絶縁シートのうちの放熱ベースと導体板との両方に挟まれない部分は導体板によって拘束されないので、放熱ベースと導体板との両方に挟まれる部分よりも厚い。このため、絶縁シートのうちの放熱ベースと導体板との両方に挟まれない部分には樹脂封止による拘束力が働きにくくなるので、当該挟まれない部分が放熱ベースから剥がれ易くなる。したがって、2つの半導体デバイスを集約できるものの、パワーモジュールの信頼性を確保することが難しい。
【0014】
他方、特許文献3に示された積層基板では、金属箔に対して機械加工やエッチング処理を行うことによって金属箔をパターン化することができる。このため、予めパターン化された導体板等の金属部品を用いるよりも平面方向のサイズを小さくすることができる。しかし、金属箔が厚い場合、エッチング処理のみで加工を行うと、パターン化に長時間を要してしまう。また、長時間のエッチングによってパターンの開口部の角部が丸まってしまう。
【0015】
そこで、機械加工によって金属箔をパターン化することが考えられる。しかし、機械加工だけでは金属箔を完全に除去することが難しいので、機械加工の後にエッチング処理を行うことになる。このため、パターン化のためにコストが掛かってしまう。よって、コストを掛けずに小型化することが難しい。
【0016】
なお、金属箔のパターン化によって接着シートの一部が金属箔から露出するので、接着シートには2つの金属箔に挟まれない未接着の部分が生じる。このため、上記と同様に、接着シートのうちの2つの金属箔に挟まれない部分が金属箔から剥離しやすくなってしまう。
【0017】
本発明は上記点に鑑み、複数のパワー素子を集約して小型化すること、絶縁皮膜の剥がれを抑制することで信頼性を確保すること、及びコストを低減することができる半導体装置を提供することを第1の目的とする。また、当該半導体装置の製造方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、半導体装置は、金属導体ベース(100)、第1リードフレーム(310)、第2リードフレーム(320)、第3リードフレーム(330)、第4リードフレーム(340)、を含む。また、半導体装置は、継手部(410)、第1パワー素子(510)、第2パワー素子(520)、及びモールド樹脂部(800)を含む。
【0019】
金属導体ベース(100)は、一面(101)と、一面とは反対側の他面(102)と、を有する。第1リードフレームは、金属導体ベースの一面に固定される。第2リードフレームは、金属導体ベースの一面に固定されると共に、第1リードフレームから離間して配置される。第3リードフレームは、金属導体ベースの一面に垂直な厚み方向において、第1リードフレームの上方に配置される。第4リードフレームは、厚み方向において、第2リードフレームの上方に配置される。
【0020】
継手部は、一端部(411)と、一端部とは反対側の他端部(412)と、を有する。一端部は第1リードフレームに一体化される。他端部は第4リードフレームに一体化される。継手部は、第1リードフレームと第4リードフレームとを電気的に接続する。
【0021】
第1パワー素子は、第1リードフレームと第3リードフレームとの間に配置される。第1パワー素子は、第1リードフレームと第3リードフレームとに電気的に接続される。第2パワー素子は、第2リードフレームと第4リードフレームとの間に配置される。第2パワー素子は、第2リードフレームと第4リードフレームとに電気的に接続される。
【0022】
モールド樹脂部は、金属導体ベースの他面を露出させた状態で、金属導体ベースの一部、第1リードフレーム、第2リードフレーム、第1パワー素子、第2パワー素子、継手部、第3リードフレーム、及び第4リードフレームを一体的に封止する。
【0023】
第1リードフレームと金属導体ベースの一面との固定、及び、第2リードフレームと金属導体ベースの一面との固定は、ポリイミド系材料の有機絶縁皮膜(600)によってなされている。
【0024】
有機絶縁皮膜のうちの金属導体ベースと第1リードフレームとに挟まれた部分の厚みをtpress1と定義する。有機絶縁皮膜のうちの金属導体ベースと第2リードフレームとに挟まれた部分の厚みをtpress2と定義する。有機絶縁皮膜のうちの金属導体ベースと第1リードフレームとに挟まれていない部分であると共に金属導体ベースと第2リードフレームとに挟まれていない部分の厚みをtcast1と定義する。
【0025】
有機絶縁皮膜は、tpress1>tcast1、及び、tpress2>tcast1を満たすように形成されている。
【0026】
請求項8に記載の発明では、準備工程において、金属導体ベース(100)、第1リードフレーム(310)、及び第2リードフレーム(320)を用意する。
【0027】
準備工程の後、塗布工程において、金属導体ベース(100)の一面(101)にポリイミド系樹脂のベース側皮膜(610)を塗布する。第1リードフレームのうちの金属導体ベースの一面に設置される設置面(311)にポリイミド系樹脂の第1皮膜(620)を塗布する。第2リードフレームのうちの金属導体ベースの一面に設置される設置面(324)にポリイミド系樹脂の第2皮膜(630)を塗布する。
【0028】
塗布工程の後、乾燥成型工程において、ベース側皮膜、第1皮膜、及び第2皮膜を乾燥させることにより、ベース側皮膜、第1皮膜、及び第2皮膜を半硬化させる。
【0029】
乾燥成型工程の後、貼り合わせ工程において、ベース側皮膜と第1皮膜とを貼り合わせると共に、ベース側皮膜と第2皮膜とを貼り合わせる。
【0030】
貼り合わせ工程の後、本硬化工程において、ベース側皮膜、第1皮膜、及び第2皮膜を硬化させることにより、有機絶縁皮膜(600)を形成する。
【0031】
本硬化工程の後、接続工程では、金属導体ベースの一面に垂直な厚み方向において、第1リードフレームの上方に第3リードフレームを配置すると共に、第2リードフレームの上方に第4リードフレームを配置する。そして、継手部によって第1リードフレームと第4リードフレームとを電気的に接続する。
【0032】
本硬化工程では、有機絶縁皮膜のうちの金属導体ベースと第1リードフレームとに挟まれた部分の厚みをtpress1と定義し、有機絶縁皮膜のうちの金属導体ベースと第2リードフレームとに挟まれた部分の厚みをtpress2と定義し、有機絶縁皮膜のうちの金属導体ベースと第1リードフレームとに挟まれていない部分であると共に金属導体ベースと第2リードフレームとに挟まれていない部分の厚みをtcast1と定義すると、tpress1>tcast1、及び、tpress2>tcast1を満たすように有機絶縁皮膜を形成する。
【0033】
これによると、金属導体ベースの一面に平行な面方向のうちの第1リードフレームと第2リードフレームとが配置された配置方向及び厚み方向において位置が異なる第1リードフレームと第4リードフレームとが継手部によって接続される。これにより、第1リードフレームと第4リードフレームとを最短距離で電気的に接続することができる。したがって、配置方向において、複数のパワー素子を集約した半導体装置を小型化することができる。
【0034】
また、第1リードフレーム及び第2リードフレームと金属導体ベースとがポリイミド系材料の有機絶縁皮膜によって固定される。このため、第1リードフレーム及び第2リードフレームの元となる金属板に対する機械加工やエッチング等の処理は不要である。したがって、半導体装置のコストを低減することができる。
【0035】
さらに、有機絶縁皮膜のうちの第1リードフレーム及び第2リードフレームに挟まれていない部分の厚みが、第1リードフレーム及び第2リードフレームに挟まれている部分の厚みよりも薄い。このため、有機絶縁皮膜のうちの第1リードフレーム及び第2リードフレームに挟まれていない部分に対するモールド樹脂部による拘束力が働きやすくなるので、当該部分の剥がれを抑制することができる。したがって、半導体装置の信頼性を確保することができる。
【0036】
なお、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】第1実施形態に係る半導体装置の斜視図である。
【
図5】第1金属導体ベース、第1リードフレーム、第2リードフレーム、第5リードフレーム、第7リードフレームの斜視図である。
【
図6】第1リードフレームの側面及び第2リードフレームの側面を見た図である。
【
図7】第3リードフレーム、第1配線端子、及び第2配線端子を示した平面図である。
【
図8】第1有機絶縁皮膜を示した拡大断面図である。
【
図9】第2有機絶縁皮膜を示した拡大断面図である。
【
図14】ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸の生成を示した図である。
【
図15】貼り合わせ工程を説明するための図である。
【
図16】ポリイミド膜の生成を説明するための図である。
【
図17】本硬化工程においてプレス圧力を印加しない部分を示した図である。
【
図18】プレス圧力とせん断強度との関係を示した図である。
【
図19】本硬化工程においてプレス圧力による加圧部と非加圧部とを示した図である。
【
図20】温度ストレス発生時の基板の反りを説明するための図である。
【
図21】基板の素材の機械物性を説明するための図である。
【
図22】表裏体積比と基板の反りとの関係を示した図である。
【
図23】第2実施形態に係る乾燥成型工程において、各皮膜の乾燥温度とせん断強度との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0039】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図を参照して説明する。本実施形態に係る半導体装置は、例えばインバータ装置等の電力変換装置に適用される。
【0040】
図1~
図8に示されるように、半導体装置1は、第1金属導体ベース100、第2金属導体ベース200、第1~第8リードフレーム310~380、及び第1~第3継手部410~430を備える。半導体装置1は、第1~第6パワー素子510~560、第1有機絶縁皮膜600、第2有機絶縁皮膜700、及びモールド樹脂部800を備える。
【0041】
図2に示されるように、第1金属導体ベース100は、第1一面101と、第1一面101とは反対側の第1他面102と、を有する。第2金属導体ベース200は、第2一面201と、第2一面201とは反対側の第2他面202と、を有する。各金属導体ベース100、200は、各リードフレーム310~340の熱を受け取って外部に放出する。各金属導体ベース100、200は、例えばCu等の金属板である。
【0042】
各リードフレーム310~340は、各パワー素子510、520の熱を受け取って各金属導体ベース100、200に放出するヒートシンクである。また、各リードフレーム310~340は、各パワー素子510、520に電力を供給する配線である。各リードフレーム310~340は、例えばCu等の金属ブロックである。
【0043】
第1リードフレーム310は、ポリイミド系材料の第1有機絶縁皮膜600によって第1金属導体ベース100の第1一面101に固定される。第2リードフレーム320は、第1有機絶縁皮膜600によって第1金属導体ベース100の第1一面101に固定されると共に、第1リードフレーム310から離間して配置される。
【0044】
第1リードフレーム310及び第2リードフレーム320は、第1金属導体ベース100の第1一面101に平行な面方向のうちの一方向である配置方向に配置される。
【0045】
第3リードフレーム330は、第1金属導体ベース100の第1一面101に垂直な厚み方向において、第1リードフレーム310の上方に配置される。第3リードフレーム330は、第1リードフレーム310と対を成す。第3リードフレーム330は、ポリイミド系材料の第2有機絶縁皮膜700によって第2金属導体ベース200の第2一面201に固定される。
【0046】
第4リードフレーム340は、厚み方向において、第2リードフレーム320の上方に配置される。第4リードフレーム340は、第2リードフレーム320と対を成す。第4リードフレーム340は、第2有機絶縁皮膜700によって第2金属導体ベース200の第2一面201に固定される。第4リードフレーム340は、第3リードフレーム330から離間して配置される。
【0047】
第1継手部410は、第1リードフレーム310と第4リードフレーム340とを電気的に接続する配線である。第1継手部410は、第1一端部411と、第1一端部411とは反対側の第1他端部412と、を有する。第1一端部411は、第1リードフレーム310に一体化される。第1他端部412は、第4リードフレーム340に一体化される。第1継手部410は、第1リードフレーム310と第4リードフレーム340との間の空間部を、配置方向及び厚み方向に横切る。これにより、第1リードフレーム310と第4リードフレーム340とを最短距離で接続することができる。
【0048】
第1パワー素子510及び第2パワー素子520は、IGBTやパワーMOSトランジスタ等の半導体素子が形成された半導体チップである。第1パワー素子510は、複数の第1信号端子511を有する。各信号端子511は、半導体チップのパッドに電気的に接続される。第2パワー素子520は、複数の第2信号端子521を有する。各信号端子521は、半導体チップのパッドに電気的に接続される。各信号端子511、521は、制御信号が外部装置から入力される。
【0049】
第1パワー素子510は、第1リードフレーム310と第3リードフレーム330との間に配置される。第1パワー素子510は、はんだ512を介して第1リードフレーム310に電気的及び熱的に接続される。第1パワー素子510の上には、はんだ513を介してCu等のヒートシンク514が電気的及び熱的に接続される。ヒートシンク514は、はんだ515を介して第3リードフレーム330に電気的及び熱的に接続される。
【0050】
第2パワー素子520は、第2リードフレーム320と第4リードフレーム340との間に配置される。第2パワー素子520は、はんだ522を介して第2リードフレーム320に電気的及び熱的に接続される。第2パワー素子520の上には、はんだ523を介してCu等のヒートシンク524が電気的及び熱的に接続される。ヒートシンク524は、はんだ525を介して第4リードフレーム340に電気的及び熱的に接続される。
【0051】
本実施形態では、半導体装置1は、上記の
図2に示された各リードフレーム310~340、第1継手部410、第1パワー素子510、及び第2パワー素子520の組を3組含む。3組は、第1金属導体ベース100の第1一面101において、配置方向に対して垂直な垂直方向に並べられる。また、
図5に示されるように、3組の3つの第2リードフレーム320は、1つのリードフレームとして一体的に構成される。同様に、3組の3つの第3リードフレーム330は、1つのリードフレームとして一体的に構成される。
【0052】
図3には、各リードフレーム320、330、350、360、第2継手部420、第3パワー素子530、及び第4パワー素子540の組が示されている。
図4には、各リードフレーム320、330、370、380、第3継手部430、第5パワー素子550、及び第6パワー素子560の組が示されている。第5リードフレーム350及び第7リードフレーム370が、上記の第1リードフレーム310に対応する。第6リードフレーム360及び第8リードフレーム380が、上記の第4リードフレーム340に対応する。第2継手部420及び第3継手部430が、上記の第1継手部410に対応する。第3パワー素子530及び第5パワー素子550が、上記の第1パワー素子510に対応する。第4パワー素子540及び第6パワー素子560が、上記の第2パワー素子520に対応する。
【0053】
また、第3パワー素子530は、ヒートシンク531に接続される。第3パワー素子530は、複数の第3信号端子532を有する。第4パワー素子540は、ヒートシンク541に接続される。第4パワー素子540は、複数の第4信号端子542を有する。第5パワー素子550は、ヒートシンク551に接続される。第5パワー素子550は、複数の第5信号端子552を有する。第6パワー素子560は、ヒートシンク561に接続される。第6パワー素子560は、複数の第6信号端子562を有する。
【0054】
すなわち、半導体装置1は、6個のパワー素子510~560が1つにパッケージ化される。上記の構成によると、第1パワー素子510と第2パワー素子520とが直列接続される。第3パワー素子530と第4パワー素子540とが直列接続される。第5パワー素子550と第6パワー素子560とが直列接続される。各パワー素子520、540、560が例えば上アームを構成し、各パワー素子510、530、550が例えば下アームを構成する。そして、上アームと下アームとの各中間電位が、
図1に示された第1出力端子570、第2出力端子571、及び第3出力端子572を介して外部に出力される。
【0055】
図5に示されるように、第2リードフレーム320は、2本の第1配線端子321を備える。各第1配線端子321は、第1接続部322と、第1接続部322とは反対側の第1先端部323と、を有する。
【0056】
一方の第1配線端子321の第1接続部322は、垂直方向において、第1リードフレーム310と第5リードフレーム350との間の上方に位置すると共に、第2リードフレーム320に一体化される。一方の第1配線端子321の第1先端部323は、配置方向において第1リードフレーム310及び第5リードフレーム350を基準として第2リードフレーム320の側とは反対側に配置される。
【0057】
図6に示されるように、一方の第1配線端子321の第1接続部322は、厚み方向に折れ曲がっている。これにより、一方の第1配線端子321のうちの第1接続部322と第1先端部323との中間部分の一部は、各リードフレーム310、330、350、及び各パワー素子510、530に接触しない状態で、各リードフレーム310、330、350の間に配置される。
【0058】
他方の第1配線端子321の第1接続部322は、垂直方向において、第5リードフレーム350と第7リードフレーム370との間の上方に位置すると共に、第2リードフレーム320に一体化される。他方の第1配線端子321の第1先端部323は、配置方向において第5リードフレーム350及び第7リードフレーム370を基準として第2リードフレーム320の側とは反対側に配置される。
【0059】
他方の第1配線端子321の第1接続部322は、厚み方向に折れ曲がっている。これにより、他方の第1配線端子321のうちの第1接続部322と第1先端部323との中間部分の一部は、各リードフレーム330、350、370、及び各パワー素子530、550に接触しない状態で、各リードフレーム330、350、370の間に配置される。
【0060】
図7に示されるように、第3リードフレーム330は、2本の第2配線端子331を備える。各第2配線端子331は、第2接続部332と、第2接続部332とは反対側の第2先端部333と、を有する。
【0061】
一方の第2配線端子331の第2接続部332は、第3リードフレーム330のうちの第4リードフレーム340と第6リードフレーム360との間に対応する部分に一体化される。一方の第2配線端子331の第2先端部333は、配置方向において第3リードフレーム330を基準として第4リードフレーム340の側とは反対側に配置される。一方の第2配線端子331のうちの第2接続部332と第2先端部333との中間部分の一部は、第1パワー素子510及び第2パワー素子520には接触しない。
【0062】
他方の第2配線端子331の第2接続部332は、第3リードフレーム330のうちの第6リードフレーム360と第8リードフレーム380との間に対応する部分に一体化される。他方の第2配線端子331の第2先端部333は、配置方向において第3リードフレーム330を基準として第4リードフレーム340の側とは反対側に配置される。他方の第2配線端子331のうちの第2接続部332と第2先端部333との中間部分の一部は、第3パワー素子530及び第5パワー素子550には接触しない。
【0063】
各第1配線端子321及び各第2配線端子331は、各パワー素子510~560に電源を供給するための端子である。各第1配線端子321及び各第2配線端子331は、一方が各パワー素子510~560の電源端子であり、他方がGND端子である。
【0064】
モールド樹脂部800は、各金属導体ベース100、200の各他面102、202を露出させた状態で、各金属導体ベース100、200の一部、各リードフレーム310~380、各パワー素子510~560、及び各継手部410~430を一体的に封止する。また、モールド樹脂部800は、第1配線端子321の第1先端部323及び第2配線端子331の第2先端部333を露出させた状態で、第1配線端子321及び第2配線端子331を封止する。モールド樹脂部800は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で構成される。なお、「露出させた状態で」とは、覆わないように、という意味である。
【0065】
第1有機絶縁皮膜600は、第1金属導体ベース100の第1一面101と各リードフレーム310、320、350、370とを固定する。第1有機絶縁皮膜600は、第1金属導体ベース100の第1一面101と各リードフレーム310、320、350、370とを熱的に接続する一方、電気的に絶縁する。
【0066】
図8に示されるように、第1有機絶縁皮膜600は、第1ベース側皮膜610、第1皮膜620、及び第2皮膜630を有する。第1ベース側皮膜610は、第1金属導体ベース100の第1一面101の全体に形成される。第1皮膜620は、各リードフレーム310、350、370のうちの第1金属導体ベース100の第1一面101に設置される各設置面311、351、371の全体に形成される。第2皮膜630は、第2リードフレーム320のうちの第1金属導体ベース100の第1一面101に設置される設置面324の全体に形成される。第1皮膜620の表層部及び第2皮膜630の表層部と、第1ベース側皮膜610の表層部と、が重合体を構成することによって化学的に結合される。
【0067】
ここで、第1有機絶縁皮膜600のうちの第1金属導体ベース100と第1リードフレーム310とに挟まれた部分の厚みをtpress1と定義する。第1有機絶縁皮膜600のうちの第1金属導体ベース100と第2リードフレーム320とに挟まれた部分の厚みをtpress2と定義する。さらに、第1有機絶縁皮膜600のうちの第1金属導体ベース100と第1リードフレーム310とに挟まれていない部分であると共に第1金属導体ベース100と第2リードフレーム320とに挟まれていない部分の厚みをtcast1と定義する。そして、第1有機絶縁皮膜600は、tpress1>tcast1、及び、tpress2>tcast1を満たすように形成されている。
【0068】
なお、第1有機絶縁皮膜600の厚みtpress1は、第1有機絶縁皮膜600のうちの第1金属導体ベース100と第5リードフレーム350とに挟まれた部分、及び、第1金属導体ベース100と第7リードフレーム370とに挟まれた部分にも対応する。したがって、上記の関係は第5リードフレーム350及び第7リードフレーム370についても成立する。
【0069】
第2有機絶縁皮膜700は、第2金属導体ベース200の第2一面201と各リードフレーム330、340、360、380とを固定する。第2有機絶縁皮膜700は、第2金属導体ベース200の第2一面201と各リードフレーム330、340、360、380とを熱的に接続する一方、電気的に絶縁する。
【0070】
図9に示されるように、第2有機絶縁皮膜700は、第2ベース側皮膜710、第3皮膜720、及び第4皮膜730を有する。第2ベース側皮膜710は、第2金属導体ベース200の第2一面201の全体に形成される。第3皮膜720は、第3リードフレーム330のうちの第2金属導体ベース200の第2一面201に設置される設置面334の全体に形成される。第4皮膜730は、各リードフレーム340、360、380のうちの第2金属導体ベース200の第2一面201に設置される各設置面341、361、381の全体に形成される。第3皮膜720の表層部及び第4皮膜730の表層部と、第2ベース側皮膜710の表層部と、が重合体を構成することによって化学的に結合される。
【0071】
ここで、第2有機絶縁皮膜700のうちの第2金属導体ベース200と第3リードフレーム330とに挟まれた部分の厚みをtpress3と定義する。第2有機絶縁皮膜700のうちの第2金属導体ベース200と第4リードフレーム340とに挟まれた部分の厚みをtpress4と定義する。第2有機絶縁皮膜700のうちの第2金属導体ベース200と第3リードフレーム330とに挟まれていない部分であると共に第2金属導体ベース200と第4リードフレーム340とに挟まれていない部分の厚みをtcast2と定義する。そして、第2有機絶縁皮膜700は、tpress3>tcast2、及び、tpress4>tcast2を満たすように形成されている。
【0072】
なお、厚みtpress4は、第2有機絶縁皮膜700のうちの第2金属導体ベース200と第6リードフレーム360とに挟まれた部分、及び、第2金属導体ベース200と第8リードフレーム380とに挟まれた部分にも対応する。したがって、上記の関係は第6リードフレーム360及び第8リードフレーム380についても成立する。
【0073】
各有機絶縁皮膜600、700のうちの厚みtcast1、tcast2の部分は、モールド樹脂部800と接触する部分であるので、薄いほどモールド樹脂部800の拘束力が働く。また、各有機絶縁皮膜600、700のうちの厚みtpress1、tpress2、tpress3、tpress4は、絶縁保証部であるため、薄いほどモールド樹脂部800の拘束力が働く。よって、各有機絶縁皮膜600、700と各金属導体ベース100、200との剥離が起こりにくくなる。
【0074】
厚みtpress1、tpress2、tpress3、tpress4は、例えば5μm~50μmである。厚みtcast1、tcast2は、例えば10μm~100μmである。各有機絶縁皮膜600、700は、AFCAST法(Align Faces of solvent-CASTing films and harden Method)によって形成される。
【0075】
各リードフレーム310、350、370のうちの第1金属導体ベース100の第1一面101に設置される設置面311、351、371の第1面積と定義する。また、第2リードフレーム320のうちの第1金属導体ベース100の第一面101に設置される設置面324の第2面積と定義する。
【0076】
そして、
図5に示されるように、第1金属導体ベース100の第1一面101の面積は、第1面積と第2面積との和の面積よりも大きくなっている。また、第1リードフレーム310及び第2リードフレーム320は、第1金属導体ベース100の第1一面101のうちの外縁部103よりも内側に配置される。
【0077】
これによると、各リードフレーム310、320、350、370は絶縁体である第1有機絶縁皮膜600に囲まれるので、各リードフレーム310、320、350、370の絶縁性を確保することができる。上記の関係は、第2金属導体ベース200の第2一面201の面積と各リードフレーム330、340、360、380の面積との間についても成立する。以上が、本実施形態に係る半導体装置1の全体構成である。
【0078】
次に、半導体装置1の製造方法について説明する。本実施形態では、AFCAST工法を用いて各金属導体ベース100、200と各リードフレーム310~380とを接着する。具体的には、
図10に示されるように、銅板を用意する準備工程、塗布工程、乾燥成型工程、貼り合わせ工程、本硬化工程の順に行う。
【0079】
まず、準備工程では、銅板をプレス加工することで、各金属導体ベース100、200及び各リードフレーム310~380を用意する。例えば、プレス加工の際に第1継手部410を第1リードフレーム310に一体形成する。第2継手部420及び第3継手部430も同様である。また、各第1配線端子321を第2リードフレーム320に一体形成する。各第2配線端子331を第3リードフレーム330に一体形成する。
【0080】
続いて、塗布工程では、
図11に示されるように第1金属導体ベース100の第1一面101に絶縁材料であるポリイミド系樹脂の第1ベース側皮膜610を塗布する。
図12に示されるように、各リードフレーム310、350、370の各設置面311、351、371にポリイミド系樹脂の第1皮膜620を塗布する。第2リードフレーム320の設置面324にポリイミド系樹脂の第2皮膜630を塗布する。
【0081】
ポリイミド系樹脂とは、酸無水物とジアミンとを所定のモル比で重合したポリアミック酸をN,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン(NMP)等の有機溶媒で溶液化したものである。酸無水物は、例えば、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、エチレングリコールビストリメリート二無水物等である。ジアミンは、ジアミノジフェニルエーテル、フェニレンジアミン、ポリテトラメチレンオキシド?ジ?p?アミノベンゾエート等である。ポリイミド系樹脂として、アミド結合をポリイミド鎖に導入したポリアミドイミド、ポリシロキサン構造を導入したポリイミドシロキサン等を使用しても良い。
【0082】
塗布の方法は、溶液キャスト法、押し出し法、スタンプ転写法、スプレー法、キャストとスピンナーによる方法等を採用できる。以上のように、塗布工程では、第1ベース側皮膜610、第1皮膜620、及び第2皮膜630として溶媒が含まれた溶液状のものを塗布する。
【0083】
なお、第2金属導体ベース200の第2一面201及び各リードフレーム330、340、360、380にも、上記と同様に、ポリイミド系樹脂の皮膜をそれぞれ塗布する。
【0084】
塗布工程の後、乾燥成型工程では、第1ベース側皮膜610、第1皮膜620、及び第2皮膜630を乾燥させることにより、第1ベース側皮膜610、第1皮膜620、及び第2皮膜630を半硬化させる。本実施形態では、0.01PVP<P<PVP、かつ、T≧100℃の条件を満たす状態で、第1ベース側皮膜610、第1皮膜620、及び第2皮膜630を半硬化させる。
【0085】
P
VPは、溶媒としてNMPを採用した場合のNMPの温度をTと定義し、温度Tに対するNMPの蒸気圧をP
VP=10
(9.368-3477/(273.15+T))と定義したときに得られる値である。蒸気圧は、溶媒が蒸発する圧力である。P
VPの式は、実験により算出された近似式である。
図13は、近似式から得られたP
VPの例を示している。Pは、第1ベース側皮膜610、第1皮膜620、及び第2皮膜630が配置されるチャンバの真空圧力の値である。上記の条件でポリイミド系樹脂を一定時間乾燥させると、ポリイミド系樹脂を本硬化させずに溶媒であるNMPを蒸発させることができる。
図14に示されるように、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸が生成される。
【0086】
なお、第2ベース側皮膜710、第3皮膜720、及び第4皮膜730についても、上記の条件に従って半硬化させる。
【0087】
貼り合わせ工程では、第1ベース側皮膜610と第1皮膜620とを貼り合わせると共に、第1ベース側皮膜610と第2皮膜630とを貼り合わせる。貼り合わせ時は、半硬化状態であるモノマー面を互いに接触させる。
【0088】
各リードフレーム310、350、370には各継手部410~430が設けられている。よって、
図15に示されるように、機械的干渉を避けるために先に各リードフレーム310、350、370を第1金属導体ベース100に搭載した後、第2リードフレーム320を第1金属導体ベース100に搭載する。
【0089】
なお、第2金属導体ベース200と各リードフレーム330、340、360、380との貼り合わせも、上記と同様に行う。
【0090】
この後、本硬化工程では、第1ベース側皮膜610、第1皮膜620、及び第2皮膜630を硬化させることにより、第1有機絶縁皮膜600を形成する。
図16に示されるように、ポリアミック酸を例えば200℃以上で加熱するか、または触媒を用いて脱水・環化することでポリイミド膜を生成する。ポリイミド膜が各有機絶縁皮膜600、700となる。
【0091】
本実施形態では、第1金属導体ベース100と各リードフレーム310、320、350、370とにプレス圧力を印加した状態で第1ベース側皮膜610、第1皮膜620、及び第2皮膜630を硬化させる。
図17に示されるように、各継手部410~430及び第1配線端子321を考慮して、斜線部を除いた部分にプレス圧力を印加する。
【0092】
ここで、第1金属導体ベース100と各リードフレーム310、320、350、370とのプレス圧力が5Mpaを超える状態で、第1ベース側皮膜610、第1皮膜620、及び第2皮膜630を硬化させる。第1ベース側皮膜610、第1皮膜620、及び第2皮膜630の表面は、少なからず凹凸がある。しかしながら、プレス圧力を印加した状態で第1ベース側皮膜610、第1皮膜620、及び第2皮膜630を硬化させることで、表面ラフネスの影響を低減することができる。
【0093】
発明者らは、プレス圧力を変化させたときのせん断強度を調べた。せん断強度は、各リードフレーム310、320、350、370に力を加えたときに各リードフレーム310、320、350、370が第1金属導体ベース100を滑る力の強度である。その結果を
図18に示す。
図18に示されるように、プレス圧力が5MPa~10Mpaの範囲では充分なせん断強度が得られた。よって、5Mpaを超えるプレス圧力を印加することが望ましい。
【0094】
図19に示されるように、本硬化工程では、第1ベース側皮膜610のうちの第1金属導体ベース100と各リードフレーム310、320、350、370とに挟まれる部分には、プレス圧力は印加される。これに対し、第1ベース側皮膜610のうちの第1金属導体ベース100と各リードフレーム310、320、350、370とに挟まれない部分には、プレス圧力は印加されない。当該挟まれない部分には、均等圧が掛かる冶具を用いることで解決する。すなわち、冶具の重心に荷重を掛ける。
【0095】
そして、本硬化工程では、第1有機絶縁皮膜600の厚みが、tpress1>tcast1、及び、tpress2>tcast1を満たすように第1有機絶縁皮膜600を形成する。
【0096】
なお、第2金属導体ベース200と各リードフレーム330、340、360、380との間の皮膜についても、上記と同様に本硬化を行うことで厚みの条件を満たす第2有機絶縁皮膜700を形成する。また、プレス圧力を下げる方法として、熱可塑性樹脂を各有機絶縁皮膜600、700として採用しても良い。
【0097】
本硬化工程の後、各パワー素子510~560を実装する実装工程を行う。各リードフレーム310、350、370の上に各パワー素子510、530、550を実装すると共に、第2リードフレーム320の上に各パワー素子520、540、560を実装する。また、各パワー素子510~560に各信号端子511、521、532、542、552、562を実装すると共に、各パワー素子510~560の上に各ヒートシンク514、524、531、541、551、561を実装する。さらに、各出力端子570~572を用意し、各出力端子570~572と各パワー素子510~560とを接続する。
【0098】
この後、接続工程を行う。厚み方向において、各リードフレーム310、320、350、370の上方に各リードフレーム330、340、360、380を配置する。そして、各ヒートシンク514、524、531、541、551、561に各リードフレーム330、340、360、380を接合する。また、各リードフレーム310、350、370の各継手部410~430と各リードフレーム340、360、380とを電気的に接続する。
【0099】
続いて、モールド樹脂部800を形成するモールド成型工程を行う。まず、上記の接合体を金型に固定する。金型のゲートを介して溶融した樹脂材料を流し込み、樹脂材料を硬化させることでモールド樹脂部800を形成する。こうして、半導体装置1が完成する。
【0100】
発明者らは、上記の方法で製造された半導体装置1において、第1金属導体ベース100の反りについて調べた。
図20に示されるように、温度ストレス発生時、絶縁部900の剛性が高い場合、表側導体910と裏側導体920との応力差で反りが発生する。絶縁部900が各有機絶縁皮膜600、700に対応し、表側導体910が各金属導体ベース100、200に対応し、裏側導体920が各リードフレーム310~380に対応する。
【0101】
そこで、第1有機絶縁皮膜600の硬さ、すなわちヤング率を変化させたときの第1金属導体ベース100の反りをシミュレーションにより調べた。
図21に示されるように、第1金属導体ベース100の材料として、Cu、PI、SiNの3種類を対象とした。
【0102】
Cuについては第1金属導体ベース100のベース板厚を変化させた。すなわち、表裏体積比を変化させた。表裏体積比は、第1金属導体ベース100の体積をベース導体体積と定義し、各リードフレーム310、320、350、370の体積の和を実装側体積と定義すると、実装側体積をベース導体体積で割ったことにより得られる。また、第1有機絶縁皮膜600のヤング率を4GPa、8GPa、20GPaに変化させた。PI及びSiNについては、ベース板厚の値を固定した。また、温度特性無しの条件で反りの解析を行った。その結果を
図22に示す。
【0103】
図22に示されるように、Cu-SiNの組は、SiN基板に大きな反りが発生した。一方、Cu-PIの組は、PI基板の反りは小さかった。他方、Cu-Cuの組は、第1有機絶縁皮膜600のヤング率が20GPa未満であり、表裏体積比が7.0以下である場合、良好な接続性を得られることがわかった。これは、第1有機絶縁皮膜600が10GPa以下の低弾性であるので、剛性の強い第1金属導体ベース100の変化に倣う。このため、複雑な金属パターンに対しても第1金属導体ベース100は反らない。よって、上記の条件を満たすことで、はんだによる各パワー素子510~560の良好な接続性を確保できる。
【0104】
上記の関係は、第2金属導体ベース200、各リードフレーム330、340、360、380、及び第2有機絶縁皮膜700についても同じである。
【0105】
以上説明したように、配置方向及び厚み方向において、位置が異なる各リードフレーム310、350、370と各リードフレーム340、360、380とが各継手部410~430によって接続される。これにより、各リードフレーム310、350、370と各リードフレーム340、360、380とを最短距離で電気的に接続することができる。したがって、配置方向において、複数のパワー素子510~560を集約した半導体装置1を小型化することができる。
【0106】
また、各金属導体ベース100、200と各リードフレーム310~380とがポリイミド系材料の各有機絶縁皮膜600、700によって固定される。このため、各リードフレーム310~380の元となる金属板に対する機械加工やエッチング等の処理が不要になる。また、安価なポリイミド系材料で各部品を固定することができる。したがって、半導体装置1のコストを低減することができる。
【0107】
さらに、各有機絶縁皮膜600、700のうちの各金属導体ベース100、200と各リードフレーム310~380とに挟まれていない部分の厚みが、各金属導体ベース100、200と各リードフレーム310~380とに挟まれている部分の厚みよりも薄い。このため、各有機絶縁皮膜600、700のうちの各金属導体ベース100、200と各リードフレーム310~380とに挟まれていない部分に対するモールド樹脂部800による拘束力が働きやすくなるので、当該部分の剥がれを抑制することができる。したがって、半導体装置1の信頼性を確保することができる。
【0108】
変形例として、各継手部410~430は、予め各リードフレーム310、350、370に一体化されていなくても良い。すなわち、各継手部410~430は、各リードフレーム310、350、370から分離した部品として構成されていても良い。あるいは、各継手部410~430は、予め各リードフレーム340、360、380に一体化されていても良い。この場合、各継手部410~430は、接続工程において各リードフレーム310、350、370に接続される。
【0109】
変形例として、各ベース側皮膜610、710や各皮膜620、630、720、730は、一層ではなく、複数の層で構成されていても良い。
【0110】
なお、本実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との対応関係については、第1金属導体ベース100、第1一面101、及び第1他面102が特許請求の範囲の「金属導体ベース」、「一面」、「他面」に対応する。第1継手部410、第1一端部411、及び第1他端部412が特許請求の範囲の「継手部」、「一端部」、「他端部」に対応する。また、第1有機絶縁皮膜600が特許請求の範囲の「有機絶縁皮膜」に対応し、第1ベース側皮膜610が特許請求の範囲の「ベース側皮膜」に対応する。
【0111】
(第2実施形態)
本実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。発明者らは、乾燥温度とせん断強度との関係について調べたところ、乾燥温度によってせん断強度が変化することがわかった。なお、乾燥時間は、例えば60分とした。その結果を
図23に示す。
【0112】
図23に示されるように、第1ベース側皮膜610、第1皮膜620、及び第2皮膜630を225℃~275℃の温度範囲で加熱することで、高いせん断強度が得られることがわかった。これは、225℃未満の乾燥温度では、NMPの残留によって接着が阻害されたためと推定される。また、275℃を超える乾燥温度では、硬化反応が完了したことにより接着が阻害されたためと推定される。
【0113】
そこで、乾燥成型工程では、第1ベース側皮膜610、第1皮膜620、及び第2皮膜630を225℃以上、275℃以下の温度で加熱する。この温度条件により、第1ベース側皮膜610、第1皮膜620、及び第2皮膜630を半硬化させることで、高いせん断強度を得ることができる。
【0114】
なお、第2ベース側皮膜710、第3皮膜720、及び第4皮膜730についても、上記の条件に従って半硬化させる。
【0115】
(他の実施形態)
上記各実施形態で示された半導体装置1の構成は一例であり、上記で示した構成に限定されることなく、本発明を実現できる他の構成とすることもできる。例えば、上記各実施形態では、各金属導体ベース100、200の両方から放熱する両面放熱構造が示されているが、例えば第1金属導体ベース100から放熱する片面放熱構造を採用しても良い。また、第1配線端子321は1本でも良い。同様に、第2配線端子331は1本でも良い。
【0116】
上記各実施形態では、6個のパワー素子510~560が1つに集約された構造であるが、例えば2個のパワー素子510、520が集約された構造でも良い。あるいは、4個のパワー素子510~540が集約された構造でも良い。
【0117】
上記各実施形態では、本硬化工程においてプレス圧力を印加しているが、プレス圧力を印加しなくても良い。
【符号の説明】
【0118】
100 第1金属導体ベース、101 第1一面、102 第1他面、103 外縁部、200 第2金属導体ベース、201 第2一面、202 第2他面、310~380 リードフレーム、410~430 継手部、411 第1一端部、412 第1他端部、510~560 パワー素子、600 第1有機絶縁皮膜、610 第1ベース側皮膜、620 第1皮膜、630 第2皮膜、700 第2有機絶縁皮膜、710 第2ベース側皮膜、720 第3皮膜、730 第4皮膜、800 モールド樹脂部